過去ログ - 【モバマスSS】香水 あるプロデューサーの物語
1- 20
31:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:00:52.42 ID:stipOQWj0
 慶は、加蓮が幼い頃病弱だったと聞いた時、ファロー四徴症や筋ジストロフィーのような難病だったのかと想像した。
 ついでに、難病を奇跡的に克服し、生きる希望を見出した彼女はアイドルを目指すようになったのだ、という展開であれば漫画の主人公みたいで面白いのに、という不謹慎な妄想までした。

 冷静に考えてみれば、ファロー四徴症は1、2歳の時期にブレロック法(鎖骨下動脈断端と肺動脈を吻合する手術)を適用するし、筋ジストロフィーはそもそも抜本的な治療法が確立されていない難病である。
 大雑把だが、免疫疾患や先天的な虚弱体質か何かと推察するのが妥当だと、素人の知識で勝手に結論付けた。
以下略



32:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:01:38.39 ID:stipOQWj0
「ダンスレッスンとか、結構厳しいぞ。それに、ステージ衣装は布を何枚も重ねて作られているものもあるから、見た目以上に重量がある。それでも大丈夫か」

「ううん。体力には自信ない」

「じゃあ、自分の歌唱力には自信あるか? 音楽の経験は?」
以下略



33:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:02:33.66 ID:stipOQWj0
「……ねえ、次のライブ、上手くいくかな?」

「大丈夫さ、今日まで加蓮は頑張ったよ。練習どおりにやればきっと成功する」

 正直なところ、加蓮の指導には手こずった。
以下略



34:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:03:25.26 ID:stipOQWj0
 そしてようやく、合格点に達したと思った今、本格的に加蓮のアイドル活動を開始することにした。
 まずは、近所のCDショップでミニライブを開催し、CDデビューさせる。もちろん、このCDショップは346傘下の店舗なので、咄嗟のアクシデントにも対応できるようにという配慮だ。
 それに、このCDショップのミニステージは、精々百人程しか収容できない。初めてのライブとしては、恰好の場所だと言える。

「ねーねー慶さん、お腹すいたー」
以下略



35:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:03:56.54 ID:stipOQWj0
「はいはい。じゃあ何を食べる?」

「ハンバーガーは……さすがに社員食堂にも無いか」

 加蓮は偏食が多い。今後は食事にも気をつける必要があるかもしれない。
以下略



36:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:06:04.51 ID:stipOQWj0




 あともう少しでライブが始まるというのに、加蓮はパイプ椅子に腰かけ、いまだにミュージックプレーヤーで歌を確認している。
以下略



37:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:06:25.93 ID:stipOQWj0
「ねえ慶さん、私の初舞台、ちゃんと見ててね」

「なあに、お前ならちゃんとできる。なんたって、北条加蓮は俺が育てたアイドルなんだからな」

「ふふっ。それって、頼りにしていいことなの?」
以下略



38:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:07:38.14 ID:stipOQWj0
 低性能の音響、貧弱な照明。アイドルの活躍の場としては、どこか物足りないステージだった。しかし今、加蓮の歌声は、百人足らずの観客を魅了している。
 加蓮のデビュー曲は、哀切なバラードである。アイドルらしい華やかさはないが、聞く者の心を惻々と打つ歌だ。


 神様がくれた 時間は零れる あとどれくらいかな
以下略



39:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:09:04.08 ID:stipOQWj0

 でもゆっくりでいいんだ きみの声が響く

 そんな距離が 今はやさしいの 泣いちゃってもいい?

以下略



40:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:09:42.31 ID:stipOQWj0
「お疲れ様。初めてのライブとしては、大成功だな」

「ありがと、慶さん。私、そんなに上手くできたんだ」

「これなら、今後のアイドルとしての活躍も期待できる。もっと自分に自信を持ってもいいぞ」
以下略



41:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:10:27.08 ID:stipOQWj0
「そう言ってくれると嬉しいな。あの、慶さん……」

 加蓮はパイプ椅子から立ち上がり、しっかりとした眼差しで慶を見据える。それから数舜の後、慶の胸に飛び込んできた。

「慶さんが、私のプロデューサーで良かったよ。これからも、私のプロデューサーでいてくれる?」
以下略



97Res/79.33 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice