水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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16: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:03:03.48 ID:iX/HvtXE0
三
街が真っ白に燃えている。
17: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:03:51.39 ID:iX/HvtXE0
スタジオに向かう通路で先生と鉢合わせした。
「おはようございます」
18: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:05:09.21 ID:iX/HvtXE0
シャツを軽く乾かして、それからスタジオに入った。
レッスンが始まる前にチューニングを済ませなければいけない。
ケースの蓋をおそるおそる開けてみる。
19: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:05:49.40 ID:iX/HvtXE0
九〇分、集中して練習すると、それだけで一日分の気力を使い果たしたようで、稽古が終わる頃にはいつも頭がふらふらしてしまう。
この日は特に、夏場で体力が落ちたせいか、身体全体に疲労を感じた。
最近はお仕事の方も演技レッスンが中心で、他の基礎トレーニングにかける時間が減っていたから、そのせいかもしれなかった。
20: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:06:39.59 ID:iX/HvtXE0
「何か、お聞き苦しい所があったのでしょうか?」
「そういうわけじゃないのよ。むしろ今日の水本さんはいつも以上にブレスが安定していたし、言われた事もちゃんと覚えていて、レッスンの内容としては十分合格ラインです」
21: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:07:54.77 ID:iX/HvtXE0
スタジオを出て先生と別れたあと、早めにお昼を食べようと思い、一階のロビー近くにある売店へ向かった。
そこへ行くためには、エレベーターを降りたあと、広大なエントランスを横切り、向かい側の棟のエスカレーターを回りこんで、その奥にある待ち合いスペースまで歩かなければならない。
つまり、途中で社員や来客の方々と頻繁にすれ違うことになるわけで、そうなると当然、顔見知りの方と挨拶する機会も少なくない。
22: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:08:55.49 ID:iX/HvtXE0
「別になんでもあらへんのよ。……ちょっと今度のどらまのことで、先方と食い違いがあったみたいで……ふふっ、いややわぁゆかりはん、あんさんがそない心配することやないのに」
ドラマの話が出て、私がふいに深刻な表情を浮かべたせいか、紗枝ちゃんはごまかすように話題を変えた。
23: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:10:52.03 ID:iX/HvtXE0
外はあいかわらず息詰まるほどな猛暑だった。
私たちはオフィス街のささやかな並木道を二人で並んで歩いて行った。
おしゃべりしながら歩いていると、この不快な暑さも幾分まぎれるような気がした。
24: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:11:38.63 ID:iX/HvtXE0
「その件に関してはプロデューサーさんに厳しく注意されちゃいましたけど」
そんな風に私が懐かしがって話すのを紗枝ちゃんはじっと押し黙って聞いていた。
25: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:12:49.34 ID:iX/HvtXE0
その後、私と紗枝ちゃんは近郊のショッピングモールへ立ち寄り、あれこれ意見を言い合いながら素敵なお洋服やアクセサリーなどを見てまわった。
「これなんて変装にぴったりや思わん?」
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