80:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 20:55:27.00 ID:W+HAaMa50
*
麒麟館にやってくると、透子は熱心にエッシャーの絵を眺めていた。
声を掛けると、嬉しそうに振り返り、そのまま俺を外に連れ出した。
81:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:00:09.21 ID:W+HAaMa50
「なんか、私ずっとここで暮らしてるのに、駆くんのほうがいろんなこと知ってるみたいで、なんか悔しい」
唇を尖らせる透子から、海岸沿いの平地に寄り集まる家々に視線を移して、俺は少し感傷的な気分で言った。
「この街の些細なことを知ったからって、透子が暮らしてきた事実に比べたら、つまらないことだよ」
82:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:04:09.63 ID:W+HAaMa50
「…………そんなこと、ない」
同じ過ちは繰り返すまい、と決意を込めて透子を見つめていると、透子は照れたように視線を逸らした。
すると、透子も透子で、今のやりとりから何か思うところがあったのか、高山のことを話題に出す。
83:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:06:02.57 ID:W+HAaMa50
「……ごめん、急に駆くんを見れなくなった」
いや、気恥ずかしくて目を逸らしたのは俺も同じだ。
透子を直視できなかった。
84:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:14:47.81 ID:W+HAaMa50
「…………」
俺があんまり見つめるからか、透子はまた俯いてしまった。
何か掛けるべき言葉を探したが、見つからない。
85:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:32:57.22 ID:W+HAaMa50
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その日の夜、俺はテントの前で昼間の出来事について考えを巡らせていた。
俺は透子の見たという《未来の欠片》を整理してみる。
86:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:38:15.39 ID:W+HAaMa50
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約束の時刻より早く日乃出浜にやってきた俺は、砂浜に座り、寄せては返す波を眺めながら、昨日の考察の続きに耽っていた。
「待った?」
87:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:42:28.11 ID:W+HAaMa50
「これ、あげる」
透子はそう言うと、鞄からきらりと光を放つものを取り出した。
乳白色の渦が巻く、群青と淡紅のガラス球。
88:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:52:33.62 ID:W+HAaMa50
「……じゃあ、どうすれば……?」
不安げな目でこちらを見る透子に、俺は肝心の問題提起をする。
「本当に、『未来の欠片』だったのかな……?」
89:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:56:03.20 ID:W+HAaMa50
「…………」
海を見つめながら、俺は透子を待った。
やがて、ざっ、ざっ、と足音が近づいてきて、俺の傍で止まる。
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