水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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35: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:24:26.50 ID:iX/HvtXE0

監督と一緒に管理人さんに挨拶に伺ったあと、さっそく機材が運ばれ、準備が始まった。

私たちキャストはまず演出家さんと話し合い、全体の進行から細かい位置取りなどを確認して、それから各々の準備に取り掛かった。
準備と言っても、衣装に着替えてメイクを終えてしまえば、あとは待機するだけだった。
以下略 AAS



36: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:25:05.88 ID:iX/HvtXE0

「ゆかりちゃんも、すごく似合ってる。清楚で、キリッとしてて……本当に、素敵ね」

標準語で……というよりも、演じる役の言葉遣いで話す紗枝ちゃんの声に、私の心は不意にかき乱され、そしてあからさまに動揺してしまう。
別に今日が初めてというわけでもないのに。
以下略 AAS



37: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:26:12.45 ID:iX/HvtXE0

「……はい。あとは大丈夫?」

「え、ええ……たぶん、大丈夫だと思います」

以下略 AAS



38: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:26:41.44 ID:iX/HvtXE0

「そういえば……」

紗枝ちゃんはふと思いついたように話題を変えた。
この町に有名な和菓子のお店があるらしいとか、時間が空いたら屋敷の中を散策してみようだとか、そんな他愛のない話をして、上機嫌にはしゃいでみせた。
以下略 AAS



39: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:27:45.57 ID:iX/HvtXE0

不安はなかった。
心構えはできていたはずだった。
緊張こそしていたけれど、うまくやってみせる自信はあった。

以下略 AAS



40: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:28:22.35 ID:iX/HvtXE0

五つめのカットのあと、休憩が入った。
私はすでに申し訳なさと恥ずかしさと情けなさとですっかり気落ちしていた。

紗枝ちゃんはそうした私の不調をいち早く察してくれたらしかった。
以下略 AAS



41: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:30:37.21 ID:iX/HvtXE0

「やっぱり場慣れしてないと、難しいわよね。特にロケなんかは……」

「……ええ。思うようには、いかないものですね」

以下略 AAS



42: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:31:34.72 ID:iX/HvtXE0

直後、激しい興奮が痺れるように私の神経を貫いた。

私の意識の全ては今、その濡れた漆色の瞳に吸い込まれていた。

以下略 AAS



43: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:32:28.76 ID:iX/HvtXE0

「…………」

しかし彼女は寸でのところで留まった。
私のほんの数センチ目の前で、彼女は薄くまぶたを伏し、ためらうように、それでいて欲しがるように、ルージュのきらめく口唇をだらしなく開いたままにしているのだった。
以下略 AAS



44: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:33:00.16 ID:iX/HvtXE0

絶句する私の震える首筋を、紗枝ちゃんの指がいやらしくなぞる。
彼女は悪魔のように冷たい微笑を浮かべ、そして私の唇に触れるか触れないかの距離で、接吻するように囁いた。

「おいたはあきまへんえ」
以下略 AAS



45: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:34:32.70 ID:iX/HvtXE0

全身は極度に疲弊し、額に脂汗が滲んでいるのが分かる。
私はいまだ混乱から立ち直れず、また紗枝ちゃんの顔を見るのも恐ろしかったので、そのままぐったりと床を見つめながら気持ちが落ち着くのを待った。

「あら、汗びっしょり……やっぱり冷房は上げない方がよかった?」
以下略 AAS



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