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上条「これからもよろしく、美琴」美琴「うん//」垣根「俺も俺も」心理「はいはい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/06(金) 15:30:18.90 ID:jF3Xn67l0
1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html
2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html
3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/
4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/
5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/
6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/
7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/
8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/
9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/
10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/
11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/
12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/
13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/
14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/
15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/
16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/
17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/
18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/
19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/
20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/
21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/
22スレ目 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1314/13145/1314512717.html
23スレ目 上条「海外旅行!」美琴「イギリス!」心理「ご飯がまずい」垣根「ひもじいよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1315/13152/1315277970.html
24スレ目 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316091462/
25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316955436/
26スレ目 上条「異性のどこが好き!?」美琴「優しさ!」心理「温かさ」垣根「声」テクパトル「背中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318038036/
27スレ目 上条「恋は!」美琴「儚く!!」心理「愛は」垣根「虚しく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321338251
28スレ目 上条「立てば芍薬!」美琴「座れば牡丹!」心理「歩く姿は」垣根「ラフレシア!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323430856/
29スレ目 上条「好きと叫んでも!」美琴「心は遠く!」心理「貴方を呼んでも」垣根「振り向かず!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1325230092/
30スレ目 上条「結婚指輪は!」美琴「給料三か月分!」心理「君への愛は」垣根「プライスレス!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329021080/

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スイカバー @ 2025/06/16(月) 23:54:53.05 ID:7An/VCwoo
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全レスゾーンゼロ @ 2025/06/16(月) 17:23:39.88 ID:/JulHR0so
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バームくんへ @ 2025/06/11(水) 20:52:59.15 ID:9hFPsRzXO
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秘境 @ 2025/06/10(火) 00:47:53.81 ID:BDVYljqu0
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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749139545/

貴様たちの整備のお陰で使いやすくしてくれてありがとう @ 2025/06/04(水) 20:56:21.03 ID:QjuK6rXtO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1749038181/

2 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/06(金) 15:31:14.84 ID:jF3Xn67l0
キャラ紹介

上条・・・美琴の彼氏、主人公であり、正義感溢れていたがいまやただの不幸な人
美琴をかなり愛しています

美琴・・・ヒロイン
ツンデレがデレデレになってます
上条さんにメロメロ
フリンフォン全国ランキング一位

垣根・・・イケメルヘンからギャグまでなんでもござれ
心理定規と付き合ってます、フリーダム
たまにツッコミ

心理定規・・・垣根の嫁
ていとくんに踊らされながらも彼を支えます
ツッコミですがたまにボケ

エツァリ・・・本シリーズで地味なキャラの一人
ショチトルと付き合ってる変態ツッコミ

ショチトル・・・地味キャラだった一人
エツァリと付き合ってます、自称ドMの実際ドM
ボケも心理定規に奪われる

削板・・・熱い男
黒子の彼氏、地味なはずがわりとキャラが濃い

黒子・・・ですの
削板の彼女、でもお姉さまも相変わらず好きなのでご安心を

一方・・・歪みないセロリ
番外個体の彼氏、そしてロリコン、意外とまともになった

番外個体・・・一方の嫁
やっとセロリと付き合うことに、マジ可愛いよワースト
わりと奥手

テクパトル・・・美月こと19090号と恋人に、さまざまな苦難も乗り越えイチャイチャリア充、背中フェチ
背中について語ると止まらない人

19090号・・・テっくんの嫁
通称美月
テクパトルと結ばれましたが未だに照れ屋さん、そしてエロい

20000号・・・変態
しかも、テっくんでヤったこともある変態 、たまに男前

14510号・・・セロリのことが好きな乙女
めちゃくちゃ乙女

10033号・・・セロリのことが好きな乙女
恋する乙女は強かった

御坂妹・・・可愛いです
なぜかツッコミに

17600号・・・やや遅れて合流した妹達
意外と男前、おっとこまえー

■■・・・名前が思い出せないキャラ
まさかの存在感、可愛さ
準レギュ、というかエツァリよりも輝いてる気がする

吹寄・・・垣根に告白、失恋するもやはり友達がいいと気づいた強いキャラ
まさかの準レギュ、そしてツッコミ、おっぱい吹寄

ウイーハルさん・・・違った、初春
削板、黒子の出番でたまに登場

13577号・・・かつて20000号に公開オ○ニーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
まさかの復活、でもトラウマは奥底に眠る

10039号・・・かつて20000号に公開オナ○ーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
磁石のNよりもSが好き
3 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/06(金) 15:35:46.64 ID:jF3Xn67l0
食蜂・・・レズ、美琴に恋してる
最近本当の友達が出来て喜んでいる

打ち止め・・・一方通行と番外個体の娘ポジション
しかし寝取りを企んでいるという噂もある

麦野・・・魅力的なはずなのにアイテムで唯一恋の香がしなかったが、青ピと若干近しくなる
がんばれおばさ・・・お姉さん

絹旗・・・超可愛い超キュートな超ヒロイン
海原に淡い恋心を抱いている
絶賛パンチラ

浜面・・・リア充爆ぜろ

滝壺・・・浜面の彼女
ときどき黒い、実は腕力が半端ない

フレンダ・・・空から帰ってきた我らがアイドルな訳よ!
美人でスレンダー、完璧なスタイルな訳よ!
ゴーグル男なんて好きじゃない訳よ!

ゴーグル・・・スクールの中で一番地味だった人
語尾が「〜っす」とかいう、若者口調
なぜかフレンダと共にこの世に戻ってきた
冷え性、甲斐性なし、天然ボケ


アレイスター・・・冷蔵庫
だったが復活、テクパトルの家に居候

海原・・・絹旗にフラグを立てた男
エツァリではなく、こちらは本物
エツァリと鉢合わせした時に、エツァリの真実の愛を目の当たりにして衝撃を受ける
時を経て変わったエツァリ、彼の愛を受けたショチトル
それは、まるで海原と絹旗の関係に拍車を掛けているようだった
彼は不器用だ、そして時に卑怯である
敬語を使うことによって他人と距離を置き、常に笑顔であるがために自分の内心を探らせない
そんな彼にとって、エツァリとショチトルの間にある何かしらの燃えているものは衝撃的だった
ズキズキとした痛みは、かつてエツァリに剥がれた腕の傷か
いや違う、彼の心に空いてしまった大きな隙間の痛みだった
人が生まれてきたのはなぜか
愛を持つためか、世の中に絶望するためか、明日を見るためか過去に逃げるためか
まだ若い海原には分からない
その名の通り、広い海原の中にまるで小さなカヌーを浮べているような、虚無感と絶望感
たどり着くことの無い未来という名の地平線に、彼はただ手を伸ばすだけだった
彼がそこで知ったのは、愛ではなく絶望だった
遠すぎるオアシスを求めた彼は、やがて少しずつ泥沼へと沈んでいく
鳴呼しかし、彼に救いの手を差し伸べる者はいない
誰かが呼ぶ声さえも、今の彼には地獄の呪詛にさえ聞こえていた
彼にはもう、何もわからない
そう、思った彼の元に、誰かが手を差し伸べた。鳴呼それは、悪魔か天使か
涙を拭いた彼は、そっと足に力を入れた。全ては前へ進むため
絶望の淵にいるのならば、そこに一遍の華を咲かせれば
暗闇の中にいるのならば、誰かの灯りになれたなら
彼は、もう一度立ち上がった。全ては前へ進むため、全ては明日を目指すため
手を伸ばした先に何もなかったとすれば、彼には最早終息などないのかもしれない
だがそれ故に、彼はまだ歩き続けられる。世界を救うために、大切なあの人を守るために
いつかこの世界は滅んでしまうかもしれない

だけど

なにも、こんな悲劇的な結末じゃなくてもいいはずだ

海原は笑った

笑って、右手をそっと伸ばした。特別な力などなかった彼が、たった一度だけ
誰かのヒーローになるために


10月32日

海原光貴は54度目の死を迎える
4 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/06(金) 15:37:38.80 ID:jF3Xn67l0
スレ内容

上琴、未元定規がメインのギャグ、というかただのギャグ

一方通行×番外個体
テクパトル×19090号
削板×黒子
エツァリ×ショチトル
浜面×滝壺
俺×サトリナ
ゴーグル×フレンダ

などおかしなカップリングがあります

何もおかしいところはない



ほのぼの、グダグダ、原作崩壊、キャラ崩壊、マンネリが嫌いな方はご覧にならないほうがいいかと

あと、一部オリキャラ化していますのでそこもご了承を


注意事項

速さが足りないコメ、やろうじゃないのよ

これが最終スレになります

でも特別な最終回みたいなのはしません

ご了承を

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/06(金) 17:25:34.94 ID:Vvb9naveo
おい海原
6 :VIPにかわりまして統括理事会がお送りします [sage]:2012/04/06(金) 18:52:43.94 ID:xWMRMI+o0
海原www
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/06(金) 19:07:02.20 ID:zknVFKNr0
海原さん54回も死んだんかいwww
しかも最終回ですか。何か寂しくなるな
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/06(金) 21:49:25.17 ID:jBw5NwvDO
寂しくなるな…
速さが足りないため、まだここまで追い付いてはいないが応援しよう。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/06(金) 23:03:33.42 ID:m4AljS7b0
前回と比べて海原の紹介文が増えてるww
そういえば、まだ絹旗と海原 むぎのんと青ピってくっついてないよね
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 01:53:48.31 ID:XSXXYhEFo
頼む!!麦のんと青ぴをくっ付けてやってく!
それか連載を続けてくれ!!数少ない寝る前の楽しみなんだ(つд;*)
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/04/07(土) 05:51:43.54 ID:oEXri7/Go
さてこれを機会に最初から読みなおしてくるか
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 07:35:58.66 ID:ucK7mRpSO
これで最後のスレか
最初から見てただけに寂しいな
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 13:28:41.54 ID:rlYnu3zp0
最終スレですか・・・
まだ>>10と同じように連載を続けて欲しいですねww
>>1、応援してます!がんばってください!!
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/07(土) 17:19:37.63 ID:khc7eS300
最後か
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 19:00:57.71 ID:xxtuuPSAo
1期が終了なんだよね2期待ってるんだよ!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/07(土) 23:50:30.91 ID:nHIUSDYN0
マジかー…
このシリーズ全部読むのに1ヶ月半かかった記憶が走馬灯のように(ry
17 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 16:38:20.81 ID:gaeemkQb0

麦野「…」

麦野沈利

学園都市に7人しかいないlevel5

その第四位である超能力者だ

だがまぁ、今はそんなことはどうでもいい

なぜなら


麦野(…どの服にすればいいのよ…!!)


今の彼女は、一人の女の子になっているからであって


事の発端は、昨日の昼間だった

あんまり鳴ることのない彼女の携帯が、絹旗から教えてもらった意味の分からない音楽を奏でたことからだ

めんどくさい、と思いつつもやることがなかった彼女は携帯を手に取った

そして、目を疑った

あの青髪ピアスから「デートせぇへん?」

というメールが届いたのだ

デート


すなわち


麦野(あぁぁぁぁぁぁ!!!!やっぱり青髪君だって女の子の服装とか気にするわよねぇ!!)


麦野にとって、初めてと言ってもいいほどの出来事なのだ

18 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 16:42:15.43 ID:gaeemkQb0
麦野(…ワンピースなんて子供っぽいわよね…でもドレスは…)

麦野(…っていうか、ドレスなんてあの垣根の女と一緒みたいで嫌ね…)

麦野(…あ、ジーパン…)

麦野(…)

麦野(…スカートでいいかしら)

麦野(でもスカートだとやっぱりミニかしら…青髪君、そういうの好きそうだし)

麦野(…でもそしたら脚が見えちゃうなぁ…)

麦野(…)

麦野(…コートで隠すのもいいかもね)



絹旗「…麦野が超真剣な顔で服を睨んでるんですけど…」

フレンダ「ねぇ、なんかあったのかな?」

ゴーグル「…多分、断捨離じゃないっすか?」

浜面「…捨てるのか、あれ?」

滝壺「違うよ、はまづら」

浜面「?もしかして、お前…理由を知ってるのか」

滝壺「うん…むぎのはね、今とっても悩んでるの」

絹旗「ど、どうしてですか!?」



滝壺「脚が太いから」


麦野「滝壺、表出ろよ」


19 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 18:07:59.24 ID:gaeemkQb0

滝壺「…つまり、むぎのはデートに誘われたんだね」

麦野「…そうなんだよなぁ…」

浜面「そんなの普通にジーパンとかでいいじゃねぇか」

麦野「…それ、私に喧嘩売ってるの?」

フレンダ「…麦野は脚がたくましいから、そんなの無理な訳よ」

麦野「てめぇも調子乗るなよフレンダ!!」

フレンダ「ひぃっ!!」

ゴーグル「…あの、だったらショートパンツはどうですか?」

麦野「…だから脚が…」

ゴーグル「そこは網タイツで誤魔化すんすよ」

一同「」

ゴーグル「…な、なんで引いてるんですか…」

絹旗「…ゴーグルはそういう趣味でしたか」

ゴーグル「ち…違いますよ!!!ただ足のシルエットを誤魔化すにはぴったりでしょう!?」

浜面「分かるぜ…俺も網タイツはぐっとくるからな!!」

ゴーグル「だから違うって言ってるじゃないっすか!!!」

フレンダ(…網タイツかぁ…)



20 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 18:33:41.21 ID:gaeemkQb0
滝壺「…でも、脚のシルエットを誤魔化すにはちょうどいいはず」

麦野「…周りから変な目で見られないか心配なのよね…」

フレンダ「今日日網タイツ履いてる子なんてたくさんいる訳よ」

絹旗「そうそう、むしろいいパンチになるじゃないですか」

麦野「…だといいけど」

浜面「まぁさ、デートなんだから相手の好きな格好をするのが一番だよな」

麦野(…青髪君の好きな格好か…)



青ピ「あっはあ!!メイドさんは最高やでぇ!!」

青ピ「あっはあ!!巫女さんときたらたまらんなぁ!!」

青ピ「あっはあ!!ナースってばもう最高やんかぁ!!」

青ピ「あっはあ!!OL風の服装って素敵やねぇ!!」



麦野「…多分、かわいい子が着てればなんでもいいんだと思うわ」

ゴーグル「…どういう人なんすか…」

浜面「…すっげぇな、ちょっと尊敬する」

滝壺「そんなはまづらは応援出来ない」


21 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 20:17:33.27 ID:gaeemkQb0

麦野「…はぁ」

結局、ゴーグル男が提案した服にしてしまった

麦野(…なんで網タイツなのかしら)

フレンダの影響で足フェチになったのだろうか、と考えながらも麦野は歩いた

目指すは青髪との待ち合わせ場所

すれ違う男達がチラチラと麦野を見ている

麦野(…これは、いい意味での視線なのかしら)

いい意味での視線である

麦野(…にしても、まだまだ暑いわね…そろそろ世間は夏休みも終わりだっていうのに)

ギラギラと照りつける太陽は、女の敵だ

この頃になるとテレビなどで「残暑が云々」とか言っているが、普通に考えてまだまだ暑さは真っ盛りな気もする

麦野「…暑いわね…」

青ピ「ほんまやねぇ」

麦野「…」クルリ

青ピ「こんにちは、麦野さ…」


麦野「あ、ああああああああ青髪君!?」

青ピ「な、なんでそんなに焦ってるん?」

麦野(いきなりなんで後ろにいるのよ!?)

麦野「こ、こんにちは…」

青ピ「ごめんなぁ、急に声かけたりして」

22 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 20:24:36.87 ID:gaeemkQb0
麦野「あれ…でも待ち合わせ場所までかなり遠いけど」

青ピ「あぁ、途中で麦野さん見つけたから声掛けたんやで」

麦野「そっか…ビックリした」

青ピ「あはは、驚いた麦野さんも可愛かったで」

麦野「そ、それ何…」

麦野(…?驚いた麦野さん…も?)

麦野(も!?も!?)

青ピ「それで麦野さん、なんで今日はまた網タイツなん?」

麦野「ふぇぁっ!?」

青ピ(ウルトラマンみたいな声やなぁ)

麦野「そ、そうね…今日はいつもと違う感じにしたかったのよ」

青ピ「へぇ…でも網タイツなんて、大胆やねぇ」

麦野(あぁやっぱりそうよね!!こんなのってなんか誘ってるみたいな格好よね!!)

青ピ「…似合ってるなぁ」

麦野「そ、そう?」

青ピ「あっはあ!!なんか大人の色気って感じやね!!」

麦野「い、色気…」

青ピ「やっぱこう…ところどころ見える肌と黒い生地のコントラストが妙なエロスを醸し出してると思うんよ!全部を見せるショートパンツではなく、あえてつぎはぎで肌が見える網タイツ!!見たいという欲求を半分は叶えつつも、残り半分は焦らしているという飴と鞭の共存!!その後で全てを見せてもらえるのか、はたまた見せてはもらえないのか、しかしこのまま焦らされていたいと思う自分がいるのも嘘ではない、それが網タイツやでぇ!!」

麦野(あぁ、なんか青髪君っぽい)

23 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 20:32:36.18 ID:gaeemkQb0
青ピ「…あれ、でも麦野さんって結構…」

麦野「な、なに?」


青ピ「脚がっしりしてるんやね」

麦野「」


麦野(あぁぁぁ!!やっぱり青髪君も太い足とかよくないわよねぇ!)

青ピ(太腿とかに挟まれたら気持ちよさそうやなぁ)


青ピ「でもボク、細すぎる女の子よりムッチリしてる子のほうが好きやけどな」

麦野「」


麦野(よっしゃぁぁぁぁ!!!)


青ピ「あ、それよりどこ行こうか?」

麦野「え、あぁ…青髪君はどこに行きたい?」

青ピ「そうやな…ゲーセンとか」

麦野「ゲーセン…?なんで?」

青ピ「あれ、麦野さんゲーセン嫌いなん?」

麦野「き、嫌いじゃないけど…」

青ピ「あ、ごめんなぁ…デートで行くような場所ちゃうよね」

麦野(わ、分かってくれてる…)


24 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 20:36:56.72 ID:gaeemkQb0
青ピ「ほな、水族館でも行く?」

麦野「す、水族館?」

青ピ「そうそう、水族館」

麦野「…そういえば、水族館って行ったことない」

青ピ「あれ、なんやそうなん?」

麦野「うん、子供の頃から色々忙しかったし」

青ピ「へぇ…」

青髪か驚いたような顔をする

麦野「…じゃあ、連れて行ってくれるかしら」

青ピ「えぇよ」

青ピがなんの躊躇もなく麦野の手を握る

麦野(!?)

青ピ「えーっと…バスはそろそろやし、ちょうどえぇ時間やね」

麦野「え!?あぁ、今日もいい天気ね!!」

青ピ「?」

麦野「さ、は、早く行きましょうよ遊園地!!」

青ピ「水族館やって、麦野さん」


25 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 20:45:23.06 ID:gaeemkQb0


麦野「…すごい、これが水族館…」

水族館の入り口で、既に麦野は面食らっていた

イルカをモチーフにした入口、その周りには細かいマップが書かれている

麦野「…イルカのショーってなに?」

青ピ「イルカが飛んだり回ったりするんやで」

麦野「あ、テレビで見たことあるわね」

青ピ(ほんまに来たことないんやね…)

麦野「…ねぇ、早く入りましょうよ!!」

青ピ「あ、もしかしてごっつ楽しみやったりするん?」

麦野「そ、そんなことないわよ!?ただちょっと経験してみたいし!!」

青ピ(…チラチラ水族館見てるなぁ…可愛らしいわぁ)

麦野「…ねぇ、入らないの?」

青ピ「入るで、行こう」

麦野(よ、よっしゃぁ!!!)

青ピ「…えーっと、二人で1500円やね」

麦野「え、安いのか高いのか分からないわね…」

青ピ「この規模の水族館なら安い価格やで」

麦野「そうなんだ…」


26 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 20:53:12.48 ID:gaeemkQb0
青ピ「えーっと、1500円…」

麦野「え、あ、私が出すわよ!!」

青ピ「えぇってえぇって、こういう時は男の子が出すもんやって」

麦野「そ、そういうもんかしら」

青ピ「このためにバイト頑張ったんやし」

麦野「えっ…」キュン

青ピ「あ、受付のお姉さんや!!こういう格好えぇなぁ、セクシーでかわい…あ、1500円ですね、あ、はい、すいません」

麦野(わ、私のためにバイトを…)カァッ

青ピ「ほな麦野さん、行きましょか」

麦野「う、うん…」



麦野(…そういえば、こうやって男の子と二人きりになるって…今までほとんどなかったのよね)

青ピ(…麦野さんみたいな美人とデートなんて、ボクぁ土御門を超えたんや!!)

垣根(水族館って大好きだ、メルヘンだから)

麦野「…」

青ピ「…」



麦野・青ピ「えぇぇぇぇぇ!?」

垣根「よぉ」



麦野青ピの水族館デート、余計な二人はオマケだよ編スタート




27 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:00:13.15 ID:gaeemkQb0

麦野「な、なんで垣根がいるのよ!?」

垣根「はぁ?なんで俺が水族館にいたらいけねぇんだよ」

青ピ「べ、別にそういうわけやないけど…」

麦野(くそ…ぶち壊しだ…)

青ピ(…垣根、最低やで…)

垣根「いやぁ、今日はいい天気で外に出たくなってなぁ!!」



垣根「来ちゃったのさ、すいぞきゅかんに!!」

青ピ(噛んでるやん)

麦野(噛んでるわ)

垣根「そういえば、お前達はなんでここに?」

青ピ「そ、それはやなぁ…」

麦野「…デートなのよ、だから邪魔しないで…」

青ピ「そ、そうなんやって…」



垣根「デート!?マジ!?」

麦野「ほ、本当なんだから…」

垣根「聞いたかよ一方通行!!!」

青ピ・麦野「」


一方「あァ?なンだよ」


28 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:08:27.40 ID:gaeemkQb0
垣根「デートだって!!こいつらデートだって!」

一方「えェ!?デートォ!?」

麦野「だ、第一位…なんでアンタまでいんのよ!?」

垣根「なんでって、二人で来たんだし」

青ピ「あ、あの…なんで彼女とじゃないんか分からないんやけど」

垣根「心理定規は今、家でゆっくりと保湿しているところだからな」

一方「番外個体は今、家でゆっくりと急いでるンだよ」

麦野「あぁそう、じゃあ二人で水族館を楽しんで…」

垣根「待てよ」ガシッ


垣根が麦野の肩を掴んだ

クルリ、と麦野は振り向いた

その首筋には、まるで死神の鎌が掛けられているかのような重圧が感じられた


垣根「誰が、逃がしてやるって言ったかな」

青ピ「な、なんでやねん!?ボク、今回結構大事なこと言うつもりなんやけど!!」

垣根「あぁ、じゃあ続きはwebでいいじゃんか」

青ピ「よくないやんか!!!」

麦野(だ、大事なことって何かしら…)


29 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:12:26.88 ID:gaeemkQb0
一方「なァ、一緒にイルカさン見ようぜ」

青ピ「遠慮したいんやけどなぁ…」

麦野「…アンタ達さ、空気が読めないって言われたことない?」

垣根「…」



垣根「え、こいつ何言ってんの?」

一方「マジ空気読めてないンですけどォ」

麦野(うぜぇ)

青ピ「ま、まぁまぁ…垣根達は何か見たいのとかあるん?」

垣根「あぁ、まずはアシカだよな」

一方「はァ!?まずはヒトデって約束だったじゃねェかよォ!!」

垣根「アシカ!!!」

一方「ヒトデ!!!」

垣根「アシカ!!!!!!」

一方「ヒトデ!!!!」

垣根「ヒトデ!!!!!!!!」

一方「お前ってやつはァ…」フフッ

青ピ(なんやねんこれ)

麦野(頭痛くなるわ)



垣根「じゃあまずはアシカな」

一方「あァ」

青ピ「えぇぇぇぇぇ!?」


30 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:19:40.16 ID:gaeemkQb0

麦野(…隙を見つけて逃げ出せばいいかしら…)

垣根や一方通行の後ろに着きながら、麦野は考えていた

ちなみに入り口から入ってすぐは大きな水槽があるのだ

そこには小さな魚からサメまでが共存している

青ピ「あ、やっぱりこの薄暗い感じが好きやな」

麦野「ホント…幻想的」

垣根「その幻想をぶち殺す!!」

一方「ダメだ!!壊さないでェ!!!」

麦野「…垣根の一言であっちの女の子が泣き出しそうになったわね」

一方「てめェ垣根ェ!!!!」

垣根「あぁ!?お前だって共犯だろうが!!!」

一方「ロリを泣かせるとかマジ最低なンですけどォ!!!」

垣根「そ、そんなこと言われたら私…」ウルウル

一方「あ、ご、ごめン…お前のこと、最低なンて俺は…」

垣根「いいの…私、所詮は冷え性の女…」


青ピ「あ、麦野さん麦野さん、サメがおるで」

麦野「あ、ホント…なんか頭の形おかしい」

青ピ「シュモクザメやね」

麦野「へぇ…これってたしかハンマーヘッドシャークよね、洋名」

青ピ「そうなんや、麦野さん物知りやねぇ」

麦野「そ、そうかな?」カァッ

31 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:34:07.00 ID:gaeemkQb0

垣根「いやん!!見てよ一方通行、このサメったらあっちの小魚食べちゃった//」

一方「おいおいマイハニー、そンな冗談は子供が泣くからやめたまえ」

垣根「あらぁ、でもこのサメ、なんだか獰猛そうよね」

一方「何言ってるンだい、俺だって夜は…獰猛だろ?」キリッ

垣根「あぁん!!さっすがダーリン//」


麦野「…あ、ジンベエザメ」

青ピ「でかいなぁ…でもかなり穏便なサメなんやっけ」

麦野「そうそう、小さいプランクトンとかが餌で…」


垣根「あぁぁ!!タコがいるタコ!!!」

一方「マジかよ!!マジオクトパスなンですけど!!!」

垣根「それを言うならカスケードンだろ、一方通行!!」

一方「ははは!!そうだったなァ!!」

麦野「あぁもう!!アンタ達うるさいのよ!!」

垣根「うるせぇ!!網タイツなんか履きやがって!!!」

麦野「なっ…」

一方「誘ってンのか?あァ?」

麦野「う、うっさい!!これは…そ、その…」


32 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:45:27.73 ID:gaeemkQb0
青ピ「麦野さんオシャレやんか、えぇやん」

垣根「網タイツだぜ?こんなの誘う格好…」ハッ!!

一方「まさかお前…青髪を誘ってンのか…」

麦野「へぁっ!?」

垣根「マジかよ!!!」

一方「…引くぜェ…」

麦野「ち、違う違う!!だって私脚太いから短いズボン履いたらこういうの着ないといけないし…そ、それにいっつもコートばっかり着てるからオシャレの方法とか…わ、わかんないし…」グスン

垣根「正直すまんかった」

青ピ「…でも、一方通行の服装もウルトラマンやん」

一方「」

麦野「ウ…ウルトラマン…」プルプル

垣根「ウルトラマン…www」

青ピ「それに垣根やって、なんで着ぐるみ着てんねん」

垣根「ウサギだぜ、可愛いだろ」

麦野(いつの間に着替えたのよ…)

垣根「ピョン!!なんて//」

一方「」

青ピ「…それより、ボク達はもう行くから二人は…」

垣根「次はタツノオトシゴがいるコーナーだな、行くか」

青ピ(あ…やっぱそうなんや)

33 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:51:51.98 ID:gaeemkQb0

垣根「…タツノオトシゴってな、悲しい伝説があるんだ」

麦野「何よいきなり」

タツノオトシゴが入った水槽を見て、垣根が小さく笑う

垣根「…どうしてタツノオトシゴが海に住んでるか知ってるか?」

青ピ「そういえば知らないなぁ…」

垣根「…こいつはな、海の畔に住んでいた一人の女子に恋をした哀れな竜だったのさ」

麦野「…へぇ」

垣根「…竜って言ったら、そりゃ神様の使いやらなんやらで…正直、人間なんかよりよっぽど偉い生き物なんだ」

麦野「そりゃそうよね」

垣根「…竜だって、その恋が間違っているとは知っていた」

青ピ「…」

垣根「…でもな、そいつはいつまでも女子に思いを抱いていた、何十年も」

麦野「な、何十年…」

垣根「…その女子はやがておばあさんになってしまった、それでも竜は思い続けた…ずーっと、同じ場所からその女子を見つめていたんだ」

垣根「惰性なのか何なのか、竜にさえ分からなかった…ただ、なぜかその女子だけを愛していたんだ」

青ピ「…」

垣根「…でもな、竜と違って人間には寿命がある」


垣根「ある日…その女子は、亡くなってしまった」

一方(ウルトラマン…)

34 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 21:59:38.15 ID:gaeemkQb0
垣根「…竜は涙を流した、それは途轍もなく溢れ出す涙だった」

垣根「…ずっと泣いていた竜の遥か下には、いつの間にか海が出来ていた」

垣根「…女子が住んでいたのよりもずっと大きな海が」

垣根「…絶望してしまった竜は、そのまま悲しみのままに…海へと身を投げた」

垣根「…悲しみという名の海の中に、竜は沈んでしまったんだ」

麦野「…それからというもの…タツノオトシゴが生まれたのね…」ウルウル

青ピ「なんて感動的な話なんや…」ウルウル

垣根(全くのデタラメだっていつ言おうかな)

一方「…なァ」

垣根「なんだよ」

一方「…いい話だなァ…」ウルウル

垣根(お前もかよ)

一方「…俺、タツノオトシゴ好きになっちまったよ…」

青ピ「ボクもやなぁ…もう少し見ておきたいわぁ」

麦野「私も…」

垣根(…)



垣根(シリアスな雰囲気になりおったwwwww)


35 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/09(月) 22:00:15.12 ID:gaeemkQb0
今日はここまで

明日は投下できません

大学生活って面白そうだけども不安もあるよね


サトリナってかわいいよね


では

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/10(火) 16:56:23.46 ID:Dpg68niE0
乙なんだよ!
37 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:08:51.69 ID:gtPQ1TLB0
麦野「・・・」

麦野(って違う違う!いつの間にか垣根の存在を許してしまってたわ!)

一方「なァ、次はどこ行くンだよ」

垣根「そうだな・・・ラッコもいいけど、カニが見たいな」

一方「カニいいよなァ」

垣根「美味しいもんな」

青ピ「・・・水族館でそれは言ったらあかんやろ」

垣根「・・・なんで?」

青ピ「メルヘンぶち壊しやんか」

垣根「!?」


垣根「なんてこった・・・俺は自らこのメルヘン空間を壊していたのか・・・!」

一方「今更かよ」

垣根「・・・一方通行・・・俺はもう、メルヘンを語る資格はない・・・」

すっ、と垣根が着ぐるみを脱ぐ

中にはいつもの格好をした垣根

垣根「・・・俺には、着ぐるみを着る資格はない」

一方「はァ?」


38 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:09:20.33 ID:gtPQ1TLB0
垣根「あげます」

一方「いらねェ」

麦野「・・・!」

麦野(待って・・・今垣根は、一方通行との会話に夢中になってる!)

麦野(今なら青髪君と二人きりに・・・)

麦野(・・・!って、なんで私は二人きりになるのを期待してんのよ!)

青ピ「・・・なぁ、垣根も一方通行も・・・あんまり邪魔しないでほしいんやけど」

垣根「あぁ?」

青ピ「・・・ボクなぁ、今日だけは麦野さんと二人きりがいいんやけど」

麦野「!」

一方「へェ・・・なンでだよ?」

青ピ「・・・ここでは言えへんけど」

垣根「ヒューヒュー!ってことは、麦野と二人きりがいいのか!」

青ピ「・・・まぁ、そうなんや」

一方(・・・作戦成功だな)

垣根(あぁ・・・麦野に青髪を意識させる、見事な作戦が)

一方(・・・こォでもしねェと麦野はなンだかンだ、二人きりになるのを避けそうだからな)

垣根(・・・正確には、シリアスな雰囲気で二人きりになるのを、な)



39 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:09:48.56 ID:gtPQ1TLB0
垣根「で?麦野も二人きりがいいのか」

麦野「え、あ・・・」

一方「どォなンだよ、青髪と二人きりになりたいンじゃねェのか」

麦野「わ、私は・・・」

麦野がパニックに陥る

二人きりになりたい、なんて認めてしまうのはなぜか怖かった

麦野「違う!違うから気にしないで、みんなで楽しめばいいじゃない!」

垣根「」

一方「」

青ピ「え・・・」

麦野(あぁぁ違うのにぃ!)

垣根「・・・青ピ、ちょっといいか」

青ピ「え、なんやの?」

垣根が青ピの腕を引っ張る

垣根「いいから・・・一方通行と麦野はそこで待っとけ」

一方「・・・あァ」


40 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:10:15.93 ID:gtPQ1TLB0

スタスタ、と垣根は青ピの手を引っ張りながら近くのトイレに駆け込んだ


垣根「あぁぁぁ!作戦失敗だよ!」

青ピ「な、なんのことやねん・・・」

垣根「いいか、麦野はお前と二人きりになりたいとは思っていた!」

青ピ「な・・・ならなんでボクらの邪魔したんよ!?」

垣根「邪魔じゃないんだよ!いいか、二人きりになりたいとは思っていたが、あいつにはその理由が分からなかったんだよ!」

青ピ「・・・理由?」

垣根「・・・青ピ、お前はなんで麦野と二人きりになりたいんだ」

青ピ「な、なんでって・・・」

青ピは恥ずかしくもなさそうに、さらりと言う

青ピ「ボク、麦野さんのこと好きやし」

垣根「そうだよな・・・お前は気づいてるんだ」

だが、と垣根が頭を抱える

垣根「麦野はまだ自分の気持ちの正体に気づいちゃいない」

青ピ「・・・」

垣根「・・・そんな状況でお前と二人きりになってみろ・・・お前、今日あいつに告白するつもりだったろ」



41 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:10:42.29 ID:gtPQ1TLB0
青ピ「な、なんでそないなことまで知ってんねん・・・」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿っていうヤツが、最近麦野とお前が仲良しだって言って・・・いや、それはいいんだ」

話を戻すぞ、と垣根が釘を打つ

垣根「・・・曖昧な感情のままお前に告白されたら、麦野はどうすると思う」

青ピ「・・・混乱するやろうね」

垣根「だろ・・・だから、あいつにはまず自分の気持ちに気付くことが必要なんだ」

青ピ「・・・」

垣根「これは友人としての警告なんだ・・・いいか、麦野に今日告白したいなら、あいつに気持ちを気づかせなきゃ・・・」

青ピ「あのな、垣根」

青ピがため息をつく

呆れているような、笑っているような

そんな、複雑なため息だ

青ピ「・・・たしかに、麦野さんは多分・・・まだボクのことを好きだって思ってないとは思う」

青ピ「今告白しても混乱させる、それも分かってる」

青ピ「・・・垣根や一方通行のやってくれたことは、ボクにとってはプラスなんかもしれへん」


42 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:11:15.57 ID:gtPQ1TLB0
垣根「なら・・・」



青ピ「でもな、これはボクの恋なんや」

垣根「!」

青ピ「垣根にも一方通行にも関係ないんやで」

垣根「で、でもよ・・・」

青ピ「・・・心配してくれてるんはありがたい、友達としてそれは感謝してる」


青ピ「でもな、ボクはボクのやり方で麦野さんに気持ちを伝えないといけないんやって」

垣根「!」

青ピ「垣根や一方通行の提案した方法で告白が成功して、麦野さんと付き合えたら・・・そら、幸せなんかもしれないわ」

青ピ「・・・せやけど、それはボクの方法やないんや」

青ピ「・・・他の人ならそれでえぇんかもしれない、けどボクはボクの方法やないとあかんのや」

垣根「・・・」

青ピ「もし、自分の方法で麦野さんへの告白が失敗したら・・・また、自分の方法でやり直す」

青ピ「・・・簡単な話やんか、ボクは麦野さんにボクを好きになって欲しいんやから」


43 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:11:51.18 ID:gtPQ1TLB0
垣根「・・・本気なんだな、お前」

青ピ「?」

垣根「・・・麦野が美人だから好きだ、とか・・・そういうわけじゃなかったんだな」

青ピ「当たり前やんか」

ケラケラ、と青ピが笑う


青ピ「ボク、目が見えなくて耳が聞こえなくても・・・きっと麦野さんを好きになったと思うけどなぁ」

垣根「・・・」

青ピ「・・・初めてやったんやで、一緒にいて安心できる人」

青ピ「一緒にいて楽しい人はたくさんおるけど」

垣根「・・・分かった、お前は・・・麦野を愛してるんだ」

青ピ「そうやとえぇな」

垣根「・・・悪かった、俺達は邪魔だったんだな」

青ピ「えぇって、ボクらをからかいたかったわけやないんやろ」

垣根(それもちょっとあるんだけどな)

垣根「あぁ、お前らを応援したかったんだ」

青ピ「なら大丈夫、ボクは頑張るから」


44 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:12:17.14 ID:gtPQ1TLB0
垣根「・・・分かった」

青ピ「そろそろ戻らないと、麦野さんを待たせたらあかんから」

垣根「・・・あぁ」




一方「・・・」

麦野「・・・」

一方「お前、あいつのことどう思ってンだよ」

麦野「・・・垣根?」

一方「とぼけンな」

麦野「・・・青髪君は素敵だと思うわよ」

一方「・・・それだけか」

麦野「・・・だったらなんなのよ」

一方「お前よォ・・・あの青髪って野郎のこと、好きなンじゃねェのか」

麦野「あ・・・青髪君は・・・その・・・」

顔を赤くしながら、麦野が言葉を濁らせる

一方「・・・」

麦野「・・・素敵だと思うけど・・・」

一方「けど?」

麦野「でも、私みたいな・・・」



45 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:12:52.36 ID:gtPQ1TLB0




青ピ「麦野さーん!お待たせ!」

麦野「あ、青髪君・・・」

一方「あァ?垣根はどうしたンだよ」

垣根「ちゃんといるぜ」

一方「・・・」

垣根「・・・麦野、すまなかったな」

麦野「は、はぁ?」

垣根「興味本位で二人を冷やかしたなんて、さすがにやりすぎた」

一方「お、お前・・・」

垣根「・・・これから邪魔したりはしない、だから二人で楽しんでくれ」

麦野「え、あぁ・・・それならいいけど」

垣根「・・・じゃあな、上手くやれよ青髪」

青ピ「もちろんやって!」

納得がいっていない表情の一方通行を引っ張り、垣根が二人から離れる

麦野「ね、ねぇ・・・垣根となにかあった?」

青ピ「特になんもないで」

麦野「ならいいんだけどさ・・・」


46 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:13:17.16 ID:gtPQ1TLB0
青ピ「それより、デートの続きやろ!」

麦野「あ・・・そうだったわね」

青ピ「行こうか」

再び、青ピが麦野の手を握る

今度は正真正銘、二人きりだった


のだが


垣根(こちらスネーク!)

一方(同じくスネーク!)

垣根(二人合わせて!)


垣根・一方(スネーク!)

二人は、決して飽きたりはしていなかった

一方(はン・・・乗りかかった船だ、だったら泥船だろうが最後まで見届けてやるよ!)

垣根(青髪がなんて言って告白するか気になるしな!)

一方(なによりあの麦野の面白い瞬間が撮れそうだからなァ)

垣根(カメラは用意したか)

一方(当たり前だろォが)
47 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 16:13:43.93 ID:gtPQ1TLB0


麦野「・・・そろそろイルカのショーだったかしら」

青ピ「麦野さん、イルカとか好きなんやね」

麦野「に、似合わないわよね・・・分かってるんだけどさ」

青ピ「?」

麦野「絹旗とか浜面とかにいつも趣味が子供っぽいって言われるから・・・」

青ピ「そんなことないと思うけどなぁ」

麦野「え・・・?」

青ピ「ボク、麦野さんはきっと純粋なんやと思う」

麦野「私が純粋?」

青ピ「そや、だから動物が好きやったりするんやろ」

麦野「・・・でも・・・私、純粋なんかじゃないわ」

青ピ「ボクが純粋やって言うんやから、純粋なんやで」

麦野「な、なにそれ?」

青ピ「僕の前にいる麦野さんは純粋やってこと」

ニコリ、と笑ってから青ピが先を指差す

青ピ「早く席とっておかないと座れなくなるで」

麦野「そ、そうね!」


48 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 17:14:05.52 ID:gtPQ1TLB0

麦野「やった、一番前の席が空いてる!!」

青ピ「あらら…みんななんか後ろの席とかに座ってるなぁ」

麦野「きっとイルカを間近で見るのが恥ずかしいのよ」

青ピ「そんなもんなんかなぁ?」

麦野「それより、楽しみね!!」

青ピ(…ほんまにイルカのショー、見たことないんやなぁ)

麦野「…!係員のお姉さんが入ってきたわ!!」

青ピ「…そういえば、イルカのショーって結構水が跳ね…」


「みなさん、こんにちはー!!」

「こんにちはぁぁぁ!!!!」


青髪のそんなつぶやきは、子供達の歓声に掻き消された

麦野「…子供達って、こういう時の一体感はすごいわよね」

青ピ「そら、楽しんでるんやろうな」

麦野「…いいなぁ」

青ピ「麦野さんも今楽しめばえぇやんか」

麦野「!そ、そうね!!」

青ピ「あ、イルカさん達が上がってきたで」

麦野「ほ、本当!!めちゃくちゃ可愛いわね!!」

49 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 17:24:44.15 ID:gtPQ1TLB0
「では、まずはイルカさんのジャンプです!!お姉さんが笛を吹くと、イルカさんはジャンプするんですよ!!」

「すごーい!!!」


青ピ(…ジャンプ…)

麦野(み、見てみたい!!!)

青ピ(!!も、もしかしてプールの間近に誰も座ってなかったのは…)



垣根(おぉぉぉ!!俺達も前に座ろうぜ一方通行!!)

一方(打ち止めのために写真撮るンだァ!!)


「せーの!!」

お姉さんが笛を吹いた

青ピだけは気づいていた

もしかしたら、誰も前に座っていなかったのは


麦野「あ、イルカが跳んで…」


バッシャーン!!!



水しぶきが、かなりかかるからなのでは、と




50 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 17:32:17.06 ID:gtPQ1TLB0

麦野「…」

イルカショーは無事に終了した

しかし、麦野の心は些か無事ではなかった

青ピ「あっちゃー、二人ともビッショビショやね」

麦野「ホント…」

青ピ「?そんなにがっかりすることなんかないで」

麦野「だ、だってさ…せっかくのデートなのに」

青ピ「もしかしてお気に入りの服やったん?」

麦野「そ、そうじゃなくて…こんなんじゃ、青髪君も嫌でしょ?」

青ピ「嫌やないって、むしろビショ濡れの女の子のなんて素敵なものが拝めて最高やでぇ!!」

麦野「そ、そう?」ドキドキ

青ピ「あ、でもこれから水族館回るのはきっついなぁ…」

麦野「まぁ…かなり濡れてるからね」

青ピ「しゃあないし、今日は帰ろっか」

麦野「そうね…また一緒に来てくれる?」

青ピ「もちろん!!」



垣根(…)ビッショリ

一方(…)ビッショリ

51 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 17:40:22.33 ID:gtPQ1TLB0
デートの帰り道というのはなんとも寂しいものだ

それも、不本意な形で終わったデートならばなおさら

麦野(…もうすぐ…私の家の近くね)

はぁ、と麦野がため息をつく

本当なら今頃、青ピと水族館に残っているはずだった

麦野(まぁ…イルカを責めてもしょうがないけど)

青ピ「あ、喉乾いてへん?」

麦野「?」

青ピ「ほら、ここの公園に自販機あるから」

麦野「あ、いいけど」

青ピの提案に乗り、麦野も公園へと入る


横がかなりへこんだ自販機で、ヤシの実サイダーを買ってから二人はベンチに座った


麦野「…なんか、ちょっと残念だったわ」

青ピ「なんで?」

麦野「…デート、すぐ終わっちゃったから」

青ピ「あはは…垣根達にも邪魔されたしなぁ」

麦野「そうそう…本当に、踏んだり蹴ったりよ」

52 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 18:38:44.97 ID:gtPQ1TLB0
青ピ「…なら、最高のデートに今から変えないといけないんやね」

麦野「?」

青ピ「…あのな、麦野さん」

そっと青ピが麦野の手を握る

麦野「な、なななななに!?」

青ピ「ボク、麦野さんのことめっちゃ好きなんやで」

麦野「!?」

青ピ「そりゃあもう、毎日毎日考えては苦しんでしまうほど大好きなんやでぇ!!!」

クネクネと体をくねらせ、青ピがそんなことを言う

麦野「そ、それって…」

青ピ「告白やで、人生初の告白なんやぁ!!!」

麦野「で、でも私ってそんなにいい女じゃ…」

青ピ「ボクにとっては最高の女性なんやって」

麦野「そ、それに…それに、私は…人に愛されるような人間じゃないのに」

青ピ「?」


青ピ「でもボク、麦野さんのこと愛してるけどなぁ」

麦野「あ、愛してる!?」

53 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 22:03:19.17 ID:gtPQ1TLB0
青ピ「…せやから、そんなこと言わないでほしいんやで?」

麦野「…それは…」

青ピ「…ボク、麦野さんのこと大好きやから」

麦野「…」

青ピ「それで、麦野さんはどうなん?」

麦野「わ、私!?」

青ピ「ボクのこと、嫌いかな?」

麦野「き、嫌いなわけないじゃない!!」

焦ったように、麦野が否定する

それを見て、少し青ピはほっとする

麦野「…た、ただ…」

青ピ「ただ?」

麦野「こ、こんなに私のことを好きになってくれた人なんて初めてで…なんか、ちょっとどうしていいか分からないのよ」

青ピ「…そっか、それも無理ないよなぁ」

麦野「でも…でもね」

青ピ「?」



麦野「私も…きっと、青髪君のことが大好きなんだと思う」




垣根(えんだぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!!)

一方(いやァァァああああああああああ!!!)


54 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 22:16:23.25 ID:gtPQ1TLB0

青ピ「…そうなん?」

麦野「な、なんで驚いてるの?」

青ピ「いや…てっきり返事は保留されるんちゃうかな、って思ってたから」

麦野「そ、そりゃ…少しは時間欲しいのよ」

色々考えたいこともあるし、と麦野が付け加える

麦野「…でもさ、ここまで真剣に考えてくれている人の告白を…保留なんてこと、ひどいじゃない」

青ピ「それじゃ、付き合ってくれるん?」

麦野「つ、付き合う!?」

青ピ「そういうことになるんやで?それでもええならボクは嬉しいけど」

麦野「それは…」

青ピ「…ええんやって、ボクいつまでも待つから」

麦野の手を放した青ピが、空になったジュースの缶をゴミ箱に放り投げる

カランカランという小気味いい音が響いた

青ピ「…1年でも2年でも、10年でも100年でも」

青ピ「麦野さんのこと、ずーっと好きやと思うから」

麦野「…私のどこが好きなの?」

青ピ「うーん…」



青ピ「…どこやろ」

麦野「は?」

55 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 22:20:38.48 ID:gtPQ1TLB0
青ピ「そんな具体的なこと、分からないんやけど」

麦野「じゃ、じゃあなんで私のこと好きだなんて言えるのよ…」

少しムスッとしながら麦野が尋ねる

青ピ「多分逆なんやって」

麦野「逆?」

青ピ「特別な理由もなく、どこがいいのかとかそんな細かいことも分からないけど…それでも一緒にいたいって思うのが、ボクにとっての好きなんや」

麦野「…青髪君…」

青ピ「せやから、ボクは麦野さんのことが大好きや」

麦野「…ありがと、本当に嬉しいし…なんか安心した」

青ピ「…」

そろそろ日が傾いてきたな、と青ピは空を見つめて思った

真夏の日が傾くのは遅い、おそらくすでに午後の3時近いだろうか

青ピ「…さて、そろそろ帰りましょうか」

麦野「か、帰るの!?」

青ピ「なんで驚いてるん?」

麦野「わ…私の答えとか聞かなくていいの?」

青ピ「うーん…別に聞かなくてもええかな」

麦野「…君って本当に不思議よね」

青ピ「掴みどころがないってのは自覚あるけどなぁ」

56 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 22:23:35.94 ID:gtPQ1TLB0
麦野「…ごめんね、しばらく考えたいかな」

青ピ「…分かってるって、断られなかっただけボクも安心した」

麦野「…あ、あのさ」

青ピ「?」

麦野「…キス、まだだったよね」

青ピ「そうやね、そんな関係やなかったし」

麦野「…いいよ、キスくらいなら」

青ピ「…」

じーっと青ピが麦野の唇を見つめる

見れば見るほど整った顔立ちだ

唇も、程よい潤いを持っている

青ピ(…本当なら、キスしたいんやけどね)

小さく笑ってから



青ピ「今日はええよ」

そう答える

麦野「…そっか、嫌だった?」

青ピ「…そういうんは、付き合ってからしたい主義なんや」

麦野「あれ、もしかして意外と恋愛には真面目だったりするの?」

青ピ「え、意外かな?」

麦野「かなり意外」クスクス

57 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 22:30:48.55 ID:gtPQ1TLB0
青ピ「…真面目なんやで、ボクって」

麦野「…それはなんとなく分かってる」

青ピ「さて、ボクはこっちなんやけど…麦野さんとはたしか別方向やったっけ」

麦野「送ってくれるっていう発想はないの?」

青ピ「そしたら別れるのがもっと辛くなるやん」

麦野「別に今世の別れってわけじゃないんだから…」

青ピ「あはは、それにボクなんていなくても麦野さんは大丈夫やん」

麦野「…大丈夫じゃないわよ」ボソッ

青ピ「?なんか言ったん?」

麦野「ううん、なんでもない」


蒸し暑い公園の中で、二人がくるりと別方向を見つめる

そっちに向かって歩き出すのが、少しだけ残念だ

青ピ「あ、そうやった」

麦野「?なにか忘れた?」

青ピ「そんなに大切なことやないんやけどね」

麦野のほうを見つめた青ピが、笑ってからそっと呟いた



青ピ「またな」


58 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 22:39:14.94 ID:gtPQ1TLB0

青ピ「…」

麦野と別れた青ピは、公園の入り口に向かっていた

青ピ「いつまで隠れてるつもりなん?」



垣根「へぁぁっ!?」

青ピ「ずーっとボク達のことつけてたやろ」

一方「お、お前気づいてたのかよ…」

青ピ「当たり前やんか」

垣根「麦野は気づいてなかったみたいなのに…」

青ピ「あはは、麦野さんは緊張してたんとちゃうかな」

一方「…お前は緊張してなかったのかよ」

青ピ「そんなんとちゃうって、ほんならな」

テクテク、と青ピは歩いていく


青ピ「…」

少し蒸し暑いが、いい天気だなと彼は思っていた

青ピ(…あぁ、そっか)

自分の心が晴れ晴れとしているからなのか、と


59 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 23:01:25.28 ID:gtPQ1TLB0



フレンダ「おかえり麦野…!?」

家に帰りついた麦野を見て、一同は驚愕した

麦野「たっだいまー…」

浜面「ど、どうしたんだよその服!?」

麦野「ん?あぁ、これは…」

絹旗「お、男に濡らされたんですか!?」カァッ

麦野「…はぁ?」

ゴーグル「麦野さん…いきなりそれは、さすがに段階を踏まないと…」

フレンダ「きーっ!私の麦野が盗られたわけよ!!」

麦野「だ、誰がアンタのよ!?それに青髪君のせいじゃなくて…」

滝壺「…自分から濡れるなんて、むぎのったら大胆」

麦野「なんでそうなんだよ…」

絹旗「…む、麦野!!どうでしたか、大人の時間は!?」

麦野「だ、だから違うんだってば!!」

フレンダ「わ、私もいつかゴーグルと…」ポーッ

ゴーグル「…なんか女性って怖いっす」

浜面「あ、それは同感だな」

麦野「あぁもう!!違うってのに!!!」

麦野が頭を抱え、大声で叫ぶ




麦野「不幸だぁぁぁぁ!!!!」


60 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/11(水) 23:05:16.28 ID:gtPQ1TLB0
今日はここまで

麦野達はあくまでサブキャラなので、短く進めました

というか青髪をリア充にするのが嫌なだけだったりもするのですが



明日、明後日はあんまり投下はないです

おそらくフレンダとゴーグルの話でしょうか


では
61 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 14:55:02.97 ID:/vaXW4fB0

フレンダ「…ねぇ、ゴーグル」

ゴーグル「なんすか?」

アイテムの家

そのリビングで、ふとフレンダがゴーグル男に声をかけた


フレンダ「そのゴーグルってさ…いつまで着けてるつもり?」

ゴーグル「?」

フレンダ「普段から結構つけてるけど…どうして?」

ゴーグル「いやまぁ…体の一部みたいなもんですし」

フレンダ「…昔からずーっと着けてるの?」

ゴーグル「スクールに入ってから…えーっと、仕事の時はずっと」

フレンダ「あのさぁ…」

ゴーグル「はい」



フレンダ「ぶっちゃけ、そのゴーグルってダサい訳よ」

ゴーグル「」



ゴーグル男の災難編


62 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 16:06:36.85 ID:/vaXW4fB0
フレンダ「…なんかさ、ぱっと見て意味が理解できるものじゃないし…それにデザインもなんか土星の輪っかみたいだし」

ゴーグル「…そ、そんなこと…」

フレンダ「…ぶっちゃけ、ゴーグルの中でも余分な部分な訳よ、ゴーグルって」

ゴーグル「…それじゃ、俺の名前は…」

フレンダ「あ、そのためにだけはなってた訳よ」

ゴーグル「…名前のためだけ…」

ゴーグル男は肩を落とす

そりゃたしかに、彼だって自分の着けているゴーグルをかっこよすぎるとは思わない

しかし、長年着けているこのゴーグルには愛着が湧いている

ゴーグル「…俺はこのゴーグル好きなんですけどね…」

フレンダ「…あのさ、たまには違うゴーグルとかサングラスとか、掛けてみたら?」

ゴーグル「…サングラスですか…?」

ゴーグル男とフレンダが、彼のサングラス姿を想像する



ゴーグル「ぶっはwww」

フレンダ「似合わない!!絶対似合わない訳よwwww」

ゴーグル「自分で言うのもなんすけど、気持ち悪くなりそうっすwww」

フレンダ「まぁ元からおかしいけどね」

ゴーグル「おい」

63 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 16:28:03.67 ID:/vaXW4fB0


ゴーグル「…ったく、フレンダさんはなんも分かってないっす…」

まだ暑さの残る夏の道

ミンミンと鳴く蝉を鬱陶しがりながら、ゴーグル男は歩いていた

ちなみに彼にしては珍しく、一人でだ

ゴーグル(…そりゃ…たしかに、結構重いし…鬱陶しいこともありますよ)

頭に着けたゴーグルを見つめながら、ゴーグル男は考えた

ゴーグル(…でも、これは俺にとっては大事なものですし…)

ゴーグル(そ、それにいっつも帽子被ってるフレンダさんも同じようなもんですよね!!)

無理やりな解釈で、どうにか自分のゴーグルを正当化する





「ねぇねぇ、見て見て!!あのお兄ちゃん、変な輪っか着けてる!!」

「ホントだー、変なの」



ゴーグル(あぁぁ!!やっと自分のゴーグルに自信を持ったところだったのにぃ!!)

子供の冷たい一言で、彼は自信を再び無くす

そういえば、今までも街中を歩くとチラチラ見られていた気がする

64 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 16:31:16.62 ID:/vaXW4fB0
ゴーグル「…はぁ…なんなんすか、この常にアウェーな感じは…」ガックリ



心理「なに肩落としてるのよ」

ゴーグル「ふぇぇぁっ!?」

心理「…なんでそんなに驚いてるの?」

ゴーグル「あービックリした…心理定規さんじゃないっすか」

心理「…こんにちは、こんな暑いのに何してるの?」

ゴーグル「あ、あぁ…散歩ですよ、心理定規さんは?」

心理「ちょっと買い物をね」

ゴーグル「買い物?」

ゴーグル男が心理定規をじっと見つめる

だが、彼女の手にはまだ買い物袋がない

つまり、まだ買い物はしていないのだろうか

ゴーグル「で、でも垣根さんと一緒じゃないなんて珍しいですね」

心理「あぁ、垣根なら今部活なのよ」

ゴーグル(ぶ、部活?あの垣根さんが?)

心理「…それより、ちょっと時間ない?」

ゴーグル「あ、あぁ…ありますけど」

心理「よかった」

ゴーグル「?」

65 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 16:36:45.86 ID:/vaXW4fB0
心理「ついでだから、私の買い物についてきてくれない?」

ゴーグル「は、はぁ…」

心理「ちょっと荷物持ちが欲しかったのよね」

ゴーグル「…なんか、心理定規さんってたくましくなりましたよね…」

心理「あらそう?」

ゴーグル「…昔はもっとおしとやかだったのに…」ハァ

心理「…今だっておしとやかじゃない」

ゴーグル「いや、まぁそうなんですけど…」

心理「ほらほら、文句言わないでついてきてよ」

手をヒラヒラとさせてから、心理定規が先に歩き出す

ゴーグル(…仕草も垣根さんに似てきましたし…)

心理「ちょっと…荷物持ちはイヤだったのかしら」

ゴーグル「あぁいや…でもそれを喜ぶ人ってほとんどいないっすよ?」

心理「…それもそうね」

ゴーグル「…ヒマだったからいいですけどね…」

心理「ありがと…そういえば、フレンダは?」

ゴーグル「あー…今は一緒じゃないっすよ」

心理「珍しいわね」


66 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 16:41:46.97 ID:/vaXW4fB0
ゴーグル「そうっすか?」

心理「もしかして…喧嘩とかしたの?」

ゴーグル「そんなんじゃなくて…このゴーグルのこと、馬鹿にされたんすよ」

心理「あら、そうなの?」

ゴーグル「デザインがダサいって…」

心理「…」

心理定規が、しばしゴーグルを見つめる

心理「まぁたしかに…オシャレとは程遠いけど」

ゴーグル「そ、そんな自覚くらいはありますよ…」

心理「…そうだ、なんなら私が荷物持ちしてくれるお礼に何か買うわよ」

ゴーグル「え、でもなんか悪いっすよ」

心理「…フレンダにヤキモチ妬かれちゃうから?」クスクス

ゴーグル「そ、そんなんじゃないっす!」

心理「じゃあいいじゃない、とびっきりカッコイイ頭に着けるものを買ってあげるから」

ゴーグル「鍋とかっすか?」

心理「あなたってそういう趣味だったのね」

ゴーグル「すいません、違いますから許してください」

67 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/12(木) 16:50:23.76 ID:/vaXW4fB0

心理「…それにしても…本当にあなたってそのゴーグル着けてないと見分けつかないわよね」

ゴーグル「…ひ、ひどいっすよ…」

心理「ちょっとだけ上条君に髪型似てるし…」

ゴーグル「…特徴ないからこれ着けてるんですよ…」

心理「…でも、しっかりオシャレしたら結構カッコイイと思うんだけど」

ゴーグル「いいですよオシャレとか…大体、間近に信じられないほどのイケメンがいますから」

心理「垣根?」

ゴーグル「垣根さんっす」

心理「…はぁ、あなたってつくづく大変よね…オシャレな人は他にいるし、キャラは他の人が濃いし…」

ゴーグル「…正直、自分の影の薄さには気づいてますよ…」

心理「…災難よね、それって」

ゴーグル「災難ですよ…」



上条「ふっふふーん、ふっふふーん、ふっふっふーん…ってあれ、心理さんとゴーグルじゃないか」

心理「あら、こんにちは」

ゴーグル「お久しぶりっす」

上条「久しぶり」


68 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/13(金) 17:06:30.64 ID:QEqyJDqz0
ゴーグル「…あの、上条さんも一人ですか?」

上条「そうなんだよ…美琴は今垣根と部活だからさ…」

ゴーグル「?御坂美琴さんって…たしか常盤台中学じゃなかったですか?」

心理「あぁ、垣根が無理やり部活に引き入れたのよ」

ゴーグル「な、なんすかそれ」

上条「おかげでヒマなんだよな…」

ゴーグル(…!も、もしかしてこれはチャンスなんじゃ!?)

ゴーグル「じゃあ、俺達と一緒に買い物行きませんか?」

上条「買い物?」

心理「えぇ、ゴーグル君のゴーグル代わりになるものを探すのよ」

上条「…なんかややこしいな」

ゴーグル「…俺一人じゃ荷物持ちはきついっす…」

上条「あぁ、心理さんが買い物するのか」

心理「レディとしては、出来る限りオシャレに気を遣いたいのよ」

上条「美琴もおんなじこと言ってたな」

心理「あら、そう」

69 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/13(金) 23:22:04.29 ID:QEqyJDqz0
ゴーグル「…お願いしますよ上条さん」

上条「まぁいいけど…せっかくのデート、邪魔していいのか?」

ゴーグル「そ、そんなんじゃないっすよ」アタフタ

心理「そんなに否定されると傷つくわよ」

ゴーグル「え、あ、いや!!心理定規さんと買い物できるのは嬉しいっすよ!!」

心理「フレンダが聞いたらなんて言うか」

ゴーグル「う…」

上条「まぁいいや…さっさと買い物終わらせようぜ」

心理「えぇ」

ゴーグル「…そうっすね」



珍しい組み合わせの三人は、ショッピングモールへと向かった

ゴーグル男の頭に着いたゴーグルを見て、やはり人々は好奇の視線を投げかける

ゴーグル(い、今まで意識してなかったけど…こりゃたしかに注目されてますね…)

ゴーグル(…恥ずかしいようなイラつくような…)



心理「さて、着いたことですし…最初はあなたのゴーグル代わりのものから買いましょうか」

ゴーグル「お、俺のですか?」

70 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/13(金) 23:32:53.64 ID:QEqyJDqz0
上条「…そういえば、そのゴーグルってそんなに大事なのか?」

ゴーグル「大事というか…体の一部っす」

心理「…でも、そんなのずっと着けてると体に負担が掛かるわよ」

ゴーグル「…え?」

心理「首や肩に重さが掛かれば、自然と神経が悪くなるわ…それに無理に重さを支えようと前傾姿勢になれば腰にも負担が掛かるもの」

上条(な、なんだか難しい話だ)

心理「…それ、普段から着けてるの?」

ゴーグル「…家にいる時とかは…まぁ、半々くらいですかね」

上条「い、家で着けてるのか!?」

ゴーグル「…ま、まぁ」

上条「…ちょっと貸してくれよ」

上条が手を差し出す

ゴーグル「どうぞ」

上条「…」



上条「って重い!!これめちゃくちゃ重いから!!!!」

心理「…金属製ですもの」

ゴーグル「…そういや、たしかに外してるときは首が楽ですね」

上条「こんなの着けてたら本当に体悪くするぞ!!」

ゴーグル「え、えへへ…そうっすかね?」

上条「褒めてないからな!!」


71 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/14(土) 09:01:27.65 ID:sjIvHvhu0
ゴーグル「・・・それにしても、サングラスやらネックレスやらニット帽やら・・・かなり揃ってますね」

心理定規の指定した店に入ってすぐ、ゴーグル男は感嘆の声を上げた

心理「当たり前じゃない、私が選んだ店なんだから」

上条「どこからその自信はくるんだ・・・」

心理「あら・・・上条君ったら冷たいのね」

上条「い、いや・・・冷たくしてるつもりは」

心理「・・・あなたに冷たくされると、少し悲しいわ」

上条「は、はいぃ!?」

心理「嘘よ、あんまり真に受けないで」

上条「・・・心理さん、最近辛辣だよな」

心理「あら・・・じゃあ、優しくしてあげましょうか?」

ずいっ、と心理定規が上条に迫る

上条「あ、いや!結構です!」

心理「もう、本当は優しくしてほしいんじゃないの?」

上条「あぁもう!ゴーグル、助けてくれ・・・」


ゴーグル「・・・ニット帽ってなんか頭締め付けすぎですよね」

上条「試着してるぅぅ!」



72 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/14(土) 09:02:00.01 ID:sjIvHvhu0
心理「へぇ・・・普通にオシャレな男の子みたいよ」

ゴーグル「お、男の子って・・・」

ニット帽を脱ぎながら、ゴーグル男がため息をつく

心理定規より彼のほうが年上なのだが、なぜか「男の子」呼ばわりだ

ゴーグル「・・・で、似合ってましたか?」

心理「そうね・・・普段のあなたに見慣れてるから少し違和感はあったけど」

上条「でも、そんなのすぐに無くなるし・・・」

心理「・・・よくよく考えたら、素材はいいんだから必要なのはコーディネーターよね」

ゴーグル「は・・・はい?」

心理「分かった、私がフレンダをあっと言わせるような服を選んであげるから」

ゴーグル「な、なんでそんな流れになるんですか!?」

心理「やっぱり・・・フレンダは優しい男に弱そうだから・・・」

上条「あ、こういうふわふわしたニット帽とか似合いそう」

心理「こっちにはシュワちゃんが掛けてるみたいなサングラスが」

ゴーグル「・・・」

なぜだろう

二人がジリジリと歩み寄ってくる

あぁ、と彼は笑った

これが着せ替え人形の気持ちなのか、と


73 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/14(土) 21:13:53.02 ID:sjIvHvhu0

ゴーグル「…」

心理「そうだ、こっちのシャツなんかも似合いそうね」

上条「えー、こっちのひげメガネは?」

心理「ふふ…ならこのマフラーは…」

ゴーグル「あの」

上条「ん?どうした、ゴーグル」

ゴーグル「…俺、帰っていいですか」

上条「え…なんで?」

ゴーグル「なんで?じゃないっすよ!!おかしいでしょ、俺は今日ゴーグルの代わりになるものを買ってもらうためにここに来たんです!!」

心理「だから今選んでるじゃない」

ゴーグル「どう考えても遊んでるでしょ…」

心理「はぁ…分かったわ、ならこのニット帽でいいんじゃないの?」ハァ

ゴーグル(うっわーやる気ねー)

上条「…そういえば、心理さんは何買いに来たんだ?」

心理「そうね…とりあえずTシャツと」

上条・ゴーグル「ティ…Tシャツぅ!?」

心理「?」

74 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/14(土) 21:24:06.07 ID:sjIvHvhu0
上条「心理さんって、Tシャツとか着るのか…」

ゴーグル「も、ももももしかしてその下には何も着ないとか!?」

心理「は…はぁ?」

ゴーグル「あ、あれっすよ…裸ワイシャツのTシャツ版ですよ!!」

上条「あぁ!!それ、たしかに心理さんはやってそうだな!!」

心理「…そんなことして何になるのよ?」

ゴーグル「垣根さんを誘ったり」

心理「…あのね、私だって家の中でずーっとドレスじゃないのよ?寝る時はドレスじゃなくてネグリジェ着たりもするし」

上条「心理さんがネグリジェ…」ゴクリ

ゴーグル「…なんか、途轍もなく似合いそうですね」

心理「…いいから、Tシャツ一緒に見てくれない?一人って思われるのは嫌だから」

上条「あ、あぁ…いいけど」

ゴーグル「…あの、出来る限り早く選んでくださいね」

心理「分かったから、早く行きましょう」

上条(…絶対時間掛かるよな…)

ゴーグル(フレンダさんもかなり時間掛けますからね…女性の買い物は長いっす)

75 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/14(土) 23:00:00.70 ID:sjIvHvhu0
中耳炎になってしまって体がだるいので、しばらく更新が遅くなります

申し訳ない

今日はここらへんで


では

みなさんも体調には気を付けて

76 :kou [sage]:2012/04/14(土) 23:36:58.50 ID:v/vpAaEv0
乙です  ゆっくり治してください(^v^) 楽しみにまってます
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/15(日) 00:48:04.42 ID:nRw0h2QC0


無理せずにどうぞ
78 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 10:32:38.46 ID:faudMQbW0
心理「これとこれとこれと・・・あとそっちのも買いたいわね」

上条「・・・」

ゴーグル「・・・」

心理定規が指定した店に来てすぐ、男二人は口をあんぐりと開けていた

心理「あら、どうしたのよ」

上条「あの・・・心理さんは、ここに来る前からどんな服を買いたいか決めていたわけで?」

心理「大体わね・・・たとえばこのTシャツ、ちょっと胸元が開いててセクシーでしょ?」

ゴーグル「で、でもよくこれがここにあるって知ってましたね」

心理「?知らなかったけど」

ゴーグル「じゃ・・・じゃ、もしかして今見ただけで買うって決めたんすか!?」

心理「えぇ」

上条「おかしいから!ほら、試着したりとか値段を見たりとか・・・」

心理「あなたと違ってある程度お金はあるのよ」

上条「ぐはぁ!胸に突き刺さる言葉だなぁ!」

ゴーグル「・・・胸元が開いたTシャツを買いたかったんすか」

心理「えぇ、あとこっちのジーパンはデザインが好き」

上条「こ、このミニスカは・・・」



79 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 10:33:09.20 ID:faudMQbW0
心理「垣根に着て見せたいから」

上条「ま、まさか見せたいだけ!?」

心理「垣根がね・・・私、ミニスカも似合うんじゃないかって言うから」

少し顔を赤らめながら、心理定規が言う

上条(に、似合うだろうけどさ・・・)

ゴーグル(心理定規さんって歳相応の服装は普段しないですからね・・・)

心理「・・・あ、ついでに今ミニスカ着てみましょうか?」

上条「な、なんでこれは試着するんだ?」

心理「あら・・・あなた達にも見せてあげようかって」

ゴーグル「・・・ぜ、是非」

上条「えぇ!?ゴーグル、お前心理さんの生足が見たいだけだろ!」

ゴーグル「だ、だってこんなチャンスほとんどないっすよ!?」

上条「そうだけど・・・」

心理「垣根に見せる前に、あなた達に似合ってるか判断してほしいし」

上条「・・・まぁ、それくらいなら」


80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/04/15(日) 19:29:56.44 ID:EUm6Ladqo
二人とも彼女居るくせに心理定規のミニスカ見姿るとかうらyけしからん
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 19:56:13.00 ID:RO09ZBIDO
>>1乙である。
82 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 22:14:42.60 ID:faudMQbW0

上条「…」

ゴーグル「…」

今更ながら、自分たちは何をしているのか

上条には美琴という、愛している女性がいる

彼女のことが大好きで、本当に心から愛していると豪語できる

ゴーグル男も、最近やっと自分の気持ちに気づいてきた

フレンダという女性を誰よりも愛しているのは自分だ

そして、それをとても嬉しく思っている

二人とも、心に決めた女性がいる


のに


上条(…なんでだろう、心理さんのミニスカが見られるってだけで少しばかり胸が高鳴るんですけど)

ゴーグル(…フレンダさんにはない色気がありますからね)

試着室の前で罪悪感半分、期待半分で二人は待っていた


心理「ねぇ、あんまり似合ってないと思うけど…笑わないでね?」

そんな声が試着室の中から聞こえる

上条「い、いやいや!!心理さんだったらなんでも一通り着こなせるだろ!!」

ゴーグル「そ、そうっすよ!!」


83 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 22:18:04.46 ID:faudMQbW0
心理「…でも、本当になんか微妙なのよね」

上条「そ、そうなのか?」

心理「…やっぱりやめようかしら」

上条「えぇぇぇ!?じゃあ待ってた俺達の時間はどうなるの!?」

ゴーグル「そうですよぉ!!」

心理「…あ、もしかして期待してたのかしら」

上条「そ、そんなんじゃないけどさ…」

心理「…まぁ、たしかに人から見てもらわないと評価はできないし」

バン、と試着室のドアが開けられる

聊か乱暴なのは照れ隠しだろうか


心理「ど…どうかしら」カァッ

上条「」

ゴーグル「」



上条(…あぁ、なんなんだろうこの謎の感動は)

ゴーグル(そういえば…フレンダさんとのデートの買い物では、こういう風なイベントはありませんでした…)

上条(じゃーん、似合う似合う!?みたいなことは聞かれるけど…こ、これ似合ってるかな…?なんて不安そうな目で見てくるという素敵イベントはなかった!)

ゴーグル(でも、心理定規さんはこう…恥じらいがありますね)

心理「なにジロジロ見てるのよ…そんなに似合ってない?」

84 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 22:22:04.61 ID:faudMQbW0
上条「い、いや!!なんかめちゃくちゃいいと思う!!」

ゴーグル「心理定規さんって、白いミニスカとか似合うんですね…いっつも赤とかのドレス着てたから知りませんでした」

心理「…そうかしら、ちょっと肌と色が近いから派手さがないわよね…」

裾をピラピラとさせながら、心理定規が顔をしかめる

上条「わぁぁ!!裾をそんなにピラピラさせたら見えますから!!」

心理「?あぁ、もしかしてミニスカの中が見えるのを危惧してるの?」

ゴーグル「あ、当たり前じゃないっすか!!」

心理「へぇ…一応エチケットは弁えてるのね」クスクス

上条「し、心臓に悪いからやめて…」

心理「でも大丈夫、中には黒のスパッツ履いてるし」ピラッ

上条・ゴーグル「わざわざめくって見せるなぁ!!!」

心理(初心ねこの子達)



上条「…はぁ、まぁ似合ってるんだし買ったらどうだ?」

心理「そんなに言われたら買うしかないわね」

ミニスカをカゴに放り込んだ心理定規は、また服を吟味し始める

心理「…このキャミソールとかもいいわね」

ゴーグル「…あ、あの」

心理「?どうかした?」

85 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 22:24:56.39 ID:faudMQbW0
ゴーグル「なんか…今日の心理さん、いつもと違う服装を選びたがってますけど…なんでっすか?」

心理「あぁ、それは垣根がね…」



垣根「お前、いっつも外出る時ドレスしか着てないけどさ」

垣根「ニックネームドレスの少女とかになるぜ、そのうち」

垣根「本名もないし、多分お前のエッセイとか出たらそうなるな」

垣根「あれ、エッセイって自分で書くからそういうことはないのか」



心理「って言ったから…」

上条「あぁ…つまり、外出する時の服が欲しいのか」

心理「まぁ、そういうことよ」

ゴーグル「…で、でもこのキャミソールは…」

ゴーグル男はなぜか乗り気ではない

心理「?あんまりあなたはこういうの、好きじゃないの?」

ゴーグル「いえ、これフレンダさんが前にいいなって言ってたから…」

心理「…」

上条「…」



上条・心理「一途だ」

ゴーグル「な、何がっすか!?」

86 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/15(日) 22:29:17.24 ID:faudMQbW0
上条「…俺の好きな人が選んだ服は、他の誰にも着せられない!!」

心理「あぁ、それはヒロインだけが着ることを許された衣装なのだから…」

ゴーグル「…それに、このキャミソール…胸が開きすぎっす」

上条「…じゃあ心理さんはこっちのワイシャツとかかな」

心理「あら…また白いのね」

上条「心理さんってあんまり黒は合いそうじゃないからな」

心理「あら、黒の網タイツとか似合うって垣根は言ってくれたけど」

上条「ぶふぉぁっ!?」

心理「な、なに噴出してるのよ…」

ゴーグル「垣根さんの前ではそんな格好してるんすか!?」

心理「たまに、ね」

上条(いいなぁ!!俺も美琴に網タイツ履かせたい!!!)

ゴーグル(…垣根さん、あなたが羨ましいっす…)

心理「まぁいいわ…ワイシャツなら普段から着られそうだし」

上条「…試着の間、また俺達は待っておくのか」

心理「あら、それがあなた達の役目じゃない」

ゴーグル「そ、そうっすけど…」



心理「それに、女性の着替えの間も楽しめないようじゃ男として失格よ」

バタン、と試着室のドアが閉められる

理不尽だな、と二人は思った
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 00:18:05.32 ID:yjjxqdUvo
この3人組楽しいなwwww
88 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:06:15.05 ID:xB0o7Wxv0


上条「・・・なぁ」

ふと、上条がゴーグル男に呼び掛ける

ゴーグル「なんすか?」

上条「・・・冷静に考えたら、なんで俺達はこんなことしてるんだろうな」

ゴーグル「・・・まぁ・・・心理定規さんのワイシャツ姿が見たいからですかね」

上条「・・・完全に変態だよな、俺達」

ゴーグル「・・・年下の女性にワイシャツ着せて喜んでるんですからね」

上条「・・・でも美琴はワイシャツも似合いそうだな・・・」

ゴーグル(あ、この人割とマジだ)

上条「なぁ、ゴーグルはワイシャツとかぐってくるタイプか?」

ゴーグル「俺は・・・どっちかと言えばTシャツ派ですかね」

上条「へぇ・・・」

ゴーグル「下は何も着てないで、Tシャツだけとかいいですよね」

上条「裸Tシャツか・・・でもさ、やっぱりワイシャツのほうがよくないか?」

ゴーグル「ボタンとボタンの間から肌は見えますからね」

上条「だよな!」

ゴーグル「でもワイシャツはこう・・・なんかちょっと体のラインが見えにくいですよ」



89 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:06:52.80 ID:xB0o7Wxv0
上条「そ、そうかな」

ゴーグル「Tシャツならある程度ラインも見えて・・・」




心理「・・・あなた達って、ムッツリだったのね」

上条「どわぁ!?いつ着替え終わってたんですか!?」

心理「・・・あなたとゴーグル君がTシャツ派かワイシャツ派かを言いはじめた辺りかしら」

ゴーグル「わ、わりと最初じゃないっすか」

心理「はぁ・・・あなた達に判断してもらっていいのか疑問になってきたわ」

呆れたような顔をする心理定規

彼女は今、ワイシャツを着ている

上条「へぇ・・・心理さんが着てるとどこかのキャリアウーマンみたいだな」

心理「あら、眼鏡とか掛けてみましょうか?」

ゴーグル「・・・でも、しっかりボタン留めてますね」

心理「・・・残念ね、下にはちゃんと履いてます」

ゴーグル「そ、それはまた別の話ですから」

心理「・・・で、どうかしら」

上条「かなり似合ってるな・・・なんか、色気溢れてるし」

心理「・・・そう、ありがと」


90 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:07:19.13 ID:xB0o7Wxv0
上条「心理さんってさ、絶対何着ても似合うだろ」

心理「へぇ・・・そんなに言ってくれるなんて嬉しいわね」

ずいっ、と心理定規が上条に顔を近付ける

ほのかに香ってくる香水の匂いにドキリとしてしまう

上条「な、なんですか!?」

心理「優しい男は大好きよ、私」

上条「はぁ!?」

ゴーグル「上条さん・・・あなたってそうやって女性に付け入るんですか」

上条「違う違う!」

心理「ねぇ、あなたはどんな服が私に似合うと思う?」

上条「なんで俺に聞くんだよ・・・」

心理「あなた、一応垣根と同世代じゃない」

上条「垣根とはかなり好み違いそうだけどな・・・」

心理「いいから」

上条「じゃあ・・・」

上条が辺りをくるりと見回す

美琴に着せてみたい服を、この際指定してみるのもありだろうか



91 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:08:02.86 ID:xB0o7Wxv0
上条「このパーカーは?」

心理「パーカー?」

ゴーグル「グレーのパーカーっすね・・・ちょっと生地が柔らかそうな」

心理「へぇ・・・あなたってもしかして、女の子がパーカー着てるのにぐってくるの?」

上条「そういうんじゃないけどさ・・・美琴が着たら似合いそうだなって」

心理「あら、本当に美琴大好きなのね」

上条「そりゃ・・・」

心理「・・・私もパーカーなんて着たことないし・・・試しに着てみましょうかしら」

ゴーグル「・・・パーカーって似合う人と似合わない人がいますよね」

心理「あ、ついでにこっちのグレーのミニスカと合わせてみましょ」

上条「ミ、ミニスカとパーカーの組み合わせはまずくないか!?」

心理「?」

上条「た・・・漂うエロスがあるじゃないか!」

心理「あなたってもしかして・・・エツァリ君と同じくらい変態なの?」

上条「あ、それは普通に傷ついた」

ゴーグル「・・・心理定規さん、早く着て下さいよ」

心理「あなたも・・・そんなに楽しみ?」

ゴーグル「早く帰りたいっす」

心理「・・・」

一瞬頭に青筋を浮かべてから、心理定規は試着室に入った


92 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:08:31.29 ID:xB0o7Wxv0
上条「・・・あのな、ゴーグル」

ゴーグル「はい」

上条「女性との買い物の時に早く帰りたいは・・・その、禁物だぞ」

ゴーグル「え」




心理「・・・どうかしら?」

少しばかりオーバーサイズのパーカーを着た心理定規

ブカブカの袖に、手が半分ほど隠れている

パーカーの丈によってミニスカも半分ほど隠れていた

さらに、なぜか彼女はフードまで律儀に被っていた

美しい金髪がその中から少しだけ見えている

上条(やばい・・・なんかどこかの女優さんみたいだ!)

ゴーグル「・・・すっげぇ・・・」

心理「何がすごいのよ」

ゴーグル「前々から綺麗だとは思ってましたけどここまでとは」

心理「・・・じゃ、これも買いましょうか」

カゴにパーカーを突っ込む心理定規

いきなり脱がれて二人は一瞬焦ったが、中には着てきたドレスがあった

上条(・・・っていうかドレスの上からパーカー着るか?)



93 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:08:58.80 ID:xB0o7Wxv0
ゴーグル「あの、他に何か買うんですか?」

心理「いいえ、さすがにこれ以上はないわね」

上条「はぁ・・・でもかなり買うんじゃないか」

心理「カードで払うから大丈夫よ」

上条(さすが金持ち)




心理「さて・・・ゴーグル君には荷物持ち、お願いするわね」

ゴーグル「やっぱりそうですよね・・・」

心理「代わりに何か奢るわ、何食べる?」

ゴーグル「え、いいんですか?」

心理「ついでに上条君も」

上条「じゃ・・・じゃ、ハンバーガーでいいかな」

心理「・・・そんなのでいいの?」

上条「う・・・だってさ!いくら金持ちとはいえ年下の女の子に大金出させるわけにはいかないだろ!」

心理「はぁ・・・あなたって本当にモテそうね」

上条「な、なんですかいきなり」

心理「でもハンバーガーなんてやめなさい、カロリー高いから」

ゴーグル「・・・心理定規さんは自分が食べたくないだけじゃ・・・」


94 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:09:36.46 ID:xB0o7Wxv0
心理「当たり前でしょ、レディに高いカロリーは禁物なんだから」

上条「美琴はあんまり気にしてないけどな」

心理「それはあの子が特殊なの・・・」

羨ましいくらいよ、と吐き捨ててから心理定規がショッピングモールのマップを見る

心理「・・・ここのレストランとかどうかしら」

ゴーグル「・・・イタリアン・・・」

上条「・・・イタリアン・・・」

心理「あら、もしかしてイタリアンは口に合わない?」

上条「口に合わないとかじゃなくて・・・なんか緊張するんだよな」

ゴーグル「しかもこの店、たしか結構高いんじゃ・・・」

心理「あら、たまに垣根と来るしそれほどでも」

上条・ゴーグル「それほどだよ!」



上条「・・・はぁ、何食べよう」

心理「エツァリ君なら女体盛りとか言いそうね」

上条「言いそうだな・・・」

ゴーグル「女体盛りってなんすか?」

心理「あなたはまだ知らなくていいわ・・・それで、何にする?」

上条「・・・とりあえず、涼しくなれるものかな」

心理「あら、じゃあ」

ピッ、とマップのある場所を指差す

心理「蕎麦屋とかどう?」

95 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:14:06.39 ID:xB0o7Wxv0


上条「…なんかさ…ショッピングモールの中にあるとは思えない雰囲気だよな」

蕎麦屋に入ってすぐ、上条は呆れ半分だった

どう考えてもショッピングモールの中にあるとは思えない、高級感溢れる店内

学生が通うショッピングモールと、かなり違う世界といった感じがする

心理「…へぇ、全座敷が畳なんていいじゃない」

ゴーグル「…っていうか…なんで店の中に池があるんですか」

心理「あら、蕎麦屋ってそんなものよ」

上条(違うだろ…)

心理「…へぇ、メニューも綺麗だし…いいじゃない、中々」

上条「あれ、心理さんもここは初めてなのか?」

心理「なに?私との初があって嬉しかった?」

上条「あ、いや…」

ゴーグル「…なんか慣れてる感じでしたから」

心理「いちいち店に入ってリアクションなんてしてられないわよ」

そう言いながら、心理定規は店員に人数を伝えに行く

心理「ほら二人とも、こっちだって」

上条「あ、は、はい…」

ゴーグル(…俺達ってなんか情けねぇ…)

96 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:17:34.82 ID:xB0o7Wxv0

心理「私はざる蕎麦でいいわ」

上条「…俺は月見蕎麦かな」

ゴーグル「この時期にこれまた熱いのを…」

上条「え…だって蕎麦って言ったら月見だろ」

ゴーグル「俺は天ぷら蕎麦っすね」

心理「…ざる蕎麦ほど大人な蕎麦はないわよ」

上条「そ、そうか?ざる蕎麦って無難なのを選んでる気がしてならないな!」

心理「…言うじゃない、まるで私が蕎麦を初めて食べるみたいな言い方」

上条「そ、そこまでは言ってないけどさ…」

心理「ふん、いいわよ初心者で」

ゴーグル(…なんでむくれてるんですか)

上条「わ、悪かったって…」

心理「あ、おにぎりもついでに食べようかしら」

上条「カロリーが気になるんじゃなかったのかよ!?」

心理「…」



心理「…」ウルウル

上条「よし、俺もおにぎり食べようかなぁ!!」

ゴーグル「お、俺もっす!!」
97 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:23:11.62 ID:xB0o7Wxv0

上条「…今更だけど…なんか俺達って、高校生二人が女子中学生を連れまわしてるみたいな感じだよな…」

ゴーグル「そ、それを言わないでくださいよ…若干ロリコンみたいな目で見られてそうで怖いっす」

心理「実際にそうじゃない」

上条(…美琴と付き合ってるから否定できない…)

心理「…それに、私ホステスみたいな服着てるからあなた達の印象最悪よ」

ゴーグル「うわぁぁぁ!!そういやそうだ!!」

心理「…ホステス中学生を連れまわす高校生二人…」

心理「…最低な男ね」

上条「そ、それは不可抗力だろ!!それに心理さんがそんな悪趣味な服着てるのが…」

心理「…悪趣味?」ピクリ

上条「だ、だってさ…さすがにドレスって…」

心理「大人の魅力があって素敵でしょ、柄物着てる子供っぽいのよりはマシよ」フン

上条「す、拗ねないでくれよ…」

心理「…」

上条(む、無言で睨まれるのが怖い…)

心理「…あ、電話掛かってきた…」

いいタイミングで、心理定規の携帯が鳴った

エチケットなのか、しっかりマナーモードにされていた

98 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:28:20.85 ID:xB0o7Wxv0
心理「…ちょっと失礼するわね」

二人に断ってから、心理定規が小声で話し出す

上条(…こういうところは本当にしっかりしてるな…)

ゴーグル(…素敵っすね)


心理「…あ、垣根?なによ突然」

上条(…あぁ、垣根か)

心理「…今蕎麦屋に来てるの、お店で電話なんてはしたないからあんまり…え、メジャーリーグの結果?」

心理「知らないわよ、私蕎麦屋…え、株価の変動?」

心理「知らないわよ、私蕎麦屋に来て…なに?愛してる?」

心理「わ、私もよ」カァッ

上条(えぇぇぇぇ…)

ゴーグル(ねぇ…絶対にこんな会話はねぇっす!!)

心理「…そう、じゃあ熱中症に気を付けて…みんなにもよろしく」

心理「?上条君とゴーグル君がいるわ」

心理「えぇ、えぇ…伝えておくわ、それじゃあとで」

ピッ、と携帯を切る

上条「垣根だったのか」

心理「…えぇ、あとあなた達に垣根から伝言」

ゴーグル「?」



心理「心理定規に手出したらメルヘンなことになるぜ、ベイベー」

上条・ゴーグル「」

99 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:31:15.32 ID:xB0o7Wxv0

心理「…あ、みんなの分が来たわね」

上条「お、月見蕎麦月見蕎麦♪」

心理「…ざる蕎麦も美味しそうね」

ゴーグル「…天ぷらでっけぇ…」

心理「いただきます」

手を合わせて、頭を下げてから心理定規が蕎麦を食べる



なぜかフーフー、としてから


上条「…」

ゴーグル「…」

心理「…」

上条「なぁ、それってざる蕎麦…だよな」

ゴーグル「あ、熱くないんですよ、心理定規さん…」

心理「…ちょ、ちょっとだけ席立っていいかしら」

上条「?あ、あぁ…」

テクテク、と心理定規が席から離れる



心理(…)

心理(…恥ずかしい…)カァッ


100 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:35:39.57 ID:xB0o7Wxv0

上条「あ、帰ってきた」

心理「…はしたなかったわね、ごめんなさい」

ゴーグル「あ、いえ…」

心理「…いただきます」

さっきのことはなかった、と言わんばかりにもう一度最初から始める心理定規

上条「…そういえば、月見蕎麦って最初に卵をかき混ぜる人と最後までとっておく人がいるよな」

ゴーグル「それはまぁ…好みの問題なんじゃないっすか?」

心理「私は月見蕎麦だったら…最初にかき混ぜるタイプね」

上条「へぇ、じゃあ俺と一緒か」

心理「…でもあんまりかき混ぜすぎると音が鳴ってはしたないわよ」

上条「」ギクリ


上条「…」ソーッ

心理「そ、そこまで静かにかき混ぜなくてもいいんだけど…」

ゴーグル「…昔から心理定規さんって礼儀に厳しかったっすね」

心理「そうかしら」

ゴーグル「…手を洗ったあとハンカチで手を拭け、とかいっつも言われてましたもん…」

上条「それ、なんかお母さんみたいだな」

心理「それ…褒めてるの?」

上条「ま、まぁ」

101 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:39:23.58 ID:xB0o7Wxv0

心理「…そういえば…美琴と最近どう?」

上条「…まぁ、普通に仲良しだぞ」

心理「デートとかしてるの?」

上条「うーん…最近は家で二人きりとかかな」

ゴーグル「な、なんかそろそろ円熟期っていう感じっすね」

上条「…だってさ、暑いと外に出たくないだろ…」

心理「…白熊みたいね」

上条「…それに美琴がいればそれでいいんだしさ」

ゴーグル「…俺はそういうのダメっす…」

心理「あら、フレンダとずーっと一緒にいるじゃない」

ゴーグル「違いますよ…フレンダさん、暇さえあれば外に連れてけ外に連れてけってうるさいんすよ」

上条「へぇ…二人きりになった途端にせがんでくるタイプか」

ゴーグル「…おかげで俺は金が無くなる一方っす…」

はぁ、と深いため息をつく

上条「…でも、それでも好きなんじゃないのか?」

ゴーグル「…ま、まぁ」

心理「へぇ、羨ましいくらいの初々しさね」

102 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:43:33.52 ID:xB0o7Wxv0

上条「…はぁ、食べた食べた…」

心理「おにぎりも美味しかったわね」

ゴーグル「蕎麦屋のおにぎりって、なんか美味しく感じますよね」

心理「海苔が美味しいわよね」

上条「それ、よく分かるな…」

心理「…さて、じゃあまた買い物に戻りましょうか」

上条「…え、まだ買うのか…」

心理「安心して、今度は下着だから」

ゴーグル「へぇ、下着っすか」

座敷から立ち上がり、上条とゴーグル男は店の出口へと向かい…



上条・ゴーグル「はぁ!?下着ぃぃ!?」




店の支払いを済ませようとする心理定規に無理やり、自分たちの代金を渡してから数分後

心理「…たまには黒とか落ち着いてるのもいいかしら…」

上条・ゴーグル「…」

なぜか三人は、女性下着売り場にいた

103 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 14:56:36.09 ID:xB0o7Wxv0
上条「…あの、なんで俺達まで…」

心理「あ、この黒とかセクシーじゃない?」

ばっ、と心理定規が差し出したのは黒い派手な下着だった

ブラはレースで、大事な部分以外はそこそこ見えそうなものだ

パンツはというと、それはもうセクシーなんてものではなかった

絶対に恋人の前以外では着れないような代物だ

上条「…なぁ、聞いてますか?」

ゴーグル「…ま、まぁセクシーですけど…」

心理「試着してみましょうかしら」

上条「してもいいけど俺達には見せないでくれよ!!!」

心理「あら、どうして?」

ゴーグル「…それ、本気で言ってるとしたらビッチっすね」

心理「じょ、冗談よ…」

ゴーグル「…フレンダさんもなんかそういう下着着てるときありますね」

上条「…え、もうそこまで言ってるのか?」

ゴーグル「ち、違いますよ!!間違って着替えてる時に部屋に入っちゃったりとかして!!」

心理「で、そのあと脱がせたのね」

ゴーグル「んなわけねぇぇぇ!!」

104 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 15:02:13.88 ID:xB0o7Wxv0

上条「…心理さんってさ、スポーツブラとか好きじゃないのか?」

心理「…あなた、マニアックなところをついたわね」

上条「そ、そういう意味じゃなくて!!!」

心理「…でも、スポーツブラって私には似合わないと思うのよね」

ゴーグル「そういうのって、どっちかっていったらスレンダーな人が似合いますよね」

上条「心理さんは…グラマーっていうか、セクシーって感じだからな」

心理「…そうだ、美琴にこれ買ってあげなさいよ」

上条「お、男は買いにくいんですよ…」

心理「私が買ってあげるから」

これでいいでしょ、と適当なスポーツブラを心理定規が指差す

上条「は、はい…」

心理「ゴーグル君はこれ、フレンダに買ってあげなさい」

ゴーグル「こ、これって…下着なんすか?」

心理「紐下着よ、ありがたがられるから」

ゴーグル「は、はぁ…」

心理(…下着はもういいかしら、次は靴ね)

上条(絶対まだ買い物続けるつもりだ…)


105 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 15:08:46.58 ID:xB0o7Wxv0

上条「…あの、今度は靴ですか…」

ゴーグル「…もはや俺のゴーグルの代わりになるものを買うっていう建前は無くなりましたね…」

心理「…ブーツが買いたかったのよね」

上条「…一杯持ってるだろ…」

心理「はぁ…あなたってなにも分かってないわ、女性のこと」

上条「…」

心理「いい?女性っていうのは欲望の塊よ、愛する人だけでは物足りず、愛する人をずーっと縛り続ける方法を欲するの」

上条「あ、あの…それがブーツなんですか」

心理「えぇ、だから手伝って」

上条「…俺…ブーツ履いてる女の子にはぐってこないんだよな…」

心理(いや、そんなことどうでもいいんだけど…)

上条(絶対どうでもいいとか思ってるよな…)

心理「…じゃあ、どういうのがぐってくるのよ」

上条「うーん…」



上条「心理さんってさ、サンダルとか似合いそうだよな」

心理「…唐突ね、これまた」

ゴーグル「サンダルの心理定規さん…」



ゴーグル「ぶっはぁwww」

心理「…噴出さないでよ…」

106 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 15:19:24.50 ID:xB0o7Wxv0
上条「…なんか心理さんっていっつも気取ってる感じがするからさ…」

ゴーグル「あぁ、たまにはだらしない格好の心理定規さんも見てみたいっすね…」

心理「…そうね、たしかにそうかもしれないわ」

上条「…まぁ心理さんがブーツがいいって言うならいいんだけどさ…」

心理「えぇ、じゃあブーツにするわ」

上条「えぇぇぇ!?今の流れでブーツにしちゃうのか!?」

心理「…サンダルにしてほしいの?」

上条「…は、はい」

心理「じゃあ、心理定規愛してるって言ったらいいわよ」クスクス

上条「な、なんですかそれは…」

心理「本気で言うわけじゃないじゃない、いいからいいから」

上条「はぁ…心理定規愛してる」

心理「録音完了っと…」

上条「ちょっと待ってぇぇ!!!それをどうするつもりなんですか!?」

心理「美琴に送り付けるのよ」

上条「ゆ、許してください…」

心理「冗談よ…まぁ、サンダルもいいかもしれないし、二人で選んでよ」

ゴーグル「え…俺達が選ぶんですか」

心理「えぇ、可愛いのをよろしく」



上条・ゴーグル(どうすりゃいいんだ…)

107 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 15:24:02.66 ID:xB0o7Wxv0

上条「…このキャラ物とか、なんか面白そうだよな」

ゴーグル「あ、それってたしか最近中高生を中心に人気が出てるんじゃなかったですか?」

上条「へぇ…たしかにこういう、ちょっとネタっぽいのって学生に人気出たりするけどな」

ゴーグル「…でも心理定規さんって、そういうのにあんまり興味なさそうですし…」

上条「…じゃあ、こっちは?」

ゴーグル「シンプルっすね…」

上条「…でもさ、このオシャレなタイプのサンダルっていいよな」

ゴーグル「…心理定規さんって、こういうのも…なんか似合いそうじゃないっすよね」

上条「…これは?」

ゴーグル「…」


ゴーグル(…子供がよく履いてる音が鳴るサンダル…)

上条(こ、これを心理さんが履いてたら…)


上条・ゴーグル(は…ははははwww)



上条「心理さん、いいの見つかったぞ」

心理「?あら、なんか子供向けの音が鳴りそうなサンダルね」

上条「」ギクリ

心理「あら、踵の所を圧したら音がなるわね」ピュー

ゴーグル(バレた…)

心理「…」



心理「これ、人を殴るにはもってこいの形ね」

上条・ゴーグル「」


108 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 15:28:15.01 ID:xB0o7Wxv0

上条「いてて…結局自分で買うんじゃないか」

心理「あなた達がふざけたのを選ぶからよ」

ゴーグル「…それは正直申し訳なかったっす…」

心理「…あとは…なにがあるかしら」

上条「なぁ、もういいんじゃないか…?」

心理「…え…?」


上条「もう、終わりにしよう…」

心理「そんな…もう、終わりなの…?まだ始まったばかりじゃない!!」

上条「いいんだ、もう時間じゃないか…他にすることなんて、もうないんだ」

心理「でも…でも、私はまだ…!!!」

ゴーグル「あの、ミニコントするなら二人でお願いしますね」

心理「逃げないでよ、あなたに荷物持ってもらわないといけないんだから」

ゴーグル「うぅ…」

心理「…仕方ないじゃない、こんな多い荷物…私一人じゃ持てないし」

上条「あーあ…こういう時空間移動系の能力は便利…」



結標「はぁはぁ…男の子が一杯のショッピングモール…」ジーッ


心理「…」

上条「…」

ゴーグル「…」



三人(居たぁぁ…)


109 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 17:25:49.43 ID:xB0o7Wxv0

結標「はぁ…どうして男の子の短パンってあんなに私の心を掴むのかしら、まるであの裾から覗く真っ白な脚は穢れを知らない男の子たちの感情をそのまま表しているようよ」

上条(…この人…一応空間移動系の能力者だよな…)

心理(話しかけたくないわ)

ゴーグル(…グループの結標ですよね…こんなキャラだったんすか)

結標「…?あなた達、さっきからなにジロジロ見てるのよ」

心理「不審者がいると思ったらあなただったのよ」

結標「…不審者?どこにいるの?」

上条「自覚ないのか…」

結標「もしかして、私のことを言ってるの?」

ゴーグル「それ以外誰もいないでしょうに…」

結標「…あなた達、間違ってるわね…本当の不審者は男の子達に手を出すものよ、でも私は見て愛でるだけ」

上条(十分不審者だろ…)

結標「いい?これは正当な愛情なのよ、私は変態ではあっても不審者ではないわ」

心理「質の悪い人ね」

結標「ほら、邪魔だからさっさとどこか行ってくれない?」

上条「…あ、そうだ」

上条がそもそもの話しかけた目的を思い出す

上条「お願いがあるんだけどさ」

結標「お願い?」

110 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 20:55:04.85 ID:xB0o7Wxv0
上条「…この荷物、心理さんの家に運んでほしいんだけど」

結標「…何それ…」

上条の差し出した荷物を、結標がいぶかしげに見つめる

結標「…もしかして、今日買った荷物?」

心理「えぇ、そうなのよ」

上条「…でもかなり重いんだよな」

ゴーグル「だから、運んでほしいんすよ」

上条「ダメかな?」

結標「ダメ」

上条「な、なんで…」

結標「なんでって、私は今男の子達を愛でてるのよ」

上条「愛でてる…」

結標「…つまり、そういうことよ」

上条「…じゃ、じゃあなんかしたらやってくれるか?」

ゴーグル「そ、それならいいんじゃないっすか?」

結標「…誰が得するのよ」

心理「あなたが得するのよ」

結標「…たとえば?」

心理「…」



心理「この二人が短パンを…」

結標「却下」

111 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 21:36:10.83 ID:xB0o7Wxv0
上条「…心理さん…」

ゴーグル「あなたって人は…」

心理「ちっ…じゃあなんだったらいいのよ」

結標「…そうね、私はお金にも困っていないし…正直、あなた達の荷物を運ぶ義理もないのよね」

心理「…そうね、じゃあ…」

心理定規が能力を使用する

しかし、それは結標相手ではない


道行く男の子達との距離単位を操作したのだ

距離単位は5、子供と親の距離


「あ、あれ?」

心理「ねぇ坊や、ちょっとこっちにおいで」

「う、うん」

不思議そうな顔をしながら、男の子はやってくる

結標「ふ、ふぉぉぉ!?」

心理(…私の能力を使えば、この子をあなたに懐かせることもできるわ)

結標(で、でも私はあくまで見守る…)

心理(…じゃあいいわ、私がこの男の子とあなたの距離をどんどん広げて…)

結標(そ、それはダメよ!!)

心理(じゃあ…いいかしら、荷物運び)

結標(…分かったわよ)
112 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 21:42:50.19 ID:xB0o7Wxv0
上条「心理さん…」

ゴーグル「あなたって人は…」

心理「…じゃあ、どうすればいいのよ」

結標「私、お金にも困ってないし…正直、あなた達に手助けする義理はないのよ」

上条「そこをなんとか…な?」

結標「な、なによ…あなたに言われても関係ないわよ」ドキッ

上条「だ、駄目か?」

結標「う…」

心理(あ、これもうひと押しなんじゃない?)

ゴーグル(上条さん…さすがっす)

上条「頼む!!アンタにしか頼めないんだ!!!」

結標「そ、そんなこと言われても…」

上条「な、頼む!!」

両手を合わせ、上条が結標に頼み込む

結標「…し…仕方ないわね、あなたには一度助けてもらったことがあるし…」

上条「ほ、本当か!?」

結標「まぁ…一度だけだから」

結標が商品袋を見つめる

すると、一瞬でそれが宙へと消えた

113 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 21:57:23.45 ID:xB0o7Wxv0
あれ、なんか変になった


上条「お、おぉ!!」

結標「…ちゃんとあなた達の家に送ってたから」

心理「…そういえば、どうしてあなた私達の家を知ってるの?」

結標「あら、小萌の知り合いだからよ」

上条「あぁ、そういえばそうだったな」

ゴーグル「…さて、荷物持ちは必要なくなりましたね」

結標「…私はもういいかしら」

上条「ありがとな、結標」

結標「な…あ、あなたに感謝されたくてやったわけじゃないんだから!!」

ふん!と言ってから結標は空間移動で宙へと消えた

上条「…あれ、結標ってツンデレだったのか?」

ゴーグル「…知らないっす」コソコソ

心理「ちょっと待ちなさい」

ゴーグル「は、はい?」

心理「どうして、逃げようとしてるの?」

ゴーグル「…い、いや…帰りたいっす」

心理「…なに?予定でもあるの?」

ゴーグル(な、なんの予定もない!!)

ゴーグル(でも…何か理由を作らなきゃ…!!そうだ!!!)



ゴーグル「フレンダさんとのデートがあるんす」

上条・心理「ほほう…」ニヤニヤ

ゴーグル(…なんかうざいっす…)

114 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 22:06:44.70 ID:xB0o7Wxv0

上条「…じゃあ、仕方ないな」

心理「そうね…私ももう帰らなきゃいけないし」

ゴーグル「そ、それは残念っすね」

上条「…じゃあ、俺もこれで」

心理「あら、女の子を一人で返す気?」

上条「…途中までご一緒しましょうか…」

心理「ふふ、よろしく」

ゴーグル「お、俺はこれからフレンダさんとの待ち合わせ場所まで行かないといけないんで!!」

そんな約束はないのだが、ゴーグル男は適当な場所に向かって走り出そうとする

あとでフレンダを呼び出せばいいのだ

ゴーグル(…ってあれ、別にフレンダさんとデートする必要はないはず…)

心理「あ、ゴーグル君」

ゴーグル「は、はい?」

心理「まぁ、上手くやりなさいよね」

ゴーグル「あ、は、はい」

上条「じゃあまたな!!」

ゴーグル「は、はい!!」



ゴーグル(…フレンダさんをデートに誘うしかないじゃないっすかぁぁぁ!!!)


115 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/16(月) 22:07:15.34 ID:xB0o7Wxv0
今日はここまで

どうも中々アイディアが浮かばないです


しゃあないね


では

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 00:29:12.63 ID:kbYFbMH1o
おつにゃんだよ!
117 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:32:50.47 ID:A01HRAZN0
ゴーグル「・・・とは言ったものの・・・」

ショッピングモールから外に出たゴーグル男

フレンダを呼び出したまではよかったが、勢いだけで決めたデートだ

どこに行くのかなんて考えていない

ゴーグル(・・・というか、本当になんでデートをしようなんて思ったんすかね)

自分の気持ちが分からない、と彼は呆れた

呆れてはいたがなぜかそれが嬉しくもある

ゴーグル(・・・フレンダさんとデートっすか)

彼女と二人きりだと考えると、胸がトクトクと脈を打つ


フレンダ「ごめん、お待たせ!」

ゴーグル「あ、フレンダさん・・・」

しばらくしてから、フレンダが待ち合わせ場所に駆けてきた

慌てて出てきたのだろう、帽子が少しずれていた

ゴーグル「ほら、帽子・・・ずれてますよ」

フレンダ「あ、ありがと」

すっとフレンダの帽子を治したゴーグル男

少し指先に触れた金髪が、サラリと指から抜けていく

ゴーグル(・・・綺麗ですよね、本当・・・)

フレンダ「で・・・なんで呼び出したの?」

118 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:33:18.19 ID:A01HRAZN0
ゴーグル「あぁ、デートなんてしたいかなぁ・・・なんて」

フレンダ「へぇ・・・アンタもやっと私の魅力に気づいてきたって訳よ!」

ゴーグル(だいぶ前からですけどね)

フレンダ「?どしたの、笑ったりして」

ゴーグル「いや・・・なんでもないっす」

フレンダ「でさ、どこ行くの!?」

ゴーグル「うーん・・・フレンダさんが行きたい場所でいいっすよ」

フレンダ「えー・・・いきなりだったからそんなの考えてない訳よ」

ゴーグル「・・・じゃあ・・・」

フレンダ「・・・もしかして、アンタもノープランだったの?」

ゴーグル「恥ずかしながら・・・」

フレンダ「はぁ・・・結局ゴーグルはいざという時に役に立たないタイプな訳よ」

ゴーグル「面目ないっす・・・」

フレンダ「じゃあ・・・適当にぶらつく?」

ゴーグル「そうしますか」




真っ暗な夜の街を、離れないように手を繋いで歩く

静か、という言葉と正反対な街の中は、ネオンや店内の明かりでドレスアップされている

完全下校時刻は過ぎているものの、夏休みで浮かれた学生達にそんなものは関係ない



119 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:33:49.66 ID:A01HRAZN0
ゴーグル「・・・フレンダさんはもうご飯とか食べました?」

フレンダ「鯖缶食べちゃった」

ゴーグル「・・・いきなり呼んどいてなんですけど、鯖缶をデート前に食った女性って印象悪いっすよ」

フレンダ「はぁ!?ゴーグルは鯖缶の魅力を分かってない訳よ!」

ゴーグル「・・・ちゃんと歯磨きしてきましたか?」

フレンダ「私は一応常識人な訳よ!」

怒ったようなフレンダが、噛み付く勢いで言い返す

ゴーグル「・・・じゃあ、ご飯には行く必要ないっすね」

フレンダ「?アンタはご飯食べたの?」

ゴーグル「昼飯は食いましたよ」

フレンダ「昼飯って・・・もう夜なんだけど」

ゴーグル「だって俺が飯食ったらその間フレンダさんは暇でしょ?」

フレンダ「そ、それはそうだけど・・・気にしなくていい訳よ」

ゴーグル「遠慮しときますよ、そんなに腹減ってないですし」

フレンダ「ふーん・・・」

テクテク、と二人は歩く

目的はないのだが、なんとなく歩いていたかった

ゴーグル「・・・とはいっても、さすがにどっかでゆっくりしないといけませんね」



120 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:34:17.11 ID:A01HRAZN0
フレンダ「うん・・・歩いてばっかなんてデートじゃない訳よ」

恋人なら何をしても恋人なのだが、生憎二人はまだその真理に到達していない

ゴーグル「じゃあ、この建物の中ででも休みますか?」

フレンダ「そうね、外装は清潔っぽいし・・・」

頷いたフレンダがその建物をよくよく見てみる

フレンダ「・・・あ、あれ?」

ゴーグル「?どうかしましたか?」

フレンダ「こ、この建物ってさ・・・」


フレンダ「ラブホ・・・なんだけど」

ゴーグル「」


どうしてこうなったのか、とゴーグル男は頭を抱えていた

足を休めたいとは思ったのだが、まさか自分が何気なしに指定した建物がラブホだったとは

そして


フレンダが顔を真っ赤にしながらもそれを許諾してしまうとは



121 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:34:48.44 ID:A01HRAZN0


フレンダ「・・・その、さ」

ゴーグル「な、なんですか?」

フレンダ「ここって・・・そういうこと・・・する場所なんだよね?」

ゴーグル「べ、別に決まりではないんすよ」

フレンダ「・・・でも・・・」

フレンダがゴーグル男の掌に、自分の掌を重ねる

ゴーグル「ふわぁっ!?」

フレンダ「・・・私達もさ・・・その・・・」

ゴーグル「ま、待った待った!」

がしっ、とフレンダの両肩を掴む

このまま雰囲気に流されてはいけない

ゴーグル「フレンダさん、よく考えて下さい!」

フレンダ「わ、私はアンタとなら後悔なんてしない・・・っていうか、多分満足だし・・・」

ゴーグル「あぁぁそういう意味じゃねぇぇ!」

頭を振り、出来る限りフレンダを視界に入れないよう努める

ゴーグル「だから!まだ俺達は付き合ってないんすよ!」

フレンダ「じゃあ付き合ってよ!」


122 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:35:18.11 ID:A01HRAZN0
ゴーグル「今言うんですか!?」

フレンダ「私はアンタのこと大好きだから!」

ゴーグル「お、俺だって大好きっすよ!」

フレンダ「じゃ、じゃあ・・・」

ゴーグル「話を聞いて下さいよ!」

フレンダはなぜか、慌てているようだった

ならば自分だけでも落ち着かなければならない

ゴーグル「その・・・だから、順序というか・・・そういうのを大切にしたいんです」

フレンダ「・・・ま、まずは・・・告白?」

ゴーグル「う・・・それはもう終わったこととして」

フレンダ「私、まだゴーグルに告白されてない訳よ!」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・」



ゴーグル「つ・・・付き合っていただけたら嬉しい・・・です」

フレンダ「よし、許す!」

ゴーグル「・・・あの、今更じゃないですか?」

フレンダ「?」



123 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:35:53.21 ID:A01HRAZN0
ゴーグル「だってキスもしたことありますし」

フレンダ「キスなんて挨拶でもする訳よ」

ゴーグル「それは欧米人の常識っす・・・」

常識が通用しないことを自慢するなんて、ダサいとしか言いようがない

ゴーグル「・・・とりあえず、キスしていいっすか」

フレンダ「え?」

ぽかん、としたフレンダの唇を強引に奪う

ゴーグル「・・・俺、昔から・・・告白が成功したらキスするって決めてたんですよ」

フレンダ「へ、へぇ・・・悪くはない訳よ」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・」

どうしよう

二人ともそれを考えていた

ラブホにいるのだし、たった今恋人にはなった

つまり、別に「エッチ」なる行為をしても問題はない

ないのだが、別の意味で問題なのだ



124 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:36:25.97 ID:A01HRAZN0
ゴーグル「・・・きょ、今日は勘弁してもらえませんか」

フレンダ「・・・なんで」

ゴーグル「・・・ムードを大切にしたいじゃないですか、偶然ラブホに来て・・・なんか勢いで告白した感じになってますし」

フレンダ「ラ、ラブホに来た勢いで告白したの!?」

ゴーグル「ち、違いますよ!ただ・・・なんかそんな感じになってますから」

フレンダ「あう・・・」

残念そうな表情のフレンダ

たしかに、年頃の男女がこういう所に来たら期待をしてしまっても無理はない

ゴーグル「だから・・・後日改めて告白したら、じゃダメですかね」

フレンダ「そ、その時は・・・しちゃうの?」

ゴーグル「か・・・可愛い下着でお願いします」

フレンダ「わ、分かった訳よ」


ゴーグル「・・・すっかり暗いですね」

1時間だけ休んだ後、二人はまた夜の街を歩き始めた

フレンダ「ねぇ、ゴーグル」

ゴーグル「なんすか?」

フレンダ「私達ってもうカップルなのかな」

ゴーグル「・・・俺はそう思ってますよ」

フレンダ「えへへ、ならよかった」

ゴーグル「・・・あの、フレンダさん」

フレンダ「なに?」

段々と静けさを取り戻す夜道に、ゴーグル男の恥ずかしそうな声はやけに響いた


ゴーグル「幸せに、なりましょうね」


125 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:37:48.56 ID:A01HRAZN0





削板軍覇

彼は愛と根性の男だ

悪を砕くだけではなく、その悪が善の道に進めるように手助けさえする

そんな彼が口癖のようにいつも言うのは「根性」という言葉だった

最近はよく、「若者がダメ」だと言われる

もちろん、昔に比べたら様々な娯楽が溢れ、情報は氾濫し、風は靡き空は泣いている

だが、だが、と削板は声を大にして言う

あくまでダメなのは「若者」なのではない

「若者」の中に紛れている、一部の「根性無し」なのだと

根性の推移をご覧頂きたい(図1を参照)

1985年まで、若者の根性は毎年右肩上がりだった

人々が活気に溢れ、誰もが明日を夢見ていた

中にはその根性の使い道を誤り、いわゆる「ツッパリ」になる若者もいただろう

それでも、少なくとも今の若者よりは「根性」があったのではないか

1985年以降、日本の若者の根性は右肩下がりだ

ある学者の研究によると、2046年には日本の若者の根性は絶滅すると言われている

根性に替わる、新たな感情を生み出せ、という運動も各地で起きているらしい

それでも、削板軍覇はそれは違うと思っている



126 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:38:22.54 ID:A01HRAZN0
「根性」は絶滅することなど決してない

悪や憎しみの中で、くすんでしまったように思えても、それは必ず人の心のどこかで小さく、しかし何よりも眩しい輝きを放っているはずなのだ

削板軍覇は現在、「根性」を人々に分け与える仕事に携わっている

助手の白井黒子と二人で救ってきた若者は数千人

今日はそんな二人の活躍を、ドキュメンタリー形式でご覧頂きたい




削板「あー・・・暑い・・・」

黒子「暑いですわね・・・」

二人の仕事はもっぱら、野外活動である

オフィスの中にいるだけでは、誰も救うことはできないと感じていた

削板「ん?あんなところで学生が不良に絡まれてるぞ!」

黒子「!行きますわよ、軍覇さん!」

削板「あぁ!」

悪事を見つけた瞬間、二人の目には強い光が宿る

「悪を駆逐するため」の光

そして、「悪を更正させるため」の光である




127 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:38:51.56 ID:A01HRAZN0


黒子「風紀委員ですの!」

「げっ・・・ジャッジメントだ!」

「おい、ずらかるぞ・・・」

削板「そうは行くか!」

「!?てめぇ、いつから後ろに・・・」

削板「すごいパーンチ!」

「びぶるち!」

削板と白井は、共に能力者である

特に削板に関しては、「超能力者」であり、学園都市にも7人しかいないと言われるほどの人材だ

だがかつて、我々が単独で行ったインタビューの中で削板はこう語っていた



削板「いやぁ、能力があるかないかじゃないんだよ、そこに燃える根性があるかどうかなんだ!力なんて物は生れつき与えられたギフトでしかない、それを自慢するなんて何の努力もしていない人間がすることだ。本当に大切なのは生まれてからいかに努力したのか、その努力から何を手にしたのかなんだ」

削板「俺は自分が今までしてきた努力を誇りに思うし、それを人に聞かせても恥ずかしくないと思っている」

削板「だとすれば、それは俺だけではなく、俺がこれから出会う全ての人々にも言えることなんだ」

削板「能力が無くたって俺は戦うよ、人を変えるのは暴力じゃなくて優しさと根性なんだからな!」




その言葉通り、削板は殴り飛ばした不良にも手を差し延べる


128 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 15:44:39.70 ID:A01HRAZN0
「な・・・なんだよ!お前みたいな超能力者に俺達の気持ちなんかわかるか!」

時としてその優しさが人を傷付けることはある

しかし、それでも削板は優しく手を差し延べる

削板「てめぇ!根性が足りないんだよ!すごいパーンチ!」

「びぎゃぁぁぁ!」

優しく、差し延べる



削板「全く…最近はひねくれたヤツらが多いな!!」

黒子「そうですわね…自分が努力しなかった結果を人に押し付けるなんて」

削板「…だからこそ、俺達が助けてやらなきゃならない!!」

削板軍覇は、男である

それも、極限までに日本男児の理想とも言えそうな

黒子「…そうですわね、私達の仕事であり、やるべきことですの!!」

白井黒子は、それを傍で支える

素晴らしい愛情、それは人々が忘れかけているものではなかろうか


129 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 16:08:18.99 ID:A01HRAZN0

美琴「ここで、スタジオのほうに一旦戻ります…えー、司会は私、御坂美琴が務めさせていただきます」

美琴「そして、スタジオには4人の方々をお招きしています、まずは未元物質の垣根帝督さん」

垣根「はい、どうも」

美琴「右方のフィアンマさん」

フィアンマ「俺様のコメントに酔いしれろ」

美琴「ロリコンの一方通行さん」

一方「どォも」

美琴「そして、最後はエイワスさんです」

エイワス「ちょりっす」

美琴「えー…今のVTRの中で削板さんは、若者を正しい道に導く…と言っていましたが、そのことについては皆様どう思われますか」

一方「まずはこちらの図を見てほしいンですけどね」

垣根「この図には、年々の人々の優しさライセンスの多さをまとめているんですが」

一方「…これを見れば分かる通り、人々は優しさライセンスをなくしかけています」

垣根「これでは、たしかに誰かが導く仕組みが出来なければいけないと言えるでしょう」

美琴「なるほど…」

垣根「削板さんがこの役に就いているのは素晴らしいと思いますよ」

美琴「なるほど…失礼ですが、その理由をお聞かせ願いたいのですが」

垣根「老人や、最近の大人では今の若者を見ても、俺達が若かった頃は…という、あまり現実味のない話から始まってしまいます」

美琴「ふむふむ…」

130 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 16:15:35.89 ID:A01HRAZN0
垣根「その点、削板さんは今の若者世代です、そのため彼の言葉には若者の視点からの意見が含まれています」

一方「重要なのは、若者には説教ではなく愛情が必要だということです」

美琴「なるほど…フィアンマさんはいかがですか?」

フィアンマ「俺様は、正義を振りかざすことはよくないと思う」

美琴「振りかざす…ですか」

フィアンマ「…正義とは、人にぶつけるためではなく悪にぶつけるためにあるのだと思う」

美琴「…」

フィアンマ「…つまり、悪人と言われる人間を救ってこその正義だ、悪をくじいただけで満足するのはただの欺瞞だと思うがな」

垣根「ふむふむ…そう考えると、今の若者たちは優しさライセンスを持っている大人を必要ともしていますね」

一方「一番いいのは優しさライセンスを持っている若者が手を差し伸べることですが」

フィアンマ「そうだな」

美琴「エイワスさんはいかが思われますか?」

エイワス「えー…そうですね、今のに加えるとすれば、最近の若者は様々な便利な道具に囲まれ過ぎていて、感情表現をあまりしなくなったことがあると思いますね」

エイワス「つまり、子供達が親とコミュニケーションを取れなかったため優しさを知らず…」

美琴「あ、ここでVTRの続きです」

エイワス「」


131 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/18(水) 17:00:35.34 ID:A01HRAZN0

削板「ただいまー」

削板軍覇は現在、学生寮に暮らしている

超能力者をはじめとする、大抵の高位能力者は名門校に通うものだ

しかし、彼だけは違う

特別な学校に行くことはなく、普通の学生寮で暮らしているのだ

その理由を、削板はこう語る

削板「例えば、高いインテリアがある部屋だったり、美味しい食事が食べられる店だったり…そうだな、ピアノが奏でられてるレストランでもいいけどさ」

削板「…そういう場所にいると、自分はとても特別な存在なんだって思ってしまうものなんだ」

削板「もちろん、そういう場所は非常に素晴らしいとは思う、心を休めるために時々行くなら最高の場所だと思う」

削板「でも、それがいつも暮らす学生寮になると、話は別なんだ」

削板「俺は自分がそこまで特別だとは思わないし、別に特別なヤツらと友達になろうとも思わない」

削板「どこに住んでいようと俺は俺だし、特別な場所に住まなければ俺じゃないなんてことにもならない」

削板「だったら、自分が落ち着く場所に住むのが一番じゃないかって思うんだ、そして落ち着く場所がたまたまここだったんだよ」


彼は、毎日必ずある日課を繰り返している


「一日100qのマラソン、1万回の腕立て伏せ、3万回の腹筋」


削板「あることを、継続して行うってのは単純に見えて、しかしとても難しいことなんです」

削板「今日は疲れてるから、明日するから今日だけは休む、なんてことになってしまうのがしばしばだと思う」

削板「でも、俺は少なくともそうなったことはない」

削板「なぜなら俺は、それを出来る人間だからだ」


132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/19(木) 01:23:21.49 ID:n/I8SRzR0
何が始まってるんだwwww
133 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 16:30:22.23 ID:aymsGzHW0

美琴「えー…スタジオに戻りまして、四人の専門家の方々と再び削板さんについて討論したいと思います」

一方「…今のVTRの中にもあった通り彼はあくまで自分は普通の人間だと言いたいのでしょうね」

垣根「それゆえに、日々の鍛練を欠かしはしません」

美琴「…なるほど、継続は力なり、という言葉を体現していると」

垣根「そう言って差し支えないでしょうね」

フィアンマ「だが、あれは努力をし続けることのむずかしさを教えているようにも聞こえるな」

美琴「それは、どのような?」

フィアンマ「彼の生活を見てみれば分かるが、そう簡単に続けられる日課を掲げてはいない」

フィアンマ「自分が毎日出来る範囲、しかし決して甘えてはいない日課…」

フィアンマ「傍から見ればただ当たり前のルーティンになってはいるが、それを欠かさず行うことは人間にとって非常に難しい」

垣根「たしかに、同じことを繰り返すことによって人は昇華されるのですね」

一方「…それと、彼は決して自分の正義を自慢してはいませンでしたね」

美琴「そうですね…自らの正義を信じ、しかしそれを振りかざしはしない」

垣根「…今の若者にとって、彼のような人間になることは容易ではないでしょう」

美琴「全く持ってその通りです」

エイワス「彼は…」

美琴「では、削板さんがいかにしてその強靭な精神を作ったかがわかりましたので、我々もそれに基づいてある実験を行いました、その結果をご覧いただきます」

エイワス「」

134 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 16:50:58.73 ID:aymsGzHW0

我々が独自に入手した削板軍覇の日課、それの効果をある男性モデルも用いて実験してみました


ステイル「…なんで僕がこんなことを」

彼には、削板が行っている筋トレやマラソンを行ってもらいました


1日目


ステイル「…無理だ…」

彼の体は、早くも悲鳴を上げます

それほど、削板の行っている日課というのは、一般人にはきついものなのです

ステイル「…こんなもの…」

弱音を吐いてしまう被験者でしたが、どうにか筋トレを終えました

なお、100q以上のマラソンは人体に影響があるため、専門家の指導の下30kmまでに減らしました


ステイル「はぁ…はぁ…な、なんで僕がこんな…」

炎天下の元、マラソンを行うことによって体からはどんどんと水分が奪われていきます

ステイル「…む、無理だ…」


結局、被験者は一日目ではこのルーティンをこなすことが出来ませんでした


注 この実験は専門家の指導の下、十分な安全対策を取ったうえで行っております

皆様は真似をすることのないよう、お願いいたします


135 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 16:55:45.62 ID:aymsGzHW0

ステイル「…筋肉痛がひどいのだが」

二日目、被験者の体に早くも異常が現れます

全身を襲う筋肉痛によって、体を起こすことさえままならないのです

ステイル「…分かったよ、またやればいいんだろう…」


ステイル「痛い!!」

被験者が37回目の腕立て伏せを行っていた時に、異変は起きました

なんと胸が攣ってしまったのです

ステイル「もう…やめにしよう…」



被験者の健康を考え、これ以上の実験は危険であるという結論に達したため、実験は終了しました




美琴「えー…今のVTRを見ていただいて分かる通り、削板さんの行っている日課は、常人ではとても真似できないものばかりです」

垣根「そうですね…それを、削板さんはずっと続けているのですね」

フィアンマ「健全な精神は健全な肉体に宿るが…健全な精神を持たなければ、肉体を作り上げる日課を続けることは出来ないのだな」

一方「どちらか片方ではなく、両方を極めないといけないンですね」

美琴「エイワスさんはいかが思われましたか?」

エイワス「…そうですね、彼がここまで努力を行えるということは何か理由が…」

美琴「ではその理由を探っていきましょう!!」

エイワス(…カンペ通りにしたのに…)


136 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 22:50:39.70 ID:aymsGzHW0

削板「…これ、昔俺が自分で決めた目標なんだけどさ」

削板が取り出したのは、一枚の色紙

そこに書かれているのは、至極シンプルな言葉だった


「根性」


削板「昔、俺は根性がなかった時期がある」

削板「不良を見つけたら、とにかく殴り飛ばして…そして、それだけで満足してしまうことがあったんだ」

削板「でも、ある日俺は気づいた…それじゃ、結局俺もその不良たちと変わらないんじゃないのかって」

削板「…それから、俺は不良たちにも手を差し伸べることにしてみたんだ」

削板「すると…あることに気付いた、当たり前で、しかし重要なこと…」

削板「不良たちの中に、本当に腐ってる奴なんてほとんどいないということだ」

削板「もちろん、根っからのクズがいることも否定はできない…でも、大抵はただ反抗期に派手に暴れすぎてるだけってやつが多いのさ」

削板「…もしかしたら、彼らは俺達にもあったはずの可能性が具現化したものなんじゃないのかな」

削板「…俺は、そういうやつらに根性を教えてやりたいんだ」

削板「…たとえそれが無駄だとしても、俺はやりたいんだよ」

削板が、色紙を直す

とても丁寧に、そしてそれをしっかりと見つめながら、削板はそれを直した


削板「…さて、そろそろ俺は行かなきゃならないかな」

削板はまた、不良たちを更生させに向かう

たとえそれが、無駄だと笑われても


137 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 22:59:45.16 ID:aymsGzHW0

美琴「さて…そろそろ、この番組も終盤になってまいりました」

垣根「…そうですね、最近の若者…という括りは悪いでしょうが、それにしても珍しい青年ですね」

一方「そォですね」

美琴「では最後に、スタジオに削板さんをお招きしてお話を聞きたいと思います」


パチパチパチパチ


削板「どうも…」

フィアンマ「…意外と腰が低いな」

削板「そうかな?」

垣根「…もう時間もあまりないので、短くお話をしてほしいですね」

美琴「削板さん、視聴者の皆様に何かメッセージをお願いします」

削板「うーん…そうだな、とりあえず…俺のことを、すごいなって思った視聴者のみなさん、それは間違いなんだ」

一方「間違い?」

削板「…たとえばさ、俺には力があるから、とか…俺には度胸があるから、と思っている人もいると思う」

垣根「実際にそうだと思いますが…」

削板「たしかに、そうなのかもしれないな」

削板「でもさ…それだけなんだ、誰だって勇気を持つことは出来るし、誰だって力を振り絞ることは出来る」

フィアンマ「…」




138 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 23:11:38.20 ID:aymsGzHW0
削板「…よくさ、人は生まれたときに人生が99パーセント決まっているなんてことを聞く」

削板「その通りなんだ、金持ちの元に生まれれば不自由なく暮らせるし、医者の元に生まれれば医者になる可能性が非常に高くなる」

削板「モデルの子なら美形になるだろうし、親が不良なら子供もきっと非行に走る」

削板「…だとすれば、俺は残り1パーセントの可能性なんだ」

削板「生まれた時から持っていたわけではない、勇気や力を生み出して…それで人を救っている」

削板「救っている、ってのは自惚れかもしれないけど…でも、俺は少なくとも何かを変えているという自信がある」

削板「…そういうもんじゃないかな」

垣根「なるほど…」

美琴「素晴らしいですね…削板さんは、相当な努力をなさっているようですが…」

削板「それはちょっと違うかな」

美琴「…?」

削板「俺は、努力をするのが嫌いだって言う人をよく見てきた…努力が好きだって人も、たまにはいる」

削板「努力は実るって言う人もいれば…努力なんて意味がないと言う人も見てきた」



削板「でも、努力を語る資格がある人には、今まで出会ったことがない」

削板「…俺はさ、その努力を語る資格がある人になりたいんだ」

削板「…だからこそ、努力の真似事をしている…それだけなんだ」

削板「きっと、これを見ている人も何か頑張っていることがあるはずだ…それをずっと続けることが大切なんだ、俺がやってるようなことでなくてもいい、人に影響を与えるようなことでなくてもいい」

削板「ただ、自分がこれだと思ったことだけは貫き通してほしいかな」

139 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 23:18:21.17 ID:aymsGzHW0

美琴「お別れの時間となりました、削板さん、およびお越しいただいたみなさんに感謝を申し上げます」

一方「どォも」

垣根「今日は有意義な時間を過ごせました」

削板「楽しかったよ、ありがとう」

フィアンマ「俺様も面白かったぞ」

エイワス「私も中々…」

美琴「ではみなさん、来週は海でマグロと共に泳ぐ男達〜シャンパンファイトは命の飛沫〜をお送りします、さようなら!」

エイワス「…」



ED  愛をとりもどせ





心理「…ん…?」

心理「…あら、夢だったのね…」

心理「…変な夢、しかもなんだかよく分からない人も出てきたし…」フアァ

心理「…マグロと共に泳ぐ男達…ねぇ」

心理「…」



心理「来週も楽しみにしとこうかしら」クスクス


140 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/19(木) 23:19:25.16 ID:aymsGzHW0

今日はここまで

何がしたかったのかなんて聞かないでください

何もしたいことがなかったから意味の分からないネタにはしっただけです


明日からは、少し長い?話を書きます

ほんわか出来る話がいいなぁ…


では


ハッピーバースデートゥーミー

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/20(金) 00:33:02.34 ID:1jn8RRxAo
>>140
ケーキやるから泣くなよ……○
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/04/20(金) 10:52:48.71 ID:1J7iK3j9o
>>140
おとなのかいだンのーヴォるー
143 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:02:00.32 ID:3CAFTkOt0


上条「・・・不幸だ」

とある不幸な青年は、今日も不幸に出逢っていた

自販機のジュースで喉を潤そうとしていた

しかし、取り出した貨幣がゴロゴロと転がりそのままどぶの中へと落ちていったのだ

上条「こういう時に限って500円玉・・・」

夏休みも残りわずか

ギラギラと照り付ける夏の太陽は、上条を嘲笑っているようだった

陽炎が浮かんでいる公園、その片隅にあるベンチにとりあえず腰掛ける

上条(・・・そういえば今日は水筒持ってたっけ)

美琴が朝、彼に無理矢理持たせた物だった

「補習でずっと部屋の中だとはいっても、脱水症状にならないとは限らないから」と言っていた気がする

上条(・・・さっきの500円玉は犬死にだったってことか・・・)

優しい恋人の気遣いが、500円玉の命の価値を0にしてしまった

皮肉なものだ

上条「・・・暑い」

水筒の中のスポーツドリンクは生温くなっていた。口の中に広がる嫌な暖かさを我慢して、どうにか喉へと流し込む


144 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:02:37.62 ID:3CAFTkOt0
上条「・・・生温いスポーツドリンクほどまずい飲み物はないよな」

暑い昼間に冷や汗をかきながら、彼は呟いた

こういった不幸には慣れることはある、それでも受け入れることは難しいものだ

上条「あーあ・・・ったく、上条さんはいつまで不幸なんだよー!」

汗で濡れた頭を抱え、大声を上げる




「なに大声出してるの、お兄ちゃん」

突然、後ろから声が聞こえた

くるりと振り返ると、可愛らしい少女が一人で突っ立っていた

歳は10になろうか、という辺りだろう

真っ黒な髪の毛をショートで切り揃えている

服装はというと、いくら歳が幼いとはいってもあまりに幼稚と感じさせるものだった

上条「・・・いつから聞いてましたか・・・」

「最初っから」

上条「あぁぁぁ!こんな子供に魂の叫びを聞かれるなんて!」

「お兄ちゃん・・・なんか情けない」

上条「あぁ分かってるよ・・・」

どこか見覚えがある少女を見つめながら、上条がため息をつく



145 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:03:04.07 ID:3CAFTkOt0
上条「んで・・・君は一人なの?」

「うん、今は一人なんだ」

上条「公園に一人か・・・学園都市の学生だよな?」

「まぁ・・・一応」

上条「へぇ・・・」

昔の記憶がない上条からすれば、小学生のうちに能力開発を受けているという話は現実味がない

もちろん、それが学園都市の「常識」であることは理解しているが

上条「・・・えっと、じゃあ迷子かなにか?」

「ううん、そうじゃないよ?」

上条「じゃあ誰かと待ち合わせなのか?」

「・・・それも違うかな」

上条「?まさか一人で遊ぶなんていう寂しいお子様か?」

「違うよ・・・」

やれやれ、と頭を振る少女

「それよりお兄ちゃん、お家はどこ?」

上条「家?俺は寮で暮らしてるんだけど・・・」

「あ、そっか」

上条「・・・なんでそんなこと聞くんだよ」

「なんでって・・・行ってみたいから」

上条「・・・は?」



146 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:03:32.20 ID:3CAFTkOt0
「お兄ちゃんの家に行ってみたいの」

上条「な、なんでついさっき知り合った女の子を家に連れて行かなきゃなんないんだよ!?」

「でもお兄ちゃん、よく女の子と仲良くしてたって・・・」

上条「?お前、俺のこと知ってるの?」

「あ、違う違う!なんかそんな雰囲気だなって!」

上条「俺が?」

「あ、あはは・・・」

ごまかしているような笑いを浮かべ、少女が上条に一歩近づく

「ねぇ、連れて行ってよ」

上条「嫌だよ・・・大体、今家には彼女がいるし」

「あ、じゃあむしろ好都合だ」

上条「?なんか言ったか?」

「ううん、なんにも・・・ね、お兄ちゃんの彼女って子供嫌いじゃないよね?」

上条「あ、あぁ・・・どっちかって言ったら好きなんじゃないかな」

「じゃあいいじゃん、連れてって!」

上条「なんでだよ・・・目的があってここに来たんだろ?」

「あ、それはもういいんだ」

上条「?」


147 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:03:59.50 ID:3CAFTkOt0
「いいから早く早く!」

ニコニコと笑う少女、その眩しさは真夏の日差しに似ている

夏休みがもうすぐ幕を閉じるというある日

少しだけ不思議な数日間が、上条の時間を彩る




上条「・・・そういえばさ」

「どうしたの?」

裸足で歩いてしまえば足の裏を火傷するであろう、それほどまでに熱せられたアスファルトの上を歩きながら上条が口を開く

上条「・・・お前の名前、聞いてないよな」

「私?」

上条「俺は上条当麻、君は?」

「・・・内緒」

上条「な、なんだよそりゃ・・・」

「だって・・・」

じっ、と上条を見つめる少女

ほんの少し悲しげな瞳が、何かを訴えかけてくる

上条「・・・名前、ないのか?」

「そういうわけじゃないけど・・・」

上条「ま、無理に言わなくてもいいけどさ」

おかしな少女だ、と思いながらもそれを口には出さない

出してしまえば、この少女を傷つけてしまうはずだ



148 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:04:26.30 ID:3CAFTkOt0
上条(・・・?なんで傷つけたくないんだろう)

先程知り合ったばかりの少女

なぜか

上条「なぁ」

「なに、お兄ちゃん?」

上条「どこかで会ったこととか・・・ないか?」

「・・・ないよ、まだ」

上条「まだ?」

「あ、なんでもない!それよりお兄ちゃんの家ってまだなの?」

上条「もうちょっと・・・ったく、美琴になんて説明したらいいんだよ」

「美琴って、お兄ちゃんの彼女だよね」

上条「そうだけど」

話の流れから、いくら子供でも理解しているらしい

「・・・お兄ちゃん、お姉ちゃんのこと・・・大好き?」

上条「?大好きだけど、なんで?」

「ううん、聞いてみたかっただけ」

微笑んだ少女の真意が、上条には分からない

上条「・・・そろそろ着くけど・・・本当に来るのか?」

「ここまで来たら仕方ないよ」


149 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:04:53.49 ID:3CAFTkOt0
上条「はぁ・・・分かったよ」

肩を落としながら、エレベーターへ向かう

だがそこはやはり不幸な青年、エレベーターの改修工事が急遽始まっていたため階段で上がらなければならなくなった




上条「ただいま・・・」

美琴「あ、当麻お帰り・・・って誰よその子?」

上条「あ、いや・・・途中でちょっと知り合ってしまいまして」

「こんにちは、お姉ちゃん!」

美琴「あ、こんにちは・・・私は御坂美琴」

「うん、知ってる」

美琴「?」

上条「美琴は有名人だからな・・・」

「ねぇ、お兄ちゃんとお姉ちゃんは二人で住んでるの?」

美琴「ち、違う違う!私が泊まりにきてるのよ、毎日朝から晩まで!」

「それって一緒に住んでるんじゃ・・・」

上条「はいはい!子供にはまだ早いですからね!」

無理矢理少女の言葉を遮り、上条がとりあえず鞄をベッドの上に置く

上条「・・・でさ・・・お前、こんな所にいていいのか?友達とか心配しないの?」

「大丈夫、友達にはちゃんと言ってるから」

上条「?いつの間に・・・」


150 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:05:25.28 ID:3CAFTkOt0
美琴「ねぇ、あなたの名前はなに?」

「内緒!」

美琴「な、内緒・・・」

「お姉ちゃん達ならきっと当てられるよ!」

上条「なんでクイズしなきゃなんないんだよ・・・」

呆れながら、上条がため息をつく

この少女は、まるで自分達と会うのが目的かのように話している

美琴「・・・ねぇ、あなたもやっぱり学園都市の学生なの?」

「一応・・・ね」

美琴「へぇ・・・能力とかあるの?」

「!あ、あるけどそんなに強くないし・・・」

美琴「当ててあげる、電撃使いでしょ!」

「!」

驚いた、という表情とは少し違う

まるでベッドの下に隠していた0点のテストを親に見つけられてしまった時のような表情の少女

美琴「さっきから、あなたの周りに微弱な電磁波が出てたからもしかしてと思って」

上条「へぇ、じゃあ美琴と同じなんだな」

「あ、うん・・・」

美琴「でもすごいわよ、あなたの歳で・・・多分LEVEL3くらいなんじゃない?」


151 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:06:03.31 ID:3CAFTkOt0
「で、でも・・・私の友達にはもっとすごい子がいるから」

上条「え、お前と同い年で?」

「うん、LEVEL4の男の子が二人、女の子が一人」

美琴「へぇ・・・」

「一人はね、かっこよくて優しくて強いんだ!私に優しくしてくれるし・・・」

体をもじもじさせながら、少女が嬉しそうに話す

上条「へぇ・・・もしかしてお前、そいつのこと好きなのか?」

「!ち、違うもん!」

美琴「ね、その子はなんていう名前なの?」

「て・・・帝凰君」

上条「て・・・ていおう?」

美琴「すごい名前ね・・・」

「うん、能力はある分子の種類を、別の分子にするっていうのなんだって」

美琴「・・・それ、かなりすごいわね」

上条「?」

美琴「だから、水から鉄を作ったり、石から金を作ったり出来るの…正直、科学とは思えないわね…」

上条「す、すげぇ・・・」

「えへへ・・・それでね、この前は綺麗なペンダント作ってもらったんだ」



152 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:06:30.37 ID:3CAFTkOt0
見て見て、と少女がペンダントを差し出してくる

天使をモチーフにしたような、なんともメルヘンチックなペンダントだ

美琴「・・・なんか趣味が・・・」

上条「垣根そっくり・・・」

「あ、あとね!帝凰君には双子の弟がいるの、そっちは翼君!」

上条「翼か・・・」

美琴「そっちはまともな名前ね」

「うん、翼君は相手の感情の中に無理矢理他の感情を植え付けて、新しい感情を作り出す能力なんだって」

上条「え、えげつないな・・・」

美琴「友情の間に無理矢理嫉妬を埋め込めば・・・ってことね」

「でも翼君、ひどいことには使ってないよ?」

美琴「優しいのね・・・食蜂とは大違い」

「・・・私ね・・・帝凰君と今度デートするの!」

上条「へぇ・・・でもそろそろ夏休み、終わりだぞ?」

「え、あ、そうだね!」

上条「?」

おかしな少女だ、先程から時々上条と話が噛み合わない

それも、今現在の話をすると特に


153 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:06:58.06 ID:3CAFTkOt0
上条「なぁ・・・お前はなんで、俺についてきたんだ?」

「なんでって・・・」

上条「・・・そうやって聞くと、一緒に遊ぶ友達なんてたくさんいるんだろ?」

美琴「それもそうよね・・・当麻のことを知ってたの?」

「・・・あ、あのね」

少女が困ったような顔で二人を見つめる

気のせいだろうか、上条はそんな顔をよくする少女をもう一人知っている

その少女は、いつも自分の傍にいる・・・

「・・・ちょっと、悩み事があってさ」

上条「悩み事?」

「・・・お父さんとお母さん、最近あんまり仲良くないんだ」

美琴「お父さんとお母さんが?」

「うん・・・なんかね、お互いをお前、あなたって呼ぶし・・・」

上条「それっておかしいことなのかな?」

「・・・分からない、でも昔は二人とも名前で呼び合ってたんだ」

美琴「・・・あなたが小さい頃は名前で呼び合ってたの?」

「ううん、私が覚えてる間では・・・もう今の呼び方」

上条「?ならなんで昔は名前で呼び合ってたって・・・」


154 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:07:24.44 ID:3CAFTkOt0
「・・・」

少女が俯いてしまう、あまりこの話をしていたくないようだ

上条「もしかして・・・家出なのか?」

「ちょっと・・・そんな感じかも」

美琴「心配するわよ・・・お父さんとお母さん」

「・・・」

上条「・・・お前は・・・両親に、昔みたいに仲良しになってほしいのか?」

「うん」

上条「・・・そっか」

上条は小さく笑った

彼は小さい頃の記憶を「壊して」しまっている

だから、自分が小さい頃、自分の両親がどんなだったのかなんて覚えていない

上条「・・・それで、いつ帰るつもりなんだ?」

先程までとは違う意味での質問

早く帰ってほしいのではなく、もう少しこの少女と一緒にいてあげたいと思った

「・・・迷惑じゃなかったら・・・泊まっちゃダメ?」

美琴「私はいいわよ、当麻は?」

上条「美琴がいいんだったら」

「やったぁ!」


155 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:07:58.19 ID:3CAFTkOt0
美琴「その代わり、しっかりお手伝いしてね?」

「えー・・・お姉ちゃん、若いのに厳しい」

美琴「若いのにってね・・・」

「分かった、お母さんの手伝いとかよくやってたから!」

上条「へぇ、偉いじゃないか」

「えへへ・・・褒められるのは恥ずかしいよ」

上条「お父さんとお母さんは褒めてくれないのか?」

「ううん、でも褒めるのと同じくらい叱られる」

美琴「いい親じゃない」

「そっかな?」

子供のうちは、叱られることの大切さが分からないものだ

上条「・・・んじゃ、ちゃっちゃと夕飯でも作りますか」

「え、お兄ちゃんが作るの!?」

上条「?ダメかな?」

「う、ううん・・・お父さんは料理なんてしないから」

美琴「男の人でも料理出来る人は出来るのよ」

「ふーん!」

尊敬なのか、それとも驚きなのか

とにかく少女は目を輝かせて上条を見つめている

上条「大したものは作れないからな・・・」

「いいよ、お兄ちゃんが作った料理が食べてみたい!」

美琴「あはは・・・そんなに珍しいんだ」

「うん、家はお母さんばっかりだから!」


156 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:08:45.14 ID:3CAFTkOt0
上条「んじゃ、美琴はその子と遊んでてくれよ」

美琴「分かった」

「お兄ちゃん、頑張ってね!」

上条「おう!」

少し可愛らしいデザインのエプロンを着けてから、上条はキッチンに向かう

前に美琴がプレゼントしてくれたものだ、それならいくら子供っぽいデザインでも我慢できてしまう



「ねぇ、お姉ちゃん」

美琴「うん、なに?」

「お姉ちゃんって、お兄ちゃんのどんなところが好きなの?」

美琴「にゃっ!?」

少女が突然、そんなことを尋ねてきた

冷やかしたい、というわけでもないらしい

純粋に、美琴がなぜ上条を選んだのかを知りたいという表情だ

美琴「どんなところ・・・かぁ」

「優しいところ?」

美琴「うん、それもあるかしら」

少女の頭を優しく撫でながら、美琴が笑う


157 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:09:11.43 ID:3CAFTkOt0
美琴「それに・・・当麻は昔、私を助けてくれたのよ」

「助けた?」

美琴「・・・私一人じゃどうしようもないことがあって・・・その時、当麻が助けてくれたの」

なぜこの少女にこんなことを話しているのだろうか

知り合ったばかりの少女に

しかし、赤の他人という感じがしない少女に

美琴「・・・それまで私、あんまり人に頼ったことがなくてさ・・・周りからも、なんでも一人で出来る人、みたいに見られてたのよ」

美琴「・・・でもね、当麻はそんなことを考えないで、困ってた私を助けてくれたの」

「だから好きになったんだ!」

美琴「えへへ・・・あんまり当麻の前だと恥ずかしくて言えないんだけどね」

クッションをぎゅっと抱きしめて、美琴が笑う

美琴「・・・本当に、心から人を愛するって・・・幸せなんだなって思うの」

「・・・お姉ちゃんは、お兄ちゃんが大好き?」

美琴「うん、大好き!」



上条「俺も美琴が大好きだからなー!」

キッチンから上条も大声で応える

美琴「うん、分かってる!」

「・・・いいなぁ」

美琴「?」


158 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:09:37.52 ID:3CAFTkOt0
「私も・・・そんな風になれるかな」

美琴「なれるわよ・・・帝凰君だったっけ?」

「だ、だから帝凰君のことなんて気になってないもん!」

美琴「ふーん・・・」

ニヤニヤと笑いながら、美琴は少女の頭をもう一度撫でた

もしも自分と上条の間に娘が出来たら、こんな話を普通にするような仲になれたら・・・そんなことを思いながら




上条「はぁ・・・食った食った」

「お兄ちゃん料理上手だったんだ!」

美琴「うん、家庭的よね」

上条の作った料理を食べ終えた三人は、しばし腹ごなしをすることにした

上条「まぁ、一人暮らしが長かったからな」

「知らなかったなぁ・・・」

美琴「男の人が料理出来るってこと?」

「だってお父さんは料理しないんだもん」

上条「仕事が忙しいんじゃないのか?」

「そうかも・・・お母さんも寂しがってるんだ」

美琴「・・・仕方ないことだけど、辛いわよね」


159 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 18:10:09.10 ID:3CAFTkOt0
上条「でも大丈夫、仕事が終わったら帰ってきてお前と話したりしてくれるだろ?」

「うん!お母さんと私と、三人で話すんだ!」

美琴「へぇ、一人っ子なんだ」

「えへへ・・・もうすぐ妹が出来るんだけどね」

上条「そりゃめでたいな」

美琴「あー・・・大丈夫、きっとあなたが思ってるほどお父さんとお母さん、冷めてはないわ」

「?」

子供には分からなくていいの、と美琴と上条が苦笑する


上条「・・・さて、美琴とお前は風呂入ってきたらどうだ?」

「え、私も?」

美琴「そうね・・・今日も暑かったから汗かいてるでしょ」

「い、いいの?」

美琴「ダメなわけないじゃない」

「お兄ちゃんもお姉ちゃんも優しい!」

上条「ははは、そうか?」

「お風呂!お風呂!」

嬉しそうに歌いながら、少女が美琴の服の袖を引っ張る

美琴「はいはい、そんなに急かさないの」

「早く早く!」

ぐいぐいと少女に引っ張られるようにして、美琴も風呂へと向かった

上条(・・・なんていうか姉妹みたいだな)


160 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/20(金) 20:40:52.22 ID:3CAFTkOt0

上条「…」

夏の夜、というのはとても静かに感じられる

昼間の喧騒がけたたましいせいなのだろうか

上条(…あの子、どこに住んでるんだろうな)

いきなり公園に現れたあの少女

友達と遊んでいたわけでもなく、たった一人であの公園に来たのだ

上条(…あれ、でも学園都市で親と暮らしてるって珍しいよな…)

学園都市には、そもそも大人という物がほとんどいない

大抵は学生で、残りは研究者というのが常識的だ

上条(…親が研究者なのかな…?)

それにしても、少しおかしいのではないか

彼女はどう見ても10歳程度に見える

母親が彼女を産んだ後で、学園都市に引っ越してきたのだろうか

上条(…うーん…それもなんか引っ掛かるよなぁ…)

研究者を外部から招き、学園都市の中で子供を産んだとすれば、辻褄は合う

上条(…そうだ、もしかして能力者の子供とか…)

能力者は、出来る限り学園都市の外に出ないように、と言われている

もしも能力者の間に子供が出来たのならば、親が学園都市の中にいるのも当たり前だ

上条(ってそれはないか、学生なんてまだ子供産める歳じゃないし…)

はぁ、と上条がため息をつく

なぜそこまでして少女の出生を知らなければならないのか


161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 00:53:51.90 ID:SmBsgNzXo
おつにゃんだよ!
162 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:44:35.41 ID:jOQjN5C90


美琴「はい、髪の毛洗うわよ」

「はーい!」

一方、少女と風呂に入っていた美琴は彼女の髪の毛を洗う段階に入っていた

年下の女の子とお風呂なんて、妹が出来たようだ

美琴(・・・まぁ、妹ならたくさんいるんだけどね)

「ねぇ、お姉ちゃん・・・」

美琴「?なに、どこかかゆいとこでもある?」

「ううん、そうじゃなくてね・・・」


「お姉ちゃん、胸・・・あんまり大きくないね」

美琴「」

年下の女の子に、そんなことを指摘されてしまった

美琴「な、なに言ってるの!ちゃんと育ってるわよ!」

「でも私のお母さんはもっと大きいよ?」

美琴「あ、あなたのお母さんが羨ましいわよ!」

久々に慎ましい胸のことを指摘されてしまった

すっかり、美琴は混乱している

「・・・ねぇ、私もいつか胸が大きくなるかな?」

美琴「ど、どうしてそんなこときくの?」

「・・・帝凰君、胸が大きい人が大好きなんだって」

美琴「・・・ませてる男の子ね」



163 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:45:01.90 ID:jOQjN5C90
「べ、別に帝凰君が胸が大きい人好きってことは関係ないんだけどさ!」

美琴「うーん・・・お母さんが胸大きいなら大丈夫よ」

10歳の女の子ならば、そんなことが気になる年頃なのかもしれない

美琴自身は上条と出会うまでたいして気にしたことはなかったが

美琴「ほら、流すから目つぶってて?」

「うん」

ぎゅっと目を閉じる少女。出来る限り顔にシャンプーが流れないよう、気を遣いながらシャワーで洗い流す

「ん!シャンプー口に入った!」

美琴「ご、ごめん・・・あんまり人の髪の毛流すことなんてないからさ」

「?お兄ちゃんと一緒には入らないの?」

美琴「は、はぁ!?」

「だってお父さんとお母さん、たまに一緒に入ってるけど・・・」

美琴「あう・・・子供はまだ知らなくていいの!」

年頃な娘を抱えた母親って大変なんだろう、と美琴がため息をつく

そう考えると、いつも気丈に振る舞っている美鈴はすごい母親なのだろう

美琴「・・・湯舟浸かろうか」

「うん!」


湯気の漂う風呂の中、美琴と少女は少し狭い湯舟で体を寄せ合っていた

美琴「はぁ・・・一日の疲れが取れるわ・・・」

「お姉ちゃん、今日は何してたの?」



164 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:45:46.79 ID:jOQjN5C90
美琴「黒子と一緒に寮の掃除・・・あ、黒子ってのは後輩なんだけどさ」

「・・・」

美琴「ツインテールのちょっと変わった子でね・・・一応空間移動能力者なのよ」

「?ツインテールなの?」

美琴「うん、そうだけど」

空間移動能力者、というところではなくツインテールというところに少女は疑問を持ったようだ

美琴「ツインテールって珍しい?」

「う、ううん・・・そうじゃなくて」

美琴「じゃあ・・・」

「ねぇ、ちょっと熱くなってきちゃった」

美琴「え、もう?」

「・・・だって私、あんまりお風呂には浸からない主義なんだもん!」

美琴「主義って・・・難しい言葉知ってるわね」

「小百合ちゃんがよく使うんだ!」

美琴「小百合ちゃん?」

「うん、可愛い女の子の友達!たしかベクトルの種類を変える能力だったかな・・・光としての刺激が音になったり」

美琴「へぇ・・・」

なかなか便利そうな能力だ、と美琴は感想を抱く

だがそれ以上に、目の前の少女の口から「ベクトル」だの「刺激」だのという単語がスラスラと出てくるのに驚いた

美琴(ま、この歳でLEVEL3なんだから・・・きっと勉強も頑張ってるのよね)


「・・・熱い・・・」

美琴「あ、そうだった・・・あがろっか」

「うん!」


165 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:46:20.94 ID:jOQjN5C90



上条「・・・ふぁぁ」

テレビの前で、上条は大きく口を開けていた

「タイムマシン」を学園都市で作る、という計画が遂行中だという噂を特集した番組だ

馬鹿らしい、と思うかもしれないが学園都市の技術を集結すれば、出来てしまいそうな気もする

上条「・・・あんま面白くないな・・・」

他のチャンネルでは、どっかで見たことある青年が「メルヘン!メルヘン!」と叫んでいた

上条「垣根・・・なにやってんだよ、クイズ番組で」

呆れてものも言えないな、とテレビの電源を切る

それと同時、美琴と少女が風呂から出てきた

「お兄ちゃん、ただいま!」

上条「ん、お帰り・・・」

美琴「はぁ・・・なんか女の子とお風呂入るって大変」

「えー、楽しかったよ!」

美琴「あ、あはは・・・そうね」

上条「んじゃ、次は俺が入りますか」

昼間にたくさん汗をかいたため、風呂に入れるのは非常に嬉しい

喜びながら上条が風呂場に向かおうとした、その時

部屋の電話がけたたましく音を立てた




166 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:46:59.41 ID:jOQjN5C90


多分今の上条ならば謎の波動を放って電話の一つや二つ、破壊出来るのではないか

それほどまでに今の上条はいらついていた

蒸し暑い夏の風呂というのか、唯一と言っていい救いなのだ

それを目の前で奪われた苦しさは、いかほどの物だろうか

上条「・・・」

握り潰してしまわないように、優しく受話器を手に取る

上条「こちら上条・・・」



垣根『上条!助けてくれよ!』

上条「?なんだ、垣根か・・・携帯に電話すればいいのに」

垣根『どうでもいいからそんなこと!っていうかマジ助けて!』

上条「・・・なんかあったのか?」

垣根『突然知らないガキが二人押しかけてきやがった!』

上条「?」

垣根『ちくしょう、いきなり泊めてくれなんて言うし・・・』

上条「ま、待った待った・・・心理さんは?」

垣根『今二人の相手してるけどよ・・・なんで知らないガキ二人泊めなきゃなんないんだよ!?』

自分に言われても、て上条が悪態をつく

上条「・・・あれ、なんかそのシチュエーション・・・俺達と一緒だな」

垣根『は?』

上条「・・・家にも一人来てるんだよ、女の子が」

垣根『・・・あぁ?』

上条が少女のほうを見つめる

垣根の家にも、突然知らない子供がやってきたらしい



167 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:47:25.30 ID:jOQjN5C90


「?どうしたの、お兄ちゃん?」

上条「・・・なぁ、垣根」

垣根『なんだよ!あぁもうガキってなんでこうも元気・・・』

上条「・・・もしかしてその子達・・・能力者か」

垣根『は?なんで分かったんだよ』

上条「・・・」

垣根『おい、どうした』

上条「・・・もしかして・・・その子達、10歳くらいの双子か」

垣根『お、お前・・・こいつら知ってるのか?』

上条「・・・まさか」

垣根『な、なぁ上条』

上条「悪い、確認したいことが出来た」

垣根『は、なに・・・』

垣根の言葉を最後まで聞かず、上条が電話を切る

すぐさま、別の家に電話を掛けた



168 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:47:53.11 ID:jOQjN5C90


同時刻


テクパトル「・・・で・・・この男の子は誰なんだ?」

19090「それが・・・偶然散歩していたら出会ったんですが・・・」

「なぁ、お姉ちゃん達ってみんな姉妹なんだよな」

御坂妹「そうですよ」

20000「うっはー・・・知らない男の子が家に来るなんて寝取りシチュ!」

17600「なにを言ってる・・・」

テクパトル「・・・な、なんなんだよ・・・」

冷や汗をかくテクパトル

その時、彼の家の電話が鳴り響いた




同時刻


一方「・・・」

番外「・・・」

一方通行と番外個体の目の前には、色白な少女が座っていた

番外「・・・アナタ好みな女の子だね」

一方「・・・なンでかこいつは受け付けねェ」

「ねぇ、二人は恋人なの?」

一方「うるせェ・・・それよりこっちの質問に答えろ」

番外「いきなり人の家に押しかけてきて、どういうつもり?」

「・・・さぁ」



169 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:48:18.39 ID:jOQjN5C90
一方「おい、あンまりガキだからってナメてンじゃねェ」

番外「・・・ミサカ達は、いざってなったら子供にも手を出すからね」

「それでもいいけど?あなた達が後悔しないなら」

番外「?」

一方「・・・なンなンだよこいつは」

呆れる一方通行、彼の携帯が着信音を奏でたのはそれからすぐだった




エツァリ「・・・アステカの少年が学園都市にいるなんて珍しいな」

「そう?」

ショチトル「あぁ・・・珍しい」

二人の前には、浅黒い肌の少年が座っていた

年齢は12歳ほどか

整った顔立ちを見る限り、相当親も美形なのだろう

エツァリ「・・・アステカのよしみで家に連れてきてしまったが・・・」

ショチトル「お前、両親が心配するんじゃないか?」

「あぁ、大丈夫・・・親には言っている」

エツァリ「言っている?ここにいることをか」

「正確には少し違うが、そんなところだ」

エツァリ「・・・」



170 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:49:01.67 ID:jOQjN5C90
「それより、二人は恋人なのだろう?」

ショチトル「そうだけど」

「セックスはしないのか」

エツァリ「な、なにを言っているんだお前!」

「男と女ならするだろう」

ショチトル「ませてるなお前・・・」

「両親譲りでね」

ふふん、と鼻を鳴らす少年

「それよりいいのか、先程から携帯が光っているが」

エツァリ「・・・おや、上条さんから・・・か」



削板「つまり!お前は俺達に会いたかったんだな!」

ある公園、そこで夜だというにも関わらず、削板は大声を張り上げていた

「そういうことだ!」

黒子「・・・お二人とも、もう少しお静かに」

削板「あぁ、悪い悪い!」

「はっはっはっ!夜中に大声を出して迷惑を掛けるなんて、まだまだ情熱が足りないな!」

削板「おぉ!お前も熱い男なのか!」

「当たり前だ、父親譲りの熱血漢、母親譲りの正義感!」

黒子「まぁ・・・最近の子供にしては珍しいくらいの熱血漢ですわ」

「ちっちっちっ、最近の子供なんて一くくりにしてちゃ、誰も助けられないぞ」




171 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/21(土) 20:51:33.88 ID:jOQjN5C90
わずか6歳くらいの少年は、しかしとても大人びて見える

ハチマキを頭に巻き、「情熱!」と書かれたシャツを着ている

黒子「軍覇さんそっくりですわね」

「はっはっはっ!」

削板「はっはっはっ!」

黒子「・・・ですが、あなたどこかで・・・」

ピリリリ、と鳴った携帯に、黒子の言葉は遮られた



上条「…そっか、あぁ、ありがとう」

携帯をポケットにしまった上条

彼の額には、冷や汗が浮かんでいた

上条(…)

自分達の家にいる、謎の少女

害がありそうなわけではないが、垣根達の話を聞くとどうも引っかかってしまう

上条(…偶然なわけがないよな)

同じようなシチュエーションで、上条の友人達は困惑している

上条(…)

「?ねぇ、お兄ちゃん?」

上条「…お前…どこから来たんだ?」

「ど、どこからって…私は学園都市に住んでるんだけど」

上条「…」

美琴「どうしたのよ当麻…なんだか顔が怖いけど」

上条「…いや、なんでもない」


172 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/22(日) 22:54:50.85 ID:pU/Z6fu+0

上条「…俺、ちょっと垣根の家に行ってくるよ」

美琴「ど、どうしたのよ?」

上条「いや…なんでもない」

「お兄ちゃん?」

上条「…なぁ、お前ってもしかして…」

「?」

上条「…いや、なんでもないよ」

険しい表情の上条、彼はある結論に達していた

上条(…こいつは、少なくとも、今の時代の人間じゃない)

上条(…信じられないけど…おそらくは未来からきた人間だ)

今の学園都市では説明できない、親との共存

そして何より、「今現在」の話をすると辻褄が合わなくなる会話

上条(…ってことは…)

おそらく、垣根の家に来ている子供もそうなのだろう

だとすればなぜ

上条(…どうして、未来からここに来る必要があった?)

彼らの命を狙うためか、それとも

上条(…なぜ…)


バタン、と閉じられた部屋のドア

外には、静けさと闇が広がっている


173 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 09:38:53.26 ID:XSHjVOlr0


垣根「あぁクソ!マジでなんなんだよお前らは!」

垣根は大声を張り上げていた

彼の家に突然踏み込んできた二人の少年

歳は10程だろう、将来が非常に有望と思えるほどの美形だった

「誰って言われても答える義理なんてねぇだろ」

二人の内片方、髪を長く伸ばしているほうがぶっきらぼうに言う

「そうそう、俺達が誰かなんて知ったところでどうしようもないでしょ」

垣根「てめぇらな・・・」

心理「こらこら、みんな仲良くしなさい」

「なんだよ姉ちゃん、アンタはずいぶん落ち着いてるな」

心理「あら、子供の駄々に付き合うほど馬鹿じゃないもの」

垣根「遠回しに俺を馬鹿って言ってんのかてめぇ・・・」

心理「はいはい・・・それで、さっきから聞いてるけど・・・あなた達は誰?」

「だーかーら、答えるつもりはないんだって」

心理「へぇ、答えられないってことかしら」

垣根「はぁ?」

「・・・姉ちゃんは鋭いな」



174 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 09:39:21.96 ID:XSHjVOlr0
心理「垣根、よくよく考えなさい・・・この子達は私達を苛立たせても何の意味もないはずよ」

垣根「・・・つまり、敢えて答えないってわけじゃないのか」

「そうそう、答えられない理由があんの」

心理「で、その理由っていうのは何かしら」

「それを言えるわけねぇだろ」

ハン、と鼻で笑った少年を垣根が睨みつける

垣根「・・・俺達の命を狙ってんのか」

「なに言ってんだよ兄ちゃん・・・アンタに勝てるわけないだろ」

垣根「だろうな、つまりそういう目的ではない・・・か」

「安心しろよ、俺達はむしろアンタ達に素直に会いたくて来たんだ」

心理「どういうこと?私はあなた達なんて記憶にないけど・・・」

「・・・過去の記憶を探っても、俺達のことは分からないよ」

髪の短い(とは言っても、垣根と同じほどだが)少年が意味深なことを口走る

垣根「・・・」

どういうつもりだ、尋ねようとしたその時

ピンポン、とチャイムが鳴った



175 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 09:39:51.38 ID:XSHjVOlr0
垣根「・・・誰だよ、こんな時間に」

心理「まさか・・・まだ誰か来るの?」

「さぁ?でも俺達以外に来るとは思えないけどな」

垣根「・・・」

めんどくさい相手じゃなきゃいいが、と思いながら垣根は玄関へ向かう


上条「おっす・・・そっちはどうだ」

扉を開けると、そこには友人が立っていた

垣根「上条!いや助かった、マジであのガキ共意味分からないんだよ!」

上条「・・・入っていいか」

垣根「あぁ」

上条(・・・俺の予想が正しければ、きっとその子達も未来から来たことになる)

間違っているならば、本当に馬鹿な考えだ

だがなぜか、上条には確証があった

学園都市が最近、タイムマシンを開発しようとしているという噂話

過去を改変し、未来を知ることが出来るなら・・・それはとてつもなく多大な利益をもたらす物だ

上条(突然現れた子供達は・・・まさか)

タイムマシンなんて物を、本当に


176 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 14:26:30.80 ID:XSHjVOlr0

「ん?兄ちゃん、誰?」

上条「…」

上条がリビングへ入ると、二人の少年が疑わしげな目で彼を見つめてきた

上条「…俺は上条当麻」

「へぇ」

その名前を聞いた途端、ニヤニヤとする少年

垣根「なぁ上条、こいつらなんだと思う?」

上条「…俺達の家にも、女の子が一人やってきた」

心理「女の子…?」

上条「あぁ、年齢はちょうどこの子達と同じくらいだ」

「ふーん」

上条「…俺達の所だけじゃない、一方通行やテクパトル…削板、エツァリの所にも」

心理「み、みんなの所に来てるっていうの?」

上条「あぁ」

エツァリ、という単語だけには少年達が訝しげな顔をする

「…エツァリって誰?」

垣根「さぁな、お前達には関係ねぇんだろ?」

「ま、そうだね」

177 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 14:31:54.37 ID:XSHjVOlr0
垣根「…それで、その女の子ってのはどうなんだ」

上条「何も、別に怪しい動きはないし…」

心理「この二人もそうよ、敵ってわけじゃないみたい」

上条「…」

上条が二人を観察する

見たところ、二人ともかなりの美形だ

恐らくは親が美形なのだろう、それに服装もかなりオシャレときている

上条(…この子達は、能力者なのか)

「どうしたんだよ、兄ちゃん」

上条「君達も、能力者なのか」

「そうだよ、お察しの通り」

上条「…」

「…アンタの所に来たって女の子も能力者なんだろ」

上条「あ、あぁ…でもなんで分かったんだ」

「君達も、ってことはその女の子もってことさ」

上条「…」

なるほど、と納得することは出来なかった

今の上条のセリフからなら、普通は「上条も」能力者と考えるのではないか

上条(…俺が能力者じゃないってことを知っている?)


178 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 14:35:13.96 ID:XSHjVOlr0
「…それで、兄ちゃんはわざわざ何しに来たの」

上条「…君達に訊きたいことがあるんだ」

「なに?」

上条「…君達は、何年生まれだ」

「…」

心理「な、なに訊いてるのよ…もっと大切なことがあるんじゃないの?どこから来たのか、とか…」

垣根「そうそう、別にこいつらの年齢なんてどうでもいいだろ」

上条「…答えられないのか」

「…なぁ、兄ちゃん…もしかして気づいてんの?」

少年が尋ねてくる、しかしまずいことに気付かれたという表情には見えない

むしろ上条の反応を面白がっているようだ

上条「…だったらどうする」

「別に、秘密を聞かれても消されるなんてオチじゃないし」

上条「…」

垣根「なぁ、どういうことなんだよ」

上条「俺の推測だと…この子達は、未来からやってきたんだ」

心理「…み、未来?」

上条「あぁ、俄かには信じられないし…俺だって自分で何を言っているのか分からない」


上条「でも、それが一番辻褄が合うんだ」

179 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 14:48:36.51 ID:XSHjVOlr0
「…ピンポーン、大正解ってやつだね」

垣根「…マジかよ」

「そういうこと、俺達は未来から来た…っていうよりは戻ってきたってところかな」

上条「…どうやって戻ってきたんだ、時間移動能力者なんて聞いたことがないけど」

「タイムマシンってヤツだよ、あれって未来じゃ完成してるんだぜ」

自慢げに少年が手を広げる

「なんだったかな…この世の中にある、可能性の世界がなんだのシュレディンガー理論がなんだの言ってたかな」

心理「…信じられないわね、そんなの」

垣根「時間っていうのは不定形だ、さらにそこに世界なんていう概念が絡んでくる…過去の世界っていうのは机上の空論、過ぎてしまえば実在しないものなんだ」

「だったら、アンタの能力はなんなんだよ?この世に存在しない物質、なんてこの世に引き出すことは出来ないはずだ」

「だけど兄ちゃんはそれをやってのけてる、タイムマシンだって不可能じゃないんだよ」

上条「…なぁ、もう一つ訊いていいかな」

「正解ついでにどうぞ」

上条「君達は、今更こんな時代に何をしに来たんだ?」

「…」

上条「文明も、人々も、社会情勢も…断言はできないけど、きっと未来の世界のほうが暮らしやすいだろ?酔狂でわざわざこんな所にやってきたのか?」

「まさか、タイムマシンって結構使うのに金掛かるんだぜ?期限付きだしさ」

心理「期限?」

「3日で30万、1日で10万掛かるんだぜ?しかも移動する間の10分くらいは吐き気がやっばいのなんの」

垣根「…本当だとすると未来ってすげぇな」

「だろ」

180 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 14:52:21.05 ID:XSHjVOlr0
上条「話を元に戻してもいいか」

「あぁ、そうだったな…」

垣根「…何しに来たんだ、お前達は」

「…あんまり昔の人間に真実を伝えるな、なんて言われてるけど…どうせそんなの誰かが破るもんだし」

「俺達がその第一号になっても統括理事長様も許してくれるだろ」

上条「…」

「俺達の名前、まだ言ってなかっただろ」

垣根「あぁ」

帝凰「俺は垣根帝凰、よろしく」

垣根「…か、垣根?」

翼「俺は垣根翼、初めましてになるだろうね」

心理「か、垣根って…どういうこと?あなた弟とかいたの?」

垣根「いねぇよ…っていうか、歳の差が半端なくなるだろうが」

翼「違う違う、俺達は父ちゃんの弟なんかじゃないんだって」

垣根「…は?」

帝凰「だから、俺達は兄ちゃんと姉ちゃんの子供なんだよ」

心理「…」



垣根・心理「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

帝凰「いいリアクションありがとう」

181 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 15:02:11.65 ID:XSHjVOlr0
垣根「こ、子供ってどういうことだよ!?」

帝凰「だから、父ちゃんと母ちゃんの息子だよ」

心理「う、嘘よね!?」

翼「それが残念なことに、本当なんだよ」

ニヤニヤと笑う二人の「垣根」

彼らはもしかして

上条「じゃ、じゃあ昔の両親に会いに来たってことか!?」

帝凰「そういうことだよ、上条のおじちゃん」

上条「お、俺のこと知ってるのか?」

翼「あぁ、だって麻琴ちゃんのお父さんだしさ」

上条「ま、麻琴?」

帝凰「おじちゃんとおばさんの子供だって」

上条「ま、待ってくれ!!おばさんってのは美琴でいいんだよな!?」

翼「そうだよ」

上条「…ってことは、俺の家に来たあの子は…」

帝凰「麻琴ちゃんだよ、俺達同級生なんだけどさ…みんなでタイムマシンに乗って、昔の親に会おうって話になったってわけ」

垣根「…一方通行や、テクパトル達のも…」

翼「そ、全員同い年」

帝凰「エツァリってのは誰か知らないけどね」

上条(…あいつらだけは、同い年の子供じゃないのか)

182 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 15:07:28.04 ID:XSHjVOlr0
垣根「…ほ、本当なのか?」

帝凰「何度も言っただろ、信じられないなら色々と証拠はあるけど」

少年の一人、帝凰と名乗ったほうがポケットから一枚の写真を取り出す

帝凰「ほら、将来の二人の写真」

垣根「…!!」

そこに写っているのは、たしかに垣根らしき人物と心理定規らしき人物だ

心理「ほ、本当に…私達の息子なの?」

翼「まぁね…」

垣根「心理定規と俺の…」

帝凰「あぁそっか、今はまだ母ちゃんに名前はないのか」

心理「?今はってどういうこと?」

帝凰「将来、父ちゃんが母ちゃんに名前をつけるはずだよ、俺達が生まれるよりは前に」

垣根「マジかよ…」

上条「…な、なぁ…ってことはさ、俺達の家にいるのは俺の娘なのか?」

翼「多分ね、黒髪でショートならそうだよ」

上条「…」

どこかで見たことのあるような少女だ、と上条は思っていた

だが違う、これから見るはずの少女なのだ

上条「…そう、だったのか…」

183 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 15:13:24.10 ID:XSHjVOlr0
垣根「…な、なぁ」

帝凰「なんだよ、父ちゃん」

垣根「…お前達は…俺達に会って、何をしたかったんだ」

翼「うーん…何ってのはないかな、ただ昔の父ちゃんと母ちゃんを知りたかっただけ」

心理「どうして?」

帝凰「…父ちゃんがさ、昔は大変だったって言ってたんだ」

帝凰、という少年が少し寂しげに笑う

帝凰「…能力が強すぎて、大人達に利用されて…まともに学校にも通えない、嫌な時があったって」

翼「だから、俺達にはそんな人生を歩んでほしくないってことも」

垣根「…」

帝凰「…その人生を変えたのは、母ちゃんだったんだって」

心理「…垣根…」

帝凰「それがなんかむず痒くて…俺達にとっては、父ちゃん母ちゃんだけど…」

翼「きっと、二人には何か別の世界があったんだろうって思ったらさ、いても立ってもいられなくなったんだ」

垣根「…俺の子供らしい…かな」

心理「ホント…馬鹿みたい」

笑いながら、心理定規が二人を抱きしめる

帝凰「な、なんだよ…恥ずかしいからやめろって」

心理「…ねぇ、未来にはいつ帰るの?」

翼「二日後だけど…なんで?」


184 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 15:17:15.07 ID:XSHjVOlr0
心理「じゃあ、それまであなた達と一緒にいられるのね」

帝凰「あ、あぁ…」

垣根「…いいな、将来生まれる子供達に…先に会えるってのは」

心理「ふふ…不安とかはなくなるかもね」

翼「…不安なのか?」

心理「そうじゃないわ、ただ未来っていうのは分からないものだから」

垣根「…そうと分かれば拒む理由もなくなったな、今日はせいぜい親孝行してもらうからな!!」

帝凰「げ、いっつも酒とか注がせるくせによ…」

垣根「うるせぇ、未来の俺に文句は言いな!!」

翼「はいはい…そうだ、おじちゃん」

上条「お、俺か?」

帝凰「麻琴ちゃんの所にいてあげなよ、あいつおじちゃんとおばちゃんに会えるのめちゃくちゃ楽しみにしてたんだからさ」

上条「そうなのか?」

翼「…おじちゃんとおばちゃん、めっちゃくちゃラブラブだから」

垣根「へっ、お前ららしいもんだな」

帝凰「だからいってあげなよ、麻琴ちゃん最近おじちゃんと過ごせる時間が少なくて寂しがってたから」

上条「…あぁ、ありがとう」

家に帰る準備をしながら、上条は思っていた

こんなに優しい男の子なら、自分の娘が惚れても無理はない、と



帝凰「あ、でも今から子作りってのはダメだぜおじちゃん」

上条「やっぱお前は垣根の子供だよ!!!」

185 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 15:25:48.24 ID:XSHjVOlr0

美琴「ねぇ、あなたのお母さんとお父さんってどんな人?」

「?」

美琴は、目の前の少女に尋ねていた

それはつまり、「上条当麻」と「御坂美琴」がどんな人物か、と訊いていることになる

それも、実の娘に

「…お母さんはね、ちょっと照れ屋さんで…いっつもお父さんに対して素直になれてないかな」

美琴「へぇ…」

「あ、でもね!!本当はとっても仲良しなんだ!!」

美琴「なんだ、それならよかったじゃない」

「お父さんはね、優しくて、しっかりしてて…でもよく怪我したりしてるんだ」

美琴「そう…大変なのね」

「うん、でも私はお父さんもお母さんも大好きなんだ!」

美琴「いい子じゃない、きっとお父さんもお母さんも喜ぶはずよ」

「えへへー」

美琴に頭を撫でられて、満足そうに笑う少女



上条「美琴!!」

突然帰ってきた上条に、二人はビクリと驚いた

美琴「きゅ、急に脅かさないでよ!!」

上条「わ、悪い悪い…じゃなくて!!」

「お兄ちゃん、どうしたの?」

上条「え、あ、いや…」

186 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 15:49:06.96 ID:XSHjVOlr0
美琴「そうだ、垣根のほうはどうだったのよ」

上条「…そのことなんだけどさ」

上条が二人の傍に座る

何から切り出せばいいのか

上条「…そいつらは…いや、きっとこの子も」

「?」

上条「未来から来たんだ」

美琴「な、何言ってるのよ当麻…」

上条(…そうだよな、それが自然な反応だ)

美琴「未来って…時間移動能力者なんて、聞いたこと…」

上条「そうじゃなくて、タイムマシンらしいんだ」

美琴「タイムマシン…?」

上条「今日偶然ニュースでもやってた…未来の学園都市は、タイムマシンの開発に成功したんだ」

「…うん、そうだよ」

美琴「う、嘘…」

上条「…そして、この子は…この子は、名前は麻琴って言うらしい」

麻琴「…」

上条「聞いてくれ美琴…この子は、俺とお前の間に生まれる子供なんだ」

美琴「…え…?」

麻琴「…うん…そうなの、今まで黙っててごめんね?」

美琴「ま、待ってよ!それ本当なの!?」

上条「あぁ、そうらしい」

187 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 16:29:18.36 ID:XSHjVOlr0
美琴「あ、あなた…」

麻琴「え、えへへ…」

ポリポリ、と頭を掻く少女

照れているような、なんだか気まずいような表情をしている

美琴「ほ…本当に私と当麻の子供…なの?」

麻琴「うん、お母さん!」

美琴「!!」

お母さん、と呼ばれた瞬間に美琴の体に電撃が走った

あぁそうか、この子は自分と愛する上条の間に生まれた子供なのだ、と

美琴「ま、麻琴っていうのよね?」

麻琴「うん!!」

美琴「麻琴…かぁ」

上条「そういえばさ、俺達の文字を一文字すつとってるんだよな」

美琴「そ、そうね…えへへ」

麻琴「だからね…お父さんとお母さんに会いに来たくて…」

美琴「そうだったんだ…ありがとうね、未来から会いに来てくれて」

麻琴「う、うん!!」

美琴に頭を撫でられ、満足そうな麻琴

上条「…そっか…そうだったのか…」

麻琴「だ、だから…今日は本当に嬉しかったんだ!!お父さんとお母さんがこんなに仲良しだったって知れたし!」

美琴「私も…自分の娘がこんなに可愛いなんて思わなかったわ…」ウルウル

188 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 16:33:55.62 ID:XSHjVOlr0
上条「…あ、そういえば垣根の所には帝凰君と翼君ってのが来てたぞ」

美琴「え、もしかしてその二人って垣根と心理定規の子供?」

上条「だってさ」

美琴「ってことは、麻琴は垣根の子供に片思い…」

麻琴「ち、違うもん!!」

美琴「…ふーん、素直じゃないのね」ニヤニヤ

上条「そこは美琴譲りなんだな」

美琴「な、なによ!?」

上条「…そうだ、同時に来たってことはお前も明後日まではこっちにいるんだよな?」

麻琴「うん、そうだよ」

上条「じゃあ、それまでは俺達に未来の話とかしてくれないか?」

麻琴「うん!!その代わり、お父さんとお母さんの話もいっぱい聞かせて!!」

美琴「えぇ、いいわよ!」

麻琴「やったぁ!!」

上条「…そっか、みんなの間にも子供がいるのか」

美琴「そういえばそうね」

上条「…気になるな…」

麻琴「じゃあ、明日みんなで集まってみたら?」

上条「…え?」



上条「…え、マジで」

麻琴「うん」

189 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 17:18:29.00 ID:XSHjVOlr0


上条「…」

蒸し暑さ、というのは夏の風物詩の一つでもある

それが人々に好かれるか否かはおいておくとして、だ

美琴「あぁ…暑い…」

麻琴「うーん…学園都市ってこんなに暑かったっけ…」

上条「未来じゃもっと空調とか整ってるのか?」

麻琴「うん、街全体が適切な温度に保たれるんだって」

美琴「それ、恐ろしいわね…」

麻琴「そうかな?」

くだらない話をしながら、「親子」はある場所に向かっていた

近くにあるレストランだ、そこで他の全員と待ち合わせをしている

美琴「…みんな、信じてなかったわね」

上条「当たり前だろ…未来から自分達の子供が会いに来た、なんて信じる方がおかしいだろ…」

美琴「そうだけどさ…」

麻琴「…でもね、みんなおんなじ学校なんだよ?」

美琴(…一方通行や垣根、削板はそうよね)

上条(テクパトルも…19090号が妹達だし、学園都市の外には出せないってことか)

美琴(…問題はエツァリさん達ね、あの二人だけはそこまで学園都市には関係ないし)

上条(…だから、垣根の子供達は二人を知らなかったのか…?子供が違う学年、もしくはエツァリ達は将来学園都市の外に住む、とかか)

麻琴「ねぇねぇ」

上条「ん、どうした?」


190 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 17:23:24.00 ID:XSHjVOlr0
麻琴「あそこのお兄さんが、私のことじーっと見てくるんだけど」

上条「?」



一方「…なンだよあのガキ…打ち止めの黒髪バージョンとか素敵すぎンだろォが…」

番外「ちょっと、娘の前でそんなこと言わないの」

小百合「そうそう、お父さんは本当に小さな女の子が好きだね」

一方「…てめェ、人を父親呼ばわりするンじゃねェ」

小百合「だってお父さんじゃんか」

番外「あっはは、未来から来たなんて素敵すぎてミサカも信じちゃいそうだよ」

小百合「お母さんは昔からその口調なのか…」

一方(…あァ、こいつは番外個体が妹達って知らないのか…っていうか、こいつマジで俺の娘かよ)



上条「…一方通行だ…」

麻琴「え、小百合ちゃんのお父さんだよね?」

美琴「へ、へぇ…小百合ちゃんってのは一方通行の娘さんだったの…ってことはあの子ね」

上条「あぁ、たしかに色白で似てるかも…」



一方「あァ?上条もいたのかよ」

上条「今さらか…」

一方通行達は、レストランへ行く途中のようだった

偶然上条達と遭遇した、ということになる

191 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 17:29:14.61 ID:XSHjVOlr0
上条「えっと…初めまして、かな」

小百合「あ、おじちゃんこんにちは」

上条「お、おじ…」

麻琴「小百合ちゃんと私はいとこなんだよ!!」

美琴「そりゃ、そうよね」

小百合「麻琴もちゃんとおばちゃんとおじちゃんに会えたんだね」

美琴「お、おばちゃん…」

小百合「あぁごめん、お姉ちゃんって言った方がよかったかな」

美琴「い、いいわよ別に…」

番外「え、なになに?こっちはお姉様と上条の娘さん?」

一方「おい上条、娘を俺にくれ」

上条「黙れ」



上条「…で、お前達はまだ信じていないと?」

番外「うーん…ミサカは半信半疑ってくらいだけど、この人はもう断固否定だね」

一方「当たり前だろォが、未来からタイムマシンでやってきました、なンてくっだらねェ」

小百合「私からしたらお父さんのその考えがくだらないけどね」

一方「あァ?」

小百合「はぁ…あれ、そういえば翼君は来ないの?」

上条「翼?あぁ、垣根の息子さんだっけ…」

一方「…あいつらの子供とかいうのも来てンんのか、うさンくせェ」


192 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 17:37:53.82 ID:XSHjVOlr0

テクパトル「…お前、俺と美月の息子なのかよ」

エヘカトル「そうそう、わざわざ酔狂な名前なんてつけられたしさ」

19090「エヘカトル…って面白い名前ですよね」

エヘカトル「そうだな、確かに珍しいもんだ」

テクパトル「…俺が名づけたのかよ…」

エヘカトル「…そうだよ、親父がつけたんだから」

テクパトル「…なんで親父って呼ぶんだよ」

エヘカトル「親父だろうが」

レストランへ続く道を、三人は歩いていた

エヘカトル、というのは二人の息子らしい

年齢の割に背が高く、ハーフというだけあって中々の美形だ

19090「…あの、エヘカトルは学園都市に住んでるんですか?」

エヘカトル「そうそう、だっておふくろは妹達なんだろ?」

テクパトル「なんだ、お前はそれを知ってるのか」

エヘカトル「だって家におんなじ顔の姉ちゃんたちが何人もいるんだぜ?」

テクパトル(将来の俺もまだあの家に住んでるのか…)

エヘカトル「統括理事長まで同じ家にいるし…まぁ、便利だからいいけどな」

19090「アレイちゃんもまだ未来で一緒に過ごしてるんですか…」

エヘカトル「…ん?あっちになんかアステカの人っぽいのがいるけど」

テクパトル「あぁ、あれは…」

193 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 17:47:29.70 ID:XSHjVOlr0

エツァリ「…お前は12歳って…本当か」

イツトリ「あぁ、そうだぞ」

ショチトル「…上条の話だとタイムマシンは学園都市で開発されたらしいし…」

エツァリ「…つまり、俺達は将来も学園都市にいるのか…」

イツトリ「まぁ、そういうことだがな」

ショチトル「?なんでそんなに言葉を濁らせるんだよ」

イツトリ「父さんは単身赴任でアステカに行っているんだぞ」

エツァリ「そ、そうなのか?」

イツトリ「…たまには帰ってくるが、母さんはよく性欲を持て余しているな」

ショチトル「…そうなのか」

イツトリ「よく電話で二人…」

エツァリ「…あんまり街中でそんなことを話さないでくれ…っと、向こうにテクパトルがいるな」

ショチトル「…お、あいつにも子供がついてるぞ」



エヘカトル「…え、なんか近づいてくるんだけど」

テクパトル「安心しろ、あいつらは俺の知り合いだ」

19090「えっと…あの子はお二人の子供なんですかね?」

テクパトル「だろうなぁ…」


194 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 18:34:21.68 ID:XSHjVOlr0

エヘカトル「…なぁ」

テクパトル「よ、よぉ…」

エツァリ「…久しぶりですねテクパトル」

ショチトル「…そっちは、やっぱり…」

19090「え、えぇ…美月とテっくんの子供みたいです」

エツァリ「…名前は?」

エヘカトル「エヘカトルだよ、アンタは」

エツァリ「エツァリです、こっちはショチトル」

ショチトル「エヘカトルとは中々いい名前だな、風の神か」

テクパトル「…そっちの子は」

イツトリ「イツトリだ、よろしく」

テクパトル「お前達もまた酔狂な名前を…」

エツァリ「どれはお互い様でしょう」ハハハ

テクパトル「…」

エツァリ「…」


テクパトル・エツァリ(本当に俺達の子供だ…)


19090「エヘカトル、今日は美月達の友人にも会えるんですよ」

エヘカトル「美琴おばさんとかだろ、知ってるよ」

ショチトル「美琴おばさんって笑えるな」

テクパトル「…全くだよ…」ハァ


195 :kou [sage]:2012/04/23(月) 18:35:26.28 ID:PsARtUXR0
エへカトルってすごい名前ですね・・・
196 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 18:56:32.24 ID:XSHjVOlr0

削板「はっはっは!道理で俺に似ている、熱い男だと思っていたぞ!!」

覇道「はっはっは!!俺は削板覇道、親父の熱い血を引き継ぐ男だ!!」

削板・覇道「はーっはっは!!!」

レストランへ向かう道、その鉄板のように熱を持ったアスファルトの上

夏の太陽とか、アスファルトだとか目でもないというほどの熱気を持った男二人が笑っていた

黒子「…あの、本当に私達の子供なんですの?」

覇道「おう!!親父とおふくろは結婚するのが結構遅かったって、美琴お姉さんが言ってたぞ!!」

黒子「あら、お姉さまを知っていますの?」

覇道「よくお世話になってるからな!」

削板「しかし、俺の息子ならばやっぱり根性で何かを成し遂げているだろう!」

覇道「さっぱり分からない!!ただ説明できない力ってのは持ってるけどさ!!」

削板「なんだ、まだまだそんなものか!!」

覇道「ははは!!親父にはまだまだ敵わないさ!!!」


削板・覇道「はーっはっは!!!」

黒子「あ、あの…静かにしていないと周りから変な目で…」

覇道「なにぃ!?俺達の熱さを変な目で見るなんてけしからんヤツらだ!」

削板「全くだな、覇道よ!!」

黒子(なんだか…この親子はいつかトーナメントとかでぶち当たりそうですわね…)

ため息をついた黒子は、もう一度レストランの場所を確認する


黒子「あら、ここですのね」

話し込んでいるうちに着いていたようだ


197 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 21:23:28.70 ID:XSHjVOlr0

上条「よし、全員集まったか」

垣根「あぁ」

テクパトル「…なんだ、垣根達は二人も子供がいるのか」

一方「盛ンだな」

上条「…全くだよな」

垣根「おいおい、双子なんだって」

ショチトル「双子か、盛んだな」

垣根「おい」

帝凰「…なんていうか、にぎやかだな」

美琴「本当に…」

帝凰「…アンタ、麻琴のお母さんだよな?美琴おばちゃん?」

美琴「そ、そうだけど…」

帝凰「…へぇ、麻琴もこんな中学生になるのか…」

麻琴「な、なによそれ…」

エヘカトル「相変わらず仲良しだな、二人は」

小百合「全く、羨ましいわよね」

翼「なんだ、小百合ちゃんは羨ましいのか」

小百合「ち、違う違う!!」

黒子(収集がつきませんの…)

198 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/04/23(月) 21:41:04.55 ID:XSHjVOlr0
垣根「…んで、なんで集めたんだ?」

美琴「あぁそうそう…一応、ここでみんなの確認をしておこうと思っててね」

覇道「今更何を確認するんだ?」

美琴「えっと…君は…?」

削板「俺の息子だそうだ!!熱い男だ!!」

美琴「…な、なんか似てるわね」

上条「えっと…そっちは?」

イツトリ「エツァリとショチトルの息子のイツトリですよ」

上条「あぁ、たしかに似てるけど…」

番外「一人だけ、年上だよね?どう見ても中学生くらいだし」

イツトリ「12ですよ」

エツァリ「…さすが自分達は子供生まれるのが早いですね」

ショチトル「はは、さすがだな」

垣根「褒められたことじゃねぇよ」

心理「…えっと、そっちは一方通行と番外個体の子供?」

小百合「えぇ、そうよ」

上条「…似てるな、たしかに」


199 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/23(月) 21:44:56.77 ID:XSHjVOlr0
今日はここまで

早いですが、まぁ大学生活は忙しいのですよ


未来からのお客様とかいうベタなことをしてしまった…w


では
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 22:58:19.61 ID:N6aBvnHBo
おつにゃんだよ!

201 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 16:58:58.05 ID:wDVxx2M70
小百合「それより・・・みんな、ちゃんと自分達の目的は果たした?」

上条「目的?」

垣根「なんだよ、俺達に会いに来たんじゃないのか」

帝凰「それもあるんだけどさ」

覇道「なんだなんだ!?兄ちゃん達はなんか目的があって来たのか!?」

エヘカトル「なんだこいつ?」

削板「ははは!俺の自慢の息子だ!」

エヘカトル「うげ・・・アンタもしかして、学園都市のナンバーセブン?」

黒子「あら、知っていますの?」

イツトリ「たしか・・・統括理事会に刃向かい左遷されたんだっけ」

小百合「あれ、統括理事長を殺害したんじゃないの?」

翼「いやいや、たしか恐竜を絶滅させたんだろ」

麻琴「?野球を9回までにした人じゃないの?」

一方「・・・お前、どンだけ変な噂立てられてンだよ」

削板「ははは!いいじゃないか!」

エツァリ「それより、目的というのは?」

麻琴「あ、えっと・・・」

小百合「私の目的ってのは、お父さんがあの打ち止めっていう人を預かってる理由を知ること」



202 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 16:59:24.55 ID:wDVxx2M70
一方「・・・あァ?」

番外「へぇ・・・」

小百合「なんなのあの人?美琴おばさんとお母さんが姉妹なのは分かるし、美月おばさんもだけど・・・」

美琴「あ、えっと・・・」

小百合「それに打ち止めっていう名前・・・」

一方「・・・いいだろ、別に」

小百合「良くない・・・別に打ち止めさんは嫌いじゃないけど、なんで一緒に暮らしてるか知りたい」

垣根「ま、親父がもう一人別の女を家に住まわせてるのはきついな」

19090「気持ちは分かりますが・・・その、少し複雑な理由が・・・」

エヘカトル「・・・なぁ、小百合」

小百合「なによ」

エヘカトル「・・・お前、なにも知らないのか?」

テクパトル「お、おい」

エヘカトル「なら教えてやるって、美琴おばさんは超電磁砲の異名を持つ超能力者だ」

小百合「そんなこと知ってるわよ」

エヘカトル「・・・その美琴おばさんのクローンが、俺のおふくろやお前の母さんだ」

小百合「・・・え?」

麻琴「そ、そんなの初めて聞いたよ!?」


203 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 16:59:50.73 ID:wDVxx2M70
帝凰「クローンって・・・」

覇道「で、でも人間のクローンは禁止されてるだろ!?」

美琴「・・・あのね、学園都市には・・・やっぱり悪い人達もいるのよ」

心理「あら、もっとストレートに言いなさい・・・そのクローンの半分近くは殺されたのよ」

小百合「殺されたって・・・ま、待って!でもお父さんとおばさんのクローンは関係なかったはずじゃ・・・」

翼「殺された、ってことは誰かが殺したんだな」

小百合「!」

一方「・・・」

イツトリ「な、なんだよそれ?」

ショチトル「・・・」

小百合「お・・・お父さんなの?」

一方「・・・あァ」

小百合「じゃ・・・じゃあ、お母さんは?打ち止めさんは?」

番外「ミサカ達はその生き残り、一方通行にクローン・・・妹達を殺させる計画は結構前に凍結したから」

黒子「・・・上条さんの手によって、ですの」

19090「えっと・・・」

小百合「お・・・お父さんは・・・人殺しなの?」


204 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:00:19.18 ID:wDVxx2M70
一方「・・・」

一方通行が眉をひそめる

自分の娘がタイムマシンなんていう夢の装置に乗って、自分に会いに来た

その娘が知ってしまったのは、あまりに辛く酷い現実だったのだ

一方「あァ」

小百合「う・・・嘘!お父さんはたしかにちょっと素っ気ないけど、優しいじゃない!」

垣根「人間は変わるんだよ」

心理「・・・一方通行だけじゃないわ、私や垣根・・・エツァリ君にショチトルだって」

削板「・・・そうだな」

帝凰「・・・ふーん」

イツトリ「・・・学園都市にいれば、闇に触れることもある、か」

テクパトル「俺だって人を殺した、この中には人殺しが半分いるんだ」

麻琴「テクパトルおじさんまで・・・?」

テクパトル「あぁ」

麻琴や小百合は純粋な子供なのだろう、その事実に顔を青くしている

一方の帝凰、翼やイツトリ、エヘカトルは平気な顔だ

エヘカトル「・・・認められる行為ではないがな」

翼「仕方ないって場合があるだろ」

覇道「仕方ないで人を殺せるのか!?」

覇道は声を荒げた、正義感が強い子供なのだろう


205 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:00:45.56 ID:wDVxx2M70
上条「・・・そうだよな」

番外「・・・」

一方「小百合とか言ったな」

小百合「う、うん・・・」

一方「そンなこと確認するために会いに来たのか」

小百合「!」

覇道「てめぇ!」

掴み掛かろうとする覇道を、黒子が抑える

黒子「ダメですの!」

覇道「放してくれ、おふくろ!」

19090「・・・小百合ちゃん、麻琴ちゃん・・・」

麻琴「一方通行おじさんも・・・テクパトルおじさんも・・・?」

テクパトル「・・・怖いか」

小百合「・・・あ・・・」

一方「・・・後悔したか、てめェが知りたかった過去なンてクソみたいなもンだ」

小百合「っ・・・!」

堪えきれなかったのか、小百合が駆け出していく

美琴「ちょ、ちょっと!」

ショチトル「だ、誰か追い掛けたほうがいい!」

翼「俺が行くよ、下手にみんなが行くよりはマシだ」

垣根「お、さすが俺の息子だな」

ニヤリと笑った垣根に、翼が一瞥をくれる



206 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:01:12.39 ID:wDVxx2M70
翼「なぁ、父ちゃん」

垣根「なんだ」

翼「人殺しを後悔してんのか、父ちゃんは」

垣根「してないと言えば嘘になる、していると言えば偽善だ」

翼「そっか」

分かった、と言って翼も駆け出して行く

削板「一方通行!あんなこと言ったら、子供は怖がるはずだ!」

19090「そ、そうですよ・・・もっと柔らかい言い方を・・・」

一方「だったらなンだよ、俺が妹達を殺した真実に代わりはないだろ」

テクパトル「・・・ごめんな、麻琴ちゃん」

麻琴「あ・・・う、うん・・・」

テクパトル「・・・一方通行は、好きで義姉さんのクローンを殺していたんじゃないんだ」

美琴「・・・」

麻琴「お・・・お母さんは、一方通行おじさんを許してる?」

美琴「許してる・・・わよ、ちょっと悲しい気持ちはあるけど」

麻琴「・・・そっか」

帝凰「それで?麻琴はどうしたいんだ」

麻琴「・・・私には分からないけど・・・でも、一方通行おじさんもテクパトルおじさんも優しいってことは知ってる」


207 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:01:53.97 ID:wDVxx2M70
テクパトル「優しい、か」

麻琴「・・・人は変われる、って垣根おじさんは言ったよね」

垣根「あぁ、言ったな」

麻琴「だったら二人とも変われたんだよね?この時代より、前に」

一方「さァな・・・だが守ることを知ったのは確かだ」

テクパトル「俺も、そうだな」

麻琴「ならいいよ・・・私、まだ子供だから難しいことは分からないし」

エツァリ「・・・覇道さんは、どうですか」

覇道「ちっ・・・人殺しなんて許せないが、反省して道を改めたなら仕方ないかな」

削板「それでこそ俺の息子だ」

番外「・・・でもさ、小百合は大丈夫かな?」

一方「垣根の息子が一人ついて行った、大丈夫だろ」

心理「・・・ねぇ、小百合ちゃんの目的はあれだったけど・・・あなた達の目的は?」

イツトリ「俺は特にないけどな」

帝凰「俺達は、父ちゃんに尋ねなきゃいけないことがある」

垣根「なんだ?」

帝凰「母ちゃんのことを愛してるか」

垣根「はぁ?」



208 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:02:20.40 ID:wDVxx2M70
帝凰「大切なことだ・・・俺達が生まれてから、二人は恋人ではなく親になってしまったからな」

心理「あなた・・・子供なのに難しいことを考えるのね」

帝凰「子供だからこそ、親の問題には気づくんだよ」

垣根「愛してるぜ、世界中のどんな女より」

帝凰「・・・あっそ、なら俺の目的も終わりだ」

上条「・・・」

エヘカトル「俺も特にはない・・・妹達ってのが生まれた理由を知りたかったんだが、もう答えは出たからな」

一方「てめェも俺を怨むか?」

エヘカトル「怨んではいないさ、同情もしないがな」

一方「いい答えだ」

黒子「・・・麻琴ちゃんは」

麻琴「わ・・・私?」

黒子「麻琴ちゃんは、上条さんとお姉さまに確かめたいことがあったのでは?」

麻琴「うん・・・あるんだけど、恥ずかしいから三人の時に確かめたいな」

帝凰「そっか・・・なら、俺達がここにいる理由も無くなったな」

番外「どういうこと?」

垣根「一方通行、番外個体、お前らは小百合を追い掛けろ」

一方「はァ?なンで・・・」

上条「娘が泣いてたら・・・抱きしめてやるのが親の役目じゃないか」

一方「血だらけの腕だ」


209 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:02:48.95 ID:wDVxx2M70
上条「返り血はもう、涙で注いだんだろ」

一方「ちっ」

舌打ちをしてから、一方通行が立ち上がる

一方「お前らはどうする」

テクパトル「解散するさ、時間はあまりないから子供と色々話したいし」

19090「こうやって集まれて、楽しかったです」

削板「あぁ・・・いつかまた、未来でこんな風にしたいな」

イツトリ「その時は・・・誰も悲しまないようになればいいな」

心理「ほら、行きなさい」

美琴「一方通行・・・アンタはもう人殺しなんかじゃないんだから」

一方「うるせェな・・・」

コキコキ、と首を鳴らしてから一方通行が目を細める

一方「・・・説教の一発でもかますのが親の役目だなァ」





小百合「・・・はぁ・・・」

真夏の太陽が、空の中心を陣取っている

ジリジリと照り付ける日差しは、彼女の真っ白な肌に爪を突き立てるかのようだ

小百合「・・・」


210 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:03:17.80 ID:wDVxx2M70
だが、そんなことは気にならなかった

それくらい、今の彼女の心の中はあることで一杯だった

小百合「お父さんが・・・おばさんのクローンを・・・」

彼女にとって、美琴は叔母だ

そして、彼女の母親は

19090号、美月も

小百合「・・・クローンだったんだ・・・」

母親がクローン、そして父親はそのクローンを大量虐殺した張本人

肌と同じほどに真っ白だった彼女の心には、あまりに辛い真実だ

小百合「こんなことなら・・・」

翼「知らないほうがよかった?」

小百合「!」

くるり、と振り向くとそこには一人の少年がいた

垣根帝督の息子であり、そして彼女の思い人である少年が

翼「ったく、いきなり駆け出すから焦ったよ」

小百合「・・・ごめん」

翼「・・・いや、別に小百合ちゃんが悪いんじゃねぇって」

額に汗を浮かべながら、少年は小百合に近づいてくる

この暑い中、必死に走って自分を追い掛けてきたのだろう



211 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:03:44.90 ID:wDVxx2M70
小百合「・・・ねぇ、翼君」

翼「なに?」

小百合「ちょっと・・・話し相手になってくれない?」

翼「いいよ、そのために来たんだしさ」


彼の、女性に優しいところは父親譲りなのだろう

小百合はそんなことを考えていた

翼「暑くないか?」

小百合「ううん・・・大丈夫」

翼「・・・驚いたよな、まさかお前の母ちゃんが美琴おばさんのクローンだったなんてさ」

小百合「・・・うん」

道行く人々に内容を聞かれないよう、少し小さな声で二人は話す

擦れ違う人々は二人の会話に興味を示していない

小百合「・・・でも・・・お父さんが人殺しってほうが、辛いな」

翼「・・・俺が知ってる一方通行おじさんは、優しい人だよ」

小百合「私が知ってるお父さんも優しいよ!」

翼「わ、分かってるからあんまり大声出すなよ」

周りの通行人は一瞬、二人をじっと見つめた

だがただの小学生の喧嘩にでも見えたのだろう、大して興味もなさそうにまた各々の行動に移る

翼「・・・だからさ、俺は一方通行おじさんを信じてみたいんだよ」

小百合「私だって信じたいよ」


212 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:04:14.51 ID:wDVxx2M70
翼「なら・・・」

小百合「でも・・・お母さんは、お父さんを恨んでないのかな」

翼「・・・」

小百合「自分と同じクローンがたくさん殺されて・・・嫌じゃなかったのかな」

翼「嫌じゃないわけはないと思う」

二人は知らない、番外個体は誰よりも一方通行に対する「負の感情」を抱いていたことを

翼「でもさ、それを乗り越えて結婚したってことは・・・一方通行おじさんはやっぱり、変わったんじゃないかな」

小百合「・・・」

翼「たしかに、信じるのは難しいけどさ」

小百合「・・・お父さんは・・・人を殺して平気だったのかな?」

翼「・・・学園都市には色々と闇もある、特に一方通行おじさんは超能力者の中でもトップなんだ」

むしろ実験に悪用されないほうがどうかしている、と彼は付け加える

小百合「でも・・・お父さん、なんだかあんまり悲しそうな顔をしてなかった」

翼「・・・」

小百合「打ち止めさんもそうだ・・・お父さんと暮らしてる時に、なにも言ってないよ?」

翼「それは・・・」

小百合「お父さんもお母さんも打ち止めさんも・・・もしかしたら、クローンが死んでも平気だったのかな」

翼「そんなことないって、きっと」

小百合「だったらなんで今まで私に教えてくれなかったの!?こんな大切なこと!」

翼「・・・」

小百合「あ・・・ごめん、翼君に言ってもしょうがないのにね・・・」

翼「・・・あぁ、ごめん」


213 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:31:59.96 ID:wDVxx2M70
小百合「…お父さんは…私のこと、大切に育ててくれてる」

翼「そんなこと知ってるよ」

小百合「…きっと…優しい人なのに…」

はぁ、と深いため息をつく

彼女の心の嘆きなど、翼にはほとんど理解できない

小百合「…ねぇ…翼君のお父さんは…」

翼「…わかんない、でも俺の父ちゃんだって第二位ってすっげぇ能力者なんだ」

小百合「…うん、そうだよね」

翼「…多分、小百合ちゃんのお父さんとおんなじようなことをしてきたはずだ」

小百合「…怖くないの?」

翼「なにが?」

小百合「お父さんが…人を殺したなんてこと」

翼「怖くないよ」

小百合「なんで?どうして?」

翼「…それは、俺の知ってる垣根帝督じゃないからさ」

小百合「…」

翼「俺の知ってる父ちゃんは…母ちゃんにベタ惚れしてて、俺達によくおもちゃとかゲームとか買ってくれて…」

翼「…そして何より、命の重みをしっている人だ」

翼「…その命の重みを知れたのは…きっと、過去に命を粗末に扱ってしまったからなんだ」

小百合「…」

翼「…俺は、今の父ちゃんしか知らないんだ」

214 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:35:58.80 ID:wDVxx2M70
小百合「…でも」

翼「俺は信じたいよ、父ちゃんは変わったって」

ニコリ、と笑った翼が小百合のほうを見つめる

人懐っこく柔和で、しかしとても力強い笑みだ

翼「…信じないことなんて誰にでも出来る、赤の他人にも、誰にでも」

翼「でもさ、信じてやれるのは一握りの人間だけだろ」

翼「…俺達が信じなきゃ、誰が父ちゃんを信じるんだよ」

小百合「!」

翼「…小百合ちゃん、小百合ちゃんはお父さんが好きなんだろ」

小百合「…うん、大好き」

翼「だったら信じなよ、君の好きなお父さんを」

疑うことなんて後からでも遅くないのだから、と付け加える

翼「…俺は、小百合ちゃんのお父さんも信じるよ」

小百合「…どうして?」

翼「うーん…俺はまだガキだから難しいことはわかんない、おじちゃんに苦労があったのかとか、なんでそんな実験に付き合ってしまったのか、とかはわかんない」

翼「でも、おじさんが小百合ちゃんのことを大好きだってのは分かる」

翼「分かることだけ信じるよ、俺は」

小百合「翼君…」

翼「…それに、きっと…」



一方「…おい」

小百合「!!!」


翼(きっと、一方通行おじちゃんも…)


215 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:42:40.30 ID:wDVxx2M70

一方「…」

鬼のような形相というのはこのことだろう

駆けつけてきた一方通行は、杖を地面に着きながら必死に走ってきたようだった

番外「あっちゃー…そんなに怒らないの」

一方「うるせェ、お前は黙ってろ」

番外「はーい」

小百合「…お、お父さん…」

一方「…お前、俺のことが怖いのか」

小百合「…」

睨み付けてくる一方通行の視線は、小百合が知っている彼のものとは違った

怒っている、なんていうものではない

小百合「ご、ごめんなさい…」

一方「誰が謝れなンて言ったンだよ、怖いのか怖くないのか聞いてンだ」

小百合「…」

翼「お、おじちゃん…」

一方「…どっちなンだよ」

小百合「…怖くないよ」

一方「あァ?」

小百合「怖くないもん!!お父さんは私を大切にしてくれるし、お母さんだって大切にしてる!!打ち止めさんを家に一緒に済ませてるのも、反省してるからなんでしょ!!」

一方「だったらどォした」

216 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:45:58.96 ID:wDVxx2M70
小百合「…怖くないもん、お父さんのこと…」

一方「…俺はたくさンの人間を殺したンだ、それでもか」

小百合「私のことは守ってくれてるじゃない」

一方「…ちっ」

ため息をついているのか、それとも呆れているのか

しばらく下をうつむいていた一方通行が、やがて顔を上げる

笑顔、なんて言葉とは程遠いだろう

しかし、彼にとっては最大の優しい表情だった

一方「…本当は、殴ってやるとこなンだけどな」

小百合「え…」

一方「…黙ってた俺も悪いンだ、今日は勘弁してやるよ」

小百合の手を強く握り、一方通行が番外個体のほうを見る

番外「結局、自分の娘は殴れないんだね」

一方「…そンなンじゃねェよ」

番外「親ばかってやつかな」

一方「うるせェ」

小百合のもう片手を、番外個体の手と繋がせる

番外「?なに?」

一方「…俺がガキの頃、誰かにしてもらいたかったやつだ」

番外「あぁ、ブランコーとかいって子供がよくやるやつか」

一方「あァ」


217 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 17:49:21.08 ID:wDVxx2M70
番外「アナタにもそういう願望とかあったんだね」

一方「…」

翼「…なぁ、おじちゃん」

一方「あァ?お前もいたのかよ」

翼「…小百合ちゃんのこと、好きか?」

一方「あ?」

翼「…って言っても、この時代じゃまだアンタにとっては知らない女の子なんだろうけどさ」

苦笑してから、翼が真剣な表情になる

翼「でもな、小百合ちゃんのことを大切にしてやってくれよ」

一方「…」

翼「未来のアンタに約束してほしいんだ」

一方「なンだよそりゃ」

番外「へぇ、子供のくせに生意気だね」

翼「生意気だからこんなこと言えるんだよ、他の誰にも言えないだろ」

一方「…分かったよ、約束してやる」

鼻を鳴らしてから、一方通行がゆっくりと歩き出す


一方「…お前に言われなくても大切にするに決まってンだろ」

翼「…そっか」

一方「お前も早く帰れよ、垣根が心配するぞ」

翼「父ちゃんはそんなに心配性じゃないよ、おじちゃんと違ってね」

一方(…このガキ、垣根以上にうっぜェな)



218 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 20:16:47.20 ID:wDVxx2M70

垣根「…なぁ、帝凰」

帝凰「なに?」

垣根「…お前ってさ」

翼よりも一足先に家に帰っていた三人

リビングでコーヒーを飲み(帝凰はオレンジジュースだが)、まったりとくつろいでいた

垣根「…もしかして、上条と御坂の娘さんが好きなのか」

帝凰「…は?」

心理「あら、そうなの?」

帝凰「ま、待て待て!!なんでそんなことになってんだよ!?」

心理「へぇ…どうりで彼女には優しくしてると思ったわ」

垣根「だろ、麻琴ちゃんとか言ってたし」

帝凰「ち、ちげぇよ!!なんでそうなるんだ!?」

垣根「なーに焦ってんだよ」

心理「そうよ、お母さんは応援するけど」

帝凰「その歳でお母さん気取るなよな…」

帝凰が少し顔を赤らめながら、コーヒーに手を伸ばす

心理「こら、コーヒーは子供が飲んだらダメなのよ」

帝凰「…分かったよ…」ハァ

垣根「で、麻琴ちゃんが好きなのか?」

帝凰「あぁまたそれかよ!!!」

219 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 20:38:59.01 ID:wDVxx2M70
垣根「いや、分かるぜその気持ち…麻琴ちゃんは御坂の見た目を受け継いでるからなぁ」

心理「そうね…それに、上条君みたいな優しさを持ってるなら最高じゃない」

帝凰「そ、そんなんじゃねぇのに…」

垣根「照れるなって」

帝凰「だって俺、麻琴ちゃんみたいなタイプはあんまり好みじゃねーし」

垣根「…え?」

帝凰「…俺さ、もう少し大人しい子が好きなんだよな…小百合ちゃんとか可愛いと思うけどさ」

心理「さ、小百合ちゃんって…たしか一方通行の子供さんよね?」

帝凰「そうそう、でも小百合ちゃんは翼が好きみたいだし…」

垣根「お、おぉ…ガキのくせして恋の悩みか…」

帝凰「…まぁ、麻琴ちゃんも優しいし嫌いじゃないんだけどな…」

垣根「なんだ、好きなんじゃねぇか」

帝凰「なんでその二分なんだよ…」

呆れたように帝凰が息を吐く

心理「…でも、そうやって考えるとあなた達ってまともな人生を歩めてるのね」

帝凰「あぁ、未来の学園都市はこの時代ほど学生を実験道具とも思ってないし」

垣根「へぇ…」

帝凰「…タイムマシンが未来に行けるのも開発されればいいのにな」

笑いながら、帝凰は言った

垣根「未来を知れるって、そんなにいいことか?」

帝凰「さぁ、希望はなくなるけどな」


220 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 21:08:29.88 ID:wDVxx2M70
垣根「…なぁ、そういやタイムマシンってどういう制度なんだ?」

心理「そうそう、料金は前払いなの?」

科学の世界に住んでいるだけあって、二人はそのことにも非常に興味がある

仕組みはもちろん、どれほどの値段を、どのように払えば「過去に戻る」という禁忌を犯すことが出来るのか

帝凰「前払いだよ、値段は前も言ったけど3日で30万…これは、日付まで正確に指定したからかな」

垣根「どういうことだ?」

帝凰「曖昧な指定だと、何年、っていう指定になっりまうんだ」

心理「つまり…2310年、とか1896年、とか?」

帝凰「そうそう、それだと値段は安いけど問題も起きやすい」

垣根「…そうだな、そこまでアバウトだとタイムマシンで戻っても目的の出来事なんかに遭遇できないかもしれねぇな」

帝凰「…だから、俺達はこの日付まで指定したんだ」

ポケットから何かを取り出し、自慢げに笑う

垣根「…なんだそれ?」

帝凰「タイムマシンのチケット、未来の日付と今の日付が書かれてるだろ」

ニヤニヤと笑いながら、帝凰は話す

心理「ねぇ、もしこれを無くしたらどうなるの?」

帝凰「あぁ、そりゃ…」



帝凰「未来に戻れなくなるだろうな」

垣根「…へぇ」


221 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 21:18:20.46 ID:wDVxx2M70


上条「…なぁ、麻琴」

麻琴「なに?お父さん」

麻琴の髪をドライヤーで乾かしながら、上条はあることを訊ねようとしていた

上条「…麻琴ってやっぱり帝凰君のこと、好きだろ」

麻琴「!?」

美琴「あら、やっぱりそうなんだ」

麻琴「ち、違うってば!!!」

上条「でもさ、帝凰君の隣にいる時めっちゃ嬉しそうにしてたじゃないか」

麻琴「あ…それは…」

美琴「いいじゃない、好きな人がいるっていうのは大切なことよ」

麻琴「…す、好きなんかじゃないもん…」

上条(…美琴そっくりだな、本当に)

美琴「…ねぇ、麻琴の時代には…未来に行くタイムマシンは出来てるの?」

麻琴「ううん、タイムマシンは過去にしかいけないんだって」

上条「?なんで?」

麻琴「分からない、たしか可能性が未来は無限にあるけど、過去なら限られているからって」

上条「…へぇ」

麻琴「でもね、私は未来にはいけない方がいいと思うな」

美琴「?なんで?」

麻琴「だって、未来に行けたって…」

何かを言おうとした麻琴、しかし突然彼女の顔が凍りついた


222 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 21:39:44.36 ID:wDVxx2M70
上条「?どうしたんだ?」

麻琴「な、ない…」

服のポケットを探りながら、麻琴がそんなことを呟く

美琴「ないって、何が?」

麻琴「タイムマシンのチケット!!」

上条「チ…チケット?」

麻琴「ど、どこやっちゃったのかな…あ、あはは…」

無理に笑っているが、顔はかなり引き攣っている

上条「なぁ、チケットってなんなんだよ?」

麻琴「…それがないと…タイムマシンには乗れないの」

美琴「の、乗れないって…じゃあどうやって未来に帰るの?」

麻琴「か、帰れなくなっちゃう…」

上条「か、帰れない!?」

麻琴「…うん…」

美琴「さ、探さないといけないじゃない!!」

上条「そうだよ…美琴は、麻琴を見ててやってくれ!俺は垣根とか誘って探すからさ!!!」

美琴「う、うん!」

上条「俺達と会ったときはあったんだよな!?」

麻琴「うん…」

上条「分かった、じゃあ今日行ったところを探してくるよ!!」

携帯を握ってから、上条が部屋を飛び出す


上条(頼むから見つかってくれよ…!!!)


223 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/24(火) 21:53:21.91 ID:wDVxx2M70
早いですが今日はここまで

結構ベタな展開になってきましたが、まぁ許してください


未来の人とかにもしも逢えたら、面白そうですね


では

224 :kou [sage]:2012/04/24(火) 22:16:22.53 ID:j+wC8c330
乙です 未来はどうなってるかとか色々聞いてみたりしたいですね
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/24(火) 23:24:07.76 ID:UJABxxmK0
なんで未元定規の子は父ちゃん母ちゃん呼びなんでせう…
イメージ的にパパママ呼びさせそうなメルヘンなのに
226 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/25(水) 16:44:34.87 ID:h5edyXOW0
上条「・・・どこにあるんだよ・・・」

垣根やその他の友達に連絡を取り、すでに協力してもらえるようには頼んだ

だがこんなに遅い時間帯だ

月がもう空に上っている、夏に月が出る時間帯など、そうそう人が出歩く時間帯ではない

上条「・・・探し物をするなら好都合なはず・・・」

なのに、それは逆だったのだ

人が出歩かないということは、情報を得ることが出来ないのと同じ

麻琴が持っていたチケットの大きさは、名刺ほどの小さい物らしい

そんな物、肉眼だけで探すのは難しい

つまり「人づて」に聞く情報が重要なのだ

人が出歩かなければそれは非常に厳しい

更にもう一つ、人が出歩かないということは、「清掃ロボット」がより活発に動くということだ

学園都市には清掃ロボットがいる、ゴミと認識される物を自動的に吸い込む、という単純ながら非常に画期的な機械

それも今では非常に厄介な相手になる

「名刺」サイズの「チケット」のような物が、もしも地面に落ちていたら

そんな物、機械だけではなく人間でもゴミだと判断するだろう

昼間に行ったファミレスの中に落ちていたとしても、とっくに店員が掃除しているかもしれない


227 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/25(水) 16:44:53.43 ID:h5edyXOW0
上条(くそっ・・・運頼みしかないじゃないか!)

静かな街中には、上条の足音だけが響く

そのテンポが次第に速くなっていく

タイムリミットは、残り「一日と半日」

その間にチケットを見つけられるだろうか

上条「見つけなきゃいけないんだ・・・!」

人々が行き交う時間になれば、捜索自体は困難になる

一日経てば、チケットを見たかどうか、なんて人は忘れてしまうはずだ

上条「くそっ・・・どこにあるんだよ!?」

彼等がレストランに向かうまでに使った道

そこにチケットらしき物はなかった

当たり前だろう、そんな目立つ場所に「ゴミ」と思われる物が落ちていたら、とっくに清掃ロボットが片付けてしまうはずだからだ

上条「・・・誰でもいいから見つけてくれよ!」

頭を抱えながら、上条が叫ぶ

虚しい叫びは街中に嫌に響いた





麻琴「・・・ねぇ、お母さん」

美琴「・・・なに?」

上条の寮の部屋

少し不安そうな表情の麻琴が、美琴の膝の上に座る



228 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/25(水) 16:45:34.25 ID:h5edyXOW0
麻琴「・・・私・・・帰れないのかな?」

美琴「だ、大丈夫!当麻はこういうピンチをいっつも解決してくれるんだから!」

麻琴「・・・」

美琴「えっと・・・それに、まだあと一日あるじゃない・・・」

麻琴「・・・何となくだけどね、見つからない気がするんだ」

美琴「・・・なんで?」

麻琴「私ってね・・・昔からツイてないんだ」

ドキン、と美琴の胸が跳ねる

上条の「不幸体質」は幾らか、彼女に受け継がれているらしい

美琴「大丈夫・・・大丈夫だから、安心して?」

麻琴「・・・お母さん」

ぎゅっ、と抱きしめてくる右手は震えていた

麻琴「私・・・このまま帰れなかったらどうしよう・・・」

美琴「・・・」

麻琴「お母さんは・・・私がこの時代にいてもいいと思う?」

美琴「・・・ダメよ、ちゃんと『私達』の所に帰らなきゃ」

麻琴「・・・そうだよね」

美琴「・・・もしもチケットが見つからなかったら、私達がしっかり育てるから」

麻琴「!」



229 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/25(水) 16:46:03.53 ID:h5edyXOW0
美琴「アンタは私達の娘なんでしょ・・・だったら、当たり前じゃない」

麻琴「うん・・・」

泣き出しそうな顔の麻琴を、美琴は優しく抱き寄せる

美琴「・・・ねぇ、麻琴は・・・未来に帰ったら何をしたい?」

麻琴「何・・・を?」

美琴「麻琴の未来には、何があるの?」

麻琴「私の未来・・・」

子供には難しい質問だっただろうか

これから先、どうやって生きていくのか尋ねるのと同じことだ

麻琴「私は・・・」

それでも、麻琴は答えた

麻琴「私は、お父さんとお母さんみたいな人になりたいな」

美琴「・・・私達みたいな?」

麻琴「うん、誰かが困ってたら手を差し延べて・・・誰かが泣いてたら慰めてあげて」

麻琴「・・・大きくなったら、そんな人になりたい」

美琴「そっか・・・アンタの未来は輝いてるわね」

麻琴「うん」

力強く、麻琴は頷く

一体どれだけの不安があるだろう、自分だけが置いていかれるかもしれないのだ

友達がみんな未来に帰ってしまったら

彼女は、一人なのだ

「両親」に再会することも出来ない

美琴(きっと、私だって悲しむはず)

ならば、この少女をなんとしても未来に帰さなければならない




230 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/25(水) 16:46:46.05 ID:h5edyXOW0
帝凰「・・・どこにあるんだよ」

街中を駆ける一人の少年

彼が走っているのには、一つの理由があった

彼の友人が、タイムマシンのチケットを無くしてしまったのだ

帝凰「麻琴ちゃんは本当にドジなんだよ!」

悪態をつくが、今はそれどころではない

彼に心当たりがある場所と言えば、昼間に行ったレストランくらいだった

そこは既に探したのだが、チケットは無かった

帝凰「父ちゃんもまだ見つけてないみたいだし・・・」

心理定規の携帯を借りて、垣根と連絡を取れるようにしている

帝凰「・・・ちくしょう、そんな簡単に見つかるわけねーよな・・・!」

左右に目を光らせるが、チケットなんて落ちてはいない

帝凰「この時代の清掃ロボットはゴミとチケットの区別もつかねぇのかよ!」

それは間違っている、帝凰の生きてきた時代の清掃ロボットもそこまでの区別はつかないものだ

だがどうしても文句を言ってしまう

帝凰「・・・ない・・・」

募るのは焦りと怒りだけだ

希望なんて見つからない

その時携帯が鳴った

慣れない「古い」携帯に戸惑いながらも、どうにか通話を開始させる

帝凰「なんだ、父ちゃん!?」

電話の相手は垣根帝督、彼の父親だった

帝凰「・・・え・・・?」

その父親が告げたのは、あまりにひどい真実だった


231 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:15:00.35 ID:UMGeuig+0

垣根「・・・俺の知り合いに、メカニックとかに詳しいヤツがいてさ」

携帯を耳に押し当てて、垣根は自分の愛する子供に話し掛けていた

垣根「・・・例の清掃ロボットの巡回ルート・・・その中で今日俺達が通った道は、ほとんど監視カメラに写っていた」

上条達がどこを通ったのかも大体把握してる、と垣根は続けた

垣根「・・・写ってたらしい、麻琴ちゃんのポケットから・・・何か紙切れのような物が落ちるところが」

垣根「・・・そして、それを清掃ロボットはゴミだと判断し・・・処分したところも」

帝凰『・・・どういうことだよ、それ』

垣根「分かりやすく説明してほしいのか?」

やめてくれ、と帝凰が小さな声で呻く

帝凰『・・・その清掃ロボットの体内から取り出すことは・・・出来ないのか?』

垣根「知ってるか、あの清掃ロボットって個人情報をゴミから取り出されないように、回収したゴミは細かく裁断するんだってさ」

超能力者の髪の毛なんか、下手をすれば悪用されるからな、と笑いながら垣根が言う

帝凰『・・・なんだよそれ・・・!』

垣根「まぁ、過保護ではあるが理にはかなってるんだよ」

帝凰『・・・タイムマシンのチケットには、大した個人情報なんか載っちゃいないよ』

垣根「せいぜい名前と購入した日付が書かれてるくらいなんだろ」

帝凰『・・・なぁ、今からでも取り戻せないのか!?』


232 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:15:51.50 ID:UMGeuig+0
垣根「なんだ、もしかして裁断されたチケットをパズルみたいにまた組み立てるなんて言い出すのか?」

帝凰『それしかないならやってやるよ!』

垣根「無理だ、時間が足りない・・・大体、チケットを仮に復元出来て・・・それをタイムマシンは受け付けてくれるのか?」

帝凰『・・・それは・・・』

垣根「人間が一々チェックする仕組みじゃないんだろ?だったら意味がない、壊れたチケットなんて機械が読み取れるか」

諦めろ、と遠回しに垣根は告げていた

「御坂麻琴」は未来に帰ることが出来ないのだ

帝凰『・・・ふざけんなよ』

垣根「なんだ、怒ってるのか」

帝凰『ちくしょう、麻琴ちゃんは昔からツイてなかったけど・・・なんだってこんなことにならなくちゃいけないんだよ!?』

垣根「さぁね・・・過去に戻るなんて酔狂な真似をした罰なんじゃないのか」

口ではそう言いながら、頭では別のことを考えている

垣根(・・・上条達にはなんて伝えればいい)

自分達の娘は、未来に帰ることが出来ない

そもそも、未来と今の世界はパラレルワールドのようなものだ

パラレルワールドの上条達は悲しむだろうが、今の上条達が悲しむなんてことには

垣根「・・・なぁ、麻琴ちゃんがこのままこの時代に残るとしたら、お前はどうする」

帝凰『・・・』

垣根「お前だけじゃない、他のみんなは」



233 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:16:45.88 ID:UMGeuig+0
帝凰『・・・残りたいよ、麻琴ちゃんを一人にするなんて出来ない』

けど、と泣きそうな声で帝凰は言葉を繋いだ

帝凰『・・・麻琴ちゃんは、きっとそれを嫌がるんだ・・・優しい子だから』

垣根「・・・そうか」

帝凰『なぁ、父ちゃん・・・どうすればいいんだよ・・・』

垣根「・・・」

帝凰「…父ちゃん…」

垣根「…泣くな、一番辛いのは麻琴ちゃんだろ」

どうすることも出来ない、ただ上条達に真実を伝えなければならなかった

垣根「みんなには俺から説明しておく・・・お前は先に家に帰れ」

帝凰『・・・分かった』

プツリ、と通話が切れる

夜の静寂が、垣根の心を締め付けた

垣根(・・・)


垣根(・・・上条、お前は本当に不幸だよな・・・)



234 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:17:12.63 ID:UMGeuig+0


上条「・・・」

麻琴「・・・」

美琴「・・・それ、本当なんだ・・・」

垣根からの連絡は、すぐに上条に伝えられた

そして、美琴と麻琴にも

上条「・・・チケットを復元することは不可能らしい・・・」

麻琴「・・・そっか」

美琴「・・・麻琴・・・」

麻琴「だ・・・大丈夫だよ、ここにはお父さんとお母さんがいるから・・・だから・・・」

上条「・・・違う」

麻琴「・・・違わないよ」

上条「お前は・・・今の俺達の子供じゃないだろ」

美琴「当麻・・・」

麻琴「だって・・・もう帰れないんだよ?」

上条「・・・」

麻琴「・・・私だって帰りたいよ!お父さんとお母さんに会いたいもん!」

ズキン、と美琴の心が疼いた

麻琴にとって、今の美琴と上条は「他人」なのかもしれない

彼女が知っている「両親」と、今の「二人」は別物なのだ

235 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:17:40.51 ID:UMGeuig+0
上条「・・・」

麻琴「助けてよ・・・」

上条の胸の中に飛び込んで、麻琴が大声をあげて泣き出す

上条「・・・麻琴・・・」

麻琴「助けてよ・・・」

上条には何も出来なかった

ただ、抱きしめることしか、出来なかった






帝凰「・・・」

御坂麻琴

帝凰にとって、幼なじみでありよき友人である少女だ

帝凰は・・・というより垣根の血筋の人間は「愛情」という物に敏感だ

そして帝凰は気づいていた

麻琴は、自分に大して少なからず好意を抱いていると

帝凰「・・・」

彼もまた、口では否定するが麻琴に大して好意を抱いていた

帝凰「・・・麻琴ちゃんは・・・帰れないのか・・・?」

未来の、いや、自分達の本来の時代で一緒に成長するはずのあの少女は

一緒の中学に通い、一緒の高校で馬鹿をして、一緒の大学でつるむことになるはずだった少女は


236 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:18:13.22 ID:UMGeuig+0
帝凰「・・・そんなの、あってたまるかよ」

堪らない

あの少女がいないと、帝凰の大切な日常は何かが欠けてしまうのだから

帝凰「・・・なぁ、翼」

隣で横になっている翼に声を掛ける

翼「なんだよ」

帝凰「・・・麻琴ちゃんの話・・・聞いたよな」

翼「聞いた・・・帰れないかもしれないんだろ」

帝凰「・・・かもしれない、じゃない」

翼「・・・」

真っ暗な部屋の中だ、外も夏とはいえ既に闇の中に落ちている

だがそんな中でも、翼の顔が険しくなったのは分かった

翼「・・・決定的なのか」

帝凰「あぁ・・・多分、どうしようもないんだ」

翼「・・・明日の夜には帰らなきゃいけないんだぞ」

帝凰「分かってるよ」

翼「・・・みんなはどうするのかな、残るのかな」



237 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 09:18:40.13 ID:UMGeuig+0
帝凰「・・・麻琴ちゃんが嫌がるさ、そんなの」

翼「だろうね」

苦笑する声が聞こえてくる

友達の中で、一番誠実なのは麻琴だった

彼女がみんなに残ってくれ、なんて言うはずはなかった

翼「・・・明日は・・・麻琴ちゃんと一緒にいてあげたほうがいいかな?」

帝凰「余計に別れが辛くなるはずだ」

翼「・・・そうだな」

帝凰「・・・小百合ちゃんなんか、その話聞いたとき泣き出しちゃったらしい」

翼「あはは・・・小百合ちゃんと麻琴ちゃんは従姉妹だからさ」

帝凰「エヘカトルも・・・結構悲しんでた」

翼「・・・あぁ」

帝凰「・・・俺だってそうだ」

翼「・・・」

帝凰「でも、何もしてやれないんだよ」

寝返りを打ったのは、泣きそうな顔を見られないようにするためか

帝凰「・・・俺なんかじゃ、何も」


238 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 14:00:22.63 ID:UMGeuig+0


上条「…」

翌朝、上条は早くから目を覚まして料理を作っていた

麻琴は昨日、泣き崩れたあとそのまま寝てしまった

上条「…そうだよな、帰れなくなるなんて…子供にはきついよな」

麻琴の年齢で、自分だけが取り残されるなど堪えられないはずだ

まして、過去の親と一緒の世界に、など

今の上条と美琴を見るたびに、きっと「両親」を思い出してしまうだろう

上条「…麻琴…」


麻琴「なに、お父さん?」

上条「おわぁぁぁっ!!お、起きてたのか…」

麻琴「うん、起きてたよ?」

上条「そ、そっか…おはよう」

麻琴「うん、おはよう!!」

昨日の話などなかったかのように、麻琴は明るく振る舞っていた

上条「…あんまり無理して明るく振る舞わなくてもいいんだぞ?」

麻琴「うん…でもね、泣いてても仕方ないから」

上条「…」


239 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 14:36:43.02 ID:UMGeuig+0
麻琴「…あ、あのね…まだお父さん達のこと、ちょっと変な感じがするけどいつかは…」

麻琴が下をうつむいたちょうどその時


ピンポン、と部屋のチャイムが鳴った

美琴「ん…誰か来たの?」

昨晩、麻琴をなだめたせいで疲れていた美琴もその音に目を覚ます

上条「みたいだな…誰だろう?」

麻琴「?」


上条が、ドアをそっと開ける

そこにいたのは、垣根帝凰だった

帝凰「あ、おはよう…麻琴ちゃんいる?」

上条「あぁ、いるけど…どうしたんだ?」

帝凰「…ちょっと、さ」

恥ずかしそうに頭を掻きながら、帝凰が部屋の中を覗き込む

麻琴「あ、帝凰君…」

帝凰「おはよ、元気か?」

麻琴「元気だよ…っていうか、そんなすぐに体調なんて悪くならないよ」

帝凰「…そっか、じゃあ…ちょっとおじちゃんとおばちゃんにお願いがあるんだけど」

上条「なんだ?」

帝凰「…今日一日さ、麻琴ちゃん借りていい?」

美琴「?いいけど…」

240 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 14:56:26.11 ID:UMGeuig+0
麻琴「えっと…なんで?」

帝凰「…いや、一緒にいられる時間って大切だろ?」

未来に帰れないんだしさ、と帝凰が続ける

麻琴「あ…うん…」

帝凰「そんな暗くなるなって、行こうぜ」

麻琴「ご、御飯食べてから!!」

帝凰「えー…じゃあ早くしてくれよな」

麻琴「うん!」

美琴「へぇ、この歳でデートねぇ…」

上条「俺…多分だけど小学生の頃なんて女の子とこんなことなんかしなかっただろうな」

麻琴「そ、そんなんじゃないもん!」

美琴「ほらほら、さっさと食べちゃいなさいよ」

帝凰「あのさおばさん、寝起きの中学生が普通に男の子と話すってどうかと思うぜ」

美琴「う、うるさいわね!」

上条「…垣根の息子さんだけあって礼儀には厳しいのな」

帝凰「父ちゃんのせいじゃないって、むしろ母ちゃんかな」

上条「へぇ…」

帝凰「ちなみに女の子の口説き方は父ちゃんに教えてもらった」

上条(あいつ馬鹿だろ…)


241 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/26(木) 16:46:25.35 ID:UMGeuig+0

麻琴「じゃ、行ってきます!!」

上条「あぁ…帝凰君、麻琴のこと頼んだぞ」

帝凰「任せてよ、おじちゃん」

肩をすくめて返事をしてから、帝凰が麻琴の手を引く

麻琴「あ…」

帝凰「んじゃ、夕方には帰ってくるからさ!!!」

美琴「うん、いってらっしゃい」

元気よく駆け出していく二人を見送ったあと、上条と美琴は顔を見合わせていた

上条「…いい子だな、帝凰君って」

美琴「そうね…」

上条「…ちゃんと…お別れがしたかったのかな」

美琴「…出来れば、さ」

小さく美琴が呟く

美琴「…出来れば、帝凰君と一緒に…未来に返してあげたいわよね」

上条「…人間がむやみに時間の経過に逆らうことは…神様が許してくれなかったのかな」

美琴「…そうだとしたら…悲しいわ」

上条「…なぁ、美琴」

美琴「…なに?」



上条「…俺達が…俺達が優しくしてやらなきゃ、麻琴は誰にも温もりを与えてもらえない」

上条「…だから、俺達は…」


242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 10:30:08.86 ID:bwOMRXISO
気になった事
チケット無くした人を統括理事会が救助する事は出来ないのかな?

まだ時空旅行が始まって時間が経過してないと推測出来るとはいえ過去に取り残されるリスクを放置するのはまずいだろうし

[たぬき]で言うタイムパトロールのような組織があってもおかしくないとおもう
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 11:28:46.17 ID:giSTWitSo
そういう事は書くのやめようよ…
244 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:37:17.25 ID:6ohw3HN30
帝凰「・・・どっか行きたい所とかある?」

麻琴の手を引きながら、帝凰が尋ねる

麻琴「えっと・・・みんなは?」

帝凰「・・・本当は俺もみんなと一緒がよかったんだけど、みんなは俺と麻琴ちゃんなら二人きりがいいよって」

麻琴「な、なんで二人きりなんて・・・」

顔を真っ赤にしながら麻琴が俯く

帝凰「・・・だからさ、今日は・・・今日くらいは二人きりでいいんじゃないかな」

麻琴「・・・うん」

帝凰「・・・どこ行きたい?」

麻琴「じゃあ・・・公園、行きたいな」

帝凰「公園?なんで?」

麻琴「もう・・・公園じゃ遊べないかもしれないから」

帝凰「・・・分かった」

二人はすぐ近くの公園へと向かった

もしかしたら、二人が会えるのは最後になるかもしれない、そう考えながら




麻琴「・・・ここってね、お父さんとお母さんがよく一緒に来てる公園なんだって」

ベンチに座った麻琴が、そんなことを話す


245 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:37:44.70 ID:6ohw3HN30
帝凰「へぇ・・・公園デートなんてなんかベタだな」

麻琴「ベ、ベタなの?私は素敵だと思うけど」

帝凰「ベタもベタだな、初めてデートに行くけどどこに行けばいいか分からないからとりあえず、みたいな感じで公園は使うもんだぜ」

麻琴「・・・て、帝凰君って女の子とデートしたことあるの?」

帝凰「いや・・・父ちゃんから聞いた、それに公園なんてメルヘンじゃないだろ」

爽やかさはあるけどさ、とすかさずフォローする

麻琴「・・・じゃあ、私が初めてのデート相手なんだ」

帝凰「・・・これってデートだったのかよ」

麻琴「い、いいじゃん!」

帝凰「・・・まぁいいけどさ」

大きなため息をついてから、帝凰が麻琴の顔をじっと見つめる

麻琴「な、なに?」

帝凰「昨日・・・ずっと泣いてたのか」

麻琴「な、なんで分かるの!?」

帝凰「目がいつもよりむくれてるし充血してる」

麻琴「ほ、ホント?」

帝凰「ったく・・・せっかくのデートでも相手がこんなんじゃなぁ・・・」

麻琴「ひどい・・・ってあれ?いつもよりってどういうこと?」



246 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:38:35.14 ID:6ohw3HN30
帝凰「はぁ?」

麻琴「いつもよりむくれてるし、って」

帝凰「なに、まさかお前・・・俺がいつもお前を見つめてるっていう妄想とかしてんの?」

麻琴「だ、誰がそんな妄想するのよ!」

帝凰「いつも一緒に遊んでんだし、んなことくらい分かるんだって」

言ってから、なぜだか帝凰は照れ臭くなった

それではまるで、彼の日常では麻琴が当たり前の存在であると言っているかのようだったからだ

麻琴「・・・でも・・・泣いてたのは当たってる」

帝凰「・・・そりゃ、寂しいよな」

麻琴「うん・・・こんなことなら、タイムマシンなんて使わなきゃよかったな」

帝凰「・・・そうだな」

帝凰も、それには同感だった

タイムマシンというのは何も完全に別な可能性の世界に導いてくれる物ではない

彼自身も完全には理解していないが、過去を改編すると未来に関わることが変わってしまうらしい

例えばある有名人の両親が結婚しないようにすればその有名人は存在しない、というように

ただしその有名人が存在しなくなったら、そもそも「その有名人の両親を結婚させない」という目的が生まれない

そしてその目的が達成されなければ、その有名人は生まれ、しかしその有名人が存在すれば・・・というような繰り返しが起きる


247 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:39:33.57 ID:6ohw3HN30
つまり、改編自体は可能なのだがそれがあまりに大きすぎる事実だと、結局変わらないように世界はバランスが取れているらしい

「昨日の料理の献立」なんて物を変えたところで未来に大差はないが、「昨日食事をした」事実というのは意外と未来に関わったりする

どれが未来に大きく関わるかは分からないため、未来になってからでないと変えようがない

未来に大きく関わることは改編を行っても結局起きてしまうから、どっちにしろ意味がないらしい

イエスキリストの誕生を無くしてしまうこともできないし、逆に言えば自分が今幸せになっているという結果を誰かが無くそうとしてもそうはならないのだ

帝凰「・・・つまりさ、人間が過去に行くことに大して意味はないんだよな」

麻琴「うん・・・そうだよね」

帝凰「・・・親に確かめたいことがあったなら、何もこの時代に戻らなくても出来たはずだ」

ただ、親との関係にヒビが入るのを恐れていただけなのだ

麻琴「・・・帝凰君は何を確かめたかったの?」

帝凰「・・・本当はさ、父ちゃんと母ちゃんがなんで結ばれたのかを聞きたかったんだ」

麻琴「それだけ?」

帝凰「あぁ、でも俺達の時代の父ちゃんも母ちゃんも教えてくれなかった」

だから戻ってきたんだ、と帝凰が鼻で笑う

帝凰「・・・ごめんな、麻琴ちゃん」

麻琴「え、な、なにいきなり?」


248 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:39:59.92 ID:6ohw3HN30
帝凰「・・・俺が時間旅行なんかに誘わなければよかったんだ」

麻琴「い、いいんだよ!」

帝凰「・・・よくなんかないんだ、俺は麻琴ちゃんを巻き込んだんだから」

麻琴「で、でも帝凰君が誘ってくれなきゃこの時代のお父さんとお母さんには会えなかったよ!」

帝凰「・・・」

麻琴「だ、だから・・・」

帝凰「・・・もう、会えないのかな・・・俺達」

麻琴「・・・うん」

ぎゅっ、と麻琴がスカートの裾を掴む

口には出来ないが、麻琴は帝凰を愛している

もちろん、幼い彼女に「愛情」なんていう物の形は分からない

だが帝凰に対して何か大きな感情を抱いていることには気づいていた

麻琴「・・・わ、私・・・」

帝凰「・・・麻琴ちゃん、会えなくなっても俺のこと・・・忘れないでくれよ」

麻琴「・・・」

帝凰「そしたら・・・未来で大きくなってる麻琴ちゃんを見つけだして・・・それでさ」



249 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:41:35.02 ID:6ohw3HN30
帝凰が言葉を詰まらせる

それは緊張や悲しみからではなかった

何かが引っ掛かっている

帝凰(・・・待てよ)

先程言ったように、タイムパラドックスという物は実際には起きない

自分の先祖を自分が殺したら自分は生まれない

しかし自分がいなければ先祖は死ななかったため自分も生まれる

タイムマシンの存在を恐れて過去に向かい、タイムマシンが開発されたという事実を無くす

だがタイムマシンがなければそもそも過去には向かえないため、結局タイムマシンの作成を邪魔は出来ない

簡単に言えば、「過去」を変えてしまってもそれがある程度以下の低レベルな問題でなければ「事実」は変わらないのだ

前者も後者も、同じことが繰り返す

それでも根本的な部分はあまり変わらない

そして

帝凰(待てよ・・・俺は元の時代で、ずっと麻琴ちゃんと一緒だったし、成長した麻琴ちゃんらしい人も見たことはない)

つまり、麻琴は元の時代に帰れるのではなかろうか

そうでなければ未来は大きく変わってしまう

「成長した麻琴」が未来にいたら、そもそも帝凰達と過去への時間旅行には行かない

となると、帝凰達の時代には今の「麻琴」はいないはずだ



250 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:42:04.46 ID:6ohw3HN30
未来が変わらず、ずっと麻琴がいるのは

帝凰が麻琴を知っているのは

帝凰(結局、麻琴ちゃんは未来に帰れたから?)

なぜ

どうにかして帰れるはずなのだ

いや、どうにかして「帰らなければ」未来が変わってしまう

どこかに救済措置があるなら

麻琴「・・・あのね、帝凰君」

帝凰「あ、あぁ」

麻琴「・・・もう最後になるかもしれないから言わせて、私・・・」

帝凰「・・・なぁ」

麻琴「な、なに?」

帝凰「もうちょっと待ってくれないか」

麻琴「ま、待つって・・・今言わなきゃもう会えないんだよ!?」

帝凰「・・・待って、くれないか」

麻琴「っ・・・!」

未来が変わっていないのは、過去も変わらないから

この過去の世界に本来いなかった「麻琴」という存在が残らないから

帝凰(・・・麻琴ちゃんはチケットを無くしてる、タイムマシンで未来には帰れない)

帝凰(なら・・・この時代に未来に行くタイムマシンが出来た?)


251 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 16:44:26.61 ID:6ohw3HN30
帝凰(んなわけはない・・・じゃあ)

帝凰(・・・?タイムマシン?)

過去に戻れる魔法のマシン

神の定めた領域を犯す、禁断の道具

帝凰「・・・!」

麻琴「ど、どうしたの?」

帝凰「あぁいや・・・なんでもない、それよりデートを楽しもうぜ」

麻琴「あ、うん・・・」

再び、帝凰が麻琴の手を握る

気のせいなのだろうか、その手を握る力は強くなっていた



麻琴「ね、ねぇ…次はどこ?」

帝凰「…麻琴ちゃんが、行きたい場所」

麻琴「またそれ…あのね、女の子って好きな人にデートの場所とか選んでほしいんだよ?」

帝凰「へぇ、で?」

麻琴「でって…」

帝凰「…もしかしてお前、俺のこと好きなのか?」

麻琴「ち、違うもん!!」

帝凰「じゃあいいじゃねぇか」

口では上手く会話をしながらも、帝凰は考える

今自分が諦めてしまえば、もしかしたら未来は変わるかもしれない

麻琴を未来に帰せなければ、彼は一生後悔するだろう

252 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 17:13:16.20 ID:6ohw3HN30
麻琴「ねぇ、帝凰君…」

帝凰「…なんだよ?」

麻琴「…あ、あのね…私…お父さんとお母さんと、仲良くやっていけるかな?」

帝凰「…どうだろうな、それはお前が決めることだ」

麻琴「…ねぇ、帝凰君…」

帝凰「あーもー!!ウダウダ言うなよ、大丈夫だって!」

いらだったような様子で帝凰が叫ぶ

麻琴「大丈夫なんかじゃないもん!!私はみんなと…」

帝凰「帰りたいのか、だったら言ってやるけど今は無理だ!!お前はチケット無くしたしどうしようもねぇ!!」

麻琴「!」

帝凰「…だから待ってろ、そんなにゴチャゴチャ言っても始まらないんだ…」

自分で言うべきことではないが、帝凰は非常に頭がキレる

LEVEL4であることもさながら、普段の生活の中でも、咄嗟の判断でも、彼の頭脳は非常に役立つものだ

帝凰(…何かが引っ掛かってる、麻琴ちゃんはチケットを持っていない…ってことは、過去が変わるわけじゃないのか?)

麻琴がチケットを無くしたのは事実だ

そしてそれを落とした後、清掃ロボットがそれを…


帝凰(…?待てよ)

チケットを無くしたことをなくすのは難しいことだ

何しろ、チケットを取り戻す必要があるのだがもしもチケットを無くさなければチケットを取り戻したい、と思わないから

つまり、無くしたことは変えずに、チケットを再入手しなければならない

帝凰(…そ、そうか!!)


253 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 17:39:06.55 ID:6ohw3HN30
麻琴「ね、ねぇ?」

帝凰「…麻琴ちゃん、俺…ちょっとやらなきゃいけないことが出来たんだ!」

ポケットからチケットを取り出し、帝凰が真っ直ぐと麻琴の顔を見つめる

麻琴「や、やること?」

帝凰「…たしかさ、このチケットってこの日付までだったらいつでも未来に帰れるんだったよな?」

期限の欄を指しながら、帝凰が訊ねる

麻琴「う、うん…でも時間がもったいないから、ほとんどの人が期限ギリギリまで旅行を楽しむんだよね?」

帝凰「…そうか、今からでも遅くはない…そう、遅くはないんだ!」

麻琴「え、な、なに?」

帝凰「麻琴ちゃん、俺ちょっと用事があるんだ!」

チケットをポケットに入れ、帝凰がにやりと笑う

帝凰「だからさ、麻琴ちゃんは家に帰って待っててくれ!」

麻琴「う、うん…でも何するの?」

帝凰「今は言えない、時間がもったいないんだ」

タイムリミットは、彼らが未来に帰るまで

「御坂麻琴が未来には帰れなかった」という既成事実が出来るまで

帝凰(…行ける、俺はやらなきゃならない!!)

彼は知っていた、麻琴を救うただ一つの方法を

帝凰「麻琴ちゃん、俺はお前を絶対に未来に帰してやるから!」

麻琴「!」



帝凰「一緒に帰ろうな!!」

そう言ってから、彼は駆けていく



254 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 18:02:54.65 ID:6ohw3HN30

エヘカトル「…」

テクパトル「なぁ、何を読んでるんだよさっきから?」

エヘカトル「…俺達の時代に発売されてる魔術書だ」

テクパトル「み、未来の魔術書!?」

家のリビングで、エヘカトルはそんなものを読んでいた

アレイ「ほう、中々興味深いな」

エヘカトル「アンタみたいな魔術師にはむしろ遅れた魔術書だろうさ」

エヘカトルがアレイスターとテクパトルに中身を見せる

そこにあったのは、時間という概論を崩す魔術についてだった

それの考察として、結論は非常に単純だった

「時間というものは可逆性ではあるが、歴史に関わるような事象をなくすことや、時間の長さなどを変えることは不可能である」

アレイ「…ほう」

エヘカトル「面白い考察だよな…ちなみにこの本の編纂には親父も関わってるんだぜ、どうやらあのエツァリって人が書いたらしいけどさ」

テクパトル「そ、そうなのか…でも時間はやっぱり、人には操れないものなのか」

エヘカトル「注目するべきはそこではないんだよ、親父」

テクパトル「はぁ?」

エヘカトル「…時間は、元に戻すことは可能だ、そして小さな事実…朝飯の献立や、自転車のハンドルの色、そういったどうでもいいことなら変えられるし戻すことも出来る」

エヘカトルが笑う



エヘカトル「…清掃ロボットにとっても、学園都市にとっても、意味の分からないタイムマシンのチケットを清掃ロボットが回収したことなんて…どうでもいい事象なんだよ」


255 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/27(金) 18:20:39.87 ID:6ohw3HN30

麻琴「…それでね…いきなり帝凰君帰っちゃったの」

麦茶を飲みながら、麻琴が不機嫌そうに言う

上条(み、短いデートだったな…)

美琴(すっごい不機嫌なのが見て分かるわ…)

上条(…ど、どうしよう…)

麻琴「…でもね、なんかやることがあるみたいなんだ」

上条「やること?」

麻琴「うん…でも未来に帰って何がしたいのかな」

上条「さ、さぁ…?」

麻琴「あぁもう!!大体さ、やりたいことがあっても女の子とのデートをまずは優先するべきよね!」

美琴「あ、それは分かるわよ!勉強だとか先生に呼ばれたからとかでいーっつも当麻もデートは遅れてくるし!」

麻琴「そういうのってよくないわよね!青春の一ページは貴重なのに!」

美琴「ホントホント!!」

上条「あ、あの…二人とも?」

麻琴「その一ページを誰のために開けてやってると思ってるのよ!!」キーッ!!

美琴「にゃぁぁぁぁ!!同感よ、同感!!!」

上条(な、なんか怖い…)

256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 02:25:18.52 ID:AVNbRJPuo
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 03:05:42.19 ID:9ZqO39+fo
乙パトルですの
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 10:11:38.37 ID:GU8EO6DIO
気になってたんだがなんで麻琴は上条性じゃなくて御坂性なの?
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/28(土) 10:46:35.55 ID:cD+eYi3Do
>>258
上条が婿入りしたんだろ
260 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 10:57:48.13 ID:BhbrcbDo0
麻琴「・・・お父さんもちゃんとデートの行き先とか考えないとダメだよ?」

上条「わ、分かってるよ・・・」

美琴「ふーん・・・じゃあ今度のデートは期待していいのかしら」

上条「き、期待って・・・麻琴も一緒になるだろうから二人きりじゃないんだからな」

美琴「あ、そっか・・・残念」

美琴の言葉を聞いた麻琴が、少しだけ悲しそうな表情になる

美琴「?どうしたの、麻琴」

麻琴「あ、ううん・・・なんでもないよ」

上条「そっか・・・それよりまだお前に教えてもらってないことあったよな」

麻琴「?なに?」

上条「お前は何しに未来から来たんだ?」

麻琴「・・・そ、それはもういいよ!」

美琴「なんで?未来から過去に来てまで聞きたかったことなんじゃないの?」

麻琴「・・・ううん、もう聞いてもダメだから」

上条「・・・俺達との関係が崩れるから、とか?」

麻琴「・・・それとはちょっと違うけど、でもそれも遠くはないかな」

上条「・・・そっか、なら仕方ないな」

麻琴「・・・お父さんとお母さんには・・・勇気がなくて聞けなかったんだ」

美琴「・・・」



261 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 10:58:13.28 ID:BhbrcbDo0
トテトテ、と麻琴が美琴の膝の上に座りに来る

麻琴「・・・お母さんって・・・今は14歳だよね」

美琴「うん、そうだけど・・・どうして?」

麻琴「お父さんと結婚するのはずいぶん先なんだよね」

上条「け、結婚か」

未来から来た麻琴に言われると、現実味が増していく

上条と美琴は結婚する運命なのか、と

上条「・・・結婚したいよな、そりゃ」

美琴「うん、だって当麻とずっと一緒にいられるなんて幸せだもん」

上条「そんな照れ臭いこと言うなって」

苦笑いをしながらも、上条は嬉しそうに言う

麻琴「・・・ねぇ、お父さんは・・・お母さんと二人きりの時間、大切だって思う?」

上条「?あ、あぁ・・・思うけど」

麻琴「お母さんは?」

美琴「思うわよ、とっても大切」

上条「・・・でもなんで?」

麻琴「・・・ううん、なんでもない」


262 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 11:00:56.28 ID:BhbrcbDo0
麻琴がゆっくりと立ち上がる

彼女は玄関へと向かっていた

上条「ど、どこ行くんだよ?」

麻琴「みんなと・・・その、お別れしないと!」

美琴「そ、そう・・・」

麻琴「・・・それに」

二人には聞こえないような小さな声で、麻琴は最後に呟いた


麻琴「・・・それに、二人の邪魔はしたくないから」





小百合「…それで、何も聞けなかった…ってこと?」

麻琴「…うん」

イツトリ「…あなた方は聞きたいことがあってこの時代に来たんですよね」

覇道「なーんかめんどくさい理由だな、俺はただ親父の熱い青春時代を見たかっただけさ!」

翼「お前は馬鹿っぽいからどうでもいいんだよ、理由は」

覇道「なんだとぉ!?」

ファミレスの端の席がにぎやかになっていた

翼「…なぁ、麻琴ちゃんって何が聞きたかったんだ」

麻琴「…」

263 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 11:06:52.07 ID:BhbrcbDo0
エヘカトル「…そうだな、それも気になってしまう」

麻琴「…お父さん、ね」

翼「うん」

麻琴「…みんなも知らないだろうけど…たまに、たまにだけど…ボロボロになって帰ってくる時があるの」

小百合「ボロボロ?おじさんって会社員だよね、ただの」

麻琴「…うん」

翼「…その理由が聞きたかったのか」

麻琴「…違う」

小百合「?」

麻琴「…なんで、さ…なんでお母さんの名前は御坂美琴で、お父さんの名前は上条当麻なのかな」

エヘカトル「…」

麻琴「…なんでかな、結婚してるんじゃないの?」

翼「あ、あれだ…内縁の妻がどうとか、こうとか…」

エヘカトル「…一つ訊きたいんだが、おばさんは超電磁砲っていう超能力者だよな」

麻琴「う、うん」

エヘカトル「…結婚させられないんじゃないか、学園都市としては」

翼「どういうことだよ」

エヘカトル「…一度能力が発現すれば、貴重な研究材料になる…そりゃこの時代とは違って、俺達の時代はずいぶんと能力者の人権は尊重されている」

脳みそを分けられたりなんかはしないしな、と付け加える

エヘカトル「…だが…それでも、研究の途中で壊れる可能性がないとは言えない」

翼「こ、壊れる…だと?」

264 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 11:33:11.34 ID:BhbrcbDo0
エヘカトル「…たまに聞くだろ、かつての能力開発では結構やばいことやってたって」

脳に直接電極を取り付け、血管に訳の分からない薬物を注射する

それがどれほど危険なことだろうか

エヘカトル「…考えてみろ、結婚してしまえば、御坂美琴は家庭に入る…つまりは能力実験に無理やり引っ張り辛くなる」

覇道「で、でもさ…たしか超電磁砲ってもうある程度研究し尽くされたんじゃないのか…?」

エヘカトル「表分野ではな」

翼「…」

エヘカトル「だがこの時代に来てみて分かった、学園都市は下種な機関であることには変わりない」

小百合「クローン…」

エヘカトル「…そしてもう一つ、おじさんとおばさんが結婚してしまえば…おばさんが壊れてしまったとき、法律的にも大きな問題を背負うことになる」

小百合「法律的?」

エヘカトル「今はただ外部から招いた超能力者だが、結婚して家庭を築き、そして娘を持った母親になれば…」

イツトリ「壊れてしまえば、ご両親だけではなく、夫である彼や娘である麻琴さん、更には学園都市内の反発も起きますね」

エヘカトル「…結婚したとなると学園都市は暮らしにくい環境だ、子供を能力者にしているからいいものの…な」

翼「学園都市の外に行きたがられる可能性もある、か」

エヘカトル「…垣根のおじさんとおばさん、一方通行のおじさんと番外個体のおばさんは戸籍がなかったり、親に捨てられてたりするから問題はなかったんだ」

覇道「ま、待て待て!俺の親父だって超能力者…」

エヘカトル「お前の父親の話は知っているが…あいつは能力開発を受けてないんだろ、だったらそもそも壊れる心配はないだろうし壊れたところで学園都市の責任ではない」

エヘカトル「…結婚くらい問題ないんだろう、学園都市の外に出られそうになるならまだしも、お前の両親は学園都市を変えることに傾倒しているからな、出る心配もない」

小百合「そ、そういうことだったの…」

265 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 11:43:23.43 ID:BhbrcbDo0
エヘカトル「分かるか、俺の親父だって同じだし垣根や小百合の親だって同じだ、結婚しているとは言っているが…あくまで戸籍はないから内縁になるんだ」

翼「…」

イツトリ「…そうですね…」

エヘカトル「…戸籍を作って正式に結婚をしようものなら、学園都市の上層部が黙っちゃいない」

統括理事長は改心したようだがな、とエヘカトルは笑う

エヘカトル「…御坂性をお前に名乗らせているのはなぜだろうか気になるが、そっちのほうが顔が色々効くからだろうな」

麻琴「…そんな」

エヘカトル「…お前の父親はボロボロになって帰ってくる…か」

一つだけ引っ掛かるのはそこだ、と彼は呟いた

上条と美琴ならどうしてでも結婚したがるはずだ

「絶対に学園都市の外では暮らさない」なんていう誓約書を書いてでも

エヘカトル「…おじさんって、昔から人に世話を焼くよな」

麻琴「うん…」

エヘカトル「…そもそも魔術側の人間と、おじさんはなぜ知り合っている?」

麻琴「あ、お父さんもよく分からないけど不思議な力があって…」

エヘカトル「…幻想殺し、か」

父親であるテクパトルから説明されたものだ、非常に不思議な力らしい

エヘカトル「…聞くところによると、第三次世界大戦に終止符を打ったのもおじさんらしいな」

覇道「そ、そうなのか!?すげぇ、根性が有り余ってやがる!」

エヘカトル「…下手をすればいつ死ぬか分からないぞ、おじさんだってな」

麻琴「!」


266 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 11:50:14.99 ID:BhbrcbDo0
エヘカトル「…おばさん一人を背負うだけじゃない、お前が生まれたから背負う物が増えてしまった」

翼「そ、そんな言い方するなよ!」

エヘカトル「…事実だ、少なくとも…お前という存在は、それほどまでに重いんだよ」

麻琴「…」

小百合「…そ、そんなことよりさ!帝凰君ったら一人で先に帰っちゃうなんてひどいわよね!」

イツトリ「か、帰ってしまったんですか?」

覇道「なんだ、せっかくの時間旅行なのに…」

麻琴「…なんかね、急いでやることがあるって言ってた」

エヘカトル(…ほう、気づいたのかあいつ)

翼「おいエヘカトル、なに笑ってやがる」

エヘカトル「別に…それより俺は帰るぞ、親父とおふくろにも伝えたいことがある」

小百合「…なに?」

エヘカト「戸籍なんて気にするな、結婚してようがしてまいが俺にとってはあの二人は大切な両親だってことを」

大して照れる素振りもなく、エヘカトルが続ける

エヘカトル「…そして俺は感謝している、あんなに幸せな家庭に俺を迎えてくれたみんなを」

麻琴「…」

エヘカトル「俺があそこにいたいと思えるのは、あの二人のおかげだからな」

イツトリ「…」

エヘカトル「お前達だってそうだ、ちゃんと両親に感謝を伝えろよ」

覇道「…そうだな、もう帰らなきゃいけないからな!」

麻琴「わ、私はまだ…」

エヘカトル「…お前もだ、麻琴」

麻琴「…」

エヘカトル「…安心しな」



エヘカトル「…お前は、あの二人の子供じゃねぇか」


267 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 12:03:03.40 ID:BhbrcbDo0


上条「…あ、お帰り麻琴」

麻琴「…う、うん…おかえり」

美琴「…みんなと会えた?」

麻琴「うん、ちゃんと会えたよ」

家に帰りついた麻琴が、ふとベッドの上にまとめられた自分の荷物を見つめる

麻琴「?どうしたの、これ」

上条「あ、いや…なんでもないよ」

美琴「…当麻ね、まだアンタが帰れる方法を探してるのよ」

麻琴「…え…?」

上条「…この時代にお前だけ取り残されるなんてダメだろ、俺達は…親としてお前を元の時代に帰してやりたいんだ」

麻琴「…お父さん」

上条「…いつだってこれなら帰れるだろ、だから…さ」

上条の目は疲れを訴えていた、そういえば彼はそういう正義感が強いことで有名ではなかったか

麻琴「…いいんだよ、お父さん…私、さ」

麻琴が時計を見つめる

時刻はすでに夕方の5時

あと少しで、タイムマシンが未来から彼女たちを迎えにくる

麻琴「…私…」



リリリリリン、と突然部屋の電話が鳴った

上条「な、なんだいきなり?」

268 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 12:20:27.88 ID:BhbrcbDo0
美琴「ど、どうしたのかしら…」

上条「…」

受話器を手に取ると、聞き覚えのある声がした

帝凰『おじさんか!?』

上条「あ、あぁ…帝凰君か?未来に帰ったんじゃ…」

帝凰『んなことはどうでもいいんだって、それより麻琴ちゃんは!?』

上条「い、いるけどなんだ?」

帝凰『替わってくれ、時間があんまりないんだ!!』

上条「あ、あぁ…」

上条が受話器を麻琴に差し出す

麻琴「な、なに?」

上条「…帝凰君、お前に変わってくれってさ」

麻琴「帝凰君!?」

受話器を受け取った麻琴が、大声で呼びかける

麻琴「何してたの、帝凰君!?」

帝凰『…お前のチケットを取り返したくてさ』

麻琴「…ど、どういうこと?」

帝凰『…お前がチケットを落とした日に戻ってきたんだ』

麻琴「?」

帝凰『…お前が無くしたチケットが清掃ロボットに処分される前に、だ』

麻琴「…!じゃ、じゃあ私のチケットは…?」

麻琴の手の中にはチケットはない、ということは


帝凰『…俺が持ってる、お前に返すよりも確実で早かったからな』

麻琴「帝凰君…」

帝凰『時間がない、荷物を纏めてさっさと集まれよ』

集合場所は、大きな鉄橋の上



帝凰『帰ろう、一緒に』


269 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 12:39:18.04 ID:BhbrcbDo0

夏の夜の空気というのは、寂しさを兼ね備えているという

花火が美しく映えるのはそのためだ

麻琴「…みんな集まった?」

小百合「うん…でも本当なの、チケットがあったって」

翼「驚いたもんだぜ、いきなり帝凰のやつが帰ってきてチケット持ってるんだからさ」

エヘカトル「チケットを清掃ロボットが吸い込んだなんていう事実はどうでもいいからな」

イツトリ「…あなた、まさか気づいていたんですか」

エヘカトル「さぁな」

上条「…でもよかったよ」

思い出深い鉄橋の上で、上条は笑っていた

こうやって集まると、本当に自分達は深い関係なのだと分かる

テクパトル「…なぁ、タイムマシンってのはどこに現れるんだ?」

心理「そうね…どんな形をしているのかも気になるわ」

帝凰「…なんだ、そんなことならもう見えてるぞ」

一方「あァ?どこに」

帝凰「ほら、あそこ」

上条「?」

帝凰が指差したのは、鉄橋の下にある小さな川だった

美琴「な、何もないけど」

エツァリ「…いえ、小さな渦が起きていますね」

削板「渦?」

270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 12:40:37.83 ID:xwslWPQUo
垣根兄弟はイケメルヘンなとこも遺伝してんのか…
271 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 12:50:51.22 ID:BhbrcbDo0
水面に、小さな渦が起きている

上条「ま、まさかあそこに飛び込むのか!?」

小百合「どこに出るかは自由みたいなんだけど、より人目につきにくい場所がいいらしいの」

覇道「はっはっは!!川に飛び込むなんて面白いな!!」

翼「おい、それより時間がないぞ」

翼が腕時計を見つめる

時間まであと5分

上条「…じゃ、じゃあ…もうお別れなんだな」

イツトリ「…さすがに何度も時間旅行は出来ませんからね」

黒子「…覇道、またいつか」

覇道「おう、親父もおふくろも元気でな!」

一方「…俺達に迷惑かけるンじゃねェぞ」

小百合「分かってる」

19090「…それではまた」

エヘカトル「…あぁ、その時はよろしくな」

ショチトル「…お前も、女の子にはあまり手を出すなよ」

イツトリ「分かってるって」

笑いながら、四人が川へと飛び込む

水しぶきが起こることはなく、一瞬まばゆい光に包まれた彼らの姿はどこかへと消えた

272 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 12:59:28.64 ID:BhbrcbDo0
上条「…す、すっげぇ…」

翼「さて…俺達もここら辺でお別れだな」

翼が心理定規に近づく

翼「母ちゃん、俺のことを産んでくれてありがとよ」

心理「…まだ実感が湧かないけど、どういたしまして」

翼「…最近はさ、ちょっと素直になれないで反抗するときもあるけど…でも、俺は母ちゃんのこと大好きだ」

心理「えぇ、私もよ」

翼「父ちゃん、俺には女を泣かせるなって教えたよな」

垣根「へぇ、初耳だな」

翼「…だったら母ちゃんも泣かせるんじゃないぞ、俺がその時はキレちまうからな」

垣根「うるせぇな、親の間に子供が口出しすんなって」

言いながら、垣根が翼の頭を撫でる

垣根「…楽しかったぜ、会えて嬉しかった」

翼「俺もだ、じゃあな」

ニヤリと笑ってから、翼も川へと…時の渦へと飛び込む

消えたように見える彼は、きっと未来へと帰ったのだろう

上条達には理解できない世界だが


美琴「…あとは、あなた達だけね」

帝凰「おう、そうだな」

麻琴「…うん」

上条「…帝凰君、ありがとうな」

帝凰「…おじさん達のためじゃねぇよ、俺と麻琴ちゃんのためだ」


273 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 13:19:09.04 ID:BhbrcbDo0
上条「…じゃあ、麻琴…一旦お別れだな」

麻琴「…うん」

帝凰「じゃ、行くか」

帝凰が橋の欄干にぴょんと飛び乗る

だが、麻琴は立ち止まったままだ

帝凰「…おい、何してるんだよ?」

麻琴「…あ、あのね…まだお父さんとお母さんに訊きたいことがあったの」

上条「…俺達に?」

美琴「なに?」

時間は刻一刻と迫っている

帝凰は、腕時計を確認しながらも麻琴の挙動を見守る


麻琴「…私は…生まれてきてよかったのかな」

上条「…なに?」

麻琴「…お父さんとお母さんにはまだ言ってなかったけど…二人はまだ結婚してないんだ」

美琴「ど、どういうこと?」

麻琴「…学園都市がね、結婚を許してくれてないんだ」

上条「な、なんで…」


麻琴「…私が生まれたから…かな」

上条「!」

274 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 13:23:05.31 ID:BhbrcbDo0
麻琴「私が生まれたから背負う物が増えたって…」

美琴「そ、そんなことないじゃない…」

麻琴「お父さんとお母さんの二人きりの時間も、私のせいで減ったんだ」

上条「…」

麻琴「…私…お父さんとお母さんに怖くて訊けなかったんだ、もしかしたら…私は生まれなくてもよかったって言われそうで」

帝凰「…」

時間が迫っている

このままでは、タイムマシンに乗ることが出来ない

帝凰「麻琴ちゃん、そろそろ…」

麻琴「…このまま私が帰らなかったら…お父さんとお母さんは幸せになれる?」

上条「!」

麻琴「…だったら私は…」

美琴「そ、そんなこと…」

麻琴「…そうすれば、二人きりの時間は増えて…きっと」



上条「そんなわけねぇだろ!!」

麻琴「!」

上条「お前が生まれなきゃよかった、なんてただの一度でも俺達が言ったことがあったのか!?」

麻琴「それは…」

上条「そんなことないはずだ、俺達は決してそんなことを言ったりはしない!!」

上条「俺は…俺は、美琴との間に子供が生まれて本当に嬉しかったはずなんだ!」

残りの時間は、もう少ない


275 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 13:28:48.58 ID:BhbrcbDo0
上条「お前が生まれたとき、きっと美琴は嬉しかったはずだ、そして俺だって!!」

麻琴「だったらどうして…」

上条「結婚できなかったのは…俺のせいかもしれない」

麻琴「…」

上条「…俺はいつだってフラフラしてて、いざって時に決断が出来なくて、それで…それで、きっと結婚するって決断を出せないまま時間が経ったのかもしれない」

そうだとすれば、非常に情けないものだ

上条「…だから、お前のせいなんかじゃないんだよ」

麻琴「…」

上条「…麻琴、生まれてきたってことは、俺と美琴がそう望んだからなんだよ」

麻琴「二人が望んだ…?」

上条「…そうだ、俺達は…お前が生まれてきてくれて嬉しかったよ」

帝凰「早く、もう時間がない!!」

垣根「上条、急げ!」

上条「…麻琴、生まれてきてくれてありがとう」

もしも彼女が生まれていなければ、上条と美琴は結婚していただろうか

きっと違う、そんなことはないはずだ

上条「美琴…ごめんな、俺達は結婚できてないみたいなんだ」

美琴「…いいわよ、アンタが傍にいてくれるなら」

上条「…麻琴」

麻琴「…最近、お父さんとお母さんが…よそよそしいのも、私のせいなんじゃないの?」

上条「いいか、麻琴」

麻琴の頭に「右手」を乗せて、上条が笑う

上条「そんなことを言うな、俺は…お前の父親になれて嬉しかったんだ」

だからさ、と


上条「お前がそんな悲しい幻想を抱いてるなら、俺がそいつをぶち殺してやるから」


276 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 14:47:30.67 ID:BhbrcbDo0

麻琴「…お…父さん?」

上条「…だからさ、そんな不安になるなって」

ガシガシ、と娘の頭を撫でながら上条は笑う

上条「…俺は、お前のことが大好きだ」

美琴「私も、麻琴のことが大好きよ」

麻琴「…お母さん…」

上条「たった一日ちょっと一緒にいただけでもこんなに好きになるんだ…きっとさ、未来の俺達はお前のこと、とても大事にしてるはずだ」

麻琴「…うん、うん!」

上条「…時間なんだろ、そろそろ行かなきゃ」


帝凰「早く、もう時間がないんだよ!!」

残り時間はもう1分もない

麻琴「ありがと、お父さん…お母さん」

帝凰に手を引かれながら、麻琴も橋の欄干に立つ

夜の涼しい風が、麻琴の頬を打つ

麻琴「…それじゃ、バイバイ」

上条「なに言ってんだよ麻琴」

親指をぐっと立てて、上条が大きな声で叫ぶ


上条「またな」


277 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 14:51:01.08 ID:BhbrcbDo0

眩い光の中に消えた二人は、もうそこにはいなかった

垣根「…」

テクパトル「みんな、帰れたんだな」

上条「あぁ」

シンとした鉄橋の上で、一同が苦笑いする

エツァリ「しかし、まさか未来から自分の子供達がやってくるだなんて…」

番外「信じられないよね、もしかして夢なんじゃないかってさ」

心理「あら、それはそれで素敵じゃない」

美琴「…夢なんかじゃないわよ、きっと」

黒子「そうですわね…」

垣根「…俺達の夢なんだ、あれは」

上条「…あぁ」

しばし沈黙が流れた後、最初に口を開いたのは削板だった

削板「さぁて、覇道に笑われないように今日はこれからランニングだな!!」

黒子「ふふ…お供しますの」

美琴「私も、家に帰ったら当麻にご飯作らないとね!」

ショチトル「私達も行くか」

エツァリ「子作りをしないといけませんね」

一同「黙れ変態」

エツァリ「」


278 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 14:54:23.04 ID:BhbrcbDo0

行きの時もそうだったが、時間の中を移動するというのは気持ち悪いというか、おかしな感覚がする

帝凰「…この感覚を楽しめるようになることはねぇな」

麻琴「…う、うん」

帝凰と麻琴は手をつないだままだった

麻琴「ね、ねぇ」

帝凰「なんだよ」

麻琴「…帝凰君は、あの日に戻って私のチケットを拾ってくれたんだよね」

帝凰「あぁ」

麻琴「…ごめんね、何度もこんな感覚を味わわせちゃったんだ…」

帝凰「いいよ、別に」

そっけなく答える帝凰は、本当にそんなことなど気にしていないようだった

麻琴「…それに、帝凰君の時間も無駄にしちゃったし」

帝凰「無駄?」

麻琴「…最初の時間旅行、まだ期限になってなかったのにさ」

帝凰「あぁ、気にすんなってそんなこと」

ふっ、と小さく笑った帝凰が、麻琴の目を見つめながら言う


帝凰「お前のいない時間に意味なんてねぇんだからさ」

麻琴「…え…?」

帝凰「さて、帰ったら俺は父ちゃんと母ちゃんに精一杯甘えるかな!!」

麻琴「ちょ、ちょっと!今なんて言ったの!?」

帝凰「さぁねぇ、聞きたかったらタイムマシンで戻って聞くんだな!!」

麻琴「えぇぇぇぇぇ!?」


279 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 14:58:58.03 ID:BhbrcbDo0



「おかえり麻琴、遅かったじゃないか」

麻琴「おかえりなさーい!お父さん、今日は仕事は?」

「ん、もう終わったよ…やーっと残業もなくなるし、ゆっくり出来るんだ!」

「もう、当麻ったらいっつも残業残業って…浮気とかじゃないでしょうね」

「俺がお前だけしか愛せないの知ってるだろ?」

「そ、そうだけどさ」カァッ

麻琴「…ね、ねぇ」

「ん、どうした麻琴?」

麻琴「…お父さんとお母さんは…私が生まれてきて嬉しかった?」

「なに言ってるんだ、当たり前だろ」

「そうよ、だってこんなに可愛い娘なのよ?めちゃくちゃ嬉しかったに決まってるじゃない!」

麻琴「そ、そうなの?でも最近なんか二人とも私に隠れてなんかコソコソしてたし…」

「あぁ、それなら…さ」

麻琴「?なにその紙?」

「…お、俺達も…学園都市の統括理事会の人達に何度も手紙送ってたんだ、結婚がしたいって」

麻琴「!」

「…それでね、やーっと堅物のアレイスターも協力してくれたの」

麻琴「じゃ、じゃあこれって…!!」

「そ、婚姻届ってやつだよ、俺と美琴の」

麻琴「!!!や、やったぁぁぁぁ!!!」

「こ、こら!!騒がないの!!!!」

「あはは、麻琴ったら相当嬉しいんだな!」

麻琴「ねぇねぇ、だったらここでもう一度プロポーズだよね!!!」

「はぁぁ!?」

「そうね、当麻、もう一度プロポーズしてよ!」

「ちょ、ちょっとぉ!?」

麻琴「早く早く!!!」

「あぁもう!!!」



「不幸だぁぁぁぁぁ!!!!」


280 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 15:03:20.16 ID:BhbrcbDo0

覇道「ははは!!昔の親父も、相変わらずの熱さだったぞ!!」

「ははは!!お前も俺みたいな熱い男になれよな!!」

覇道「あぁ、もちろん!!!」

「こらこら二人とも、静かにしてくださいな」

覇道「おふくろ、昔のおふくろは中々面白い人だったぞ!」

「あら、そうでしょうか?」

「黒子は昔からずーっと変わらず素敵だけどな!」

「まぁ、軍覇さんだって変わりませんの」クスクス

覇道「それとな、新しい友達も出来たんだ、親父達の友達の家族だ!」

「じゃあ上条達か?」

覇道「その通り!!」

「まぁ、それはよかったですわね」フフフ

「よーし、じゃあお前に新しい友達が出来たお祝いに!」

覇道「お祝いに!?」

「新しいトレーニングマシンでも買ってやるか!!」

覇道「よっしゃぁぁぁぁ!!!!」

「はぁ…それ、普通のお祝いの品ではありませんわね」

「だったら何がいいのかな?」

「そうですわね、ケーキとか…」


覇道「ふ、太るぜおふくろ…」

「そうだぞ黒子…」

「…そ、そうですわね」


281 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 15:06:19.08 ID:BhbrcbDo0

イツトリ「ただいま」

「おかえり、どうだった時間旅行は?」

イツトリ「若い頃の二人も相変わらず変態だった」

「な、なんだそれは…」

イツトリ「あれ、父さんも帰ってきてたのか」

「あぁ…一通り、アステカの文献も纏め終えたからな」

イツトリ「へぇ…じゃあしばらくはこっちにいられるんだ」

「もちろん、そうするつもりだ」

イツトリ「んじゃ、俺は弟か妹が出来ることでも期待しますか」

「もう出来てるぞ」

イツトリ「…え?」

「ふん、気づいていなかったとはな」

イツトリ「ま、待て待て!!いつの間に…」

「この前…4か月前か、ショチトルがこっちに来てくれた時に」

イツトリ「あの時俺も一緒じゃなかったか!?」

「あぁ、でも子供が一緒でも子作りは出来るだろ?」

イツトリ(こ、こいつら変態だ…!!!!)



282 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 15:09:03.58 ID:BhbrcbDo0

小百合「ねぇ、お父さん」

「なンだよ」

小百合「…お母さんって、クローンだったんだ」

「…お前、聞いたのか」

小百合「うん、昔のお父さんが教えてくれた」

「へぇ、アナタが教えるなんて珍しいね」

小百合「…あ、あのね!!お父さんはひどいことをしたと思ってるし…でも、私はそれでもお父さんが大好きだよ?」

「…そォかよ」

「あ、一方通行ったら喜んでる!!」

「喜ンでなンかねェ!」

小百合「お父さん、顔赤いよ?」

「う、うるせェ!!」

「なになに、ミサカも混ぜてー!!ってミサカはミサカは一方通行の懐にダイブ!!」

「ロリにこンなことされるなンて本望だァ!!」

小百合(…お父さんって、時々おかしくなるよね)

「でもよかった、やっと小百合も真実を知ったんだね」

小百合「うん、お母さんも…色々あったけど、大好きだよ」

「えへへ、ありがとね」

小百合「うん!!」


283 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 15:11:48.73 ID:BhbrcbDo0

エヘカトル「…親父、親父っておふくろのどこに惚れたんだ」

「な、なんだよいきなり」

「子供がそんなこと気にする必要はありませんよ?」

エヘカトル「…もしかして親父って、ロリコンってやつだったのか」

「ち、ちげぇよ!!」

エヘカトル「…まぁいいや、昔の親父達を見てればなんとなくは分かったし」

「…昔の美月達はどうでしたか?」

エヘカトル「なんも変わらなかった、今と」

「へぇ…」

エヘカトル「…そういや、アレイスターも一緒にいたけどあんな昔から一緒だったのか」

「アレイちゃんもいたんですか…」

「お前と一緒に暮らし始めたのっていつだっけ」

「私が冷蔵庫だったことからだからな、エヘカトルが戻った時よりも少し前だ」

エヘカトル「冷蔵庫って…何があったんだよアンタ」

「さぁね、君は知る必要もない」

エヘカトル「…」


エヘカトル「…ホント、面白い旅行だったよ」

284 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 15:15:33.06 ID:BhbrcbDo0

翼「なぁ、母ちゃん」

「なに?」

翼「肩揉んでやるよ」

「あら、どうしたのよ急に?私まだ28なんだけど」

翼「若いけど、でもいいから」

「…そう、ならお願い」



帝凰「…父ちゃん、父ちゃんって…いつから母ちゃんのこと、好きだって自覚したんだ?」

「さぁな、覚えてねぇや」

「あら、帝督は覚えてるでしょ」

「うるせぇ、麗心だって覚えてるくせによ」

「さぁ、私は覚えてるかしら」

「ちっ」

帝凰「…でもさ、昔の父ちゃん達を見てると…俺もあぁなりたいなって思ったよ」

「…誰と?麻琴ちゃんか」

帝凰「…そ、それはまぁ…いいだろ」

翼「へぇ、俺は小百合ちゃん派だけどな」

帝凰「…お前、そういうのはどうかと思う」

「…まぁ、時間旅行なんていい経験になったんじゃねぇか」

帝凰「?」

285 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 15:19:45.21 ID:BhbrcbDo0
「…時間を戻して、何度も楽しい時間を繰り返すのもありだろうな」

ケラケラと笑いながら、垣根帝督は言う

「…でもよ、同じ時間を繰り返したり、過去に戻って何かを変えても、未来に進むことにはならないんだ」

翼「…あぁ」

「…俺達は未来に生きなきゃいけない、過去を振り返ることはあっても、過去に戻ることはしちゃいけねぇんだ」

帝凰「…そうかもな」

「…よかったじゃねぇか、面白い経験が出来てよ」

「…そうね、あなた達は貴重な経験をしたのね」

翼「…」

帝凰「なぁ、父ちゃん」

「なんだよ帝凰」

帝凰「…あのさ、父ちゃんは…未来に進めてよかったって思うか?」

「…当たり前なことを聞くなよ、思ってるさ」

翼「なんで?」

「…麗心と結婚できて、帝凰と翼が生まれて、そして幸せな家庭を築いてる」

「…こんなの、過去に生きてたら出来なかった現実だ」

「…あなた」

「…俺達には未来がある、戻ってばかりじゃ進まない時間が」

もう一度ケラケラと笑ってから、彼は呟いた



「…明日の俺は今日の夢さ、今の俺は過去の夢だ…夢を叶えるには、明日に進まないとな」


286 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 20:43:16.63 ID:BhbrcbDo0


上条「…帰ったな、麻琴」

美琴「うん…帰れてよかった」

いつもよりも静かに感じる、上条の部屋

麻琴が先ほどまでそこにいたのが、嘘のように感じられる

美琴「…ちょっと寂しいな」

あはは、と笑う美琴の顔は、とても「ちょっと」なんてものではなかった

上条「…なんかさ、あいつって…本当に娘なんだなって思ったよ」

美琴「何よそれ」

上条「…美琴との子供、か…そういや二人目も生まれるらしいし、俺達って案外順調なのかな」

美琴「し、知らないわよそんな…ってにゃぁ!?」

上条「ん、なんでしょうか?」プニプニ

美琴「な、なんで触ってるのよ!?」

上条「ん、でも麻琴に早く会いたいだろ?」

美琴「う、生まれる時期は決まってたじゃない!」

上条「んじゃ、美琴さんとしたいからということで」

美琴「あ、あう…」カァッ

上条(…麻琴がいた間は出来なかったからな)ニヤニヤ

美琴「そ、その代わり優しくしてよね?」

上条「もちろん!」

287 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 21:04:43.64 ID:BhbrcbDo0

心理「あら、何してるのよ垣根」

垣根「何って、別に…」

心理「?」

垣根「…あいつらがさ、お前に俺が名前を付けたって言ってただろ」

心理「そういえば、そうね」

垣根「だから、お前にぴったりな名前を考えてるところ」

紙に色々な名前を書いては、それを横線で消している垣根

心理「…何よ、物指って」

垣根「それはギャグだから気にするな」

心理「…それで、決まったの?私の名前」

垣根「んーにゃ、いいのが中々思いつかないんだよな」

お前のイメージにぴったりな言葉ってあんまりないし、と垣根が付け加える

心理「イメージ…ね」

垣根「…麗しで、そして心を操るから…麗心とかどうだよ」

心理「なんて読むの?」

垣根「れい」

心理「…心はどこへ行ったのよ」

垣根「心はいつだって俺の中にあるさ」

心理「はぁ…なんか微妙よ、その名前も」

垣根「なーんだ、俺はこの名前お前にはぴったりだと思うけどなぁ」

心理「…そう」



心理「…だったら、それでもいいかしら」ボソッ

垣根「え、なに?」

心理「なーんでも」プイッ


288 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/28(土) 21:22:16.05 ID:BhbrcbDo0

上条「…結局、さ」

美琴「うん」

ベッドの中で二人は抱き合っていた

互いの体温を感じながら、そっと優しく包む込むように

上条「…俺達は、ずっと一緒にいられるんだな」

美琴「で、でもさ…結婚はまだしてないみたいよ?」

上条「いつか絶対にしてやるよ」

美琴「…当麻…」

上条「俺の夢は、美琴の夢だ…美琴の夢は俺の夢だ」

上条「二人の夢なら、二人で叶えなきゃいけないだろ?」

上条「俺は美琴と結婚したい、だから美琴も協力してくれないか?」

美琴「当たり前じゃない」

上条「…よかったよ」

美琴「…麻琴が来てくれてよかった」

上条「あぁ」

美琴「…いつか麻琴が生まれたら、久しぶりって言ってあげたいかな」

上条「久しぶり…か、それよりさ」

美琴「うん」

美琴が小さく微笑みながら、上条の言葉に耳を傾ける



上条「ただいまって、言ってやりたいかな」

美琴「あはは、それもそうね」


時は戻すことは出来るかもしれない

でも、人は前に進まなければならないのだ



未来からのお客様編終了


289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 00:34:39.85 ID:4r5QOc7Co
28の心理タソ…ゴクリ…

双子君が10歳ということはあれか、18で産んだのか
もうすぐだなww
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 03:57:48.30 ID:43roMIoSO
打ち止めは未来でも成長してないのかww
291 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:26:09.54 ID:oi03nk9J0
上条「とうとう夏休みが終わっちまった・・・」

学生鞄を手にぶら下げながら、上条が不満げに呟く

美琴「はぁ・・・なんかあっという間の夏休みだったわ」

上条「・・・学校行きたくねぇ・・・」

美琴「いいじゃない、宿題はしっかり終わらせたんだし」

上条「・・・そうだけど、美琴さんと一緒にいられる時間が減るんですよ?」

美琴「そ、それは私も悲しいけどさ・・・」

玄関のドアを開けて、美琴が息を深く吸う

美琴「でも学校だって大事な生活の一部じゃない」

上条「えー・・・」

美琴「・・・私もたまには寮で過ごさないといけないんだし」

上条「?俺の部屋に勝手にやって来るのは美琴さんですけど」

美琴「な、なによ!?私がいたら嫌だって言うの!?」

上条「いやいや、むしろ大歓迎ですよ、こんな可愛い彼女が傍にいてくれるなんて」

美琴「あう・・・」


青ピ「かーっ!朝からあんな風に見せ付けてくるなんてなぁ!」

土御門「全く、イライラするぜぃ」

上条「あ、あれ?青ピはなんでいるんだ」

土御門の部屋の前に、なぜか青ピがいた

上条「・・・あ、もしかして土御門の部屋に泊まってたのか?」

土御門「なんで俺が男を部屋に泊めなきゃいけないんだよ、カミやん」

青ピ「ボクはさっき土御門を迎えに来ただけやって」


292 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:26:37.66 ID:oi03nk9J0
上条「あぁ、なんだ」

美琴「土御門さんと青髪さん、おはよう!」

土御門「にゃー、美琴ちんも相変わらず可愛いぜぃ」

青ピ「羨ましいなぁカミやん!こんな彼女と半同棲なんて!」

上条「・・・お前だって麦野さんといい感じなんだろ?」

青ピ「あれ、知ってたん?」

美琴「え、そうなの?」

青ピ「付き合う一歩手前・・・ってとこやろかな」

土御門「なにぃ!?青髪、てめぇまで俺を裏切るのかにゃー!?」

青ピ「野郎との約束か美人との恋なら、ボクは迷わず後者を選ぶ!」

土御門「あぁぁぁ!これで男メンバーじゃ俺だけフリーだぜぃ!」

上条「吹寄とでも付き合えば?」

土御門「それはないぜぃカミやん」


とりあえず学校に行こう、と四人は寮から出た

暑さはまだまだ夏なので、制服が鬱陶しく感じる

上条「・・・暑いな」

土御門「・・・全く、こんな暑い中で校長の話とか聞かなきゃいけないんだぜぃ」

美琴「私達なんてお偉方のスピーチまであるのよね・・・」


293 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:27:09.98 ID:oi03nk9J0
青ピ「さすが常盤台やねぇ・・・」

美琴「めんどくさいったらありゃしないわ・・・」

上条「はぁ・・・なんか一歩歩く度にだるくなっていきますよ」


心理「あら、若いのにだらし無いわよ」

美琴「あ、心理定規・・・おはよう」

心理「おはよう、みんな」

青ピ「あっはぁ!癒し成分が増えたでぇ!」

土御門「にゃー、夏の暑さの中じゃ心理定規の美白はきつそうだぜぃ」

心理「そうなのよね」

垣根「んだよ、しっかり紫外線対策してるくせに」

上条「あ、垣根もいたのか」

垣根「始業式くらいは真面目に出ないとな」

美琴「毎日真面目にやりなさいよ・・・」

垣根「ミコっちゃんおはよう」

美琴「ミコっちゃんって呼ぶな」

青ピ「なんや垣根と会うのも久しぶりやなぁ」

土御門「カミやんはたまに見るけどにゃー」

垣根「俺は基本お前達の寮には行かないからな」

心理「そうね、それにあなた達とはプライベートでは会わないし」


294 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:27:40.40 ID:oi03nk9J0
青ピ「ボクとしてはもう少し遊びたいんだけどなぁ」

美琴「うーん・・・でも私は当麻と二人きりがいいかな」

土御門「あぁぁ!カミやん、羨ましいぜぃ!」

上条「いちいち絡んでくるなよ!」

土御門の手を振り払いながら、上条が叫ぶ

土御門「にゃーっはっは!甘いぜぃカミやん!」

上条「鬱陶しいんだよ!」

心理「はぁ・・・やめなさいよ、こんな往来で」

青ピ「・・・あれ、あそこにおるのって姫やんと吹寄やん」

垣根「あ、本当だ・・・ちょっと呼んでくるか」

てくてく、と垣根が二人に近づく


姫神「だから。私はあんまり寝技は良くないと思う」

吹寄「寝技って便利じゃない?」

姫神「今は。競技としての美しさを・・・」


垣根「おっはよう吹寄!相変わらずいい乳してんなぁ!」

吹寄「」

グニグニ、と垣根が吹寄の胸を後ろから・・・


295 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:28:14.82 ID:oi03nk9J0
吹寄「せりゃぁぁぁ!」

垣根「・・・えっ・・・?」

ガシッ、垣根の右腕が信じられない握力によって捕らえられた

ブンという風を切る音を垣根の耳は捉えたが、その時には既に彼の体は鉄板のように熱せられたアスファルトの上に打ち付けられていた

投げられた、理解はしても実感が全く湧かない

それはまるで全く知らない音楽を聞かされた瞬間に「これはあなたが大好きな歌手が歌っている」なんていう意味の分からない嘘をつかれた時のようだ


吹寄「ちょっと、なにシリアスにしようとしてるのよ」

垣根「・・・あれ?」

姫神「みんなが向こうにいる」

吹寄「へぇ・・・私達を呼びに来たってわけ?」

垣根「・・・やべ、なんかお前の胸揉んだら勃起し・・・」

吹寄「地獄に堕ちろ!」

パシン、と頭を叩かれた垣根が猫のような声を上げる

垣根「冗談だって・・・てめぇの胸で勃起するわけねぇだろ」

吹寄「それはそれでいらつくわね・・・」


青ピ「いや・・・見事な背負い投げやったなぁ」

心理「垣根、あなた女の子にいきなりあんなことしたらダメよ」

垣根「あぁ」


296 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:29:04.35 ID:oi03nk9J0
吹寄「みんなおはよう・・・上条もちゃんと来てるわね」

上条「俺は来ないと思われてたのか・・・」

土御門「カミやんって行事とかサボる癖があるからにゃー」

上条「あれは好きでサボってるんじゃねぇよ!」

美琴「不幸に巻き込まれて行けなくなるのよね」

上条「そうそう!」

姫神「それはそれでどうかと思う」

心理「・・・あ、それより急がないと遅れるわよ」

上条「!そうだった、俺達はこっちだから!」

美琴「うん、また後でね!」

垣根「今日も部活はあるからな!」

美琴「分かってる!」

駆けていく美琴を見送ってから、上条が垣根に尋ねる

上条「なぁ、部活って?」

垣根「はぁ?フリンフォン部だよ」

上条「まだやってたのかあれ・・・」

吹寄「たしか・・・最近はちゃぶ台返しを練習してるのよね」

土御門「にゃー、美琴ちんは上手いからご飯だけを遠くに飛ばせるんだぜぃ」

上条「な、なんか意味があるのかそれには・・・」

姫神「ほら、無駄話してないで」

垣根「そうだな、走って行くか」

吹寄「そうね・・・初日から遅刻はまずいし」

青ピ「じゃ、急ぐでぇ!」


297 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 20:29:41.05 ID:oi03nk9J0

上条「・・・走ったのが間違いだったよ」

吹寄「余計に暑くなったわ・・・」

青ピ「・・・あぁ、でも制服から透けて見える下着ってのも中々・・・」

姫神「見ないで・・・でも暑い・・・」

土御門「にゃー・・・教室もなんでエアコンついてないんだよ・・・朝一番に来たヤツはクーラーつけとけ!」

垣根「あぁ暑いなぁ」

心理「えぇ暑いわね」

上条「二人は空飛んできただけじゃないか!」

垣根「いやいや、中々暑かったんだぜ?太陽に近かったし」

上条「絶対嘘だ!汗かいてないじゃん!」

心理「あら、汗はかかなくても暑いものは暑いのよ」

上条「だったらなんでそんな涼しい顔してられるんだよ!?」

心理「さ、全校集会が始まる前にちゃっちゃと宿題とか提出しときましょ」

垣根「はーい」

上条「聞いちゃいねぇぇ!」

吹寄「・・・もうツッコむ気力もないわ」

姫神「上条君はタフ」

青ピ「カミやんはドMやから逆境でむしろ燃えるんよ」

上条「こらそこ!平然と嘘をつくんじゃない!」

土御門「まぁ、カミやんったら」

上条「あぁうぜぇ!」


298 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 22:28:38.41 ID:oi03nk9J0

上条「…はぁ、全校集会とかだるいんだよなぁ…」

吹寄「こら、無駄話をしないの」

心理(…座りたいわ)

体育館には全校生徒が集まっている

蒸し暑さにいらつきながらも、整列をして会が始まるのを待つ

土御門(なんで座ったらいけねぇんだよ…)

青ピ(ほんま…先生は座ってるのになぁ)

姫神(…小萌も座ってる)

上条(…暑い…ってあれ、垣根はどこ行った?)

心理(さっきトイレに行くっていったきり帰ってこないわね)

青ピ(お腹でも痛いんかな?)

心理(でもめちゃくちゃ元気だったわよ?)



小萌「えー、みなさん!!これから始業式を始めるので、静かにしてください!!」

小萌のあいさつで、全校生徒が静まり返る

あまりに背が小さいためマイクをかなり下げているのはなんとも面白い

小萌「では、これより始業式を始めるのます!まずは校長先生のあいさつなのです!!」



上条(相変わらずだなぁ…)

青ピ(あぁ、かわえぇなぁ…)


299 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 22:32:10.22 ID:oi03nk9J0

垣根「あーあー、マイクテストマイクテスト」


一同「」


垣根「校長の挨拶だったんだが、校長が死んだため急遽俺に変わった」


上条「う、嘘つけ!!」

吹寄「校長先生、朝はピンピンしてたじゃない!!」

姫神「…まさか。君が…」


垣根「さっきのは嘘だ、ドッキリだ、実は校長先生は今生まれそうなんだ」


上条「何がだよ!?」

土御門「さぁ、あいつ何を言ってるのか…」

心理「頭が痛くなるわ…」ハァ


垣根「まぁいいだろ、全校生徒諸君、夏休みは有意義に過ごしたか?」

垣根「はい、そこの制服を中途半端に着崩してるいけてない君!!」


上条「え、お、俺!?」

吹寄「よかったじゃない上条」

上条「よくねぇ!!!」



垣根「夏といえば」


上条「…プ、プールとか…か?」



垣根「校長先生にため口をきくな」


上条(うぜぇ)


300 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 22:57:00.27 ID:oi03nk9J0

垣根「えー、夏にはいろいろな思い出を作れたはずだと思います」

垣根「友達と遊んだこと、アルバイトなどを経験したこと、エッチしたこと」


上条「」

土御門(小萌先生顔真っ青だにゃー)

青ピ(やるなぁ、垣根)



垣根「それら全てを、あなた達は忘れないでしょう」

垣根「俺は忘れます」

垣根「えー、ですがこうやって全校生徒が無事に集まれたことを喜ぶべきです」

垣根「夏休みでの死亡者はゼロ、重傷5人、うち一時意識不明が2人、軽傷13人、吐き気頭痛が20人程度」

垣根「…よかったですね」


心理(なにが?)

吹寄(なにが?)

姫神(なにが?)


垣根「…さて、少々ここで時間を頂いて、これから二学期を迎える君達へエールを送ります」


青ピ(そんなんえぇから早く終わらせてほしいなぁ…)

土御門(めんどいぜぃ…)


垣根「上条は美琴の乳房にむさぶりついた」


上条「」


垣根「あ、これは違う…こっちだこっち」


心理(なにやってるのよあの人…)ハァ


301 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 23:02:15.03 ID:oi03nk9J0

垣根「えー、私は夏休み、様々な目標を立てていました」

垣根「君達も、目標という物を持ってください」

垣根「簡単なことでもいいんです、世界を征服するとかアンジェリーナ・ジョリーと結婚するとか、稲川順二の髭になるとか、クネクネを直視するとか」

垣根「そういう目標を持てば、人は努力できます」


吹寄(その目標に何の意味があるの…)

姫神(…さっさと座りたい)


垣根「努力すれば、きっと夢は叶います」

垣根「では次に、表彰式です」


小萌「あ、あの…進行は私がしますので…」


垣根「うるせぇ、てめぇ後でひん剥いて犯すぞ」


小萌「」


垣根「まず、フリンフォン部!!代表、吹寄制理!!」


吹寄「え、わ、私?」


垣根「部長だろ!!代表、壇上へ!!」


吹寄「は、はぁ…」


垣根「フリンフォン部、君達は全国大会において優秀な成績を収めたのでこれを賞する」

吹寄(全国大会中止だったじゃない…)

垣根「おめでたわない」

吹寄「…は?」

垣根「これがフリンフォンでの最大の賞賛の言葉なんだ、いいから受け取れ」

吹寄「は、はい…」



吹寄(なんで贈呈品がドアノブなのよ…)


302 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/29(日) 23:02:55.80 ID:oi03nk9J0
今日はここまで

なんかまた意味の分からないギャグになってきてる


個人的に書きたい物を決めないと、どうしてもギャグに走ってしまいますね


では

303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 23:41:11.87 ID:OP6opmFUo
おつにゃんだよ!
304 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 11:12:05.10 ID:/qCYV4mr0
垣根「はい、次は・・・なんだっけ」

垣根「あぁあれだ、代表者による夏休みの感想だっけか」


上条(いや、夏休みの反省と二学期の抱負だろ・・・)

姫神(感想って・・・)


垣根「一年、吹寄制理」


吹寄「はい」


上条(なんだ、吹寄だったのか)

青ピ(さすがやなぁ)

土御門(真面目なヤツだぜぃ)

心理(なんかやな予感がするのは私だけなのかしら)


吹寄「私にとって、夏休みは非常に重要な経験となりました」

垣根「例えば?」

吹寄「・・・あ、あの・・・横槍を入れられると話しにくいんですが」

垣根「・・・」


垣根「なに敬語使ってんだ、気持ち悪い」

吹寄「さっきタメ口やめろって言ってたのは誰よ」



305 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 11:12:30.44 ID:/qCYV4mr0
垣根「で、なにがどう重要だったんだ」

吹寄「私は・・・」

垣根「まさか夏休みには一学期に習ったことをしっかり復習し、尚且つ二学期の準備もしました、なんて言わないよな」

吹寄「」

垣根「あとアルバイトは出来ませんでしたが、部活動によって人との関係を築けました、なんてベタなことはないよなぁ」

吹寄「」

垣根「皆さんはどんな素晴らしい経験をしましたか?その経験を二学期で更に発展させましょう、とか言った日には笑い者だな」

吹寄「・・・う・・・」

垣根「あ、あれ?なんで泣きそうなの?」

吹寄「垣根の馬鹿ぁ!」

垣根「お、おい・・・」

吹寄「うわぁぁぁん!」


土御門「あ、帰ってきた」

上条「げ、元気出せよ、な?」

吹寄「最低、垣根なんて知らないわよ!」

青ピ「いやぁ、中々面白かったなぁ」

姫神「楽しんでたのは君だけ」

306 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 11:13:14.47 ID:/qCYV4mr0


垣根「えー、続きまして教頭の挨拶でしたが割愛します」


上条(えぇ・・・)

土御門(いいのかそれ)


垣根「ではここで、一学期成績優秀者の発表です」

垣根「成績優秀者には学園都市の様々な機関で使えるクーポン1万円分が」


上条「へぇ、太っ腹だな」

青ピ「まぁボクらには関係ない話やね」


垣根「小萌の自腹で支払われます」

小萌「えぇ!?」

垣根「成績優秀者、一年心理定規、垣根帝督」


吹寄「・・・さすがね、心理定規」

姫神「垣根が優秀っていうのが納得いかない」

上条「あの野郎、宿題サボりまくってたくせに!」

土御門「でもテストじゃいつも満点だったからにゃー」

青ピ「えぇなぁ・・・でも小萌センセは可哀相やけど」

上条「そりゃポケットマネーで支払わなきゃいけないんだからな」


307 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 11:13:52.51 ID:/qCYV4mr0
吹寄「というか先生も反発すればいいものを・・・」

姫神「反発したら。なにをされるか分からない」


垣根「心理定規、おめでとう」

心理「ありがとう・・・でもなんであなたが校長の代理をしてるの?」

垣根「小萌、あとで俺にちゃんと金払えよ」


小萌「き、聞いてないのですよ・・・」


垣根「大丈夫、ちゃんと金は返すから」


上条(それ意味ねぇ)



垣根「では最後に、斉唱しましょう」

垣根「手元に歌詞が配られているはずですが・・・最近の若者は校歌を覚えていない人が多い!それは非常に悲しいことです!」

垣根「自分が学ぶ場所に感謝を示すのは当然ではないでしょうか!」

垣根「人間讃歌は勇気の讃歌!」

垣根「はい、ではピアノ伴奏に続いて歌って下さい」


土御門「まぁ、歌詞があるのは助かるぜぃ」

姫神「校歌とか。わりとうろ覚えだから」

吹寄「ちゃんと覚えてなさいよ・・・でもまぁ、悪くはない試みね」

一同が歌詞カードを開く


一同(これうちの校歌じゃねぇ・・・)


308 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 18:32:43.28 ID:/qCYV4mr0

垣根「さぁ、明るく歌いましょう」

伴奏が始まる


上条(…この歌って…)

吹寄(そうよね…聞いたことあるわ…)


垣根「かたーりーつぐー人ーもーなくー」


姫神「…ふきーすーさぶー…」

青ピ「かぜーのーなーかでー」

土御門「まぎーれーちらーばるー」

小萌「ほしのなをー」

上条「わすーれーられーてーもー」


垣根「ヘーッドラーイト」

心理「テールラーイト」


吹寄「たーびはーまだー…」


一同「おわらーないー」



上条(なんだったんだよ…今の)


垣根「みなさん、よく歌えましたね」


心理「…なんなのよこれ…」

309 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 19:45:49.70 ID:/qCYV4mr0

垣根「では、これにて全校集会を終了するでござる」


上条「あー、終わった終わった」

吹寄「…垣根のせいで、ずいぶんと疲れたわ…」

垣根「おいおい、んなこと言うなよ」

姫神「…さっきまで壇上にいたのに。もうここにやってきてる」

青ピ「さっすが垣根…って褒めるとこではないけどなぁ」

心理「おかえりなさい…これからどうするの?」

垣根「どうしようかなぁ…たしか今日はホームルーム終わったらそれで解散だったよな」

土御門「音楽性の違いでな」

垣根「…」



垣根「え、なに言ってんの…ちょっと引くんだけど…」

土御門(こいつ…自分のギャグがすべったらキレるくせに!!)

吹寄「…そうそう、私は大覇星祭実行委員の話し合いがあるから」

心理「あら、もうそんな時期なのね」

青ピ「そうやねぇ…今年も垣根が暴れそうや」

垣根「あぁ、暴れるぜ」

姫神「出来れば平和にしてほしい」

心理「それは同感ね」

垣根「…誰も、分かっちゃくれない」

上条(当たり前だろ)


310 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 19:52:04.35 ID:/qCYV4mr0

小萌「さて、あんまり長くすると皆さんから文句言われるので早めにしますよ!」

教卓で、背伸びをしながら小萌が言う

垣根「だったらさっさとしてくれよ」

小萌「か、垣根ちゃんったらこの夏休みで一気に不良に…」

垣根「あーもーそーいうのいーからー」

吹寄「垣根…アンタが伸ばしてるのよ、気づきなさい」

土御門「にゃー、さっさと終わらせて帰りたいぜぃ」

青ピ「えー、ボクは先生と一緒にいたいけどなぁ」

小萌「はい、とにかく宿題は皆さん提出…」



小萌「か…上条ちゃんが宿題をしてきている!?」ガガーン

上条「な、なんでそこで衝撃的な表情をしてるんですか!?」

小萌「あぁ、これはきっと大雨どころじゃないのですよ!!」

姫神「たしかに。非常に珍しい」

心理「そうね、なんか…変なものが降ってきても驚かないわ」

垣根「あー、なんかそれは分かるな」



垣根「あれだよな、いきなり台風が来ても驚かないよな!!!」


ビュオオオオオオオオオ



小萌「…」

垣根「…」

上条「…」



一同(…た、台風が来た…)



突然の台風編

311 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 19:57:39.47 ID:/qCYV4mr0

上条「…お、俺のせいなのか?」

垣根「…先生、これ以上長引かせるとマジで帰り道が危ないかもしれません」

心理「そうね、今はまだ大丈夫そうだけど」

土御門「にゃー、少し残念だけど今日は早く帰らないといけないっぽいぜぃ」

小萌「そうですね…では、今日はこれで解散にします」

吹寄「…じゃあ、先生、さようなら」

一同「さようなら」



上条(あ、明らかにみんなのテンションが下がってる!?)


「…上条のヤツ…」

「宿題してくんなよ…」

「リア充が…」


上条(うわぁぁぁ名前もないようなモブキャラから罵声が!!)

心理(そういうのはやめなさい)

青ピ「…あーあ、今日は麦野さんとデートするはずだったのになぁ」

垣根「俺も心理定規とデートしたかったのにな」

心理「仕方ないわよ、台風なんだから、突然の台風なんだから、誰かのせいでの突然の台風なんだから」

上条「ご、ごめんなさい…」

心理「…はぁ、それよりあなたも美琴を迎えに行ってあげなさいな」

上条「あ、そうだった!!」

上条が鞄を持ち、すぐさま駆け出す

青ピ「あ、もう帰った」

土御門「ちっ…あの野郎、逃げやがったにゃー」



312 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 20:06:03.31 ID:/qCYV4mr0

上条「う、うわ…すっげぇ風だな」

校舎の外は、もう阿鼻叫喚の地獄絵図だった

どこからか飛んできた傘の骨組みが校庭には転がっている

更には、ビニール袋まで転げまわっている

上条「…と、突然の台風ってどうなんだろうな…」

雨が横から打ち付けるが、傘を差すのは非常に危険である

制服がすでにぐしょ濡れだが、気にはしていられない

上条(…こ、こんな雨の中では美琴の制服もきっと!!)



上条(俺が、守りに行かなきゃ!!!)



素早く駆け足で校門を出た瞬間


美琴「あ、当麻…」

上条「あれ、美琴?」

美琴がいた

ぐしょ濡れ、のはずなのだがなぜかそれほど透けてはいない

上条「な、なぜ透けてないの?」

美琴「そ、それはまるで透けていてほしかった…みたいに聞こえるんだけど」

上条「い、いや…そういうんじゃないけどさ、ところでなんでここに?」

美琴「なんか突然台風になったから…当麻は大丈夫かなぁって」

上条(俺のせいなんだよな、それ…)


313 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 20:10:38.52 ID:/qCYV4mr0

美琴「…ほら、早く帰って着替えないと…」

上条「あれ、美琴は今日常盤台の寮に帰るんじゃなかったのか?」

美琴「そ、それは…ほら、台風だから!!」

上条「いや、台風でも関係ないだろ?」

美琴「た、台風だと閉店するのよ!!」

上条「寮なんだろ?」

美琴「う…」



美琴「い、一緒にいたいのよ…」カァッ

上条(あぁ可愛い)



上条「…にしても、なんで急に台風が…」

垣根の建てたフラグのせいではないのか、と毒を吐きたくなる

上条「…はぁ、気象分野的にそういうのはどうなんだよ…」

美琴「有り得ない、なんてことは有り得ないのよ」

上条「…あれ?垣根がいる…俺より後に教室出たはずなのに」

美琴「心理定規もいるけど…なんで垣根は傘差してるのかしら?」

上条「危ないよなあれ…」

美琴「台風の時に差すなんて、ちょっとおかしいわよ…」


道の先には、垣根と心理定規がいた


314 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 21:52:20.59 ID:/qCYV4mr0

垣根「うわぁうわぁ!!見て見て心理定規!!風がめっちゃ強い!!」

心理「台風だから当たり前でしょ…」ハァ

垣根「ほらほら、傘もこんなに裏返ってる!!」

心理「ちょっと、危ないからやめなさい」

垣根「やべぇ!!風圧で空も飛べそうだ!!!」

心理「…あなた、そんなの使わなくても飛べるじゃない」

垣根「心理定規、お前もやってみろって!!」

心理「嫌よ、私の傘がブランド物だって知ってる?」

垣根「じゃあ俺の傘使ってもいいからぁ!!ねぇねぇ!!」

心理「…台風でテンションが上がるって、あなた小学生?」

垣根「えー、だって楽しいだろ!!地球が怒ってるんだぜ!!!」

心理「はぁ…?あら、あっちに上条君と美琴がいるわね」

垣根「あ、ホントだ…御坂ったらちょっと服透けてるな」

心理「仕方ないわよ、この雨なんだし」

垣根「お前もちょっとだけ透けてるぞ」

心理「セクシーでしょ?」

垣根「…髪の毛がうなじにピットリついてるのがセクシー」

心理「あなた、分かってるわね」

垣根「まぁな」



315 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 22:14:13.37 ID:/qCYV4mr0

上条「…な、なんか垣根がこっち見てニヤニヤしてる…」

美琴「あ、なんか来たわね…っていうか垣根も心理定規も、髪の毛が風になびいてる…」

上条「それが絵になるのがおかしいんだけどな…」



垣根「よぉ、未元物質って知ってるか」スタスタ

上条「知ってる、っていうかなんだよお前…傘差すなよ、あぶな…」

垣根「はいミコっちゃん、これで雨に濡れないで済むぜ」

美琴「な、なによ気色悪い…っていうか、傘は危ないわよ」

垣根「ひゃっはぁ!!もう下半身はぐしょ濡れだけどねぇ、ってかぁ!?」

美琴「…」

垣根「正直すまんかった」

心理「上条君も今帰るところ?」

上条「どう見てもそうだろ…美琴が迎えに来てくれたんだ」

心理「あら、本当ならあなたが迎えに行くはずだったのに」

美琴「え?」

心理「彼ったら、あなたが心配だからって」

上条「あ、それは心理さんが…」

心理「いいから、自分の手柄にしておきなさい」コソッ

上条「あ、ありがとう…」コソッ

美琴「わ、私のこと…心配してくれたの?」

上条「あ、当たり前だろ!!」

垣根「あれ、心理定規が言ったから従っただけだろ?」

上条・心理「垣根ぇぇぇぇぇ!!!!」


316 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 22:42:44.89 ID:/qCYV4mr0

美琴「へぇ、結局は心理定規が上手くフォローしただけだったのね」

上条「あ、いや…美琴が着になったのは本当ですよ?」

美琴「それは知ってるけどさぁ…」

垣根「ミコっちゃん、そんなこと言ったら上条がかわいそうだぜ」

美琴「その呼び方やめろって言ってるじゃない!!」

垣根「ミコっちゃん、最近おっぱいでかくなった?」

美琴「あぁセクハラ親父みたいなこと言うな!!」

垣根「それはそうとさ、今日の台風はなんなんだろうな」

上条「全くだよ…冗談では俺のせいだとか言ってたけどさ」

心理「…もしかして、風力使いが暴れてたりして」

美琴(学園都市中に台風を起こせるヤツなんていないわよ)

心理(美琴ったら、真剣に考えてるんでしょうね)

垣根(学園都市に台風を起こすとなるとLEVEL4なんて出力じゃ足りない…いや待て、だが超能力者には風力使いはいねぇぞ、となるとこれは…ま、魔術!?)

上条「どうせ、お決まりの超展開ですよ…」ハァ

石ころを蹴りながら、上条が肩を落とす

冗談で、とはいってもなんとなく自分のせいの気がするのだ

上条「…あーあ、新学期早々台風なんて嫌になるよなぁ…」

コン、と上条が高く石を蹴り上げる


それは


麦野「あいて!!!!」


なんでか歩いていた麦野の背中に当たった

317 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/04/30(月) 22:52:02.66 ID:/qCYV4mr0

垣根「あ、あわわわわわわわわ!!」

上条「む、麦野さんだよなあれ!?」

美琴「どどどどどどうするのよ当麻!?あの人怒ったらめちゃくちゃ怖いのよ!?」

心理「はぁ、やれやれだわ」



麦野「…あぁ?垣根達…」ゴゴゴ

垣根「や、やぁ麦野…今日もいい天気だね」

麦野「台風だよ見ての通りのなぁ!!!」

垣根(怒ってる怒ってるぅ!!)

麦野「それよりさぁ…なーんでか知らないんだけど、私の背中に石が当たってきたのよねぇ…この強風で煽られて飛んできたのかしら、偶然、私の背中に、しかも信じられないほどの速度で、えぇ?」

垣根「そ、それは…お、お前の美しい背中に石も飛び込みたくなったんじゃないのか、なーんてな!!」

麦野「あ?」

垣根「すいません嘘ですから許して」

上条「あ、あのさ…その石は…」

垣根「こいつだこいつ!上条が蹴ったんだよ、お前に目がけて、わざと!!」

上条「は、はぁ!?」

麦野「…」

麦野が上条と垣根を交互に見つめる

麦野「…」



麦野「垣根、そんな嘘で誤魔化そうなんて甘いわね」ゴゴゴ

垣根「えぇぇぇぇぇ!?」

心理(やれやれだわ)


318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 23:30:41.45 ID:GjcUVPoho
おつにゃんだよ!
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/01(火) 07:33:55.37 ID:KXhveEswo
普段の行いのせいだなwwwwwwww
320 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:37:49.95 ID:liW0DrTI0
上条「そ、その・・・麦野さん?」

麦野「・・・話しかけないで、私は今垣根に対してめちゃくちゃ腹が立ってるのよ!」

台風のせいか、麦野がいつも以上に凄まじいオーラを放っている感じがする

美琴(な、なんか知らないけどこれはかなりまずいわ・・・)

心理(垣根、ただのとばっちりよね)

麦野「・・・いいじゃない、こんなただでさえテンションが下がる天気の日に・・・私に向かって石を蹴るなんて」

垣根「・・・」

麦野「ブチコロシかくていね!」

美琴「ちょ、麦野さん!?」

麦野が右手を翳すと、そこから凄まじい威力の粒子砲が放たれた

上条(うわぁ!麦野さんマジだよ!)

心理「ちょっと、こんな街中で・・・って台風のせいで私達以外誰もいないわね」

美琴「大通りだから周りの建物にも被害はない・・・ってそこじゃないわよ、なんで戦ってるのよ!?」

麦野「ふん、手加減はしたから直撃しても体半分が消し飛ぶくらいで済むわよ」

上条「全く手加減してねぇ!」

強風によって粉塵が掻き消される

そこに立っていたのは


垣根「・・・痛ってぇな」

未元物質、学園都市の第二位、垣根帝督

垣根「そしてムカついた・・・さすが超能力者、この俺がここまでムカつくなんて珍しいんだぜ」



321 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:38:31.06 ID:liW0DrTI0
麦野「ちっ・・・無傷だなんて思わなかったわ」

垣根の体を繭のように覆っていたのは6枚の翼だった

自動的にそれは広がり、まるで天使のようにきらびやかな輝きを放つ

垣根「石ころが背中に当たったくらいでマジギレするなんててめぇもまだまだだな」

麦野「・・・あぁ?」

垣根「俺なんかてめぇの原子崩しを喰らってもまだ寛容でいてやってるんだぜ・・・まぁ、石ころも原子崩しも対して変わらないか」

麦野「喧嘩売ってるなら面白い、相手してやるわよ」

上条(もう石ころ蹴ったのは俺だって言おうかな)

美琴(そしたら殺されるわよ)

心理(・・・超能力者同士の戦闘なんて久しぶりだし、ちょっと面白そうね)

上条(心理さんは既に観戦体制だ!)


麦野「くたばれよ!」

麦野の原子崩しが、空気を切り裂き垣根の元へと進む

大気が震えているのが分かる、強風など比にもならないほどの衝撃が辺りを包む

上条(う、うわわわわ!麦野さん絶対マジだ!)

美琴(・・・相変わらず、威力は反則的な強さね)

心理(単純な威力だけなら美琴の超電磁砲にも勝るかもしれないわね・・・)




322 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:42:32.09 ID:liW0DrTI0

麦野「・・・ふん、これでもまだ全力の半分くらいなのよ、まさかくたばってないわよね」

頭に青筋を浮かべ、麦野が粉塵の中へと進む

先程まで垣根がいた場所

だがそこには誰もいない

麦野「!」


垣根「知ってるだろ、この世は様々な素粒子で構成されている」

麦野「上!?」

ビルの壁に背中を預けるようにして垣根は悠々と笑っていた

地上から15m近くの場所だ、一般人が見たら何の冗談なのかと思うことだろう

一面鏡張りのビルの鏡には、垣根の後ろ姿が写っている

肩が揺れているのは笑っているからなのだろうか

垣根「てめぇの原子崩しは電子を曖昧な状態に固定して打ち出す物だ、なら電子に何かの異物を加えてやればいい」

垣根「曖昧な状態で固定された電子は、触れることの出来る状態で留まる」

垣根「・・・恐ろしいことだよな、電子ってのはつまり光の速度で進む物質だ、光の速度で進む壁を打ち付けられれば人間は簡単に粉々に砕け散る」

垣根「…てめぇは、そんな曖昧な状態の電子を作り出し、そして自由に操れるわけだ」

はははは、と高らかな笑い声を上げ、垣根が麦野を見下す


垣根「だが、そいつは既存の物理法則に従ってなきゃ意味がねぇ」



323 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:44:10.92 ID:liW0DrTI0
垣根「てめぇが知ってるのはこの世に存在する電子だ、異物なんて物をてめぇは演算内に入れていないし、入れることも出来ない」

垣根「野球を知らない人間にバットとボールを見せても何にもならないのと同じだ、未元物質なんて物を知らないお前にはどうすることも出来ない」


心理(やっぱり垣根は流石ね)

上条(石ころが原因の喧嘩だなんて思えない)

美琴(というか当麻が犯人よね)


麦野「ふん・・・だったらアンタが全てに対応出来ないようにすればいいのよ!」

ポケットから、拡散支援半導体を取り出す麦野

麦野「生憎未元物質を空気中に撒くことは不可能よ、なにせこの強風なんだからね!」

半導体を通過した原子崩しが、幾つもの光線となって垣根の体を狙う

垣根「何も分かってないな」

麦野「!?」

しかし、その光線は垣根の翼に触れた瞬間、何事もなかったかのように消え去った

垣根「空気中にばら撒けなかったらなんだ、結局翼で防げば同じことだ」

麦野(いや違う・・・あいつ、今防いだだけじゃない!)

垣根「・・・原子崩しか、電子を曖昧な状態にすることによって打ち出される粒子砲」

垣根「・・・面白いことだな」

ニヤリ、と垣根が笑う

垣根「お前の演算パターンを読むくらい、俺には容易いんだよ」

麦野「まさか・・・!」




324 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:46:05.12 ID:liW0DrTI0
上条(な、なになに!?なんかすごいカッコイイ展開みたいなんだけど!)

美琴(・・・ま、まさか垣根!)

心理(・・・なるほど、ね)

上条(だからなに!?)


垣根「俺の未元物質は新たな素粒子だ、そして俺はそいつを自由に操れる・・・作り出すことも出来るし、そいつを様々な形に変えることも出来る」

実証するように、垣根が翼の形を自由自在に変える

垣根「なら、この未元物質という素粒子を『曖昧な状態』で留めることも出来そうだ」

麦野「馬鹿言わないで・・・曖昧な波の状態にするなんて、普通は・・・」

垣根「そうだな、実際この世の中に波と固体の間の曖昧な状態、なんてものは存在しない…それは電子だって同じだ、てめぇは無理矢理原子を曖昧な状態にしている」

垣根「無理だな、常識で考えりゃ」



垣根「だが俺の未元物質にその常識は通用しねぇ」

垣根「チェックメイトだ、麦野」

翼が異様な光を放つ

いや、それは光ではなく一筋の光線だ

麦野の立っている遥か後方にだが、信じられない威力の「未元物質」が放たれる

光よりも早く進んだ未元物質は、アスファルトを深く抉ってからその動きを止めた

垣根「分かるか、麦野・・・チェックじゃない、チェックメイトなんだよ」

垣根「動く手はない、てめぇの勝ちは無くなったんだよ」

余裕を見せながら、垣根がそっと地面に降り立つ

325 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:46:34.55 ID:liW0DrTI0
麦野「・・・てめぇ・・・!」

ギリギリと歯ぎしりをしながら、麦野が垣根を睨みつける

垣根「そして最後に教えてやるよ、麦野」

ふん、と笑ってから垣根が上条を指差す



垣根「マジで、石を蹴ったのは上条だ」

麦野「・・・」

上条(あ、なんかヤバいかも)



上条「すいませんすいません!わざとじゃなかったんです!」

麦野「はぁ・・・もういいわよ、それより私は家に帰るから」

上条「そういえば、本当なら青ピとデートだったんだっけ」

麦野「そうなのよ、突然台風が来たから出来なくなったけど」

心理「それは残念だったわね」

美琴「でも、また次があるじゃない」

麦野「ま、まぁ!私と青髪君は結ばれたようなもんだしぃ!」

美琴(あ、舞い上がってる)

心理「・・・それじゃ、気をつけてね」

麦野「アンタ達もね」

手を振ってから麦野が去っていく

強風にコートを煽られる姿は、どこかの世紀末みたいだった


326 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 10:50:56.36 ID:liW0DrTI0
上条「・・・死ぬかと思った」

垣根「ってかこんなことしてる間に雨強まってないか」

美琴「・・・ここまで濡れたらもう関係ない気もするわね」

心理「あら、だったら美琴はびしょ濡れになるまで外にいる?」

美琴「嫌よ・・・っていうか、アンタがびしょ濡れって言うと違う意味に聞こえるんだけど」

心理「・・・ショチトルと一緒にはしないで」

不機嫌そうに言ってから心理定規が辺りを見回す

心理「で、どっちが私達の家に向かう道かしら」

垣根「は?」

垣根と麦野の戦闘のせいもあるが、辺りはかなりゴミやら瓦礫が散らかっている

大通りなのだから問題ない、と思う人もいるだろうが大通りは目印が見つけにくいため、結局あまり関係はない

上条「えーっと…こ、こっちだよな」

美琴「え、で、でも…ここってどこの学区だっけ?」

垣根「そういや適当に歩いてきてたな」

心理「…まぁ、適当に歩いてても普段は簡単に帰れるのよね」

上条「え、えっと…」

美琴「こ、こんな日だと帰りにくくなるわよね…」

垣根「…そうだな」

327 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 13:04:16.00 ID:liW0DrTI0
上条「…えっと、このファミレスはたしか…」

心理「…ここ、多分7学区の端っこよね」

垣根「お、さすが心理定規」

心理「…でも、ここからどうやれば私の家に行けるのかしら」

美琴「…な、なんかさ…台風の日って、変に道が分からなくなるわよね…」

カランカラン、と空き缶が道を転がっていく

普段なら清掃ロボットがそれを吸い上げるのだろうが、今はあいにく台風のためそれも叶わない

上条「…な、なんかさ…ゴーストタウンみたいだな」

美琴「ちょ、ちょっと!!変なこと言わないでよ…」

垣根「いーや、これはなんか出るね」

心理(出るわけないでしょ)

美琴「で、出るって何が…?」

垣根「…きっとこういう日には、幽霊が…」



テクパトル「…助けてくれ…」



美琴「にゃぁぁぁぁ!!!!出たぁぁぁぁぁ!!!!!!」

上条「…ってテクパトル!?どうしたんだよこんなところで!?」

テクパトル「仕事してたら突然台風になってさ…家に帰れって言われたのはいいんだけど道が全く分からないんだ…」

心理「あら、あなたも?」

テクパトル「…」



テクパトル「お前らもか…」ハァ

垣根「まぁな」ドヤァ



328 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 13:23:53.20 ID:liW0DrTI0

上条(…あれ、でもテクパトルの仕事場って…)

美琴「ねぇ、アンタの仕事場って…多分ここから正反対よね?」

テクパトル「あーもう、適当に歩いてきたから分からないんだよ…」

イライラした感じで、ぶっきらぼうにテクパトルが応える

心理「…そうなると、多分ここは…私の家よりも、上条君達の寮が近いわね」

垣根「…じゃあ、いったんそこで雨宿りするか」

上条「あ、あぁ」

テクパトル「悪いな…俺の家は正反対ってことになる」

上条「じゃ、行くか…」

美琴「みんな気を付けて、何が飛んでくるか分からないわよ…」

垣根「オムカエデゴンスとかか」

美琴「それはないわよ」



上条「…しかし、本当にすごい風だな…」

垣根「全くだ」

テクパトル「…こうも雨まで強いと、本当に気象異常なんじゃないかって思うよ」

美琴「不吉なこと言わないでよ…」

上条「宇宙人とか出てきそうだよな、昔の映画だと」



ゲソーー!!!


上条(なんか聞こえたけどいいや)


329 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 14:31:20.62 ID:liW0DrTI0

上条(…あれ、俺の寮ってこっちだよな)

垣根(ん、上条の寮ってあっちだよな)

美琴(ここを右だったわね)

心理(…たしか、ここを左よね)

テクパトル(腹減った…)

上条「なぁ、ここってどっちに曲がるんだっけ?ちょっと街の雰囲気が変わりすぎてて分からないんだけどさ」

心理「ここを左よ」

美琴「え、違うわよ、右」

垣根「はぁ?真っ直ぐじゃないっけ」

上条「も、もう通り過ぎた気がするんだけどさ…」

テクパトル「おいおい…もしかして本格的に迷子ってやつか?」

上条(…)

垣根「どうするんだよ…」

心理「はぁ…仕方ないわ…垣根、ちょっと傘貸して」

垣根「はぁ?なんで」

心理「いいから…この傘が転がったほうへ進みましょう」

美琴「そ、そんな原始的な方法で…」

心理「…この際、動かなければ状況は変わらないのよ」

テクパトル「…いいだろう、やろう」

330 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 15:47:26.53 ID:liW0DrTI0
一本の黄色い傘が地面に突き立てられる

小学生がよく使っているあの傘だ

上条(…これが差した方向に行くのか…)

美琴(…お願い、一発で正解の方角を向いてよね…)

垣根「じゃあ…やるか」

ぱっと、垣根が手を放す

傘の先端は丸まっている、1秒もしないうちに傘は地面へと倒れ…



なかった


心理「あら?」

じーっと心理定規が見つめているのは、傘を突き立てた地面だ

そこにはなぜか、直径2センチほどの穴が開いている

テクパトル「…舗装の粗かなんかかな」

美琴「そこに偶然傘を刺しちゃったってわけね」

上条「それで、この傘は倒れてないんですが」

垣根「つまり、ここでずーっと突っ立ってろってことじゃないのか?」

心理「あぁ、そういうことなのね」

テクパトル「なんだ、ここが俺達の家だったのか」

上条「ははは、地球はおっきな一つの家ってな」

美琴「もう、当麻ったら上手いこと言わないの!」


一同「あはははははは!!!!」



331 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/01(火) 16:02:39.73 ID:liW0DrTI0

30分後

上条(…寒い)

美琴(…風が強いわね)

心理「…ねぇ、さすがにこのボケは引っ張りすぎじゃないかしら」

垣根「あぁ、俺もそう思ってきた」

テクパトル「あ、美月からメールだ」

上条「なぁ、傘抜いてさっさともう一回やろうぜ」

垣根「もう傘じゃなくてもいいだろ」

美琴「あれ、そういえばスフィンクスに餌ってあげてきたっけ」

心理「…私もクラウド君に餌あげてこなかったわね」

上条「なぁ、どうすんだよ?」

テクパトル「あれ、そういや今日って水曜日だっけか」

上条「あ、スーパーのセールの日だ」

垣根「さすがに今日は開いてねぇだろ」

美琴「もういいわ…ここは左に行きましょう」

テクパトル「…分かった、そうしよう」

上条「もう13時だな」

心理「早く帰ってお風呂に入りたいわ…」

垣根「あー、もうだりぃ」

テクパトル「…風が強いからな、歩くのも一苦労だ…」


332 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 10:45:38.01 ID:2ohlIxrv0
垣根「・・・なんか見覚えのある地域だな」

上条「地域って言い方はおかしくないか」

美琴「あれ、ここってテクパトルの家の近くよね?」

テクパトル「あぁ・・・やっと帰って来れたんだ!」

心理「じゃあついでに私達も雨宿りさせてもらえない?」

テクパトル「あぁ」

見覚えのある道についたからには、後はもう簡単だった

普通に歩いていくてテクパトルの家にたどり着いた

テクパトル「しっかり雨戸も閉めてあるな・・・偉い」

上条「妹達が協力したんじゃないのか?」

美琴「あの子達と会うのは少し久しぶりな気がするわね」

心理「じゃ、早く開けてよ」

テクパトル「はいはい」

ポケットから鍵を取り出し、玄関のドアを開ける




テクパトル「ただいま」

19090「お帰りなさいテっくん、今日は・・・って皆さんもいたんですか」

上条「よ、ちょっと雨宿りさせてほしくてさ」


333 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 10:46:19.92 ID:2ohlIxrv0
19090「どうぞどうぞ・・・いきなり台風が来てビックリしましたね」

垣根「あぁ、ビックリしすぎて目が飛び出すかと思っ」

19090「つまらないギャグはおいといて・・・皆さんはまず風呂に入らないといけませんね」

上条「だよなぁ・・・着替えとかあるのか?」

19090「男性のはテっくんのとアレイちゃんのが、お姉様と心理定規のはミサカ達のがありますよ」

垣根「助かるな」

テクパトル「んじゃ・・・まずは二人から入ってきてくれよ」

心理「あら、レディーファーストってこと?」

美琴(・・・心理定規とお風呂・・・かぁ)



心理「ほら美琴・・・こんなとこまで濡れてるじゃない」

美琴「あ、ダ、ダメよ心理定規!私は当麻がいるんだしアンタだって垣根が・・・」

心理「あら、女の子同士なら浮気にはならないでしょ?」

美琴「そ、そういう問題じゃないわよ!」




美琴「わ、私は当麻と入りたいから!まずは垣根と心理定規で入ってきてよ!」

垣根「うわ、人の家の風呂でヤるつもりか」

上条「ち、違う違う!」


334 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 10:47:03.50 ID:2ohlIxrv0
19090「・・・美月としてはどちらでもいいのですが・・・」

心理「いいわよ、美琴は私と二人になるのは嫌みたいだし・・・」

美琴「い、嫌じゃないわよ?ただちょっと・・・心理定規と二人だと襲われそうだから」

心理「私はレズじゃないの、とりあえず垣根・・・行くわよ」

垣根「あーい」


テクパトル「・・・寒い」

上条「全くだ」

美琴「はぁ・・・でもこんなにびしょ濡れじゃね」

気を遣ってリビングには向かわなかった

タオルである程度の水気を拭いた後、とりあえず玄関で待機ということになったのだ

19090「ドライヤーで乾かしますか?」

上条「あぁ・・・ってドライヤーたくさんあるのか」

テクパトル「家は女の子がたくさんだからな」

19090号に髪を乾かされながら、テクパトルが笑う

上条「・・・お前って髪短いのに乾かすのか」

テクパトル「なんだよ」

美琴「当麻、乾かして」

上条「はいはい・・・美琴は甘えん坊だな」

美琴「えへへ//」




335 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 10:47:48.06 ID:2ohlIxrv0


20000「あれ、お姉様達じゃん」

美琴「ん、えっと・・・」

テクパトル「20000号だよ」

20000「やっほ、まさかカップルでお出ましとはね」

上条「風呂には垣根達もいるんだ」

20000「へぇ、台風に負けたの?」

テクパトル「いきなりだったからな・・・家はみんな大丈夫か?」

20000「うん、アレイちゃんはテンション上がりっぱなしだけどね」

美琴「な、なんか小学生みたいね」

20000「テっくんもさすがに仕事早く終わったのか」

テクパトル「あぁ・・・全く嫌になるよ」

上条「はぁ・・・あ、上がったな」

垣根「テクパトル、お前こんなブカブカな服着てるのか」

ダボダボのタンクトップとズボンを身につけた垣根が歩いてくる

テクパトル「俺にはちょうどいいんだよ・・・制服と下着が乾くまでの服なんだし我慢してくれよ」

美琴「あれ、心理定規は?」

垣根「今来る」


336 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 10:48:26.94 ID:2ohlIxrv0

心理「はぁ・・・胸元がきついわね」

上条「」

テクパトル「」

妹達の私服を借りたのだろう、彼女は胸元がピチピチなTシャツを着ていた

上条「・・・お、お帰りなさい・・・」

美琴「ちょ、ちょっと当麻!なに鼻の下伸ばしてんのよ!」

上条「の、伸ばしてないから!」

19090「テっくん!」

テクパトル「違う違う!きつかったらアレイスターの服もあるからって!」

心理「アレイスターの服は遠慮したいわね」

垣根「いやぁ、胸がピチピチってのは目の保養になるな」

心理「はいはい・・・ほら、上条君と美琴は風呂風呂」

上条「あ、あぁ」

テクパトル「上条、あんまりイカ臭くすんなよ」

上条「だからしねぇよ!」

美琴「い、行こう当麻!」

上条「あ、あぁ」

美琴に引っ張られるようにして上条も風呂へ向かう



337 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 10:50:45.71 ID:2ohlIxrv0
19090「・・・あとはテっくんだけですね」

20000「なんなら19090号も一緒に入ってあげなよ」

19090「ふぇっ!?」

垣根「そうだな、夫婦なんだし」

心理「そうね、なんら問題はないわよ」

19090「で、ですが・・・」

テクパトル「まぁ・・・背中を流してもらえるならありがたいかな」

垣根「ほら、夫婦水入らずだろ!」

心理「よかったわね、19090号」

19090「は、はい・・・」

テクパトル「果たしてよかったのか…」

20000「よかったじゃん、避妊しなくていいんだし」

テクパトル「お前は何を言ってるのかなぁ!?」

20000「お風呂場にゴム持ってくのってだるくない?」

垣根「あー、分かる分かる」

テクパトル「誰かツッコんでくれよぉ!!」

心理「あら、突っ込むのはあなたじゃないの?」

テクパトル「…」



テクパトル「…お前までそういうヤツだったのか」

心理「…束の間のユーモアよ」

338 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 13:24:54.53 ID:2ohlIxrv0

上条「…今はテクパトル達が風呂か」

美琴「あの二人って、本当に仲良しよね」

垣根「夫婦なんだから当たり前だろ…っていうか御坂はいいよな、妹達の服がぴったりだし」

美琴「…なんだかちょっと胸はきついけどね」

御坂妹「お姉様ったらミサカ達が知らない間に…」

10398「豊胸でもしたんですか?」

美琴「するわけないでしょ…」

心理「…あら、ニュースで台風情報やってるわね」

テレビのアナウンサーが、真面目な顔で台風情報を読み上げている


「なお、今回の台風1346号は気圧が600hPa、最大瞬間風速は300mということです」

「非情に強い台風ですので、皆様もお体に気を付けてください」



垣根「へぇ、中々強い台風みたいだな」

13577「たしかに…」

11116「これだと少し不安になりますね…とミサカは腕を組んで考えます」

17600「…お姉様達も、今日はこのまままっすぐ帰るのはきつくないか?」

上条「そうだな…なんか風もヤバイし」

心理「最悪、今日は泊めてもらうことになるかもしれないわね」

14510「なら一緒に人生ゲームしましょう!!」

10039「お姉様、やりましょう!!」

美琴「う、うん」

心理(甘えてるわね…)


339 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 13:39:26.24 ID:2ohlIxrv0

テクパトル「はぁ…いいお湯だった」

19090「あれ、みなさん人生ゲームですか?」

10033「あ、おかえりなさい」

19999「暇つぶしにはちょうどいいのさ」

御坂妹「あ、お姉様は結婚のマスに泊まりましたね」

垣根「男と結婚する?それとも女と?」

美琴「男に決まってんでしょ」

心理「…明日も台風は留まるみたいね」

17600「これだと、みんなの学校も休みなんじゃないか」

テクパトル「あれ、二人はやってないのか」

心理「えぇ、大人数すぎても問題でしょ?」

上条「やればいいのに」

17600「遠慮しておくよ…台風情報、誰も見てないじゃないか」

アレイ「全くだ」

テクパトル「…なぁアレイスター、なんでお前もやってるんだよ」

アレイ「…あ、宝物カードゲット」

美琴「えーっと…なんだ、梅干しじゃない」

20000「でもそれってランクアップさせるとかなり値打ち上がるよ」

美琴「そ、そうなの!?」

アレイ「ふふん、私をナメると痛い目に」

垣根「あ、一人から宝物カード奪えるだって、アレイスターよこせよ」

アレイ「」

340 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 13:50:49.94 ID:2ohlIxrv0

アレイ「…垣根の意地悪」

美琴「あ、私は宝物カードの高級車だって」

垣根「うっわいいなー…これノーマルでも高いじゃんか」

御坂妹「お姉様ったら強運ですね…」

12345「…あ、ハプニングカードですね」

10033「はい、一枚引いてください」

12345「…はぁ、5万円支払うですね…」

テクパトル「…今のところ一位は誰なんだ?」

美琴「私よ」

テクパトル「へぇ…二位は?」

垣根「俺だ、やっぱ俺って第二位ってのが似合う男だよなぁ」フフン

心理「永遠の二番手って悲しいわよね」ポツリ

垣根「」



垣根(…)グスン

17600「…へぇ、この台風で21学区は一部が停電か」

上条「怖いよな、停電ってさ」

御坂妹「そうですね…」

14510「いきなり部屋が暗くなった日には…」


ブツン



一同(停電だぁぁぁぁ…)



341 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 14:05:24.07 ID:2ohlIxrv0

美琴「ま、真っ暗で何も見えないわ…」

心理「きゃぁっ!」

テクパトル「ど、どうした!?」

心理「ちょっと垣根、こんな時に胸とか触らないでよ!!」

垣根「ん、俺今こっちで懐中電灯探してるんだけど…」

心理「え、で、でも…」

17600「ミサカも一緒に探してるぞ、そいつは本当だ」

テクパトル「…上条」

上条「は、はい」

テクパトル「お前、今何をしている」

上条「…」



上条「み、美琴が近くにいるのは分かってて…それで、手を握ろうとしたら…」

美琴「…したら?」

上条「なにやら、手を伸ばした先にプニッとした柔らかいものが…」

垣根「てめぇぇぇぇ!!!!」

上条「待て待て!!それが心理さんの胸だという保証はない!!!」

御坂妹「あの、先ほどからミサカも誰かにほっぺたを突かれているのですが」

上条「…?ほっぺた、ってこれか?」プニプニ

御坂妹「あ、それですそれです」

垣根「…じゃあ誰が心理定規の胸を」



アレイ「うーむ、マンダム」

垣根「てめぇかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」


342 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 14:13:29.56 ID:2ohlIxrv0

心理「…」ゴゴゴ

アレイ「」

垣根「…それで、懐中電灯がなんでないんだ」

テクパトル「…たしか、戸棚にあるはずなんだが」

10039「あ、それならこの前電池が切れてましたから捨てました」

テクパトル「懐中電灯っていうのは電池を替えれば使えるもんなんだよ!!」

10039「ぴぃっ!?」

テクパトル「あ、いや…そうだ、携帯電話の灯りとか使えないか!?」

上条「んで、携帯電話を置いたテーブルはどこなんでせう」

テクパトル「…」

美琴「…わ、私達の能力をなんだと思ってるの!?」

20000「そ、そうそう!!発電なんて簡単…」

テクパトル「言っておくが、家電を壊したりはするなよ」

17600「ミサカ達の発電量じゃ一瞬で家電は壊れるな」

垣根「…じゃあさ、どうするんだよ」

19999「あはは、もしかしてこのまま真っ暗?」

14510「そ、それは怖いです…」

19090「…で、ですが他にはどうしようも…」


ダンダンダンダン!!

一同「」


テクパトル「い、今…なんか玄関のドアが叩かれた気がしたんだけど」

美琴「き、きききき気のせいよね!?」

上条「お、俺も聞こえた…」

美琴「ひゃいっ!?」


343 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 14:34:01.32 ID:2ohlIxrv0
心理「…玄関までの道のり、美琴なら無事に行けるわよね」

美琴「な、なんで!?」

心理「…電撃使いって、レーダー的なもので暗闇でも歩けるって聞くけど」

御坂妹「そ、そしてそれはレベルが高いほど正確ですよね!?」

美琴「か、関係ないわよね!?」

20000「お、お姉様確かめてきてよ!!」

10033「ミ、ミサカ達はお化けとかダメなんですよ!!」

美琴「お、お化けとか言わないでよ!!!」

垣根「いや、これは…お化けの気配だ」

美琴「ひぃっ!?」

上条「そ、そんなわけないだろ!」

アレイ「ね、ねねねねねねぇねぇ!!本当にお化けっているの!?」

心理「えぇいるわよ、下手すれば命を持って行かれるの」

美琴・妹達・アレイ「えぇぇぇぇぇぇ!?」

テクパトル(な、なに間に受けてるんだ…)

19090「テっくん!!」ウルウル

テクパトル「だ、大丈夫…俺が守るからさ」

19090「テっくん…」ウットリ

テクパトル(あぁこれはやばいぞやばい)

上条「…美琴、行ってくれないか?」

美琴「わ、分かったわよ…」

10398「遺言は…」

美琴「ないからね!!!」


344 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 14:34:01.23 ID:2ohlIxrv0
心理「…玄関までの道のり、美琴なら無事に行けるわよね」

美琴「な、なんで!?」

心理「…電撃使いって、レーダー的なもので暗闇でも歩けるって聞くけど」

御坂妹「そ、そしてそれはレベルが高いほど正確ですよね!?」

美琴「か、関係ないわよね!?」

20000「お、お姉様確かめてきてよ!!」

10033「ミ、ミサカ達はお化けとかダメなんですよ!!」

美琴「お、お化けとか言わないでよ!!!」

垣根「いや、これは…お化けの気配だ」

美琴「ひぃっ!?」

上条「そ、そんなわけないだろ!」

アレイ「ね、ねねねねねねぇねぇ!!本当にお化けっているの!?」

心理「えぇいるわよ、下手すれば命を持って行かれるの」

美琴・妹達・アレイ「えぇぇぇぇぇぇ!?」

テクパトル(な、なに間に受けてるんだ…)

19090「テっくん!!」ウルウル

テクパトル「だ、大丈夫…俺が守るからさ」

19090「テっくん…」ウットリ

テクパトル(あぁこれはやばいぞやばい)

上条「…美琴、行ってくれないか?」

美琴「わ、分かったわよ…」

10398「遺言は…」

美琴「ないからね!!!」


345 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 15:08:40.00 ID:2ohlIxrv0

美琴「うぅ…」

風の音が、何かの鳴き声に聞こえる

ガラス超しで目を通すと、揺れる木々が悪魔の掌に見える

ポタポタと窓の外から垂れている雨粒が、何かの涙のようにさえ思えてくる

美琴(うぅ…あ、雨漏りとかしてないわよね?)

何か冷たいものが頬に当たっているような錯覚さえ覚える

美琴(…な、なんか…怖い…)

レーダーには変なものなど写っていない

美琴(そ、そういえばお化けって…写るのかな)

写らないように、と願いつつ玄関のドアの前に立つ

ドンドンという叩く音は大きくなる一方だ

美琴(お願い、せめて可愛いお化けでいてよね!!)

トロルみたいなのいだったら泣く

せめて可愛い猫のお化けとかだったら嬉しいな、と美琴は考え

そして戸を開けた



イン「…お腹減ったんだよ…」

美琴「…」


ガチャン


美琴(で、出たぁぁぁぁぁ!!!)

美琴(イカのお化け!?そ、それとも教会で無惨に殺されたシスターの霊!?)

美琴(お、お腹減ったって…まさか私達を食べに来たの!?)



イン(みことがいじめるんだよ)


346 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/02(水) 16:00:18.24 ID:2ohlIxrv0

美琴「…も、もう一度見てみよう…」ガチャリ

イン「みこと…」

美琴(…あれ、誰だっけこの人…)


「御坂さんじゃないですか」

「風紀委員ですの!!」

「おーい、ビリビリ」

「この俺、一方通行」

「ねぇ、たんぱつは…」



美琴(あ、最後の人よね)


美琴「ってインデックス!?」

イン「…今の間はなんだったのかな」

美琴(お、思い出すのに時間が掛かったなんて言えない…)

美琴「そ、それでなんでアンタがここに…びしょ濡れじゃない」

イン「台風が急に来ちゃって、ちょうど出かけてて…そしたらなんだか知ってる人の匂いがしたから…」

美琴(なにそれこわい)

イン「でも、とうまもいるんだよね?」

美琴「よ、よく分かったわね」

イン「私の嗅覚は世界一ィィィィィ!!!」

美琴(どっかに頭ぶつけたかしら)



347 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/03(木) 17:23:15.66 ID:MHzBPsnt0
美琴「と、とにかく入って入って・・・」

イン「はっくしょい!」

ずぶ濡れになったインデックスは、ブルブルと震えている

美琴「ねぇ、ちょっとテクパトル!」


テクパトル「なんだよ大声出して・・・ってあれ」

イン「あ、えーっと・・・」

テクパトル「テクパトルだ・・・お前は禁書目録だよな、なんでこんな所に?」

イン「実は、かくかくしかじかなんだよ!」

テクパトル「かくかくしかじかじゃ分からない」

イン「・・・」


イン「かくかくしかじかなんだよ!」

テクパトル「説明しろよ」


テクパトル「・・・はぁ、もう一人お客様が増えたな」

19090「・・・ミサカ達の服で合いますかね?」

垣根「さぁな・・・ただ身長が大分違うだろ」

未だに停電している部屋の中で、一同は話していた

ちなみにインデックスはただいま美琴に付き添われて風呂に入っている



348 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/03(木) 17:24:06.78 ID:MHzBPsnt0
垣根「水道は活きてるんだな」

心理「まぁ、最悪それは残っててよかったわね」

20000「水もトイレも風呂もダメ、じゃきついもんね」

10039「・・・ですが、やはり電気がついていないのは不安です」

テクパトル「お前達は誰がどこにいるかくらいレーダーで分かるだろ」

御坂妹「テっくんは何も分かっていませんね」

14510「女の子というのは暗闇が怖いんですよ」

13577「お化け屋敷だって、暗いから怖いという人もいるはずです」

11116「だから、好きな男性に守ってもらいたいんですよ」

テクパトル「なんだ、お前達って好きなヤツいるのか」

12345「うっわぁ、なんていう冷たい一言」

10033「そこは、みんなは俺が守るから、くらいは言えないんですか」

17600「そう言われたら、少しテっくんに惚れちまうかもな」

テクパトル「お前達言いたい放題だな」

19090「ま、まぁまぁ・・・」

心理「・・・にしても、いつになったら電気は回復するのかしら」

アレイ「恐らくだが、1時間もすれば回復するだろう」

上条「へぇ・・・で、今停電してどれくらい経ったんだ?」

垣根「20分くらいか?」

テクパトル「いや、まだ5分くらいだろ」


349 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/03(木) 17:24:38.96 ID:MHzBPsnt0
心理「あら、もっと経ってるわよ」

19999「・・・時計も見えないから困るのさ」

10398「・・・テっくん、暗くて怖くないんですか?」

テクパトル「全く」

20000「強がっちゃってー!」

テクパトル「そういや、真っ暗な時ってお化けが部屋に混じってたりするんだよな」

ミサカ一同「!?」

上条「いや、そんなわけ・・・」

11116「は、ははは!そうですよ、そんなわけ・・・」


イン「はぁ、お腹減ったんだよ」


ミサカ一同「出たぁぁぁぁ!」

美琴「ちょ、ちょっと・・・いきなりなんなのよ」

上条「あれ、美琴の声・・・ってことは今のはインデックスだよな」

アレイ「ほう、どこにいるのか知らないが久しぶりだな」

イン「その声はアレイスターなんだよ!見えないけど久しぶり!」

垣根「・・・いい加減ついてくれないかな」

イン「あ、かきねもいるんだ!」

心理「私もいるわよ」

イン「みんないるんだよ!」



350 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/03(木) 17:25:27.44 ID:MHzBPsnt0
テクパトル「みんなってなんだよ」

垣根「・・・あ、電気ついた」

カチッという音と共に部屋が明るくなる

暗闇に慣れていた目には、少し眩しかった

それも次第に慣れ、やっと相手の顔を見ることが出来た

イン「みんな、改めてこんにちはなんだよ!」

上条「なんかインデックスには久しぶりに会う気がするな・・・」

イン「だってとうまったら私のことほったらかしなんだもん」

上条「う・・・」

心理「仕方ないわよ、上条君は美琴とイチャイチャするので忙しいんだから」

上条「心理さん!?」

イン「・・・」

上条「待て待て!無言で牙を向くな!」

美琴「・・・まぁ、それはいいとして」

上条「良くない良くない!」

美琴「インデックス、これからアンタどうするの?」

イン「こもえの所に帰りたかったんだけど・・・」

御坂妹「この台風では帰れませんよ?」


351 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 08:59:37.61 ID:onGdVXUF0
イン「とにかく、今日はこの家に泊めてもらうんだよ!」

テクパトル「別に構いはしないが・・・」

19090「あんまり食事はたくさん出来ませんよ?」

イン「それは残念なんだよ・・・」

テクパトル(なんでこの世の終わりみたいな表情してんだ)

心理「この台風なら買い物にも行けないものね」

上条「っていけねぇ!スフィンクスに餌やるって話を忘れてた!」

美琴「・・・どうするのよ」

上条「・・・い、いってきます」

御坂妹「おや、あなたはこの暴風雨の中、家まで帰ってまたここに戻って来るつもりですか?」

上条「・・・お、俺はもう寮で寝るからいいや」

美琴「じゃ、じゃあ私も戻るわよ!?」

14510「それは許しません!」

10033「お姉様には今晩ミサカ達の相手をしていただくんですから!」

美琴「そ、それは・・・」

垣根「いいじゃねぇか、一晩離れたくらいじゃ死にはしねぇよ」

美琴「帰る途中で当麻が死んだらどうするのよ!?」

上条「えぇ!?」

心理「たしかに、上条君なら死にかねないわ」

上条「えぇ!?」

20000「お義兄様の不幸加減は半端じゃないからね」


352 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:00:04.30 ID:onGdVXUF0
19999「となると、お義兄様が一人で帰ることは不可能で、かつお姉様もここに残ることになりますが」

上条「じゃ、じゃあ誰がスフィンクスに・・・」

心理「はぁ・・・仕方ないわね、鍵貸して」

美琴「ま、まさか心理定規が行くの?」

心理「えぇ、何か問題でもある?」

美琴「大有りよ!」

上条「そうだそうだ!アンタが一番危険っぽいじゃねぇか!」

心理「?」

上条「いやいやこの人全く自覚ねぇ!」

17600「風が吹いただけで倒れそうだもんな」

12345「そ、それに今はかなりヤバい状況なんですよ?看板とか飛んでますし」

心理「?」

上条「アホかアンタ!?」

心理「でも、別に私なら大丈夫だけど?」

上条「どっからその自信は来るんだ!?」

アレイ「・・・下手をすれば死ぬぞ」

上条「そうだって・・・垣根ならともかく、心理さんが死ぬのは悲しいからな?」

垣根「おい禿げ」


353 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:00:35.32 ID:onGdVXUF0

美琴「・・・垣根、アンタが行ってよ」

垣根「やだね、大体俺は今から自分の家に行って飼い猫に・・・」

心理「クラウド君」

垣根「・・・クラウド君に餌を」

心理「ご飯」

垣根「・・・ご飯をあげないといけないんだ」

上条「・・・じゃ、じゃあ・・・」

心理「ほら、どっちみち私も行かないといけないじゃない」

美琴「うぅ・・・」

10039「ここは心理定規を信じるしかないです、お姉様」

11116「ミサカ達のわがままのせいだろ、なんてツッコミは受け付けません」

テクパトル「・・・とりあえず、無理だと判断したら電話をくれ」

心理「あら、無理な状況で電話する余裕なんてないわよ」

肩をすくめてから、心理定規が上条の部屋の鍵を受け取る

心理「多分、あなた達の部屋で寝させてもらうことになるけど・・・いいかしら」

美琴「い、いいけど・・・本当に大丈夫?」

心理「大丈夫、行きましょ」

垣根「あーい」

勇敢な二人は、猫のために我が身を張った

残された者達は、ただ敬礼することしか出来ない

そこに言葉はなかった、だがたしかな友情があったのだ



354 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:01:04.16 ID:onGdVXUF0


アレイ「・・・さて、少し静かになってしまったな」

19090「・・・どうしますか、夜ご飯には少し早いですよね?」

上条「うーん・・・台風情報はその後どうだ?」

17600「大して変化はないな、相変わらずすごい勢力の台風だ」

10398「・・・あ、一部の交通区域が通行止めらしいですね」

イン「あ、人が風に薙ぎ倒されてる!」

13577「衝撃的な映像ですね・・・」

20000「あ、こんな台風なら外に素っ裸で出て変態プレイしても見られなくない?」

テクパトル「勝手にやれ」

20000「でもやっぱり見られたほうがいいよね」

テクパトル(こいつは何を言ってるんだ・・・)

はぁ、とテクパトルがため息をついた時


ピカッ、と外が明るくなった

上条「あ、雷・・・」

美琴「みゃぁ!?」

上条「!?」

ぎゅっ、と美琴は上条に抱き着いた

電撃使いなので本来なら、雷なんて恐怖にはならない

のだが、そこはか弱い女の子だ、凄まじい音と眩しい光を放つ雷なんて怖いに決まっている



355 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:01:42.52 ID:onGdVXUF0
19090「ひ、光りましたよテっくん!」ギュッ

テクパトル「だ、大丈夫・・・」

アレイ「こ、怖いよぉ・・・」ギュッ

テクパトル「お前まで抱き着いてくんな」

17600「・・・随分近い距離だな、こりゃ」

御坂妹「あ、あんまり不安になるようなことを言わないで下さい・・・」

テクパトル「・・・大丈夫か美月?」

19090「テ、テっくんが抱きしめてくれてるから大丈夫です//」

テクパトル「そっか、よかった・・・」

ミサカ一同(爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ)

テクパトル(なんか雷以上にヤバいものを感じるんだが)

美琴「・・・で、でもさ」

イン「?どうかしたの、みこと?」


美琴「垣根と心理定規は大丈夫なのかしら」

一同「あ」



356 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:02:09.73 ID:onGdVXUF0


心理「・・・な、なんなのよいきなり!?」

凄まじい音と眩しい光、つまりは雷だった

彼女が外に出てすぐ、待っていたかのように雷が轟いた

しかも一回だけではなく、何度も何度も鳴っている

心理(そ、そんなにハッスルされても困るわよ・・・)

直撃する可能性なんて限りなく低い、とは分かっていても本能が恐怖を訴えかけてくる

心理「・・・ったく、早いとこ・・・」

たどり着かないと、と言おうとしたらまた雷が鳴った

心理「・・・」

彼女は別に、雷が大の苦手というわけではない

ただ台風の中、一人で静かな街中を歩き、しかも雷が鳴っているなんて状況では流石に泣き出してしまいそうになる

心理(な、なんなのよもう・・・)

垣根が後ろから着いてきてくれてはいないか、とたまに振り返る

だが彼は現在、絶賛自宅へ帰宅中なのだ

こんな所にいるわけはない

心理(・・・こ、怖くなんかないわよ・・・)

ピカッ、と空が光る

心理「ひゃぃっ!?」

ビクッ、と肩が跳ねた

すぐに辺りを見回し、誰かに見られていないかを確かめる


357 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:02:36.31 ID:onGdVXUF0
誰かがいるわけあるだろうか、こんな天気の日に外を歩くなんて物好きしかいないはずだ

心理(・・・よ、よかった・・・のかしら)

なんだかよく分からなくなってきたが、とにかく目的地に早く着きたかった

心理「か、垣根・・・」

子猫のように背中を丸まらせた心理定規は、とりあえずその名を呼んでいた




一方


垣根「心理定規ぉ・・・」


垣根も、呼んでいた

ピカッと光った空を確認すると、垣根は目を閉じた

ちなみに未元物質を使っているため雨粒は一滴たりとも彼には当たっていない

だが、雷の光は見えるため恐怖は拭えない

未元物質があればそもそも雷なんてなんの脅威にもならない

垣根「いやいや、気の持ちようだよな」

無理矢理自分を説得してから、自分の家へと向かう

そういえば、心理定規は大丈夫なのだろうか

垣根の能力と違い、心理定規の能力はこんな時には役に立たない

誰かとの距離なんていう繊細なものを扱い、しかも誰かが傍にいてくれなければ意味がない能力だ

垣根(究極の淋しがり屋だよな)


358 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:03:05.94 ID:onGdVXUF0
能力とはつまり、自分だけの現実が関係して引き起こされる異常現象だ

人の好意さえ「跳ね返したかった」一方通行は反射を得意としていた

常識に捕われない垣根は「未元物質」を手に入れていた

となると、心理定規は「誰かに傍にいてほしい」なんて考えていたのではないか

垣根(淋しがり屋で強がりか、こりゃ薄い本が出るな)

ムクムクと下半身のハリケーンが巨大化する

垣根「っと、それより早く帰らないとな」

面倒だったため、翼を生やして空を飛んだ

しばらくして気づいたのだが、垣根の能力があれば自宅にも上条の寮にも、すぐ辿り着けたのではないか

垣根(時すでにおすし)

めんどくさいからいいや、最終的に垣根はそう納得した




上条「・・・どんどん風も強くなるな」

ダンダン、と拳をたたき付けるような音が聞こえる

自然の脅威に人間は無力だと改めて思い知らされる

テクパトル「・・・相当強い台風みたいだな」

美琴「これじゃ明日はもちろん、明後日も学校は休みかもね・・・」

上条「俺としては助かるけどな」

御坂妹「あなたはもう少し真面目になったほうがいいですよ」

19090「そうですよ、お姉様を将来は養わないといけないんですから」

上条「わ、分かってるよ」


359 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:03:33.24 ID:onGdVXUF0
イン「とうまはいっつもフラフラしてて信じられないんだよ!」

上条「な、なんだよ!」

イン「ふっふーん!昔からそうだけど本当に落ち着きがないんだよ、私を見習うんだよ!」

上条「お前のどこを見習うんだ?」

イン「全部!」

上条「見習ったらぐうたらになるだろ・・・」

イン「とうまぁぁぁ!」

上条「うわぁ噛み付かないで!」

美琴「・・・」

テクパトル「?義姉さん、どうかしたのか」

美琴(当麻とインデックスって仲良しよね・・・昔は一緒に住んでたんだし)

美琴(・・・ってことは、インデックスは私より当麻のことを昔から知ってた!?)

美琴(ち、違う違う!たしか当麻は私と出会った後にインデックスを拾ったのよね・・・)

美琴(・・・で、でも昔の当麻をよく知ってるのはインデックスで・・・)

テクパトル「・・・聞いてるか義姉さん?」

美琴「あ、な、なに?」


360 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 09:04:10.16 ID:onGdVXUF0
テクパトル「めちゃくちゃ険しい顔してたけどどうかしたか」

美琴「そ、そんなことないわよ!」

17600「あれだろ、インデックスとお義兄様が仲良くしてるのがむかつくんだろ」

美琴「!?」

上条「あれ・・・もしかして美琴さんはヤキモチ妬いてくれたのかな?」

美琴「ち、違うわよ!誰がアンタ達なんかにヤキモチ・・・」

アレイ「素直ではないな、超電磁砲」

美琴「う、うるさい!」

14510「お義兄様、早くお姉様を安心させて下さい」

13577「このままではヤキモチのあまり泣き出してしまいますよ」

美琴「誰が泣き出すのよ!?」

上条「美琴、俺はお前だけが大好きなんだからな」

美琴「!」

テクパトル「・・・だってさ、義姉さん」

19090「よかったですね、お姉様!」

美琴「な、なななななに言ってんのよいきなり!?」

上条「いやいや、ヤキモチ妬かせるのは申し訳ないからさ」

美琴「あう・・・」



ハハハハハハハ!


イン(・・・あれ、なんか私だけ損な役回りなんだよ)


361 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/05(土) 22:47:30.24 ID:onGdVXUF0

垣根「たっだいまー…猫、いるかー」

リビングに入った垣根が、辺りを見回す

ちなみに基本的にクラウド君は放し飼いである

トイレのしつけは心理定規が非常に厳しく行ったため、問題はない

「にゃー」

垣根「お、いたいた…飯いるか」

「にゃー!」

垣根(こいつ、マジで人の言葉が分かるのかねぇ)

そんなことを考えつつ、キャットフードを取り出す

ちなみにスフィンクスが貰っているのとは値段が一桁違う、超高級品でもある

スフィンクスが食べたら、ハトが豆鉄砲を喰らったような顔をするだろう、猫なのに

垣根「ほーれ、食え食え」

「にゃー!」ガツガツ

垣根(…お上品に食べろよな…)

「にゃー?」

垣根「はぁ…そういや動物って、台風とかの時は機嫌悪くなるんじゃないのか?」

「にゃー」

垣根「…そういうのって、迷信なのかなぁ…」

「にゃー」

垣根(ダメだ、こいつと話してると土御門が頭に浮かぶ)

362 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 20:25:26.35 ID:lFLx8Y010

垣根「…それにしても、心理定規は大丈夫かな…」

彼は服も濡れることなく帰ってくることが出来た

しかし、心理定規はきっとびしょ濡れだろう

垣根(…うーん、心配だなぁ)

携帯を開くが、電波の状況が悪いのか圏外が表示されている

垣根(なんで台風如きで電波が悪くなるんだよ)

「にゃー」

不機嫌そうな顔で、クラウド君が垣根の膝をぽんぽんと叩く

垣根「あぁ?なんだよ」

「にゃー」

垣根「…なんで猫じゃらしまで持って来てやがる、遊べってことか」

「にゃー♪」

垣根「遊ばないからなぁ」

「にゃー?」チッ

垣根「今お前、舌打ちしただろうが」

「にゃーにゃー!!!」

垣根「あぁもう!!鬱陶しいなこの猫は!!!」

もっと大人しい動物が好きなんだよ、と垣根は頭を抱える

そういえば、心理定規にはこんなことをされることもなかったはずだ

垣根(…心理定規は一目置かれてるのかよ…)

「にゃー」

363 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 20:41:55.00 ID:lFLx8Y010
垣根「…いいだろう、ならこいつを使って…」

垣根が猫じゃらしをぐっと構える

クラウド君は、それを目がけてジャンプする

それを弄ぶかのように、垣根はひょいひょいと猫じゃらしを高々と上げる

「にゃー!!!」

垣根「なんだよ、こんな場所にも届かないなんてな」

「…」

垣根「ふん、真面目に考えたって俺のこの身長には勝てまい!!さぁ、どうやって猫じゃらしを取る!?」

「…」

垣根「ははは!!見ろ、お前が俺に勝とうなんていうのが無理だったんだよ!!」

垣根「ははははははは!!どうしたどうした、早く…」

スタスタ、とクラウド君がどこかへ向かう

「…」

垣根「あぁ?」

そう、クラウド君が向かったのは他のおもちゃの所だ

大人の余裕を見せて、クラウド君は猫じゃらしを諦めた

一方の垣根は、必死に猫じゃらしを高々と掲げている

「にゃー」

垣根「…」

まるで、垣根が必死すぎるかのような構図


垣根(…不憫だ、俺)


364 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 21:34:06.80 ID:lFLx8Y010

心理「…やっとたどり着けたわ…」

上条と美琴の愛の巣にたどり着いた心理定規は、すぐさま風呂場へと向かった

彼女の能力では雨なんて防ぐことは出来ない

つまり、彼女はびしょ濡れなのだ

心理(…まぁ、猫ちゃんも少しくらいなら待ってくれるでしょ)

着替えは美琴の物を借りればいいだろう、と適当なことを考えていた

濡れてしまった服を洗濯機に入れて、乾燥まで一気に終わらせようとする

もちろん、服というのは制服だ

とても寝るときなどに着ていられるものではない

心理(…学校帰りにこんなことになるなんて、中々面白い一日よね)

ふふ、と小さく笑ってから風呂へと向かった




心理「…しまったわね」

気づいたのは、風呂で体を温め、上機嫌になって出てきてからだった

ここは上条の寮であり、美琴の部屋ではないのだ

彼女がどうしているのかは分からないが、この部屋には美琴の着替えという物はなかった

心理(…服は洗濯中、しかも寝る時なんかには着られない…)

となると


心理(…バスタオル一枚で過ごせって言うの…!?)

これはまずい、と心理定規が青ざめる

なんせそんな状況で誰かが来てしまったらどうするのか


台風だから、来ない


365 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 21:46:44.33 ID:lFLx8Y010

心理「…と、とにかく…スフィンクスちゃんにご飯をあげないと」

なんとなくだが、餌の置いてありそうな場所は分かる

素早く餌を取り出し、スフィンクスの元へと向かう

何事もなかったかのように、スフィンクスはでーんと横になっている

心理(…図太いのね)

ほれほれ、と餌を差し出すと一瞬警戒してから近づいてくる

心理「…ごめんなさいね、本当はあなたのご主人様にあげてもらうはずなんでしょうけど」

今日は私が代役、と心理定規が苦笑する

それを理解したのか、スフィンクスも頷いたような仕草を見せる

心理「…それにしても、着替えはどうしようかしら」

バスタオル一枚なんてなんとも心もとない

心理(…料理は油を使わなければ大丈夫そうだけど…)

寝る時は、さすがに全裸というわけにはいかない

自分のベッドなら問題はないが、ここは上条の部屋なのだ

心理(温もりを置き土産にするつもりはないわ…)

はぁ、とため息をついてから辺りを見回す

上条の着替えを借りるつもりもない、となると


心理(…そうだ、上条君って美琴にコスプレとかさせたりはしないのかしら)


コスプレなんていう物が部屋にあるのではないか、という期待を持ってみる

もしかしたら、なのだがあるかもしれないではないか

メイドとか巫女さんとか

366 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 22:03:09.72 ID:lFLx8Y010

心理(…ないわね)

上条に金がないからなのか、それとも特殊な性癖がないからなのか

そういう類の物も見当たらない

心理「…どうしようかしら」

顔をしかめ、しばし考える

だが時間というのは残酷だ、どんどんと流れていくし、しかも心理定規はまだ夜ご飯を食べていない

心理(…お腹すいたわね)

仕方ないので、とりあえず腹ごなしから始めることにする

心理「…あら、あんまり食材はないわね」

適当に作れるものといえば、野菜炒めくらいしかなさそうだ

心理(そういえば全裸で料理なんて初めてね)

バスタオルは巻いているものの、やけどしないか不安になってしまう

心理(…垣根はどうするのかしら、彼なら自分で料理も出来るけど)

自分がいなくても、家事なんて全部こなしてしまうのだ、そう考えると寂しくなってくる

心理(…っと、こんなこと考えたらダメよね…)

ため息をつきそうになるが、無理やりそれをこらえる


心理「…」

野菜炒めを作ってはいるが、焼いている間というのは暇なものだ

一応箸でかき混ぜはするが、それも単調な行動だ

心理(…垣根がいないと、本当に暇なのね)

それほど、彼の存在は大きくて



リリリリ、と携帯が音を立てたのはその時だった

367 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 22:16:11.65 ID:lFLx8Y010
心理「…か、垣根?」

電話を掛けてきたのは、垣根だった

垣根『お、やっと繋がった!!』

心理「ど、どうしたのよいきなり?」

垣根『あぁいや…無事に上条の家に行けたかなってさ』

心理「も、もしかして…心配してたの?」

垣根『当たり前じゃねぇか』

ケラケラ、と愉快な笑い声が聞こえる

垣根『ったくよ…猫…クラウドのヤツ、さっきから遊べ遊べってせがんでくるんだ』

心理「あら、こっちのスフィンクスちゃんはずいぶん大人しいわよ」

垣根『いいなおい…俺がそっちに行けばよかったかもな』

心理「全くよ、こっちは風呂からあがっても着替えがなかったんだし」

垣根『…じゃあどうしてるんだよ、お前』

心理「全裸にバスタオルよ、まったく…あ、少し待ってて」

携帯をキッチンの上に置いて、野菜炒めを皿に移す

我ながら、すぐに作ったにしては上出来なものだ

心理「ごめんね、ちょっと料理してたから」

垣根『いいのか、もう?』

心理「野菜炒めよ、すぐにできたわ…この部屋ったらなんの食材もないんですもの」

垣根『ははは、貧乏だから仕方ねぇな』

心理「…そうね、でもたまにはいいかも」

垣根『…寒くないか』

心理「今はむしろ暑い時期じゃない、別にこの格好でも大丈夫よ」

垣根『そうか』


368 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 22:23:36.34 ID:lFLx8Y010
心理「ねぇ、わざわざ心配して電話してくれたの?」

垣根『まぁな…それと、暇だったからお前の声が聞きたかったってのもあるかな』

心理「テレビでも見なさいよ…って電波悪いの?」

垣根『さぁ、お前と話してる方が楽しいし』

心理「…そう、ありがと」

垣根『にしてもいいよな、野菜炒め…俺も食いたいなぁ』

心理「あなただって料理出来るじゃないの」

垣根『お前が作ったのが食いたいんだよ』

恥ずかしいから言わせるなよ、と垣根が笑う

心理「…じゃあ来なさいよ」フフ

垣根『いやいや、家には我儘なクラウド君がいますので』

心理「そうね、その子は任せるわ」

垣根『あぁ』

心理「…私は今から御飯だけど、あなたは?」

垣根『俺も今から作るよ…んじゃ、またな』

心理「あ、ちょっと待って…」

垣根『なんだよ』

心理「…あ、あのさ…わざわざ電話してくれてありがとう、嬉しかったわ」

垣根『なんだよ、さっきからそればっか』

心理「…ううん、あなたが私を必要としてくれてるのは嬉しいから」

垣根『必要としてるねぇ』

心理「?」

垣根『お前だって俺のこと、必要だろ』

心理「で、電波が悪いからもう切るわよ!!!」

垣根『ははは、じゃあな』

プツリ、と通話が切れる

気のせいか、心理定規の体は少し火照っていた


369 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 22:35:29.73 ID:lFLx8Y010



上条「…こ、これは…」

美琴「随分と多い量を作ったわね」

テクパトル家、その食卓

どこのホテルの料理だよ、と言いたくなる寮の食事が並んでいる

テクパトル「ん、これは家では普通の類だがな…」

19090「人数が多いですからね」

上条「…そ、そうだけどさ」

イン「やったぁ!!私もたくさん食べていいの!?」

御坂妹「あなたは少し食欲を抑えてください」

イン「くーるびゅーてぃーは厳しいんだよ!!」

20000「いやいや、これはみんなのご飯だからね」

アレイ「人という物は協調して生きていかなければならない」

イン「あなたには言われたくないんだよ」

アレイ「」

テクパトル「さて…いただきますか」

14510「いただきます!」

ミサカ一同「いただきます!!」


上条「えっと…これはなに?」

13577「ボンゴレですね、ちょうど食材がそろってましたので」

美琴「へぇ…これは?」

テクパトル「グリッツっていう健康食品みたいなもんだ」

上条「…な、なんでそんなもんが食事と同時に食卓に?」

17600「まぁまぁ、ツッコむなよ」


370 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/06(日) 22:46:20.73 ID:lFLx8Y010
イン「!!こっちは炊き込みご飯なんだよ!!」

19999「健康的かつ美味しい物なのさ」

テクパトル「イギリスにいたこいつらは、あんまりこういう物食べられなかっただろうからさ」

19090「テっくんが気を遣って、日本食も増やしてるんですよ」

美琴「へぇ…なんかしっかりしてるわね」

アレイ「…すっかり父親だな」

テクパトル「そう言うなよ、照れくさい」

20000「下半身もしっかりしてるもんね」

テクパトル「減点600っと…」

20000「久々の減点いただきましたぁ!!!」

上条「…そういやさ、テクパトルってまだ子作りしてないのか」

テクパトル「ばっふぅ!?」

美琴「ちょ、ちょっと、噴出さないでよ!!!」

10033「お義兄様ったら大胆な質問を…」

上条「いやいや…やっぱり気になるじゃないか」

テクパトル「ん、んんんんんなこと関係ないだろ!!」

アレイ「ほう、慌てているな」

12345「え、もしかしてもう…」

テクパトル「そうだ、こっちは生姜焼きだぞインなんとか!!」

イン「インデックスなんだよ、でもいただくんだよぉ!!!」ゴゴゴ

上条「ごまかすなよ!!」

テクパトル「あぁうるせぇ!!」

19090「//」

一同「やったんだな、もうやったんだな!?」

テクパトル「生姜焼きぃぃぃぃ!!!!」



371 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 09:49:27.20 ID:6qWXeyBf0
上条「はぁ、食った食った・・・」

満足げに上条は腹を摩っていた

それはインデックスや美琴も一緒だった

イン「お腹一杯になったんだよ!」

美琴「アンタはすぐまたお腹減ったって言いそうね・・・」

イン「そんなことないんだよ!」

御坂妹「いえ、すぐに言いますよ」

イン「・・・そういえば、おやつはまだなのかな?」

テクパトル「ま、まだ食べるのか?」

19090「な、なんというか・・・胃袋が無尽蔵なんですね」

上条「インデックス・・・人の家に泊めてもらってるんだから、遠慮くらいしろよな」

イン「だからおやつにしたんだよ!」

14510「・・・どういう意味なんですか?」

13577「おやつじゃない選択肢があるんですか?」

イン「間食なんだよ、間食をしたらまたそのあとに食べるんだよ!」

上条「自慢げに言うことじゃないからなそれ!」

20000「あぁ、もう見てるだけでお腹一杯になるな」

11116「全く・・・人間の胃袋はその人の掌くらいの大きさだと聞きますが・・・」

一同がインデックスの掌を見つめる

絶対に、断じて絶対にそんなことはないだろう


372 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 09:49:26.70 ID:6qWXeyBf0
上条「はぁ、食った食った・・・」

満足げに上条は腹を摩っていた

それはインデックスや美琴も一緒だった

イン「お腹一杯になったんだよ!」

美琴「アンタはすぐまたお腹減ったって言いそうね・・・」

イン「そんなことないんだよ!」

御坂妹「いえ、すぐに言いますよ」

イン「・・・そういえば、おやつはまだなのかな?」

テクパトル「ま、まだ食べるのか?」

19090「な、なんというか・・・胃袋が無尽蔵なんですね」

上条「インデックス・・・人の家に泊めてもらってるんだから、遠慮くらいしろよな」

イン「だからおやつにしたんだよ!」

14510「・・・どういう意味なんですか?」

13577「おやつじゃない選択肢があるんですか?」

イン「間食なんだよ、間食をしたらまたそのあとに食べるんだよ!」

上条「自慢げに言うことじゃないからなそれ!」

20000「あぁ、もう見てるだけでお腹一杯になるな」

11116「全く・・・人間の胃袋はその人の掌くらいの大きさだと聞きますが・・・」

一同がインデックスの掌を見つめる

絶対に、断じて絶対にそんなことはないだろう


373 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 09:50:06.66 ID:6qWXeyBf0
アレイ「完全記憶能力の持ち主だとしても、食べ過ぎではないか」

イン「だってお腹が減るんだもん!」

美琴「そんなこと言ってたら将来、間違いなく太るわよ」

イン「そ、そんなこと・・・」

テクパトル「いや、若い頃の食習慣というのは人生に非常に影響するぞ」

10039「たしか、若い頃に食べ過ぎると肥満になる可能性がかなり上がるんですよね?」

10398「満腹中枢が麻痺するとも聞きます」

テクパトル「そうなんだよな」

上条「ほら、インデックス・・・」

イン「・・・み、未来なんてあるかどうか分からないんだよ!それより今目の前にある美味しそうな物を口にする幸せを私は取るかも!」

美琴「アンタ・・・健康には気をつけなさいよね」

アレイ「全くもって同意見だ」

イン「むーっ!」

テクパトル「・・・さて、おやつはおいといて、誰から風呂に入る?もう一度入るだろ?」

美琴「まぁ・・・そうね」

イン「おやつをおかないで欲しいんだよ!」

19090「まずはミサカ達が入るのがいいのでは?」

10033「・・・そうですね、大人数ですし」

19999「効率は良さそうなのさ」

17600「じゃあ、行くか」

ミサカ達がぞろぞろと風呂場へ向かう

リビングの人口密度はぐんと下がった


374 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 09:50:44.70 ID:6qWXeyBf0


垣根「よし出来た!」

自作の料理をテーブルに並べた垣根は、自信満々といった感じで頷いていた

ちなみに今日は肉じゃがである

家庭的というイメージはあまりない彼だが、一応の料理ならこなせる

垣根(そうだ、心理定規の分もとっておくか)

明日台風が止むとは限らないが、それでも彼女に肉じゃがを食べて欲しかった

垣根(美味く出来てるかな)

パクッ、と一口食べてやはり自分の腕は確かだったと確認する

垣根「あー美味い・・・ちくしょう、なんで心理定規がここにいないんだよ」

褒めてほしい、なんて思いながら肉じゃがを口に放る

「にゃー」

するとクラウド君が羨ましそうに垣根の足を突いてきた

垣根「なんだよ、お前は食べられないぞ」

「ふーっ!」

不満だ!といいたげなクラウド君を垣根は見下ろしていた

垣根「大体お前に食べさせても感想言ってくれないだろ・・・」

俺は褒めてほしいんだよ、と呆れたように答える

垣根「・・・んー、それにしても中々上手く出来たな・・・肉じゃがの店でも開こうかな」

一人寂しく冗談を言いながら、垣根は箸を進めた


375 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 11:07:40.58 ID:6qWXeyBf0
垣根「…ちくしょう、心理定規がいねぇと暇だな」

テレビをつけても、大抵のチャンネルでは台風の情報を流しているだけだ

くだらないバラエティもやってはいるが、垣根のツボにははまらない

垣根(ちっ、俺が番組作った方がよっぽど面白いのによ)

んなわきゃない

垣根「…はぁ、ごちそうさま」

手を合わせて、食器を洗い場へ持っていく

垣根(…風呂入ったら寝ますか)

やることもないしなぁ、と垣根がため息をつく





心理「…そういえば」

一方の心理定規は、食事を終えたところだった

自分の料理に満足していると、大切なことを忘れていたのだ





服がないのを忘れていた

心理「…どうすればいいのかしら、バスタオル一枚だけなんて御免なのよね」

ベッドに寝るにしても、パジャマは必要なのだが

心理「…」

心理定規はしばし考えた

上条が美琴にコスプレをさせる可能性は少ない

美琴の着替えもどうやらここにはない、泊まる度にまとめて持ってくるのだろう

上条の服を着るなんて論外だ、どうしようもない

心理定規は

この日二度と服を着ることは出来なかった

素っ裸と服を着ている状態の中間の存在となり

永遠に上条の部屋をさまようのだ

そして服を着たいと思っても、服がないので


そのうち心理定規は、考えるのをやめた

376 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 15:22:08.61 ID:6qWXeyBf0

心理「ってダメよ、考えなきゃ」

現在バスタオルは一枚

薄く肌色が見えていることから分かる通り、結構薄いタオルだ

恐らく美琴のものだろう…というか絶対そうだ、何しろ可愛いゲコ太のワンポイントが描かれているのだから

心理(…勝手に借りてごめんね、美琴…今度何か奢るから)

寝る時にさすがにタオル一枚では寒いだろう、こんな時に風邪なんてひきたくはない

心理(…せめて大きなTシャツでもあれば)

どうにか体を覆えればいいのだ、それなら問題はない

心理(…上条君のを借りるしかないかしら)

上条のTシャツを身に纏うか

それとも、ほぼ全裸でベッドに寝るか

心理(…シャツは新しいのを買ってあげればいいけど、ベッドはそうもいかないわよね)

うんうん、と無理矢理納得させる


適当に棚を探すと、上条の物と思われる大き目のTシャツを見つけることが出来た

中々使い込んでいるのか、ところどころにほつれが見られる

心理(…つまり、これは上条君の色んなものがしみ込んでいるのね)

思い出から汗まで

心理(…)

じーっとそのTシャツを見つめ、着るべきか否か考える


心理「やっぱりこれはいいわ」

そっと戸棚に戻し、別のTシャツを探す


377 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 15:40:35.95 ID:6qWXeyBf0
心理「…っていっても、上条君って貧乏だからあんまり服持ってないイメージがあるわね」

ひどいことを言いつつも、戸棚を漁る

するとある一冊の本が出てきた

心理「…」

心理「あら、上条君もこういうのは持ってるのね…へぇ」

心理「…」パラパラ

心理「…上条君って、たしか年上のお姉さんタイプが理想だったかしら」

心理「でも美琴と付き合って変わったのね…」ハァ

心理「…ふーん、制服物…これまたマニアックな」パラパラ

心理「…あら、このページだけやけに織り目が着いてるわね」

心理「あぁ、ここお気に入りなのね」クスクス

心理「…?なんか最後に挟まってるわね」


「当麻の馬鹿!!こういう本読むくらいなら私に言いなさいよ!!!」


心理「美琴のメモ書き…でもここにまだあるってことは、最近は上条君この本読んでないのかしら…」

心理「…って、そうじゃなくて!!」

大人な本を棚に直し、再び服を探す

しかし出てくるのは上条のサイズです、という感じの大き目な服ばかりだ

心理定規が着れそうなものはない

心理(ど、どうするのよこれ…)


378 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 17:48:04.05 ID:6qWXeyBf0
心理「…まぁ、仕方ないわね」

バスタオルで寝るか、という判断に至るまでそう長くはなかった

心理(…上条君、美琴、ごめんなさいね)

温もりなんて残さないから、と一人で呟いた




垣根「うーむ」

風呂場で、クラウド君を洗ってやろうと思ったのが間違いだった

そういえば、心理定規がいつもその役はしているのだから

垣根「お前、どうやって洗うの?」

「にゃー」

垣根「…応えちゃくれない、か」

猫用のシャンプーを手の中で泡立てる

ソープ嬢ってこんな気持ちなのね、と垣根が笑う

悲しくなってくる

垣根(…っていうか、ゴシゴシ洗っていいもんなのか?)

首を捻るが、どうせ知識なんてないのだ

垣根(まぁいいや)

ゴシゴシ、と力強く洗おうとすると


「ふにゃーー!!!!」


クラウド君は反発した

379 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 18:16:34.55 ID:6qWXeyBf0
垣根「だぁぁぁ!!なんなんだよお前は!?」

「にゃー!!」

垣根「強く洗いすぎなら強く洗いすぎだって言ってくれよ!!!」

「にゃー!!」

垣根「にゃーだけじゃ分からないんだよ!!!」

「ふーっ!!」

垣根「ふーっでも分からねぇからな!!!」

涙目になりながら、垣根は無理矢理クラウド君を洗う

「ふにゃー!!!!」

垣根「なんなんだよ、言いたいことがあるなら口で言え!!!」

「にゃーっ!」

垣根「分かりませんからぁ!!猫の言葉とか俺には分かりませんからぁ!!」ベロベロバー

「にゃー!!」

垣根「あぁぁぁぁぁひっかくな!!痛い痛い!!」

「にゃー!」

垣根「…分かったよ、優しく洗えばいいんだろ…」

スポンジを使って洗おうとする

だが、クラウド君は本能に逆らえなかったのかそのスポンジ目がけて猫パンチを繰り出す

垣根「…殴るな!」

「にゃはははは!!」

垣根(今こいつ笑ったよな)


380 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 20:07:38.14 ID:6qWXeyBf0

上条「ふー、相変わらずいい湯だった…」

美琴「本日二度目、ね」

髪を拭きながら、二人は脱衣所からリビングへ向かっていた

上条「あれ、インデックスは?」

テクパトル「あぁ、庭でみんなと遊んでるぞ」

美琴「庭で?」

上条「何してるんだよ」

テクパトル「さぁな、みんなでバトミントンでもしてるんじゃないかな」

ビールを飲みながら、テクパトルは適当に答えた

ちなみに、リビングにはテクパトルとアレイスター、19090号だけが残っている

上条「…っていうか、アレイスターも飲んでるのか」

アレイ「私も一応は飲めるくちなのでね」

美琴「…あのね、統括理事長様がそんなことしてていいの?」

テクパトル「…いいのではないか」

19090「ですが、アレイちゃんは飲み過ぎですよ」

上条「そんなに飲むのか」

19090「休みの日はよくテっくんと飲み潰れてますよ」

上条「お、お前ら…」

テクパトル「いや、魔術の話とかで盛り上がるものでな」

美琴「何よその酒の肴は…」

アレイ「いいではないか」

381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/07(月) 20:18:42.70 ID:1w/KU5p/0
何故にカーズ様
382 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 20:18:49.85 ID:6qWXeyBf0
上条「…それで、今日も飲んでるのか…」

テクパトル「どうせ明日は休み…」



17600「あぁもう!!台風の日に外で遊ぼうってのが頭おかしいんだよ!!」

20000「あひゃひゃ!!!こんな日には外に出たくなるでしょ!?」

御坂妹「頭おかしいとしか思えません!!」

イン「きゃははははは!!!!」



上条「…あのさ、なんでお前は止めなかったんだ」

テクパトル「止めないと思うか、止めたよ、あぁ止めたのさ」

グビッ、とビールを飲んでからテクパトルがため息をつく

テクパトル「でもな、台風の日に外に出て遊ぶのは男のロマンだって20000号とインデックスが言いやがったんだ」

美琴「な、なんなのよそれ…」

アレイ「その気持ちは分かるが…」

テクパトル「…おかげで、あいつらはどうせもう一度風呂に入ることになるんだよ」

19090「…ま、まぁ大きな子供だと思えば…」

テクパトル「…バトミントンなんてこんな天気の日にやるもんかよ…」

ビュオオオオオ、と風の音が聞こえる

ちなみに妹達とインデックスの悲鳴も聞こえる

テクパトル「…」



ミサカ一同「きゃはははは!!!」

イン「きゃっはああああ!!!」



テクパトル「…」ブチン


383 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 20:24:02.26 ID:6qWXeyBf0
>>381 なんとなく、ただなんとなく


上条「お、おい…どこ行くんだ」

テクパトル「庭」

美琴「に、庭ってね…アンタまでびしょ濡れになるわよ?」

テクパトル「庭」

美琴(あ、怒ってる…)

ガン、と乱暴に雨戸を開けてテクパトルが庭を睨み付ける

その時ちょうど、バトミントンの羽根が彼の顔面に直撃した


ミサカ一同「あ」

イン「うわ」


テクパトル「…何か、最後に言うことはあるか…」

17600「ち、違うんだ…ミ、ミサカは止めたんだぜ!?」

14510「あ、あれなんですよ!!ほら、台風の日ってちょっとテンションが…」

テクパトル「上がるな、それで」

13577「ほ、ほら!!イギリスミサカ達は台風なんて珍しくて、楽しかったらしいですし!!」

19999「そ、そうなのさぁ!!!」

テクパトル「ほぅ」

20000「テ…テっくんも一緒に…や、やらないか」

テクパトル「…」

イン「ほ、ほら!!私も楽しかったんだよ…」



テクパトル「小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」

一同「」



384 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 20:46:56.81 ID:6qWXeyBf0

テクパトル「…」

10033「すいませんでした」

12345「も、申し訳ありませんでした」

テクパトル「いいから、風呂に入ってこい…」

ミサカ一同「は、はい!」

イン「はいなんだよ!!」

スタスタ、とミサカ達&インデックスが風呂場へ向かう

雨戸をしっかりと閉めて、テクパトルはリビングに戻ってきた

ちなみになぜか彼は濡れていない

19090(あ、雨が避けたんでしょうか…)

上条(今のテクパトルに触れたら蒸発しそうだな…)

美琴「あ、あのさぁ!!」

テクパトル「なんだよ」

美琴「テ、テクパトルっていっつもビールばっかり飲んでるの?」

テクパトル「いや…安いからってのもあるかな、本当はワインとかが飲みたいんだよ」

上条(美琴ナイス!!)

19090(いい感じにごまかせましたね!)

アレイ「だがビールも慣れれば美味しいものだ」

テクパトル「第三のビールなんてドイツ人に怒られるぞ…」

上条「なんだよそれ」

テクパトル「はぁ、焼酎も好きなんだがやっぱりワインらよなぁ」

美琴(よ、酔ってるのかしら…なんかちょっと呂律がおかしいわね)


385 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/07(月) 21:58:58.05 ID:6qWXeyBf0
今日はここまで

明日から大学が再開ですのでまた投下は無くなります

というかGWもバイト三昧だったのでできませんでしたが


このスレ終わりに出来るのいつになるのやら…

では


386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 23:53:30.12 ID:j5L67zvIo
おつにゃんだよ!

387 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:11:12.14 ID:RcgiEVjs0
上条「テクパトル、呂律回ってないぞ」

テクパトル「・・・んなころねぇよ」

美琴「いや、回ってないわよ」

19090「テっくん、ちょっと飲み過ぎなんじゃ・・・」

アレイ「というより、飲むペースが今日は早いな」

テクパトル「どうせ明日は仕事出来ないさ、こんな天気じゃ・・・」

上条「そういうこと言うと晴れるんだぞ」

テクパトル「うるせぇ、上条とは違うんらよ・・・」

19090「テっくん、飲み過ぎはダメです!」

テクパトル「美月・・・だってさ、最近仕事で飲めなかったんだぜ?」

19090「そ、それはまた別問題ですよ」

美琴「そうよ、それが飲んでいい理由にはならない・・・」

テクパトル「ぷはーっ、美味い!」

美琴「話を聞きなさい!」

テクパトル「義姉さんったら厳しいな・・・」

アレイ「酒は楽しく飲まなければいけない」

上条「いや、飲んでるのは二人だけだし」

テクパトル「なんら?もしかしてお前も飲みたいのか」

上条「違う違う!」


388 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:11:37.83 ID:RcgiEVjs0
テクパトル「ならほっとけ・・・」

19090「テっくん!もうダメです!」

19090号がテクパトルの手からビールを奪う

テクパトル「な、なにするんだよ!?」

19090「テっくん、今日はもう十分飲んだでしょう!?」

テクパトル「まだ夜はこれからじゃないか!」

19090「な、何を言っているか分かりませんが酔っているということは分かります!」

テクパトル「いいだろ、なぁ?」

美琴「19090号、負けちゃダメ!」

19090「はい!」

テクパトル「じゃあいいよ、美月なんか嫌い」

19090「えっ・・・」

ふん、とテクパトルがソファーに寝転がる

上条(完全に酔ってやがる)

美琴(うわぁ、なんかオッサンっぽい)

19090「い、嫌です!嫌いにならないで下さい!」

グイグイ、と19090号がテクパトルの肩を揺らす

テクパトル「おえ・・・あ、あんまり揺らすなよ・・・」


389 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:12:09.06 ID:RcgiEVjs0
19090「嫌いにならないで下さい!」

テクパトル「冗談だって、大好きに決まってるだろ」

ニカッと笑ってから、テクパトルが19090号にキスをする

19090「//」

上条「・・・」

美琴「うわ、見ててなんか恥ずかしいわ」

テクパトル「なんらよ、義姉さん達だっていつもやってるだろ」

美琴「わ、私達はそんなことしないわよ!」

アレイ「いや、している」

美琴「なによ!」

テクパトル「なぁ美月、もう一本だけいいだろ?」

19090「ダ、ダメです!」

テクパトル「うー・・・じゃあいいや、寝る」

上条「いやいや待って!だったら誰がこれから妹達の世話するんだよ!」

テクパトル「義姉さんが遊んでやればいいだろ・・・」

美琴「い、いくらなんでも私だけじゃ・・・」

テクパトル「ぐー・・・」

上条「タヌキ寝入りすんな!」

テクパトル「・・・分かったよ、じゃあ本当に寝るから」

上条「そういう意味じゃねぇ!」

390 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:12:36.92 ID:RcgiEVjs0
テクパトルがゆっくりと立ち上がり、2階の寝室へ向かおうとする

19090「だ、大丈夫ですか?」

テクパトル「フラフラする・・・」

美琴「飲み過ぎなんだってば・・・」

テクパトル「美月、ちょっと着いてきてくれないか?」

19090「わ、分かりました」

テクパトルに肩を貸しながら、19090号もリビングから出ていく

上条「・・・マジで妹達の世話するのか、俺達が」

美琴「た、大変なことになったわ・・・」

アレイ「なに、彼女達は聞き分けがいいから問題あるまい」

上条「どう考えてもよくないことは明白だろ!」



御坂妹「誰が聞き分けがよくないんですか」

上条「うわぁ!?」

美琴「い、いつの間にあがったのよ・・・」

10039「テっくんが2階に行った瞬間です」

17600「ま、たまにはテっくんもああいう時があってもいいさ」

11116「あなたはテっくんに甘いですね」


391 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:13:08.05 ID:RcgiEVjs0
17600「みんなそうだろ」

14510「ま、まぁ・・・そうですね」

御坂妹「それで、お姉様がミサカ達のお世話をしてくれるのですか?」

美琴「え、あ・・・」

イン「みこと、みんなみことが来てくれたことをすっごく喜んでたんだよ!」

美琴「・・・」

イン「お風呂で、みことの自慢話ばっかりしてたもん!」

10033「そ、それは秘密だと言ったでしょう!」

10398「そんな台詞を言ったら本当だということがバレバレですね」

上条「・・・で、どうするんだ美琴?」

美琴「はぁ・・・仕方ないわ、今日くらい世話するわよ」

苦笑しながら美琴はため息をついた

美琴「お姉ちゃんだもん、仕方ないわね」




テクパトル「・・・」

テクパトルはじっと19090号を見つめていた

酔っ払った自分を介抱してくれた19090号

愛する妻



392 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:13:38.81 ID:RcgiEVjs0
19090「どうですかテっくん?」

テクパトル「・・・」

19090「テっくん?聞いてますか?」

テクパトル「ん、あぁ・・・大丈夫、ちょっと横になったらいい感じになった」

19090「な、なんだかまだ支離滅裂なことを・・・」

テクパトル「・・・なぁ、それより・・・」

ぐいっ、とテクパトルが19090号の手を引っ張る

19090「きゃっ!?」

テクパトル「ははは、きゃっだってさ・・・」

19090「よ、酔ってるんですか?」

テクパトル「ちょっとな」

笑いながら19090号の頭にキスをする

19090「ちょっとビール臭いですね・・・」

テクパトル「御免な」

19090「あ、あの・・・それで、どうしたいんですか?」

テクパトル「もしかして期待してるのか」

19090「だ、だって・・・二人きりじゃないですか」

テクパトル「そうだな、二人きりだ」

19090「あう・・・な、なんでそんな焦らすんですか!」

テクパトル「美月が何をしたいのか分からないからなぁ」

19090「絶対に嘘ですね!」


393 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:14:06.71 ID:RcgiEVjs0
テクパトル「口で言ってくれたらわかるんだけどな」

19090「・・・こ、子作りなんか・・・」

テクパトル「・・・疲れてるんだけどなぁ」

19090「じゃ、じゃあなんで言わせたんですか!」

テクパトル「あはは、なんか恥ずかしがってるお前が可愛かったから」

19090「う・・・テっくんなんてもう知りません!」

ふん!とそっぽを向く彼女の顔は真っ赤になっている

テクパトル「そう言わずにさ」

後ろから胸をまさぐるようにして19090号に抱き着くテクパトル

19090「ひゃぃっ!?」

テクパトル「ん、お前ちょっと胸でかくなった?」

19090「ち、違います!」

テクパトル「妊娠したら胸がでかくなるんだよな・・・」

19090「こ、子供はお姉様達の子供と同世代だったでしょう!?」

テクパトル「あいつが第一子とは限らないだろ」

19090「な、何を・・・んっ!」

テクパトルが19090号の耳たぶを甘く噛む

19090「そ、そこは・・・」

テクパトル「くすぐったい?」

19090「な、なんだか変な感じがしますから・・・」



394 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:14:34.98 ID:RcgiEVjs0
テクパトル「・・・美月、可愛いな」

19090「!」

19090号が横を見ると、満面の笑みのテクパトル

テクパトル「こんな可愛い嫁さん貰えたなんて、本当に幸せだよ」

19090「な、ななな・・・」

テクパトル「美月、はじめるか」

19090「あ・・・」

そして





上条「・・・なんか大変だな、美琴」

リビングで一列に並んだ妹達

彼女達の目的は美琴に髪を乾かしてもらうことだった

美琴「・・・なんか、お母さんになった気分」

御坂妹「おや、まさかもうお母さんになった時を考えているとは」

13577「お姉様ったら妄想癖が激しいですね」

20000「まぁお義兄様とやってるんだしそういうのもあるだろうけど」

美琴「そ、そういうのってなによ!」

14510「所謂生殖行為ですよ」

10033「まぁ、大胆ですね」

上条「お前達は何を言ってるんだ!?」



395 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:15:01.23 ID:RcgiEVjs0
御坂妹「しらばっくれなくても」

アレイ「恋人というのはいいものだな」

イン「はぁ、羨ましい限りなんだよ」

20000「ありゃ、もしかしてセックスに興味がおありで?」

イン「シスターはそんなことに興味を持たないんだよ!」

20000「いやいや、人間なんだから当然の欲求でしょ?」

イン「ふん、あなたはくーるびゅーてぃーなのにくーるびゅーてぃーじゃないかも!」

20000「おい誰かこの女引きずり出せ!」

上条「醜い争いするなって・・・インデックスは髪乾かさなくていいのか?」

イン「うん、後で乾かすんだよ」

美琴「ついでだし私が乾かそうか?」

イン「うーん・・・じゃあお願いしようかな」

美琴「オッケー」

13577「・・・にしても19090号、遅いですね」

12345「テっくんを2階に連れていったっきりですね」

御坂妹「・・・テっくんの体調が芳しくないのでしょうか」

アレイ「・・・」

20000「いや、違うね」

ミサカ一同「・・・!ま、まさか!」

上条(テクパトル、中々やるな)




396 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:15:34.95 ID:RcgiEVjs0


心理「んん・・・」

心理定規はバスタオル一枚でベッドに寝転がっていた

時刻は22時

寝るには少し早いが、他にすることがあるわけでもない

布越しに伝わる毛布の感覚がくすぐったい

いっそバスタオルも脱いでしまったほうが早いのではないか

そう思わせるほど、くすぐったい

心理(これはまずいわね)

足の裏、脇腹、なんていう場所だけがくすぐったいなら問題ない

だが胸やらお尻やらがくすぐったいのだから困ってしまう

心理(・・・)

モゾモゾと足を動かす

そういうつもりではないのだが、刺激という物に体は敏感に反応してしまう

心理「はぁ・・・」

何やら映画のワンシーンのような光景だ

ただし居るのはヒロインだけという寂しい光景でもある

心理「あ、そうだ」

思い出したのだが、垣根との電話を終えた時にまた後で、みたいなことを言った気がする

彼が律儀に待っているかもしれないのだ

心理(・・・起きてるかしら)


397 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:16:06.27 ID:RcgiEVjs0
この時刻に垣根が寝ているとは考えにくい

携帯を手に取り、彼へ通話を発信する

するとどうだろう、たった1コールしただけで通話が始まった

垣根『よぉ』

心理「あら、やけに出るのが早かったじゃないの」

垣根『ちょうど俺も電話しようかなって思ってたところでさ』

心理「あら、奇遇なのね」

恋人というのはここまで繋がっているものなのか

心理定規はその偶然に少し笑いそうになる

垣根『んで、お前は何してたんだ』

心理「もう横になってる、結局バスタオル一枚」

垣根『そいつは大変だな、くすぐったいんじゃないか』

心理「・・・」

垣根の声を聞いたからか、心理定規の鼓動は確実に速まっていた

心理「あのね、なんか・・・ちょっと危ない感じのくすぐったさなの」

垣根『そりゃバスタオル一枚ならそうだよな』

全裸でベッドにいるのと大して変わらないし、と垣根が笑う

心理「・・・どうしたらいい?あなたの声聞いてたらせつなくなってきちゃった」

垣根『お前ってそんなにエロかったっけ』

心理「知らないわよ」

垣根『・・・すれば?』


398 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:16:37.64 ID:RcgiEVjs0
心理「・・・そうね、じゃあ」

垣根『あ、電話は繋いだままでどうぞ』

心理「!?」

それはつまり

心理「あ、あなたに声聞かれるじゃないの!」

垣根『今更だな、ずいぶん裸も見たじゃねぇか』

心理「だ、だけどなんかこういうのは逆に恥ずかしいのよ・・・」

垣根『へぇ・・・でもずっと切ないままじゃねぇのか』

心理「・・・こ、これは上条君のベッドよ!そんなことしたら・・・」

垣根『上条と御坂なんか散々家でヤってくれたじゃないか』

心理「あ・・・あなたはどうするのよ」

垣根『愛する心理定規ちゃんが俺の声を聞いてせつなくしている様をオカズにワインを』

心理「あ、あなた飲んでるのね・・・」

道理で無茶苦茶なことを要求してくるわけだ

恐らく酔って気分が大きくなっているのだろう

心理「・・・ねぇ」

垣根『んだよ』

心理「あのね、愛してるって言ってくれない?」

垣根『なんだよ急に』


399 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:17:17.00 ID:RcgiEVjs0
心理「・・・私が恥ずかしいことするんだから、あなたも少しくらい恥ずかしいことしなさい」

垣根『愛してるよ』

心理「!」

くすぐったさが、何やら艶やかな物に変わる

すっと股の間に手を伸ばす

ヌルリとした液体が指に絡み付いてくる

心理(ダ、ダメ!ここは友達の部屋なんだから・・・)

垣根『心理定規』

心理「な、なに」

垣根『あんまり声が聞こえませんが』

心理「!ば、馬鹿!」

垣根『性欲は溜めすぎるとまずいんだぜ』

心理「だからってこんな・・・!」

垣根『愛してる』

心理「!」

心臓が跳ねる

本能は正直だ

心理「・・・私も」

脳の奥が蕩けた様な感覚に陥る

だがそれは体に加わった刺激のせいではない

垣根の、たった二度の「愛してる」のせいなのだ


400 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:18:22.02 ID:RcgiEVjs0
垣根『本当はそっちに行きたかったんだけどさ』

申し訳なさそうに言ってくる垣根の声

それも愛おしく感じる

心理「いいわよ、だ・・・大丈夫」

友達の家で・・・という所に興奮しているのではない

無理矢理そう言い聞かせる

心理(じゃないとショチトルみたいよ)

変態呼ばわりされるのは御免だ、と

垣根『なぁ』

心理「なに?」

垣根『気持ちいいか』

心理「!ま、まぁ・・・んっ・・・」

垣根『・・・最近相手してやったっけ?』

心理「あなた、元々あんまりしたがらないじゃない」

垣根『あれってめんどくさいだろ』

心理「私は・・・そうは思わないかな」

垣根『へぇ』

心理「あなたとなら、だけど・・・幸せな時間の一つだし」

垣根『お前、よくそんな恥ずかしいこと言えるよな』

心理「お互い様」

クスクス、と笑う心理定規


401 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:18:48.84 ID:RcgiEVjs0
こんなことを、電話をしながらやっているという背徳感はあまりない

相手が垣根だったら、なんだっていいのだ

心理「・・・ねぇ、垣根」

艶っぽい心理定規の声

恐らく垣根は、ワインを飲むのを止めて彼女の言葉を待っているのだろう

心理「帰ったら・・・久しぶりにしましょう」

垣根『なんだよその死亡フラグ』

心理「照れ隠ししないで」

垣根『・・・分かった、約束だ』

心理「ふふ・・・あっ・・・」

垣根『・・・心理定規、気持ちいいか?』

心理「えぇ・・・あなたの声を聞いてるからかしら」

垣根『・・・いいぜ、イっても』

心理「垣根・・・」

垣根『ん?』

心理「私のこと、好き?」

垣根『大好きだって、何度も言わせんな』

ビクリ、と心理定規の体が跳ねる

一瞬だが確かに頭の中が白くなった


402 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 17:19:16.15 ID:RcgiEVjs0
心理「・・・はぁ・・・」

垣根『大丈夫か』

心理「・・・今考えたら・・・大変なことしちゃったわね」

垣根『シーツと布団洗えばいいだろ』

心理「今台風じゃない」

笑い合ってから、心理定規が最後に尋ねる

心理「ねぇ、クラウド君にはちゃんとご飯あげた?」

垣根『あぁ』

心理「そう・・・よかった」

垣根『心配すんなって、大丈夫』

心理「心配はしてないわ、あなただから」

垣根『じゃあなんでんなこと・・・』

心理「・・・それじゃ、私は寝るから」

垣根『ちょ、ちょっと待てよ、今の質問は・・・』

心理「お休み、愛してる」

垣根『あ、あぁ』

心理「・・・」

垣根『・・・俺も、愛してる』

垣根の言葉に満足した心理定規が通話を切る

心理(・・・あなたって本当に馬鹿ね)


心理(・・・私だって恥ずかしかったんだから)


403 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 18:24:06.85 ID:RcgiEVjs0

上条「えーっと…こ、これだ!!」

上条は一枚のカードを引いた

上条「うわぁぁ!!ババだぁぁぁ!!」

美琴「もう当麻ったら、それを言ったら面白くないのよ…」

御坂妹「さっきからずっとババを引いてますね」

10039「全く、お義兄様は不幸ですね」

アレイ「…さて、私が引くか」

上条(そ、それは普通のカードですよ!ババを引け、ババを!!)

ぐぐっ、と上条はノーマルのカードを強く握る

そう、彼らは今トランプをしているのだ

そして上条な持ち前の不幸さでババ抜きでビリを4回経験した

13577(…なんなんですか、お義兄様…)

20000(今アレイちゃんが引こうとしたのはババなんですね…)

17600(バレバレだな)

上条「は、早く引けよ…」グググ

アレイ「…はぁ」

アレイスターが一旦そのカードから手を放す

それに気を緩めて、上条も力を抜き…


アレイ「隙あり」

アレイスターはそのタイミングで、そのカードを引いた

上条「あぁぁ!!騙したなぁ!!」

アレイ「そういうゲームじゃないから」

404 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 21:17:25.64 ID:RcgiEVjs0
美琴「…ねぇ、当麻…早く引いてよ」

上条「だ、だって俺が引いてもどうしようも…」

10039「グダグダ言わないでください」

10398「そうですよ、どうせ引かないといけないんですから」

上条(うぅ…また負けるのか…)




アァァァァ!テックン、テックン!!!
ミツキ、ミツキィィィ!!



上条「」

17600「あ、あの二人…」

美琴「お、大きな声ね…」

御坂妹「普段はあんなふうじゃないんですけどね…」

20000「テっくん酔ってたから、結構派手にやってるんじゃない?」

14510「は、派手に…」カァッ

上条「…あいつら…少しは声押さえろよ…」

アレイ「…まぁ、たまにはいいではな…」


ミツキィィィィ!
テックン、テックン!アァ、アイシテマス!!!



一同「…」

一同(…ちょっと、うるせぇ…)



405 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 21:46:19.88 ID:RcgiEVjs0

垣根「…うーん…」

垣根が目を覚ますと、外ではまだ風の音が響いているところだった

垣根「あれ、いつの間にか寝てたのか…」

昨晩、心理定規と電話で話したのは覚えている

垣根(…今日は…これじゃ学校はねぇかもなぁ)

窓をチラっと見つめるが、どう見ても出歩けるような状況ではない

「にゃー」

垣根「ん?よぉ、お前も今起きたか」

クラウド君の頭を撫でながら、垣根が笑う

垣根「…さて、どうすっかね」

心理定規を迎えに行くべきか、それとも


リリリリ、と家の電話が鳴る

垣根「…?上条の家から…ってことは心理定規か」

受話器を取ると、聞きなれた声がする

心理『あ、垣根…ごめんなさい、起きてた?』

垣根「あぁ、でもなんで携帯じゃないんだよ」

心理『携帯、また電波が悪いから』

垣根「まだそんなに天気ひどいのか…」

心理『そうそう、今からそっちに帰りたいのよ…美琴と上条君も、今日はここに帰ってくるみたいだし』

垣根「じゃ、迎えに行くよ」

心理『えぇ、よろしく』



406 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 21:49:36.89 ID:RcgiEVjs0

イン「…私もそろそろ、こもえの家に帰るんだよ!」

上条「…気が付いたら朝でした…」

美琴「…徹夜でトランプやってたのね、私達…」

御坂妹「瞼が重いです…」

19090「もう、みなさんしっかりしてください…」

テクパトル「上条達も今日は帰るだろ?」

上条「あぁ、でも眠い…」

17600「ほらほら、しっかりしろよ」

上条「…分かりました…」

イン「途中まで一緒に帰ってもいいかな?」

上条「あぁ」

アレイ「では、気を付けてな」

美琴「…行こう、二人とも」

御坂妹「また来てくださいね」

上条「あぁ」



台風一過、という言葉があるが今日にはまだその言葉は早い

明日か明後日には、その言葉がぴったりな天気が訪れるはずだ

上条(…すごい風だな…)

呆れながら、上条は歩いていた

横では美琴とインデックスが、少し体勢を低くして進んでいる

美琴「…あれ、あれって垣根よね」

上条「?本当だ、心理さんも一緒…」


407 : ◆G2uuPnv9Q. [saga sage]:2012/05/08(火) 21:52:41.85 ID:RcgiEVjs0

垣根「ひゃっはぁ!!やっぱ台風ってテンションあがるよなぁ!!」

心理「…昨日も言ってたわね」

垣根「なぁ、空も飛べるはず!?」

心理「あなた、飛べるでしょ」

垣根「ははは!!こりゃ楽しい!!」

心理「はぁ…」



上条「…なんかやってる」

イン「でも、いつも通りなんだよ」

美琴「そうね、垣根も心理定規もいつも通り」



垣根「あ、上条じゃーん!!!」

心理「あなた達も今帰りなの?」

上条「あぁ、まぁ…」

垣根「じゃあさ、一緒に空飛べるか競争しようぜ!!」

上条「な、何言って…」

イン「楽しそうなんだよ!!」

上条「はぁ!?」

美琴「…まぁ、たしかに少し楽しそうね」

垣根「だろ!?」

心理「しょ、正気…?」

上条「ま、待って!!まさか俺も…」

垣根「さぁ、飛ぼうぜみんな!!」

上条「帰らせてください!!!!!」



台風一過、という言葉があるが


上条にとっては、台風よりもめんどくさい存在というのもいるものだ



台風編終了


408 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:18:11.08 ID:PBRAG6DF0
テクパトル「・・・はぁ」

テクパトルの深いため息には、ある理由があった

彼が今どこにいるのか、それを説明しなければならない

彼の目の前にはある一軒家があった

玄関にはどこの若いカップルだ、と思わせる表札が掲げられている

「旅掛」と「美鈴」がハートで囲まれたものだ

そう、つまり美琴の実家である

19090「・・・来てしまいましたね」

上条「あのさ、なんで俺達まで・・・」

テクパトル「あぁもう!悪かったってば!」

頭を抱えるテクパトルは、最早パニックだった

何を血迷ったのか、昨日のテクパトルは

「そういえば、ご両親へ挨拶しなきゃな」

なんて突然言い出したのだ

いや、それは当たり前のことなのだが

二人だけだと不安なので、上条と美琴も一緒なのだ

美琴「こっちは学校に無理言ってついてきてるんだからね・・・」

19090「お二人とも、申し訳ありません・・・」

上条「まぁ、俺も嫌なわけじゃないんだけどさ」


409 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:18:43.06 ID:PBRAG6DF0
テクパトル「あぁぁぁなんか大覇星祭で会ったり電話で話したりする限り義父さんと義母さんは俺にはハードルが高いんだよ!」

支離滅裂なことをテクパトルが言っている

無理もないだろう、根が真面目な彼にとってあの両親ほど扱いにくい存在も珍しい

19090「・・・とは・・・言いましても」

美琴「来ちゃったもんは仕方ないでしょ」

上条「そうそう、早くチャイム押そうぜ」

テクパトル「ウェイト!あとほんのちょっぴり俺に猶予と優しさをくれ!」

上条「なんでそんなにガチガチなんだよ?」

テクパトル「結婚の挨拶なんて初めてするからに決まってるだろ!?」

美琴「みんなそんなもんよ」

テクパトル「あぁぁ義母さんはともかく義父さんからは末永く恨まれそうでなんとも言えない恐怖がある!」

19090「・・・テっくん、そんなことはないですよ」

テクパトル「はぁ・・・いいさ、俺だって男だ、美月と結婚出来たんだからなんだってしてやるからな!」

半ば自棄でチャイムを押す

ピンポン、という軽快な音がテクパトルの首を跳ねるギロチンの音だ

随分愉快な音だなぁ、とテクパトルは笑った


美鈴「はいはーい!あら、みんな来たんだ!」

美琴「ただいま、お母さん」

上条「久しぶりです」



410 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:19:45.76 ID:PBRAG6DF0
19090「美月もお久しぶりです!」

美鈴「いやぁ、四人とも元気そうで・・・ってどうしたの、テクパトル君顔が引き攣ってるけど・・・」

テクパトル「義母さん!」

ずいっ、とテクパトルが頭を下げる

腰が痛くなりそうなほどに深く

テクパトル「む、娘さんを・・・」

美鈴「?」


テクパトル「娘さんを傷物にしてしまいましたぁ!」

一同「」





美鈴「あっはは!なんだ、結婚の挨拶に来たってわけ!」

腹を抱えて大笑いする美鈴

テクパトル「・・・昨日電話したじゃないか」

美鈴「だって美月ちゃんと、上条君と美琴ちゃんと一緒に来るってだけ言ってたから・・・」

上条「そんなに笑わないでやって下さいよ・・・」

美鈴「だって娘さんを傷物にしてしまいましたぁぁ!なんて言われても!」

ゲラゲラと笑いながら、美鈴がテクパトルの肩をバンバンと叩く

テクパトル「・・・」



411 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:20:11.99 ID:PBRAG6DF0
19090「お、お母さん・・・あんまりテっくんをいじめないで下さい」

美鈴「はぁ・・・あはは、ゴメンゴメン!」

美琴「ったく・・・それで、お父さんは?」

美鈴「あぁ、パパなら今風呂に入ってるよん」

上条「風呂?なんで?」

美鈴「さっき外国から帰ってきたばっかでさぁ・・・パパ」

美琴「あぁ、昨日私達が帰ってくるって急に聞いたから・・・ね」

美鈴「そうそう、だから昨日は仕事のあとホテルにも行かないで飛行機だったんだって」

上条「そっか・・・なんか旅掛さんに悪いことしちゃったな」

19090「・・・ですが、結婚の挨拶はお父さんとお母さんの二人に聞いて欲しかったんです」

美鈴「分かってる、だからパパにも教えたんだし」

美琴「・・・なんか私達は場違いな気がするわね」

テクパトル「いや、二人がいないと緩衝材がまるでないから!」

美琴「なんで?」

テクパトル「お前達この状況を楽しんでやがるだろ!」

上条「いや、何が?」

テクパトル「あぁもう!なんで俺はこんな所に来ちゃったんだろうなぁ!」


旅掛「なんでって、結婚の挨拶なんだろ?」

一同「どわぁ!」



412 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:20:38.95 ID:PBRAG6DF0


美琴「い、いきなり出てこないでよ!」

旅掛「な、なんでそんなに俺が責められないといけないんだ!?」

上条「旅掛さん・・・そんなの、今の空気で分かるでしょ」

テクパトル「義父さんも揃ったか・・・」

はぁ、とテクパトルがため息をつく

旅掛「ん、なんだ?」

テクパトル「折り入って大切な話があるんだ」

美鈴「パパ、ちゃんと聞いてあげてね」

テクパトル「・・・あ、あれだ・・・その」

旅掛「?」

しん、とした部屋の中

少ししてからテクパトルが口を開いた


テクパトル「娘さんを・・・美月を俺に下さい!」

旅掛「嫌だぁぁぁ!」

一同「」


テクパトル、結婚の挨拶編



413 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:21:40.41 ID:PBRAG6DF0


テクパトル「な、なんで嫌なんだよ!?っていうか結婚のあいさつだって知ってたんじゃないか、いいだろ!?」

旅掛「嫌だ!絶対に許さないからなぁ!」

美琴「ちょっとお父さん!なんでなのよ!」

旅掛「だ・・・だってまだ美月は14歳なんだろ!」

上条「い、いや・・・戸籍がないから」

旅掛「早い早い!二人は付き合ってどれくらいなんだ!」

テクパトル「十分過ぎるくらい時間は過ぎてるよ!」

美鈴「パパ・・・そりゃ娘が結婚するのはちょっと複雑だけどさぁ」

旅掛「だろ!?」

美鈴「でも娘の幸せを祈るのが親の役目ってもんじゃない」

19090「む、娘・・・ですか」

19090号が照れ臭そうな顔をする

自分を普通に娘扱いしてくれるのは、とても嬉しかった

上条「そうそう・・・俺と美琴のことは認めてくれてるのに」

旅掛「あ、あれだ!付き合うのと結婚するのは大分違うと思うんだ!」

テクパトル「・・・いいさ、認めてもらえなくても」

19090「テ、テっくん!?」

美琴「ちょっと、諦めるつもり!?」

テクパトル「アンタに認めてもらえなくても俺は美月と結婚するからなぁ!今更諦めるわけにはいかねぇ!」

414 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:22:21.04 ID:PBRAG6DF0
美鈴「きゃー、カッコイイ!」

上条「旅掛さん、アンタ情けないぞ・・・」

テクパトル「いいか、俺は美月を愛してる!だから結婚するからなぁ!」

19090「//」

旅掛「くっ・・・!」

テクパトル「だから、認めてくれよ!」

旅掛「美鈴・・・まさかこんなに、二人の愛が固いなんて思ってなかったよ!」

美鈴「パパ・・・元気出して」

おいおい、と二人が涙を流す

上条(なんだこのコント)

美琴(知らないわよ)

テクパトル「・・・ま、まぁそういうわけだ・・・美月を俺の奥さんにしたんだが・・・」

旅掛「した?したいじゃなくてか?」

テクパトル「あぁ・・・先に結婚の契りを交わしたから」

旅掛「あぁぁぁ!聞いた!?ねぇ聞いた美鈴!?」

美鈴「聞いた聞いた!少し不良な彼氏は、私達の娘と強引に婚約を交わした!」

旅掛「俺達の了承を得るよりも早く、二人は結婚したんだぁ!」

テクパトル「・・・そりゃ申し訳なかったよ、順番は違ったと思うさ・・・」

19090「で、ですが・・・その、出来る限り・・・い、急ぎたくて」



415 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/09(水) 16:23:09.94 ID:PBRAG6DF0
旅掛「・・・急ぎたかったのか?」

テクパトル「・・・ほら、時期を逃すと・・・また先延ばしにしてしまいそうで」

上条「・・・なんか分かるな、その気持ち」

美鈴「・・・そこまで愛が深いなら・・・まぁ、順番については言わないでおこうかな」

19090「あ、ありがとうございます!」

テクパトル「・・・それで・・・さ」

旅掛「・・・お許しが欲しかったんだろ、まぁ・・・いいけどさぁ!」

旅掛が複雑そうな顔をする

旅掛「でも娘が嫁に行くだなんて寂しいよぉ!」

上条「駄々こねるな、いい歳して!」

旅掛「だって自分の大切な娘が男の所有物になるだなんて!」

テクパトル「所有物だなんて言い方するなよ・・・」

19090「で、でもテっくんの所有物なら・・・//」

旅掛「美鈴!娘とその旦那がイチャイチャしてる!」

美鈴「パパ、私達も負けてられないわよ!」

美琴「そういう問題じゃないでしょ!」

テクパトル「あぁもう!とにかく承諾は得た、俺は学園都市に帰る…」


美琴「あ、でも学園都市に向かうバスは今日はもうないわよ?」

テクパトル「・・・は?」

上条「たしか・・・次は二日後だっけ」

テクパトル「え?」

19090「あ、ですから・・・学園都市に帰れるのは二日後、ということになります」

テクパトル「ん?」

美鈴「よかったねパパ、テクパトル君と二日間みっちり話せるじゃない!」

旅掛「そいつはよかった、やっぱり義理の息子になる男とは話をしておきたいからなぁ!」

テクパトル「な、なんだって・・・」

テクパトルが頭を抱える

上条がドンマイ、と小さく言ったのが分かった


テクパトル「不幸だぁぁぁぁ!」

416 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 14:42:38.40 ID:Vm9vcSrX0

旅掛「そんでそんで、テクパトル君と美月はいつになったら子供を作るんだ?」

上条「旅掛さん、もう作ってるみたいですよ」

旅掛「なにぃ!?」

テクパトル「な、何を言ってるんだ上条!?」

上条「いや、だって…」

美鈴「ホントホント!?」

テクパトル「待て、なんで食いついてくるんだよ!?」

美鈴「そりゃ早く孫の顔が見たいからだよ!!」

テクパトル「まだだからなぁ!!」

19090「//」

旅掛「この反応を見る限り、マジだな!?」

美琴「お父さん…そんな焦らないの」

旅掛「おぉぉぉぉ!!!上条君と美琴もやってるんだろうし、父さんは悲しいぞぉ!!」

美琴「だ、だから何言ってるのよ!?」

旅掛「ちくしょう、ちくしょう!!」

テクパトル「義父さん…アンタ、何がしたいんだよ」

美鈴「いやぁ、でも二人ももう子作りしてるのかぁ…」

テクパトル(もってなんだよ…)

417 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 15:24:26.44 ID:Vm9vcSrX0
旅掛「…い、いいか!!テクパトル君」

テクパトル「な、なんだよ…」

旅掛「…美月も胸が弱いんだろう?」コソッ

テクパトル「」

旅掛「いやぁ、そうだよなぁ…美琴もそうみたいだしさぁ」コソッ

テクパトル「ア、アンタ…自分の娘の弱いところを知ってどうするんだよ…」コソッ

旅掛「御坂家は代々胸が弱いって決まってるんだ、だからきっと…」

テクパトル「いやいやそういうのって遺伝じゃねぇだろ!!」

上条「?遺伝がどうかしたのか?」

テクパトル「あ、いや…」

旅掛「だから、だ…夜に疲れちまう時は、相手の胸を重点的に責めて…」

テクパトル「アンタいったいなんなんだよ!?修学旅行の高校生か!?」

美琴(さっきから何話してるのかしら?)

19090(…遺伝、となると…髪の毛が茶色いことでしょうか?)

美鈴(ははーん、胸の話だね)

上条「なぁ、さっきからどうしたんだ?」

旅掛「いやぁ、テクパトル君が最近セックスが淡泊で困ってるって…」

テクパトル「まったくもって言ってることが違う!!!」

上条「な、なんだ…そうなのか?」

テクパトル「真に受けるな!!」

美鈴「でも、夫婦にとっては大事な問題だね…」

テクパトル「人の話を聞かないのですかぁぁぁぁ!!!」

418 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 15:42:57.20 ID:Vm9vcSrX0

上条「…にしても、この家にお邪魔するのも久々だなぁ…」

美鈴「ま、学園都市から遠いからね」

美琴「…出来れば、月に一回くらいは帰ってきたいんだけどね…中々」

19090「そうですね…なんだかんだ、出入りには制限がつきますし」

テクパトル「…義父さんと義母さんは、あんまり一緒にはいられないんだよな」

美鈴「まぁね、パパは海外での仕事がほとんどだもん」

旅掛「…そりゃ、少しは帰ってきたりもするけどさ」

上条「…それで、夫婦としての絆は…その、薄れたりしないんですか」

旅掛「?なんだ、ずいぶん珍しいこと聞いてくるな」

美鈴「前向きな上条君らしくないね」

上条「いや…美琴と付き合ってから分かったんだけど、好きな人と離れてるって、一日だけでも相当悲しいことなんだ」

19090「…そうですね、美月もそう思います」

旅掛「…夫婦ってのは、そういうもんなのさ」

ソファーにぐでん、と寝転がってから旅掛が笑う

旅掛「近くにいると、逆にくすぐったいのさ…愛してはいるけど、愛しているなんて言えないし、そう認めるのも恥ずかしくなってくる」

テクパトル「…そんなもんか」

旅掛「新婚の君達には分からないだろうがな」

美鈴「まぁ、パパが常に愛してるなんて言ってきたら浮気とか疑うよ」

旅掛「な、俺達の間には別に言葉なんていらないし、言葉にする意味もない」

上条「…それで、信じられますか?」

旅掛「もちろん」

419 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 16:02:41.29 ID:Vm9vcSrX0
上条「な、なんで?」

旅掛「そりゃ、昔の俺が選んだんだぜ?」

テクパトル(これまた随分な理由だな…)

旅掛「まぁそれに、浮気するような図太さは美鈴にはないしさ」

美鈴「わ、私だって結構図太いぞぉ!?」

旅掛「無理無理、美鈴には出来ないっての」ケラケラ

美鈴「きーっ!!上条君、私と浮気しよう!」

上条「いやいや意味が分からないですよ!!」

美鈴「じゃあテクパトル君!!」

テクパトル「俺には妻がいる」

美鈴「あーーー!!!」

美琴「お、お父さんってば…」

旅掛「いいんだって、美鈴のそういう純粋なところに俺は惹かれたんだし」

美鈴「パパったら//」

テクパトル「めんどくっせぇ夫婦だな」

19090「そ、それを言ったらダメですよ」

テクパトル「…っと、そうそう…ついでにお土産持ってきたんだった」

美鈴「え、なになに!?」

テクパトル「義父さんにはこれ…」

旅掛「おぉ!!会社員に最近人気のキャリーバッグじゃねぇか!!!」

上条「ほら、旅掛さんって海外での仕事が多いから」

旅掛「サンキュー!!こいつは助かる!」


420 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 16:36:17.23 ID:Vm9vcSrX0
テクパトル「義母さんには香水を」

美鈴「!!これ学園都市限定販売のヤツじゃん!!」

上条「たしか、10月までしか販売しないんだっけか」

美琴「そうそう、期間限定、しかも学園都市だけでの販売って…」

19090「メーカーも大胆なことをしますよね」

テクパトル「たしか若者に向けた、ちょっと甘い香りの香水なんだっけ」

旅掛「へぇ…」

美鈴「これゲットできないと思ってたんだ、ありがと!!」

美琴「そんなに嬉しいもんなの?」

旅掛「美鈴は香水とか化粧品、大好きだからな」

美鈴「そりゃ、女ならね!!」

19090(…美月もそういうの、買った方がいいのでしょうか)

テクパトル(美月にはナチュラルメイクでいてほしいなぁ)

上条「…そういえば、美琴は化粧とかしないよな」

美琴「うん、だって肌が荒れそうじゃない」

上条「…まぁ、生体電気操ればある程度は肌の潤いとか保てそうだけど」

美鈴「!!み、美琴ちゃんったらそんなことまで出来るの!?」

美琴「し、しないわよそんなこと!!」

テクパトル「ってことは、やろうと思えばできるのか」

美鈴「羨ましい!!!」

美琴「し、しないってば!!!」

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/10(木) 17:14:00.62 ID:/yfpFK7Vo
確かに中学2年生でセックス三昧とか普通に考えたらDQNまっしぐらだよなwwww
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/10(木) 20:40:23.45 ID:i/wMHxbco
>>421
俺たちの県はビッチばかりだとは思わんかね
中学生のころからずっこんばっこんずっこんばっこんと
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/10(木) 21:40:24.88 ID:rttpcEy6o
なにそれ長崎行きたい
424 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 22:22:48.77 ID:Vm9vcSrX0
なにそれ長崎行きたい
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/10(木) 22:27:45.78 ID:/CfRxf7M0
>>424
おいwwwwwwww
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 23:13:05.33 ID:fSqD+58bo
セピア色の曇天長崎・・・(´・ω・`)
427 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/10(木) 23:16:04.18 ID:Vm9vcSrX0
上条「たしか、生体電気操るのって学校で禁止されてるんだっけ」

美琴「そ、そうなのよ!!だからしないわよ!!」

テクパトル「てことはなにか、美月は別にやってもいいのか」

19090「!?」

美鈴「い、いいなぁ…お肌はプルンプルンのままで、胸も大きく、脂肪は燃やしやすく、なんて出来たら…」

旅掛「美鈴は今でも十分だろ」

美鈴「もう、パパったらぁ!!」バシバシ

上条「…?どうした、19090号」

19090(と、ということは…美月は上手くすれば、胸は大きく、脚やお腹は細く、お尻は綺麗な形のナイスバディーなグラマラスウーマンになれるということですか!?)

テクパトル(あらぬ期待を抱いている気がする)

19090(そ、そうなったら毎晩テっくんに求められて…)カァッ

テクパトル(なんで顔が赤くなってるんだぁ!?)

上条「…でもさ、やっぱり自然が一番だよな」

美琴「あ、それは私も同感かな」

テクパトル「あぁ、俺も」

19090(…あ、あれ?)

テクパトル「それに、別に容姿だけで美月を選んだわけじゃないさ」

19090「テっくん…」

美鈴(若いねぇ)

旅掛(青いな)

428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 23:45:51.93 ID:u5Ka2IIfo
おつにゃんだよ!
429 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/11(金) 21:26:19.63 ID:vZdET7er0
上条「・・・そうだ、昼ご飯はどうするんですか?」

旅掛「あー、そういえばそろそろ正午だな」

テクパトル「出前か?」

美鈴「いやいや、みんなが来たことだし、しかも結婚の挨拶ときた!」

19090「そ、そうですね」

美鈴「ここはやっぱり私の手料理でお祝いといきましょ!」

美琴「あ、じゃあ手伝うわ」

19090「み、美月も手伝います!」

美鈴「そう?じゃあお願いするわ!」

上条「あ、俺も・・・」

美琴「はいはい、男はゆっくりくつろいどけばいいのよ!」

19090「テっくんもたまにはゆっくりして下さいね」

テクパトル「・・・お言葉に甘えるか」

旅掛「んじゃ、期待してるからな美鈴!」

美鈴「任せて!」


キッチンに立つ三人を見つめながら、男達はくだらない話をしていた

旅掛「アレイスターと一緒に暮らしてる?あいつ気難しいだろ」

テクパトル「最近じゃ丸くなったんだ」

旅掛「へぇ、あの統括理事長様が」

430 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/11(金) 21:26:49.06 ID:vZdET7er0
テクパトル(アレイスターが魔術師だったということは知らないのか)

上条「でもびっくりですよね、旅掛さんがアレイスターと知り合いなんて」

旅掛「こっちは結構危ない橋を渡る仕事だからな、裏での繋がりも多いのさ」

テクパトル「あんまり義母さんに心配を掛けるなよ」

旅掛「なんだ、美鈴はしっかりしてるし大丈夫だって」

テクパトル「アンタなぁ・・・」

旅掛「それに絶対にまずいことにはならないようにしてる、ここにたまに帰ってきて美鈴の手料理を食うのが俺は好きだからな」

上条「・・・タフですね」

旅掛「ところがどっこい・・・最近腹が出てきてな」

テクパトル「歳だから仕方あるまい」

旅掛「歳!?まだ40にもなってないのに歳!?」

上条「・・・俺の父さんも腹が気になるって言ってたな」

テクパトル「酒飲んでタバコ吸ってってのを繰り返してるんだろ」

旅掛「ぐはぁっ!」

テクパトル「そりゃ太るに決まってるな」

上条「よくそれで美鈴さんは何も言いませんね」

旅掛「いや・・・あいつを抱くとき、ちょっと動きにくかったり・・・」

上条「義理の両親の性生活とか知りたくないから言わないで!」

旅掛「何を、君達は親がズッコンバッコンして生まれてきたんだぞ?まさか鸛が運んできてくれたとか思ってるのか?」

上条「そうは言わないけど・・・」


431 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/11(金) 21:27:15.44 ID:vZdET7er0
テクパトル「なんというか、気色悪いもんなんだ」

旅掛「うん、知ってる」

上条「ならなんで言うんだよ!」

旅掛「ははは!いいか、美鈴はそういう時は今だって十分喘ぐんだ!」

テクパトル「知らねぇよ!誰も得しない情報だ!」

旅掛「はっはーん!美月が将来大人になったら、美鈴みたいになるんだぞ!」

テクパトル「あ、あんな恥を知らない女にさせるもんか!」


美鈴「ちょっと!誰が恥を知らないですって!?」

テクパトル「アンタだよアンタ!いい歳して酒飲んでは酔いやがって!」

上条「まぁそれは美琴や19090号も受け継いでるけどな」

旅掛「な、まさか美琴や美月に酒を飲ませて・・・!」

テクパトル「ち、違う!意図的にではなく事故でだ!垣根が無理矢理飲ませたり!」

美鈴「あぁ、垣根君ならやりそうだね」

フライパンで卵焼きを作りながら美鈴が笑う

テクパトル「だから、決してわざとじゃ・・・」

旅掛「あぁ!昔は、美琴だって優等生だったのに!」

美琴「い、今は違うって言いたいの!?」

旅掛「いつから酒は飲むわ男に抱かれるわな中学生になったんだ!」

上条「いや、そんな言い方・・・」


432 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/11(金) 21:27:43.96 ID:vZdET7er0
旅掛「俺と美鈴はな!未成年の時に飲酒なんてしなかった、その分エッチは毎日してたが!」

テクパトル「だからそういう情報はいらねぇよ!」

旅掛「はぁ・・・そういや、垣根君は元気か」

美琴「元気も元気よ、うざったいくらい」

美鈴「あの子って面白いわよね」

テクパトル「頭がおかしい、の間違いじゃないか」

上条「だよな」

旅掛「でも頭はいいんだろ、もし就職に困ってたら俺の会社に来いって言ってくれ」

テクパトル「アンタ、会社に就職してたのか」

旅掛「ひどい言い草!」

美鈴「でも垣根君なら就職に困ることはないでしょ」

美琴「頭はいい、見た目完璧、礼儀もやるときは出来る・・・だからね」

上条「ステータスが揃ってるよなぁ・・・」

旅掛「上条君、君も将来ちゃんと就職してくれよ」

上条「わ、分かってますよ」

旅掛「収入が安定してなかったら、さすがに美琴を簡単には嫁に出せないからな」

上条「う・・・」

美琴「当たり前じゃない、結婚って嫁と責任を背負う物なのよ」

上条「美琴まで言うのか!?」


433 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/11(金) 21:28:13.57 ID:vZdET7er0
19090「お義兄様、しっかり自覚を持って下さいね」

上条「わ、分かってる・・・美琴と結ばれるためなら努力なんていくらでも出来るさ」

美琴「もう、当麻ったら//」

テクパトル「・・・今は何作ってるんだ?」

19090「美月はスパゲティーを作ってます」

テクパトル「お、いいな」

旅掛「色々作ってくれよな!」

美鈴「分かってるって、パパは食いしん坊だからね」

テクパトル「そして太るんだな」

旅掛「それを言うなぁ!」

テクパトル「・・・」

じーっ、とテクパトルが19090号のエプロン姿を見つめる

昔は、エプロン姿を見ても「手伝ってくれてありがたい」という風な感想を抱いていた

しかし今は違い、「立派な奥さんだな」と思うようになった

何より、後ろ姿が美しいのだ

テクパトルにとっては堪らない

434 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/12(土) 18:55:28.09 ID:+a18lkWf0
テクパトル「背中っていいよなぁ」

旅掛「なにぃ!?御坂家の婿になるなら胸が好きになれ!」

テクパトル「な、なんだよその決まりは!?」

上条「っていうか旅掛さん、そんなの実の娘の前で言う台詞じゃ・・・」

旅掛「いいか!胸ってのは女にしかない膨らみだ!」

美琴「ちょっとお父さん!」

旅掛「女子供は黙ってろ!こいつは男のロマンを賭けた話だ!」

上条「いや違いますから!」

テクパトル「ふん、胸だなんて随分安直だな」

旅掛「な・・・」

テクパトル「人の魅力は背中にある、去っていく時、ふと見送る時、背中で大切な何かを語ってくれる相手こそ尊敬に値する!」

旅掛「はっはーん!君は女に背負われたいなんてなよなよした考えなのか!」

テクパトル「なに!?」

旅掛「背中を味わうには背負われなきゃなぁ、胸を味わうなら抱きしめ合えばいいんだ!」

テクパトル「抱き合うだけの愛情だなんて寂しいぞ!」

旅掛「はん!抱きしめ合う以上の安心感を得る行為なんてそうはないぞ!」

美鈴「パパったら分かってるぅ!」

19090「たしかに、好きな人に抱きしめられると安心しますね」

テクパトル「な・・・美月までそう言うのか!?」


435 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/12(土) 18:55:53.77 ID:+a18lkWf0
19090「あ、ですがテっくんの意見も分かりますよ!?」

上条「旅掛さん・・・アンタもういい歳なんだからそういう話は控えたほうが・・・」

旅掛「分かっていないな!男はいつまで経っても男なんだ!綺麗な女を見れば目で追ってしまい、谷間があれば覗き込んでしまう!」

美鈴「ちょっと、それどういう意味よ!?」

旅掛「ひゃいっ!?ち、違う!それは一般的な男だが俺は違って・・・」

美鈴「パパのエッチ!万年発情期!」

旅掛「ひでぇ!」

美琴「・・・ほら、くだらない話してないで昼ご飯にしましょう」

上条「あぁ、美琴だけはまともだ」

テクパトル「・・・はぁ、一時休戦かな」

美鈴「パパ!」

旅掛「すいませんでしたぁ!」

19090(お父さんはお母さんに頭が上がらないんですね)



上条「はー!食った食った!」

美琴「お粗末様、美味しかった?」

上条「あぁ、最高!」

テクパトル「・・・美月の作ったの、特に美味しかった」

19090「あ、ありがとうございます!」

436 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/12(土) 18:56:20.41 ID:+a18lkWf0
旅掛「やっぱり妻の手料理が一番だよなぁ・・・」

美鈴「なら毎月帰って来ればいいのにさぁ・・・」

昼食を終えた6人は、それぞれが別々に話をしていた

美琴「お父さんって仕事はかなり忙しいんだっけ」

旅掛「最近は特にかなりな」

上条「?なんでですか」

旅掛「学園都市が規制を緩くしたことで学園都市製の電化製品なんかが手に入るようになっただろ」

テクパトル「あぁ」

旅掛「となると、それを日本中・・・いや、世界中の電化製品関係の会社が欲しがるな」

19090「至極当然な話ですね」

旅掛「俺はこれでも一応、ビジネスについては知識がある」

テクパトル「・・・つまり、電化製品を上手く売る方法を教えなきゃいけないのか」

旅掛「いや、違う」

上条「?」

旅掛「どうすれば自分の会社にだけ商品を独占出来るか、どうやって相手の会社を出し抜けるかを教えるんだ」

美琴「な、なんか血みどろの争いって感じね」

旅掛「それを教えると、互いの会社が出来る限り安い価格で商品を売る」

美鈴「んー・・・そうだね」

旅掛「ならば、今度は如何に安く商品を仕入れるか、という話になる」

テクパトル「・・・だが、学園都市製の商品は値段は簡単に下がらないだろ」


437 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/12(土) 18:56:52.48 ID:+a18lkWf0
旅掛「あぁ、となると最終的に始まるのは学園都市製の製品を安価で作る方法の模索さ」

19090「ですが・・・技術的に厳しいものがありますよね」

旅掛「そう、技術者を全ての会社が欲する、そこに俺が颯爽登場!」

美琴「技術者を紹介してお金を巻き上げるのね」

上条「あ、悪徳過ぎる・・・」

旅掛「おいおい、俺は世の中に足りない物を示してるだけだ、技術者が足りないならそいつを用意するし金がないなら資金を提供する」

19090「それが上手くいくのは流石ですね・・・」

旅掛「こっちは相手に利益になることをしているから文句なんて言われない、寧ろ毎月感謝の手紙が送られてくるくらいだからな」

美鈴「あれ、そんなに高評価なんだ」

テクパトル「最初から最善の策を教えず、少しずつ小出しにしてはその度金を巻き上げるのか」

旅掛「言い方が悪いな、いきなり最終手段だけ教えても意味がないだろ?」

テクパトル「・・・そいつは言い方の問題だ」

旅掛「まぁまぁ、とにかく学園都市製の家電だけでそんな具合だ・・・更には第三次世界大戦が終わって、世の中には足りない物が一段と増えた」

上条「・・・物資ですか」

旅掛「それもあるが、実際は指導者やらボランティアなんかだな」

美琴「・・・そんな物まで提供してるの?」

旅掛「提供とは違うな、こっちはコネがあるからボランティア団体やら政治家に連絡を簡単に取れる」

上条「それで、必要とされている人間を必要としている地域に・・・紹介するんですか」

旅掛「あぁ、全く動かないで電話一本だけの仕事だ、そのくせ地域では救世主扱いされる」


438 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/12(土) 18:57:22.40 ID:+a18lkWf0
19090「ぷひー・・・アレイちゃん以上の悪どさです」

テクパトル「・・・だがその割にこの家やらなんやら、金持ちってほどのイメージではないな」

美鈴「・・・そうなのよねぇ、なーんか収入はどっかに消えてるみたいだし」

旅掛「う・・・」

美鈴「そうそう、さっきパパの鞄の中を整理してたら貧しい地域の孤児院からの感謝状が入ってたよ、無償で資金提供したんだって?」

美琴「お父さん・・・」

上条「旅掛さん!見直しましたよ!」

旅掛「し、知らないなそんなこと!」

美鈴「とぼけたって無駄無駄無駄無駄!私はパパが優しいって知ってるからね!」

19090「さすが美月のお父さんです!」

旅掛「は、ははは!そうか!?」

テクパトル「あくどいことして稼いだ金なんだがな」

旅掛「金に綺麗も汚いもあるか、奴らは既に物好きの手垢でびっしりさ!」

テクパトル「・・・だがな、一応助言だが・・・そういう仕事は裏では怨みを買うぞ」

旅掛「?なんだ、自棄に的を射た発言だな」

テクパトル「裏の世界とコネがある、そいつは味方が裏であると共に、敵も裏だということになる」

美鈴「そ、そっか・・・」

テクパトル「今まではそうでもなかっただろうが、いつマフィアやらギャングやらが拳銃持ってホテルを襲ってこないとも限らない」

旅掛「それで終わるなら、それまでの人生さ」

美琴「で、でもそんな死に方はしないでよね」

旅掛「な、なんだよ、自棄にしおらしいな」

19090「そうですよ、お父さんには美月達の子供を見てもらわなきゃいけませんから!」

上条「死ぬならそれからにしてくれよ!」

旅掛「・・・分かってる、そいつは約束してやるよ」

ニカリと笑って、旅掛が胸を叩く

あまりに強く叩きすぎたか、少し苦しそうなのが親父臭かったが


439 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/12(土) 21:12:59.72 ID:+a18lkWf0
上条「…さて、御飯も終えましたし…」

旅掛「なんだ、どっか行くのか?」

上条「いや、そうじゃないけど…」

美琴「この家って、帰ってくるのはいいけどいざってなるとやることないのよね」

テクパトル「家なんてそんなものだろう」

美鈴「えー、家は楽しいよ!」

上条(…どういう基準なんだろう)

テクパトル「…何をするっていうのもないな、ゴロゴロしてればいいじゃないか」

19090「そうしていると、一日が無駄に過ぎますよ?」

旅掛「…なんか、美琴も美月も美鈴に似てきたよなぁ…」

美鈴「ちょっと、私がそういう厳しい人だってこと?」

旅掛「し、しっかりしてるってことさ!!」

上条「…俺は…そうだな、ちょっと付近を散歩してこようかな」

美琴「あ、私も着いていくわ」

旅掛「えぇぇ!!美琴はパパに優しく肩叩きしてくれるんじゃないの!?」

美琴「あぁ、電気流してほしいの?」ビリビリ

旅掛「じょうだーん!!冗談でーしたぁ!!!」

テクパトル「焦ってるじゃないか…俺も散歩するかな」

19090「では美月も…お父さんとお母さんも、二人きりの時間が必要でしょう?」

美鈴「ありゃりゃ、気遣ってもらっちゃって悪いわね」

旅掛「んじゃ、気をつけろな」

上条「多分1時間くらいで帰ってきますよ」

美琴「それじゃ、行ってきます」


440 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:40:16.67 ID:74aU4GAp0


上条「暑いな・・・」

美琴「もう9月も半ばなのに・・・」

テクパトル「今地球は温暖化してるんだ・・・」

19090「・・・それにしても暑すぎますよね」

上条「あぁ」

石垣の目立つ家の前を四人は歩いていた

美琴は覚えていないが、昔少し交流のあったご近所さんの家だったりもする

美琴「・・・こうして歩いてると昔を思い出すわ」

テクパトル「学園都市に入る前か?」

美琴「うん・・・って言っても幼稚園くらいまでしかこっちにはいなかったんだけどね」

19090「・・・小学生が親元を離れて暮らすなんて、珍しいですからね」

美琴「・・・みんな、私ならすごい能力者になれる!って言ってたのは覚えてる」

上条「昔から頭よかったのか?」

美琴「うーん・・・物覚えはよかったわね」

テクパトル「へぇ」

美琴「・・・でもさ、もしあの時学園都市に行ってなかったらどうなってたのかな」

美琴がぽつりと呟く

人生にもしも、なんて物はないが

学園都市に行かなければ上条には出会わなかった

妹達が生まれることもなかったし、一方通行は恐らく悪の道を進むばかりだっただろう


441 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:40:42.51 ID:74aU4GAp0
テクパトル「・・・義姉さんは、この辺に住んでいるヤツらを覚えてるか?」

美琴「ううん、全然・・・もしかしたら昔は仲良しだったかもしれないけど」

19090「・・・なんだか、少し切ないですよね」

美琴「でもさ、人は何かを忘れなきゃ大切なことを覚えていられないと思うの」

上条「・・・」

だとすれば上条は、何か大切なことを覚えておくために記憶を失ったのか

上条(そうかもしれないな)

美琴「・・・あ、そうそう・・・たしかこの先に美味しい駄菓子屋があるの!」

テクパトル「?なんだよ急に」

美琴「昔よくお母さんに連れてきてもらったんだ」

嬉しそうに、美琴が駆けていく

長く続いた石垣、その先にある交差点を左へ曲がる

右側には広い空地が、そして左側には

美琴「・・・あ、あれ?」

上条「・・・駄菓子屋・・・ないな」

そこにあったのは小さな一軒家だった

比較的新しい物だろう、壁はまだ綺麗なままだ

テクパトル「・・・義姉さんがここにいたのは8年くらい前だろ、仕方ないさ」

19090「きっと潰れてしまったんですね・・・」

美琴「・・・そっか」

442 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:41:11.25 ID:74aU4GAp0
少し悲しそうな顔をして、美琴がため息をつく

美鈴に買ってもらった駄菓子は、なぜか他のお菓子より美味しかったのを覚えている

幼稚園の運動会では、300円の予算で如何にたくさんのお菓子を買うか考えていた

遠足なんかでは、友達と買ってきたお菓子を交換もした

美琴「・・・」

テクパトル「他に思い出の場所はないのか?」

美琴「んー・・・幼稚園の時にあった夏祭りで、近くの神社に行ったわね」

上条「神社か」

19090「ここから近いのですか?」

美琴「歩いて15分くらいかな・・・行ってみる?」

上条「あぁ」


世間は普通の平日だ、学生は学校に、社会人は職場にいる時間帯である

横断歩道には彼ら以外はいない

行き交うのは少しの車と自転車に乗ったお年寄りだけだ

大切な何かを忘れたような、寂しい住宅街

ふと上条がこんなことを言い出す

上条「なぁ、横断歩道の黒い所は溶岩だから踏んじゃダメ・・・ってあったよな」

美琴「あ、それ私達もやったわね」

19090「?なんですか、それは」

上条「白い所だけ踏んで進むんだよ、黒い所を踏んだら負けなんだ」


443 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:41:45.10 ID:74aU4GAp0
テクパトル「お前、昔のことは忘れてるんじゃないのか?」

上条「知識は残ってるからさ、やった記憶はないけど」

上条が横断歩道の白い部分に足を乗せる

テクパトル「はは!じゃあこうしてやる!」

ポン、とテクパトルが上条を押す

上条「おわっ!」

崩れた体のバランスを取り戻すため、上条は黒い部分も踏んでしまった

美琴「あはは!当麻の負けね!」

上条「あー・・・なんか分からないけど、多分俺はいつもこれで負けてた気がする・・・」

19090「・・・なんだか、美月も懐かしい感覚がします」

テクパトル「俺達の地域にはそんな習慣は無かったかな」

上条「だろうな」

今考えれば、何が面白い遊びなのだろうか

斬新、というわけではない

上条「・・・っと、それより神社だったな」

美琴「ほら、あそこに林があるでしょ?あの奥にあるのよ」

テクパトル「へぇ、小さな林だな」

美琴「昔、幼稚園の男子達が秘密基地作ってたって聞いたわね」

19090「ひ、秘密基地ですか!胸が躍る単語です!」

美琴「でも大人に危ないって言われて取り壊されたみたい」

上条「そんなもんだよな、秘密基地なんて」

美琴「そうそう・・・あの神社って結構人が通うから、正直全然秘密にはならないのよね」


444 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:42:19.80 ID:74aU4GAp0
人目につきやすい場所にあるのに、一体何が「秘密」なのだろうか

きっとそこに、友達と一緒に向かって遊んだことが

上条「・・・俺も、秘密基地とか作ってたのかな」

19090「お義兄様は似合いそうですね」

テクパトル「・・・そうだな」

美琴「えーっと・・・ここから近道があるんだけど、行ってみる?」

上条「お、行く行く!」

美琴が入ったのは壁に囲まれた少し狭い路地

壁の向こうには民家があって、中では老夫婦がテレビを見ている

19090(な、なんだかドキドキします)

テクパトル(・・・秘密の通路か)

美琴(そうそう、それでここの途中に大きな犬が・・・)

上条(・・・)

美琴が指差した家には、犬なんていなかった

その庭に古ぼけた犬小屋がぽつんと置かれている

手入れなんてしていないのだろう、苔がびっしりと生えている

美琴(あ・・・)

上条(ずっと昔なんだ、仕方ないさ)

テクパトル(・・・)

美琴(・・・うん、行こう)

無理な体勢で少し進むと、美琴が前を指差した


445 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:42:46.38 ID:74aU4GAp0
美琴(あそこの穴を通ったら神社への一本道に続くのよ、林の入口まですぐなんだから!)

19090(あ、あそこを通るんですか?)

美琴が指差したのは、女の子がやっと通れるか、というほどの小さな穴だった

空地の木製の壁に無理矢理開けられた穴なのだろう

美琴(あ、あれ・・・?あんなに小さかったんだ)

上条(・・・美琴と19090号は通れても俺とテクパトルは無理だろうな)

テクパトル(・・・いや、あの壁って低くないか?)

上条(本当だ・・・まぁ空地の壁っぽいからな)

美琴(・・・昔はこの穴を通るしか出来なかったのになぁ)

身を屈めて、美琴と19090号は穴をくぐり抜ける

続いて上条とテクパトルは壁を上から飛び越えた

テクパトル「お、やっぱり空地だったのか」

上条「なんか・・・この立入禁止の札とか懐かしいな」

美琴「あはは、懐かしく感じるわよね」

上条「・・・なんでだろ」

美琴「ほら、それよりこっちに行ったらすぐよ!」

19090「あ、はい!」

テクパトル「・・・行くか」

上条「あぁ」



446 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:43:33.52 ID:74aU4GAp0


林、というには少しばかり小さいだろうか

木々に囲まれた細道を四人は進んでいた

木漏れ日が非常に心地好い

美琴「・・・随分・・・町が変わっててびっくりしたわ」

上条「・・・時間の経過って残酷だよな」

テクパトル「だが時間が経過しなければ明日には進めまい」

19090「・・・思い出の場所が無くなったとしても、思い出は心の中に残り続けますよ」

美琴「・・・うん、そうよね」

テクパトル「・・・お、石段があるんだな」

石段の先には既に鳥居が見えている

上条「はぁ、なんか長いようで短かったな」

美琴「あ、待って!」

美琴が先に行こうとする上条を呼び止める

上条「?どうした、美琴」

美琴「・・・グリコ、しながら上らない?」

19090「!知っています、グーチョキパーで、勝った手の単語分だけ段を上るんですよね!」

テクパトル「へぇ・・・」

上条「いいな、なんか」

美琴「たしか・・・ここの石段は30段くらいだったかしら」

19090「中々楽しめそうですね」

447 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:44:15.37 ID:74aU4GAp0
テクパトル「いつの間にか階段を降りていたなんてことにはならないだろうな」

上条「ならないならない」

美琴「それじゃ、ジャンケンポン!」


美琴「やったぁ!私が一番乗り!」

テクパトル「・・・義姉さん、ジャンケン強すぎだろ」

19090「さすが・・・超能力者は何かを持っていますね」

上条「俺は一回も勝てずかよ!」

美琴「みんなもう上がってきていいわよ」

テクパトル「ったく・・・半分近くリード開かれたまま負けるなんて」

上条「・・・お、なんか立派な鳥居だな」

美琴「昔はこの鳥居でだるまさんが転んだとかやったわね」

19090「・・・神主さんの姿が見当たりませんが」

美琴「あぁ、ここの神主さんって普段はずっと寝てるのよ」

上条「な、なんだそれ」

美琴「結構若い神主さんなんだけどさ・・・常に疲れてる感じだったわね」

テクパトル「・・・ま、少しくらいお賽銭でも入れるか」

賽銭箱に100円を投げ入れてから、テクパトルが手を合わせる

テクパトル「夫婦生活が上手くいきますように」

19090「!み、美月もお願いします!」

上条「あはは、いいなぁそれ」

美琴「私達も結婚したらここにお参り来るわよ!」

上条「け、結婚はだいぶ先なんじゃなかったか?」

美琴「いいから!」

上条「・・・分かりましたよ」

気の強い彼女には逆らえない上条である

448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/13(日) 20:49:05.40 ID:POBEqSNpo
当麻はたぶん給食のデザートとか一つしか食べられなかったんだろうな
449 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 20:54:44.14 ID:74aU4GAp0

上条「…なんか、神社って…神秘だよな」

賽銭箱の近くに座りながら、上条が呟く

美琴「…この独特の雰囲気って落ち着くわよね」

テクパトル「そうか?俺はそうでもないかな」

上条「日本人ならでは…かもしれないかな」

19090「…風が心地いいですね…」

頬を撫でる風が、そっと19090号と美琴の髪を揺らす

上条(あ、横顔美人)

テクパトル(グッジョブ風)

美琴「ちょっと、なにぼーっとしてるのよ」

上条「あ、なんでもない」

テクパトル「…義姉さんは、この神社での思い出とかあるのか?」

美琴「うーん…友達とだるまさんが転んだしたのは覚えてるけど…どんな顔の友達だったかとかは忘れてるわね」

19090「他にはなにか…」

美琴「…あ、告白されたことはある」

上条「な、なんだって!?」

美琴「どんな相手だったか忘れたけど…幼稚園の同級生だったわね」

テクパトル「その頃からモテてたのか」

美琴「モテてたのかな?」

上条「こ、告白されたってどんな風にだよ!?」

美琴「あぁ、断ったから安心して…普通に美琴ちゃんが好き、みたいな感じだったし」

19090「なんだか微笑ましいですね」

450 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 21:00:42.71 ID:74aU4GAp0
>>448

上条「俺も!!俺もデザートジャンケンしたい!」

「は?上条はどうせ負けるんだからいいだろ」

「そうそう、いるだけ無駄だって」

「女にモテるからって調子乗るなよな」

上条「」




美琴「…そう考えたらさ、結構思い出が多いのよね」

上条「…生まれ故郷、か」

上条にとっては、正直他人事のような話だ

彼の生まれ故郷は、学園都市とも言えるから

テクパトル「…思い出ってのは、いつまでも残る物さ」

19090「?テっくんも小さな頃は普通の子供だったのですか?」

テクパトル「…あぁ」

上条「なんか想像がつかないな…いつから組織ってのにはいたんだ?」

テクパトル「気が付いたら、さ…俺達の世界では割と普通の話だ」

美琴「両親が魔術師だった、とか?」

テクパトル「…そういや、俺は両親の顔を知らないんだ」

上条「え…も、もしかして捨て子か?」

テクパトル「あぁ、でも不満はなかったかな…裏路地でボロい服を着て、だけど…友達と言えるような存在はいたし」

19090「…でも、辛かったでしょう?」

テクパトル「道を行く人々が笑っていたり…子供が親に甘えたりしてるのを見て、あぁ…俺もあんな風になりたい、とは思ったかな」

上条「…」

テクパトル「…だが今は幸せだ、あの時の不幸が今の帳尻合わせならむしろ歓迎するさ」

美琴「そっか…アンタもいろいろあったのね」

テクパトル「まぁな」

451 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/13(日) 22:21:30.34 ID:74aU4GAp0
上条「…な、なぁ…告白って、俺がする前にどんくらいされたんだ?」

美琴「あ、もしかして嫉妬してくれてるの!?」

上条「そ、そうじゃなくて…」

テクパトル「…義姉さん、こいつは意外と束縛するタイプだぞ」

上条「ち、違うって!!ただちょっと気になって…」

19090「女性の過去遍歴を気にする男は…その、ちょっと重たいですよ」

上条「」

美琴「そんなことないわよ!!それだけ私のこと真剣に考えてくれてるってことだし//」

テクパトル(あ、惚気ですか)

19090「…テっくんは、告白とかされたことはないんですか?」

テクパトル「お前なぁ…俺がそういうことされる人間に見えるか?」

上条「…なんか、頭堅い上司ってタイプだもんな」

19090「テっくんを悪く言わないでください!」

上条「ご、ごめん」

テクパトル「…そうだな、女性に優しくされるなんてこともなかったし…」

美琴「でもさ、テクパトルって別にモテなさそうってわけじゃないわよね」

テクパトル「別にモテなくてもいいさ」

上条「…俺も、あんまりモテなくてもいいかな」

三人「お前が言うな」

上条「」



美琴「…なんかさ…こうも涼しいと、眠くなってくるわね」

上条「あぁ…でも帰らなきゃなぁ…」

テクパトル「…帰るか」

19090「そうですね、帰りましょうか」

美琴「さて、行きましょうか!」


452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/13(日) 23:24:01.55 ID:8f92EXAu0
神社いきたいな...
453 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 11:22:55.80 ID:pCVCWE5j0


美鈴「はい、パパ」

旅掛「サンキュー」

一方、家に残っていた二人は優雅なティータイムを迎えていた

美鈴の煎れた紅茶を一口飲んでから、旅掛が口を開く

旅掛「・・・娘が結婚するってのは、なんだか不思議な感覚だよな」

美鈴「そうね・・・あの子の生まれ方っての信じられないような話だけど」

自分の愛娘、その人体細胞を用いて作られた軍事クローン

それが、まさか「結婚」するなんて

旅掛「・・・妹達にも、幸せになる権利はあるさ」

美鈴「何言ってるの、妹達じゃなくて私達の娘!」

旅掛「お、そうだな」

美鈴は強い母親だ、並大抵の母親なら妹達の存在を受け入れるなんて出来なかっただろう

自分の選んだ女性は間違いでなかった、旅掛は改めてそう思う

旅掛「・・・俺と美鈴が結婚するって言った時、義父さんもこんな気持ちだったのかな」

美鈴「うーん・・・お父さんはもっとドライだと思うけど」

旅掛「・・・でもさ、今だから分かるよ・・・娘の結婚ってのは、父親にとって自分の結婚より大きなイベントなんだ」

美鈴「あれ、私との結婚は大きなイベントじゃなかったの?」

旅掛「もちろん、それだって大きかったが・・・なんていうか、負担が違うんだ」

美鈴「負担?」


454 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 11:23:26.36 ID:pCVCWE5j0
旅掛「・・・自分が結婚する時は、これから二人で暮らせるっていう幸せを想像してただただ馬鹿みたいに有頂天になってた」

だけどさ、と続ける

旅掛「・・・俺達は結婚して夫婦生活を送る大変さを知ってしまった、だから・・・美琴や美月がこれから味わうだろう苦しみも知っている」

美鈴「・・・そうだね」

旅掛「娘の結婚を認めるってことは、娘に辛い思いをさせる決断を下すのと同じだ」

愛している人と一緒だから乗り越えられる、なんて旅掛は思わない

むしろ「愛している人と結婚した」せいで苦しみが生まれるなんて、若い夫婦には辛すぎる現実だ

旅掛「・・・テクパトル君には・・・美月を幸せにしてもらわなきゃいけない」

美鈴「・・・あの子は生まれ方が他人より不幸だったからね・・・」

旅掛「これから先くらい、ずっと笑顔でいて欲しいな」

親では、その笑顔を守り通すことは難しい

傍にいることの出来る特別な一人だけが、守り通せるのだ

旅掛「・・・テクパトル君なら大丈夫だろうけどな」

美鈴「へぇ・・・パパってテクパトル君のこと、ちゃんと評価してたんだ」

旅掛「仕事は見つけてるし、美月のことを大切にしてる・・・何より妹達に対して優しく接する懐の持ち主だ」

美鈴「簡単なことでは折れない子・・・か」

旅掛「・・・彼なら、きっと美月を幸せに出来る」

紅茶を口に含み、旅掛が笑う

少し温くなった紅茶が妙に甘い

旅掛「・・・にしても、美琴はもう14か・・・早いな」

455 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 11:24:00.18 ID:pCVCWE5j0
美鈴「道理で私達も歳を取るわけだよね」

旅掛「・・・学園都市で色々辛い体験もしたみたいだ」

妹達だけではない

常盤台では周りから距離を置かれ、大人からも敬語で話される環境

美琴のような年頃の少女には、あまりに過酷な状況だろう

旅掛「だからこそ、上条君みたいな純粋なヤツに惚れたんだろうな」

美鈴「私とおんなじだ」

旅掛「?」

美鈴「パパだって昔から純粋だったじゃん」

旅掛「俺は・・・まぁ、純粋かな」

美鈴「・・・上条君って、昔のパパそっくり・・・無茶するし他人のために怪我するし」

旅掛「俺は他人のために動いたことはないさ、最後に自分の利益になりそうなことなら、他人にも手を貸したが」

美鈴「でも、私には優しくしてくれたよね?」

旅掛「あ、あれだよ・・・そりゃ、お前に好かれるために」

美鈴「あれれ?なんで私に好かれたかったのかにゃー?」

ニヤニヤと笑いながら、美鈴が旅掛に詰め寄る

旅掛「と、とにかく!上条君は自分の損得を考えないで他人に優しく出来る、非常に珍しいタイプの青年だ!」

美鈴「あー、ごまかした!」

旅掛「・・・上条君になら、美琴も任せられる」

オホン、と咳ばらい一つ

旅掛「・・・だから、美琴が上条君と結婚したいって言うなら」



美琴「ただいまー!」

旅掛(噂をすれば、か)

456 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 15:30:05.14 ID:pCVCWE5j0
美鈴「やっほ、おかえり!!」

美琴「はぁ…なんかさ、思い出の場所が色々無くなってたわ」

旅掛「はは、時間が経ってるからな」

上条「…でも楽しかったですよ、散歩」

19090「初めての場所を散歩するというのは楽しいですからね!」

テクパトル「…しっかし、まだまだ暑いな」

美鈴「そんなみんなにアイスのプレゼント!」

冷蔵庫の元に行った美鈴が、アイスを手に持って帰ってくる

上条「あ、フルーツの味のやつだ」

美琴「うっわ、懐かしい…なんか子供の頃も食べた気がする」

美鈴「そうそう、昔は美琴ちゃん、グレープが大好きだったんだよ」

美琴「じゃ、私はグレープにしようかな」

上条「俺はオレンジでいいや」

19090「美月は…メロンにします!!」

テクパトル「…グレープ、かな」

上条「うぉ!ヒンヤリしてて気持ちいい!!」

美琴「そんなに強く握ったら溶けるわよ?」

旅掛「でもガキの頃ってさ、外で遊んだあとキンキンに冷えたアイスを顔とかに当てて体冷やしたよなぁ…」

美鈴「今の子供達ってそんなことするのかな?」

テクパトル「するさ、子供なんてそう簡単には変わりはしない」

上条「…あぁ、つめてぇ…」

美琴「ほらほら、早く食べましょうよ」


457 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 15:47:19.18 ID:pCVCWE5j0

上条「くっはぁぁ!!頭に響いたぁぁ!!」

テクパトル「…急いで食べるからだ」

19090「くぅぅぅぅ!!頭に響きました!!」

テクパトル「だ、大丈夫か!?」

美琴(その態度の差は何なのよ)

上条「…でも美味しいなぁ…」

美鈴「子供の頃ってさ、なんか知らないけどアイスの棒とか集めたりしなかった?」

旅掛「あぁ…小さい頃はな」

上条「…俺もそういうことやったのかな?」

美琴「…私はやらなかったわね…」

美鈴「その代わり、美琴ちゃんはアイスの当たり棒を交換しないで大切に取ってたわね」

美琴「あれ、そうだっけ?」

旅掛「そうそう、なんか宝物ボックスなんて作ってたよな」

19090「へぇ…お姉様にもそんな時期があったんですね」

テクパトル「…なんか笑えるな」

美琴「わ、笑わないでよ」

テクパトル「いや、いつもは大人ぶってる義姉さんがなぁ…」クックック

美鈴「あ、なんかテクパトル君悪役っぽい笑い方だね」

テクパトル「」

458 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 16:27:45.29 ID:pCVCWE5j0

上条「…はぁ…落ち着くなぁ…」

テクパトル「…なんかさ…結婚の挨拶終わらせたら気が抜けたよ…」

19090「そ、そんなに緊張してたんですか?」

旅掛「そりゃ緊張するよなぁ」

上条「あ、旅掛さんも緊張したんですか」

旅掛「あぁ、美鈴のお父さんもこれまた頑固でなぁ…」

美鈴「あっれー、そんなことお父さんの前じゃ言えないくせに」

旅掛「う…そ、そうなんだけどさぁ…」

上条(…旅掛さんの結婚の挨拶ってどんなだったんだ?)

美琴(…気になるわよね)

テクパトル「なぁ、どんな風な挨拶したんだ?」

旅掛「な・い・しょ☆」

テクパトル(あ、うぜぇ)

19090「お母さん、どんな挨拶だったんですか?」

美鈴「えーっとね…」

旅掛「ストップストップ!!言ったらだめぇ!」

美琴「なんでよ?そんなに恥ずかしい?」

旅掛「は、初めてだから恥ずかしいの//」

美琴「どんな挨拶だったの」

旅掛「わーかった、分かったからまずは落ち着いて話し合おうぜメーン」

459 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 17:57:36.49 ID:pCVCWE5j0

美鈴「…でさ、パパったら土下座はしたんだけどさぁ…」

旅掛「やめてぇぇぇ!!!」

美鈴が、旅掛の過去についてペラペラとしゃべる

テクパトル「ほぉ、土下座するなんて意外と真摯だったんだな」

上条「そこまでしてでも結婚したかったんだろ」

19090「なんだか、素敵じゃないですか」

美琴「…でも、お父さんが土下座ってなんか笑えるわね」

美鈴「そしたらさ、家のお父さんったらダメダメ!!って言いだして…」

テクパトル「それで、どうしたんだ?」

美鈴「そしたらパパったら泣き出して…」

旅掛「な、泣いてないぞ!?」

美鈴「泣いてたじゃん!!美鈴と結婚できないなら駆け落ちしますって!!」

旅掛「い、言った…気もしないでもない…」

上条(旅掛さんってそんな人だったのか?)

テクパトル(イメージできん)

美琴「…それでそれで?」

美鈴「さすがにお父さんもそれは困るって、許してくれたんだけどさ」

上条「あれ、二人ってそういや学生時代から知り合いだったんじゃ…」

美鈴「いやぁ、実は付き合ってる時も結構反対されてたんだよね」

19090「?なぜですか?」

美鈴「パパって見た目軽そうじゃない?」

テクパトル「アンタもな」

美鈴「さて、訴訟の準備を…」

テクパトル「」


460 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/14(月) 20:30:24.96 ID:pCVCWE5j0

上条「…そろそろ晩飯だけど、どうする?」

旅掛「うーん…適当にでいいんじゃないか?」

19090「適当、と言いますと?」

旅掛「出前とか」

テクパトル「そういう人任せな食事をしていると太りやすいぞ」

旅掛「」ギクッ

美鈴「カロリーとかも自分で管理しなきゃね」

美琴「そうそう、そんなんじゃ将来肥満に…」

旅掛「オォウノゥッ!!言わないで!!それ以上は言わないで!!胃に穴が開いちゃうぅ!」

上条「…それで、どうしますか?」

美鈴「私が作ってもいいんだけど…どうせだし、食べに行かない?」

美琴「うん、近くに美味しいレストランとかあるの?」

美鈴「ふっふーん、オススメのレストランがあるのさ!」

19090「よく行く店なんですか?」

美鈴「まぁね…上条君のお母さんとも一回行ったことあるよん」

上条「え、母さんと?」

美琴「…なんか、もう家族ぐるみの付き合いなのね」

旅掛「待って!!それじゃ結局他人任せな食事…」

テクパトル「その話に耳は塞いだんだろ?問題あるまい」

旅掛「テっくんのいじわる!!」

テクパトル「今度その呼び方をしてみろ、アンタの首と胴体はグッバイベイベーだ」

旅掛「はい」


461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/05/15(火) 02:28:59.83 ID:3HAWutCn0
うぬ…、最近上琴のイチャイチャが少ないような…
前はもっとギシアンしてたのに、最近はさっぱりヤってないですなぁ〜…。

まさか、>>1の上琴愛が冷めたのか?!

上条が最近浮気症になってきたのも気になる
数スレ前までは美琴以外眼中にありません。って感じだったのに!

何だよ!心理定規にドギマギしやがって!
美琴が可哀想だろっ!
これはちょっと美琴がエツァリらへんにくっついて
上条さんに嫉妬というものを学びなおしてもらわなければ!
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/15(火) 02:31:17.73 ID:3HAWutCn0

すまん、sage忘れた俺は死ぬべき。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/15(火) 04:59:00.15 ID:l0zHcwTKo
彼女の両親の前でヤれというのか
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/15(火) 12:25:47.75 ID:3HAWutCn0
いあ、そうではないが

なんか上条さんの愛が前に比べて冷めてるような(ノД`)
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/15(火) 13:16:07.90 ID:8J2taSjjo
毎日ずっこんばっこんやってる描写はちょくちょく入ってるぞ
466 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 15:26:22.02 ID:kl13NUkp0
上琴愛が冷めたのか、という質問ですが

むしろ加熱してます、某たくみなむちさんの同人なんて東京の友達に頭下げてまで買ってもらっている俺に死角はない!!!!


あんまりギシアンさせると、ギャグほのぼのという最初の目的がどうも薄れそうなのと

俺に官能的な文章なんて書けないのと!!!


悲しくなるからでございます

あと、愛は冷めたのではなく固まったのだということです

心理定規にドギマギしやがって?誰だってそうだ!!
オレダッテソウダ


美鈴「やっぱり、レストランって言ったらイタリアンだよね!」

満足げな美鈴は、椅子に座ってニコニコと笑っていた

一同が今いるのは、イタリアンレストランだった

上条「・・・美琴と付き合ったおかげで少しは慣れたけどさぁ・・・」

テクパトル「こういうレストランに頻繁に来るなんて・・・凡人では考えられないな」

旅掛「俺も考えられないな」
上条「?旅掛さんって稼ぎはいいんじゃ・・・」

美琴「あぁ、家はお母さんが財布の紐を握ってるのよ」

美鈴「そうすればパパが浮気する心配もないでしょ?愛にはお金が掛かる、ってね!」

旅掛「んなことしなくても浮気なんてしねぇのにな・・・」

19090「なるほど、奥さんが財布の紐を握れば浮気は防止出来る、と」

テクパトル「なんで俺の方を見ながら・・・」

旅掛「ま、まさかテクパトル君、浮気してるのか!?」

テクパトル「してない!」

19090「テっくんは人に優しいですから、女性が寄って来るでしょう」

テクパトル「・・・美月以上に魅力的な女性がいるとは思えないけどな・・・」

19090「そ、それは嬉しいですが・・・」

美鈴「男には分からないよ、やっぱり妻としては不安なもんなの!」


467 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 15:26:52.53 ID:kl13NUkp0
美琴「そうそう、男って常にフラフラしてるでしょ?」

上条「そりゃ偏見だ・・・」

テクパトル「・・・っと、ここって酒も飲めるんだっけ」

旅掛「なんだ、君も酒飲むのか」

テクパトル「嗜む程度に」

19090「・・・この前なんかベロンベロンでしたよね」

テクパトル「う・・・」

19090「そ、その勢いで子作りまで・・・」

旅掛「テクパトルぅぅうううううう!」

テクパトル「ち、違う!勢いなんかじゃなくて計画的に・・・」

旅掛「尚更悪いんだよ!」

美琴「お父さん、あんまり大声ださないでよ」

上条「周りのお客さんに迷惑ですよ」

美鈴「パパは昔から、変わらないよね」

テクパトル「なんだ、昔からジジくさかったのか」

19090「お父さん、はしたない父親なんて美月は嫌です」

旅掛「総攻撃!?」



468 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 15:27:27.47 ID:kl13NUkp0


上条「・・・な、なんだこの美味しさ!?」

綺麗なウェイトレスが運んできた料理は、上条の舌を唸らせる

美鈴「んー!やっぱりここの料理は美味しい!」

美琴「・・・結構高そうだけど、大丈夫?」

美鈴「パパの稼ぎをナメちゃいけないよ、美琴ちゃん!」

旅掛「こうやって妻の尻に敷かれるんだ、分かるかテクパトル君」

テクパトル「・・・美月はそんなことしないさ」

19090「そうですよ、むしろ美月は若干亭主関白なくらいがいいと思います」

旅掛「聞いた美鈴!?これが夫婦のあるべき姿だよ!」

美鈴「あ、そっちのはちょっと美琴ちゃんの口には早いんじゃ・・・」

美琴「自分がもらいたいだけでしょ、ダメ」

美鈴「あぅぅ!」

旅掛「聞いちゃいねぇ」

テクパトル「・・・あ、ワインが来た」

ウェイトレスがワインを運んでくる、テクパトルは頭を下げてそれを受け取った

上条「なんか綺麗なウェイトレスさんだな」

美琴「・・・」

テクパトル「うーん・・・まぁ、美人の類に入るな」

19090「・・・」

上条「で、でも美琴のほうが綺麗だけどな!」

テクパトル「美月の比ではない、か」

美琴・19090「//」


469 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 15:27:53.24 ID:kl13NUkp0
旅掛「・・・じゃあ、乾杯するか」

美鈴「にゃっはー!久しぶりにワインなんて飲むよ!」

テクパトル「なんだ、禁酒でもしてるのか」

美鈴「ううん、普段はビールで我慢してるの」

テクパトル「俺と同じだな・・・」

旅掛「ま、俺の金なんだし遠慮しないで飲んでくれよ」

テクパトル「申し訳ないな、御馳走になるよ」

三人がグラスにワインを注ぐ

上条「美琴、貰うなよ」

美琴「も、貰わないわよ!」

19090「ですが・・・こういう時っていつも飲む羽目になるんですよね・・・」

旅掛「あはは!親が傍にいるんだし心配ないだろ!」

美鈴「そうそう、保護者は子供が間違いを起こさないように見張るもんだよ!」

上条「ですよねー」

一同「あはははは!」




旅掛「ぷっはぁー!」

19090「大体、お姉様はお義兄様とイチャつきすぎなんですよー・・・」

美鈴「にゃはは!美鈴ちゃんですよー、上条くぅん!」

美琴「やだー、私は酔ってないってばぁ!」

上条・テクパトル(この血筋は馬鹿なのか)


470 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 15:35:05.40 ID:kl13NUkp0

美琴「ねぇねぇ当麻ぁ…」ウットリ

上条「ど、どうしました?」

美琴「>>461の意見、どう思うのよぉ…」ジトォ

上条「そ、そういうネタは控えなさい!!」

美琴「うっ…」ウルウル

上条(う、上目遣いに負けるな上条当麻ぁ!!!)

美琴「…愛は…冷めたのね」フッ

上条「いやいや!!冷める訳ないでしょう!?」

美琴「当麻ぁ…」

上条「美琴ぉ…」

旅掛「サスケェ…」

上条「邪魔すんなよ旅掛さん!!」

旅掛「だってだってイチャイチャされるのムカつくんだもーん!!!」

上条「子供かアンタは!?」

旅掛「ぶっぶー、大人でーす!!」

上条(あ、イラっとしたぞ)

テクパトル「…美月、あんまり飲むなよ」

19090「飲んでませんよぉ…」グデーン

美鈴「ありゃりゃ、テっくんったらぜーんぜん飲んでないじゃん」

テクパトル「テっくん言うな」

美鈴「…」



美鈴「テっちゃん」

テクパトル「そういう問題じゃねぇ!!」

471 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 15:39:23.96 ID:kl13NUkp0
「あ、あのお客様…」

テクパトル(!!い、いかん!!このままでは店側の迷惑だ!!)

上条「す、すいません…ほらみんな、食べ終わったんだし帰るぞ」

美鈴「うにゃー!!!」

美琴「当麻のいじわる!!」

上条「美琴さん、めっ!!」

美琴「う…」

旅掛「仕方ねぇな…ここは俺が払うからよぉ…」ヨロヨロ

テクパトル(…)

19090「お父さん、それは樋口一葉ですよぉ…」

旅掛「ありぇりぇ、樋口って男なんだぁ…」

美琴「違うわよぉ、樋口はオカマ」

上条「テクパトル!!支払いは任せていいか!?」

テクパトル「…マジックテープの財布じゃないが、いいか」

上条「お、お前も酔ってたのか」

テクパトル「なんかすまん」



テクパトル「…後で請求するからな」

美鈴「あっはー!!テっくんったらいけずぅ!!」

19090「そうですよテっくん!!お支払なんて、ぱーっとしましょうよ!!」

美琴「テっくん、あんまりケチだとモテないぞぉ!!」

テクパトル「…テっくん言うな…」

旅掛「テっく」

テクパトル「何か言ったか禿鷹」

旅掛(ハゲでもないし鷹でもない)


472 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 17:08:04.49 ID:kl13NUkp0

美琴「ねぇねぇテっくんー」

テクパトル「しがみついてくるな」

19090「そうですよお姉様…テっくんは美月のものなんですから」

美鈴「ういー…美月ちゃんったら独占欲強いのねぇ」

テクパトル「…なぁ、なんで三人とも俺にしがみついてくるんだ…」

旅掛「ひっく…テクパトル君はミサカ誑しだからなぁ…」

テクパトル「…いや、この二人には優しくした覚えはないぞ?」

美琴「またまたぁ!!そう言いながら突き飛ばしたりしないのが優しいのぉ!」

美鈴「そうそう!!そこにシビれる、憧れるゥ!」

テクパトル「はぁ…」

上条「…」

テクパトル「なぁ、上条からも言ってやってくれよ…」

上条「…」

美琴「ねぇねぇテっくん!!」

テクパトル「あぁもう!!テっくん言うな!!」

上条「美琴、テクパトルが迷惑してるだろ」ムスッ

美琴「してないよね?」

テクパトル「してるんです…」

美琴「し て な い わ よ ね ?」

テクパトル「はい」

上条「…テクパトル、美琴から離れろよ」

テクパトル「俺も離れたいんだよ!!」

美鈴「テっくん!」

テクパトル「アンタも離れろ!」


473 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 20:50:24.77 ID:kl13NUkp0
上条「美琴、あんまりテクパトルとベタベタすんなよ」

美琴「ふぇ?なんで?」

上条(…)

テクパトル「おい義姉さん…離れろって」

美琴「だーって、テっくんってば腕がっしりしてて頼りがいがあるんだもん!」

上条「お、俺だって腕は結構がっしりしてるって言われるんだよな!!」

美鈴「うーん、でもテっくんは上条君よりもがっしりしてるもんねー」

19090「ちょっと、美月のテっくんに寄り付かないでよこの女豹!!」

美鈴「きゃー、美月ちゃんったら怖い☆」

テクパトル(…義父さんは…)

旅掛「寂しいなぁ…誰も相手してくれないなんてパパ、寂しいなぁ…」

テクパトル(ダメだ)

上条「み、美琴…いいから離れろって!!」ガシッ

美琴「んにゃっ!?痛い!」

上条「ご、ごめん…」

美琴「乱暴な当麻なんてだーいっきらい!!」

上条「」

テクパトル「おい義姉さん…」

美鈴「んっふー、このまま親子丼といきますかぁ!!」

テクパトル「いかねぇよ!!」

19090「そうですよ、美月丼です!!」

テクパトル「そ、それもおかしいぞ…」

上条「」

美琴「?」


474 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 20:54:54.00 ID:kl13NUkp0
上条「…美琴、いいから離れろって」

美琴「な、なんで怒ってるのよ…」アタフタ

テクパトル「ほら義姉さん、放せ」

美琴「う、うん…」

美鈴「私は放さないぞ!!」

テクパトル「放せよ」

19090「…お母さん、こうなったらもう実力行使しかありません…」

美鈴「ま、まさか10万ボルト!?」

テクパトル「ダメダメ!!」

旅掛「パパ寂しい…」ショボン

テクパトル「道の端っこでいじけんな!!」

美琴「と、とととととと当麻?なんで怒ってるの?」ウルウル

上条「別に怒ってなんかないだろ」ムスッ

美琴「お、怒ってる!」

上条「怒ってません」

テクパトル(あーあ、義姉さんやっちまったよ)

旅掛「美鈴ぅ!!構ってよ!!」

美鈴「はいはい、パパったら寂しがり屋なんだからぁ」ナデナデ

旅掛「おっふぅ//」

テクパトル(こっちは上手くいったか…)

475 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/15(火) 21:42:22.60 ID:kl13NUkp0
美琴「と、当麻?当麻ってばぁ…」

上条「…」

テクパトル「上条…いい加減許してやれって」

上条「まぁ…別に怒ってなんかないけどさ」ムスッ

美琴「お、怒ってる…」

上条「…」

美鈴「っと、仲直りは家に入ってからにしよ?」

気が付くと、既に家の前まで来ていた

旅掛「…家に帰ったら…俺、ビール飲むんだ…」

テクパトル「家は目の前だ…大体、もう飲まなくていいだろう」

上条「…さて、じゃあ俺から風呂に入らせてもらいます…」

美琴「わ、私も一緒に入っていい!?」

上条「あ、あぁ」

美琴(よしっ!!)

美鈴「じゃあ私もー」

上条「な、なんでアンタが入ってくる必要があるんだよ!?」

美鈴「だってー、親子水入らずの時間がほしいし」

上条「水入ってるよ!!」

テクパトル「…はぁ、俺達は後からでいいからさ」

19090「た、達…//」

テクパトル(…照れる美月も可愛いな)


476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/15(火) 22:25:57.42 ID:3HAWutCn0
>>466

いやぁ、>>1の上琴愛が冷めてなくて一安心!

上条さんの嫉妬が可愛すぎて辛い

477 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:02:17.90 ID:nyg6i5UH0
美琴「・・・ど、どう?」

上条「あぁ・・・やっぱり美琴の背中の洗い方は気持ちいいや・・・」

美琴「えへへ//」

風呂場で、素っ裸の上条を座らせ、美琴はその背中を洗い流していた

テクパトル程ではないが、上条もかなりがっしりした体つきをしている

この背中に背負われたい、と甘えてしまうのは我が儘だと分かってはいるが

美琴「・・・ね、当麻」

上条「ん、どうした?」

美琴「あの・・・ごめんね、ちょっと酔っ払って・・・それでテクパトルに・・・その、抱き着いたりして」

上条「あぁ・・・いや、酔ってたなら仕方ないって」

美琴「・・・怒ってる?」

上条「まさか・・・こんなに気持ちいいお風呂をプレゼントされたら怒れないだろ」

満足げな上条がニコニコと笑う

鏡を通してその笑顔を美琴は見ていた

美琴「・・・じゃあ・・・さ」

上条「!?」

プニプニとした感触が背中に当たる

美琴「こ、これで洗ったげる」

478 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:02:46.73 ID:nyg6i5UH0
上条「・・・たまに固いものが当た・・・」

美琴「う、言わないでよ!」

体を擦り付けるようにして、美琴は上条の背中を洗う

上条(・・・鏡越しに必死な美琴は見えてるんだけどな)

体を上下させて、時折顔を赤らめる美琴

上条「なぁ、美琴」

美琴「うん、なに?」

上条「なんか顔真っ赤にして上下運動って、エッチですよ」

美琴「!馬鹿!」

上条「いやいや・・・だってね、風呂場で二人きりなんだしさ」

美琴「い、今はダメ!」

シャワーで背中の泡を流し、美琴がくるりと回転する

美琴「つ・・・次は私洗って」

上条「おう」

体を洗うためのタオルは、ちゃんと風呂場に用意されていた

だがなんとなく、上条はそれを使いたくなかった

上条(美琴も素手とかで洗ってたんだし問題ないよな)

掌でシャンプーを泡立て、優しく美琴の背中に広げる

美琴「ひゃうっ!」

上条「あはは!そういや初めて二人で風呂入った時も背中洗い合ったっけ」

くすぐるような手つきで上条が泡をどんどん広げていく


479 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:03:31.95 ID:nyg6i5UH0
美琴「ひゃっ・・・そ、そうだったわね!」

上条「・・・美琴って、脇の下とか弱点?」

美琴「!」

コチョコチョ、と上条がくすぐる

美琴「あはは!ちょ、ちょっとやめなさいって!」

上条「こらこら、足ジタバタさせたら危ないだろ」

美琴「だ、だって当麻がくすぐるから・・・あっ・・・」

上条「ん?どうした?」

美琴「・・・く、くすぐったいけど・・・ちょっと気持ちいい」

上条「へぇ・・・」

じーっ、と上条が美琴の背中を見つめる

視線を感じたのか、美琴が顔だけ上条の方へ向ける

美琴「な、何よさっきから・・・」

上条「・・・なぁ、胸も洗うんだよな」

美琴「!?そ、そりゃ体洗ってもらうんだからね・・・」

上条「了解!」

手を体の前に回し、美琴がフワフワとした柔らかさを持つ美琴の胸に触り出す

美琴「あんっ・・・」

上条「・・・あ、もう固くなってる」

美琴「・・・い、言わないでよ・・・ふぁっ・・・」

480 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:03:57.35 ID:nyg6i5UH0
上条「・・・ホント弱いよな、胸」

美琴「い・・・遺伝みたいね」

上条「素敵な遺伝だよな」

掴む強さを微妙に変え、決して美琴が慣れることのないようにする

おかげで美琴は終始敏感に反応している

上条「なぁ、もっとしてほしい?」

美琴「・・・うん」

上条「どこ触ってほしい?」

美琴「・・・む、胸に決まってるでしょ」

上条「胸のどこ?」

美琴「!そ、それは・・・乳首・・・とか」

上条「ほうほう」

ぎゅっ、と上条が美琴の胸の頂きを摘み上げる

美琴「っ!」

ビクン、と体を跳ねさせた美琴はそのままぐったりと体から力が抜けたようだ

上条「大丈夫か?」

美琴「はぁっ・・・馬鹿・・・」

上条「美琴さん・・・可愛いな」

シャンプーのついたままの掌で、美琴の頭を撫でる


481 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:04:47.67 ID:nyg6i5UH0
美琴「あ・・・頭にまで泡がついちゃったじゃない」

上条「ホントだ・・・ゴメンゴメン」

美琴「・・・ついでに洗ってくれる?」

上条「あぁ」

掌のボディーシャンプーを洗い流し、次に頭髪用のシャンプーを泡立てる

栗色の美琴の髪の毛を乱暴には扱えない

優しく、まるで飴細工にでも触るかのような繊細さで指を滑らせていく

美琴「んっ・・・」

上条「・・・美琴の髪の毛って綺麗だよな」

美琴「な、何度も言われたわよそんなこと」

上条「・・・」

出来る限り、優しく髪を洗ってから泡を流す

美琴「もうちょっと乱暴にしてもいいのよ?」

上条「いやいや、無理だってそんなの」

美琴「・・・!」

髪を洗い終えた上条は再び美琴の胸に手を伸ばす

美琴「さ、さっきイったばっかだからダメ!」

上条「?まだ一回だろ」

美琴「そ、それはそうだけど・・・」

上条「ほら、まだまだ大丈夫」

美琴「んゅっ・・・」

482 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:05:13.15 ID:nyg6i5UH0
ジワッ、と股の間が熱くなる

上条の指が胸の輪郭をなぞる度、美琴の体は火照りを増していく

美琴「・・・あ、当麻のもガチガチ・・・」

手を後ろに回し、上条のそれを美琴が優しく掴む

上条「・・・そりゃ、こんな美琴さんを見せられたら」

美琴「・・・なに勝手に興奮してんのよ、エッチ」

上条「美琴だけにだからな」

美琴「!わ、分かってるわよ・・・他の女の子でこんな風にしたら許さないからね?」

上条「ならないって、美琴が最高すぎて他のヤツなんて眼中にもないし」

美琴「・・・!あ、そこ・・・気持ちいい・・・」

上条「ん、ここか」

胸の中で敏感な部分、そこを優しく撫でる

美琴「んはぁっ・・・」

上条「・・・あ、ここも濡れてますよ」

ピッチリと閉じられた脚の間に上条が手を伸ばす

美琴「・・・シャンプーよ」

上条「こんなにヌルヌルしたシャンプーなんて使ってないんだけどな」

美琴「・・・と、当麻のも・・・先っぽからなんか出てる」

上条「・・・そろそろ出そうなんですが」

美琴「い、いいわよ・・・出して」

上条「・・・出来ればお口で」

美琴「ば、馬鹿!」

483 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:05:46.18 ID:nyg6i5UH0
慌てた素振りを見せる美琴

だが、なぜかくるりと上条のほうを向く

上条「やってくれるのか?」

美琴「ふ・・・風呂場汚したらいけないし」

パクッ、と上条のそれを口に含む

独特の苦味も、上条のものだと思えばなんでもない

美琴(・・・なんか・・・私達って、ショチトル達のこと変態扱い出来ないわよね)

そんなことを考えながら、口を前後させる

舌を上手く使って、上条を快感の頂上へと導いていく

上条「や、ヤバい・・・」

美琴「んんっ・・・」

びゅるっ、と何かが口の中に流れ込んでくる

言わずもがな、それは上条の精液だ

美琴「うっ・・・なんか濃い気がするんだけど」

上条「ふぅ・・・そ、そりゃ今日一発目だからな」

美琴「・・・!」

ごくん、と喉を鳴らした瞬間に美琴の頭も真っ白になった

上条「ど、どうした」

美琴「はぅっ・・・」

くたぁ、と体重を上条の体に預ける美琴

肩が上下してしまう、余程深い快感だったのだろう

484 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 15:06:19.53 ID:nyg6i5UH0
上条「・・・飲んだらイったのか?」

美琴「と、当麻がそれまで色々イタズラしてたから!」

上条「んー・・・でもタイミングはバッチリだったよな」

美琴「い、言わないでよ・・・」

少しだけ涙目になった美琴を、優しく上条が抱きしめる

美琴「あっ・・・」

上条「・・・あがるか、美鈴さん達も待ってるだろうし」

美琴「つ、続きもする?」

上条「ここまでやって続きしないなんてないだろ」

美琴「じゃ、じゃああがる!」

嬉々として美琴が上条の手を引く

そういやこんなに美琴が嬉しそうなのは久しぶりだ、と思いながら上条も風呂場を後にした


テクパトル「・・・なんでまた飲んだんだよ」

19090「テっくん・・・体が熱いです・・・」

テクパトル「ぬ、脱ぐな脱ぐな!」

美鈴「私も体熱い・・・」

旅掛「俺も・・・」

テクパトル「だから脱ぐな!」


上条「ただいま・・・うわ、まだ飲んでるのか」

テクパトル「か、上条!いいタイミングで来てくれた!」

上条「ほら旅掛さん、美鈴さん・・・風呂空いたんで入って下さい」

美鈴「あぅぅ・・・いーつもすまないねー」

旅掛「それは言わない約束でしょう・・・」

フラフラした足取りで二人は風呂場に向かった

19090「・・・お姉様とお義兄様は、お風呂で何してたんですか?」

上条「お、お前酔ってるのか?」

テクパトル「いや、俺も知りたいんだが・・・妙に長かったな」

美琴「んふふー//」

テクパトル「あ、もしかしてやったのか」

上条「ま、まさかぁ!本番なんてしてませんよ!」

485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/16(水) 22:30:06.94 ID:j1eMCVT90
乙!
486 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/16(水) 23:06:42.64 ID:nyg6i5UH0
19090「…それより、お姉様」

美琴「ん…なに?」

19090「お義兄様と二人きりになりたいのでは?」

美琴「あ、えっと…」

テクパトル「そうだな…義父さんと義母さんの世話なら俺が引き受けるから、先に部屋に行ったらどうだ」

上条「で、でもなんか悪いしさ…」

テクパトル「構うな、どうせいつかは俺が介護することになるんだろうし」

美琴「な、何年後の話なのよ…」

テクパトル「…それに、俺は俺で義理の両親に、親孝行をしておきたいからな」

上条「…そっか、じゃあその邪魔をしちゃダメだな」

テクパトル「あぁ、だから二人はぜひとも部屋に行ってくれ」

美琴「…じゃ、お言葉に甘えるわね」

テクパトル「仲良くしろよ」

19090「ちゃ、ちゃんとしてくださいね!!」

上条・美琴「な、なにを?」

19090「!!そ、それは…ほら、あれです!!」カァッ

テクパトル「…ほら、行った行った」

上条「あ、あぁ」

テクパトルに急かされるように二人は部屋へ向かう



テクパトル「美月…お前、あんまり無理してそういうこと言うなよ」

19090「あう…」カァッ

テクパトル(…ま、羞恥心があるのはいいことだ)



487 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:48:55.57 ID:+3z2ARSz0


上条「・・・美琴」

ベッドの上、布団の中で二人は一糸纏わぬ姿のまま抱き合っていた

少し汗ばんだ体が互いに熱を与え合う

ドクン、と跳ねる鼓動は二人のうちどちらの物か

或いは二人とも

美琴「・・・当麻、大好き」

上条の胸板に頭を置き、美琴がそっと囁く

最近は、すぐ行為に及ぶよりもこうやってムードを作るほうがいい、と分かってきた

ムードを作るためだけに愛を囁いているのとも違うが

上条「・・・触っていいか」

美琴「うん」

指を筆のように、美琴の体に這わせる

頭、首、腕、脇腹、足・・・

胸や股の間など、敏感な部分は敢えて避ける

やがて美琴は、耐え切れずに自ら懇願してくる

美琴「・・・む、胸とか触らないの?」

上条「触りますよ」

一度、頬にキスをしてから胸へ手を滑らせる

風呂場で触った時とは違い、まずは優しく包み込むように


488 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:49:22.15 ID:+3z2ARSz0
美琴「ちょっと・・・くすぐったい」

上条「ん・・・気持ちよくないか?」

美琴「当麻にされるならなんだって気持ちいいわよ」

顔を赤くしているのが分かる、部屋が明るいからではなく互いを知り尽くしているから

上条(・・・俺は美琴のこと、なんだって分かってるんだ)

無我夢中になって、彼女の体を触り始める

美琴「!ど、どうしたのよ急に・・・」

上条「こことか好きなんだよな」

胸の頂を、左右同時に摘む

美琴「ひぅっ!」

美琴の反応に気を良くし、上条はその行動をしばし続ける

美琴「あ・・・あぁっ!」

ダラリ、とだらし無く美琴の股から液体が流れる

その愛液を指に付けると、上条は一口それを口に含んだ

上条「美琴の味がする」

美琴「!な、なに変態みたいなこと言ってるのよ!」

上条「美琴、大好きだ」

返事を言おうとした美琴の唇は、強引に奪われる

荒い鼻息を感じながら、美琴も目を閉じる

乱暴、という言葉も確かに間違ってはいない

現に今の上条は、半ば野獣のようにさえ感じられる


489 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:49:57.44 ID:+3z2ARSz0
美琴の体しか目に入っていない

だが

美琴「・・・当麻・・・」

美琴だってそうだ、なら上条が野獣なのではない

上条「美琴、挿れたい」

美琴「ん・・・来て」

布団が邪魔だ、それをベッドの脇に除けて上条が美琴の体に覆いかぶさる

ギシッ、というベッドの軋みに隠れたが美琴は小さく吐息を吐いていた

美琴「は、入ってくる・・・」

中を押し開けるようにして、上条が内側に侵入してくる

拒んでいるのか、それとも放さないようにしているのか、美琴の膣はぎゅっと締め付けていた

上条「美琴、キツキツだな」

美琴「・・・アンタのがきついのよ」

上条「まさか」

舌を絡める、深いキスをしながら上条が腰を振る

水音が静かな部屋に響く

唾液が絡み付く音、二人の接合部が絡み付く音

それに混じるのは荒い吐息とベッドの軋む音

他には何もない、言葉を交わすのでもなく、音楽を掛けているわけでもない

ただどんな時間よりも相手を独占している、という感覚を得られる

錯覚なのだろうか、現実なのだろうか

どちらでもいいや、と上条が思考を放棄する

とにかく目の前にいる美琴を愛することだけが彼の使命だ


490 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:49:57.45 ID:+3z2ARSz0
美琴の体しか目に入っていない

だが

美琴「・・・当麻・・・」

美琴だってそうだ、なら上条が野獣なのではない

上条「美琴、挿れたい」

美琴「ん・・・来て」

布団が邪魔だ、それをベッドの脇に除けて上条が美琴の体に覆いかぶさる

ギシッ、というベッドの軋みに隠れたが美琴は小さく吐息を吐いていた

美琴「は、入ってくる・・・」

中を押し開けるようにして、上条が内側に侵入してくる

拒んでいるのか、それとも放さないようにしているのか、美琴の膣はぎゅっと締め付けていた

上条「美琴、キツキツだな」

美琴「・・・アンタのがきついのよ」

上条「まさか」

舌を絡める、深いキスをしながら上条が腰を振る

水音が静かな部屋に響く

唾液が絡み付く音、二人の接合部が絡み付く音

それに混じるのは荒い吐息とベッドの軋む音

他には何もない、言葉を交わすのでもなく、音楽を掛けているわけでもない

ただどんな時間よりも相手を独占している、という感覚を得られる

錯覚なのだろうか、現実なのだろうか

どちらでもいいや、と上条が思考を放棄する

とにかく目の前にいる美琴を愛することだけが彼の使命だ


491 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:50:28.63 ID:+3z2ARSz0
上条「美琴」

強く背中を抱きしめ、まだ発達しきっていない彼女の体を貪る

背徳感に潰されそうになるのも、昔に比べると減ってきた

代わりに少しずつ、彼女の体を知り尽くしたという満足感を覚え始めている

どこを触れば体をくねらせるか、どんな風に愛すれば声を上げるか、知っている

経験からもだし、彼女のことを思うだけで分かる部分もある

上条「美琴!」

美琴「当麻!」

自分だけが、彼女の体を知っている

この世の中にいる男性の中で自分だけが

世界中の中で「上条当麻」だけが「御坂美琴」を知っているのだ

他に美琴の喘ぐ姿を知っている男はいない、美琴の弱い場所を知っている男もいない

それだけで上条は美琴にとって特別な存在なのだ

何も不安に思う必要はない、彼女は正真正銘、100%上条の物だ

なのに

上条(あぁ・・・なんか情けねぇ)

テクパトルに少し甘えた美琴を見ただけで、上条の自信は揺らいでしまう

ちょっと他の男の話をしている美琴を見ただけで、自分だけが特別だという現実を忘れてしまう

美琴のことを信じているのに、自分だって自分を信じているのに

上条(美琴は俺のもんだ)

言い聞かせるようにしながら、上条は彼女に自分を刻んでいく

印をつけてしまえばいいのだ

「御坂美琴」は「上条当麻」の所有物だという印を

492 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:51:15.66 ID:+3z2ARSz0
上条「・・・美琴は・・・俺だけの女だよな」

美琴「え・・・?」

体の内側から沸き上がる快感の中で、美琴は今のムードにそぐわない、あまりに純粋な感情を耳にした

美琴「い、今・・・なんて言ったの?」

上条「美琴は、俺だけの女だよな・・・?」

美琴「・・・」

可愛い人だ、美琴の脳内が蕩けそうになる

いつもは自分を嫉妬に苦しませるくせに、たまにこうやって呆れるほどの嫉妬に苦しむ

腕を引っ張っていつも前を歩いていると思ったら突然隣で歩きたいなんて言い出す

甘えているような、美琴に歩幅を合わせているような

美琴「大丈夫」

大丈夫、というのは上条に対しての言葉

そして自分に対しての言葉

美琴「私は当麻だけの物よ」

彼もまた

美琴「だって私がこんな姿を見せるのは・・・アンタの前だけよ」

彼だって

美琴「なに不安になってるのよ・・・私は、当麻だけが好きなんだから」

きっと彼も

美琴「だから・・・そんな悲しそうな顔、しないで」

そうだといいなと

上条「・・・俺って、情けないかな」

美琴「うん、情けない・・・でも嬉しい」


493 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:51:46.21 ID:+3z2ARSz0
抱きしめられていたはずの美琴は、いつの間にか上条を抱きしめていた

互いの背中を強く抱きしめる

体が密着して、体温も鼓動も汗も緊張も、何もかもが伝わる

美琴(こうすれば心も伝わるかな)

儚い願いかもしれないが、美琴は真剣だった

無我夢中だった二人は、しばし体を動かすのを止める

聞こえるのは呼吸だけになった

上条「俺さ」

混じるのはたった一人だけの声

上条「俺さ、美琴がいないとダメなんだ」

一人だけしかいない、彼の声

上条「美琴が甘えてくれなきゃ寂しいし、美琴が笑ってくれなきゃつまんない」

美琴「私だって」

上条「・・・なんでこんなに好きなんだろうな」

美琴「わかんない・・・でも、好きなのは事実よ」

上条「・・・あぁ」

笑ってから、上条が体を動かし始める

ギシギシという音を聞きながら、美琴は考えていた

なんで?

妹達の件で助けてもらったからか

彼は美琴を一人の女の子として見てくれていたからか

ずっと一緒にいたからか


494 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:52:24.09 ID:+3z2ARSz0
美琴(あぁ、そっか)

多分の答え、きっとの答え

それだけで十分だった

美琴(私が美琴でいられるのは、当麻の前だけだからだ)

ビクリ、と二人の体が跳ねる

熱が二人の体を交互に移動する

荒れた息を整えながら、上条が美琴の横に寝転がる

上条「・・・美琴」

優しい手つきで、美琴の髪の毛に触れる美琴

美琴「・・・当麻」

上条「・・・愛してる」

さっきの大好き、が子供のように純粋な愛情だとしたら

今の愛してる、は長い時間を共に過ごした、満ち足りた愛情なのか

美琴「私も愛してる」

満ち足りている愛情なら、美琴も知っている

美琴「えへへ、なんか今日は嬉しいな」

上条「ん、何がだ?」

美琴「当麻が嫉妬してくれたの、なんか久しぶり」

上条「・・・結構嫉妬はしてるんだぜ?ただ・・・なんだ、めんどくさい男って思われたくないから普段は我慢してるんだけどさ」

美琴「・・・めんどくさいなんて思わないわよ」

495 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/17(木) 07:52:58.73 ID:+3z2ARSz0
上条「・・・それにさ」

くいっ、と美琴の体を抱き寄せて上条が笑う

上条「・・・嫉妬したところで、俺が美琴を好きなことに変わりはないからさ」

美琴「・・・うん」

唇を重ねるのは何度目だろう

もう、飽きるほどの回数のはずだ

しかし回数を重ねるほどキスというのは病み付きになる

一度覚えた蜜の味を忘れる前に、また味わいたくなるような感覚だ

美琴(蜜にしては優しい味だけど)

上条「んー・・・久しぶりに、なんか美琴と通じ合ったって感じだな!」

腕を伸ばしてから、満足そうに上条が言う

美琴「あはは、何よそれ」

上条「ほら・・・もちろん言わなくても通じてるけど、たまには言葉にして確認したいからさ」

美琴「・・・言葉だけ?」

上条「もちろん、形にだってしますよ」

さっきまで行っていた行動も、確認作業のようなものだ

上条「だから、今日は・・・」

美琴「そっか、一回で満足なんだ・・・」

蛇が舌で舐めてくるかのような、禁忌の香りを嗅ぐわせるような手つきで美琴は上条のボディラインをなぞる

美琴「私は・・・何回も確認したいんだけどなぁ」

上条「み、美琴さんったら性欲盛ん」

美琴「当麻は嫌?」

上条「・・・」

考えてから上条も頷く


上条「俺もやっぱり、何回も確認したいかな」

美琴「じゃあ、しましょ」

496 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/18(金) 19:38:59.31 ID:ieJXoA120


やってらんねぇ、テクパトルはそう思った

理由は単純明快

美鈴「ぷっひゃー!」

旅掛「ういー!」

目の前にいる酔っ払い夫婦がさっきから自分の話を聞かないからだ

テクパトル「聞いてるか」

美鈴「聞いてるよん!で、なんだったっけ?」

テクパトル「聞いてねぇじゃねぇか!」

旅掛「まぁまぁ、カリカリすんなよベイビー」

テクパトル「あぁぁその口調もまた癪に触る!」

19090「ひっく・・・」

テクパトル「そしてなんでお前まで飲んでるのかを教えてほしい!」

美鈴「もー、上条君と美琴ちゃんは仲良ししてるんでしょ?」

旅掛「ふっはー!酔っ払って勢いで抱いちまうなんて上条君もまだまだだよなぁ!」

テクパトル「いや、勢いで抱いたわけじゃないし上条は飲んでなかったし」

美鈴「んっんー、美月ちゃんはテクパトル君とエッチしたくないの?」

19090「し、したいです//」

旅掛「くぁぁ!テクパトル君の幸せ者!」

ツンツン、と旅掛がテクパトルの肩を突く

テクパトル(とにかくうぜぇ)



497 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/18(金) 19:39:30.18 ID:ieJXoA120
美鈴「んひゃー・・・そういや美月ちゃんとテクパトル君はお風呂入らないの?」

19090「だ、だってお父さんとお母さんをほっとけませんし・・・」

テクパトル「・・・美月、先に入ってきていいぞ」

19090「で、でも・・・」

旅掛「なんだぁ?一緒に仲良く入らないのか!」

テクパトル「アンタは娘をどうしたいんだよ!」

美鈴「孫の顔は見たいもんねぇ」

テクパトル「美月、今日は一人で入ってきてくれるか」

19090「は、はい・・・では二人をよろしくお願いします」

一礼してから19090号は風呂場へ向かう

残されたテクパトルは、しかし二人を上手く制御する方法を持っているわけではなかった

美鈴「にゃはは!テクパトル君ったら義理の親と三人だけなんて勇気あるねぇ!」

テクパトル「・・・酔っ払いをほっとけないだけだ」

旅掛「またまたぁ!ツンデレか!」

テクパトル「とりあえずアンタにそれを発揮することは一度もないだろうな」

美鈴「私にはあるのぉ!?」

テクパトル「ねぇ!次回予告、ない!」

旅掛「じゃーなんで俺達の世話を申し出たんだ」

テクパトル「風呂から上がったら義理の両親、アル中で倒れてた、なんて嫌だからな」

美鈴「そんなことないってばー」

旅掛「俺達、こう見えてお酒には強いんでしゅよー!」

テクパトル「どう見ても弱いんだがな」

美鈴「もう、テクパトル君ったらケチケチしすぎ!」

テクパトル「ったく・・・こっちは結婚の挨拶に来たんだし、真剣に今後の話とかしたかったのに」

旅掛「ん、なんか言ったかい?」

テクパトル「なんでもないよ」

はぁ、とため息をつく

これが、結婚挨拶当日だなんて悲しくなってしまう

498 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/18(金) 20:22:55.55 ID:ieJXoA120
美鈴「テクパトルくーん。お酒持ってきてー」

テクパトル「俺はアンタ達の荷物運びじゃない、あともう飲んでるだろ」

旅掛「テクパトル君、そんなんじゃ美月との結婚は許せないなぁ!」

テクパトル「…なんて頑固親父だ」

旅掛「なっ…義理の親に向かってその口の利き方!!最早悪としか思えませぬ!!」

テクパトル「いつの時代の人間だよ…それと、俺は尊敬できる相手にしか敬語は使わない」

旅掛「俺達を尊敬していない…だと!?」

美鈴「テクパトル君ったらひどい!!」

テクパトル「…まぁ、その代わり感謝はしているし…」

冷蔵庫からビールを持ってきて、テクパトルが二人に渡す

テクパトル「…なに、尊敬はしているんだ…美月のこと、人間として見てくれていることは感謝するしかないしさ」

旅掛「…」

テクパトル「自分の娘のクローンがいて、それを娘と認めるなんて…俺には、正直出来る自信がないからな」

美鈴「テクパトル君、そりゃまだ君が若いからだよ」

テクパトル「…アンタ達とは10も変わらないが」

旅掛「…君と俺達とじゃ、まだ経験が違うのさ」

テクパトル「…俺も、子供が生まれたら二人みたいな親になりたいもんだ」

小さく笑ってから、テクパトルもビールを飲みだす

テクパトル「…それに、二人は義姉さんみたいなすごい娘も持ってるからな」

旅掛「あぁ、自慢の娘だ」

テクパトル「…その自慢の娘が上条にぞっこんなのは、どうなんだよ」

冷やかすような言い方のテクパトル、しかし旅掛は全く正反対で真面目な顔をしている

旅掛「よかったと思ってるんだ、そいつを」

テクパトル「?」

499 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/18(金) 20:42:36.60 ID:ieJXoA120
旅掛「美琴は、昔から人形とかおもちゃにずーっと興味を持つことはあった」

テクパトル「あの義姉さんが…ね」

そういえば、今もゲコ太に熱中している、そういうところは変わらないのだろう

旅掛「でもな、友達を家に呼ぶことなんてほとんどなかったし、ましてや浮いた話なんて一度もなかったのさ」

美鈴「そうだねぇ…大きくなったら誰かと結婚する、なんてのも言わなかったし」

旅掛「…だからこそ、上条君ってのはそれだけ美琴にとって大きな存在だと思うんだ」

ぐっ、とビールを一口飲む旅掛

その目は、酔っているにも関わらず真っ直ぐと天井を見つめている

旅掛「…親として非常に嬉しいことだ、娘が親である俺と美鈴以上に、大切な人を見つけられたことが」

テクパトル「…」

旅掛「…俺が思うに、親ってのは最初に愛情の形を少しだけ教えてやる役割なんだ、だからこそだんだんと愛情の形が分かってきた子供は親という物を鬱陶しく感じる、中学生や高校生が足し算を教えられる必要がないのと同じように」

テクパトル「…そうか」

旅掛「…上条君なら、きっと美琴に愛情を教えてやれる…」

美鈴「でも、パパって結構寂しいんでしょ」

旅掛「そりゃ、手塩に掛けて育てた娘が男にぞっこんなんてな」

テクパトル「…そうだろうな、父親は」

旅掛「…でも、俺が美琴を幸せにしてやる方法はないだろ?美鈴ももちろんそうだ」

美鈴「うん、美琴ちゃんを幸せにできるのは上条君だけだからね」

旅掛「そして美月を幸せに出来るのは君だけだ」

テクパトル「…心得ている」

旅掛「だから、娘のことをよろしく頼みたい」

テクパトル「あぁ」


500 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/18(金) 20:54:37.68 ID:ieJXoA120

19090「ただいまあがりました…テっくん、お風呂にどうぞ」

テクパトル「ん、おかえり」

旅掛「美月ぃぃ!!パパにお酌してくれぇ!」

19090「はいはい…お母さんも、どうぞ」

美鈴「んー、悪いね!」

テクパトル「…」

19090「?どうしたんですか、テっくん?」

テクパトル「いや、なんでもない」

手を振ってから、テクパトルが風呂場へ向かう

テクパトル(…親、か)

彼にも親という物はいたはずなのだが、めっきり記憶にない

捨てられたのかもしれないし、死んでしまったのかもしれない

今更会いたいなんていう気持ちにはなれないし、そう思ったことはそもそもない

テクパトル(…だがまぁ)

二人のような親なら、さぞ素敵な子供が育つだろう

自分のようにひねくれた子供ではなく

テクパトル(…だったらどうするんだろうな)

どちらにしろ、テクパトルに親という物はいないのだ


テクパトル「…」

美月の残り香を堪能しようか、なんて馬鹿な考えが一瞬頭をよぎった

501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/05/18(金) 22:27:17.11 ID:F5PufnjY0


後、半分で終わりか…
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 23:44:10.67 ID:FwsFxI6c0
>>1乙! 後半分ですけどがんばってくださいね!!
503 :kou [sage]:2012/05/19(土) 13:20:56.09 ID:h9AwTw8g0
乙です! もう半分ですか早いなあ...
504 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:37:50.59 ID:vvkVT0u20
そういやあと半分ですね

まぁグダグダブログでもネタやったりしてるし、>>1本人はむしろやっと一区切りか、って感じですがw


テクパトル「・・・はぁ、シャワーってのは人間の疲れも流してくれるよな」

水の音を耳で聞きながら、テクパトルは目を閉じた

お湯が目に入らないようにするためでもある

テクパトル(・・・親、か)

あんな素敵な親の元に生まれた美琴

そしてそのクローンである19090号

テクパトル(・・・幸せだよな)

親に恵まれているだけで人生というのは幸せになる

例えば金を持っている親の元に

例えば学のある親の元に

例えば愛を知っている親の元に

そんな親の元に生まれれば、きっと人は幸せになれるはずだ

道を誤ることはなく、将来の不安に一人だけで立ち向かう必要もなく、何より背中を誰かに支えてもらうことが出来るのだから

テクパトル(・・・俺は、親がいなかったからあんな人生を歩んだのだろうか)

自分が、あんな過ちを犯したのは

模範になってくれる人間がいたら

背中を追っていける存在があれば

テクパトル(・・・)

きゅっ、とシャワーの元栓を閉じる

髪から滴る水滴を手で拭い去ると、鏡に映った自分の姿が目に入った

テクパトル「浮かない顔してるな」

鼻で笑うが、それは正しく自分の表情だ

テクパトル(・・・)


505 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:38:17.57 ID:vvkVT0u20
きっと違う、もしも親がいたところで、テクパトルはテクパトルなのだ

道を誤ったのは彼の判断

親がいなかったから、なんていうのは言い訳に過ぎないのだから

テクパトル「・・・」


旅掛「じゃっじゃーん!」

突然、バンと扉が開かれた

反動で近くに置かれていた洗面器がコロコロ転がる

テクパトル「義父さん・・・何しに来たんだ」

旅掛「いやっはぁ!義理の息子と二人で話がしたかったからさ!」

テクパトル「・・・だからってわざわざ風呂に入る必要はないだろ」

旅掛「おぉ!いい体してるな、俺も若い頃は引き締まってて美鈴を毎晩・・・」

テクパトル「分かったからとにかく義母さんとの惚気はやめろ!」

先程までの静かな時間を返してくれ、とテクパトルは恨み節を並べる

しかし酔っ払いには関係ない

旅掛「やっぱり酒を飲んだ後の風呂は気持ちいいよな!」

テクパトル「全面的に同意はするが・・・何が悲しくて野郎と風呂に入らなきゃいけないんだ」

旅掛「そりゃこっちの台詞だ!」

テクパトル「好き好んで入ってきたのはアンタだからな!」

びしっと指差してみるが、旅掛は我関せずを貫いている

軽く湯舟を掻き混ぜて温度を確かめている


506 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:38:52.66 ID:vvkVT0u20
旅掛「んー、ちょっと温くなってるがまぁいいか」

テクパトル「体くらい洗えよ・・・」

旅掛「さっき風呂に入ったばっかだからキンピカピン!」

テクパトル「・・・」

げんなりするテクパトルなど目もくれず、旅掛は湯舟に飛び込む

少し頭を壁にぶつけたのを、ざまぁとテクパトルは笑う

旅掛「・・・はぁ、風呂は嫌なことを忘れられる空間だな」

テクパトル「だが明日のことを考えて一喜一憂してしまう場所でもあるさ」

旅掛「なに、明日を思えるだけ幸せなんだとは思わないか」

テクパトル「俺は思わないな」

旅掛「えー・・・だってさ、今があるから明日を思えるんだぞ」

テクパトル「ならば風呂場にこだわらなくていいだろ」

旅掛「正論だな」

面食らった顔をして旅掛が頷く

テクパトル「・・・なぁ、義父さん」

旅掛「どうした、浮かない顔して」

テクパトル「・・・アンタは、俺の過去を知らないんだよな」

旅掛「あぁ」

テクパトル「きっと、アンタが思ってるようなのとは違うはずだ・・・俺は真面目じゃなかったし、人の血をたくさん見てきた」

旅掛「一方通行君と同じじゃないか、今更気にはしない」

テクパトル「・・・」

507 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:39:29.74 ID:vvkVT0u20
旅掛「そんなに自分を嫌って何になる」

テクパトル「別に嫌ってるわけではない」

旅掛「だがな、君はたまに悲しそうな顔をするぞ」

至極的確だな、と感心する

世界でビジネスを行うにはそういう技術も必要なのだろう

とにかく、旅掛の言っていることは当たっていた

テクパトル「・・・なぁ、俺は親がいたらまともな人間になれたのだろうか」

旅掛「親がいたら、か」

考えてから旅掛は答える

旅掛「なったかもしれないしならなかったかもしれない」

テクパトル「・・・なんか、自棄にアバウトな答えだな」

旅掛「親がいたら、というのはもしもの話だ、ならばその結果も机上の空論になってしまうのは当たり前だろ」

テクパトル「・・・いや、実はそんな答えなんてどうでもよかったんだ」

旅掛「なら、何が言いたいんだ」

テクパトル「・・・義父さんと義母さんみたいな両親が欲しかった」

ピクリ、と旅掛の眉が動く

まさか自分がこんなに評価されているとは思わなかったのだろう

テクパトル「・・・アンタ達みたいな両親がいたら・・・愛情をたくさん注いでもらえたはずなんだ」

旅掛「そうだな、俺は子供に限りない愛情を注ぐ」

テクパトル「・・・羨ましかったんだ、美月や義姉さんが」


508 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:40:29.96 ID:vvkVT0u20

鏡の中のテクパトルは泣き出しそうな表情だった

テクパトル「・・・そして自己嫌悪に陥る、そんなに素敵な親を持った美月を、俺は奪ってしまったんだ」

旅掛「誰から」

テクパトル「貴方達から」

テクパトルの口調が真面目な物へ変わった

それは、少しばかりの冷たさを秘めている

テクパトル「・・・こんな冷めたクソッタレが、美月みたいな暖かい女性に何をしてやれる?」

旅掛「そいつは迷いさテクパトル君、君以上に美月を愛せる男がいるものか」

テクパトル「嗚呼・・・もしも俺がもう少しまともな人生を送っていたら!俺はこんな自己嫌悪には陥らなかったし、こんな話で貴方の頭を悩ませることもなかっただろう!」

旅掛「親ってのは子供の話を聞いて悩まされるもんだ」

テクパトル「・・・たまに、こんなことを考えては美月に慰められる」

ため息をつき、テクパトルが続ける

テクパトル「分かっている、罪を引きずり続ければ俺と美月の足跡はたちまち轍に掻き消されてしまうことくらい」

旅掛「だが、簡単に罪を放り投げることはできない」

テクパトル「・・・いっそ最初から誰もが罪を背負っていれば、俺はこんなに苦しまないで済んだのか」

旅掛「さぁ」

テクパトル「・・・こんな情けない夫で申し訳ない」

旅掛「なぜ君が謝る?」

509 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:41:10.49 ID:vvkVT0u20
テクパトル「あなたの娘の夫は、こんなに情けない男だ!まるで風に揺られただけで折れてしまう野草のように・・・」

旅掛「・・・」

しばし考えてから、旅掛は口を開く

旅掛「罪に濡れていない人間なんていないさ」

テクパトル「だが罪に溺れた人間は愚かだ」

旅掛「いいかい、君は罪を犯し続けはしなかったんだ、ならば今は善人さ」

テクパトル「善人?どこが、俺はそんな立派な人間なんかじゃないんだ」

旅掛「美月を人間として見てくれた、俺にとっちゃ善人さ」

テクパトル「・・・」

旅掛「俺はな、妹達の存在を昔から・・・恐らく、君が妹達と出会う前からになるが、知っていた」

娘と同じ顔をした女の子の目撃情報が入ってきた時は驚いた、旅掛がおどけてみせる

旅掛「そして不安になったのさ・・・研究材料として、面白い話のネタとして、妹達を欲する人間は現れるはずだ」

テクパトル「・・・」

旅掛「だが、きっとクローンなんて物を人間扱いしてくれるヤツなんて現れないて」

当たり前のことだ

クローンというのは、一般的な考えからすれば「人間」ではなく作られた存在に過ぎない

ましてそれが、「20000」も製造されたことがあるのならば

旅掛「俺は考えた、もしかしたら妹達というのは愛情を知らないまま死ぬのではないかと」

しかし上条君が現れた、と


510 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:41:37.76 ID:vvkVT0u20
旅掛「彼は、妹達のために・・・そして美琴のために命を張ったんだ、クローンだとか超電磁砲だとか、そんなことを一蹴して、ただ助けるためだけに」

テクパトル「そういうのを善人と言うんだ」

旅掛「・・・俺は嬉しかった、まだ妹達には希望がある、と」

テクパトル「・・・貴方も不安だったのか」

旅掛「娘と同じ顔をしているから、なんて単純な理由が始まりだったが・・・俺は次第に、同情し始めていた」

それが駄目だったのだ

旅掛「上条君は、一度も妹達を可哀相だなんて言わなかった・・・人間として見ていた、クローンとしてなんか見ていなかったんだ」

テクパトル「・・・」

旅掛「君だってそうだ・・・家族として妹達を迎えてくれてるだろ」

テクパトル「俺は・・・」

旅掛「聞いたよ、美月は一度記憶を消したことがあるんだってな」

テクパトル「・・・あぁ」

旅掛「君はその時に何をした?ただ指をくわえていただけか?違う、君が美月を救ったんじゃないか」

テクパトル「善人になんかなれないさ」

旅掛「美月を愛してくれた、それだけで十分なんだ」

テクパトル「・・・」

旅掛「君は、自分が悪人だと思うか」

テクパトル「悪人ではない、足を洗った」

旅掛「善人か」

テクパトル「善人というにはまだ、人を救う術を知らない」

511 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:42:04.80 ID:vvkVT0u20
旅掛「・・・君は、美月の夫なんだ、善人でも悪人でも、それは変わらない」

テクパトル「・・・そうだな」

旅掛「夫ってのは妻を守るもんだ、善悪を二の次にして愛を第一にしてしまう馬鹿な生き物にならなきゃいけないんだ」

テクパトル「・・・なぁ、義父さん」

旅掛「なんだ」

テクパトル「貴方は、俺が美月に相応しいと思うか」

旅掛「あぁ」

間髪入れずに旅掛は答えた

確固とした理由を持っているように見えた

それを教えてもらえば、きっとテクパトルの心は落ち着くだろう

テクパトル「なぜ」

旅掛「美月が選んだんだ、なら美月に相応しいだろ」

テクパトル「・・・そんな理由か」

旅掛「あと、君は優しいからな」

テクパトル「・・・」

旅掛「君は俺なんかよりずっと優しいじゃないか、困っている人に手を差し延べる優しさだ」

テクパトル「そんな、まともな人間がどこにいる」

旅掛「なればいい、善人に」

テクパトル「なれだと?」

旅掛「君は美月を守る方法を知っている、なら人を守る方法もじきにわかるはずだ」

テクパトル「・・・だといいな」


512 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:42:30.68 ID:vvkVT0u20
ニヤリと笑って、テクパトルが旅掛の顔を見る

テクパトル「ありがとう、なんだか自信が持てたよ」

旅掛「そいつは良かった、義理の息子がウジウジしてたんじゃこっちも嫌になっちまうからな」

テクパトル「・・・」

貴方の息子になれてよかった、とテクパトルが呟く

きょとん、とした旅掛は一転して大声で笑い出す

テクパトル「な、なんで笑うんだよ!?」

旅掛「ははは!まさか、血縁関係になっただけで息子になったなんて思ってるのか!?」

テクパトル「う・・・」

旅掛「まだまだだなぁ、君にはもっと御坂家の風習なんかを知ってもらわなきゃならない、それまではまだ俺の息子とは言えないな!」

テクパトル「そんな由緒正しい家柄なんかじゃないだろ・・・」

旅掛「・・・時間を掛けてくれた方がいいんだ、最初から完成された夫婦は崩れるのも早い」

テクパトル「・・・」

旅掛「・・・テクパトル君、俺はあがるからゆっくり湯舟に浸かりなさい」

立ち上がって、旅掛がドアに向かう

立ち止まって、一言だけ言う

旅掛「俺も、君みたいな優しい男の父親になれて嬉しいんだ」

バタン、とドアが閉じられる

湯舟にそっと浸かったテクパトルは天井を見上げる


513 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:43:00.02 ID:vvkVT0u20
テクパトル(・・・善人になる必要はない、ただ美月の夫であることは変わらない・・・か)

モヤモヤとした心の何かが晴れた気がする

テクパトル(・・・こんな俺に、あいつを愛し続けられるかな)

出来るはずだ

やらなければならない

胸がドキドキと高鳴って来る

楽しみ過ぎる、これから19090号と歩める日々が

テクパトル「ははは・・・そうか、俺は善人なんてくだらないもんにこだわり過ぎたのか」

今思えば、19090号は一度も「善人が好き」だなんて言ったことはない

ならば、テクパトルが善人になる必要なんてない

テクパトル(美月、俺はお前を愛し続けるぞ)

聞こえはしない誓いを、たった一人で立てる

自然と笑みが零れる

そう、やはり父親は偉大なのだ

あの父親は、本当に立派だ

偉ぶる様子はなく、しかし非常に19090号やテクパトルを気遣ってくれる

テクパトル(あの人達の息子になれるのも悪くはない)

むしろ満足だ、テクパトルは強く拳を握り締める

やってやる

必ず、テクパトルはやってみせる


テクパトル「ありがとう、義父さん」


514 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 16:49:15.33 ID:vvkVT0u20



ズキンズキン、とリズムよく脈打つ頭

ぼけーっとしながら天井を見つめ、しばしテクパトルは考えていた

あれ、俺はいつの間に寝てたんだ、と

テクパトル「…あぁ…頭いってぇ…」

フラフラと体を揺らしながら、テクパトルがベッドから体を起こす

昨日、旅掛に風呂場で説教を喰らったのは覚えている

問題はその後だ

テクパトル(…俺はパンツ一枚で寝てる、そして…美月と一緒に寝たのはたしかだ、つまり)

ほうほう、と頷きながら少し顔を赤らめる

テクパトル(…あれ、じゃあ美月はもう起きたってことか)

部屋の中には彼女はいない

こりゃ、ずいぶん遅い時間なのかと時計を見るがそうでもない

テクパトル(…とりあえず、一階に降りるか…)

用意してきたシャツとズボンに着替え、階段を下りる

テクパトル(そういや、みんなちゃんと家事とかやってんのかな…17600号がいれば大丈夫だろうけど)

家族の心配をしながら、リビングのドアを開けた


テクパトル「おはよう…」

美鈴「いけ!!そこだ、そこそこ!!」

テクパトル「…」

美鈴「あ、テクパトル君おっはよう!」

テクパトル「…なんで朝っぱらから格闘ゲームしてんだよ…」


515 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 20:21:21.86 ID:vvkVT0u20
美鈴「んー、だってね、みんなお買いもの行っちゃったから」

テクパトル「なに?」

くるり、と辺りを見回すも他の四人の姿は見つからない

つまり、テクパトルと美鈴だけが置いてけぼりなのだ

テクパトル「だが、義母さんはみんなが買い物に向かったときには起きてたんだろ」

美鈴「ありゃ、なんで分かったの?」

テクパトル「…だって買い物に行ったって知ってたし」

美鈴「置手紙があったかもしれないじゃん!!」

テクパトル「だとしたら俺も見つけてるはずだ」

美鈴「…まぁ、みんな仲良くお買い物だよ…美月ちゃんが、テクパトル君を置いてくのはいやだって言ったんだけどさ」

テクパトル「じゃあ俺が起きるのを待ってくれてれば…」

美鈴「でもでも、テクパトル君めちゃくちゃぐっすり寝てたみたいだし」

テクパトル「…」

そりゃそうだろうな、と苦笑しながらテクパトルがゲーム画面を指さす

テクパトル「どうでもいいけど、義母さんのキャラフルッボコだぞ」

美鈴「うわぁ!!やばいやばい!!」

テクパトル「…で、なんで義母さんは残ったんだよ」

美鈴「だってテクパトル君を一人だけにするのは不安だったから!!」ピコピコ

テクパトル(俺としてはこの人と二人のほうが脅威なんだが)

美鈴「あぁぁ!!!やられたぁぁ!!!!」

テクパトル「…子供か」


516 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 20:53:23.47 ID:vvkVT0u20
美鈴「はぁ…そうだ、朝ご飯食べちゃいなよ」

テクパトル「…そうだな、そうするよ」

テーブルの上には、19090号手作りの料理が並べられている

見ているだけで幸せになってしまうのだが、今は後ろに美鈴がいる

ここでにやけてしまうと冷やかされる

美鈴「にやけてるよテクパトル君」

テクパトル「…そ、そうか」

隠すなんて無理な愛情だったのだ、と開き直ってから料理を口に含む

テクパトル「うん、美味しいな」

美鈴「美月ちゃんったら、テクパトル君のために自分が作るって言い出したんだー」

テクパトル「…ほぅ」

美鈴「美琴ちゃんも上条君のために作るって言い出すし、パパは泣き出すし」

テクパトル「泣いたのか」

美鈴「娘の独り立ちってのは寂しいのさ…」フッ

テクパトル「アンタ誰だよ」

ため息をついて、最後のブロッコリーを口に放る

テクパトル「ごちそう様…さて、俺も出かけるかな」

美鈴「え、どこ行くの!?」

テクパトル「…なんで食いついてきたんだよ」

美鈴「だって私も出かけたいんだもん!!」

テクパトル「俺と二人でかよ…」

美鈴「いいじゃんか!!」

517 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/19(土) 21:18:50.20 ID:vvkVT0u20
テクパトル「…まぁ、義理の母親となら浮気にはならないか」

美鈴「え、もしかして女の子と二人で出かけるの美月ちゃん嫌がるの?」

テクパトル「いや…どちらかと言うと、俺が嫌だな」

美鈴「うわ、そんなにきっちりしてるとあとあと大変だよ?」

テクパトル「何がだよ…」

美鈴「こう、きっちりしすぎるとストレスたまるよ?」

テクパトル「…ま、まぁ…」

美鈴「ほらほら、とにかく今日は私とデートだぜ!!」

テクパトル(年上属性はないんだがなぁ…)

美鈴「よし、まずは服から買おうぜ!!」

テクパトル「もう持ってるだろ、大体そんなの俺とじゃなくて義父さんと買いに行けよ…」

美鈴「えー、たまには違う人と買いたいの!!!」

テクパトル「はぁ…分かったよ、でも手短に頼むぞ」

美鈴「よっしゃぁ、じゃあ着替えて着替えて!!」

テクパトル「?この服装でいいだろ」

美鈴「えー…だってテクパトル君、薄着してるとなんか怖いよ」

テクパトル「」

美鈴「まぁ厚着しても怖いけど」

テクパトル「…このままでいいだろ」ムスッ

美鈴「あっりゃー、もしかして怒った?」

テクパトル「んなことで怒らないって、それより行くんだろ」

美鈴「はーい!!」

518 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:05:18.51 ID:bhWo8Oq20
テクパトル「・・・で、服を買いに来たわけだが」

テクパトルが腰に手を当てながら、目の前の建物を見つめる

いや、正確には建物というより商店街だろうか

美鈴と残暑の中を歩くこと20分

学園都市でも中々お目にかかれないような商店街にたどり着いていた

美鈴「ここね、化粧品から服屋さんからなんでも入ってるの!」

テクパトル「・・・はぁ、分かってたさ・・・長い買い物になることくらい」

呆れたように美鈴を睨み、テクパトルが呪詛を唱える

美鈴「ありゃ、ならなんで一緒に来てくれたの?」

テクパトル「その顔をした女性には優しくしなきゃいけない、って本能が叫んだからさ」

肩を竦めて、テクパトルが商店街に足を踏み入れる

学園都市の、学生ばかりの道とは違う

年寄りと若者が入り混じっている、あちこちで客引きの声が聞こえる

本来の商店街というのはこういう物なのだろう

やかましいと感じるのもまた醍醐味

彼が住んでいたアステカにも、こういう商店街はあったような気がする

テクパトル「・・・にしても広いな、もしかしたら美月達も来てたりして」

美鈴「あー、十分有り得るねぇ・・・買い物するって言ったら、多分ここが一番だろうし」

テクパトル「なら美月を探すついでに買い物するか」


519 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:05:44.55 ID:bhWo8Oq20
美鈴「買い物がメインでしょ!」

テクパトル「・・・分かったよ」

美鈴「んじゃ、まずは化粧品から見ようか!」

テクパトル(いきなり専門外の分野なんだが)




美鈴「ひゃー!見て見て、最新モデルの香水だ!」

テクパトル「・・・なぁ、香水に最新モデルとか関係あるのか?」

美鈴「何言ってるの、匂いの配合が全然違うんだって!」

棚に並べられた中で、最も売れている香水を美鈴は手に取る

テクパトル「・・・香水なんて匂いがきついかきつくないか、しか興味ない」

美鈴「うわぁ・・・テクパトル君ってさ、もしかして割とファッションにルーズ?」

テクパトル「服を着飾るくらいなら体と心を飾りたいからな」

美鈴「もったいないよ!」

香水を差し出して美鈴がテクパトルをじっと睨む

美鈴「いい!?今は世の中、男の子だって香水をつける時代だよ!」

テクパトル「時代ってのは過ぎるもんなんだが」

美鈴「あとね、テクパトル君って筋トレが趣味なんでしょ!?汗くさいまま帰ったら美月ちゃんだっていやがるよ!」

テクパトル「嫌がられたことがないんだが」

分からず屋!と美鈴が叫ぶ

520 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:06:12.00 ID:bhWo8Oq20
周りの客はそんな二人を苦笑いして見つめている

テクパトル「・・・目立つから大声出さないで欲しい」

美鈴「じゃあ香水買いなよ!」

「お客様、男性でしたらこのモデルが大変人気となっております」

ここぞというタイミングで、店員が割って入る

テクパトル「あ、いや・・・」

美鈴「ですよね!男性は爽やかな匂いの香水をつけるもんだよ!」

「ですが、お客様ですと甘い香りの香水もお似合いかと思います」

テクパトル(・・・絶対に買わせたいんだろうな、この店員)

美鈴「もう、買っちゃいなよ!」

「奥様のオススメですし、ご検討・・・」

テクパトル「奥様?誰が」

「?」

美鈴とテクパトルを交互に見つめる店員

明らかに勘違いされている

テクパトル「あ、いや・・・俺達はそういうんじゃなくて」

美鈴「私はこの最新モデル、テクパトル君はこっちのコロンでいいよね!」

テクパトル「ま、待て!俺は別に・・・」

「お買い上げありがとうございます!」

ニコニコと笑いながら、店員が商品をレジへ持っていく


521 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:06:38.28 ID:bhWo8Oq20
テクパトル「・・・アンタと夫婦に見られるなんてな」

美鈴「私もまだまだ若いんだね!」

テクパトル「・・・」

そりゃそうだけどさ、とテクパトルが頭を抱える

なんだか嫌な勘違いをされたものだ




美鈴「さて!次は服だね、テクパトル君の!」

テクパトル「いらん」

次に二人が来たのは、男性服売り場だった

周りには若い男性が多い

美鈴「やっぱりテクパトル君はダボダボの服が好き?」

テクパトル「ジャストサイズは着れないからな」

美鈴「・・・となると、こういうの!?」

テクパトル「・・・あのさ、昔から思ってたんだが・・・御坂の血筋ってのは子供っぽい服が好きなのか」

美鈴が指差したのは、どう考えても中学生が着るような柄のものだった

美鈴「えー、だって子供にはこれくらいで十分だよ」

テクパトル「俺は大人だ・・・ったく」

くるり、と辺りを見回すが中々好みのデザインは見つからない

テクパトル「・・・あ、NEW ERAの帽子じゃねぇか!レンジャーズが今は熱いよなぁ・・・」

野球帽を手に取り、テクパトルが被ってみる

522 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:07:45.38 ID:bhWo8Oq20
美鈴「うわー、なんかいかにもスポーツ出来ますみたいな感じだね」

テクパトル「これ買う」

美鈴「・・・あ、もしかして帽子とか結構好きだったりするの?」

テクパトル「・・・いいだろ別に」

答えてから、テクパトルは同じ帽子の少し小さいサイズを手に取る

明らかにテクパトルのサイズではない物だ

美鈴「?」

テクパトル「これくらいかな、義母さんのサイズ」

美鈴「え、私の?」

テクパトル「お揃いだよ、いいじゃないか」

ポン、と少し乱暴に帽子を被せる

美鈴「・・・」

テクパトル「お、似合ってる似合ってる・・・やっぱり美人にはなんでも似合うもんだな」

美鈴「・・・テクパトル君ってさ」

テクパトル「?なんだ」

美鈴「・・・なんか、本当にミサカ誑しだね」

テクパトル「はぁ?」


結局、19090号の分も合わせて帽子を買った

美鈴「でもさ、美月ちゃんはこういうの好きなのかな?」



523 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:10:04.46 ID:bhWo8Oq20
テクパトル「俺とお揃いなら喜んでくれるんじゃないかな」

美鈴「まぁそうかもね」

テクテク、と歩くと今度は靴屋にたどり着く

美鈴「見ていく?私はブーツが欲しいんだ!」

テクパトル「見ないって言ってもどうせ行くんだろ・・・」

美鈴「分かってるね!」

テクパトル「ほら行くぞ・・・」

先に歩くテクパトルを見て、美鈴が小さく笑う

美鈴(若い頃の旅掛に似てるなぁ・・・)



テクパトル「・・・ブーツか、なんか義母さんのイメージにピッタリだよな」

美鈴「でしょ!?」

最新モデルのブーツを履いて、自慢げに美鈴が見せびらかす

テクパトルにはわからないが、女性というのはとにかく流行を追いたがる物なのだ

テクパトル「…流行なんて追って何になるんだよ…」

美鈴「うっわぁ、テクパトル君ったら時代遅れ!!」

テクパトル「時代とは流れるものだ、そしてそれに取り残されるのが人間の宿命だろ、無理矢理時代に礎を建てようとして失敗するから、いつも流行は廃れるんだ」

美鈴「あー、聞こえない聞こえない」

耳をふさぎ、美鈴が頭を振る

美鈴「あのさぁ、もうちょっと説教臭くなくなったらもっといい男だよ?」

テクパトル「…こいつは生まれつきだ」

美鈴「説教しながら生まれてきたの?」

テクパトル「もしかしたらな」


524 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 09:20:13.18 ID:bhWo8Oq20

美鈴「んー、これとこれと…でもこれもいいんだよね、どれにしようかな…」

テクパトル「義母さんのイメージに合うのはこれだよな」

テクパトルが指差したのはブラウン系統のブーツだった

美鈴「私もこれが一番いいと思うんだけどさ、やっぱり踏ん切りが…」

テクパトル「…だったら、これは俺のプレゼントってことでいいだろ」

美鈴「え…」

テクパトル「俺はさすがにブーツを3つも買ってやる金はないからな、一個しか買えないし」

美鈴「で、でもなんか悪いじゃん!」

テクパトル「こっちは迷われてるの見てる方が困るんだよ…」

言いながら、テクパトルがブーツをレジへと持っていく

思ったよりは安かったため、ほっと胸を撫でおろしたのは内緒だ

美鈴「な、なんかごめん…」

テクパトル「いいさ、親孝行ってのを一度してみたくてさ」

微笑みながらテクパトルがブーツの入った買い物袋を美鈴に渡す

テクパトル「ほら、義父さんには内緒にしてた方がいいんじゃないか?」

美鈴「まっさかぁ、パパも喜んでくれるよ、なんていい息子なんだ!って」

テクパトル「それならいいか」

ちらっ、とテクパトルが靴屋の店内を見つめる

視線の先には、彼の欲しかった靴がある

今美鈴にブーツをプレゼントしたため、所持金が足りず買えなくなったが

美鈴「?どうかしたの?」

テクパトル「いや、なんでもない」

行こう、とテクパトルが美鈴の手を引く

何の気なしに取った美鈴の手は、やはり19090号のものと少しだけ似ていた

525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/20(日) 10:27:47.98 ID:WO3oxM6Wo
周りから見たらどう見ても夫婦だな
526 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 18:24:19.58 ID:bhWo8Oq20

テクパトル(…そういや、美月達の姿が見えないな…)

もしかしたらこの商店街には来ていないのかもしれない

そう思って、携帯を取り出すと

美鈴「こらっ!!女性とのデート中に携帯なんて、嫌われるぞ!!」

美鈴に手をがっしりと掴まれた

テクパトル「…デートのつもりじゃないんだけど」

美鈴「えー、じゃあなに?」

テクパトル「介護…」

その瞬間、美鈴の踵がテクパトルの足の甲を踏みつけた

テクパトル「いってぇぇぇぇぇ!!!!」

美鈴「全く、テクパトル君はもう少し人の気持ちを考えられる人間にならないと」

テクパトル「アンタは人の痛みを知れ!!」

美鈴「…それより、美月ちゃん達はいないみたいだね」

テクパトル「…今俺もそれを思ってたんだ」

美鈴「!!もしかして、私達はどこからかつけられてたり!?」

テクパトル(…んなわけないだろうな)

くるっ、とテクパトルが振り返る

そして気づいた、少し離れた商店街の角から


めちゃくちゃ見慣れた4人の頭がひょっこり出ていることに


テクパトル(いたぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!)


527 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 19:28:58.98 ID:bhWo8Oq20

19090「…テっくん、お母さんとデートですか…」ムムッ

美琴「デートっていうよりは、二人で親睦を深めてるって感じね」

上条「でもこうやって見たら、夫婦っぽいよな」

美琴「まぁ、年齢差も…19090号とテクパトルだってあるんだし」

上条「そうだなぁ…」

旅掛「…あれ、テクパトル君がこっち見てるぞ」



テクパトル「義母さん、いたぞ」

美鈴「?いたって、何が?」

テクパトル「探し人だよ」

4人のいる方向を指さし、テクパトルが笑う

美鈴「あ、本当だ!!!」



上条「なんだ…もう見つかったのか」

19090「ちょっと残念ですね…」

テクパトル「よぉ、何してんだ?」

美琴「買い物してたら偶然二人がいるの見かけて…それで、暇だったから後をつけてみたの」

テクパトル「暇だったって…買い物しに来たんだろ?」

旅掛「それがさ、美琴と美月は買いたいものがたくさんありすぎて…」

テクパトル「美月、お前なぁ…」

19090「だ、だって可愛いぬいぐるみがたくさんあったんですよ!?」

美琴「そうよ、熊もライオンも猫も!!!」

上条「…まぁ、服よりは…まだマシだけどさぁ」

テクパトル「…上条と義父さんは買いたい物なかったのか」

旅掛「あぁ、特には」


528 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/20(日) 21:30:09.86 ID:bhWo8Oq20
テクパトル「…もったいないぞ、せっかく買い物に来たのに」

美鈴「へっへーん、私なんかテクパトル君にプレゼントもらったもんね!!」

帽子と靴を、美鈴が見せびらかす

19090「な、なんて羨ましい…」グググ

テクパトル「あぁそうだ…はい、お前にも帽子」

19090「!美月にも買ってくれたのですか!?」

テクパトル「あぁ、レンジャーズの試合を見に行くときは被っていこうな」

19090「はい!!」

上条「行くことあるのか、そんなの」

テクパトル「…あ、あると信じようぜ」

美琴「…にしても、よく19090号の頭のサイズが分かったわね」

テクパトル「あぁ、まぁ…な」

旅掛「愛している人のことはなんでも分かるのさ!!ってことか」

美鈴「ひゅーひゅー、熱いねぇ」

テクパトル「二人だって昔はそうだっただろ」

美鈴「まぁね!」

上条「…さて、6人揃いましたし、みんなで買い物するか」

美琴「そうね…黒子達にもお土産買わないと」

テクパトル「…垣根には香水でも買ってやればいいか」

旅掛「垣根君はそういうの好きそうだからな」

19090「女々しいですよね」

美鈴「なんか毒舌だね」

19090「彼がいるところでは言えませんから…」

テクパトル(…美月、たくましくなって…)


529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/20(日) 22:51:14.98 ID:3+Wu0f8f0
垣根って爽やかに陰口叩かれるなww

皆の「良いところもよく知ってるけど、同じくらい被害にも遭ってるから敢えて評価したくねぇー」感が素晴らしい
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 23:39:26.36 ID:o6M/9fjZo
おつにゃんだよ!
531 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 10:25:34.99 ID:5YTVVHPa0
テクパトル「・・・で、何を買いたいんだ」

19090「美月はぬいぐるみが・・・」

テクパトル「じ、実用性がある物だと俺も買いたいって気になるんだけどさ・・・」

美琴「ちょっと、ぬいぐるみがくだらないって笑うの!?」

テクパトル「誰もそこまでは言ってねぇだろ!」

上条「でも確かに・・・服とか靴とかなら買いたいけど、ぬいぐるみってさぁ・・・」

美鈴「美琴ちゃんは昔からぬいぐるみ、大好きだったよね」

旅掛「蛙が好きだったな、女の子にしては珍しく」

美琴「だって蛙って可愛いじゃない・・・」

テクパトル「可愛いか?」

上条「可愛い・・・とは思えないかな」

19090「二人とも何も分かっていません!キョロッとした瞳、少し不器用さを感じさせる水掻き、そして色彩豊かな緑色!蛙には美月をぐっとさせる魅力がたくさんです!」

テクパトル「本物の蛙はそんな生温いもんじゃないぞ」

美琴「だから、今はぬいぐるみの話なのよ」

旅掛「蛙なんて波紋流されるためにいるようなもんだからな」

上条「何言ってんだアンタ・・・」

美鈴「でも蛙って子供にも人気なんだよ?ケロケロケロッピとかもあったし」

旅掛「あったあった!懐かしいな」

テクパトル「・・・とにかく、蛙のぬいぐるみは実用性がないし・・・」

19090「テっくん・・・美月は、蛙のぬいぐるみが欲しいです」

ぎゅっ、と19090号がテクパトルの腕に抱き着く

少しだけ胸を押し付けるのがポイントだ


532 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 10:26:03.00 ID:5YTVVHPa0
テクパトル「だ、だがなぁ・・・」

19090「・・・テっくんに買ってほしいんです」

テクパトル「・・・」

助けてくれよ、と上条の方を見つめる

上条「あ、いや・・・俺を見られても」

美琴「当麻・・・私のこと好き?」

上条「もちろん!愛しているという言葉で足りない思いだ!」

美琴「だったら・・・買ってほしいなぁ」

上条「・・・」

上条が旅掛に助けを求める視線を送る

旅掛「二人とも・・・ぬいぐるみっていくらだ?結構高いだろ、簡単に買って買って・・・そんなに金は安くない!」

上条(い、いいぞ旅掛さん!)

テクパトル(いけ、義父さん!)

19090「・・・み、美月はただテっくんに・・・うぅ・・・」

美琴「そうだよね・・・無理言ってゴメンね当麻・・・」

上条・テクパトル「おい旅掛、表出ろよ」

旅掛「えぇぇ!?」

美鈴「まぁまぁ、ぬいぐるみも一つくらいなら買えるでしょ」

テクパトル「俺、もう所持金少ないんだよ」

テクパトルが財布の中を見せる

美鈴のブーツを買ったせいで、所持金は雀の涙ほどだ


533 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 10:26:36.59 ID:5YTVVHPa0
仲間に昼食を奢るのも無理なくらいの所持金

それでぬいぐるみを買えるだろうか

上条「・・・じゃあ、19090号は我慢か」

19090「あう・・・」

テクパトル(!み、美月が悲しがってる・・・どうにかしないと!)

美琴「テクパトル、アンタクレジットカード作ってないの?」

テクパトル「あ、それがあったか!」

テクパトルは基本的に現金払いをするようにしている

あまり無駄に買い物をしないためだ

19090「!じゃ・・・じゃあ、買えますか?」

テクパトル「・・・まぁ、一つだけなら」

19090「テっくん、大好きです!」

ぐぐっ、と19090号が抱き着く力を強くする

旅掛「くぁぁ!妬けるなぁテクパトル君!」

美鈴「よっ、男の鑑!」

テクパトル「・・・なんかこうやってせがまれるのに弱い男って駄目な気がする」

上条「まぁ・・・今は若いんだしいいだろ」

美琴「19090号だって喜んでるわよ」

19090「んふふー、テっくんにぬいぐるみ買ってもらえます!」

テクパトル(・・・この笑顔のためなら、まぁ)


534 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 10:33:35.79 ID:5YTVVHPa0
上条「ん?なんだよテクパトル、ニヤニヤしちゃって」

テクパトル「ニヤニヤなんかしてねぇよ・・・上条こそ、義姉さんが喜んでるのが嬉しいんじゃないか?」

上条「当たり前だろ、美琴の笑顔が見られるなら幾らだって出しますよ!」

美琴「・・・貧乏なんだから無理しないの」

上条「・・・はい」

美鈴(上条君・・・こりゃ将来、尻に敷かれるな)



上条「うお…すっげぇ、ぬいぐるみってこんなに種類あるのか」

テクパトル「こいつは驚きだな…」

ぬいぐるみショップに着いた二人は、辺りを見回している

美琴「でしょ!!奥が深いのよ」フフン

19090「えっと、美月が欲しいのはこの蛙さんなんです!!」

美琴「私は、こっちの蛙!」

美鈴「…そうだ、ついでに私にも買ってよ、パパ」

旅掛「そうだな、まぁそんなに値段は張ってないし」

上条(いや、張ってますが…)

テクパトル「…蛙…か」

美琴「?どうしたの?」

テクパトル「…俺、蛙って苦手なんだよなぁ…本物のは」

19090「?テっくんってば女の子っぽいですね」

テクパトル「だってさ、あれって鶏の味しかしないだろ?」

一同(食うのかよぉぉぉ…)


535 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 20:20:42.71 ID:5YTVVHPa0

テクパトル「…にしても、本当に今のぬいぐるみは出来がいいな」

ライオンのぬいぐるみを手に取って、テクパトルが感心したように呟く

たしかに、目は生気が宿っているようだし、毛も本物のようにさえ感じられる

美琴「そうそう、今じゃぬいぐるみってのは子供のおもちゃじゃなくて、可愛いファッションなんだから!!」

上条「でもさ、ファッションのためにぬいぐるみ買うってのはどうなんだろうな」

テクパトル「俺には理解できないが…ま、そこは人それぞれだろうな」

19090「そうですよ、ぬいぐるみは夜に抱き枕の代わりに出来ますし…」

上条「ダニが心配だな」

美琴「たくさん揃えれば、並べて動物園!!なんちゃって…」

上条「スペースの無駄だな」

一同「…」

上条「な、なんだよ…?」



テクパトル「あれが噂の幻想殺しか」

美琴「そうそう、あぁやって女の子の夢まで砕くのよ」

美鈴「なんかさぁ、ああいう男子ってたまにいるよねー」

旅掛「俺はあんなこと、口が裂けても言えないなぁ」

19090「あぁいうことを言う男性は、ちょっと…」

美琴「ま、まぁその不器用さも当麻の良さだけど…」

テクパトル「少なくとも、垣根や削板はああいうこと言わないな」

美鈴「そうそう、気を遣える男性がいいよ」

美琴「と、当麻だって気を遣ってくれるし…」

19090「正直…ちょっと、めんどくさいです、ああいう男性」

上条「」


536 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 20:25:36.41 ID:5YTVVHPa0
テクパトル「…ついでに俺も買おうかな…カードあるし」

金の無駄遣いは嫌いだが、思い出のためだ、と踏ん切りをつける

テクパトル「…男ならやっぱジャガーだよなぁ…」

旅掛「お、テクパトル君はジャガー派か」

テクパトル「あぁ、テスカトリポカのナワルだし」

19090「?」

テクパトル「…そ、それにジャガーってかっこいいからな」

美琴「うーん…私は、かっこいいなら虎だと思う」

美鈴「えー、豹だよ豹!!」

上条「いやいや、やっぱり百獣の王ライオンでしょう!!」

テクパトル「じゃあ、上条はライオンのぬいぐるみでも買うのか」

上条「お、俺は遠慮しとくよ、金ないし」

美琴「…私が出そうか?」

上条「い、いいです、面目ないし…」

テクパトル「上条…その、なんだ…貧乏なのは、その、努力でなんとかなるさ」

19090「お義兄様、人生これからですよ!!」

上条「そういう慰め方は逆に傷つくからやめてぇ!」

旅掛「…んじゃ、みんな自分の買いたいぬいぐるみは決めたか」

美鈴「うん!」

テクパトル「…なんかさ、俺がぬいぐるみ買うのって似合わないよな」

19090「そうですか?なんだか可愛くていいと思いますけど…」

テクパトル「か、可愛いか?」

美琴「ううん、全然」

テクパトル「」

537 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 20:29:54.73 ID:5YTVVHPa0

旅掛「さてと…次はどうする?まだ昼飯には時間あるしさ」

テクパトル「…じゃあ、ちょっと私事だけどいいかな」

美琴「いいけど、何か買いたいの?」

テクパトル「…ネックレスを」

上条「お、お前…ネックレスとか好きなのか」

美鈴「なになに?そのネックレス、いざとなったら振り回して武器にするとか?」

テクパトル「なぁ、俺のイメージって暴力なのか?なぁ、なぁ?」

旅掛「じゃあ、なんでネックレスを?」

テクパトル「…美月にプレゼントしたくて」

ポリポリ、と頭を掻きながらテクパトルが笑う

少し顔を赤らめるのが、好印象のポイントだ


美鈴「美琴ちゃん、こういうのってどう思う?」

美琴「結構いいと思う、当麻とは違ったアプローチかな」

旅掛「うぉぉ、男ながら今のは憧れるな…」

上条「…そうか、そういうプレゼント方式が女の子は好きなのか…」

19090「み、みみみみみ美月にプレゼント…」カァッ

上条「効いてるぞこれ!」

テクパトル「…やっぱさ、金を使うなら…その、愛のためだろ」

美鈴「聞いた!?おおよそリアルでこんな言葉聞くなんて信じられないよ!!」

美琴「夢じゃないかしら!?」

テクパトル「ひっでぇ母娘だな」

538 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/21(月) 20:34:27.85 ID:5YTVVHPa0

19090「と、とりあえず…アクセサリーショップに来ましたが」

上条「…なんか、俺ってあんまりこういうところ来ないんだよな…」

旅掛「俺も、あんまり来ないな」

ショーケースの中には指輪が飾られ、あちこちにネックレスやイヤリング、ピアスが飾られている

19090「…きらびやかですね…」

テクパトル「…あ、あのネックレスとか美月には似合いそうじゃないか?」

美鈴「お、さっそく品定め?」

テクパトル「何事も、善は急げだ」

美琴「でもさ、愛情には時間を掛けたいわよね」

上条「…」

テクパトル「…」

美鈴「…」

美琴「な、なによ!?」

上条「いや、美琴ってさ…昔から思ってたけど、恋愛観がわりと成熟してるよな」

テクパトル「というか、昭和くさいよな」

旅掛「いや、俺はいいと思うけどな、そういうの」

美琴「何よ!!愛情には時間を掛ける、これが常識でしょ!?」

テクパトル「その割に告白のその日にキスとかしてそうだけどな」ケラケラ

上条・美琴「!?」

テクパトル(あ、図星でしたか)

19090(図星だったんですね…)

美琴「と、とりあえず!あれがいいこれがいい、よりもカップルで見て回るのって大切じゃないの!?」

テクパトル「分かったから…それじゃ、カップルに分かれるか」

美鈴「オッケー!」

539 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:13:51.10 ID:pokQSIJs0



テクパトル「・・・美月はやっぱり、可愛いネックレスがいいよな」

19090「テっくんが選んでくれたのなら、なんだっていいですよ?」

二人が見ていたのはネックレスだ、テクパトルの身勝手だが、彼は19090号にネックレスをあげるのが好きだった

彼女にはネックレスが似合うと思っている

何かをプレゼントしろ、と言われたらまず思い浮かぶのはネックレスだ

テクパトル「なぁ、美月はネックレス、好きか?」

19090「大好きです!」

テクパトル「はは・・・そっか、ならいいんだ」

19090(あなたがいつも贈ってくれたから・・・なんて言えないですよね)

テクパトル「・・・やっぱりペアがいいよな、いっつもそうしてたし」

19090号は今もネックレスをつけている

ちなみに、それは彼女が一時的に記憶を無くしていた時に買ってもらったものだ

それを着けているだけで、彼が自分を救ってくれたことを思い出せる

19090「・・・テっくん」

ぎゅっ、と19090号がテクパトルの手を握る

テクパトル「?どうした美月」

19090「・・・あ、愛してます!」

テクパトル「?あぁ、俺も愛してるぞ」

19090「//」

顔を赤くしながら微笑む19090号を、テクパトルは首を傾げながら見ていた


540 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:14:16.54 ID:pokQSIJs0
テクパトル「・・・あ、これとか俺は好みだな」

19090「・・・少しごついですね」

テクパトル「っと、悪い悪い・・・美月とペアなら、軽いのにしないとな」

くるりと辺りを見回し、彼女の負担にならなそうなネックレスを探す

テクパトル「・・・これとかどうかな」

19090「美月は大好きなデザインですけど・・・」

テクパトルが手に取ったのは、お世辞にも大人っぽいデザインとは言えない物だった

中学生が着けていたら微笑ましいが、高校生が着けていたらセンスを疑う、まして大人が着けていたらおかしいとさえ思われるようなデザインだ

トップにイルカをあしらっている、なんて男性が着ける物とも言えない

テクパトル「構わないさ、お前と一緒なら」

19090「!で、でしたらこれがいいです」

テクパトル「分かった」

19090「・・・」

テクパトルの言葉にドキドキとしながら、19090号はふとショーケースの中を見つめた

様々な指輪やブローチが飾られているその中に

テクパトルに似合いそうな、ごついリングが飾られていた

19090「あ・・・これ、テっくんに似合いそうです!」

テクパトル「ん?あぁ、こういうのは好きだな」

19090「・・・でも、さすがに美月じゃ買えない値段です・・・」

テクパトル「・・・」

19090号がなぜ、自分で代金を出したいなんて言うのか

541 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:14:44.11 ID:pokQSIJs0
しばし考えてから、テクパトルは納得する

そういえば、二人がアクセサリーを買うときは必ず、テクパトルが代金を出していた

指輪だって、テクパトルが代金を払った

だからこそ、今回くらいは自分で払いたいのだろう

テクパトル「・・・これ、買おうかな」

19090「!み、美月がプレゼントしてあげたいです・・・」

テクパトル「・・・」

19090号の言葉を無視して、テクパトルが店員にその指輪を購入する旨を伝える

カードで支払いを終えたテクパトルは、すっと指輪の入った袋を19090号に渡す

19090「?」

テクパトル「ほら、お前にやるよ」

19090「で、ですが・・・」

テクパトル「俺からのプレゼントだ、だからこれはお前が好きなように使っていい、友達にあげてもいいし捨てたって構わない」

そして、とテクパトルが笑う

テクパトル「別に、俺にプレゼントしてくれたって構わないんだ」

19090「!」

どうしてこうも、彼は優しいのだろうか

高鳴る胸を押さえながら、19090号は指輪を取り出す

ごつい指輪だ、やはり19090号には似合わない


542 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:15:12.52 ID:pokQSIJs0
19090「・・・あ、あの」

テクパトル「なんだ?」

19090「これ・・・その、美月からのプレゼントです」

テクパトル「ありがと」

ニコリと笑ってから、テクパトルがそれを「左手の薬指」に着ける

19090「!」

テクパトル「っと、このネックレスも買います」

「ありがとうございます」

店員にネックレスを差し出し、テクパトルが代金を払う

テクパトル「美月、はい」

19090「・・・」

テクパトルの手からネックレスを受け取り、すぐさま首に下げてみる

19090「ど、どうですか?」

テクパトル「似合ってる、綺麗だ」

19090「・・・」

店員が微笑んで二人を見つめている

19090「あ・・・あの」

テクパトル「?」

19090「・・・」

何も言えない、口の中がカラカラに乾いて顔は火照っている

だから、とりあえずテクパトルの手を取って恥ずかしそうにモジモジと腰をくねらせる

それを見たテクパトルは、苦笑いしてから彼女を引っ張っていく

テクパトル「何か言いたかったんじゃないのか?」

19090「・・・あ、愛してます!」

テクパトル「俺も愛してる」

先程ともう一度同じことを言って、二人は店の出口へと向かう



543 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:15:38.67 ID:pokQSIJs0


上条「・・・やっぱり、美琴はネックレスよりヘアピンか」

美琴「えへへ・・・このヘアピンね、昔当麻が可愛いって言ってくれたから着けてるんだ」

美琴が指差したのは、花をモチーフにしたヘアピンだ

ちなみに上条は、そんなことを言ったのは覚えていない

しかし美琴が笑いながら言う、ということは記憶を無くした後の出来事なのだろうか

上条「うん、美琴が着けてるから可愛いな」

美琴「あう・・・」

カァッ、と顔を赤らめる美琴

子猫のように、強く抱きしめたくなる可愛さだ

店内であるにも関わらず、上条は美琴を抱きしめてしまう

美琴「にゃっ!?」

上条「あぁもう!美琴さん、可愛すぎです!」

美琴「こ、ここお店だからそんなに大声出さないの!」

上条「ん?別に恥ずかしいことじゃないんだけどなぁ」

美琴「わ、私だって恥ずかしいとは思ってにゃいわよ!?」

上条「猫みたいになってますよ」

美琴「そ、それよりどのヘアピンがいいかしら!?」

上条の腕を優しく解いてから、美琴が品定めを始める

ヘアピンというのは意外に種類が多い、割と人気な商品なのだろうか、と上条は考える


544 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:16:05.42 ID:pokQSIJs0
上条「うーん・・・美琴に合いそうなのは・・・」

あんまり子供っぽいのは良くないよな、と思いながら品定めをする

上条「あ、これは?シンプルでいいだろ」

美琴「うーん・・・悪くはないけどちょっと地味かな」

上条「そうか・・・俺はこういうのも美琴に似合うと思うけどなぁ」

美琴「わ、悪くはないのよ!?」

上条「?あぁ、分かってるけど」

なんでそこに念を押したのか分からない上条は、鈍感である

美琴「・・・ん、これとか私は好きかな」

美琴は猫の形をしたヘアピンを選ぶ

上条「な、なんとも美琴らしいな」

美琴「・・・何よ、なんか子供っぽい、みたいな目してるけど」

上条「いや・・・だってさ、ちょっと・・・その、子供っぽい」

美琴「わ、私が子供趣味だって知ってるでしょ!」

半ば自棄な美琴が涙目で訴えてくる

上条「べ、別に悪いなんて言ってないからな!?そういうのも美琴の魅力だし!」

美琴「あ・・・うん」

モジモジと手を揉む美琴を見て、上条が安堵のため息をつく

上条「・・・あ、これは?」

美琴「・・・月の形のヘアピン、か」

上条「?どうしたんだ」

美琴「ううん、これは遠慮しとく」

19090号に悪いわ、と美琴が苦笑する


545 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:16:31.82 ID:pokQSIJs0
上条「・・・じゃ、これは」

美琴「あ、これいいかも」

上条が手に取った、♪マークを象ったヘアピン

美琴は音楽にもそこそこ興味があるため、中々似合いそうだ

上条「じゃ、これにしますか」

美琴「待った!」

すぐさまレジへ行こうとする上条を、美琴が引き止める

上条「?どうした」

美琴「まだ当麻の分、選んでないから」

上条「お、俺はヘアピンなんて着けないけど」

美琴「ヘアピンじゃなくて」

ネックレスとかないかしら、と美琴は見渡す

しかし、上条はあまりネックレスを着ける趣味はない

土御門が着けているのを見て、重たそうだなといつも呆れていた

上条「・・・あ、俺ベルトなら欲しいな」

美琴「ベルト?」

上条「ほら、基本的に制服でいることが多いだろ?だからさ」

美琴「数少ない、オシャレってことね」

うんうん、と頷いて美琴がベルトを探す

美琴「うわ、穴が大きいベルト・・・」

上条「お、カッコイイな」

美琴「カッコイイ?なんか私、バックルでかいベルトとか不良っぽくて好きじゃないのよね・・・」

546 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:16:58.32 ID:pokQSIJs0
上条「そっか・・・」

美琴「・・・こっちのシンプルなのなら、社会人になっても使えそうじゃない?」

上条「社会人・・・」

社会人なんて何年先だろう、と上条が苦笑いする

彼の成績では、まだしばらく先なのではなかろうか

上条「・・・でもこれじゃ今持ってるのと大して変わらないからな・・・」

美琴「・・・」

上条「・・・」

美琴がせっかく選んでくれたベルトだ、オシャレな物を身につけるより、よっぽど幸せではあるだろう

何より、土御門達に自慢も出来る

上条「じゃ、これにするかな」

美琴「!いいの!?」

上条「あぁ、美琴が選んでくれたのが一番だからな」

美琴の頭を撫でながら、上条がレジへと向かう

「・・・?」

レジの店員が不思議そうな顔をしている

恐らく19090号を見たのだろう

上条「あの、これとこれ、下さい」

「畏まりました」

美琴「・・・にしても、お母さん達は何か買うのかしら」

上条「うーん、そういえば」

レジに表示された値段に一瞬焦りながらも、上条は美琴の話に相槌を打った

あの二人は、何か買うのだろうか

547 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:17:27.37 ID:pokQSIJs0


美鈴「・・・パパ、やっぱりパパにネックレスは似合わないよ」

旅掛「あれ、仕事先で会った人に似合いそうって言われたんだけどな」

当の二人は、ネックレスを身につけて遊んでいた

最初から買うつもりはない

似合うかなー、なんて遊び半分で着けているだけだ

店側からしたらいい迷惑だが、娘達が売上に貢献しているはずなので別に後ろめたくなんかない

旅掛「美鈴にもほら!」

美鈴「きゃっ、冷たい!」

突然ネックレスを掛けられた美鈴がそんな声を上げる

旅掛「はは!そういや昔、デートでお揃いの指輪を買ったっけ」

美鈴「・・・私、今でも大事に取ってあるんだ、あれ」

旅掛「え、美鈴もか」

美鈴「!パパも!?」

旅掛「あぁ、今はお守りの中に入れてる」

旅掛がポケットからお守りを取り出す

その中から、少し小さなサイズの指輪を取り出して見せた

美鈴「本当だ!」

旅掛「さすがに指には嵌められなくなったけど、捨てられる訳無いしさ」

美鈴「旅掛・・・」

旅掛「美鈴・・・」

じっと見つめ合い、二人の唇は段々と近づき・・・


テクパトル「なにやってんだ店の中で」

テクパトルに遮られた

548 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/22(火) 08:18:03.89 ID:pokQSIJs0
美鈴「あぁもう!今めちゃくちゃいいムードだったのに!」

テクパトル「知るか!っていうか店の中だぞ!」

19090「二人とも、そういうのは家でやって下さい!」

旅掛「くっ・・・娘にこんな正論言われたら・・・」


美琴「全く、恥ずかしいったらありゃしない」

美鈴「ありゃりゃ、美琴ちゃん達も買い物終わったんだ」

上条「・・・出口に向かおうとしたら二人を見つけて」

美琴「はぁ・・・いい歳して何やってんのよ」

旅掛「いい歳だからこそ、妻との愛情を確かめたかったのさ!」

テクパトル「確かめるなら家でやれ・・・俺達も買ったぞ」

19090「では・・・食事にしますか?」

旅掛「あー・・・でもこの商店街って、たしかかなり店が混むんだよな」

美鈴「お客さん多いからね」

上条「じゃあ、手分けして探すか」

テクパトル「俺はあっち探すよ、上条は向こう・・・義父さんと義母さんは向こうを頼む」

旅掛「ラジャー!」

19090「あの、美月とお姉様は・・・」

テクパトル「二人はここで待っててくれないか」

上条「そうだな・・・女の子に歩かせるのは可哀相だし」

美鈴「ちょっと!私だって女の子だぞ!」

テクパトル「でも義母さん、義父さんと一緒にいたいだろ」

美鈴「当たり!」

19090「み、美月だってテっくんと一緒にいたいです!」

テクパトル「いや・・・ほら、荷物見張っててほしいし」

美琴「・・・分かった、袋貸して」

全員から買物袋を受け取り、美琴がそれを手にぶら下げる

美琴「とりあえず、いい店が見つかったらまずはここに来て、見つからなくても帰ってきてちょうだい」

テクパトル「そうだな、どこにするかは集合してから話し合おう」

549 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:01:42.95 ID:tub4D+1J0
美琴「・・・なんか、やっぱり待たされる側って慣れないわ」

19090「?お義兄様はいつもお姉様を待たせるイメージがありますが・・・」

美琴「あぁ、まぁ・・・それは別として」

アクセサリーショップのすぐ近くで、二人は話をしていた

他の4人は必死に昼飯の在りかを探している

ご苦労様だな、と思いながらも自分達は楽を出来て喜んでいたりする

美琴「・・・テクパトルは待たせはしないの?」

19090「テっくんは・・・告白までは美月を待たせました」

美琴「あぁ、そういうこと」

ははは、と苦笑いしながら美琴がふと辺りを見回す

すると、いかにも「軽い男」みたいな三人が近づいてきているのが見えた

美琴「・・・」

「ねぇ、もしかして君達暇なの?」

19090「え、あ・・・」

「お、双子なんじゃねぇの?」

「へぇ、両方可愛いねぇ」

美琴「どうも」

めんどくさい、と思いながらも美琴は愛想笑いを浮かべる

彼女はよくスキルアウトに絡まれていた、だから対処法も分かっている

まずはあまり敵意を剥き出しにしないこと

550 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:02:20.03 ID:tub4D+1J0
すると相手も手荒な真似はしてこない

まぁ、それが出来なかったことも多々あったのだが

「なぁ、暇なら俺達と飯にしない?」

「奢るからさ、いいだろ?」

19090「で、でも・・・」

「俺はこっちの子が好みだな、内気っぽくて可愛いし」

19090「!」

男の一人が馴れ馴れしく19090号の肩に手を回す

美琴「ちょっと!私の妹に手出さないでよ!」

「お、こっちはお姉ちゃんだ!」

「へぇ、俺って気の強い子も嫌いじゃないぜ」

ニヤニヤ笑いながら、また他の男が美琴に近づいてくる

美琴(・・・めんどくさいし、電撃・・・はダメね、通行人が多すぎるわ)

「なぁ、遊ぼうぜ?」

ぐっ、と美琴の手が引っ張られる

単純な腕力では男に勝てるわけはない、ぐらっと美琴の体が揺れる

美琴「は、放してよ!」

「あんま大声出すなって、可愛い顔が台なしだぜ」

ケラケラ、と三人が笑い出す

19090号もどうすればいいのか分からないのだろう、さっきから俯いたままだ

美琴(こんなヤツら・・・!)

能力を使いたくて堪らない衝動を抑える

「じゃあ、どこ行くか・・・あ?」

男の一人が、通りの先をちらっと見た

551 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:02:52.91 ID:tub4D+1J0


BGM カルミナ・ブラーナ

テクパトル「・・・」


上条「・・・」



所謂、鬼の形相というヤツだ

通行人はズズズ、と道を開ける

統率が取れたその動きは、何も訓練をして身につけた物ではない

ただ本能が「こいつら怒ってるしなんかヤバい」と訴えかけた結果だった


美琴「と、当麻!」

19090「テっくん!」

「な、なんだあいつら・・・この子達の知り合いか?」

「落ち着けって・・・ほら、こっち三人だし・・・」

カルミナ・ブラーナがサビに入る


テクパトル「・・・」

上条「・・・」

ドドドドドド、という擬音が聞こえるのは気のせいなのだろうか

いや、きっと彼等の怒りは地響きになっているのだ

「な、なんかヤバくねぇか!?一人かなり筋肉あるぞ!?」

「も、もう一人だってなんか修羅場潜ってきましたって顔してないか!?」

「だ、大丈夫だって!ほら、こっち三人だし!」



552 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:03:18.52 ID:tub4D+1J0


テクパトル「・・・よぉ、美月に随分馴れ馴れしくしてくれたな」

上条「美琴に気安く触るなんて、いい度胸だなお前達」

三人「ひぃっ!?」

19090「テっくん、あ、あの・・・」

テクパトル「昼飯、美味そうな店見つけたぞ」

上条「そいつは助かる、こっちは見つからなかったって報告に来たとこだったんだ」

美琴「そうだったんだ・・・」

三人「じゃ、じゃあ俺達はこの辺で・・・」

テクパトル「ちょっと待てよ」

ガシッ、とテクパトルが一人の腕を引っ張る

あまりの握力にバキッ、と拳が鳴った

「いたたたた!」

テクパトル「謝罪の言葉は」

「な、なんだよ!?俺達はこの二人が彼氏持ちだって知らなかったから・・・」

上条「知らなかったからなんだ」

「そ、それは」

テクパトル「美月の肩に回したのはどっちの腕だった」

「だ、だから悪かった・・・」

テクパトル「左右どっちだ」

「み、右です」

上条「美琴の手を握ったヤツ、どっちだ」

「お、俺も右です・・・」

テクパトル「そうか、残念だったな・・・利き腕がしばらく使えなくなるなんて」


三人「!?」


553 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:03:47.01 ID:tub4D+1J0
上条「いやぁ、悪かったなぁ、俺、お前達が右利きなんて知らなかったからさ」

「ひ・・・ひぃぃ!?」

テクパトル「お仕置きってヤツさ、分かるよな、ガキの頃母親に尻を打たれたことはないか?」

「わ、悪かったってば!な、頭下げるから・・・」

テクパトル「美月、この三人に絡まれてどんな気がした」

19090「い、嫌でした・・・美月はテっくん以外の男性に馴れ馴れしく触られたくありませんから」

上条「美琴、この男に手を握られた感想は」

美琴「な、なんか怖かった・・・下心まる見えだったし」

テクパトル「・・・」

上条「・・・」

すでに土下座の体勢になろうか、という男達を二人は見下ろした

「そ、そいつは人を見下した目だぁ!」

「舞台で拍手喝采を浴びてるマドンナを、既に自分の物にしてしまっている男の目だぁ!」

「観衆達の拍手を浴び、羨望を得ているマドンナが自分の女であるという優越感とそれを知らない観衆達を哀れに思っているような目だぁ!」

テクパトル「覚悟は出来たか、右腕を出せ」

上条「右手、貸せよ」

「ひぃっ!」

テクパトル「減点だ、しかも赤点だぜ」

上条「俺の女に気安く触るんじゃねぇよ」

554 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:04:22.53 ID:tub4D+1J0


すいませんでしたぁ!と泣きながら男達は去っていく

美琴「さ、さすがに怖がらせすぎでしょ・・・」

19090「何もあそこまでしなくても・・・」

テクパトル「・・・」

何も言わずにテクパトルは19090号の肩に手を回す

19090「?」

テクパトル「・・・」

上条「・・・」

上条も、無言のまま美琴の手を握る

美琴「?どうしたのよ、突然」

テクパトル「さて、義母さんと義父さんが帰って来るのを待つか」

上条「そうだな、レストラン見つかったのか?」

テクパトル「あぁ、ファミレスだが問題ないだろ」

上条「まぁな、前菜が最悪なまずさだったけど」

美琴(な、なんか当麻・・・怒ってる?)

19090(・・・テっくん、もしかしてヤキモチを・・・)


旅掛「いやぁ、悪い悪い!探し回ったんだけどなかったよ・・・ってどうした?やけに空気が殺伐としてるな」

美鈴「ホントだね」

遅れてやってきた二人は、先程の出来事など知る由もない


555 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:04:48.57 ID:tub4D+1J0
上条「別に、なんでもないですよ」

テクパトル「こっちはファミレス見つけたから、そこにしないか」

美鈴「!よかった、見つかったんだ!」

旅掛「はぁ・・・一件落着だなぁ」

美琴「そ、そうね」

19090(こっちは一騒動でしたよ・・・)


お子様ランチのおまけがゲコ太グッズだった、そのため美琴と19090号は一度それを頼もうとしたのだ

もちろん、中学生がそれを頼ませてもらえるわけはなかったのだが

テクパトル「そうがっかりするなよ」

上条「そうそう・・・別に限定品じゃないんだろ?」

美琴「限定品じゃなくてもそこにゲコ太がいれば手を伸ばしたくなるの・・・」

19090「・・・美月もゲコ太、欲しかったです・・・」

美鈴「相変わらずそのキャラクター、大好きなんだね」

美琴「私が小さい頃からのアイドルよ!」

旅掛「・・・まぁ、中学生にしたら幼い趣味だよな」

19090「お父さんの分からず屋!」

旅掛「」

テクパトル「・・・とにかく、お子様ランチは諦めて別のを注文するぞ」

テクパトルがメニューを広げる

これといって代わり映えはない、いかにも「ファミレス」という感じの品ばかりだった


556 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:05:15.22 ID:tub4D+1J0

上条「俺はハンバーグ定食でいいかな」

美琴「じゃあ私は、チーズハンバーグ定食」

19090「美月はサイコロステーキがいいですね・・・」

旅掛「俺はステーキでいいかな」

美鈴「みんなカロリー高そうなの食べるねぇ・・・私はこのスパゲティーでいいや」

テクパトル「俺はこのステーキ定食とチキン南蛮定食で」

一同「・・・」

テクパトル「な、なんだよ」

上条(なんかインデックスと同じ物を感じるな)

旅掛(太っちまえ)

美鈴「・・・じゃ、店員さん呼ぼう」

ピンポン、とベルを鳴らす

やって来た店員さんに注文を伝え、そのあとドリンクバーを各々が取りに行く

上条「テクパトルって炭酸好きなのか?」

テクパトル「好きってわけじゃないけど、喉越しがさっぱりしてるからな」

19090「美月はオレンジジュースにします!」

テクパトル「ん、お前は相変わらずだな」

美琴「ちょっとお母さん!並々注がないの!」

美鈴「こうしたら、ドリンクバーに来る回数を減らせるのだ!」

美琴「零すわよ!そしてお父さん!ジュース何種類も混ぜないの!未元物質になってるじゃないの!」

旅掛「なんか常識が通用しない味になりそうだよなぁ!」

テクパトル「・・・美月、俺達はああいうことを子供にさせないよう育てような」

19090「!あ、あ・・・//」

テクパトル「なんでそこで照れるんだ・・・」


557 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:05:41.58 ID:tub4D+1J0


上条「・・・にしても、この面子でファミレスっていうと大覇星祭を思い出すな」

美琴「たしか・・・あの時初めてテクパトルと19090号は二人に会ったのよね」

テクパトル「あぁ」

美鈴「いやぁ、まさか美琴ちゃんに妹が出来てたなんて知らなかったけどね」

旅掛「全く、学園都市も好き勝手やってくれるよな」

テクパトル「だが俺は美月や他のみんなに優しさを教えてもらった、過程は汚れた物だろうが、俺は感謝してるさ」

上条「だな、生まれてきたからには人生楽しまなきゃ!」

美琴「当麻は楽しみすぎなのよ」

上条「ど、どこが?」

美琴「魔術なんていう訳の分からない勢力とパイプが出来てると思ったら、一方通行に勝利する、終いには第三次世界大戦の終結に関わるヒーロー、こんな密度高い人生なんてそうそう送れないわよ」

テクパトル「全くだな」

美鈴「え、上条君ってそんなにすごかったの!?」

上条「いやまぁ・・・偶然巻き込まれたっていうか」

美琴「心配するほうの身にもなってみなさいよね?」

上条「でも美琴がいるから帰って来たい、って思えるんだぜ?」

美琴「あ、当たり前でしょ!帰って来なかったら泣くんだから!」

旅掛「お二人さん、惚気もそこら辺にしときな」

テクパトル「大声出すから周りに注目されてるぞ」

ジロジロと周りの客が二人を見つめている

何やらヒソヒソ話しては笑っているようだ


558 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:06:08.03 ID:tub4D+1J0
上条「わ、笑われてる・・・」

旅掛「愛情なんて周りから見たらそんなに大したもんには見えないのさ」

美鈴「本人達は幸せの絶頂だけどね・・・っと、来た来た!」

ウェイトレスが慣れた手つきで料理を運んでくる

19090「・・・フリーズドライや冷凍食品のオンパレード、なんて一方通行は言っていましたね」

テクパトル「なんともあいつらしいな」

上条「でもさ、誰と食べるかによって味って変わるよな」

美琴「そうそう、一番大事なのは何を食べるかじゃなくて誰と食べるかなのよね」

旅掛「こんなに美味しい昼飯、俺は中々味わえないな」

美鈴「いつも一人で食べるの?」

旅掛「いや、取り引き先の相手と食べたりするな、酒の肴は商談だよ」

19090「なんとも嫌な風景ですね・・・」

旅掛「食事ってのはプライベートなのに、あいつらそこにまで書類とハンコ持ってきやがるからなぁ」

テクパトル「なんだか大変な仕事なんだな」

旅掛「やりがいもあるさ」

笑いながら、旅掛は肉に食らい付く

19090「テっくん、あーん」

テクパトル「あーん」


559 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 08:07:36.88 ID:tub4D+1J0
美鈴「!み、美月ちゃんったら意外と大胆だね!」

旅掛「あぁぁ目の前で娘が旦那にあーんなんてしてるよぉ!」

19090「あ、あんまり冷やかさないで下さいよ・・・」

美琴「当麻、あーん」

上条「あーん」

旅掛「こっちまで!?」

テクパトル「そういや美月に食べさせてもらうの、久しぶりな気がするな」

19090「?そうですか?」

テクパトル「いや、気のせいかもしれないけどさ」

美琴「私達も久しぶりね・・・」

上条「なんなら毎日やってくれてもいいんだけど」

美琴「じゃ、じゃあそうしてあげる!」

旅掛(あれ、ファミレスの料理なのになんだか妙にしょっぱい気がするよ)

テクパトル(とりあえず涙を拭けよ)

美鈴「んー・・・このスパゲティーにはやっぱり紅茶が合うね!」

テクパトル「紅茶か・・・スパゲティーに合うとは思えないが」

美鈴「合うんだよ!これが偉い人にはわからないのです!」

テクパトル「誰だよアンタ」

上条(でも、スパゲティーだから紅茶か、スパゲティーだから…)

19090(スパゲティー…ふ、ふふふ…)

テクパトル(笑ってるぞおい)

560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 21:58:53.82 ID:O0VO2Me7o
おつにゃんだよ!
561 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/23(水) 22:32:06.42 ID:tub4D+1J0

上条「はぁ、お腹いっぱいだな…」

テクパトル「…うん、食った食った」

満足そうにお腹をさすり、二人は椅子にふんぞり返っていた

美琴「ちょっと当麻、はしたないわよ」

19090「テっくん、お行儀が悪いです!!」

テクパトル「お、おう…」

上条「でもさぁ、お腹いっぱいになったら体を伸ばしたくなるだろ?」

旅掛「そういや、俺もそういうこと若い頃はしてたな」

上条(…ってことは、俺は将来太るのか)

テクパトル(よし、背筋を伸ばそう)

旅掛(二人ともしっかり背筋を伸ばしたな)

美鈴「ねぇねぇ、これからどうすんの?」

テクパトル「か、帰るんじゃないのか?」

旅掛「えー、せっかくだから遊ぼうぜ!!」

19090「あ、美月はビリヤードがしてみたいです!!」

美琴「ビリヤード?なんで?」

19090「えっと、美月はしたことがないですし…」

テクパトル「そうだな、たしかに…」

美鈴「じゃあ、行ってみようか!」

上条「ビリヤードか、久しぶりだなぁ…」

562 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:42:54.32 ID:Ee9ZYm790



上条「さて、やって来ましたよ!」

6人の手にはキューが握られている

テクパトル「・・・そういや、俺もほとんどビリヤードしたことないんだが」

19090「美月は一度もないです・・・」

旅掛「ルールは分かるか?」

テクパトル「・・・9ボールとストレートプールなら」

上条「19090号は?」

19090「あ・・・た、球を落とします!」

美鈴「ま、まぁそうなんだけど・・・」

美琴「ほら、手球を1に当てる、とか・・・9ボールは残ってる中で最小の数字の球に最初は当てないといけないのよ」

19090「・・・」


19090「た・・・球を落とすんじゃないんですか・・・?」

テクパトル「美月がこう言ってるんだ、もう球を落とせばいいじゃないか!」

一同「待て待て」


テクパトル「・・・美月には俺がおいおいルールを教える、まずは誰かブレークを」

美鈴「はいはーい!ここは美鈴ちゃんがやっちゃいますよん!」

テクパトル「ついでにマッセは禁止だからな、店に迷惑掛かるし」

旅掛「お、じゃあ3ファールもするか」

美琴「ファールショットを3回続けたら、負けってやつね」

上条「よし!いいぞ、乗った!」

19090「ファールショット・・・?」

テクパトル「美月、とりあえず義母さんのショットで始まるからな」

563 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:43:24.43 ID:Ee9ZYm790
19090「?あの、全員が球を打って跳ね返った位置が手前に近い人からやるんじゃ・・・」

テクパトル「なんでそれは知ってるんだ」

美鈴「いくよ!」

美鈴が手球を弾く

バラバラ、と小気味の良い音がしてそれぞれの球が転がる

美鈴「あちゃー、何も落ちなかったか」

上条「・・・次は誰が?」

旅掛「よし、俺が行こう」

慣れた感じで旅掛がキューを構える

旅掛(・・・9を落とすのは無理か、まずは1を確実に)

ポン、と旅掛が手球を弾く

一直線に1の球を弾き、見事ポケットに沈めた

19090「じょ、上手ですね・・・」

旅掛「いやぁ、海外で仕事してるとビリヤードやる機会も増えるのさ」

美琴「・・・もしかして、美女とやってんじゃないでしょうね」

19090「そ、そうなんですか!?」

旅掛「違う違う!」

美鈴「私は別に美女とやられててもいいけどなぁ、ビリヤードくらい・・・」

テクパトル「まぁここには美女しかいないがな」

三人「!?」

上条(こいつ・・・天然でフラグ建てるなんて見境ないなぁ)

旅掛「・・・次は2・・・か」


564 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:43:51.05 ID:Ee9ZYm790
クッションを使って旅掛が2に手球を当てる

だがあと少し、という所で球は止まってしまった

美琴「あ、惜しかったわね・・・」

上条「次は俺でいいかな?」

テクパトル「あぁ」

19090(こ、これはあとでやったほうが有利なんでしょうか・・・)

上条「・・・」

上条が手球を2に当てる

その進路には3の球があった

見事、その3をポケットに沈める

19090「あ、あれ?3を落としてしまいましたが・・・」

テクパトル「あぁ、最初に2に当てさえすればそのあとは何が落ちてもいいんだ」

旅掛「もちろん、手球は落としたらいけないがな」

美琴「にしてもラッキーね、2も次は落とせそうじゃない」

上条「楽勝楽勝!」

調子に乗った上条が手球を弾く

2は一直線にポケットに沈んだ

手球も一直線にポケットに沈んだ

上条「あ」

テクパトル「ふははは!調子乗ってるからそうなるんだよ!」

上条「不幸だぁぁ!」

美琴「ったく、なんで3だけは普通に落とせたのよ・・・」

ポケットから手球を取り出し、美琴が4の近くに直す


565 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:44:16.55 ID:Ee9ZYm790
美琴「次は私でいいわよね?」

テクパトル「あぁ」

19090「?あの、落ちた2の球は・・・」

テクパトル「ファールでも9以外が落ちたらそのままなんだ」

19090「な、なるほど・・・」

旅掛「ルールとかは地方で変わったりするらしいけどな」

美鈴「私達は一般的なのでやればいいよ」

美琴(・・・9を落とすのはまだ無理ね・・・でも6は落ちそう)

カツン、と高い音が鳴る

美琴の弾いた4の球は6をポケットに沈め、自らもポケットへと沈んだ

テクパトル「上手いな!」

上条「・・・え、えげつない・・・」

19090「ふ、二つを同時に落とせるものなんですか」

美琴「次は5ね」

いともたやすく、美琴は5の球も沈めた

美鈴「うわぁ・・・なんか美琴ちゃんも慣れてる感じ」

美琴「軌道を頭で描いたら楽なのよ」

上条「楽じゃないですよそれ」

テクパトル「・・・7もいけるな」

美琴「うん」

7をポケットに沈めた美琴

しかしここで問題が生じる


566 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:44:46.85 ID:Ee9ZYm790
19090「あ、手球と8の間に9が・・・」

美琴「・・・8を落とせばいいだけよ」

手球を弾き、8の球に命中させる

それはポケットのわずか5cmほど手前で停止した

美琴「あぁ!摩擦の計算でも間違ったのかしら・・・」

テクパトル「・・・」

テクパトルが8を易々と落とす

上条「うわ、9も楽々落ちる位置だな」

旅掛「まずはテクパトル君が一勝、か」

テクパトル「んじゃ・・・」


19090「・・・み、美月の番は・・・」ウルウル

テクパトル「」

19090号が若干目を潤ませて、キューを握っている

そういえば、彼女はビリヤードをしたことがない

他の5人のプレーを見てどうにかやり方も分かってきた頃だろう

早くやってみたくて仕方ないはずだ

なのに、目の前で、自分の番の目の前で9を落とされるだなんて

記念すべき初試合は、自分の番が来る前に終わりを迎えるなんて

遅れていった卒業式で、既に卒業証書授与が終わっていたような屈辱感だろう


567 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:45:12.71 ID:Ee9ZYm790
テクパトル「・・・」

上条「?どした、テクパトル」

テクパトル「・・・」

テクパトルが手球を弾く

それは9を上手く弾き、ポケットギリギリまで運んだ

美琴「!お、落ちなかったわね・・・」

旅掛「まぁ、確かに強く打ったら手球まで落ちる位置ではあったかな」

美鈴「でももったいないなぁ・・・」

上条「あぁ、あと少しで落ちるのに・・・」

テクパトル「次は美月だな」

19090「!」

あー惜しかった、なんてわざとらしく言いながらテクパトルは肩を竦めた

19090(もしかして、美月のためにわざと・・・)

19090号が手球と9の位置を確認する

どんな初心者でも落とせる位置だ

そう、19090号でも落とせるような

19090「・・・」

手球を弾くと、やはり9の球はポケットに沈んだ

上条「19090号の勝ちかぁ・・・」

美琴「くーっ!幸先いいわね」

568 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 08:47:05.61 ID:Ee9ZYm790
美鈴「つ、次は負けないからね!」

旅掛「ビギナーズラックもそこまでだ!」

四人が19090号に悔しそうな言葉を並べながら、球を集める

そんな中、テクパトルに近づいて19090号は小さく話しかける

19090「あ、あの・・・」

テクパトル「ん?どうした?」

くるり、と振り返ったテクパトルは特に何も気にしていないようだった

だからこそ、ちょっと確かめてみたいのだ

19090「もしかして、わざと美月のために・・・」

テクパトル「違うさ、たまたま球が滑らなかっただけだ」

19090「で、でも・・・」

テクパトル「それに、あんな可愛い顔で見つめられたら緊張で手元も狂うさ」

19090「!」

さわやかに笑うテクパトルを見て、19090号は胸がときめいた

あぁ、なんてこの人は優しいのか、と

するとテクパトルはびしっと、19090号を指さしてこう言う

テクパトル「その代わり、次は負けないからな、美月!」

19090「わ、分かりました!」

微笑みながら、19090号は心の中でお礼を言っていた

569 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 21:01:14.33 ID:Ee9ZYm790

テクパトル「…ブレークは俺からさせてもらおう」

2回戦目

テクパトルのブレークで、2の球が落ちる

美鈴「お、いきなりかぁ」

19090「幸先がいいですね…」

テクパトル「…」

続いて、1の球も落とす

旅掛「ワオ!!正確だな」

テクパトル「…」

しかし、テクパトルは次の3を落とせなかった

美琴「あれ、なんか位置的にはいけそうだったのに…」

上条「…いや、次は3に当てるのがかなり難しくなってるな」

19090「!!3の周りを5と6が囲む形に…」

テクパトル「次は美月だぞ?」

19090「テっくんったらひどい!」

テクパトル「ははは、まぁいいじゃないか」

19090「うぅ…」

19090号がしばしじっと考える

手玉を3に当てるのは不可能だ

となると

19090「えい」

あえてファールショットにして、9も3の球に寄せたのだ

美琴「う、うわうわ!!これ次3に当てられないじゃん!!!」

テクパトル「なるほど、変に散らさないってのか」

美鈴「うえ…次私だよ…」


570 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/24(木) 21:22:59.93 ID:Ee9ZYm790
キューを構えた美鈴も、適当に手玉をファールにした

旅掛「おいおい、誰か散らそうってヤツはいないのか?」

そう言う旅掛も、散らさない

美琴「…お父さん…」

旅掛「い、いや…下手に散らしたら、美琴が全部持っていきそうだったからさ」

美琴「…」

美琴が上手く手玉を掬い上げ、3の球に当てる

さすがにポケットには落ちなかったが、他の5人は目を丸くしていた

テクパトル「よ、よく当たったな」

19090「さすがお姉様…」

美琴「はぁ、当てるのでやっとだったけどね」

上条「次は俺か」

上条が3の球をポケットへ落とす

テクパトル「…また3だけ、とか言わないだろうな」

上条「4は…あった、ここからなら行けそうだ…」

弾いた手玉は、4を素通りしてポケットへ

上条「あぁもう!!!」

テクパトル「…ラッキー、ファールしてくれるとはな」

4のすぐそばへ手玉を置き、4を落とす

その後、5、6、7、8、と次々落としていく

美琴「うわ…なんか淡々としてる…」

旅掛「こ、ここでまさかのミスとかもありだぞ!?」

テクパトル「ないない」

最後の9を落とし、テクパトルがふふんと笑う

美鈴「くあー!!勝つまでやるからね!!」

美鈴が球をまたセットする

571 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:52:06.32 ID:Jh6JoIv40


美鈴は激怒した

必ずかの不幸の神様をぶん殴る、と

テクパトル「よし、俺の勝ちー」


19090「あ、美月の勝ちです!」


美琴「よっしゃ!勝った勝った♪」


旅掛「ひゃっほう!勝ったー」

先程から、美鈴は勝てていない

一度も、だ

上条「・・・勝ってないのは俺と美鈴さんだけか」

美鈴「上条君はともかく、私が勝てないのはおかしいよ!」

上条「その意見もおかしいですよ」

テクパトル「ったく・・・だって義母さん、センスは悪くないのに詰めが甘いんだからな」

19090「そうですよ、調子に乗ってカッコつけるから・・・」

美鈴「美月ちゃんまで!?」

旅掛「っと、そういやこの店、そろそろ閉じる時間だな」

美鈴「!?」

時計を確認すると、もう午後の7時であった

美鈴「やっば、さっさと帰ってご飯作らないと!」

美琴「まだ勝ててないけどいいの?」

美鈴「あ、明日勝つから!」


572 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:52:32.82 ID:Jh6JoIv40
上条「明日には俺達、学園都市に帰りますよ」

旅掛「俺も明日にはアメリカに戻らなきゃ」

美鈴「うぅー!」

頭を抱えながら、美鈴が悩む

ビリヤードでの勝利と、時間を天秤にかけた

美鈴「ビリヤードの勝利のほうが大事!」

一同「時間ですから」





上条「食った食った・・・」

ポンポン、とお腹を叩く上条

駄々をこねる美鈴を連れて帰り、食事を終わらせたらもう20時半になっていた

美琴「ったく・・・お母さんがもう少し早く帰る気になったら、よかったのよ」

美鈴「・・・ビリヤード・・・」

テクパトル「また俺達がこっちに来たら行こうな」

美鈴「!ホント!?」

19090「えぇ、約束です」

美鈴「じゃあそれまで毎日練習だ!」

旅掛「毎日はやめて!お金が無くなる!」

美鈴「にゃはは!パパの稼ぎは私の肥やし!」

旅掛「なんたる鬼妻!」

頭を抱える旅掛にため息をついてから、テクパトルが立ち上がる


573 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:52:58.47 ID:Jh6JoIv40
テクパトル「美月、さっさと風呂入って寝ようぜ」

19090「あ、はい」

美琴「なになに?なんか今日はやけに早いじゃない」

上条「あ、もしかして・・・」

美鈴「!一人目は男の子がいい!」

テクパトル「なに勝手に想像してんだよ!」

旅掛「許さん!ま、まさか子作りだと!?」

テクパトル「だから違う!眠いだけだから!」

青筋を浮かべながら、テクパトルは19090号の手を引き風呂場へ向かう

上条「・・・そっか、明日は朝早いからな」

美琴「・・・そうね」

美鈴「あーあ、もうみんな帰っちゃうのかぁ・・・寂しくなるなぁ」

旅掛「・・・美鈴、やっぱり俺と一緒に海外回らないか?」

上条「?そんな話してたんですか」

美鈴「うん・・・パパと一緒にいたいって気持ちは強いからさ」

美琴「・・・そっか」

美鈴「・・・でも、私は遠慮しとく」

上条「な、なんで?せっかく旅掛さんが・・・」

美鈴「ここに私がいなくなったら、誰が美琴ちゃんや美月ちゃんの帰ってくる場所になってあげられるの?」

美琴「!」

574 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:54:22.45 ID:Jh6JoIv40
美鈴「そりゃ、上条君の傍が美琴ちゃんにとっては一番いい場所なんだろうけどさ・・・でもね、いつかふと帰りたい、って思える場所があるのは大切なんだよ?」

そう語る美鈴の顔は、母親だった

美鈴「・・・それに、パパと一緒にいると迷惑掛けちゃいそうだし」

旅掛「迷惑なんかじゃないが・・・美鈴がそこまで考えてるなら仕方ないな」

上条「・・・」

美鈴「上条君、美琴ちゃんと長い間離れてるのは辛い?」

上条「そりゃ・・・いつも傍にいたいですよ」

美鈴「いつかそれが平気になる時が来るよ、心の中に相手がいるって思えるようになる時が」

上条「・・・」

美琴「・・・お母さん、寂しくなったら電話とかしてよね」

美鈴「残念ながら、私はそこまで淋しがり屋じゃないんだよん!」

気丈に振る舞う美鈴を見て、三人は笑う

こういう明るい性格は、美琴や、そしてその先にも受け継がれるだろう


テクパトル「・・・」

時刻は深夜0時

御坂家の人々は全員、風呂を終え寝室に入っていた

もちろんテクパトルも

19090「んっ・・・」

入っていたのだが、寝てはいない

575 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:55:18.29 ID:Jh6JoIv40
テクパトル「はぁ・・・義母さん達にはあんなこと言ったが・・・やっぱり子供は欲しいしなぁ」

19090「ん!あう・・・」

くたっ、と力が抜けた19090号の頭を優しくテクパトルが撫でる

テクパトル「・・・なぁ、美月」

19090「は、はい」

テクパトル「・・・これからもよろしくな」

19090「?どうしたんですか、いきなり」

テクパトル「いや、なんでも」

笑ってから、テクパトルは腰の動きを再開させる

19090「ちょ、ちょっと・・・いきなりは、んぁ・・・」

テクパトル「・・・一人目は女の子だよなぁ」

19090「!?」

ぎゅっ、と抱きしめてからテクパトルが小さく呻く

熱い夜を過ごす夫婦が一組


上条「・・・おはようございます、美鈴さん、旅掛さん」

旅掛「あぁ、おはよう」

美琴「・・・お父さんはもう行くんだ」

二人が目を覚ました時には、すでに旅掛はスーツに着替えていた


576 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:56:11.23 ID:Jh6JoIv40
旅掛「相手との約束があるからな」

上条「・・・もしかして、スケジュールギッチギチなんじゃ・・・」

旅掛「娘が結婚報告に来たんだぞ?無理しても来るに決まってるじゃないか」

コーヒーを飲み、旅掛がソファーから立ち上がる

美鈴「・・・パパ」

旅掛「・・・」

美鈴の頬に軽くキスをしてから、旅掛が玄関へ向かう

旅掛「テクパトル君達はまだ起きてないのか?」

美琴「うん・・・」

旅掛「・・・起こしてきてもらっていいか、美琴」

美琴「?」

珍しいな、と美琴は思った

旅掛は見送りをして欲しい、というタイプではないからだ

美琴(何か言いたいのかしら)

首を捻りながら、美琴が二人の寝室へ向かう

と、途中の廊下でばったり出くわした

美琴「あ、起きてたんだ」

19090「おはようございます・・・お父さんはもう?」

美琴「ちょうど今、起こしてきてくれって言われたとこ」

テクパトル「?」

寝起きの覚めない頭のまま、テクパトルと19090号も玄関へ向かう

577 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:56:37.58 ID:Jh6JoIv40
旅掛「あぁ、悪いな」

テクパトル「ちょうど起きたとこだったからさ・・・何か?」

旅掛「あー・・・その、なんだ」

ポリポリ、と頬を掻いてから旅掛が笑う

旅掛「結婚おめでとう」

テクパトル「!」

旅掛「それが言いたかっただけさ、わざわざすまん」

テクパトル「・・・いや、一番聞きたかった言葉だ」

19090「お父さん・・・ありがとうございます!」

旅掛「はは、じゃあまたな・・・」

玄関の扉を開けてから、旅掛が美鈴の方を振り返る

旅掛「そういや、美鈴」

美鈴「なに、パパ?」

旅掛「アメリカの次の取り引き先はな、日本の会社なんだ」

美鈴「!」

旅掛「いやぁ、偶然この近くに本社がある、しかも中々長引きそうな商談でなぁ、全く泊まる宿に困る、いい場所知らないか?」

美鈴「知ってる、知ってるよ!」

今にも抱き着きそうな勢いで美鈴が頷く

旅掛「じゃ、その宿は後で電話で教えてくれ」

トントン、とつま先で地面を叩いてから、旅掛が外へと出る

「行ってきます」と言ってから


578 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:57:08.66 ID:Jh6JoIv40


上条「・・・よかったじゃないですか美鈴さん!」

美琴「商談で長引く、ねぇ・・・」

テクパトル「ホントは義母さんと一緒にいたいから長引かせるんじゃ・・・」

美鈴「んふふー♪」

19090「嬉しそうですね、お母さん」

美鈴「ねぇ、美琴ちゃん、美月ちゃん」

美琴「?」

19090「はい、なんですか?」


美鈴「弟か妹、欲しい?」

一同「!?」


上条「・・・じゃあ、俺達もそろそろ」

朝食を終えた四人も、玄関へと向かう

美鈴「たまには帰ってきてよね」

テクパトル「あぁ」

19090「今度は・・・冬休みでしょうか」

美琴「あら、その前に大覇星祭でお母さんが学園都市に来るんじゃない?」

美鈴「お、そうだった!」

上条「じゃあ、その時を楽しみにしてますよ」

上条が玄関の戸を開ける


579 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 07:59:06.11 ID:Jh6JoIv40
いつか、この家も上条にとって帰ってきたい場所になるのか

記憶のない彼にとって、大切な場所とは

上条(いや、もうなってるか)

ため息をつき、上条が美鈴に頭を下げる

上条「…お世話になりました、そしてこれからもお世話になります」

美鈴「うん、上条君、美琴ちゃん、テクパトル君、美月ちゃん、元気で!」

19090「お母さんも、大覇星祭まで元気で!」

美鈴「うん!!」

テクパトル「・・・義母さん、困ったら相談させてもらうよ」

美鈴「任せなさい!」

美琴「じゃ、大覇星祭で・・・って一ヶ月あるかないかね」

美鈴「おう!」

手を振る美鈴、それに応える四人

上条「・・・」

玄関の戸を、そっと放す

ゆっくりとそれは閉じる、美鈴の姿もその向こうへ隠れそうになる

その少し前に、上条は小さな声で呟いた


「行ってきます」なんて、恥ずかしい言葉を


580 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 18:03:20.43 ID:Jh6JoIv40


とあるファミレスの片隅

その席に、男達は集っていた


垣根帝督はイケメンである

学園都市でも、恐らく自分に並ぶヤツないないというくらいイケメンである

街で擦れ違った女の子が全員絶頂を迎えるくらいイケメンである

彼はイケメンである

イケメン、というのは何も顔立ちだけではない

垣根帝督はそう思っている

心から滲み出るイケメン汁が、出汁になってイケメンが出来上がるのだ

だから


垣根「イケメン講座を開く」


ていとくんのイケメン講座編


ゴーグル「で」

浜面「なんで俺を呼んだんだ・・・」

削板「全くもって理由が分からない!」

上条「あの・・・俺はイケメンとかじゃなくていいんですけど」

エツァリ「モテるから、ですか」

上条「違う!」

垣根「諸君、静かに」

おほん、と垣根が咳ばらいをする

垣根「いいか?今の世の中には様々な人間がいるな、社交的な人間、内気な人間、暴力的な人間、外見しか磨かない人間・・・」

上条「まぁ・・・人の個性と言えばそれまでだな」

581 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 18:03:46.74 ID:Jh6JoIv40
垣根「だがな、敢えて今は3種類の人間に分けよう」

指を3本立て、垣根が説明する

垣根「一つはイケメン」

浜面「・・・あぁ」

垣根「一つは普通」

ゴーグル「・・・はぁ」

垣根「一つは不細工」

削板「ふむふむ」

垣根「まぁ俺はイケメンに分類される訳だが・・・」

エツァリ「自分でそれを言う辺り、清々しささえ感じますね」

垣根「・・・イケメン、とはそもそもなんだと思う」

浜面「はい」

垣根「浜面」

浜面「生まれた時から美形に育った、人生の勝ち組」

垣根「・・・なるほど」

削板「いや、生まれた時にはみんな猿みたいな顔だ、育つ環境がよかったヤツじゃないかな!」

垣根「なるほど、それも一理ある」

ゴーグル「でも、俺とは遠い存在だとは思います」

上条「だよな・・・何もしないで女の子が寄ってくる、なんて男としては夢だもんな」

エツァリ(あなたがそれを言うんですか)


582 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/25(金) 18:04:37.79 ID:Jh6JoIv40

上条「・・・で、それが?」

垣根「いいか、世の中にはなんでお前が結婚出来た、みたいな顔のヤツはたくさんいる」

浜面「人を顔で判断するのはどうかと・・・」

垣根「その通り!」

びしっ、と浜面を指差し垣根が頷く

垣根「いいか、心がイケメンなら、自然と人々は寄ってきてくれる」

削板「なるほど、内面を磨けばそれは周りに影響を及ぼす、と」

垣根「・・・だから今日はお前達にイケメンな心を身につけてもらう」

ゴーグル「遠慮したい場合はどうすれば」

垣根「ここに地獄への片道切符がある」

メモ用紙をちぎって適当に作られた切符みたいなのを垣根が取り出す

垣根「こいつを買え、楽に行ける」

一同(理不尽だ)


ファミレスの支払いを終え、垣根がみんなのほうを見つめる

垣根「では、これからレッスン開始だ」

一同「…」

垣根「レッツ、メルヘン」



ケース1

女の子が困っている所を見かけた


583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 22:00:10.75 ID:0vOUKR/uo
おつにゃんだよ!

584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/26(土) 03:10:22.18 ID:ZTjlPPEGo
おつ
585 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:30:54.19 ID:2NWoQKes0


垣根「女の子ってのは様々なことで困ってしまう、脆い生き物だからなぁ」

削板「たしかに、ちょっとしたことで傷ついたりするな」

上条「・・・で、なんでわざわざファミレスを出たんだ」

垣根「ファミレスの中で問題が起きるんじゃない、世界のあちこちで問題は起きているのさ」

浜面「・・・いや、なんの説得力もねぇよ!」

垣根「まぁ、見てみろ」

垣根がぴっ、と歩道の先を指差す

そこには初春と佐天がいた

ゴーグル「あの人達が何か?」

垣根「あの二人には事前に協力をお願いしといた」

上条「わざわざご苦労・・・」

垣根「で、今からあの二人に一人ずつ話し掛けてみろ」

削板「?話し掛けるだけでいいのか?」

垣根「まずはな、すると一人一人、悩みを打ち明けられる」

浜面「悩み?」

垣根「簡単な悩みさ、それに優しく対処してやればイケメンに近づける」

ゴーグル「あの、イケメンになれなくても・・・」

垣根「まずは削板な」

削板「おう!」

ゴーグル「聞いちゃいないっすね・・・」



586 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:31:20.66 ID:2NWoQKes0


削板「おい、そこのお嬢さん達!」

初春「あ、はい!」

佐天「・・・もしかして、垣根さんが言ってたイケメン講義を受けてる一人って削板さんなのかな」

初春「多分・・・」

削板「悩み事を抱えてるのか!?」

初春・佐天「・・・あ、はい」

削板「ダメだな!悩みを一人で抱え込むなんて!」

初春「二人です」

削板「それで、ウイーハルさん!」

初春「初春ですから!久々に会ったと思ったら名前間違えですか!」

削板「悪い悪い、で、悩みってのは?」

佐天「実は・・・初春に好きな人がいるんです」

初春(え、そんなアドリブ!?)

削板「なるほど、それは誰だ?」

初春「え、えっと・・・」

あたふたと初春が手を振る

いきなりのアドリブに堪えられず、ぱっと思いついた名前を言う

初春「垣根さんです!」

削板「垣根?でも垣根は彼女がいるぞ?」

佐天「だから悩んでるんですよー、やだなぁ削板さんったら!」

削板「ははは!なるほどなぁ!」

587 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:31:50.74 ID:2NWoQKes0
佐天「で、どうしたらいいですか?」

削板「諦めろ!」

初春「えぇ!?結論早い!」

削板「君に垣根の幸せを奪えるか、ウイーハルさん!」

初春「初春ですから!」

削板「無理な恋をいつまでも引きずったらダメだ、さっさと次の恋に進もうぜ!」

ぴっ、と親指を立てて削板が笑う

削板「じゃあな!」

初春・佐天(え、終わり?)



削板「どうだった!?」

二人の悩みを聞いた削板が、満足げに帰ってくる

垣根「ダメだな」

削板「な、なにぃ!?」

垣根「まず、悩みを抱え込むな、なんて女の子に言ったらダメなんだよ」

浜面「?その台詞ってさ、自分が悩みを聞いてやるって意味だから逆にいいんじゃねぇか?」

垣根「悩みを抱えてる女の子はそんなことにさえ気付けない、文字通り自分が責められているように感じるのさ」

上条「い、一理ある・・・」

垣根「あと、すぐに悩みに結論を出すな、なんだか話を聞くのがめんどくさい、という感じがする」

ゴーグル「な、なんかややこしいですね」



588 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:32:16.80 ID:2NWoQKes0
垣根「じっくり話を聞いてやることが大事なんだ、悩みを解決は出来なくても誰かに悩みを打ち明けさせることが」

削板「なるほどな・・・」

垣根「それをふまえて、浜面行ってこい」

浜面「よ、よっしゃあ!」


浜面「あ、あのー」

佐天「?あ、はい」

浜面「なんかさ、ちょっと困ってるみたいだけど・・・何かあったのか?」

初春(削板さんよりは入り方が上手いですね)

佐天「いやぁ・・・実は私、悩みを抱えていて」

浜面「悩み?」

佐天「はい・・・誰かに聞いて欲しいんですけど、でも打ち明けるのは恥ずかしくて・・・」

浜面「・・・じゃあさ、俺じゃダメかな」

佐天「いいんですか?」

浜面「あぁ、女の子に一人で辛い思いをさせるのは俺も辛いからさ」

佐天「・・・実は、好きな人がいるんです」

浜面「へぇ・・・好きな人か」

佐天「でもその人、もう恋人がいて・・・」

初春(私の設定丸パクリ!?)


589 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:32:45.43 ID:2NWoQKes0
浜面「・・・辛いよな、自分の思いを伝えられないし、きっと叶わないだろうって思っちゃって」

佐天「・・・どうすればいいんですかね」

浜面「・・・君は、今どうしたいんだ?」

佐天「わ、私は・・・」

浜面「君が思いを伝えたいなら伝えればいいし、そのまま抱えていたいなら抱えていてもいい、ただ君が納得するやり方じゃなきゃダメなんだ」

浜面がきっぱり、言う

浜面「君の恋だ、君が抱いた思いなんだ、だから君が決めなきゃな」

佐天「・・・ありがとうございます、もう少し考えます」

浜面「困ったらいつでも連絡しろよ、じゃ」

佐天「はい!」


浜面「ふぅ、どうだった?」

垣根「概ね合格だな、最後のいつでも連絡を、ってのはナイスだ」

ゴーグル「・・・なんか俺の知ってる浜面さんじゃなかったんですけど」

削板「いやぁ、あんな風に優しく言うのがいいんだな!」

垣根「女の子ってのはそんなもんだ、何も真実を教える必要はない、甘い幻想を見せてやれば喜んでくれるのさ」

上条「・・・でも、やっぱり悩み事は解決してやりたいな」

垣根「さて、公園に移動するぞ」

上条「こ、公園?まだ俺達やってないけど・・・」

垣根「ケース2だよ」

ゴーグル「ま、まだやるんすか」

590 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:33:11.90 ID:2NWoQKes0


垣根「初春、佐天、ありがとうな、少ないけどこれでケーキでも買えよ」

佐天「あ、あの・・・やっぱり現金を受け取るってのは・・・」

垣根「そっか、じゃあ今度奢るから、それでいいだろ」

初春「い、いいんですか?」

垣根「俺だって可愛い女の子とデート出来るなら歓迎さ、じゃあ俺達は公園に行かなきゃいけないから」

ありがとな、とウィンクをしてから垣根がその場を去る

初春・佐天(・・・イケメンだなぁ・・・)




垣根「さぁ、次はこいつだ」

ケース2 女の子が待ち合わせに遅れてきた

ゴーグル「あー、これはよくありますね」

浜面「待たされる側がどんな対応をするか、ってことか」

上条「うーん・・・俺はいつも待たせちゃうからな」

垣根「そいつは論外だが、待ち合わせに遅れてきた女の子をどうフォローするかだな」

削板「待ち合わせに遅れるのはダメだけどな!」

垣根「やむを得ない用事があった、ってことにしとくか」

上条「んで、今度の協力者は誰なんだ」

垣根「おいおい、協力者が先にここに来てたらダメだろ、遅れてきたケースなんだから」

上条「あ、なるほど」

垣根「まずは上条、ベンチに腰掛けて待っとけ」

上条「あぁ」



591 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:33:38.12 ID:2NWoQKes0


上条(・・・しかし長いな)

女の子の協力者を待ちはじめて10分

時計をチラチラ見ながら、上条がため息をつく


垣根「ふふーん、上条はイライラしてるな」

ゴーグル「そりゃ、あんなに待たされたらイライラしますよ」

削板「でも女の子、遅いな」

垣根「あぁ、実はもうスタンバイしてんだ」

削板「?じゃあなんで行かないんだよ」

垣根「イライラさせてからが本番さ、その苛立ちを抑えてイケメンを演じられるかどうかが大事だからな」

浜面「な、なんとも合理的な感じの理不尽」

垣根「そろそろ向かわせるか」


上条「・・・」


美琴「ごめーん、待ったー!?」


上条「どわぁ!?み、美琴!?」

美琴(げ、当麻!?垣根にゲコ太グッズで釣られたから来てみたら・・・)

上条「な、なんだ・・・待ち合わせの相手って美琴だったのか」

笑いながら、上条が美琴の頭を撫でる


592 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 18:35:15.27 ID:2NWoQKes0
上条「なんともなかったか?」

美琴「え?」

上条「あ、いや・・・遅れてきたってことはさ、何かがあったんだろ」

美琴「う、うん・・・」

上条「無事にここに来れてよかった、安心したよ」

美琴「あう・・・」

上条「遅れてきたことなんてどうでもいいさ、お前がちゃんと来てくれたのが嬉しいよ」

ボンッ、と美琴が顔を真っ赤にする


垣根「うわぁぁぁ!なんだあれ、デフォのイケメンって感じではないのになぜかイケメンっぽいぞ!」

浜面「くそぉ!さすが大将、あれがイケメンか!」

削板「ははは!さすが上条だな、次元が違う!」

ゴーグル「・・・というかイチャイチャしだしたんですけど、いいんすか」

垣根「それはダメ!」

垣根が二人の元へ駆け込む



垣根「おいこら、イケメン講座中にイチャイチャすんな!!」

上条「!!そ、そうだった!」

美琴「すっかり忘れてたわ…」

垣根「はぁ…まぁいい、御坂はこれから暇なのか?」

美琴「うん、暇よ」

垣根「なら、俺達についてきてくれ…女の子の意見も聞きたいし」

美琴「オッケー!」

593 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 19:43:44.97 ID:2NWoQKes0

垣根「さて、次のケースはこちらだ」

ケース3

女の子に、デートに誘われた


上条「…って言っても、俺達って恋人がいるからなぁ…」

垣根「そういう問題じゃないんだよ、デートに誘われたらどういう対応をするか、が大事だな」

ゴーグル「…断ったらダメなんですか」

垣根「断るのは論外だからな」

浜面「ふーん…じゃあ、どういう風に了承するか、だな」

削板「中々難しそうだな」

垣根「ゴーグル、行ってみろ」

ゴーグル「?行くってどこにっすか、ここ公園ですよ」

垣根「あー、あっちのベンチのほう」

ゴーグル「…はぁ」

ゴーグル男がベンチへ向かう




17600「おっといけねぇ、手が滑った」

どこからか銃弾が飛んできた


ゴーグル「のわぁぁぁぁ!?」

間一髪、ゴーグル男がそれを避ける

そこで気づいたのだが、それは実弾ではなく柔らかいゴム素材の物だった

当たっても、痛いくらいで済むだろう

ゴーグル「ちょ、ちょっとなんなんすか!?」

594 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 19:52:34.23 ID:2NWoQKes0
17600「すまないな、つい手が滑って引き金を引いてしまったんだ」

ゴーグル(ぜ、絶対に手が滑ったのレベルじゃねぇ…)

17600「…怪我はなかったかな」

ゴーグル「だ、大丈夫っすよ」

17600「…しかし申し訳ない、ミサカのミスで君に怪我をさせそうになってしまった」

ゴーグル「あ、いや…そんなに落ち込まないでくださいよ、誰だってミスはあります」

17600「…ありがとう、慰めてくれて」

ゴーグル「…その、あなたは怪我ありませんでしたか?」

17600「?いや、ないが」

ゴーグル「ならよかったっす、じゃあ…」

17600「あぁ、ちょっと待ってくれ」

ゴーグル「はい?」

17600「…このお詫びをさせてほしい」

ゴーグル「お詫び?い、いいっすよ、俺だって別に怪我なかったんですし」

17600「…いや、そうしないと気が済まないんだ」

ゴーグル「でもお詫びって言ったって…」

17600「…そうだ、一緒にデートしないか」

ゴーグル「…はい?」

17600「怖い思いをさせたのなら、楽しい思いをさせてあげなきゃな」

ゴーグル(ここでデートに誘う!?なんという意味の分からない誘い方!!!)

17600「どうだ、デート、してくれないかな」

ゴーグル「…あ、あの」

17600「ん、なんだ」

595 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 20:38:30.18 ID:2NWoQKes0
ゴーグル「…その、お詫びでのデートなんて、やっぱり俺は遠慮しときます」

17600「…」

ゴーグル「…そういうのは、お詫びってだけでするべきじゃないですから」

17600「そうか…すまない、それなら仕方ないな」

ゴーグル「あ、あの」

17600「ん?」

立ち去ろうとした17600号が、くるりと振り返る

ゴーグル「その代わり、お詫びとか…そういうの関係なしのデートなら、歓迎しますよ」

17600「ははは、こりゃ一本取られたな」

笑いながら、17600号が手を振り歩き出す

17600「じゃあ、またな」



垣根「…なんかさ、ゴーグルも最後はイケメンっぽかったけど、17600号のハードボイルドに目が行ったな」

美琴「そうね…」

ゴーグル「ちょ、ちょっと!!俺の評価はどうなんですか!?」

垣根「悪くはないが…だがな、みんなちょっとイケメンってのを勘違いしてないか」

上条「え…そ、そうかな」

浜面「でもさ、俺達ってわりと上手くやってたんだろ?」

垣根「あぁ、たしかに一歩は踏み出してるが…まだまだだな」

削板「うーん…俺達に足りないものでもあるのか?」

垣根「あぁ、ある」

上条「…じゃあ、まずそれを教えてくれよ」

垣根「よし、じゃあ移動するぞ」


596 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 20:47:04.83 ID:2NWoQKes0

とあるビルの一角

垣根「さて、じゃあまずは…」

ゴーグル「…あの、垣根さん」

垣根「おう、なんだ」

ゴーグル「…な、なんでよりによってこのビルなんですか」

上条「?ゴーグルはこのビル、知ってるのか?」

ゴーグル「…ま、まぁいいっすよ…」

垣根「じゃ、これからお前達の思うイケメンに不可欠なものを一つずつ言ってみろ」

どこからかホワイトボードを持ってきて、垣根がペンを握る

削板「そうだな、まずは優しさだ!!」

浜面「顔も、やっぱ大事だよな」

美琴「ワイルドさも必要ね、なよなよしてるならそれは優男よ」

上条「…金もなんだかんだ、必要かもな」

ゴーグル「包容力ですかね、優しさとかぶりますが」

垣根「ほうほう…」

箇条書きで、垣根がそれらをメモする

垣根「つまり…まとめるとお前達の言いたいことは、イケメンってのは完全無欠ってことだな」

美琴「?そうじゃないの?」

垣根「うーん…世間一般のイメージはそうだろうがな」

バン!!と垣根がホワイトボードを叩く

垣根「俺は、そうじゃあねぇと思うんでさぁ」

上条(誰だよ)

垣根「例えば、だ」

垣根が腕を組みながら語りだす

垣根「…お前達が女だったとしよう、完全無欠のイケメンがいました、さてどうする」

一同「…は?」

597 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/26(土) 20:53:31.92 ID:2NWoQKes0
垣根「だから、どうする」

上条「そ、そうだな…声を掛けて、親密になろうとするかな」

垣根「そうだな、優しい彼はきっとお前の言葉にニコニコしながら返してくれるだろう」

ゴーグル「あ、あれじゃないですか?デートに誘うとか…」

垣根「あぁ、きっとその彼は色んな女の子に誘われていて、全員に優しくオーケーを出すだろう」

浜面「俺なら…きっと、いきなり告白するかもな」

垣根「なるほど、すると優しい彼はそんなお前を無下にはできず、好きでもないのにお前と付き合うかもな」

削板「いやいや、まずは自己紹介からだな!!」

垣根「…まぁ、完全無欠のイケメンは、完全無欠な答えをするな」

美琴「…つ、つまり何が言いたいの?」

垣根「そうだな…彼と一緒の行動をする、ってあるだろ?一緒にご飯を作ったり、一緒に出掛けたり」

上条「あぁ」

垣根「だがなぁ…相手が完全無欠ってことは、自分は別にいなくたって相手一人でどうにでもなっちまうのさ」

浜面「た、たしかに」

垣根「するとどうだ、それはイケメン、というよりも神様に近い存在にさえ感じられる、結果的にお前達は自己嫌悪に駆られるな、それはイケメンなのか?女の子を自己嫌悪に陥らせるのは、イケメンじゃねぇ」

ゴーグル「…」

垣根「いいか、イケメンってのはある条件を持っていなければならない」

美琴「そ、その条件とは?」

垣根「それはな」

一同が、ごくりと唾を呑む



垣根「絶対的な、短所があることだ」

上条「た、短所…」

垣根「そうだな、たとえば背が低い、たとえば女性の趣味がおかしい、たとえばゲテモノ好き…」

垣根「そういう変な所があるからこそ、他の魅力はより一層引き立つものだ」

削板「…フェルマーの定理か…」

垣根「あぁ」

上条「ちげぇ」


598 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 08:59:53.66 ID:yjU3H/b00

垣根「・・・つまり、完全無欠ってのは人から敬われる一方、近づきにくいもんでもある」

上条「・・・それで?」

垣根「さっきのお前達はたしかにいい線は行っていた、だが優しすぎるというか、あまりにイケメンを演じすぎていた」

削板「じゃあどうすればよかったんだ?」

垣根「そうだな・・・まず、ユーモアがなきゃいけない」

浜面「ユーモア?それってイケメンに関係あるか?」

垣根「あぁ、いつも真面目で優しいより、たまに人を笑わせる男のほうが魅力的じゃないか」

美琴「うん、一緒にいて幸せなのは大事だけど、楽しいのも大事だからね」

ゴーグル「なるほど・・・」

垣根「あと一つ、イケメンってのは言動だけじゃなく仕種も関わってくる」

浜面「仕種?」

垣根「さっきのお前達、言葉ばかりで細かい仕種に気をつけていなかったな」

上条「そ、そういえば・・・」

削板「・・・相手に気を遣わなきゃって思ったら、そっちに集中しちゃったな」

垣根「いいか?例えば待ち合わせをしている時なら、彼女は走って待ち合わせ場所に来るだろう」

ゴーグル「は、はぁ」

垣根「走ったら喉が渇くだろ?ならなんで自販機でジュースの一本も買って待っててやらないんだ」

削板「く・・・全くもってその通りだ!」

垣根「悩みを聞く時だってそうだ、敢えてあんな人に聞かれそうな場所を選んだのに、人のいない所に移動もしないでその場で悩みを聞きやがって」

浜面「そっか・・・悩みなんて不特定多数に聞かれたいわけないもんな」

垣根「いいか、人のいない場所で聞いてやる、なおかつそれはあまり暗い場所じゃない、そういう気配りをしろよな」

上条「・・・じゃあさ、デートに誘われた時は?」

垣根「いいか、断るならその代わりの計画を立てろ、二人きりとかじゃなくてもいいし、なんならその時もう少し話をしてやるとか」


599 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 09:00:19.57 ID:yjU3H/b00
美琴「うん、自分が好きな相手に無下に断られたらきついもん」

垣根「デートに行くなら、細かい計画は自分に任せろ、と男らしさをアピールし、なおかつ金は自分が工面するって伝えろ」

浜面「か、金なんてそんなにないのに・・・」

垣根「女性の笑顔を金で手に入れられるんだ、そんな素敵な金の使い方が他にあるか?」

削板「・・・ないな」

垣根「もちろん、金で直接買うわけじゃないが、とにかく女性に金を出させるなんてダメだ」

上条「・・・」

垣根「そして、自分が金を出すと言った時に躊躇ったり礼を言う女性とだけ親密にすることだな」

ゴーグル「そこまで考えるんすか?」

垣根「あぁ、目の前のことだけじゃなく、先のことまで考えるのが大事だ」

美琴「・・・なんか、垣根に似合わずずっとまともなこと言ってるわね」

垣根「イケメンについて俺に語らせたら、そうなるさ」

ホワイトボードにメモを書きながら、次に垣根が一同に尋ねる

垣根「さて、次に・・・イケメンとは、外見と内面の両立によって成り立つということだが」

浜面「あぁぁ!やっぱり外見も良くないといけないのか!」

垣根「まぁ、聞けよ」

腕を組んだ垣根が、人差し指を動かしながら語る

垣根「例えば、いくら顔が良くても内面が子供っぽいとか無愛想だとかだと、人として付き合いにくいだろ」

美琴「うん」

垣根「それは短所、というより欠陥になるからな」

上条「・・・何が違うんだ」


600 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 09:00:45.22 ID:yjU3H/b00
垣根「短所というのは仕方ない、笑って許せるようなことさ」

削板「笑って許せる、か」

垣根「で、だ・・・いくら外見が平凡だったとしても、何かに打ち込んでいたり、誰にでも優しく接するヤツはどうだ?」

ゴーグル「素敵だと思います」

上条「友達になりたいって思うな」

垣根「そういうことさ、何も両立ってのは外見と内面がどっちもパーフェクトじゃなきゃダメってわけじゃない」

浜面「外見はそこそこなら、内面さえ良ければいい、と?」

垣根「もちろん、外見は良いに越したことはないが・・・だからと言って外見が全てなわけじゃないからな」

削板「あぁ、外見なんて簡単には変えられないが内面は自分さえ誓えば変えられるからな!」

垣根「そして、変わろうとする人間は美しいもんだ」

美琴「・・・内面の良い、そして完全無欠過ぎない人がイケメンってこと?」

垣根「あぁ」

上条「でもなぁ・・・なんだか難しいよ、言葉で言われても」

垣根「仕方ないな・・・だったら」

垣根がニヤリと笑う


垣根「俺が手本を見せてやろう」



601 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 09:01:15.35 ID:yjU3H/b00


翌日

上条「・・・俺達は何をやってんだ・・・」

ゴーグル「イケメンを学んでるんじゃないっすか」

浜面「・・・だからって、なんでまたファミレスに・・・」

削板「垣根がイケメンとは何かを見せてくれるらしいが・・・」

美琴「どうやって見せるのかしら、心理定規とでもデートするのかな?」

浜面「それじゃただのカップルのイチャイチャじゃねぇか・・・」

ゴーグル「・・・あ、垣根さんが来ましたね」

垣根がファミレスに入ってくる

隣にいるのは女性だ、ただし心理定規ではなく・・・


上条(ふ、吹寄!?)

吹寄だった


吹寄「・・・一体何のつもりよ、二人でどこか行かないかなんて」

垣根「まぁまぁ、今日はたまたまお前と出掛けたい気分だったのさ」

吹寄「・・・なんか悪巧みでもしてるの?」

垣根「サプライズがお好みならそれでもいいけど」

肩を竦めた垣根が、ウェイトレスに人数を告げる

案内された席で、まずは吹寄から座らせる


602 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 09:01:42.85 ID:yjU3H/b00


上条(なるほど、女の子から座らせるんだな)

浜面(・・・当たり前だとは分かってるけど、あんなさりげなくは出来ないんだよな・・・)

美琴(でもああいうことをしても嫌みらしく感じないのは、まぁ垣根らしいわね)


垣根「さて、お前に来てもらったのは・・・ま、デートをしたかったからってわけだが」

吹寄「冗談はいいから・・・それで、どんな用事なの?」

垣根「・・・冗談じゃないんだけどな」

メニューを吹寄に渡し、垣根が何か注文しろよ、と言う

吹寄「・・・なに、心理定規と喧嘩でもしたの?」

垣根「そんなんじゃねぇよ・・・ただたまにはこういうのもいいかと思ってさ、遠慮なく頼めよ」

吹寄「・・・なんか悪いわね」

吹寄がウェイトレスにコーヒーとケーキを注文する

垣根「なんだ、意外と控え目だな」

吹寄「ダイエットしてるのよ・・・」

垣根「ダイエット?吹寄には必要ねぇだろ」

吹寄「必要よ、女の子っていうのは貴様達男には分からない葛藤があるんだから」

垣根「ふーん・・・でもさ、お前はそんなことしなくても魅力的だけどな」

吹寄「み・・・」

顔を真っ赤にした吹寄が、黙りこくる


603 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 09:02:36.77 ID:yjU3H/b00


上条(くぁぁ!ダイエットのことをさりげなく聞き出し、しかもそれを使ってベタ褒め!)

美琴(でもダイエットしてんのか?って聞かれたのと違って、あれだと心底褒められた感じがするわね・・・)

削板(なんて巧みな話術なんだ!)

ゴーグル(あーあ・・・あの人可哀相に、垣根さん遊び半分なのに…っていうか、今日の垣根さんなんか歯が浮くセリフばっかで笑えますね…)ククク

浜面(あの姉ちゃんおっぱいでけぇな)


ウェイトレスが吹寄の注文した商品を運んでくる

ちなみに垣根はコーヒーだけだ

吹寄「・・・垣根もコーヒーだけじゃない」

垣根「まぁな、あんまり腹減ってないから」

吹寄「朝をしっかり食べたの?」

垣根「そういうわけじゃないけど、一緒に昼も食うだろ?だったらあんまり今は食べないほうがいいし」

吹寄「ひ、昼まで一緒にいるの?」

垣根「あれ、都合悪かったか?」

頬杖をつき、吹寄の瞳を覗き込むようにしながら垣根が尋ねる

吹寄「わ、悪くはないけど・・・心理定規に見つかったら怒られるわよ」

垣根「まぁまぁ、今はそういうのは忘れようぜ」

コーヒーをブラックのまま、垣根が飲む

垣根「ん、ちょっと苦いな」

吹寄「じゃあ私は砂糖入れようかな・・・」


上条(!コーヒーを先に自分が飲んで苦いことを伝える・・・)

美琴(女の子は苦いのがダメな子も多いから・・・)

ゴーグル(あぁやってさりげなく、砂糖を入れたほうがいいと伝えるなんて・・・)

削板(垣根、かなり慣れた感じだなぁ・・・)

浜面(バニーとかも似合いそうだよな、あの姉ちゃん)


604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/27(日) 09:35:40.09 ID:KjKmRkOYo
はまづらェ……
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/27(日) 16:49:39.99 ID:mVW5CDd4o
安定の世紀末帝王
606 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 20:08:28.24 ID:yjU3H/b00

垣根「…なぁ、吹寄」

吹寄「なによ」

垣根「お前さ、今日うっすら化粧してないか」

吹寄「!!な、なんで分かったのよ…」

垣根「いや、なんかいつもと雰囲気が違ったから」

吹寄「…それで分かるのはすごいわね」

垣根「でもなんで今日に限って?」

吹寄「…別にいいでしょ」

垣根「あ、もしかして俺とのデートで気合い入れてるとか?」ニヤニヤ

吹寄「ち、違うわよ!!大体、デートって言うけどそんな遅くまで貴様といるつもりはないわ」

垣根「え、マジで?」

吹寄「…心理定規に悪いし、ねぇ…」

垣根「お前って、浮気とか出来ないタイプなんだろうな」

吹寄「…なによ、馬鹿にしてるの?」

垣根「褒めてるんだよ、そういう真っ直ぐなとこは尊敬できるし」

吹寄「…今日の垣根、本当にどうかしてるわよ」



上条(う、あの吹寄があそこまで圧されてるなんて…)

美琴(いつもと雰囲気が違う…いつも見ていた、なんて思わせるセリフね!!)

削板(…それに、相手の長所をしっかりと褒めている…)

ゴーグル(あぁいうのがイケメンってやつなんすかね…途中で冷やかし入れるあたり、なんか垣根さんらしいですし)

浜面(ま、待て待て!!俺には滝壺がいるじゃないか!!)


607 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 20:13:04.55 ID:yjU3H/b00

垣根「…んじゃ、ここらで」

ファミレスでのひと時を終え、吹寄は帰りたいと言い出した

吹寄「…ねぇ、垣根」ボソッ

垣根「んだよ」

吹寄「さっきから、あっちで上条達がこっち見てるんだけど…」

垣根「!」

吹寄「…あれ、どうせ貴様が何かしでかしてるんでしょ」

垣根「…すまなかったな、まぁ…あいつらにイケメンがなんたるかを教えたくて」

吹寄「はぁ…」

垣根「んでもよ、別にそのためだけにお前呼んだわけじゃないんだぜ?最近学校行ってないし、たまにはお前とか姫神にも会わないといけないって思ってたしさ」

吹寄「分かってるわよ、垣根はそういうところは優しいし」

垣根「褒めてんのかそれ」

吹寄「…まぁ、私は帰るわ…姫神でも誘って映画でも見に行きたいし」

垣根「なんか悪かったな」

吹寄「いいわよ、暇つぶしにはなったわ」

垣根「また学校でな」

吹寄「ちゃんと宿題してくるのよ!」

垣根「はいはい」


上条(あれ、吹寄帰ったな)

美琴(協力者だからかしら?)

削板(…気のせいか、あのお嬢ちゃんはこっちを見てたな…)

ゴーグル(…いい手本でしたね…やっぱ垣根さんはすごいっす)

浜面(でもやっぱおっぱいでかいよなぁ…)



608 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/27(日) 20:19:24.96 ID:yjU3H/b00

垣根「さて、これでイケメンっていうものが分かっただろう」

上条「ま、まぁな…」

垣根が両手を腰に当てて笑う

垣根「ははは!!そりゃそうだろ、お前達はイケメンには遠いからな」

ゴーグル「…垣根さんに言われたらどうしようもないっす…」

美琴「…うーん…」

垣根「あぁ?なんだよ、御坂」

美琴「私さ、垣根を見てて思ったんだけど…それって、イケメンっていうより垣根よね」

垣根「…ちょっと何言ってるか分かんないですね」

美琴「だから、世の中のイケメンっていうのはやっぱりただ顔だけがいい人のことだと思うのよ…性格のいいイケメンってほとんどいないし」

浜面「…なんか、急に現実的な話だな」

垣根「じゃあ、イケメンじゃなくてなんなんだ?」

美琴「うーん…それって、垣根でしょ」

垣根「…はぁ?」

美琴「削板には削板のいいところがあるし、ゴーグルにはゴーグルの素敵なところがあるじゃない」

削板「いいこと言うじゃないか!!」

ゴーグル「…そうっすね、俺は俺のいいところを伸ばしていきたいです」

美琴「…それに、たとえイケメンって感じはしなくても…誰か大切な人がいて、その人を精一杯愛してあげられるなら、それが一番素敵だと思うな」

浜面「全く持って正論だ…」

美琴「…だからね、こんなことしなくても、みんな素敵じゃない」



美琴「大丈夫、みんな素敵だから!」ニコッ

一同「…」



一同(この人が一番イケメンだ)



ていとくんのイケメン講座編 終了

609 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:54:13.78 ID:sqndImxt0


上条「・・・暇だよなぁ」

黒子「暇ですの・・・」

美琴「暇よね・・・」

削板「あぁ、暇だ!」

心理「暇ね」

垣根「暇だねぇ」


一同「暇だなぁ」


単発 暇編


垣根「暇だからさ、なんかゲームでもしようぜ」

美琴「何するの」

垣根「しりとり」

心理「いいわよ」

上条「じゃあ俺からな、しりとり」

黒子「リンカーン」


垣根「暇だなぁ」

心理「暇ね」

削板「そういやさ」

上条「ん、なんだ?」

削板「この前、近くのコンビニに寄ったんだ」

黒子「何かありましたの?」

削板「526円の買い物してさ、店員さんに530円渡したんだ」

美琴「うんうん」

削板「そしたら4円返された」

心理「へぇ」



610 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:54:45.16 ID:sqndImxt0


上条「暇過ぎるな」

垣根「上条と御坂は最近デートとか行ってるか?」

美琴「うーん・・・どこかに出掛けるとかはあんまり」

黒子「あら、では一緒に家でくつろぐ、みたいな感じですの?」

上条「あぁ、そっちのほうが落ち着くし」

削板「でももったいないよな、休日もそんなんじゃ」

心理「出掛けたりもしなさいよ」

上条「うーん・・・オススメのデート場所とかあるか?」

垣根「あぁ、そういや最近でっかい総合遊戯場が出来たんだよ」

心理「あそこ、潰れたわよ」




上条「暇だなぁ・・・」

心理「ねぇ、上条君って元々は年上のお姉さんタイプが好きだったのよね?」

上条「あぁ、寮のお姉さんとかに憧れてたな」

黒子「ではなぜお姉さまのことが好きになりましたの?」

上条「俺を助けてくれようとしたし・・・それに前から、素敵だなとは思ってたから」

美琴「・・・よく言うわよ、昔は顔合わす度にめんどくさそうにしてたのに」

上条「そ、そうだっけ」

垣根「なんだ、上条ってば最初は意外と苦手だったのか」

上条「あ、いや・・・」

美琴「いやいや、苦手そうにしてたじゃないのぉ!」


611 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:55:18.17 ID:sqndImxt0

削板「ははは!なんだよ、出会ってすぐにぎこちなかったのか!」

心理「ふふ・・・なんかそういうのって素敵」

上条「あ、あのさ・・・」

垣根「なんだ?」



上条「俺、その時の記憶・・・ないからさ」




黒子「暇、といえば・・・皆さんは暇な時には何をして時間をつぶしますの?」

上条「俺は・・・ブラブラ散歩するかな、その途中で意外と楽しいことを見つけたり出来るし」

心理「私は化粧品を見るわね」

垣根「俺は本を読むかな」

削板「暇ならまずは走るな!」

美琴「わ、私は当麻と一緒にいるかな//」

黒子「はぁ・・・お姉さまの惚気はお腹一杯になりますの」

垣根「そういうお前はどんな過ごし方なんだ?」

黒子「風紀委員に暇なんてありませんの」




削板「暇なんだよな」

垣根「なんでこんなに暇なんだろうな」

心理「暇になった原因でも考えてみる?」

美琴「あ、それいい暇つぶし」

黒子「では・・・まず、皆さんはなぜ昨日までは暇ではなかったんでしょうか」

上条「学校だったから」

612 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:56:05.76 ID:sqndImxt0



黒子「あら、上条さんらしいですわね」

美琴「私は・・・今度演説しないといけなくて、内容を考えてたから」

黒子「さすがお姉さまですの!」

削板「俺は昨日はジムに行ってたからな、テクパトルと一方通行も一緒に」

黒子「ふふ・・・軍覇さんは鍛練を怠りませんわね」

垣根「俺は・・・昨日は研究所に行ってたな、能力開発関係で」

黒子「あら、結果はどうでしたの?」

垣根「まずまずだな、だがやっぱり俺の能力は科学だけじゃ到底解明出来ないらしい」

黒子「・・・全く、常識が通用しませんの」

心理「私はその垣根に付き添ってたわ、彼の能力開発見てるだけでも面白いから」

黒子「・・・心理定規は、少し変わってますの」

上条「白井は何してたんだ?」

黒子「昨日も風紀委員は大忙しでしたの・・・初春はサボりましたし、最悪でしたわ・・・」

美琴「?初春さんがサボるなんて珍しいわね」

黒子「そうでもないですの」

垣根「んで、なんで暇になったんだ?」

心理「・・・私達は能力開発が一段落したからよ」

上条「今日は休日だから」

黒子「お休みが貰えたからですの」

削板「今日はオフだからな!」

美琴「演説の内容決まったもん、今すぐに発表出来るくらいよ」

一同「・・・」


一同「あ、暇だから暇なんだ」


613 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:56:41.70 ID:sqndImxt0


垣根「新しい暇の過ごし方を考えついた」

心理「あら、聞かせてもらえるかしら」

垣根「やだ」


心理「・・・昨日、垣根に久々に抱かれたのよ」

上条「な、なにいきなり言い出してんだアンタ!?」

心理「なに取り乱してるのよ、もしかして私がそういうことするって興奮する?」

美琴「・・・いや、友達の性生活は聞きたいものじゃないし・・・」

心理「まぁいいから、それでね・・・」

削板「ちょっと待った、そもそもなんでそんな話を俺達にするんだ?」

心理「暇だからよ」

黒子「それで・・・何か問題でもありましたの?」

心理「えぇ、垣根ったら優しくしてくるだけで、ちっとも激しくないのよ」

垣根「だって、俺達はそんな激しくなくていいだろ」

心理「でもね、たまには乱れた垣根も見てみたいのよ」

美琴「・・・」

黒子「あら、お姉さま・・・先程から静かですがいかがいたしましたの?」

美琴「あ、あの・・・玩具とか使うのって、もしかしておかしいの?」

四人「おかしい」



614 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:57:12.07 ID:sqndImxt0


黒子「昨日、ある事件の処理を任されたのですが」

垣根「あぁ」

黒子「・・・小学生の女児がさわられかけたんですの」

上条「・・・さらわれかけた、じゃなくて?」

黒子「さわられかけたんですの」

美琴「誰に?」

黒子「・・・まぁ、一部のマニアックな趣味の持ち主にですの」

削板「全く、けしからんヤツもいるな・・・」

心理「ホント・・・でも未遂で捕まってよかったわ、実行されたら被害者の心の傷は癒えないから」

黒子「実は、容疑者が最初の段階では分かっていなくて、何人かの疑わしい人物の名前が上がったのですが・・・」

上条「あぁ」


黒子「その中に、やっぱり一方通行さんも入っていましたの」




心理「暇よね・・・こんなに暇だと、なんだか一日を無駄に過ごしてる気がするわ」

上条「たまにはいいんじゃないか、こういうのも」

美琴「何も考えないで過ごす時間・・・なんか、ちょっと幸せ」

心理「はぁ・・・私は、あんまりぼーっとして過ごすのは好きじゃないわね」

削板「俺も、短い時間は有効に使いたいな」

垣根「俺達は何もしていないんじゃない、何もしていないってことをしているんだ」

上条「プーさんの意見だな」

垣根「どっちの意味のプーさんだ」



615 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 08:57:38.42 ID:sqndImxt0


美琴「昔から思ってたんだけど、垣根って髪の毛盛りすぎじゃない?」

黒子「あ、私も思っていましたの・・・なんというか、少しチャラいですの」

心理「あら知らなかったの?垣根のこれ、別に自分で盛ってるんじゃないのよ」

上条「え、じゃあ染めてもいないのか?」

垣根「あぁ、地毛だぜ」

削板「知らなかったなぁ!」

黒子「ですが・・・それにしたってチャラいですわね」

垣根「・・・じゃあ俺に坊主にしろ、と言うのか」

一同(坊主の垣根か・・・)




一同「く・・・ふふ・・・ww」

垣根「ナメてやがるな、よほど愉快な死体になりてえとみえる」






削板「・・・上条は最近、悩んだりしてないか?」

上条「うーん・・・美琴が可愛すぎてたまに辛いのが悩みかな」

美琴「当麻ったら//」

垣根「でもさ、心理定規のほうが可愛いよな」

削板「いやいや、黒子が一番可愛いと思うぞ?」

上条「・・・美琴だろ、スレンダーな体に綺麗な髪の毛、大きな瞳!」

削板「黒子だな、健康的な体についつい撫でたくなる可愛さ!」

垣根「心理定規に敵うヤツがいるかよ、美しい瞳に百合の花のような髪の毛、触れたら壊れてしまいそうな硝子を思わせる肌!」

心理「・・・自分の恋人が一番可愛いって思うのは、当たり前なんじゃないかしら」

上条「う・・・じゃあ、心理さんはやっぱり垣根が一番カッコイイと思うのか」

心理「それは分からないけど、でも垣根が一番好きよ」

一同(あ、この人可愛い)


616 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 13:58:40.81 ID:sqndImxt0

垣根「暇ってさ、なんで暇って言うんだろうな」

上条「さぁな、暇だからじゃないか」

美琴「そうよ、暇だから暇って言うのよ」

垣根「でもさ、シュラッペンとかでもよくないか?」

心理「何よそれ」

垣根「今日めちゃくちゃシュラッペンなんだわー、とかいい響きだよな」

黒子「そうは思いませんが」

垣根「…ところでさ」

削板「あぁ」


垣根「シュラッペンってなに?」

一同「さぁ」



上条「ふと思ったんだけどさ」

垣根「あぁ」

上条「垣根帝督と上条当麻って、イニシャルおんなじだな」

垣根「あぁ」

上条「コンビ組まないか」

垣根「なんの」

上条「お笑いとか」

垣根「…」



垣根「お前って、笑いとか取れるっけ」

上条「無理だな」


617 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 14:52:49.73 ID:sqndImxt0

垣根「…なぁ、暇なのって、幸せなことなのかなぁ」

上条「そうだな…いつも時代に追われてるよりはマシかもな」

美琴「そうね…」

垣根「はぁ…しかし、暇すぎるのもなぁ」

削板「そうだなぁ…」

6人が暇だ暇だと言い続けること1時間

ファミレスの中に客は彼らだけだ

休日、とはいうもののこの中途半端な時間帯にはそれほど客も入らない

心理「…ねぇ、私達って、日ごろはかなり忙しいわよね」

黒子「そうですの」

心理「だったら今日くらい、暇でもいいんじゃない」

垣根「だな、たまの暇だからいいんだよな!」

上条「よーし、じゃあ暇をせいぜい堪能しますか!!」

美琴「そうね!!」

店員に注文を伝え、ドリンクバーだのなんだのを堪能する

嗚呼、美しき休日

外の喧騒など気にもせず、彼らはただ自分達の時の流れを楽しむだけ

上条「…」

しばらくして、一同は気づいた

もしかして



一同「暇じゃない?」



>>609へ戻る


暇編 終了
618 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 17:49:55.66 ID:sqndImxt0

テクパトル「…ん…」

テクパトルが目を覚ます、いつもの風景にいつもの天井

同じ風景を見ながら毎朝起床できる、これがどれほど幸せなことか今の彼は分かっていた

その幸せを噛みしめながらベッドから体を起こし

そして気が付いた

今、彼の横には一人の女の子が寝ている

まぁそれはつまり、妹達であり


そしてなぜか、9982号だった



テクパトル(…よし、悲鳴を上げる準備は出来た)

ふぅ、と息を吸う


テクパトル「なんでこんなことになってんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」



9982「もう、いきなり大声を出さないでください、とミサカは耳に指を突っ込みながら…」

テクパトル「待て待て!!たしかそこには美月がいたはずだぞ!?」

9982「えっと、確認いたしますが美月というのは19090号のことですね」

テクパトル「そうだよ!!昨日の夜は美月と一緒に寝たはずだ!!っていうかいつも一緒に寝てるはずだ!!」

9982「…」



9982「ミサカの初夜でした、とミサカはなんの躊躇いもなく突然嘘を言ってみたりします」

テクパトル「そういうのはちょっと恥ずかしがりながら言った方がリアリティーあるんだぞ」

9982「…」



9982「テっくんってば、恥ずかしがる女の子が好きでしたか、とミサカは」

テクパトル「ってそうじゃねぇ!!なんでお前がここに寝てるのかを教えろよ!!!」



ミサカインヘブン編


619 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 18:12:55.60 ID:sqndImxt0
9982「…簡単に説明しろ、と言いたいのですね?とミサカは確認を取ります」

テクパトル「そうだよ…まず、いつから俺の隣で寝てた」

9982「安心してください、19090号がこの部屋を出てからですから、まだ1時間ほどしか経っていません、とミサカは事実を伝えます」

テクパトル「美月は相変わらず早起きだな…まぁみんなの飯作ってるからだろうけど」

9982「それでですね、ミサカは久々にこの世に来たかったために、やってきたのですよ、とミサカは説明します」

テクパトル「…でもどうしてこの部屋に来たんだ?」

9982「そりゃ、19090号に勘違いさせて泥沼を演出…分かりました、分かりましたからその拳を収めてください、とミサカは若干の恐怖を感じながら懇願します」

テクパトル「…つまり、悪ふざけだったのか」

9982「短く言えば、とミサカは同意します」

テクパトル「はぁ…」

ため息をついてから、テクパトルがベッドの外に出る

ここに来た、ということはつまり今日一日は一緒にいるつもりなのだろう

ミサカが一人増えるのは、嬉しいような大変なような

テクパトル「…とりあえず、飯にしようぜ」

9982「そうですね、とミサカはベッドから立ち上がります」

テクパトル(…っていうか、みんなになんと説明すればいいのやら…)



17600「ほう、アレイちゃんは赤出汁派か」

アレイ「そうだな、白出汁も嫌いではないが」

20000「いやいや、そこはお吸い物でしょ」

御坂妹「全く、コーンスープに決まっています」

14510「あ、あの…味噌汁の話なんじゃ…」

13577「さすが、常識が通用しませんね」

19999「どこぞのイケメンを思い出すのさ、そのセリフ」



テクパトル「…おはよう、みんな」

ミサカ一同「あ、おはようござ…」



ミサカ一同「って9982号!?」

テクパトル(いいリアクションだ)

620 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 19:47:58.97 ID:sqndImxt0

テクパトル「えー…えっとだな」

9982「どうも、地獄から戻ってきたぜベイビー、とミサカは粋なセリフを述べてみます」

テクパトル「…」

17600「つまり、またのこのこ天国から現れたのか」

9982「…どうして今の説明で分かったんですか、とミサカは怪しがります」

テクパトル「と、とにかく!!みんな仲良くしてやってくれよな」

12345(な、なんで死んだはずのミサカがここにいるんですか!!)

11116(やばいですよ、なんか心霊現象ですよ!!!!)

10398(くわばらくわばら!!!)

テクパトル「…なんか勘違いしてるみたいだが、これは科学的に解明できる現象だからな」

11116「なんだ…つまんないですね」

アレイ「何を、科学で証明できる心霊現象など面白いではないか」

9982「心霊現象ではありません、とミサカは訂正します」

19090「あ…あの、それで…」

テクパトル「ん、なんだ」



19090「どうして、テっくんと9982号は一緒にいたのですか?」

テクパトル「」

9982「鋭い質問ですね、とミサカはその指摘を褒めてみます」

20000「そういやそうだ、朝まで19090号と一緒にいたはずのテっくんが…」ハッ


20000「テっくん、やらかしたな…」

テクパトル「やらかしてねぇよ」

621 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/28(月) 21:28:22.87 ID:sqndImxt0

テクパトル「…だから、こいつがいきなりベッドの中に…」

19090「な、何もされませんでしたか!?」

9982「してないですよ失敬な」

10039「…それならまぁ、問題はないでしょう」

19090「…そ、それであなたは何をしに?」

9982「ですから、あなた方に会いたかったのが理由の一つです」

テクパトル「ん?他に理由があるのか」

9982「えぇ、実は」



9982「ミサカ、新しい能力を身に着けてしまいまして」

テクパトル「さぁみんな、朝飯だー」

ミサカ一同「おー」

9982「ちょいちょい、待ってくださいよ、とミサカは昭和っぽいノリでツッコんでみます」

テクパトル「…冗談なら付き合わないぞ」

9982「いえいえ、それがマジなんですよ」

テクパトル「…どんな能力なんだ」

9982「名づけて、ミサカインヘブンです」

テクパトル「今日はサラダと目玉焼きか…」

アレイ「健康的な朝、という感じだな」

9982「聞いてくださいよ、とミサカはテっくんの袖を引っ張りながら訴えます」

テクパトル「…どっかで聞いた能力名だが…まぁ、一応説明は聞いてやる」

622 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:19:36.02 ID:7St6LmcF0
テクパトル「・・・で、どんな能力なんだ」

呆れたようにテクパトルが尋ねる

9982「よくぞ聞いてくれました、テっくん」

19090「あの・・・ちなみに、それは他のミサカ達にも使えますか?」

9982「いえ、ミサカだけです、とミサカは自分が特別な存在だとアピールしてみます」

20000「ちぇー、なんだ」

テクパトル「で、どんな能力なんだよ」

9982「ミサカインヘブンは、ミサカの周りに天国のような場所を作れるんです、とミサカはお姉様に似て小さな胸を張ってみます!」

13577「・・・天国のような場所って、具体的には・・・」

御坂妹「例えば、どんなことが起きるんですか?」

9982「お花が咲きます」

アレイ「ほう、それは興味深いな」

9982「・・・他にも、雨が降らなかったり、快適で過ごしやすかったり・・・」

テクパトル「・・・」

9982「あの、何を呆れたような顔を・・・」

テクパトル「それ、その能力の本質か?」

9982「・・・さすがテっくん、鋭いですね」

17600「なんだ、それが本質なんじゃないのか」

11116「じゃあ、一体何が本質なんですか?」

9982「ミサカのこの体は、AIM拡散力場を用いてこの場に現れています」

19090「えっと・・・たしか、アレイちゃんのプランにも似たような存在があったんですよね」


623 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:20:27.45 ID:7St6LmcF0
アレイ「あったとも・・・だが、それが何か?」

9982「このAIM拡散力場というのは、簡単に言えばオカルトの力です」

12345「そうですね」

9982「・・・実は、ミサカ・・・」


9982「この力を使って、不思議な現象を起こせるようになったみたいなんです」

10033「・・・つまり?」

19999「あんまり理解できないのさ」

9982「・・・アレイちゃん、分かりますか?」

アレイ「・・・なるほど、一方通行や垣根帝督のような力を手に入れたのだろう」

テクパトル「待て待て!それって天使に似た力なんじゃ・・・」

アレイ「無論、扱える量は二人に比べれば微々たる物だろうな、戦闘に応用などは出来まい」

10398「でも、なんだか神秘的な響きです!」

10039「いいですね、天使・・・」

20000「・・・ってことはそれを使えば、感じたことのないような快感が・・・」

19090「やましいことを考えたらいけません!」

テクパトル「・・・なるほど、天国というのもオカルトな分野だからな・・・」

9982「しかし、なぜかミサカだけが使えるみたいなんです」

アレイ「・・・それは不思議だな」

テクパトル「んで、その能力は俺達になんか役立つのか?」

9982「・・・」


9982「え、知りませんよそんなこと、とミサカは何言ってんだこいつ的な視線を送ってみます」

テクパトル「分かったから表に出よう」



624 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:21:04.82 ID:7St6LmcF0


テクパトル「・・・結局、ちょっと面白い現象を起こせるだけなんだな」

御坂妹「あんまり役に立つとは言えませんね」

アレイ「・・・だが、非常に興味深いな」

9982「いやん、アレイちゃんに襲われちゃいそうです、とミサカはテっくんの影に隠れます」

テクパトル「・・・ったく・・・んな冗談にゃいつまでも付き合ってられないぞ」

テクパトルが食事を終え、時計を見る

時刻はちょうど出勤の物だ

テクパトル「んじゃ、俺は行ってくるから」

19090「あ、テっくん!」

テクパトル「ん、なんだ?」

19090「こ、これ・・・お弁当です」

テクパトル「あぁ、ありがとうな・・・いつも美味しいよ」

19090号のことを抱きしめてから、テクパトルが玄関へ向かう

テクパトル「今日は早く帰って来れるから」

19090「はい!」

ガチャン、と玄関のドアが閉じられる

10033「相変わらず仲の良い夫婦ですね・・・」

14510「全く、ヤキモチを妬けますよ」

17600「何を言うんだ、二人の幸せは何より嬉しいじゃないか」

19090「//」

9982「・・・あの、テっくんの職場ってどの辺りなんですか?」

アレイ「この近くだ・・・住所なら分かるが、なぜだ」


625 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:21:39.65 ID:7St6LmcF0
9982「いえ、遠いのかなぁと」

御坂妹「そんなことはないですよ」

20000「さーて、ご主人様は行ったから、ミサカも朝の運動をしますか!」

17600(・・・まーた性欲処理か)

9982(・・・)


9982(なるほど、職場はこの近くですか)





テクパトル「おはようございます、アックアさん」

アックア「おはようなのである」

テクパトル「はぁ・・・最近はやっと涼しくなってきましたね」

アックア「そうであるな・・・だがまだまだ、汗を拭う日々は続くのである」

テクパトル「ははは、早く冬になってほしいですよ・・・」

テクパトルとアックア

二人は同じジムで働いている

ちなみに、最近はやたらイギリスから遣いがやって来てアックアをイギリスに連れ帰ろうとしている

本人に全くその意志はないようだが

テクパトル「・・・さて、準備も別にないですね」

アックア「・・・そうであるな・・・」

テクパトル「・・・今日は一方通行も来るかなぁ」

アックア「彼は最近、頑張っているようなのである」

テクパトル「杖を使わないでも歩けるようになれそうですからね」

アックア「目標は高く、であるな」



626 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:22:11.84 ID:7St6LmcF0
テクパトル「そうです・・・ん?」

チラッ、とテクパトルが窓を見つめた

気のせいか、9982号がいたような気がする

テクパトル(違う違う、きっと見間違えだ、全く、まだ寝ぼけてるなんて)



9982「失礼します・・・とミサカは控え目に挨拶を」

テクパトル「どわぁぁぁぁ!?」

やっぱり、9982号だった

なんでこんな所にいるのか、それはこの際そこまで重要ではない

それよりも、アックアに彼女の存在がバレるのがまずいのだ

テクパトル「なんで来てるんだよ!」

小さな声で9982号を叱り付ける

だが当の本人は大して悪びれた様子もない

9982「いえ、テっくんの働いている姿を見たくて・・・」

テクパトル「お前なぁ!」

アックア「おや?奥さんが来ているなんて珍しいのであるな」

テクパトル「・・・はい?」

テクパトルの額を冷や汗が流れる

そういえば、アックアにミサカ達の見分けなどつくはずもない

9982号も19090号も同じに見えているのだろう

9982「はい、ミサカ・・・」

テクパトル「どわぁぁぁぁ!」

9982「?」



627 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:22:46.19 ID:7St6LmcF0
テクパトル「ここでは自分のことは私って・・・」

アックア「ミサカ?」

テクパトル「あ、あはは・・・」

アックア「もしかして、奥さんの名字であるか?」

テクパトル「そうなんですよ!」

アックア「・・・?しかし奥さん、前は自分のことを名前で呼んでいたのであるが」

テクパトル(ヤバいヤバい!)

9982「いえ、実はミサカ、テっくんの奥さんの妹なんですよ」

アックア「?ではなぞ嘘をついたのであるか?」

9982「あなたがミサカを、テっくんの奥さんと勘違いしたからですよ」

アックア「あぁ、これは気を遣わせてしまったのであるな」

テクパトル「あ、あはは・・・」

アックア「それはそうと、妹さんは何をしに来たのであるか?」

9982「自分の姉の旦那さんを見極めに、です」

テクパトル(よく言うよ・・・自分がホントは先に生まれたのにな)

アックア「なるほど、ではよく見極めるのである」

9982「はい!」

テクパトル「ちょ、ちょっとアックアさん・・・」

アックア「いいではないか、こういうことも必要なのだ」

テクパトル「はぁ・・・」




628 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:23:14.23 ID:7St6LmcF0


テクパトル「・・・さて、開けますか」

アックア「もうそんな時間であるか」

入口を解放すると、早速三人の客が入ってくる

削板「よっ、テクパトル、アックア!」

アックア「毎度なのである・・・今日は胸の日か」

一方「・・・あァ?なンだよ、嫁さン職場に連れ・・・」


一方「!おいテクパトル・・・」

テクパトル「あ、ほら!」

アックア「彼女は奥さんの妹さんらしい」

削板「あぁ、なるほど!」

テクパトル「はぁ・・・」

ため息をつくテクパトルに、もう一人の客も近づく

彼も常連の、いかついコーンロウ男だ

「よぉ兄ちゃん、嫁さんとは仲良くしてるか」

テクパトル「・・・アンタも毎度お疲れ様だな、仲良くしてるさ」

「ははは!だろうな、色々困難を共に乗り越えれば愛は深まるもんだ」

アックア「いらっしゃい、今日はどこの日であるか?」

「腕だな」

9982「なるほど・・・なんだか男臭い職場ですね」

テクパトル「一応、ダイエット目的の女性も来るんだけどな」

9982「!ダイエットですか・・・ミサカも興味ありますね」

629 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:23:41.64 ID:7St6LmcF0
一方「・・・」

9982「おや一方通行、お久しぶりです」

一方「お前・・・死ンだミサカだよな」

アックアやもう一人の客には聞こえないよう、一方通行が尋ねる

9982「えぇ、そうですよ」

一方「帰って来るなら一声掛けろよな」

9982「どうやってですか?」

一方「・・・とにかく、あンまり目立たないようにしろよ」

9982「分かっていますよロリコン」

一方「最高の褒め言葉だな」




テクパトル「・・・にしても、相変わらずアンタはデタラメな重量を軽々と・・・」

「そりゃ兄ちゃん、いくら兄ちゃんでも俺に敵うなら苦労しないぜ」

テクパトル「・・・なんだそりゃ」

「それより、あっちの娘さんは面白いな、よくもまぁ形を保ってるもんだ」

テクパトル「!わ、分かってたのかアンタ・・・」

「なぁに、アックアは魔術側の人間だから疎いだろうがな、あの特有の一瞬走るノイズのような物はAIM拡散力場の集合体、それも不安定な物に限られる」

テクパトル「・・・そこまで分かるのか」

「・・・あ、白モヤシが潰れたぞ」

テクパトル「!おい一方通行・・・見栄張ってあんまり重いの使うからだぞ」

一方「あァ・・・ロリ天使が走り回ってるぜ・・・」


630 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:24:09.20 ID:7St6LmcF0
テクパトル「まずいな、こりゃ重症だ」

一方通行を救い出しながらテクパトルが呆れたように呟く

削板「ははは!惜しかったな一方通行!」

一方「ちっ・・・能力に頼りすぎるのはいけねェなンていっつも番外個体がうるせェからな、見返してやりてェンだよ」

テクパトル「いい意気込みだが、順序を踏まなきゃな」

アックア「我々だって最初は非力だったのである」

一方「あァ?そうなのかよ」

アックア「・・・」

神の右席

聖人

失ったとはいえ、ありゃ非力だったのか

アックア「前言撤回なのである」

テクパトル「撤回するのが早すぎますよ・・・」

「白モヤシ、最初から5速で走り出す車なんていないだろ」

一方「誰が白モヤシだ」

「いいか、人間ってのは努力によって伸びていく生き物だ、努力無しに最初から力があるヤツは化け物か神様のどっちかだからな」

一方「・・・お前も努力したのか?」

「・・・」

ジャガイモ

ジャガイモ

ありゃ非力だったのか

「前言撤回だ」

テクパトル「おい」


631 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:24:36.02 ID:7St6LmcF0


9982「・・・あ、お客さんが来ましたよ」

テクパトル「お、早い時間帯だな」

アックア「この時間に他のお客さんとは珍しいのであるな」



土御門「やっほー、一方通行頑張ってるかにゃー?」

一方「つ、土御門!」

土御門「いやぁ、最近俺も体が鈍ってていけなくてな」

アックア(・・・なるほど、イギリス清教もいるのだな)

土御門「あ、削板もいたのかにゃー」

削板「よぉ!」

テクパトル「土御門だな、上条とたまにいる」

土御門「正解だぜぃ・・・んで、そっちの可愛い子は?」

9982「可愛い子なんて言われてもミサカは別に揺らぎませんよ」

土御門(やっぱり妹達か)

土御門「にゃー、手厳しいったらありゃしないぜぃ」

一方「・・・お前も鍛えに来たのか」

土御門「あぁ、家でやってもいいんだけどやっぱり人がいると互いに切磋琢磨出来るしな」

「素晴らしい考え方だな、猫男」

土御門「・・・なぁ、こいつは?」


632 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/29(火) 08:25:47.98 ID:7St6LmcF0
テクパトル「常連だが・・・そういえば、アンタ名前は?会員証も明らかに偽名だし」

「なんで偽名だなんて言うんだよ!?」

テクパトル「ジェーンドゥなんて明らかに偽名だ」

9982「あ、もしかして秘密で逃げてきたどこぞの王族・・・とかですか?」

「だったら素敵だなぁ」

言いながら、男は次のセットに入る

土御門「・・・なぁ、あいつのデタラメな重量はなんなんだにゃー」

テクパトル「気にしないでくれ、いつもあぁなんだよ」

削板「よーし、土御門!俺が補助してやるからベンチプレスやろうぜ!」

土御門「よし来た!」

テクパトル「・・・一方通行、何サボろうとしてるんだ?」

一方「・・・ちょ、ちょっと休ンでただけですゥ」

9982「なんていうか・・・一方通行って覇気が無くなりましたよね」

テクパトル「確かにな」

一方「・・・お前ら、馬鹿にしてンのか」

テクパトル「してないさ、それより次をやろうぜ」

削板「そうそう、一方通行にはテクパトルが補助つくから安全だ!」

一方「…」

9982「…」ジーッ

一方「見てンじゃねェよ」

9982「向こうの人とは大違いで、軽すぎる重量ですね」

一方「うるせェ」
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 23:59:49.26 ID:aCBgtV54o
おつにゃんだよ!
634 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/30(水) 15:33:00.02 ID:MwPaoUN60
テクパトル「・・・9982・・・い、妹よ」

9982「無理に呼ばなくていいですよ・・・で、なんですか」

テクパトル「いや、こんなの見てても面白くないだろ?」

9982「いえ、割と面白いですよ」

テクパトル「?なんか珍しいな」

9982「・・・ミサカはあまり体験したことがない物達ですので」

削板「たしかに、女の子はこういうのはやらないよなぁ!」

アックア「日本人ならば、男性でもあまりやらないものだからな」

削板「でも、体を動かすのは楽しいぞ!」

一方「・・・ンなもンか?」

テクパトル「お前もそのうち、楽しさが分かってくるさ」

一方「あンまり分かりたくねェな」

9982「・・・やってみたいですね」

テクパトル「あぁ、いいぞ」

アックア「女性なら、まずは軽いのがいいのである」

9982「一方通行が今扱っているのは何kgですか?」

テクパトル「ん、これは30kgだが・・・」

削板「女の子ならベンチプレス30kgなんていきなりは・・・」

9982「やります!」

半ば強引に、9982号がベンチに横になる

テクパトル「・・・無理して怪我するなよ」

9982「もう、テっくんったら心配性ですね」



635 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/30(水) 15:33:25.88 ID:MwPaoUN60
テクパトル「・・・じゃあいくぞ」

一方「上がるわけねェだろ、俺がやっとなのに・・・」



9982「あ、上がりました」

一方「」

削板「おぉ!しかもまだまだ余裕じゃないか!」

アックア「ふむ・・・君は中々才能があるようだ」

9982「へへへ・・・こう見えても軍事用ク・・・」

テクパトル「あぁ!お前の一家は代々運動神経がいいからなぁ!」

9982「?」

一方「」

削板「これは、もしかしたら50kgくらいいけるかもな!」

「おいおい、姉ちゃんにはちとキツくないか?」

テクパトル「どうする?」

9982「や、やってみます!常に限界に挑戦します!」

削板「いいぞ!」

50kgにセットされたバーベルを、9982号が持ち上げる

テクパトル「おぉ!」

削板「すごいじゃないか!」

アックア「驚いた・・・何かスポーツでもしていたのであるか?」


636 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/30(水) 15:34:05.20 ID:MwPaoUN60
9982「えへへ・・・昔、戦闘を少々・・・」

テクパトル「ゲーセンでなぁ!」

9982「?」

「いやぁ、姉ちゃんすげぇな」

削板「女の子もある程度引き締まってると健康的だからな!」

9982「・・・ミサカ、いい体型でしょうか」

テクパトル「あぁ」

9982「よし、では更にナイスボディを目指します!」

アックア「ではテクパトル君、色々教えてあげるのである」

テクパトル「はい」

一方「」


9982「テっくん、痩せるためには何をすればいいのですか?」

テクパトル「・・・痩せなくても十分いい体型だと思うがなぁ」

ベンチに腰掛けたテクパトルは、9982号がエアロバイクを漕ぐのを見ていた

9982「それは、ミサカが好みだと?」

テクパトル「残念ながら俺は美月一筋でな」

9982「ちっ、とミサカは分かりやすい舌打ちをしてみます」

テクパトル「・・・あんまり痩せすぎなのも、不健康っぽいよな」

9982「テっくんには女性の気持ちなんて分かりませんよ」

テクパトル「・・・いや、分からないが・・・そこまで痩せたいもんなのか?」

9982「いいですか、太ってるか太ってないかなら、太ってないほうがいいに決まってるじゃないですか」


637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/31(木) 01:54:21.10 ID:KaRLGqJ60
おっつー!


そういえば>>1のブログってどれか知らないことに今更気付いた…

誰かURLとか教えてくんねーかなー。(チラッ
638 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 09:15:41.30 ID:kNV5nWmT0
>>637 ○○○○の徒然なる日記
○○○○は、例のジャガイモオリキャラの名前ですの

url貼ってもいいんですが、urlがカオスなので遠慮しときますw


そっちではこのシリーズの続きみたいなのを週に三回くらいやってますね、短いですが


テクパトル「そりゃ選択肢がその二つならな」

9982「それに、女性というのは痩せる努力を常に心掛けることによって美しいプロポーションが保てるのですよ」

テクパトル「それは知ってるけど・・・」

9982「もう、テっくんったらミサカに好みのタイプになって欲しいからって・・・」

テクパトル「初耳だな」

9982「冗談ですから、どうか青筋を浮かべないで・・・」


一方「うわァァァァ!」

削板「一方通行・・・また無理するから」


テクパトル「・・・一方通行は相変わらず、無理するなぁ」

9982「・・・まぁ、非力なうちはやっぱり力強さに憧れますよ」

テクパトル「学園都市一位が非力ってのは笑えるがな」

アックア「しかし、ここに来た当初はあの30kgのベンチプレスさえ出来なかったのである」

テクパトル「そうですね、そう考えたらあいつはあいつで進歩してるんだ・・・」

9982「・・・ミサカ、ちょっと一方通行のことを見直しました・・・自分のためにあそこまで努力をするとは」

テクパトル「いや、力をつけたら能力を使わないでも番外個体や打ち止めと遊んでやれるからってさ」

9982「なおさら見直しますよ・・・あの一方通行が、ですか」


一方「ぐァァァァ!」

削板「一方通行!ちゃんと左右のバランスを考えて!」



639 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 09:16:20.41 ID:kNV5nWmT0


テクパトル「・・・まぁ、ああいう急ぎ足なのもあいつの特徴、かな」

9982「・・・」


一方「あちィ・・・もォだめだ・・・」

ベンチプレスを終えた一方通行は汗だくだ

かなり暑がっている

9982「!一方通行、ちょっとそっちに行ってもいいですか」

一方「あァ?なンだよ」

9982号が一方通行の隣に向かう

9982「ミサカインヘブン!」

じゃじゃーん、と口で言った途端に一方通行の周りが涼しくなる

一方「!お前、何したンだ?」

9982「これがミサカの能力、ミサカインヘブン・・・AIM拡散力場の力を用いて、快適なライフをお届けします!」

削板「?なんだそりゃ」

一方「聞いたことねェ能力だな・・・」

アックア「?」

テクパトル「・・・一方通行、気にするな・・・9982号な、ちょっと疲れてるんだ」

9982「ミサカはいたって正常なのですが」

アックア「・・・つまり、エアコン代わりなのであるな」

9982「アックアさん、本格的に傷付く言い方をしないで下さい」

アックア「これは失敬」

「姉ちゃん、こっちも涼しくしてくれよ」

9982「あ、はい!」

土御門「なんなら俺も」

9982「あなたは嫌です」

土御門「」

一方(はン、土御門のヤツは危ないからなァ)

テクパトル(お前も十分危ないがな)

640 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 17:44:15.09 ID:kNV5nWmT0

一方「あァ…涼しいなァ…」

テクパトル「…お前、本当に便利な能力身に着けたな…」

9982「ふふん、なんなら土下座して感謝してもいいんですよ?」

テクパトル「…なんだお前…」

削板「…はぁ、落ち着く…」

9982「…それにしても、他にお客さんは来ませんね」

土御門「にゃー、こんな所に昼間から来るのはよっぽどの物好きだぜぃ」

アックア「そうであるな…」

テクパトル「…大抵は学校に行ってるだろうしな」

9982「なるほど…学校ですか…」

9982号がしばし考えるような仕草を見せる

9982「…そういえば、お姉様の彼氏さんはどこの学校に通っているんですか?」

テクパトル「?なんで?」

9982「いえ、なんとなくですが」

一方「土御門の学校だろ、教えてやれよ」

土御門「にゃー、ここだぜぃ」

携帯の地図を見せる土御門

9982「…なるほど、ありがとうございます」

テクパトル「…!!お前、まさか行くとか言うんじゃないだろうな」

9982「…」



9982「その通りだよ、テクパトル君」

テクパトル「ふざけんな」

9982「大丈夫ですよ、お姉様に化ければいけます」

テクパトル「…いや、そうじゃなくて」

土御門「カミやんに触れられたらまずいぜぃ」

9982「…では、触れられないようにしますから」

テクパトル「ま、待った待った!」


641 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 17:48:43.26 ID:kNV5nWmT0
9982「ミサカ…小さい頃から学校なんて行ったことなくて…」オヨヨ

アックア「それは可愛そうなのである…」

テクパトル(お前子供時代なかっただろぉぉぉ!!!)

9982「…せめて、今からでも行ってみたいのです」

アックア「テクパトル君、行かせてあげるのである」

テクパトル「そ、そりゃダメですよ!!」

一方「いいじゃねェか、垣根も上条もいるンだし、フォローなンていくらでも出来るだろ」

テクパトル「そういう問題か!?」

削板「ほらほら、一日だけなんだろ?いいじゃんか」

テクパトル「…」

9982「上手くやってきますから、ね?」

テクパトル「…分かったけど…決してバレるなよな…」

9982「では、行ってまいります」シュン

アックア「き、消えたのである!!!」

一方(…AIM拡散力場のある場所になら瞬時に移動できるのか、便利だな)

テクパトル(…頼むからバレるなよ…)

削板(…涼しくなくなった…)

アックア(私も学校に行きたいのである)




学校


上条「…暑い…なんなんだよ、この暑さは…」

青ピ「仕方ないやろ…異常気象ってやつやって」

姫神「…もう9月も終わり…」

吹寄「…こういう日に限って土御門はサボりなのね…」

垣根「あの野郎、異常気象を読んでたな…」

心理「どうやってよ…」



642 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 19:03:20.62 ID:kNV5nWmT0
上条「…あれ?」

心理「?どうしたのよ」

上条「いや、校庭に見慣れた顔が…」

心理「あら、美琴?」

上条(…いや、妹達の誰か…)

吹寄「?御坂さんじゃない、あれ」

姫神「本当」

上条(!!ま、まずいって、このままじゃみんなに見つかるぞ!!!)

垣根(…あれ、妹達か)

上条「み、見間違いかなんかだろ!!」ハハハ

青ピ「あ、校舎に入ったみたいやね」

心理「…」

上条(ど、どどどどどどうしよう!?)

吹寄「全く…上条、貴様御坂さんにどれだけ懐かれてるのよ…」

上条「あ、あはは…」


9982「ここですか!!!!」

上条(あぁぁぁ勢いよく登場して見事クラスの注目を集めましたねぇ!!!)


「あれ御坂さんじゃない?」

「ホントだー!」

「上条に会いに来たのかな」


上条(ま、まずい、ここはとりあえず…)

上条「お、おい美琴…なんで学校に来て…」

9982「いえ、ミサカは99…」

上条「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


643 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 20:54:22.56 ID:kNV5nWmT0
吹寄「?99…なに?」

上条「あ、あはははは!!!」

心理「…上条君、美琴が学校にいたらまずいじゃない、追い返しなさい」

上条(心理さんナイスフォロー!!)

上条「だ、だよな、やっぱ…」

青ピ「でもえぇんちゃう?次の時間自習やろ」

上条「大馬鹿野郎!!」

青ピ「な、なんやねん!?」

姫神「上条君。彼女の前でいいところ見せようなんて情けない」

9982「いえ、ですから…」

垣根「あー!!!俺、御坂に、御坂に言いたいことがあったんだ、言いたいことがぁ!!!」

9982「?」

垣根「で、でもさぁ!!ここじゃあ言いにくいこと…」

吹寄「!!貴様、まさか心理定規がいながら…!!!」

垣根「はぁ!?」

上条(くそ、フォローがことごとく空振ってる!!)

心理「…仕方ないわね…」

心理定規が、スタスタと教卓の元へ向かう

バン!!と勢いよく教卓を叩くと、その音にクラス全員の視線が集まった

心理「みんな、聞いてほしいことがあるの」

青ピ「?なんやなんや?」

姫神「?」

心理「…実は私」



心理「帰国子女なの」

上条「」




644 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/05/31(木) 20:58:26.22 ID:kNV5nWmT0
青ピ「そ、それが?」

吹寄「ま、まぁ…そう見えなくもないけど…」

心理「帰国子女なの」

姫神「それで」

上条(なんて無理矢理な誤魔化し方だ!!!)

垣根(上条、今の間にこの野郎を連れてけ!!!)

上条(あ、あぁ…)


9982「帰国子女ですか!!!すごいです!!!!」キラキラ

心理「」


上条(ダメだこいつ食いついてるぅぅぅ!!!)

垣根(心理定規絶対帰国子女じゃねぇぇ!!!!)

心理「…す、すごいかしら…というかいつもみたいに敬語じゃなくてタメ口で…」

9982「いえ、ですからミサカは」

上条「そうだ!!!美琴、俺達、今日デートの約束だったよなぁ!!なんなら今から行こうか…」

がしっ、と上条が9982号の腕をつかむ

9982「いえ、ですか…」

垣根「…おいこら御坂、てめぇまさか自分は御坂美琴じゃないですとかいうナメたこと言うんじゃねぇだろうな、あ?」

9982(なぜか知りませんが、この人マジギレしてますね)

垣根「あー?」

9982「…」

上条「ほ、ほら!!行くぞ!!!!」

上条が9982号をどうにか教室から外へ連れ出す


吹寄「…な、なんだったの?」

心理「はぁ、帰国子女のふりも疲れるわ」

垣根「何もしてねぇだろ」

645 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:41:44.55 ID:DkAXabAZ0



9982「あの・・・」

上条「よし、ここなら誰もいない!」

9982「ミサカは一体何をされてしまうのでしょうか、とミサカは意味深な台詞を吐いてみます」

上条「なんもしねぇよ!っていうか・・・お前、何号だ?」

9982「ミサカは9982号です」

上条「・・・っていうと、AIMなんとかが・・・ってミサカだよな」

9982「その通りですが、もしかしてあなたは記憶力が悪いのですか?とミサカは首を傾げます」

上条「そうだよ・・・」

学校の屋上、上条と9982号は二人きりだ

上条「はぁ・・・で、何しに来たんだよ」

9982「お姉様が付き合っていらっしゃる男性の普段の姿を見ておきたくて」

上条「・・・お前、美琴のことが気になるのか?」

9982「・・・妹ですから」

ぎゅっ、と9982号が何かを握り締める

制服についた缶バッジだ

やはりゲコ太の物なのは、美琴譲りなのか

上条「・・・でもさ、だったら俺の学校じゃなくてもいいだろ、なんなら俺が美琴といる時とか・・・」

9982「なんと、デートの邪魔をされたいという願望がある人がいるなんて」

上条「違うんだが」

9982「・・・やはり、こうやって二人だけで話していたほうが分かりやすいですから」

上条「分かりやすい?何がだよ」

9982「あなたのことですよ」

上条「そっか」


646 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:42:13.83 ID:DkAXabAZ0
9982「・・・あなたになら、お姉様を任せてもいいでしょう」

上条「なんで分かるんだよそんなこと」

9982「・・・こうやってミサカの存在を受け入れてますから、そんなことが出来るのは優しい人だけです」

上条「そうか?お前はお前だろ、ここにいるなら受け入れて当たり前だと思うけど」

9982「それが優しいんですよ、とミサカは即答します」

分からないな、と上条が首を傾げた

9982「・・・ですが、これで目的は果たせましたし・・・ミサカは帰ります」

上条「帰るって・・・その、天国にか?」

9982「いえ、その前に寄りたい所がありまして」

上条「?」

9982「・・・では、失礼します」

9982号が頭を下げて行こうとする

上条「なぁ」

上条はそれを呼び止めた

9982「なんですか?」

上条「・・・あのさ、これからよろしく」

9982「?」

上条「義理の兄になるからさ、俺」

9982「まだ結婚出来ないですよね?」

上条「・・・いつか絶対するからさ、先に言っておきたくて」


647 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:42:39.19 ID:DkAXabAZ0
9982「分かりました、こちらこそ」

笑ってから9982号は去る

どこに行くのか、としばし上条は考える

上条「・・・あ」

そしてなんとなく分かった、あのあまり空気の読めないミサカが行きそうなのは


上条「美琴の所じゃないかおい!?」




美琴「はぁ・・・それでさ、最近当麻と二人っきりの時間が減ってきてるのよね」

当の美琴は、学校からの帰り道、友人に愚痴っていた

黒子「お姉さま・・・時間というのは作ればいいものですの、それにたまには私との二人っきりの時間も・・・」

佐天「でも意外だなぁ、御坂さんって時間さえ出来たらすぐ彼氏さんの所に飛んでいくイメージでした」

美琴「うーん・・・いつもはそうなんだけどさ」

初春「今日は違うんですか?」

美琴「まぁ・・・たまには、友達との時間も必要だからさ」

佐天「えぇー、私は御坂さんと彼氏さんの間を応援してますから、そのためなら会えなくても我慢しますよ?」

初春「そうですね、リア充爆ぜろ」

美琴「・・・それにさ、あんまり私が構いすぎるとテストの点数悪くなるのよ、当麻」

黒子「勉強中にお姉さまがちょっかいを出すからですの」

美琴「手を出して来るのはいつも当麻よ!」


648 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:43:15.05 ID:DkAXabAZ0
黒子「きぃぃぃぃ!!!!」

佐天「・・・ワオ」

初春「ふ、ふぇぇ・・・」

美琴「あ・・・」

顔を真っ赤にする美琴、ワナワナと震える黒子、慌てる初春、にやける佐天

全く違う四人を、ある人物は遠巻きに見つめていた



9982「見つけましたよ、お姉様・・・」

ニヤリ、と不敵に笑う

スタスタと歩き、四人の元へ・・・

美琴「・・・!」

一番最初に気づいたのは美琴、すぐに黒子も気づいた

黒子(あ、あれは・・・!)

美琴(まずい、今は佐天さん達がいるのに!)

佐天「?どうかしたんですか?」

美琴「あ、いや!」

初春「なんだか慌ててるみたいですけど・・・」

美琴「そ、そうかしら・・・あ、あはは・・・」

黒子「・・・初春、私ちょっと用事を思い出しましたの」

初春「?はい」

黒子「今日はここで失礼いたしますわ」

ペコリと頭を下げた黒子は9982号の隣へ空間移動、驚いた9982号も連れて離れた所へ再び空間移動した


649 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:43:40.88 ID:DkAXabAZ0


9982「お、おや・・・なるほど、AIMも空間移動は出来る・・・というより、空間のどこにも存在しているため存在という概念が・・・」

黒子「あの・・・失礼ですが、やはり妹達の方ですのね」

9982「はい・・・あなたは黒子、とお姉様が呼ばれている・・・」

黒子「・・・あの、もしかしてですが、あなたは・・・」

9982「9982号、あなたの知っている通り一度死んだミサカですよ」

黒子「やはり・・・」

黒子が考え込むような動作を見せる

黒子「なぜ私達の前に?」

9982「お姉様に会いたかったからです」

黒子「なるほど・・・ですが、今は友人が一緒におりますので、タイミングが悪いですわね」

9982「仕方ないです、しばらくしてからもう一度・・・」

黒子「で、ではまだしばらく時間はありますのね?」

9982「?」

黒子が9982号の体に服の上から抱き着く

9982「あ、あの・・・」

黒子「んー!軍覇さんには申し訳ないですが・・・やはり、たまにはお姉様成分も補給しないと黒子は壊れてしまいそうですの!」

9982「・・・あの、そんなに触られると・・・」

黒子「はぁ・・・この慎ましくも形の良い胸・・・出来れば直に触りた・・・」




美琴「黒子、私の妹に何してるのかしらねぇ」

黒子「」


650 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:44:15.61 ID:DkAXabAZ0
9982「おやお姉様、ご友人は・・・」

美琴「私も用事を思い出したって言って別れたのよ・・・ったく、電磁波を追ってきたらこの有様」

黒子「ち、違いますの!その・・・」

美琴「はぁ・・・アンタって、私と同じ顔なら誰でもいいわけね」

黒子「!」

黒子の中で、変な構図が出来る





誰でもいいわけね→私じゃなくてもいいんだ→なんで私だけじゃないのよ→私だけを見て




黒子「お姉さまぁ!」

美琴「な、ちょっと・・・」

黒子「私が愛しているのは軍覇さんとお姉さまだけですのぉ!」

抱き着いた黒子、そんな彼女に電撃が走るまでわずか0.3秒

次元大助の早撃ちと同じ速度だった




9982「・・・ということです」

美琴「当麻の所にまで行ったの・・・ったく、あんまり人目についたら危ないのよ?」

9982「それは分かっています」

美琴「・・・でも、アンタが私の将来を気にしてくれてるのは嬉しいわ、ありがとう」

9982「えへへ・・・なんだかそう言われると照れますね」

黒子「お姉さまぁ・・・」


651 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:44:59.49 ID:DkAXabAZ0
美琴「ったく、もう回復しちゃったの?」

黒子「・・・むしろお姉さまの電撃、黒子にとってはご褒美ですのよ!」

美琴「そう、じゃあもう一回・・・」

9982「・・・お姉様、あんまりやり過ぎはよくないです」

美琴「わ、分かってるわよ」

9982「・・・全く、お姉様は本当にせっかちさんですね」

黒子「・・・それがお姉さまの唯一と言っていい欠点ですわね」

9982「胸が小さいということを忘れてはいけませんよ」

美琴「よし、後でどっか路地裏にでも行こうか」

9982「そんなことしたらテっくんが・・・っと、忘れてました」

美琴「?何よ」

9982「早く帰らないとテっくんが心配してしまいます」

黒子「ですが、まだ夕方ですの」

9982「・・・ミサカはいい子ですので、早く帰らないといけません」

黒子「・・・では私がお送りしますの」

9982「いえ、ミサカは自分で移動出来ますよ」

黒子「そうおっしゃらずに」

ぽん、と黒子が9982号の肩に手を置く

黒子「お姉さまも」

美琴「仕方ないわね」

二人の肩に手を置いた黒子は空間移動を行う


652 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:45:29.10 ID:DkAXabAZ0


ほんの一瞬で三人はテクパトルの家の前に移動した

9982「・・・ありがとうございます」

黒子「いえ、では私達はこれで」

9982「あ、お姉様」

美琴「?なに?」

9982「・・・この缶バッジのお礼、まだでしたね」

美琴「・・・いいわよ」

9982「ありがとうございます」

9982号が頭を下げたのと同時に、美琴と黒子は宙に消えた

9982「・・・」

玄関へ向かった9982号はしばし考える

なんと言って家に入ればいいのだろうか

9982「・・・そうですね」

ガチャリ、とドアを開けた彼女が言ったのはシンプルな言葉だった



9982「ただいま帰りました」



御坂妹「お帰りなさい・・・どこまで行ってたんですか」

9982「テっくんの所とお義兄様の所とお姉様の所です」

19090「これまた随分回りましたね・・・」

10398「怪しまれませんでしたか?」


653 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:45:55.24 ID:DkAXabAZ0
9982「完璧でしたよ・・・ところで、テっくんは?」

アレイ「いや、まだ仕事だ」

9982「!ま、まだ仕事なんですか・・・働き者です」

17600「イギリス組が増えたからな、しっかり稼がなきゃならないのさ」

12345「・・・ミサカ達も帰るタイミングを無くしてしまって・・・」

20000「ずっとここにいてもいいんだよ?」

10033「・・・そのためにテっくんは働いてるみたいですし」

御坂妹「・・・あんまり無理はしないで欲しいですけどね」

9982「・・・あの、テっくんは今日は何時くらいに帰ってくるんですか?」

19090「早いはずですから・・・そろそろでしょう」

アレイ「・・・随分テクパトルのことが気になるようだな」

9982「ミサカにとってはお父さんみたいな人ですから・・・」


テクパトル「ただいま」


9982「!帰ってきました!」

19090「お帰りなさい、鞄を・・・」

テクパトル「いやいいよ、今日はそんなに重くないし」

ふふふ、と笑い合ってから二人はリビングへやって来る

10039「相変わらずお熱いですね」

11116「帰ってきたらそういうミニコントをしないと気が済まないなんて」


654 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:46:22.04 ID:DkAXabAZ0
アレイ「すっかり夫婦が板についてきたな」

テクパトル「やっと慣れてきたって感じさ」

肩を竦めながら、テクパトルがコーヒーを煎れる

9982「仕事から帰ってきてすぐにコーヒーだなんて、本当にお父さんみたいですね」

テクパトル「そうかな・・・っていうかお前、大丈夫だったのかよ」

9982「えぇ、誰にも怪しまれませんでしたよ」

テクパトル「どうせ上条や義姉さんがフォローしてくれただけだろ」

9982(鋭いです)

テクパトル「・・・で、楽しめたか?」

9982「えぇ、お義兄様の一面を見ることも出来ましたし」

テクパトル「よかったじゃないか」

御坂妹「でも不用意に外を出歩くのは本来禁止なんですよ?」

9982「ミサカはいざとなったら消えれますから」

アレイ「ますます興味深い素材だな」

テクパトル「・・・」

アレイ「なに、そんな目で見るな」

テクパトル「素材って言い方はやめろよ、こいつらは人間だ」

ミサカ一同(やだ、カッコイイ・・・)

19090「まぁまぁ・・・アレイちゃんも悪気があるわけではないんですから」

テクパトル「分かってるさ、そんなの」


655 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/01(金) 20:46:53.16 ID:DkAXabAZ0
アレイ「・・・だが、一度消えたら形を安定させるのは難しいだろう」

9982「そうですね、たまに失敗しますよ」

14510「失敗したらどうなるんですか?」

9982「どうもなりません、精神が天国に帰るだけです」

19999「・・・未だに、その精神とか魂とかは信じられないのさ」

テクパトル「科学に慣れ親しんでいるとそうだろうな」

アレイ「我々のように魔術を知っている人間からすれば、むしろ魂の存在を信じないほうがおかしいのだがね」

9982「まぁ、ミサカだって自分がこうでなかったら信じられないでしょう」

テクパトル「・・・そうだろうな」

17600「・・・天国に帰ったらどうなるんだ」

9982「そのまま過ごしますよ、なにも不都合なんてありませんし」

19090「なるほど」

10033「・・・天国ってどんな場所ですか?」

ミサカ達は次々と9982号に質問を飛ばす

テクパトルはそれを笑いながら見ていた

アレイ「・・・助けてはやらないのか」

テクパトル「アステカには天国という考え方はあまり定着していなかったからな」

アレイ「・・・たしかに、お前達の神というのは絶対的な存在ではないからな」

テクパトル「・・・理屈なんてどうでもいいさ、あの顔をした少女が幸せに生きてられるなら」

アレイ「何を、死んでいるのだぞ」

テクパトル「・・・いや」

目を細めながらテクパトルは輪の中にいる9982号を見た

彼女は他のミサカと変わらない笑顔を浮かべている

テクパトル「生きてるさ、あいつも」


656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/02(土) 01:58:17.98 ID:999cHlpY0
乙ですの!
657 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:13:22.24 ID:QKDoGgDX0

テクパトル「飯は作ったのか」

9982「おや、本当ですね」

19090「急いで作ったので、あまり手が込んだ物は無理でしたが・・・」

御坂妹「豆腐ハンバーグとはヘルシーですね」

20000「やっほぃ、ミサカ達がまたナイスバディになっちゃうなぁ」

19999「ま、ナイスバディになっても見せる相手はいないのさ」

アレイ「寂しいことを言うな」

10033「・・・でも、テっくんはがっつりしたのが食べたいんじゃないですか?」

13577「そういえばそうですね」

テクパトル「いや、俺もこれがいいな」

9982「なぜですか?」

テクパトル「なぜって、美月が作ってくれたんだからさ」

19090「//」

ミサカ一同(呪ってやる呪ってやる・・・)


テクパトル「食った食った・・・」

ビール片手に、テクパトルは満足げに呟く

豆腐ハンバーグをたくさん食べた彼のお腹は、もう幸せ一杯だ

14510「テっくんったら親父臭いですよ」

10398「全く・・・まだ20代後半なんですから、もっと爽やかな食後をお願いします」

テクパトル「爽やかな食後ってなんだよ・・・」

658 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:13:49.43 ID:QKDoGgDX0
アレイ「紅茶でも飲めばいいのではないか、どこぞの最大主教のようにな」

テクパトル「あれと一緒ってのはなんか嫌だ」

9982「?最大主教とはなんですか?」

10039「たしか、魔術側のお偉いさんですよね」

17600「学園都市と深い関係にある宗教団体のボスだと思えばいいさ」

9982「そ、そんな人とテっくんは知り合いなんですか!?」

テクパトル「・・・まぁ、ここにはアレイスターもいるからな」

19090「そういえば忘れがちですが・・・アレイちゃんも統括理事長なんですよね」

アレイ「そうだ」

12345「仕事してないじゃないですか」

10398「この税金泥棒!」

アレイ「私の仕事というのは外に出て行うのではないさ」

テクパトル「統括理事長なんて、体じゃなく頭脳が資本だからな」

御坂妹「・・・だから不健康なんですね」

アレイ「もうやめて」

9982「・・・統括理事長に魔術側の男性、そして妹達・・・こうして考えたら、面白い一家ですよね」

テクパトル「だが悪くはないだろ?」

14510「ミサカはこの家族が大好きです!」

19090「美月も、ずっとこの家族でいたいですよ」

テクパトル「あぁ、俺もさ」

9982「・・・そうですね」

659 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:14:16.01 ID:QKDoGgDX0
テクパトル「さて、みんな風呂入ってさっさと寝るぞ」

ミサカ一同「はーい」





9982「・・・」

この季節になると、さすがに夜は肌寒い

星空を見上げながら、9982号はそう考えていた

もう時刻は深夜だ

周りには誰もいない、夜空の下で彼女だけが月の光を浴びている

9982「家族、ですか」

羨ましい、心底羨ましい

彼女にはそんなものがなかった、知る前に彼女は死んでしまったから

9982「・・・」


テクパトル「よっ、何してるんだ」

ガラガラ、と庭に面した窓が開けられた

そこからテクパトルが庭に降りる

9982「こんな時刻に起きているなんて、明日起きられなくなりますよ」

テクパトル「残念だが明日は休みでな」

笑いながら、彼は9982号に近づく

テクパトル「どうしたんだ、こんな所で」

9982「・・・夜空を見てみたくて」

テクパトル「?見たことあるだろ」

9982「・・・こんなに美しい夜空は初めてです」


660 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:15:08.63 ID:QKDoGgDX0
テクパトル「・・・」

確かに、今日は満月だ

真ん丸な月が空の中心を陣取っている

テクパトル「月、か」

9982「どうしましたか?」

テクパトル「いや、美月に名前を付けたのはこんな夜空の日だったからな」

9982「・・・あなたは、本当に彼女を愛していますね」

テクパトル「あぁ」

9982「・・・仮に、ミサカがあなたを好きだと言ったらどうしますか?」

テクパトル「美月を選ぶ」

9982「・・・やけに回答が早いですね」

テクパトル「自分の気持ちに嘘はつけないのさ、やっぱり・・・美月が一番だ」

はぁ、とため息をつくテクパトル

空が美しい

テクパトル「・・・天国に帰るのか」

9982「おや、分かっていたんですか」

テクパトル「考えたら、お前が帰るのはいつも夜だった気がしたからさ」

9982「・・・今日は楽しかったです、テっくんやミサカ達のおかげですね」

テクパトル「俺は何もしていないさ」

9982「いえ、あなたがミサカ達にとってどれほど大きな存在か・・・」

661 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:15:51.98 ID:QKDoGgDX0
テクパトル「逆もまた然りさ」

9982「・・・そうですね」

テクパトル「なぁ、9982号」

9982「なんですか?」

テクパトル「天国にいるミサカ全員に伝えてほしいことがあるんだ」

9982「・・・はい」

テクパトル「お前達はみんな、俺の家族だ」

9982「!」

テクパトル「・・・お前達が家族の温もりを知りたいなら俺が教えてやる、誰かの温もりが欲しいなら俺がくれてやる、みんな俺の家族だからだ」

9982「・・・ミサカも、ですか?」

テクパトル「当たり前じゃないか」

笑うテクパトルは、優しい表情をしている

9982「・・・あなたは、優しいですね」

テクパトル「優しいか」

9982「はい」

テクパトル「・・・また、来てくれよ」

9982号の頭を撫でながらテクパトルが言う

9982「・・・こういう行動は、自分の恋人にしかしてはいけないんですよ」

テクパトル「自分の家族にも、さ」

9982「・・・ありがとうございます、ミサカ・・・またここに帰ってきますから」

テクパトル「暇になったら来いよ」

9982「ぜひ」


662 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:16:43.88 ID:QKDoGgDX0
頭を下げて、9982号が目を閉じる

少しずつ体が透けていくのは不思議な光景だ

テクパトル「・・・9982号」

9982「・・・はい、なんですか?」

テクパトル「いってらっしゃい」

9982「・・・行ってきます、テっくん」






19090「え・・・もう帰っちゃったんですか」

テクパトル「あぁ」

翌朝、リビングで朝食を摂りながら話をする

御坂妹「突然ですね・・・」

19999「ミサカ達も見送りしたかったのさ」

20000「ま、仕方ないんじゃない?恥ずかしがり屋は別れを言いたくないもん」

テクパトル「恥ずかしがり屋ではないだろ」

アレイ「それで?お前は見送れたのだろう」

テクパトル「あぁ、また来てくれって伝えといた」

14510「・・・さすがテっくんです」

10033「・・・他のミサカ達も、たまに来てくれたら嬉しいですね」

テクパトル「あぁ」

ゴクゴク、とコーヒーを飲んだその時

ピンポン、とチャイムが鳴った

テクパトル「?なんだろう」

玄関にコーヒーを持ったまま向かい、ドアを開ける

テクパトル「はい・・・」


4649「あ、テっくん!来てしまいました!」

テクパトル「・・・」


19090「テっくん?どちら様ですか?」

テクパトル「・・・はぁ」

ため息をつくテクパトル、だが嫌そうな表情ではなく、嬉しそうな笑みが浮かんでいた

テクパトル「みんな、お前達の姉さんが帰ってきたぞ」

ミサカ達の家にまた一人、帰ってきたミサカ




663 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:17:34.74 ID:QKDoGgDX0


一方「・・・」

美琴「・・・」

浜面「・・・」

垣根「・・・」

例えば、人間の不幸にはよく事故に巻き込まれるというものがある

小さな物から、ニュースになるような大規模な物まで

とにかく、そういう物に巻き込まれやすい人間というなは本当にいるのだ

大抵、彼等の仲間内ではそれは上条の役目である

上条が不幸に出会ったら呆れたように笑うのが、普段の彼等だ

だとすれば、普段の彼等は今のこの状況も笑うのだろう

四人は真っ暗になったエレベーターの中にいる

なぜ真っ暗かと言えば簡単な答えで、このエレベーターが故障しているから

故障したエレベーターなんてそもそも動くはずはないわけだ

つまり、このエレベーターに閉じ込められているということになる

垣根「なんで緊急用の電話まで繋がらないのか問い詰めたいよなぁ」

ガン、といらついたようにボタンを殴りながら垣根が言う

美琴「全くもって同感ね」

美琴も、声が震えている

緊急時に使えない緊急用とは一体なんなのだろうか

一方「こンな状況でキレても何にもならねェよ」

垣根「んなことは分かってるんだよ」

分かってると口では言いながら、やはり垣根はいらついたように足先をトントンと地面にぶつけては鳴らしている

浜面(このメンバー・・・恐すぎだろ)

そんな中、メンバーの中で唯一無能力者である浜面は肝が冷めるような思いをしていた

常日頃から麦野と一緒にいるから分かるのだが、LEVEL5というのはわりとぷっつんしやすい人間が多い

664 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:21:05.43 ID:QKDoGgDX0
しかもここの三人は、揃って一番、二番、三番なのだ

麦野より上には三人しかいない、その三人全員が自分と同じエレベーターに閉じ込められているなんて

美琴は一人で上条へのプレゼントを買いに来ていたらしい

垣根はぷらーっ、と暇つぶしにデパートに寄ったのだ

一方通行は番外個体と打ち止めのお守りだったらしく、早く帰らないとあいつらがやばい、とぶつぶつ呟いている

なんで四人が一緒になったかは分からない、これも偶然なのだろうか

浜面「・・・なぁ」

一方「なンだよ」

浜面「た、助け・・・遅いな」

美琴「電話は壊れてるのよ、下手したらまだエレベーターの故障にさえ気づかれてないかもしれないわよ」

浜面「えぇ!?」

垣根「…そうだよな、唯一希望は…打ち止めと番外個体だな」

一方「あの鈍感な二人が気づくとは思えねェな」

美琴「…まさに八方塞がりね」

浜面「ほ、ほら!!諦めたらそこで試合終了だぜ!!」

垣根「アホ、諦めるくらい差がついたような試合を逆転できるわけねぇだろ、根性論でどうにか出来るとかバカじゃねぇのか」

浜面(…)

一方「やってられるかよ…こンな閉鎖空間でよ」

垣根「…どうせなら、何か話でもするか?」

美琴「そうね、そのうちに救助が来るかも…さすがに1時間や2時間エレベーターが動かなかったら気づくでしょ」

浜面「そ、そうだな」

665 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/02(土) 08:28:51.59 ID:QKDoGgDX0

垣根「…御坂、脱げよ」

美琴「なんで脱ぐのよ」

垣根「なんか眼福が欲しいんだよ、この閉鎖空間では」

一方「ババァの裸とか興味ねェよ」

美琴「ババァじゃないわよ」

浜面(ぬ、脱ぐのか!?)

美琴「…だいたい、なんで垣根の言うことなんか聞かなきゃいけないのよ」

垣根「ふっ…あの夜はさっと脱いだのに…」

美琴「いつよ、平然と嘘つかないの」

浜面(脱がないのか…)

一方「…そォいえば、この前番外個体がオリジナルは年齢を重ねれば胸がでかくなるって言ってたな」

美琴「!!ホント!?」

一方「…つゥかよ、遺伝子的にでかくなるに決まってるだろォが」

垣根「だよな、美鈴さんも番外個体も豊かだし」

美琴「よし!!!」

浜面(…そういや、滝壺の胸にも最近触れてないなぁ…)

垣根「…おいバカ面」

浜面「バカ言うな!!!」

垣根「お前、もう滝壺とエロい事したの?」

浜面「!?」

一方「おォー?なンだよ、ヤったのかよ」ニヤニヤ

美琴「ちょっとやめなさいって、二人とも」ニヤニヤ

浜面「な、なんだよいきなり!?俺と滝壺は二人とも愛し合っているぞ!?」

垣根「で」


666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/06/02(土) 21:48:22.97 ID:0uz23MBAO
乙です!
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/03(日) 02:58:03.41 ID:HZ5TZRHc0
うっほーい!!!
乙!

いい展開
668 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 16:47:28.08 ID:8jgPUgwM0
浜面「そ、そういうのは汚らわしいんだぞ!!」

美琴「へぇ、でもアンタって元スキルアウトでしょ?まさか…」

一方「お前、童貞なのかよ」

浜面「…」

垣根「ひゃはは!!チェリーボーイかよ!!」

美琴「ま、まぁ…大丈夫よ、そのうち出来るわよ…」

浜面「いいもん…俺は純粋なんだもん」




垣根「…くっそ、なんだよ…そろそろこのエレベーターの故障にも気づいていいだろ」

一方「…気づいてねェンじゃなくて、気づいてンのに何も出来ねェって状況かもな」

浜面「つまり…どういうことだってばよ?」

垣根「…たとえば、何か爆弾に近いものが仕掛けられているとか…」

美琴「そ、そんなことってあるの!?」

垣根「ない」

美琴「…」

垣根「…とりあえず、暇をどうにかして潰さなきゃならないな」

一方「…何するンだよ」

浜面「…しりとりとかどうだ」

美琴「!!いいわよ、やってあげる!!!」


美琴(ふふん、この前発見したしりとりで絶対勝てる方法を試すんだから!!!)


浜面「じゃあ…リンゴ」

垣根「五感」

美琴「」





669 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 16:53:52.51 ID:8jgPUgwM0
浜面(お、終わった…のか)

一方(…あァ?)

美琴「…」ウルウル

一方(なンだよ、オリジナルのやつ…なンか泣きそうな顔じゃねェか)

美琴「…」ウルウル

一方(…もしかして、しりとりしたかったのかよ)

美琴「…」グスン

一方(はン、まァオリジナルが悲しンでようが俺には関係ねェけどな)

美琴「…」ショボーン

一方(…)


一方(…やっぱこの顔に泣かれるのは耐えられないな)


一方「ンゴロンゴロ共和国」

美琴「!!!」

一方「オリジナル、早くしろよ」

美琴「う、うん!!」


美琴「クリップ!!!」

浜面「ぷ…!?ぷ…プール!!」

垣根「ルリカケス」

一方「…スクライド」

美琴「ドリップ!!」

浜面(ま、また…ぷ…)

浜面「プルタブ」

垣根「ブルドーザー」

一方「ざくろ」

美琴「ロープ!!」

浜面(あぁまたぁ!!)

670 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 16:59:43.25 ID:8jgPUgwM0
浜面「…プーケット」

垣根「トトロ」

一方「ろうそく」

美琴「クリップ!!!」

浜面「あぁもう!!ぷなんてそんなにねぇよ!!!」

垣根「じゃあ、浜面はリタイアだな」

浜面「…ちくしょう…」

美琴「ほら、早く垣根!」

垣根「プライス」

一方「すいか」

美琴「カップ!!」

垣根「プランター」

一方「畳」

美琴「み…?み…三日月」

垣根「金庫」

一方「股関節」

美琴「つ…ツリーダイアグラム」

垣根「むっつり」

一方「りんご」

美琴「ゴシップ!!!」

垣根「プリント」

一方「トランプ」

美琴「!?」



美琴「…ない…」ウルウル

垣根・一方(馬鹿だ)


671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/03(日) 17:05:01.83 ID:qYWB3JONo
クリップ?
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/03(日) 18:56:07.23 ID:CWvPdh8vo
りんごさっき言ったんじゃね?
673 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 20:49:37.84 ID:8jgPUgwM0
あれ、最初の言葉は一回に含まれないルールって俺達だけなのだろうか

あれ



美琴「…暑い…なんなのよ、換気とか出来てないの…?」

垣根「そういや、そうだな…」

浜面「…なぁ、今考えたらこのエレベーター真っ暗に近いよな…」

垣根「…電力の供給まで絶たれてるのか…」

一方「…もォ、だめかもしれねェな」

美琴「そうね…」

垣根「…」

美琴「…」

一方「…」

浜面(あぁ…短い人生だった…でも、一生分の幸せも、勇気も、修羅場も、全部経験できたんだ…)ウルウル

三人(まぁ壁壊せばいい話なんだけど)

浜面(…は、ははは…気のせいかな、涙が…)

垣根「そういやさ」

浜面「な、なんだよ」

垣根「滝壺とエロい事したの?」

浜面「またかよ!!してねぇよ!!!」

一方「お前、甲斐性なしか」

浜面「そ、そんなんじゃねぇよ…」

美琴「…もしかして、滝壺さんってリードしてほしいタイプなんじゃないの?」

浜面「…なに?」


674 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 21:45:05.78 ID:8jgPUgwM0
垣根「あぁ、もしかして襲ってほしいタイプか」

一方「大人しそうなヤツほどビッチだからなァ」

浜面「た、滝壺がビッチ!?」

美琴「だ、誰もそこまでは言わないけど…」

浜面(ビッチな滝壺…)



滝壺「はまづら…私、もっと過激なことがしたいな」

滝壺「はまづら、入れて?」



浜面「いい!すっごくいいかもしんない!!!」

美琴「最低ね」

垣根「…あー、あんまり大声出すな、響くから…」

ゴロン、と横になった垣根

美琴の膝元辺りをじーっと見てから言う

垣根「白」

美琴「短パン履いてるのにどうやって見てるのよ」

垣根「…」


垣根「ハートだよ」

美琴「…」ガスッ

垣根「いってぇ!!なんで殴ったの!?実際見てないのに!!!」

美琴「ハートで見たんでしょ?」

垣根「一方通行!!助けて、あなたの義理のお姉さんったら怖い!!」

一方「うるせェ、肉塊になりてェのか」

垣根「ご機嫌斜めですね」

675 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 21:50:14.70 ID:8jgPUgwM0

美琴「ねぇ、ここから出られたらまずは何したい?」

浜面「…なんだよ、いきなり」

垣根「そうだな…地球に生まれてよかったー、って言いたい」

一方「打ち止めの薄い胸元に飛び込ンで優しい香りに包まれながらニヤニヤしたい」

美琴「…一方通行、アンタねぇ…」

垣根「そういうミコっちゃんはどうしたいのさ」

美琴「ミコっちゃん言うな…とりあえず、当麻に連絡かしら」

浜面「大将にか?でもここに閉じ込められてるって知らないだろ」

美琴(…そうなのよね、結局誰も気づいてないんだわ)

垣根「…はぁ、心理定規は今頃何してるのかなぁ」

一方「…打ち止めも番外個体も、きっと俺がいないって慌ててるだろォな」

浜面「…はは、滝壺ったら多分俺が帰ってこないからって少しふてくされてるんだろうな」

垣根「…このままさ、帰れなかったら…やっぱり、みんな悲しんでくれる人がいるんだよな…」

一方「…あァ…こンなクズみたいな人間にも居場所が出来たなンてなァ…」

美琴「…少し前の私じゃ、考えられないことよ…」

浜面「な、なに暗いこと言ってるんだよ!!元気出せよ!!」

美琴「…元気出しても、助からないものは助からないわ」

浜面「…」


浜面「…俺達、このままここで死ぬのかな…」

三人(だからいざとなったら壁破れるっての…)ククク

浜面「…そ、そしたら…慰謝料とか下りるのかな…」ウルウル

三人(ふ…ふふふ…ww)


676 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 21:57:51.74 ID:8jgPUgwM0

垣根「…なぁ、御坂」

美琴「…なに?」

垣根「お前ってさ、もしもこの世の中にここにいる三人しか男がいなかったら誰と付き合う?」

美琴「はぁ?」

一方「暇つぶしの質問にしたら上出来だな」

浜面「…そうだな」

美琴「…うーん…」

腕を組んで、美琴が三人を見回す

美琴「一方通行は…無愛想で、なんか気難しそう」

美琴「垣根だってチャラチャラしてるし、いっつもふざけてるし」

美琴「浜面さんも、なんかちょっとエッチなことばっか考えてそうだし、見た目が怖い…」

三人(うわぁ、言い返せねぇ)

美琴「…でも、一方通行って優しい時はしっかり優しいわよね、大切な人は絶対に守る覚悟を決めてるわ」

美琴「垣根だってそう、守りたい人のことを第一に考えてるし、デートなんかの時間とかは絶対に守るでしょ」

美琴「浜面さんも、根は優しくて、真っ直ぐで…好きな人のためになら命を賭けられる人」

美琴「…そう考えたらね、みんなそれぞれ素敵なのよね…だから、誰がいいってのは選べないかな」

一方「オリジナル…」ウルウル

垣根「…俺、お前のこともっと軽い女だと思ってたわ…」ウルウル

浜面「…超能力者にも、こんなに優しいヤツがいたんだな…」グスン

美琴「ま、まぁ当麻が一番なんだけどさ!!!」

垣根「…そうだな、じゃあ一方通行」

一方「なンだよ」

垣根「お前は?」

一方「は?」



垣根「だから、ここにいる三人の中で付き合うとしたら誰?」

一方「…」



一方「は?」



677 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/03(日) 22:06:22.19 ID:8jgPUgwM0
垣根「だから誰?」

一方「待て、オリジナル以外にいないだろォが」

垣根「ワーオ、ミコっちゃんったらモテモテ」

美琴「一方通行…ごめんね、私には当麻がいるから…」

一方「おい」

浜面「…でも、俺は御坂はないかなぁ」

美琴「…」カチン

浜面「だって、すぐに怒りそうだし、胸は小さいし、何よりなんかガキっぽいだろ」ケラケラ

垣根(あーあー、言っちゃった)

美琴「へ、へぇ…子供っぽい、ねぇ…」ビキビキ

浜面「その点滝壺は最高だよな、おっぱいでかいし優しいし!!!」

一方「…」

垣根(げ、逆鱗に悉く触れてやがる!!むしろ頬ずりしてやがる!!!)

美琴「な…」

垣根「…でもさ、御坂って将来絶対胸はでかくなるだろ」

美琴「え?」

一方「まァな、それに性格も最近は丸くなってきて角が取れてるじゃねェか」

垣根「そうそう、子供っぽいのも別に個人の趣味だし、周りには迷惑かけてねぇじゃねぇか」

一方「容姿は良いンだし成績だって優秀だしな」

垣根「まぁ…心理定規には負けるが、いい女だとは認めるしかないな」

美琴「あう…」カァッ

垣根・一方(…あれ、ちょっと可愛いぞ)

浜面(…めちゃくちゃ可愛く見えたぞ…)




678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 23:51:33.47 ID:s1hLgiyTo
おつにゃんだよ!

679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/04(月) 03:08:33.94 ID:4itsW3EYo
無理して続けなくてもいいよ?
嫌味とかじゃなくほんとに
680 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 10:06:03.51 ID:6PiExiXO0

垣根「…なぁ」

美琴「なに?」

垣根「…お前ってさ、電撃使いなんだよな」

美琴「それがなによ」

垣根「…だったら、この状況もどうにか出来るだろ」

浜面「そ、そうだ!」

一方「…まァ…動かせるなら動かしてもらいてェもンだけどな」

美琴「よし、やってみる…」

美琴の体から電撃は発せられる

人体に影響は出ないほどのものだ


美琴「!!動いた!!!」

垣根「なるほどな…電源ケーブルかなんかが切れてたんだろうな」

一方「…これで助かるってわけか」

浜面「よっしゃぁぁぁ!!!!!」




打ち止め「もう、一方通行ったらトイレに行ったっきり帰ってこない!ってミサカはミサカは…」

番外「うーん…でもさ、下の階にしかトイレがないってこのデパートも変だよねぇ」

打ち止め「…も、もしかして一方通行、トイレの中で首を吊ってたり…ってミサカはミサカは阿鼻叫喚の地獄絵図を想像してみる!!」

番外「あっははは!!そりゃいいやぁ!!!!」

ケラケラと笑い転げる番外個体

だが


一方「…誰が首吊ってるって?」

化け物の声がした



681 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 10:10:19.66 ID:6PiExiXO0
番外「あ…い、いたんだ」

一方「エレベーターが故障してたンだよ…オリジナルもいたぞ」

打ち止め「!お姉様も!?ってミサカはミサカはくいついてみたり!!」

一方「…まァな」

番外「でも1時間近く閉じ込められるなんて、あなたも災難だねぇ」

一方「…店員に文句くらいは言ってやったから安心しろォ」

打ち止め「もう、一方通行ったら怖い!ってミサカはミサカは…」

一方「ンなことより、もォ買うもンは買ったンだろ」

番外「うん、ゲコ太のぬいぐるみ!!!」

一方(相変わらずガキくせェな…)




美琴「…えーっと、当麻の欲しがってたTシャツはっと…」

美琴「あった!!これこれ、これ買ってあげたら当麻も…」



上条「美琴の欲しがってたTシャツってどこに売ってるんだよ…」ハァ


美琴「あ」

上条「あ」


美琴「ど、どどどどどどうしてここにアンタがいるのよ!?」

上条「み、美琴こそどうしてここに!?」

美琴「わ、私は…ほ、ほら!!当麻にプレゼントの一つくらい買ってあげようかなって、Tシャツを…」

上条「え?なんだ、美琴もか」

美琴「?」

上条「ほら、俺もお前が前に欲しいって言ってたTシャツ探しててさ」

美琴「あ…覚えててくれたんだ」


682 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 10:26:20.41 ID:6PiExiXO0
上条「…どうせだし、一緒に買いますか?」

美琴「う、うん!」

上条「さて、どれがいいかなー」



上条「!!これとかよくないか!!」

美琴「そ、そんなに胸強調したのとか無理!!!」




浜面「ただいま、滝壺!!」

滝壺「あ、はまづらおかえり」

浜面「はぁ…やっと滝壺に会えた…」ウルウル

滝壺「?何かあったの、はまづら?」

絹旗「どうせ何もなくても、常に君といたいのさベイベー、とか言うんでしょ、超キモイです」

麦野「あぁ、有り得る」

浜面「ないからな…聞いてくれよ、さっきまでエレベーターに閉じ込められてたんだよ!!」

麦野「へぇ」

浜面「へ、へぇって…もっとリアクションはないのか!?」

ゴーグル「そりゃ災難でしたね」

浜面「いい反応だ!!!」

フレンダ「でもさ、こうやって戻ってこれたってことは結局何もなかった訳よ」

浜面「…1時間くらい、閉じ込められたのに…」

滝壺「大丈夫だった、はまづら?」

浜面「あぁ、やっぱり滝壺だけは…」

滝壺「エレベーターガールさんを襲ったりしなかった?」

浜面(俺って信用ないのな)


683 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 10:46:12.65 ID:6PiExiXO0

ゴーグル「…それで、なんで閉じ込められたんすか」

ビール片手にゴーグル男が訊ねる

浜面「なんだか、電源系のケーブルに問題があったらしくてさ」

麦野「そんなもん、訴えて慰謝料がっぽり取ればいいのよ」

浜面「クレーマーかよ…」

滝壺「一緒にいた女の人に手出したりしなかった?」

浜面「してないから!!」

絹旗「?じゃあ一人で閉じ込められたんですか?」

浜面「いや、一方通行と垣根と御坂と一緒に」

麦野「恐ろしいメンツね…私でもさすがにその中は嫌だわ」

フレンダ「そこにいたのはただのキモ面ってのがウケる訳よ」

浜面「うぅ…」

フレンダ「はぁ、浜面ったら不幸が重なる訳よ」

麦野「ま、無事だったんだしよかったじゃない」

浜面(麦野が優しい…何かいいことがあったんだな)

ゴーグル「…それより、飯はどうしますか?」

滝壺「あ、忘れてた…はまづら材料買ってきて」

浜面「ま、待って!!なんか今日はまずい気が…」

絹旗「別に不幸なんてそうは重ならないですよ、超頑張れ!!」

浜面「あぁぁなんかフラグが立った気がするぞぉぉ!!」

麦野「ほら、行った行った」

684 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 11:16:46.79 ID:6PiExiXO0

垣根「…ただいまー」

心理「おかえりなさい、どこに行ってたの?」

垣根「エレベーター」

心理「…は?」

きょとん、とした顔の心理定規

垣根「いやぁ、楽しかったぞエレベーター」

心理「ねぇ、エレベーターって…」

垣根「?なんだよ、エレベーターが引っ掛かるのか?」

心理「その、エレベーターって…あのエレベーターよね」

垣根「あぁ、そのエレベーターだぞ?」

心理「…そんなところに行って何してたのよ」

垣根「御坂とか一方通行とか、浜面としりとりした」

心理「…は?」

垣根「あとな、御坂が上条のことをもう惚気まくってた」

心理「ま、待って…その三人と、エレベーターに行ったの?」

垣根「?エレベーターに行ったわけじゃないけど、エレベーターには行ってたぞ?」

心理「…で、でもエレベーターには行ってたのよね?」

垣根「あぁ、でも受動的?自発的じゃないから」

心理「…」

垣根「…」

心理「ねぇ垣根」

垣根「なんだ?」



心理「ご飯にしましょうか」

垣根「あぁ」


エレベーター編終了


685 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 15:12:45.41 ID:6PiExiXO0

ステイル「…はぁ」

ステイルはため息をついていた

毎日の職務というのは辛いものだ

しかも、14歳の少年とも言える年齢の彼にはさらに

必要悪の教会、というのは簡単に言えば掃除をする仕事だ

掃除、と言っても平和的なモップで掃いてはいお終い、なんてものではなく

裏切り者や異端者の処分、という意味の

そんな仕事も、最近はめっきり…というか全くなくなってきている

平和ボケというには少しピリピリするが、それにしても平和なのだ

ステイル(…全く、掃除の仕事がないからって書類整理を押し付けるなんて…最大主教は何を考えているんだ!!)

目の前の積み重なった書類の山

一番上に、やっと手が届くかと言うくらいの高さだ

ステイルでさえそうなのだから、並大抵の身長の者は椅子に乗らないと届きさえしないだろう

ステイル「なになに…イギリス清教の女子寮に、もうちょっといいベッドが欲しい…何を言っているんだ彼女達は」

意見を出していたのはアニェーゼ達だった

そもそもイギリス清教に忠誠を誓ったわけではない彼女達の要望など、当然ながら後回しになる

ステイル(…全く、こんなくだらない要望ではなくもっと…)

次の意見は「もう少し和風の部屋が欲しい」というもの

それは天草式の一派が出した要望らしい

ステイル「知らねーよ!!!」

つい大声を出してしまう、はっとして口を押えるが周りには誰もいない

ステイル「…こんな書類漬けの毎日なんて、もう疲れた…」

仕事をしたくない、というよりたまには変化が欲しいのだ

変化が…



トントン、とノックをされたことに気付いたのはそれから少しして

ステイル「どうぞ」

開かれたドア、そのノブを握っている少女は、ステイルのよく知っている少女だった


イン「遊びに来たんだよ!」

ステイル「イ、インデックス!?」



ステイルさんじゅうよんさいの恋はつらいよ編


686 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 15:47:39.19 ID:6PiExiXO0
ステイル「な、なんでここにいるんだい!?」

イン「?遊びに来たんだよ?」

ステイル「そ、それは分かっているが…」

書類の山を崩さないように注意をしながら、ステイルがインデックスの元へと歩む

ステイル「…もしかして、わざわざ来てくれたのかい?」

イン「うん!かおりも一緒に遊ぶんだよ!!!」

ステイル「神裂もか…だ、だが僕達はあいにくこの通りで…」

後ろの書類を忌々しそうに見つめ、ステイルがため息をつく

これが整理し終わるのは、おそらく日が二、三回地平線の彼方へと落ちてからだろう

イン「?じゃあ、私も協力するんだよ!!」

ステイル「き、君が?」

よくよく考えれば、彼女は完全記憶能力を持っている

ステイルが書類にサインをしている間に、次の書類の文章を読んでもらえば効率はいい

更に言えば、彼女に全てを覚えてもらえば、そもそもこんな書類なんていらない

机の上に聳え立った塔を簡単に片づけられるのだ

ステイル「…だが、なんとなく申し訳ないな…」

イン「ううん、私も早くステイルと遊びたいもん!!」

ステイル「そ、そうか」

タバコを灰皿に捨てて、再びステイルが机へと向かう

ステイル「じゃあ、まずはその書類を読んでもらっていいかい」

イン「うん!!」

インデックスが書類を読み、そしてステイルがそれを吟味して許可するか否かを考える

簡単だが、実に丁寧な作業を進めていく

ステイル(…こうやって誰かと仕事をするのは、中々退屈ではないな)

687 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/04(月) 17:11:12.34 ID:6PiExiXO0

イン「えっと…必要悪の教会の仕事が、最近減ってきているって書類なんだよ」

ステイル「そうだな、だがそれは平和と言うことだ」

イン「だから、給料をカットするかもって」

ステイル「却下!!!」

ステイルがその書類を破り捨てる

ステイル「ったく…最大主教は我々の苦労を知らないんだ…」

髪の毛をクシャクシャと掻き乱しながら、ステイルが忌々しく呟く

イン「?でも、働かざる者食うべからずなんだよ!!」

ステイル「そ、それはそうだが…」

まともなことを言うインデックスに、ステイルはたじろぐ


イン「…ねぇ、最近ずっと仕事ばっかりなのかな?」

書類に目を通しながら、ステイルに尋ねるインデックス

ステイル「そうだな…あまり他の仕事はないからね、書類整理でいっぱいだ」

イギリス清教は、何も魔術だけの仕事をしていればいいのではない

教会にやってくる信者の相手や、聖書などの配布もしなければならない

ステイル(…まさに目が回りそうだ…)

イン「…たまにはしっかり休まないとダメなんだよ?」

ステイル「ん?あ、あぁ…分かっているよ」

イン「ステイルはよくそう言うけど、大抵は分かってない時なんだよね…」

ステイル「…よく御存じだね」

ペンを走らせながら、ステイルが小さく笑う

688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/06/04(月) 22:23:30.02 ID:p6DJNBeu0
>>1000だったら物語は続く
689 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:33:05.60 ID:z4JXJ9A80
イン「・・・ステイルはそうやっていつも真面目過ぎるよ」

ステイル「仕方ないさ、仕事なんだから」

イン「・・・でも、ちゃんと休まないとダメなんだよ?」

ステイル「・・・」

ペンを走らせながら、思い出すのは過去のこと

インデックスが記憶を消す前の、まだステイルとただの「友人」でいられた頃のこと

その時も彼女はステイルの体のことをよく心配してくれた

神裂と二人して、どうにか禁煙させようなんてことも

大きなお世話だ、と言いつつ心のどこかでは喜んでいた

あの頃

ステイル「・・・そうだな、この書類の塔が片付いたら休むよ」

イン「これ・・・今日中に終わらせられるの?」

ステイル「無理だろうね」

素っ気ないその返事にインデックスがしかめっ面になる

イン「あのねステイル・・・私はステイルと遊びたいんだよ?」

ステイル「・・・分かってはいるが・・・」

イン「私と仕事、どっちが大事なのかな!?」

バン、とインデックスが机を叩く

書類の塔が崩れるのでは、と一瞬ステイルは身構えたがどうにかそれは形を保っていた

ステイル「そんな台詞をどこで覚えたんだい・・・」

呆れたように尋ねながらも、ステイルは書類に目を通し続ける

イン「・・・日本のドラマでヒロインが言ってたんだよ!」

ステイル「・・・君は学園都市でそんなことをしていたのか」


690 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:33:32.28 ID:z4JXJ9A80
だったらこちらに帰って来ればいいのに、と呟く

ステイル「・・・まぁ、君のほうが大事だが」

イン「!じゃあ一緒に遊ぶんだよ!」

ステイル「仕方ないな・・・神裂も呼んでこよう」

椅子から立ち上がったステイルの服の裾を、インデックスが掴む

ステイル「なんだい?」

イン「今日は・・・二人きりじゃダメかな?」

ドキン、とステイルの胸が跳ねる

こんなことをインデックスが言うのは珍しい

ステイル「それもドラマからの受け売りかい?」

イン「ううん、みことが言ってるのを聞いたことがあったんだよ」

ステイル「・・・そうかい」

だとしたら美琴は上条に大してかなりのドキドキを提供しているだろうな、とステイルはため息をつく

こんな台詞を言われてしまっては二人きりになるしかない

ステイル「・・・それで、なんで二人きりがいいんだい」

イン「それは・・・まぁ」

ステイル「・・・」

おかしいな、とステイルが眉をひそめる

今日のインデックスはやけに大人しい

ステイル(何かあったのかもしれないな)

691 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:34:05.55 ID:z4JXJ9A80
ステイル「分かった、じゃあどこに行きたいんだ?」

イン「!じゃ、じゃあ・・・!」





てっきりカフェテリアにでも連れて行かされるものだと思っていたステイルは、肩透かしを喰らった気分だった

今二人がいるのは、なんの変哲もない公園だった

イギリスの公園というのは・・・というより、海外の公園というのは運動する場所、という目的が強いため中々広いスペースをとってある

ランニングシャツを着て走っている中年や、スケボーを乗り回している少しやんちゃそうな若者を見ながら、ステイルはヤキモキしていた

ステイル「君が食事以外のことを選ぶなんて珍しいね」

イン「わ、私だっていつも食べてるわけじゃないもん・・・」

ステイル「・・・なんだか、今日の君はしおらしいな」

イン「そうかな?」

ステイル「あぁ」

何かあったのかい、とステイルが尋ねる

小さく笑ったインデックスは、突然ふっと暗い表情になる

イン「・・・とうまとみことね、二人ともすっごく仲が良いんだよ」

ステイル「あぁ、知っているよ」

イン「・・・かきねとメジャーハートも」

ステイル「・・・それがどうかしたのかい?」

イン「・・・みんな、しっかり大人になっていってるんだよ」

まだ子供な私が言うのは変かもしれないけど、とインデックスが笑う

ステイル「・・・」


692 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:34:44.70 ID:z4JXJ9A80
イン「昔はね、とうまとみことって少しのことで喧嘩したりしてたんだ・・・でも最近、お互いのことを考えてるみたい」

ステイル「なるほど、確かに・・・段々と互いを理解しているのだろうね」

イン「・・・羨ましいな」

ステイル「上条当麻と付き合えている御坂美琴が、かい?」

イン「ううん」

否定の返事をするインデックス、それに少しだけ安堵してしまうのはステイルの我が儘だろうか

イン「・・・そうやって、みんなが大人になってることが」

ステイル「君だって・・・」

イン「私はまだまだ子供なんだよ・・・人に優しくするのも、人を愛してあげることも出来ないんだ」

ステイル「そんなことはないさ」

イン「・・・」

ベンチの背もたれに体を預け、インデックスが空を見上げる

鳥達が飛んでいくのを寂しそうに見つめる彼女は、もう「少女」と呼ぶには大人過ぎる

イン「・・・子供って、羨ましい」

ステイル「?」

イン「自分の気持ちを素直に言葉に出来るから」

悲しそうな彼女は、何を思っているだろう

イン「・・・大人って、羨ましい」

ステイル「なぜ」

イン「自分の愛情を相手に伝えることが出来るから」

ステイル「・・・君は?」

イン「どっちでもないんだ・・・私は、どっちでも」

ステイル「・・・」

センチメンタルという物か、とステイルが思う

693 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:35:13.13 ID:z4JXJ9A80
今のインデックスはなぜだかとても美しく見える

普段の可愛らしい、というイメージよりも

ステイル「大丈夫、君は優しいじゃないか」

イン「ステイルは優しいね・・・」

ステイル「・・・どうしてそんなこと、いきなり思いだしたんだい?」

イン「・・・私・・・自分の思いを伝えたいのに、言葉にも行動にも出来ないから」

ステイル「・・・」

イン「そう考えたら・・・なんだか、悲しくなっちゃったんだ」

ステイル「君もかい」

イン「?」

ステイル「僕もそうさ、自分の気持ちを伝えたいのに、どうすることも出来ない」

イン「ステイルもなんだ・・・私達、そっくりだね」

ステイル「・・・あぁ、そっくりだ」

インデックスに対する思いを、彼はどうやって伝えればいいのか

たった一言、「好き」と言えば踏ん切りがつくのに

いつまで経っても唇はその言葉を紡いでくれない

ステイル「・・・昔の君は・・・わりと素直だったのにね」

イン「大人に・・・なっちゃったのかな」

ステイル「正確には大人になる途中なんだろう、だからこそ自分の変化に戸惑っているのさ」

道行く人々は、何も苦しみを抱えていないようにさえ見える

だがその一人一人が、悩みを持っているだろう

世界というのは広く、その中で自分一人の悩みなんて非常に小さな物だ


694 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:35:50.99 ID:z4JXJ9A80
ステイル(だが、僕にとってはその悩みが世界に影を落とすほどに大きな物であるわけだ)

イン「・・・ステイル、その悩みって、解決出来そう?」

ステイル「分からないね、中々解決出来そうな機会がないんだ」

イン「・・・そっか」

今は、その絶好の機会である

受話器を通してではなく、こうやって顔を合わせて話せている今は

なのに、そんなことは分かっているのに、頭から命令が出てこないのだ

ステイル「・・・インデックス、君はどうなんだい」

イン「私も・・・まだ、上手くはいかないかも」

ステイル「そうか」

インデックスが誰に何を伝えたいのか

もしかしたら自分にではないか、と勝手に期待してしまう

ステイル(・・・そんな勝手な期待は間違っている)

頭の中に生まれた考えを振り払い、ステイルも空を見上げる

一羽の鳥が雲の流れる方向へと進んでいく

よく、夫婦というのは鳥と雲に似ていると言う

雲が流れる方角に鳥は進み、周りから見ていれば常に一緒にいるようにさえ思われる

しかし、実際は限りなく傍にいながらも決して重なり合うことはないのだ、と

ステイル「・・・今日は晴れているのに」

イン「?」

ステイルの呟きにインデックスが首を傾げる

ステイル「いや、なんでもないさ・・・」


695 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/05(火) 16:36:20.80 ID:z4JXJ9A80
イン「そう・・・」

静かなインデックスは、ステイルにとって新鮮だった

こんなインデックスの一面を見たことがあるのは彼だけかもしれない

新たな一面を見られた、という喜びは確かにある

そして、同時にこんなインデックスは少し近づきにくいな、という戸惑いも

ステイル(・・・なんだか、今日の君は凛としているな)

神裂のように凛としている、いやむしろ今のインデックスのほうが静かではなかろうか

ステイル「・・・静かな君は、少し珍しいな」

イン「・・・そうかな?」

ステイル「あぁ、見たことがないよ」

イン「ふふ・・・ステイルも見たことないんだ」

クスクスと笑うときに、口に手を添えている

昔のインデックスはそんなことに気を遣うタイプではなかった

ステイル(・・・君も大人になってきているんだな)

何か、複雑な感情がステイルの中に渦を巻く

ステイル「・・・なんだか、君は大人になったような気がするな」

イン「・・・でも、まだ大人には成り切ってないんだよ」

ステイル「そうやって自分を見つめられることがすごいのさ」

イン「・・・私、大人になれるのかな」

小さく寂しそうに呟いたインデックスに、何も優しい言葉をかけてあげられなかった

ステイルも迷っていたのだ、段々と大人になっていく自分達に


696 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/06(水) 15:03:46.38 ID:4QEe4rhF0
ステイル「食事にするかい?」

イン「うん」

公園の中にも、屋台はちらほらと存在している

ホットドックやクレープ、ハンバーガーなど

イギリスの食事はあまり美味しくない、というのは最早過去の話だった

学園都市とイギリス清教が協力関係を結んだため、学園都市の技術は色々と流れてきている

もちろん、学園都市から流れてくる技術のほとんどは科学に関する物だ

車、家電、通信など、科学側の総本山である学園都市の技術はイギリスだけでなく、世界にとって重大な物だ

だが、かといって全て科学に関する物というわけでもない

例えば電子レンジが伝わったにしても、電子レンジの新たな機能で肉や野菜の微妙な温め加減を調整出来たりする

それが料理のクオリティー上昇に関わったりもする

更に、学園都市で展開されている食品チェーン店などもイギリスに来ている

そのため最近では割と美味しい料理を簡単に手に入れることが出来るのだ

ステイル(僕は別に、イギリス料理に文句はないが)

ちらっ、と隣を歩くインデックスを見る

元気のない彼女を少しでも元気付けるには、美味しい物を食べさせるのがいいだろう

餌で釣るわけではないが、美味しい食事というのは人の心を豊かにする

昔から聖書でも言われている通り、と考えた辺りはやはりイギリス清教の人間というところか

ステイル「インデックス、何か食べたい物はあるかい」

イン「・・・ううん、ステイルが選んでくれていいんだよ」

ステイル「・・・そうかい」

いつものインデックスなら、まずはあれ、次はこれ、と呆れるほどのハイペースで料理を買い占めるはずだ

一つを食べ終えてからでないと、入らなくなる、なんて心配もいらないほど彼女はよく食べる

なのに今は、あまり食事も摂りたくないようだ

ステイル「ホットドックでもいいかな」

イン「うん」


697 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/06(水) 15:04:12.77 ID:4QEe4rhF0


なんでそんなにマスタードを付けたんだ、とステイルは舌打ちしそうになる

アルバイトの店員なのか、ホットドックの大きさの割にマスタードが多い

二つのうち、あまりマスタードが多くないほうをインデックスに差し出す

イン「ありがと、ステイル!」

ニコリと笑ってくれたのがせめてもの救いだろう

口に含んでみて分かったが、どうもあまり辛くないマスタードを用いているらしい

風味を楽しむには多少多いほうがいいのだろうか

それにしたって、さすがにこれは付けすぎだが

ステイル「・・・君はホットドックはあまり食べなかったね」

イン「?そうかな?」

ステイル「あぁ、ホットドックにするくらいならパンとソーセージを沢山買って食べたほうがいい、なんて言ってね」

懐かしい会話を思い出しながらステイルは笑う

インデックスには、その会話の思い出はない

ステイル「・・・今の君は違うのかな」

イン「うん、ホットドックも美味しい!」

ステイル「そうか、よかった」

笑ってくれたことが何より嬉しかった

ベンチに座り、二人並んでホットドックを頬張る

高々と空に昇った太陽が二人を照らしている

10月に入ったというのに、まだ長袖一枚で過ごせるような暖かさだ



698 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/06(水) 15:04:44.62 ID:4QEe4rhF0
ステイル「・・・心地好いな」

イン「こんな日は、やっぱり外に出て正解だったんだよ」

ステイル「・・・そうだね、仕事ばかりではやっていられないよ」

インデックスが来てくれなかったら、彼はまだ書類の束と戦っていたのだろう

そう考えるとインデックスがやって来てくれたことは彼にとってとても大きかった

ステイル「・・・こうやって誰かと肩を並べて食事、なんて最近はほとんどしていないな」

イン「たまには誰かと食事したら?」

ステイル「・・・僕達は仕事に追われているからね、仮に僕が暇だったとしても神裂は空いていなかったりするのさ」

イン「・・・かおり以外の友達も作らないとダメなんだよ」

ステイル「ははは、そうだな」

全く納得していない、ただの空返事だ

彼にとってインデックスと神裂は古い友人なのだ

上条や美琴などの、「最近出来た」友人とは比べものにならないほどの古い友人だ

ステイル「・・・でもね、僕はあまり沢山の友人はいらないよ」

イン「?どうして?」

ステイル「少しの親友と、楽しい時間を共有出来ればそれでいいさ、あまりに数が多いと一人一人との思い出を忘れてしまいそうだからね」

イン「・・・」

ステイル「君や神裂との思い出を忘れるなんて御免だから、やっぱり僕は友人なんていらないよ」

イン「でもね、昔を捨てないと明日には進めないんだよ」



699 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/06(水) 15:09:06.46 ID:4QEe4rhF0
寂しそうにインデックスが言う

無理矢理に昔を奪われた彼女は、だとしたら明日に進んでいるのだろうか

ステイル「・・・無くしたくない過去もあるさ」

イン「無くさないといけない過去があるんだよ」

ステイル「・・・君との過去は、無くしたくないな」

イン「・・・私が大事だから?」

ステイル「あぁ」

インデックスという少女は、命を懸けていいほどに大切だった

大袈裟な表現ではなく、文字通り、本当に命を懸けても

ステイル「…インデックス、僕は過去を大切にしたいと思っているよ」

イン「うん、私も」

ホットドックを一かじりしてから、インデックスがステイルのほうをちらっと横目で見た

ステイル「?どうしたんだい?」

イン「ううん…」

ステイル「…」

ポケットから煙草を取り出そうとするが、インデックスがいるのを思い出してそれを再びしまう

さすがに彼女と一緒にいる時にスパスパ煙草を吸う気にはなれない

ステイル(…全く、ニコチンとタールのない世界は地獄だよ)

そう思いながらも、あまり今の時間は苦ではない

隣にこの少女がいるから…


イン「ステイル、私ね」

突然、インデックスがステイルの手を掴んだ

それに、胸がどきりと跳ねた

700 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/07(木) 16:22:54.08 ID:LgI5FH0d0
イン「私・・・ステイルに、言わなきゃいけないことがあるんだよ」

ステイル「・・・」

なんだろうか、インデックスの言いたいこととは

いや、言わなければいけないこと、か

ステイル「・・・君は、僕に伝えたいことがある・・・そういうことだね?」

イン「・・・でも、なんて言ったらいいのか分からないんだよ・・・」

ステイル「・・・」

何なのだろうか、恋愛感情なのか、なんて淡い期待も抱かないことはない

だが、ここまでインデックスが口を濁すのは何か言い辛いことなのだ

愛している、なんてことを言うのに戸惑うような少女ではない

ステイル「それを言うために、学園都市から来たのかい」

イン「・・・うん、それもあるかも」

ステイル「・・・あまり、無理に伝える必要は・・・」

その時だった、ステイルの頬に何かポツリと当たった

空を見上げると、先程までの快晴が嘘だったかのように雲が浮かんでいた

灰色の不気味な雲だ、すぐにどこかへ行かなければ雨に降られてしまう

ステイル「・・・雨宿りをしようか」

イン「・・・うん」

ステイルがベンチから立ち上がる

ランニングをしていた人々も、どこか雨宿りの出来る場所を探し始めている

ステイル(・・・雲が多いな)

中々長い雨になりそうだ、ステイルはそう顔を曇らせた

701 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/07(木) 16:23:32.18 ID:LgI5FH0d0


ザァァ、という雨の音を二人は小さなカフェテリアで聞いていた

傘を持った客も多い、ということは元々天気予報では雨だったのかもしれない

ステイル(全く、部屋に篭って仕事をしていたせいでそういう物を気にしなくなっていたな)

少しばかり水の滴る髪を見つめながら、ステイルは奥歯を噛んだ

イン「・・・結構降ってきたね」

窓の外を見ながら、インデックスはコーヒーを飲んでいた

昔から彼女はなんでも飲み食い出来た

コーヒーも、砂糖大盛りだろうがブラックだろうが構わずに飲んでいた

今日はブラックを飲んでいる、何か意味があるのか

ステイル「・・・このままだと、しばらく外には出られないな」

道を走る車は歩道に水しぶきを撒き散らしている

こんな中を歩いて帰れば、濡れ鼠になってしまう

ステイル「・・・雨に突然降られるなんて、ツイていないな」

イン「・・・うん」

気のせいか、インデックスは修道服の肩が透けているのを気にしているようだ

ステイル「・・・どうしたんだい?」

イン「肩が透けちゃってるから・・・なんか、少し恥ずかしい」

ドキン、とステイルの胸が跳ねたのはなぜか

インデックスの下着の肩紐が透けて見えていることに対してか、それともインデックスが大人の女性になりはじめていることに対してか


702 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 16:57:17.46 ID:Hb7DuCSf0
ステイル「・・・それにしても、君は・・・あれだね、やはりカフェテリアが似合うよ」

イン「そうかな?」

ステイル「ほら・・・君はよく食べるから」

イン「うん、私はなんだかお腹が空くから・・・」

完全記憶の代償なのか、とステイルは考える

よくテスト勉強をしたらお腹が減る、と言うがその更に何段階も上なのかもしれない

彼にはあまり詳しいことは分からないが

ステイル「・・・何か食べるかい?」

イン「じゃあ、サンドイッチがいいな」

ステイル「サンドイッチか」

ステイルがウェイターに注文を伝える

ついでにこの店はタバコを吸っても大丈夫か、と

もちろん、こういう店では店内禁煙だ

ステイル「・・・ここは地獄だな、僕達が昔行った店はタバコを吸っても怒られなかった」

イン「もしかして・・・私やかおりと出掛けた時にも吸ってたの?」

むむっ、とインデックスが眉をひそめる

ステイル「あぁ、そして君達がそれを止める、というのが一連の流れだったね」

イン「ステイル・・・タバコを吸う男性なんて、もう格好悪いんだよ・・・」

ステイル「か、格好悪いからといって辞められるものではないさ」

イン「中毒なんだね」

703 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 16:57:43.68 ID:Hb7DuCSf0
ステイル「はは・・・そうだね」

ため息をつきながらも、インデックスが段々と普段のテンションになってきたことに安堵する

ステイル「・・・君は、タバコを吸う男は嫌いなのかい」

イン「き、嫌いじゃないんだよ!」

ステイル「?意外だな、てっきり嫌いだと思っていたよ」

イン「・・・だって・・・」

ステイル「?」

イン(ステイルがそうだから・・・なんて言えない)

ステイル「どうかしたかい?」

イン「な、なんでもないんだよ!」

丁度いいタイミングでウェイターがサンドイッチを運んできた

救われた、と胸を撫で下ろしてからインデックスはサンドイッチを頬張る

イン「・・・」

ステイル「どうかしたかな・・・?もしかして、口に合わなかったのかい」

イン「ううん、美味しいんだよ・・・」

ステイル「それにしては中々引っ掛かったような表情だね」

イン「・・・なんだか、前にも食べたことがあるような・・・」

ステイル「・・・」

そういえば、とステイルが思い出す

704 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 16:58:09.90 ID:Hb7DuCSf0
昔・・・インデックスが記憶を消す前に、一度だけこの店に来たことがあったのだ

タバコを吸えないと知ってから来なくなったのだ、ステイル自身も忘れていた

ステイル「昔のことは、覚えていないんだろう」

イン「・・・そうだけど・・・でもね」

ステイル「・・・」

イン「頭の中には記憶は無くても・・・きっと、心の中には思い出があるんだ」

ステイル「心、か」

不思議な話だ、しかしステイルはそれを信じたかった

ステイル「・・・さ、早く食べたまえ」

イン「うん」

パクパクと頬張るインデックスは、幸せそうな表情だ

ちょうど、昔ここに来た時と同じような




ステイル「雨・・・まだ止まないな」

支払いを終え、店の外に出たはいいが、相変わらず雨は地面で踊っていた

イン「・・・多分、明日まで降るんだよ」

ステイル「なら、明日は外に遊びに行くのは無理だな」

イン「はぁ・・・どうして私が来た時に限って降るのかな!?」

何かの厭味なの!?とインデックスが空を睨みつける

空の返事は単純にして明快、雨粒を彼女の顔に落とすだけである


705 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 16:58:51.15 ID:Hb7DuCSf0
イン「くーっ!なんだか馬鹿にされた気分なんだよ!」

ステイル「・・・傘も持っていないし、帰るのは中々大変だ」

傘の代わりに出来るような物も持っていない

イン「・・・走る?」

ステイル「・・・そうしようか」

雨で滑らないように気をつけながら、二人はステイルの仕事場へと走った



仕事場、といってもステイルがある程度篭ることが出来るようにシャワーやキッチンは完備されている

そもそも、ステイルは料理をしないためキッチンは必要はないのだが

ステイル「君からシャワーにしてくれ」

イン「うん・・・ありがと」

ステイル「着替えは神裂に持って来させるよ」

風呂に向かったインデックスを、ステイルは優しい目で見送った

ステイル「・・・イノケンティウス」

イノ「はーい、なんだよ」

ボン、とルーンのカードからイノケンティウスが飛び出す

ちなみに、一枚のカードに少しの魔力を流しているだけなのでとても可愛らしい魔女狩りの王になっているのだが

ステイル「君、僕の服を乾かしたりは出来ないかい?一刻も早く仕事をしたくてね」

イノ「ここにアロエがあるならやってもいいぜ」

ステイル「・・・やめておく、その代わり神裂に・・・って君がむやみやたらに歩くと火事になるな」
706 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 16:59:17.50 ID:Hb7DuCSf0
仕方ない、とステイルが電話を取る

神裂はこの仕事場から歩いて5分程の場所で仕事をしている

たしか、最近の彼女の仕事は若いシスター達にイギリス清教のいろはを教えることだったか

ステイル(寮の場所から布教の仕方まで教えるとは、随分と面倒な仕事だな)

思いながら、神裂の仕事場へ電話を掛ける

彼はあまり・・・というか、かなり電話が嫌いだ

顔を見て話せないのは緊張してしまうからだ

ステイル「あぁ、神裂かい?すまない、インデックスがこちらに来ていて・・・あぁ、知っているなら話は早い」

イライラして、トントンと電話台を指で叩きながら用件だけを伝える

はぁ、とため息をついて受話器を置く

通話時間はわずか15秒、コミュニケーションの端くれにもおけない

イノ「相変わらず電話嫌いなんだな」

ステイル「よくインデックスに掛ける時は深呼吸をしているよ」

イノ「全く、電話だろうが会って話そうが変わらないのに」

ステイル「・・・っと、あまりテーブルに近づかないでくれ、大事な書類が並んでる」

イノ「そいつはすまないな・・・にしても、インデックスが来てくれたなんて僥倖じゃあねぇか」

ステイル「仕事が進むからかい?」

イノ「まっさかぁ、そろそろお前さんの喉に刺さった魚の小骨を吐き出してもいい頃だ」

ニヤニヤと笑いながら、イノケンティウスが冷やかす

笑う、と言っても彼の笑顔は非常に不気味なため、あまり友好的な感じはしないが

ステイル「・・・何と言って伝えるかも決めていない」


707 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 16:59:43.58 ID:Hb7DuCSf0
イノ「何と言って伝えるか?馬鹿だなぁ、何を言うかが大事なんだよ、綺麗な台詞なんて滑稽な装飾に過ぎないのさ、美しいのは純粋な感情だけだ」

ステイル「・・・そんなものかな」

イノ「まぁ、お前が伝えたくないって言うなら仕方ないが」

そういうわけではないが、とステイルが言葉を詰まらせる

イノ「・・・早くしないと、人生は短く、しかし成し得なければならないことは多すぎる」

ステイル「あまり急かさないでくれ・・・僕はそこまで女性慣れしていないんだ」

イノ「全く、普通に話せるくせに」

トントン、と部屋のドアがノックされる

ステイル「どうぞ」

神裂「失礼します・・・おや、イノケンティウスを出しているのですか」

イノ「はぁい、暖を取るには最高だろ?」

神裂「あなたの場合は焼き尽くされてしまいそうですが・・・インデックスの着替えはこれでいいでしょうか」

ステイル「あぁ、すまないな」

神裂が持ってきたのは、インデックスがいつも着ている修道服と同じサイズの物だった

そちらには「歩く教会」は張られてはいないが

ステイル「・・・インデックスがあがるまで待つかい?」

神裂「いえ・・・そうしたいのは山々なのですが、生憎と仕事が多すぎるので」

ステイル「大変だな」


708 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 17:00:11.01 ID:Hb7DuCSf0
神裂「仕方ありませんよ、では」

頭を下げた神裂が素早く去っていく

イノ「全く、あの姉ちゃんも大変だよなぁ」

ステイル「神裂は少し真面目過ぎるのさ、たまには手を抜くのも大切だ」

イノ「女ってのは真面目過ぎるくらいがいいんだぜ?」

ステイル「・・・そうかい」

イノケンティウスの体に手を翳し、なんとか少しでも温まろうとする

イノ「はん、こんな日に限って雨とは・・・お前も神様に愛されてねぇな」

ステイル「そうかな?愛されていないとは限らないよ」

イノ「少なくとも、俺が神様ならお前は愛さないね」

ステイル「・・・消されたいのかい」

イノ「落ち着けって、お前は十字教の人間のくせにタバコは吸うし人は殺すだろ?」

ステイル「君は聖書を読んだことがあるかい?ダビデがゴリアテを殺したのは神の力によってだが」

イノ「それとこれとは別なんだが・・・まぁいいや」

カードの上でユラユラと揺れるイノケンティウスが、風呂のある方を見つめる

イノ「しかし遅いな、なんで女は長風呂が好きなのかねぇ」

ステイル「風呂で洗い流したい物が多すぎるのさ」

イノ「悩み事を抱えてるって?インデックスはそんなもんなさそうじゃないか」


709 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 17:00:36.15 ID:Hb7DuCSf0
ステイル「逆だよ・・・彼女はもしかしたら、悩み事さえも忘れられないんじゃないかな」

イノ「はっはぁ、そいつは可愛そうに」

ステイル「・・・そして、僕が彼女を裏切ったことは覚えていない」

イノ「守ってくれたことは覚えてる、お前はインデックスの記憶を奪ってからもあいつに優しくしたからなぁ」

都合のいい記憶だけが残ってる、イノケンティウスはそう言った

ステイル「何が言いたい?まさか、それが強みになると」

イノ「なるさ、それは非常に重要な強みになる」

ステイル「馬鹿を言うな!僕は彼女を傷つけたことを一生忘れはしない・・・」

イノ「誰がそれを望んだ」

ふと、イノケンティウスが悲しそうな表情になる

炎が勢いを弱めたのだ

イノ「お前、時間を戻せるなら、あんなことをしなければ、なんて思っただろ」

ステイル「何度も思ったさ」

イノ「お前、本当は忘れたいんじゃないか?あいつを傷つけたことを」

ステイル「・・・あの事実を無くせたら、ということさ」

イノ「そしてな、インデックスだっていつまでもお前が罪に苦悩しているのを嫌がってるのさ」

ステイル「インデックスが?」



710 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 17:01:02.27 ID:Hb7DuCSf0
イノ「分かるか?誰がお前に罪を背負わせた?インデックスがお前を怨んでるなんていつ言ったんだよ、あいつは一度も言わなかっただろうが」

ステイル「・・・」

確かにそうだ

あんなにひどいことをしたのに、彼女はそのことでステイルを怨んだりはしなかった

イノ「お前に罪を背負わせようなんて思ってるヤツはいない、お前が勝手に背負ってるだけなんだ」

ステイル「・・・だったら、忘れろと言うのか」

イノ「それが二人にとって良いことならな、前に進むにはいつだって後ろを切り捨てなきゃいけないんだ」

ステイル「・・・僕は忘れていいとは思わない」

イノ「だろうな、お前はかなり頭が堅いから」

だがインデックスはどうだ、とイノケンティウスが尋ねる

イノ「あいつは泣いている人を見たら声を掛けるような人間だ、お前が泣き出しそうな表情をしていたらどう思う?赤の他人にさえ声を掛けるんだ、まして昔からの友人なら」

ステイル「・・・だが」

イノ「いいかステイル、お前はもっと卑屈にならなきゃいけない、男ってのは女の唇奪って舌を絡めて、体を奪えば勝ちなのさ、そこにためらいなんてあったらいけない」

ステイル「随分と情熱的な表現をするんだな、君は」

イノ「炎だからな」

その時、風呂場からガチャリとドアを開けるような音が聞こえた

インデックスがあがったのだろう

711 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 17:01:55.74 ID:Hb7DuCSf0
イノ「・・・とにかく、お前のことをインデックスは許してるのさ」

ステイル「そんなこと、なぜ分かる」

イノ「なぜ分かってやれない」

なぜ分かってやれない

その一言が、なぜかステイルの胸にグサリと突き刺さる

氷柱のようなそれは、しかし逆にステイルの凍っていた心を溶かすかのようだ

イノ「なんで分かってやれないんだ、お前はいつだってインデックスのことを第一にしてたじゃないか、そんな生活をどれだけ続けた?誰よりもインデックスに優しくしたじゃないか、だったらお前は誰よりもインデックスを知ってるはずじゃないのかよ」

ステイル「それは・・・」

イノ「お前が分かってやれなけりゃ、誰もインデックスのことを分かってはやれない」

首を振ってから、イノケンティウスがステイルの目をまっすぐ見つめる

イノ「いいか、インデックスのことを考えるなら、インデックスの中にいるお前をも見つめなけりゃいけないんだ」

ステイル「彼女の中の・・・僕を?」

イノ「あいつの瞳に映るお前はどんな表情をしている?人間を殺す時のような、冷たい表情か?」

ステイル「いや…」

きっぱり、ステイルは答えられた

彼はいつだって、インデックスにだけは優しく振る舞った

例え世の中の全てに冷たくしてしまうとしても、あの少女にだけは

712 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/08(金) 17:02:29.14 ID:Hb7DuCSf0
イノ「なら大丈夫、あいつの中のお前は優しいステイルさ」

ステイル「・・・」

イノ「幸運を祈る、どこかにいる知らない誰かが祈ってるんじゃない、こんな間近にいる俺が祈ってるんだぜ」

親指を立てたイノケンティウスは、そのまま姿を消した

同時にインデックスが部屋へ戻ってくる

イン「?誰かと話してたみたいだったけど・・・」

ステイル「あぁ、イノケンティウスとね」

イン「?」

ステイル「それより、今度は僕が入って構わないかな」

イン「うん!」

ステイルが風呂場へと向かう

ちなみに、着替えもいつもの服と同じだ

あの服以外はイマイチしっくりこない、というあまりに可愛そうな服の趣味なのだ

イン「・・・ステイルは・・・」



イノ「うぃーす」

イン「うわっ!い、いきなりルーンのカードから声が・・・ってイノケンティウスなんだよ」

イノ「名前覚えててくれた・・・って、記憶力に関してお前はエキスパートだったなぁ」

イン「うん」

イノ「まぁいいや・・・お前、何しにこっちに来たんだ?いきなり来たみたいだけどさ」

イン「な、何しにって・・・」

顔を真っ赤にしながら、インデックスはしどろもどろになる


713 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/09(土) 08:58:41.85 ID:HZ83Ws2I0
イン「・・・それはそうとあれ、ステイルが魔力を流してないのにどうして出ていられるのかな?」

イノ「はっはぁん、なるほど、魔術師にとって魔術で召喚した使い魔なんかは都合の良い道具なわけだ」

うんうん、と頷きながらイノケンティウスが指を振る

イノ「しかしな、インデックス・・・もしもその使い魔が意志を持っていたら、なんてのな夢物語かな」

イン「意志?」

イノ「自分を呼び出した魔術師の魔力を、体にある程度貯蓄出来たとしたら?」

イン「うー・・・難しいんだよ」

イノ「ま、この際は俺が出てきたことにはゴチャゴチャ言うなよ」

大切なのはそんなくだらないことじゃないんだからな、と

イノ「お前さんは、何をしにここに来たんだ」

イン「・・・」

イノ「言い当ててやろうか?ステイルに何かを伝えるためだ」

イン「ど、どうして分かるの?」

イノ「分かるさ、恋をしている女は美しいからな」

イン「・・・普段の私は美しくないって言いたそうなんだよ」

イノ「いやいや、そんな意味じゃないんだ」

イン「・・・当たってる、私はステイルに・・・何かを伝えたいんだよ」

イノ「お前も、その何かの正体は分からないんだな」

イン「お前・・・も?っていうことはイノケンティウスも分からないのかな?」

イノ「俺じゃないさ」

イン「じゃあ誰?」



714 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/09(土) 08:59:09.64 ID:HZ83Ws2I0
イノ「それは俺の口から言うべきではないんだ」

言いながら、イノケンティウスが窓の外を見つめる

炎の彼にとっては対極である、雨の外を

イノ「お前の心の中は曇り空なのさ、これから涙の雨が降るかもしれないし晴れになるかもしれない」

イン「・・・」

イノ「ただ一つ言えることは、曇ったままの空には太陽は昇らないってことだな、そして虹も出はしない」

イン「・・・何が言いたいか分からないんだよ」

それはイノケンティウスの言いたいことについてか

それとも、インデックス自身が言いたいことについて?

イン「・・・ステイルはね、私を第一に考えてくれるけど・・・私は、ステイルを第一に考えられてるのかな」

ぽつりと口から流れたのは、そんな言葉だった

イノ「さぁな、お前の心の中心に誰がいるのかはお前にしか分からない」

イン「・・・」

指を組み、不規則に動かすインデックス

恥ずかしがる仕種のはずだが、今の彼女が行っているとそれは悲しい仕種に見える

イン「・・・私、人より人生経験が無いんだよ」

イノ「記憶を一年ごとに消されてきたからな」

イン「・・・だから、自分の気持ちについて分からないし、他人に伝える方法も分からないんだ」

イノ「好きだって言えばいいだろ」

イン「!」

好き、という言葉にインデックスの肩が跳ねる



715 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/09(土) 08:59:38.62 ID:HZ83Ws2I0
イン「・・・好きって、恋愛感情?」

イノ「あぁ」

イン「わ、私は・・・ステイルを・・・愛してるのかな?」

イノ「傍から見ていればな、だが最終的に決めるのはお前だ」

俺達第三者にゃあ上っ面しか分からないのさ、とイノケンティウスが肩を竦める

イノ「だがな、インデックス・・・人生は短い、だからこそ人は急ぐか諦めるかしかないのさ、ちょうどいい時間を用意して、なんて出来ないから人は生き急ぎ、時間が足りないと嘆く」

イン「・・・でも、じっくり考えなきゃいけないことだもん」

イノ「十分時間はあっただろう」

ステイルと彼女が・・・記憶にある中で初めて会ってから、どれ程時間が経ったのか

迷っていた、というにはあまりに長すぎる時間だったのではなかろうか

イノ「お前はじっくり考える、と言っていつも結論を出すことから逃げていたんじゃないか?人間にはよくあることだ」

俺達とは違うな、と

イノ「だがそいつを別に責められるわけじゃない、ただ答えを出すならすぐに出さなきゃいけない」

イン「・・・だって」

イノ「自分の気持ちを見つめてみな」

イン「・・・」

インデックスの記憶の中にあるステイルの姿は、優しい物だった

彼が一度でも、インデックスを傷つけるために動いたことがあったか

もちろん、結果的に傷つけるような行動はやむを得なかったのだ

716 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/09(土) 09:00:18.33 ID:HZ83Ws2I0
だが、それを行った根本的な理由はやはり彼女を助けるためだった

イノ「なぁ、お前はステイル以上の男を知ってるか?」

昔のインデックスなら、上条当麻の姿が一瞬であっても過ぎるはずだった

そんな彼も、今はもう

イン「ううん、ステイル以上なんていない!」

胸を張って言える、ステイル以上に彼女を思う男はいない、そしてステイル以上に彼女が思う男も

イノ「答えは出てるじゃないか、なら何を躊躇う?」

イン「・・・伝えて、断られたら・・・」

イノ「それはない、安心しな」

ステイルが何のために行動してきたと思う?

最後にイノケンティウスはそう問い掛ける

ちょうど、風呂場でドアを開けるような音がした

イン「・・・ステイルは」

しん、と静まり返った部屋に彼女の優しい声が響く


イン「私のために、今まで優しくしてくれた」

イノ「そうだ」

イン「だから、私もステイルが・・・」

イノ「待ちな、それは俺に最初に伝えるべきじゃない、ステイルに言ってやりな・・・今日か明日、お前がこっちにいる間に」

ウインクをしてからイノケンティウスが姿を消す

カチャリ、とドアが開いた

ステイル「ただいま・・・誰かと話していたのかい?」

イン「ううん、独り言!」

ステイル「?そうか」

髪も既に乾かしたらしいステイルは、そのまままた書類の山の積み重なった机へと向かった

717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/09(土) 22:55:56.53 ID:ByHKGMBxo
おつにゃんだよ!
718 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/10(日) 22:09:14.58 ID:sqKddKcp0

ステイル「…インデックス」

サラサラ、とペンを走らせながらステイルが呼びかける

イン「?なに?」

ステイル「…君は、僕のことを恨んだりはしていないかい」

イン「…してないよ」

書類から顔を上げたステイルの顔は、どこか安堵したように見える

イン「ステイルは、いつも私を守ってくれるし…それに、守るために私の記憶を消したんだよね」

ステイル「…だが、結局あの時君に掛けられていた枷を外したのは上条当麻だよ」

イン「でもね、もし私がその前に記憶を消されてなかったら…きっと、私はもう生きてなかったんだよ」

だから、ありがとうとインデックスが笑う

イン「とうまと会えたのも、みことや、かきねや、みんなと知り合えたのは…全部ステイルとかおりのおかげなんだよ!」

ステイル「…そうかい」

イン「…本当にありがとう」

ステイル「お礼を言われるようなことじゃないさ」

イン「…ずっと、ね」

ステイル「?」

イン「ずっと、ステイルとかおりに…重い物を背負わせてるってのは分かってた」

今度は、書類を机に置いて、ステイルはインデックスの顔を真っ直ぐ見つめた

イン「…私の記憶を消したこと、その後私の敵のように振る舞っていたこと…全部、後悔してるはずだって」

ステイル「…」

イン「その十字架を外してあげられるのは、私だけなんだってことも、分かってた」

でも、怖かったのだと


719 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/10(日) 22:17:33.86 ID:sqKddKcp0
イン「…そうやって、私のせいで苦しんでる二人を…私じゃ、どうしようもないんじゃないかって…」

ステイル「…君も、悩んでいたのか」

イン「…不思議だよね、昔のことは覚えてないのに…なんでだろう」

ギシッ、と椅子の背もたれに体重を預けて、インデックスが天井を見上げる

イン「…二人の泣いてる顔なんて見たこともないのに…二人には、もう泣いてほしくないって思うんだ」

ステイル「…」

インデックスの記憶を消すと決めた時、神裂と二人で涙を流した

あの時のことを、ステイルは忘れはしない

イン「…なんでだろうね」

ステイル「…さぁね」

イン「…」

ステイル(…全く、この子はどんどんと成長していくな)

今のインデックスは、とても年相応なんて言えるような雰囲気ではない

とても美しく、悲しく、そして優しく

聖母のような、包み込むような暖かさを、彼女は持っている

ステイル(…記憶を一年ごとに消していた頃は、成長という物をほとんど出来なかったはずだ)

もちろん、体や精神の基本的なことは育っていくものだった

しかし、経験が絡んでくることに関しては、毎年リセットされていた彼女は、やはり年齢にそぐわない幼稚さを持っていた

そんな彼女がこうやって、もう大人になろうとしているのを見るのは非常に嬉しいものだ

ステイル(…だとしたらなんなのだろう、この寂しさは)

小さな頃、暗い路地で母親だけが先に歩いて行ってしまったような寂しさだ

置いて行かれるのではないか、もう追いつけないのではないかという恐怖だ

ステイル(…あぁそうか、僕はこの子に…)

大人になって帰ってきた彼女に



ステイル(…恋をしているのか)


720 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 10:57:39.39 ID:44GbrwKs0


ステイル「・・・君といると、落ち着くよ」

何気なしに、ステイルが呟く

イン「・・・私も、ステイルがいると嬉しいな」

ステイル「・・・インデックス」

もしも、とステイルが尋ねる

ステイル「もしもずっと一緒にいられたら・・・それは喜ばしいことかな」

イン「うん、一緒にいられたら・・・きっと、ずっと幸せなんだよ」

ステイル「・・・そうか」

今しかない

今だけなのだ、自分の思いを伝えられるのは

インデックスが学園都市に帰るのはいつなのか

明日かもしれないし、明後日かもしれない

もしかしたら、ずっとこっちに居てくれるかもしれない

だが、伝えられるのは今だけだ

明日や明後日ではいけない、もし今を逃したら、ステイルは一生逃げ続けてしまう

ステイル「インデックス、聞いてくれないか」

喉が干上がりそうになるのを、必死に堪える

イン「うん、何かな」

ステイル「・・・君は・・・その、僕と一緒にいると落ち着くかい?」

イン「うん、とっても」


721 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 10:58:06.03 ID:44GbrwKs0
ステイル「・・・僕と一緒にいられたら、幸せかい?」

イン「えぇ、とても」

クスクス、とインデックスが笑う

普段の口調を変えている

ステイル「・・・からかっているのかい」

イン「ううん、本当に、心から」

大人になった

上条当麻という青年の背中は、いつもステイルの目の前にあった

なぜか、と言われたら簡単に答えは出てこない

ステイルが救えなかったあの時のインデックスを、完璧に救い出した青年

ステイルがどうすることも出来なかったいくつもの事件を、右手だけで解決してきた青年

何よりも、力ではなくただ正義感によって人々を救った青年

そして

御坂美琴という、一人の少女を誰よりも幸せにしている青年

悔しかったのだ、自分と2つ程しか変わらない、大して違いもないあの青年が、自分の何歩も先を歩いているのが

その隣には御坂美琴という、支えてくれる存在がいるのが

ずっと一人で歩いてきたステイルにとって、あまりに羨ましかった

インデックスを誰よりも救いたかったのは自分なのに、出会ってすぐにインデックスを救ってしまった彼が、少しばかり

ステイル「・・・僕はね、上条当麻に嫉妬していた」

だから、素直に伝えてみる


722 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 10:58:33.72 ID:44GbrwKs0
改めて分かった、ステイルが自分の物語を始められたのは誰の言葉のおかげだったのか

インデックスの記憶を消して、赤の他人のように振る舞うだけの、悲劇を終わらせてくれたのは上条だった

ステイル「君を救い出し、僕にさえも光を見出だしてくれた彼に」

イン「・・・」

ステイル「・・・気に入らなかった、自分よりも、どうしてあんな青年が君を救えたのか、と」

首を振り、今更になってあの時の自分を恥ずかしがる

もしもこの場に上条がいたなら、「誰が救おうと関係ない」なんて言うのだろうか

それこそがあの青年の本質であり、ステイルが目指した「ヒーロー」の姿だった

ステイル「・・・なぜ嫉妬していたか、分かるかな」

イン「・・・とうまが、強いから?」

ステイル「それもあるな・・・でもね、彼が他の誰を救っても、嫉妬なんかしなかったさ」

ただ、彼が君を救った時だけは、あまりに辛い嫉妬を抱えたのだと

ステイル「・・・君を救い出すのは僕であるべきだ・・・そう、昔は考えていた」

イン「昔は・・・?」

ステイル「違うと気付いたのは最近さ・・・誰が救い出す、なんて運命は決まっていないということに」

神様が、もしも運命の路上を作り出しているなら

きっとステイルは、そこに転がる石ころのようなちっぽけな存在だ

風が吹けば転がるしかない、自分だけではどうすることも出来ないはずの

ステイル「君を救い出すヤツが決まっているんじゃない、君を救い出すと決めたヤツが・・・君を救い出す運命への切符を手に入れるのさ」

上条当麻は、それに誰よりも早く気付いたのだと



723 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 10:59:01.86 ID:44GbrwKs0
ステイル「・・・彼の右手以外では君の結界を破壊出来ない、なんて言い訳だった・・・君を守りたいという意志が、彼のほうが上だったんだ」

イン「昔は、なんだよね」

ステイル「そうだよ、それは遠い昔の話さ」

手を組み、ステイルが笑う

ステイル「そんなのは過去の話だ、今になって笑えてしまう程に」

イン「・・・」

ステイル「・・・回りくどいかもしれないが、これが僕の・・・やり方なんだ」

上条当麻のように、直接自分の気持ちを伝えられたら?

いや、なぜ彼が上条当麻を意識しなければならないのか

ステイル(そうだ、この物語の主人公は上条当麻なんかじゃない、インデックスを救うヒーローは彼なんかじゃない)

ぐっ、と拳を握り、ステイルが真剣な表情になる

ステイル「僕は、君を守りたい」

イン「・・・もう、守ってくれてるじゃない」

ステイル「・・・違うんだ、争いや、憎しみからではなく・・・周りの全てから」

イン「?」

ステイル「君が・・・構わないというのなら、僕は君を守りたい」

この期に及んで、愛情というのは醜いものだと再認識する

彼女に、誰か他の男が手を出そうとしたなら、きっとステイルは自らの炎でそれを焼き尽くしてしまうだろう

守りたい、というのは些か美しい言い方だ、自分だけの物にしたい

ステイル「・・・僕は・・・君が好きだ」

今しかない



724 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 10:59:30.43 ID:44GbrwKs0
イン「・・・それは、友情?」

ステイル「違う」

少し前の自分は知らなかった、心の真ん中にある大切な感情

あの時生まれた、大切な感情



ずっと伝えたかった、あの言葉

「・・・さようなら、インデックス」

記憶を消すと決めた時に、思い出の奥底に沈めた言葉

「いい加減に始めようぜ、魔術師!」

あの青年のたった一言で、どこからか湧き出した言葉

「・・・ステイル?」

首を傾げ、自分の顔をじっと見つめていた、あの少女に言うはずだったあの言葉


「・・・さようなら・・・なの・・・?」


もう、言えないはずだったあの言葉



ステイル(神よ、今からでは遅いかな)

彼が初めて会った時の記憶も、神裂と三人で出掛けた時の記憶も無くした少女に

自分の思いを伝えるのは、遅すぎるだろうか

時計の針が進む中で、ステイルの心だけはずっと過去に置き去りにしてきた

伝えたかったはずの言葉と一緒に

なら

ステイル(今から、その言葉を・・・伝えてもいいだろう?)



725 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 10:59:58.38 ID:44GbrwKs0
目を閉じて、覚悟を決める

窓に雨がぶつかる音だけが部屋に響く

彼が思いを伝えた後、それは涙を隠す道具になるのか

それとも、すぐに虹が出る、美しい風景になるのか

もう、伝えるしかない





ステイル「僕は君を愛している」






炎というのは、吹き消してしまうのが容易い

息吹を優しく吹き掛けられただけでそれは揺らいでしまう

ステイルの感情の炎は、一度悪魔の息吹に掻き消されたのだ

それから長い時を経て、再びそれに火を点したのは誰か

ステイル(僕自身さ)

インデックスの表情は、驚愕とも言える、喜びとも言える、悲しみとも言える、迷いとも言える、非常に複雑な物だった

感情が豊かな彼女には、様々な表情がある

それらの美しい所だけを集めたような表情だった

イン「そ、それは・・・異性として、なのかな?」

手をモジモジと動かし、恥ずかしそうにインデックスが確認する

ステイル「あぁ」

イン「・・・友人として、じゃなくて?」


726 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 11:00:24.36 ID:44GbrwKs0
ステイル「友人では、もう我慢出来ないんだ」

我ながら、随分とキザなことを言うものだ

こんな歯が浮くような台詞、人生でもう二度と言って堪るものか

ステイル「君と・・・君と、一緒にいたい」

イン「わ、私のこと・・・一人の女の子として好きなのかな?」

ステイル「そうだよ」

伝えてしまった

もう、戻ることは出来ない

後はインデックスの答えを待つだけだ、駄目なら、もしかしたら友人でいることさえ難しくなるかもしれない

だが、そんなリスクを背負ってでも、彼は伝えた

イン「あ・・・」

ステイル「・・・」

思わず目を逸らしてしまう、インデックスの表情を見ているのが怖い

イン「・・・ありがとう、ステイル・・・」

ステイル「・・・」

イン「・・・あのね、ステイル」

ステイルの横に移動してきたインデックスが



軽く、彼の唇に自分の唇を重ねた

ステイル「な・・・!?」

イン「・・・私、まだ子供なんだよ?キスだって上手くないし・・・」



727 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 11:00:50.39 ID:44GbrwKs0
ステイル「ち、違う!僕は別に最初からそんな・・・」

イン「・・・嫌だった?」

ステイル「嬉しかったさ!た、ただ・・・ちょっとびっくりしたというか・・・」

顔が赤くなっているのが分かる、だが今の場合では仕方ないだろう

好きだった人にいきなりキスをされたら誰だってそうなるはずだ

イン「・・・ステイルは優しいから・・・きっと、他の素敵な人を見つけられるかもしれないよ?」

ステイル「君以上に素敵な女性なんているものか、いないよ」

イン「私じゃ、ステイルに釣り合わないかもしれないよ?」

ステイル「まさか、君のほうがずっと優しくて素敵さ」

イン「・・・私・・・もしかしたら、ステイルに迷惑掛けちゃうかもしれないよ?」

ステイル「はは、迷惑事には慣れてるさ」

イン「・・・もしかしたら」

もしかしたら、と小さな声でインデックスが呟く

イン「もしかしたら、ステイルのこと・・・幸せに出来ないかもしれないよ?」

ステイル「・・・」

なんて深いところまで考えているのだろう、ステイルは感心した

告白された時に、ここまでしっかり未来を考えられる女性が世の中にどれ程いるだろう

ステイル「心配ないさ、そんなこと」

この少女を好きになってよかった

この少女でなければ、ここまで命を賭けたいなんて思えただろうか



728 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 11:01:17.52 ID:44GbrwKs0
無理だったはずだ

彼女だから

インデックスだから


ステイル「君となら、不幸になっても構わない」



神裂「失礼します」

トントン、と部屋のドアがノックされたのに驚いて、二人は体を離す

ステイル「あ、あぁ、なんだい」

神裂「インデックス、いましたか」

イン「あ、かおり!」

神裂「・・・?なんだか、二人の距離が妙に近いような・・・」

ステイル「あ、いや・・・」

イン「私達、今日から恋人なんだよ!」

ステイル「!イ、インデックス・・・」

イン「?恥ずかしいことなんかじゃないもん」

神裂「ステイル・・・」

ステイル「・・・すまない神裂、その・・・君を仲間外れになんかしない、ただ・・・」

神裂「・・・やっと、伝えられたのですね」

ステイル「!」


729 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 11:02:04.98 ID:44GbrwKs0
そうだ、とステイルは思い出す

ステイルがインデックスを守り続けていたことを一番理解しているのは神裂ではなかったか

インデックスの記憶がない昔から、ステイルと神裂は一緒に彼女を救おうとしていた

だとしたら、神裂は誰よりもステイルの気持ちに気付いていたはずだ

それは恐らく、ステイル本人よりも

神裂「・・・おめでとうございます」

ステイル「・・・ありがとう」

神裂「あなたなら・・・いつかきっと伝えられるとは信じていましたよ」

ステイル「・・・」

神裂「インデックス、ステイルは・・・昔から、あなたを思い続けていました」

イン「・・・うん、記憶にはないけど・・・でも、なんだか分かるんだよ」

神裂「・・・あなた達なら、幸せになれるはずです」

気のせいか、神裂の声が震えている

ステイル「か、神裂?」

神裂「うっ・・・な、泣いてなどいません!」

イン「!もしかしてかおり、嬉しかったのかな!?」

神裂「あ、当たり前ではないですか!二人が・・・」

ステイル「なるほど、つまり僕達がこうやって恋人になれたことに感動しているのか」

神裂「そ、そうですが・・・泣いてなどいません!」

イン「あはは、目が潤んでるんだよ!」

神裂「あ、汗が目に入ったのですよ!」

730 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/11(月) 11:05:15.47 ID:44GbrwKs0
ステイル「苦しい言い訳だな」

イン「ホント、そうなんだよ!!」

神裂「あ、あまりからかわないでください!!!」




三人の笑い声が響く部屋の外

廊下の壁に背を預けていた一人の女性が、小さく笑う

長い髪の毛に、美しい瞳

とても年齢相応には見えない、女性が


ローラ(全く、こんなに大声ではしゃがれては迷惑なりけるのよ)

ローラ=スチュアート

インデックスが記憶を消さなければならなくなった、原因を作り出した張本人

イギリス清教最大主教だ

ローラ(…ステイルのヤツ、いつの間にかそんな色恋沙汰に興味を持つようになっていたとはね)

小さく笑ってから、扉を開けようかと躊躇う

躊躇った、のだ

もし、今部屋の中に入ればステイルは苦い顔をするだろう

インデックスの件で、ステイルは彼女に大きな憎しみを抱いている

ここで部屋に入れば、きっと今の幸せなムードも壊れてしまうだろう

ローラ「…」

だからこそ、彼女はそこをすぐに立ち去る

寂しそう、というほどではないが少し残念そうに

ただ、やはり笑顔は浮かんだままだった

ローラ(そういえば・・・学園都市には綺麗な結婚指輪を売っている店があったはず)


アレイスターにでも頼んでみるか、と


ローラ(ふん、昔の詫びの記しとして買ってやってもいいやもしれぬのよね)



731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/11(月) 13:13:25.46 ID:5g8rVJMc0
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/11(月) 17:17:53.09 ID:RCDBUB62o
これは、二人がイチャイチャしてるのを見て
彼氏が居ないからイライラしてしまうかんざきさんじゅうはっさいの姿が見れるわけだな
733 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:39:28.42 ID:B4cAGQEY0
少し暗い部屋の中、ステイルは一人作業を進めていた

とは言っても、昼間までのめんどくさいという気持ちはなかった

インデックスと恋人になれた

恋人に

ステイル「あぁぁぁ!現実になってみるとなぜだか照れ臭い!」

頭を掻きむしるが、事実は事実だ

ステイル「イノケンティウス!」

イノ「なんだよ」

書類を燃やさないように気を遣いながら、イノケンティウスが姿を現す

ステイル「どうしよう、付き合うことになったよ!」

イノ「んなこと知ってるっての」

ステイル「やっぱり、キスとか沢山するんだろうか!?」

イノ「その先までな」

ステイル「さ、先?」

イノ「お前にはまだ早いよステイル」

ふふん、と不敵に笑うイノケンティウスは、何かステイルが知らない世界を理解している

ステイル「はぁ・・・でもよかった、なぜだかとても満たされた気持ちだ」

イノ「これからさらに満たされるのさ、今なんて序の口だ」

ステイル「これ以上の幸せがあるのかい?」

イノ「あるさ、これからずっと」

ステイル「・・・そうか」




734 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:39:55.96 ID:B4cAGQEY0
嬉しいな、とステイルが笑う

インデックスとその幸せを共有できることが、何より嬉しい

ステイル「・・・ありがとう、君に背中を押されなかったらまだ僕は迷っていただろう」

イノ「そうかい、だがお礼なんていらないから、俺がヤキモチ妬いちまうくらい幸せになってくれや」

ステイル「・・・本当にありがとう」

ステイルが頭を下げる

魔術師がただの使い魔にそんなことをするなんて、不思議なことだ

ステイル「・・・ありがとう」

イノ「ただ、なぁ」

ステイル「?」

イノケンティウスが少しばかり顔をしかめる


イノ「神裂は今頃、やけ酒だろうな」





建宮「・・・女教皇、飲み過ぎなのよな」

神裂「・・・これでステイルとインデックスもリア充というものの仲間入りですよ・・・」

天草式清教のために用意された日本風の部屋

そこで、神裂は天草式の仲間とくだを巻いていた

五和「・・・たしかに、それはちょっと複雑ですよね・・・私だって正直上条さんが恋人出来たって知った時は病みましたし」

建宮「今でも病んでる気がするのよなぁ」


735 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:40:25.03 ID:B4cAGQEY0
五和「あぁ?」

建宮「う、嘘だよーん!建宮さん得意のアメリカンジョークなのよな!」

対馬「あなた、そんなの得意じゃないでしょう」

建宮「ここはフォローが欲しかったかな!」

神裂「・・・あなた?」

対馬「?」

神裂「対馬、あなたは昔は建宮のことをさん付けで呼んでいましたよね」

対馬「あ、いえ・・・今はただ流れの上であなた、と」

五和「へぇ、二人ってそういう関係だったんですか、へぇ」

建宮「あ、あれれ?なんか有り得ない誤解をされている!?」

神裂「いえ、別に・・・あなた方が恋人同士であっても私は仲間として応援しますよ」

建宮「違う違う!」

神裂「全く・・・リア充と言われる人達はどうしてそうも人前で堂々と幸せを見せ付けるんですかね、幸せを掴めていないいけず後家に大して無言の嫌みという物でも与えたいのでしょうか」

五和「全くですよね、キスしたいなら自分達しかいない時にしろって言いたいです」

対馬「だ、だから私達はそんな関係じゃないですから!」

建宮「そ、そうそう!大体俺はあんまり貧乳にはぐっとこないのよな!」

対馬「だ、誰が貧乳ですか!」

建宮「お前が貧乳なのよな!」

五和「相手の体のことまで理解してるなんて、相当先まで進んでるんですね」


736 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:41:04.10 ID:B4cAGQEY0

神裂「建宮、責任はしっかり取りましょうね」

建宮「違うのよなぁ!っていうか二人とも飲み過ぎ!体の70%がアルコールになっちゃうのよな!」

対馬「ったく・・・女教皇様、そんなに悔しがらなくてもいいではないですか、女教皇様は魅力的ですから」

神裂「・・・魅力的、ですか」

建宮(よく言った対馬!)

対馬(これで元気に・・・)


神裂「だったらどうして私には恋人が出来ないのでしょうか・・・」

建宮「逆効果!」

五和「女教皇様、こんな人達には私達の苦労は分かりませんよ、なにせリア充ですから」

神裂「あぁそうでしたね、すいませんね、いけず後家の話なんかにリア充様を巻き込んでしまって」

互いに酌を交わし、二人は更に酒を飲む

対馬「だ、だから違います!私はもっと清潔な人が好きなんです!」

建宮「うわぁ!まるで建宮さんが清潔じゃない、みたいに聞こえる言い方!胸と過去が傷付けられた!」

対馬「あぁ!大体なんですか、その無駄に長いズボンの裾は!どこのギャングスターなんですか!」

建宮「いやいやこれは魔術的・・・」

五和「仲がよろしくて結構ですね」

神裂「さすが恋人は違いますね、私には理解出来ませんよどうせ」

建宮「そんなに卑屈にならないで欲しいのよな!」

神裂「・・・羨ましいですよ、えぇ」

五和「・・・はぁ、建宮さんと対馬さんもリア充ですか・・・」

対馬「だ!か!ら!私は!こんな不潔な人は寧ろ嫌いなの!」

737 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:41:59.99 ID:B4cAGQEY0
建宮「ま、待って待って!さりげなく俺を嫌いって言わないで!」

対馬「あぁもう!この際だから言いますよ、あなたのその変な髪型はなんなんですか!」

建宮「いやいや魔術的要素・・・」

五和「喧嘩する程仲がいいんですね、分かりますよ・・・女教皇様、一杯どうぞ」

神裂「ありがとうございます・・・全く、見せ付けてくれますね」

建宮「あぁもう!俺だって対馬みたいな女はタイプじゃないのよな!」

五和「へぇ、じゃあ誰みたいな女性が好きなんですか?」

建宮「だ、誰って・・・」

神裂「やっぱり対馬が好きなんでしょう?だから他の女性の名前を言えないと」

建宮「い、いや、そうじゃなくて・・・」

五和「じゃあ、誰が好きなんですか」

建宮「・・・女教皇は大人っぽくてしっかりしてる、五和は気が利いて一緒にいるだけで幸せになれる、二人だって魅力的・・・」

神裂「うっせぇんだよド素人が!」

バン!と机を叩き、神裂が立ち上がる

建宮「待って!なんか女教皇ってばキャラが違う!」

対馬(完全に酔ってるわね)

神裂「私達をどう思うか、なんて聞いてません!あなたは、誰が好きなんですか!?私は上条当麻でしたよ、えぇ!」

五和「私だって上条さんでしたよ・・・」

建宮「そうやってチビチビ酒を飲むのは悲しいのよな!」

五和「ごまかさないで下さい」

建宮「う・・・」


738 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:42:39.60 ID:B4cAGQEY0
対馬「建宮さん、ここはもう答えるしかないみたいですよ」

建宮「だ、誰って言われてもなぁ・・・」

建宮がはぁ、とため息をつく

誰が好きなのか、なんて聞かれても困る、だって別に好きな人はいないから

五和「・・・」

建宮「あ、ま、まぁ・・・五和かな」

五和「へぇ、五和さんですか」

グビグビ、と酒を口に含んだ五和が


ぶーっ、とそれを吹き出した

対馬「ちょ、ちょっと!いきなり吹き出さないでよ!」

五和「わ、私ってどういうことですか建宮さん!」

建宮「い、いや、ほら?五和って魅力的だし?」

神裂「五和ぁぁぁぁ!あなたも裏切り者ですか!」

五和「こ、困りますよ!私、建宮さんとか予想外過ぎて!」

建宮「・・・あ、いや・・・俺もまぁ、そんな目茶苦茶本気なわけじゃないし・・・」

五和「うわぁぁぁぁん!」

建宮「はぁ!?な、なんで泣くのよな・・・」

対馬「建宮ぁぁ!てめぇ、五和の心を弄びやがってド畜生が!」

神裂「ちょっと表出ろや!」

建宮「待って待って!対馬はともかく女教皇はまずい・・・あ、やめ・・・やめてぇぇ!」









建宮「いやぁぁぁぁ!」










739 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:43:09.15 ID:B4cAGQEY0


イン「・・・」

インデックスは、ベッドの中で一人微笑んでいた

やっと、ステイルが、自分に気持ちを伝えてくれた

イン(分かってたんだよ、ステイル)

ステイルが自分のことを愛していたことくらい

気付かれていない、なんて彼は思っていたのだろうか

そうだとしたら、あまりに純粋過ぎる

イン(・・・)

だが、敢えて彼女は待ったのだ

彼がそれを、自分の言葉で伝えてくれる時を

どれ程待っただろうか、長い時間だった

その時間の中で、インデックスも愛情を深めていったのだ

最初は、上条とステイルの乗った天秤は、明らかに上条の方に傾いていた

いつからだろうか、少しずつそれは動き出し、ある時全くの均衡を保ったのだ

丁度その時が、彼女にとっては一番苦痛でもあった

上条を愛したままでいいのか、という迷いや、ステイルを今更愛していいのかという罪悪感

その期間は長かった、本当に長かった

やがて、その天秤はまた動き始め、ステイルの方へと傾いていった

そうなったら、後はずっと思いが深まるだけだった


740 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:43:49.12 ID:B4cAGQEY0
今はもう、上条に対しての恋愛感情さえ無くなっていたのだ

イン(・・・不思議なんだよ)

初恋は叶わない、という話を前に聞いたことがある

叶わないからこそ、それはいつまでも輝きを失わずに心の中で在り続けるのだと

だとすれば、それは例え叶わなくても何の問題もないのではなかろうか

初恋ではない、ステイルへ対する恋が、こんなにも彼女を幸せにしているのだから

イン(大好きだよ、ステイル)

明日、神裂と三人で会うことになるだろう

その時にはまた、ステイルに、溢れる思いを伝えよう






五和「うぷ・・・」

五和は、自分の部屋へ帰ろうとしていた

していた、というのは飲み過ぎたせいで彼女の体は動かず、精神だけが部屋へと向かっているからだ

神裂と対馬は既に部屋へと帰った、五和と建宮は残って飲んでいたというわけだ

建宮「ったく、お前さんは飲み過ぎる癖があるのよな」

五和「ほっといて下さい・・・」

また一人、自分の知り合いでカップルが成立したのだ

焦りやら嫉妬やらで、彼女の心は掻き乱されていた

男というのは嫉妬をしやすく、女というのは嫉妬が深い生き物だと言う

まさに、今の五和の嫉妬は深い物だった

五和「あーあ・・・私も素敵な恋がしてみたいです」

建宮「ここに素敵な相手がいるのよな!」



741 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:44:22.86 ID:B4cAGQEY0
建宮が自分を指差して笑うが、五和はそれを無視する

どうせさっきのように冗談なんだろう、と思って

五和「・・・建宮さん、あんな冗談はもう言わないで下さい」

建宮「冗談?」

五和「自分が必要とされている、なんて冗談は冗談だと分かった瞬間が辛すぎます」

建宮「あぁ、もしかしてさっきの告白みたいなやつのことか」

五和「・・・別に、あなたはそんなに重く考えてはいなかったんでしょうが」

いじけた様に酒を飲む五和を見ながら、建宮は考えた

そういえばいつからか、神裂よりもこの少女といる時間が長くなったのは

昔は、彼女が上条に恋をしているのを知っていて、それをひたすら応援していた

だが、彼女の恋はもう終わったのだ

応援する必要はない、ならどうして建宮はまだ五和といたいと思うのか

建宮(いーや、なんで、なんて分からない振りは俺らしくないな)

分かっている

建宮は恋をしているのだ、この少女に

建宮「冗談なんかじゃないのよな」

五和「信じられませんよ、そんなの」

さっきだって冗談だったんですから、と五和が言うのは正論だ

論に論で返すのは馬鹿げたことだ

ならば

論より証拠、だ



742 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:45:03.23 ID:B4cAGQEY0
建宮「五和」

五和「はい・・・」

建宮の真剣な声に顔を上げた五和

その唇を、建宮は奪った

無理矢理なはずなのに、とても優しく

五和「!?な、何を・・・」

建宮「嘘なんかじゃない」

五和「な、ななな!?」

建宮「俺はお前さんが好きなのよな」

五和「ど、どうして!?っていうか、どうして!?」

パニック、という言葉が今の五和には似合っている

建宮「お前さんのことが好きだからだ」

五和「ま、待って下さい!そんな、いきなり・・・」

建宮「お前は俺のこと、嫌いなのか」

それでも構わない、建宮は思っていた

五和の答えがどんな物だろうと、伝えたことは間違いじゃないと信じている

伝える前に恋が終わってしまう悲しさを、誰よりも間近で見たのは建宮だから

そしてその少女の健気な姿に惹かれたのもまた



建宮だったのではないか

743 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:45:48.77 ID:B4cAGQEY0
建宮「好きだ」

五和「だ・・・駄目ですよ、私・・・だ、だってまだ上条さんに未練を持ってるような女なんですよ!?」

建宮「百も承知だ」

五和「だ、だったらなんで・・・」

建宮「お前さんが好きだからだ、上条に敵う、敵わないなんてことは些細なことだ」

五和「あ・・・」

建宮「・・・お前はまだ、上条が好きなのか」

五和「わ、分かりませんよ・・・」

建宮「・・・五和」

五和の手を握り、建宮が真剣な表情で伝える

建宮「俺は、お前を身近で見てきた、お前の魅力を、お前の短所を、少なくともそこらのヤツよりは知っている」

五和「・・・建宮さん」

建宮「・・・短所はたくさんある、酒癖は悪いし、上条のことになると盲目的で、しかもはやとちりするときた」

五和「そ、それは・・・」

建宮「そして、誰よりもその短所を愛してる自信がある」

五和「!」

五和の顔が真っ赤になったのは、酒のせいなのか

いや、そんなんじゃない

建宮「五和、お前がもしも上条のことを、今でも一番に思ってるなら」



建宮「俺は、いつかお前の一番になってみせる」


シンとした部屋の中に、建宮の低い声が響いた

建宮「上条を超えるくらいいい男になる、そしてお前にもう一度思いを伝える、絶対に」


744 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/12(火) 16:47:09.03 ID:B4cAGQEY0

五和「な、なんで・・・そんなに、私のことを・・・」

建宮「・・・お前さんだからだ」

それ以外に言えるわけはない

その、「五和」という人物の持っている全てが、建宮にとって愛しいのだから

どうしてなのか、なんて言えるわけはない

建宮「五和、俺はお前が好きだ」

最後にもう一度、言葉にする

五和「わ・・・わ、私はまだ・・・その、まだ、他の恋に進める気は・・・」

建宮「・・・そっか」

五和「・・・建宮さんの気持ちは嬉しいです、その・・・だから」

五和がぎゅっ、と建宮の手を握った



五和「今の建宮さんの言葉を忘れたくないので・・・たまに、私に好きだって言って下さい」

建宮「・・・あぁ、あぁ!」




五和「ま、まぁOKするとは限りませんが!」

建宮「えぇぇぇ!?」

五和「それより、飲みましょう!!」

建宮(明日には酔って忘れてるパターンなのよなこれぇ!!!)

五和「ぷはぁ!!!」

建宮「もう飲んでるぅぅぅぅ!!」



745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/12(火) 18:05:58.96 ID:Ea0D+RR4o
これで付き合っちゃったら神裂さん死んじゃうんじゃね?
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/12(火) 18:47:54.51 ID:EC5aGCbV0
まだ対馬がいる!
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/12(火) 21:11:26.44 ID:BDuGsRRro
騎士団長、出番ですよ!!

それはともかくインデックスとステイル、おめでとう!!!
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/12(火) 21:57:28.62 ID:QyNEUXxV0
神裂さんじゅうはっさいをそこまで追い詰めたいのか……

止めはしない
749 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:51:40.66 ID:gXUd6p8X0
翌朝

神裂「・・・」

対馬「・・・」

建宮「あ、あはは・・・なのよな・・・」

五和「・・・そういうことです」

五和と建宮が、二人に自分達の昨晩の会話を伝えた

神裂「つまり・・・お二人は付き合う、と」

建宮「ち、違う違う!まだなのよな!」

対馬「あら、でも五和も嫌ではないんでしょ?」

五和「ま、まだ正しい答えが見つかりませんし・・・」

神裂「ふ、ふふふ・・・」

建宮「女教皇・・・?」

神裂「うわぁぁぁん!」

五和「プ、女教皇様!?」

神裂「まさか・・・まさか、インデックスとステイルだけではなくお二人までが私の先に行くなんて!」

大泣きしながら、神裂が机に突っ伏す

建宮「ち、違う違う!女教皇だってすぐに・・・」

神裂「いいんですよそんな下手な慰め・・・」

対馬「・・・それで?その付き合いたてホヤホヤなお二人はこれからどこに?」

五和「ど、どこにも行きませんよ?」

対馬「・・・」



750 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:52:11.89 ID:gXUd6p8X0
建宮(!アンダースタンド!建宮さんったらアンダースタンド!理解しちゃったぁ!)

建宮「五和!俺がデートに連れていってやるのよな!」

五和「は、はい!?」

建宮「ほらほら!行くの行くの!」

無理矢理に建宮が五和を引っ張る

部屋に残されたのは神裂と対馬の二人

気まずい、気まずいぞ、と対馬の額には冷や汗が流れる

対馬「女教皇様、あんまり気にしないほうが・・・」

神裂「・・・対馬・・・私はこれからインデックスとステイルと、出掛けなければなりません」

対馬(う、うっわぁ・・・泣きっ面に蜂ってヤツ・・・)

神裂「・・・対馬、あなたは・・・まだ、恋人なんていませんよね」

対馬「はい、私は・・・あんまりそういうのに興味ないので」

神裂「・・・興味がない・・・?」

対馬「はい、だってそういうのは・・・その、やっぱり誰かに支えてほしいって思う人がするものじゃないですか」

対馬の熱弁、それに神裂は涙が流れそうだった

対馬「恋人がいないからなんですか!そんなの私だっていませんよ、でも私は不幸だなんて思いません、だって私は!」

ぐっ、と対馬が手を握る

対馬「女教皇様の元で生きていられるのですから!」

神裂「!」



751 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:52:37.81 ID:gXUd6p8X0
対馬「ですから、あまり気を落とされないで下さい」

神裂「・・・ありがとうございます、対馬」

目元の涙を拭ってから、神裂が立ち上がる

やっと、心の靄が晴れた気がする

神裂「帰ってくるのは・・・恐らく夕方でしょう、それまではここをお願いします」

対馬「任せて下さい」

神裂「では、行ってきます」

手を振ってそれを見送った対馬は、一人ため息をついた


対馬「彼氏ほしい・・・」





ステイル「・・・やぁ、神裂」

神裂「すいません、待たせてしまいましたか」

イン「かおり!」

ぎゅっ、とインデックスが神裂に抱き着く

神裂「全く、あなたは昔から甘えん坊ですね」

イン「やっとかおりと遊べるんだよ!」

神裂「ふふ・・・あなたは、ステイルがいればまずは幸せなのでは?」

イン「・・・でも、かおりがいないと寂しい!」

神裂「!」

インデックスの優しさにも、神裂は涙が溢れた


752 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:53:10.35 ID:gXUd6p8X0
ステイル「それじゃ、まずはカフェテリアに行くかい」

神裂「・・・えぇ!」

あぁ、彼氏なんていないけど

自分はなんて幸せなんだろうか

神裂は自らの恵まれた環境に、涙を流した




神裂はリア充を見て涙を流した

目の前では、インデックスがステイルに「あーん」何て言うベタなことをしている

それがなぜか、とても羨ましく感じる

神裂「・・・」

イン「?どうしたのかおり、さっきからずっと見てるけど」

ステイル「もしかして、これが食べたいのかい」

神裂「・・・え、あ、いえ」

ブンブンと首を振って、神裂がどうにか頭の中を整理する

イン「はい、ステイル!」

ステイル「・・・こういうベタベタした行動はあまり・・・」

イン「あーん!」

ステイル「・・・あーん」

神裂(あーん・・・)

スト様が死んだ

神裂は、一人涙を流した


753 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:53:48.44 ID:gXUd6p8X0


神裂「あぁぁぁぁ!」

帰ってきた神裂は涙を流した

対馬は、またか、と呆れたような表情さえ浮かべている

対馬「もう・・・あまり気にしなくていいんですよ」

神裂「だって・・・だって!インデックスが!ステイルに!あーんとした時に!二人の間にはあったのですよ!」

対馬「・・・何がですか?」

神裂「揺るぎない愛がですよ!」

あぁぁ!羨ましい羨ましい!と狂ったように神裂が叫ぶ

対馬「・・・はぁ、ですから女教皇様は十分魅力的なので・・・」




建宮「ただいま戻ったのよなぁ!」

五和「ただいま・・・」

対馬「アンタ達はどうしてこうもタイミングとか空気って物を読まないのかしら!」

建宮「あ、あれ?女教皇ったらなんか泣き出しそうな顔してるのよな」

五和「何かあったんですか?」

神裂「・・・何かあったのか、ですって!?」

ギロリ、と神裂が二人を睨む

あ、キャラ崩壊だ、なんて考えたらいけないことを二人は考えた

神裂「ありましたとも!そして今も現在進行形で私の目の前にあるところですよ!」

建宮「・・・何があったのか聞かせてほしいのよな」


754 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:54:26.35 ID:gXUd6p8X0
対馬「インデックスさんとステイルさんのいちゃつきぶりを見て悲しくなったみたいなんです」

五和「女教皇様、あんまり気にしないほうが・・・」

神裂「うぅ・・・五和、あなたも味方だと思っていたのに・・・」

五和「わ、私はまだ建宮さんを認めてなんかいませんから!」

建宮(俺ってば昨日から間接的なダメージ喰らいすぎなのよな)

対馬「・・・女教皇様、あなたはあなたのペースで相手を見つければいいんですよ」

神裂「ふふ・・・こんな仕事に出会いの場なんてありませんよ・・・」

対馬「ナ、騎士団長なんかは・・・」

神裂「彼は第二王女がいますから・・・」

対馬「う・・・そうですね、では・・・アックア、とか」

神裂「有り得ません」

対馬「・・・じゃあ、誰がいるんですか」

神裂「いないんですよ・・・」

ははは、と渇いた笑いを神裂は浮かべる

建宮「と、とにかく俺達は部屋に帰るのよな・・・」

対馬「ま、待って!あなた達も女教皇様の相談に乗ってあげてよ!」

五和「でも私達がいても傷をえぐるだけでは・・・」

神裂「五和、後で屋上な」

五和「いいだろう、望むところが」

建宮(奇妙な友情なのよなぁ)

対馬(違う、絶対に)


755 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:55:15.38 ID:gXUd6p8X0


神裂「・・・」

突っ伏した神裂、それを心配そうに見つめる対馬

気まずい

対馬「・・・女教皇様」

神裂「・・・対馬、一つ尋ねていいですか」

対馬「は、はい!」

神裂「やはり、男性との出会いは難しいですよね」

対馬「そうですね・・・」

神裂「・・・」

すすっ、と神裂が対馬の横に移動してくる

神裂「では、女性にターゲットを変えてみたらどうなんでしょうか」

対馬「・・・」




対馬「はい?」

神裂「女性同士でも出来る、という話を土御門から聞いたことがあります」

対馬「ま、待って下さい!それは出来る出来ない以前に倫理として・・・」

神裂「対馬は私が嫌いですか・・・」

対馬「涙目で聞かないで下さい!嫌いなんかじゃないです!でも恋愛感情はないですよー!」

神裂「・・・対馬、私・・・無理矢理奪うっていうのも、有りかと思います」

対馬「ダ、ダメですから!無し、無しです!無し・・・」

神裂「対馬・・・私の刀で・・・一緒に、気持ち良く・・・」


756 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:55:45.08 ID:gXUd6p8X0
対馬「暴走してる!女教皇様が嫉妬のあまり冷静な判断力を失って・・・」

神裂「対馬・・・いい、ですよね?」

対馬「よ、良くないです!良くない・・・あ、い、いやぁぁ・・・」



対馬「ハーーーーンッ!」






ステイル「・・・」

更に翌朝

インデックスは小さな旅行鞄を抱え、空港に来ていた

学園都市へ向かう便はそろそろやってくる頃だ

名残惜しいが、やはり一度学園都市には帰らなければならないのだ

イン「・・・ねぇ、ステイル」

ステイル「なんだい」

イン「・・・私、こっちで暮らしたい」

ステイル「!い、いいとも!是非そうしてくれ!」

イン「・・・でもね、学園都市にもお世話になった人がたくさんいるんだ、だからその人達にお礼を言い終わってからになるんだよ」

ステイル「構わないさ、いくらだって待てるよ」

イン「・・・ありがとう」

アナウンスが、学園都市行きの飛行機が到着したことを伝える


757 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:56:20.51 ID:gXUd6p8X0
ステイル「・・・それじゃ、一旦お別れになるかな」

イン「・・・あのね、ステイル」

ステイル「なんだい?」

イン「・・・私、子供って羨ましいって言ったよね」

ステイル「あぁ、自分の気持ちを言葉に出来るから、と」

イン「私、大人が羨ましいって言ったよね」

ステイル「あぁ、自分の気持ちを相手に伝える術を知っているから、と」

イン「・・・でもね、ステイル」

笑顔で振り返ったインデックスが、幸せそうな笑みを浮かべて言う

イン「大人でも子供でもないから、私はきっとステイルに伝えられたんだよ」

ステイル「・・・」

イン「・・・この、青春のさざ波の中で」

ステイル「あぁ、分かっている」

イン「・・・だからね、私は・・・今の時間が大好き、ステイルといられる時間が」

だから、その時間を守ってほしいと

イン「今から・・・ちょっとだけ、学園都市に行くけど・・・でも、一緒だよね?」

ステイル「あぁ、一緒さ」


心の中に、いつも相手がいるのなら

イン「・・・行ってきます、ステイル」

ステイル「行ってらっしゃい、インデックス」

強く抱き合った二人

758 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:58:15.42 ID:gXUd6p8X0
真っ青な空を飛行機が飛んでいく

どこかへ飛んでいく、鳥のようなそれを、ステイルは笑顔で見つめていた

ステイル(・・・インデックス、待ってるよ)


神裂「・・・すいませんでした、少しばかり冷静さを失いました」

対馬「いえ・・・一歩手前で踏み止まれたので大丈夫ですよ」

神裂「・・・」

対馬「・・・」

神裂・対馬「・・・」

上下関係なんてそこにはなかった

がっしりと肩を組んだ二人が、全く同じようにため息をついた


神裂・対馬「彼氏ほしい・・・」



建宮「五和…女って辛いのよなぁ」

五和「そりゃそうですよ…でも、男性だって辛い時は辛いですよね」

建宮「…あぁやって、独り身でいるのはこりごり…」

五和「…建宮さんもまだ独り身じゃないですか」

建宮「ワーオ!!冷たいね!!!!」



神裂・対馬「黙れリア充がぁぁ!!!」


建宮・対馬「ひぃっ!?」



イギリスの恋達編、終了
759 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:58:49.72 ID:gXUd6p8X0
上条「・・・」

真っ暗な夜道

上条は静かなその夜道を一人で歩いていた

普段なら隣に美琴がいるはずなのだが、今はいない

というのも、「たまには常盤台の寮にも帰らなきゃいけない」らしく、彼女が久しぶりに常盤台の寮に帰っているからだ

一ヶ月ぶりだろうか、上条の部屋に寝泊まりすることをほぼ黙認されているらしい美琴

上条「・・・はぁ、不幸だ」

ポケットを触りながら、上条がため息をつく

彼がこんな時間に散歩をしていたのには、ほんの小さな理由があった

美琴に「プレゼント」を買ってあげたかったのだ

いや、買ってあげたかった、と言うよりはもう買った、のだが

上条(・・・わざわざこんな遠い店に買いに来たのが間違いだったな・・・)

夜に開いているアクセサリー店なんて、上条の寮の近くにはなかった

そのためバスを使ってここまで来たのだが、帰りのバス代を忘れてしまったという始末だ

プレゼントは買えたので、まぁ不幸はオマケだったと考えるべきか

むしろプレゼントを買う前に一気に金を落とさなかった辺り、もしかしたら今日の上条はツイているかもしれない

それくらい、彼は不幸なのだ

上条「・・・喜んでくれるかな、美琴」

ぽつりと呟きながら、上条は微笑んだ




美琴「何が?」



760 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:59:22.63 ID:gXUd6p8X0


上条「どぅえええ!?」

美琴「な、何そんなに驚いてるのよ」

上条「な、なんで!?」

突然、彼の後ろに美琴が現れたのだ

衝撃的だ、突然にして自分が先程まで頭に思い浮かべていた女性が現れたのだから

新たな能力に目覚めた上条当麻、うーんなんとも素敵、なんて言っている場合ではなかった

上条「なんでここにいるんだよ!?」

美琴「なんでって・・・ここ、常盤台の寮の近くよ?」

上条「いやいや!近くって、ここ学び舎の外だから!」

美琴「あぁ、今日帰ったのは学び舎の外のほうじゃない寮だし」

上条「違う違う!女の子がこんな時間になんで出歩いてるんだよ!?」

美琴「・・・そ、それはほら!こう・・・」

上条「・・・あれ、なんかお前の服・・・猫の毛みたいなのが付いてるけど」

美琴「あ、あはは・・・実は、夕方に可愛い猫を見つけて・・・しかもその子、私の電磁波に怯えてなかったのよ!」

上条「は、はぁ」

美琴「その子を寮に一旦は連れ帰ったんだけど、寮は猫禁止だからさ・・・仕方なく、今日は近くのペットホテルに預けて来たってわけ」

上条「・・・その帰りというわけでいいのでしょうか」

美琴「うん・・・それで、当麻はなんで?」

上条「なんでってそりゃおま・・・」


761 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 15:59:50.15 ID:gXUd6p8X0
えぇぇぇ!と叫んだ上条に少しだけ美琴は驚いた

上条(危ない危ない!サプライズがサプライズじゃなくなるとこだった!プレゼントのことは隠さないと・・・)

美琴「あれ、なんかポケットに入ってる?」

上条「!?」

反射的にポケットに触れる

そこに美琴へのプレゼントである「ヘアピン」が入っているわけだが、さすがにポケットに箱ごと入れたら目立つらしい

上条「あ、あぁ!まぁ・・・」

美琴「・・・何が入ってるの?わざわざこんな所まで持ってくるなんて」

上条(持ってきたんじゃなくて買った帰りなんですよ!)

不幸だ

ここに美琴が現れるなんて不幸以外の何物でもない

美琴「ねぇねぇ、何が入ってるの?」

上条「こ、これは・・・その・・・」

美琴「?」

上条「は、はは・・・」

上条の頭に咄嗟に浮かんだ選択肢は三つ

一つ、友達へのプレゼントなんだ、と適当にごまかす

一つ、ここでプレゼントを渡してしまう

一つ、そんなことよりデートしないか?と提案してはぐらかす


762 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/13(水) 16:01:21.27 ID:gXUd6p8X0


上条が選んだ選択肢は



上条「お、教えられない!」


逃げる、だった

人間とは時として理論では説明出来ないことをする

美琴「ま、待ちなさいよ!なんで逃げるの!」

上条「そ、それは言えない!」

美琴「!な、何よ!隠し事・・・もしかして、なんかまた問題抱えてるんじゃないでしょうね!?」

上条「あーあー!そんなんじゃないから今日は見逃して・・・」

美琴「アンタがそう言う時は大抵何かあるのよ!」

上条(ありますよ、えぇありますよ!)

必死に逃げる上条と美琴

なぜだろう、これが非常に懐かしく感じる

そういえば昔は、こうやってよく追いかけっこを



たった二人で、していた


上条(…懐かしいなぁ)

そんなことを考えながら、上条は走る

後ろにいる美琴は



美琴「待てぇぇぇぇぇえええええ!!!!!!!!!」ビリビリ


思ったより怒っていた




久しぶりの追いかけっこ編終了


763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/14(木) 15:07:22.97 ID:pJQqSN7k0
ていとくんの声が鈴村健一さんでしか再生されない俺はおかしいのだろうか
764 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/14(木) 16:50:57.84 ID:ZAaORdEs0
上条「はぁ・・・ち、ちくしょう!不幸だ!」

追いかけっこが始まって、早30分

そういえば、昔はよくこんなことをしていたと美琴から聞いた

上条(昔の俺はどんだけタフだったんだよ!)

頭を抱えながら、後ろから全速力で走って来るビリビリ女を見る

美琴「待てって言ってんでしょ!待ちなさい!」

上条「待ったらきっと俺は殺されるんだろうが!」

美琴「当たり前でしょうが!」

上条「否定しないなんて素晴らしい!」

ポケットの中のプレゼントを、美琴に知られてはいけない

上条にだって、サプライズの素敵さくらいは分かっている

だからこそ、今必死に逃げているのだ

が、さすがに足が疲れて来ている

上条「はぁ・・・ちくしょうちくしょう!」

気がつけば、河原の周りの道を一周していたらしい

とりあえずは河原のすぐそこまで迫ってみる


美琴(あ、ここ・・・)

いつだっただろうか

美琴が初めて砂鉄の剣を人に対して使った場所だった

その人、というのは言わずもがな、上条のことである

美琴(・・・懐かしい)

必死に逃げていた上条を見て、美琴はなぜだか愛しささえ感じた

そういえば、あの時間だけが、美琴にとっては「幸せな日常」だったのだな、と


765 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/14(木) 16:51:28.69 ID:ZAaORdEs0


上条「げ、ビリビリ・・・」

美琴「ビリビリ言うな!」

そんな会話をしてから、いつも真夜中の追いかけっこは始まった

上条が自分には一切手を出さずにいたことが、美琴にとっては不愉快であった

不愉快、といっても吐き気がする様な不愉快ではなく「あぁもう!今度こそ勝ってやる!」という、清々しい不愉快さだった

美琴だって、一応は年頃の女の子だった

自分の力が通用しない年上の男と夜中に二人きり、河原なんて人気のない場所に行く

もしも相手が、普通の男なら気まずすぎただろう

だが、上条は違った

自分に手を出してこないどころか、何度かは自分を送ろうか、なんて言ってきたのだ

それが子供扱いされているようで、美琴はまた怒ったのだが

美琴「私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ!」

上条「はぁ・・・いつもビリビリしてるんだしビリビリでいいだろ」

きっかけは、本当に街中で偶然出会ったことだったのだ

まさかあの時は、その青年に命を懸けるようになるなんて思わなかった




上条「はぁ・・・み、美琴!なんで追い掛けてくるんだよ!?」

美琴「当麻が逃げるからじゃない!」

そんな会話は、親密さは変わった物の、根本的な所で変わらなかった



766 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/14(木) 16:52:00.11 ID:ZAaORdEs0
上条「に、逃げてないし・・・」

美琴「私の目を見て言いなさい!」

上条「逃げて・・・ないんですが・・・」

美琴「私の目を見ろ!」

バチーン!と美琴の前髪から火花が散る

上条「ま、待った待った!電撃なんて直撃したら死ぬから!」

美琴「し、死なない程度には手加減してるわよ!」

上条「絶対大怪我必須じゃねぇか!」

美琴「どうせアンタには効かないんでしょうが!」

美琴が手を振りかぶる、ちょうど野球のピッチャーのように

しかし、手から放たれるのは白球ではなく、電撃だった

上条「どわぁ!」

右手でそれを打ち消した上条、なんとも情けない声を出す

上条「あ、あのなぁ!こんなの恋人同士の喧嘩で使っちゃいけません!」

美琴「効かないくせに何言ってんのよ!」

今度は、少しばかり威力を増しているらしい

周りの街灯がショートした

上条(ま、真っ暗になった・・・)

右手で電撃を打ち消した上条

しかし、今の暗さだと互いに相手の居場所が分からない・・・

767 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/14(木) 16:52:25.26 ID:ZAaORdEs0



上条(いやいや!美琴にはレーダーという超便利な物が!)

美琴「当麻」

ビクッ、と上条の体が跳ねる

いつの間にか、美琴は上条の真後ろに立っていた

美琴「ポケットに、何か隠してるでしょ」

上条「・・・」

美琴「なに?もしかして・・・女の子へのプレゼント、なんて言うんじゃないわよね」

上条「ま、まぁそうなりま・・・」

あ、やべぇ!と上条が咄嗟に美琴から距離を置く


美琴「へぇ・・・!女の子へプレゼントを、へぇ、それでアンタはそれを私には隠したかった、んっんー、これはどういうことかしらね」

上条「ち、違う違う!誤解なんだって!」

美琴「何がどう誤解なのよ!」

上条「それは言えないけど・・・って待て待て!なんでまた構えてるんだよ!?」

美琴「答えなさい・・・!」

浮気なんて最低!と美琴が若干涙目で訴える

まぁ、真っ暗なので涙目なのは上条には伝わっていないが

それは美琴にとっても都合が良かった

あんまり泣き顔なんて見られたくはない


768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 17:51:55.07 ID:sLX9QjG8o
>>763 同意
心理タソはまーや
769 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/17(日) 18:39:56.17 ID:3awRUQPb0
上条「だ、だから…その、あんまり美琴には知られたくないというか…」

美琴「きーっ!!だから!!なんで私には知られたくないのよ!?」

上条「そ、そりゃあ…」

上条が必死に言葉を考える

「好きな人のため」とか言ったら、どうせ美琴は勘違いするだろう

かといって、素直に「美琴にプレゼント」なんて言うわけにもいかず


上条「えーっと…み、美琴に知られたら台無しと言うか…」

美琴「ほら見なさい!!やっぱり私には言えない相手なのね!?」

バチーン!!と火花が散る

上条「ま、待て待て!!電撃と砂鉄の剣のコラボなんて、どこのセールなんですか!」

美琴「渡しなさい…そのプレゼントを…」ゴゴゴ

上条「わ、渡せないって!!っていうか、そんなに怒らないでください!!」

美琴「怒るな…ですって…!?アンタ、浮気しといて何が怒らないで、なのよ!?」

上条「あぁもう!!!」

上条が頭を振る

こりゃあ、もう言うしかないだろうなと結論が出た


上条「これは!!美琴へのプレゼントなんだよ!!!」

美琴「!?」

ボンッ、と湯気が頭から出た美琴は顔が真っ赤っかだった

もちろん、この暗闇では上条には見えなかったが

美琴「あ、え、あ、ホント!?」

上条「だから言いたくなかったんだよ!!せっかくのサプライズだったのに…」

美琴「な、なんで言っちゃうのよ!?」

上条「えぇぇぇ!?お前が急かしたのに!!!」


770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 22:55:32.58 ID:zhsWgyego
おつにゃんだよ!
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/17(日) 23:50:04.57 ID:5jrI0Eoq0
乙ですとミサカは微笑みながら言います。
772 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/18(月) 10:50:06.42 ID:ppKeAdpk0
>>771 なんだか懐かしい物を感じたりもして…



美琴「な、なんでサプライズなんか・・・」

上条「だ、だって最近美琴にちょっと構ってあげられなかったし・・・」

美琴「にゃ・・・にゃ・・・!」

バチバチ、と美琴の辺りの空気に電磁波が混じる

砂鉄の剣とかそういうのの前に、明らかにおかしな状態だ

あれれ、なんか知ってる現象だ、と上条が焦る

記憶にはないが、彼女は多分こういう時にはいつも電撃を放ってきたはずだ

それも、上条に対する敵意とかによってではなく、ただ恥ずかしさを抑えられない故に

上条(あ、あはは・・・悪気がないのにこんな電撃撒き散らすかよ普通!?)

美琴「にゃぁぁぁぁ!」

辺りの砂が巻き上がり、上条は視界が狭くなるのを感じた

上条「み、美琴!落ち着けってば!」

美琴「あ、あわわわ!」

急いで能力を制御するため、美琴が演算を開始する

上条(と、とにかく・・・サプライズはバレちゃったわけだし・・・)

頭を掻いてから、上条がもう一度考える

このまま美琴にプレゼントを渡すのは・・・


美琴「で、でもね!そうやって私に不安さを持たせるような言い方はやめなさいよね!」

上条「ぎゃ、逆ギレ!?」


773 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/18(月) 10:50:36.04 ID:ppKeAdpk0
美琴「あぁもう!なんか私一人で勘違いしてたのがムカつく!」

理不尽な理由から、美琴が電撃をぶっ放す

上条「危なっ!」

右手で打ち消してから美琴のほうを睨みつける

当の彼女は、顔を赤らめながら腕を組み、恥ずかしそうに体をモジモジとさせている

暗がりなので顔色などは分からないが、大体のシルエットくらいは上条にも見えている

上条「な、なんか怒ってないか?」

美琴「だ、だって・・・一人でこんな恥ずかしい勘違いしてたなんて・・・その・・・」

上条「あっはは!そりゃ確かに恥ずかしい・・・」

美琴「うっさい!」

問答無用、美琴の電撃が上条の真横を掠める

ひいっ!と小さく叫んだ上条を見て、ようやく美琴は満足がいったようだ

美琴「とにかく・・・私にプレゼントがあるのよね」

上条「あ、あるけど・・・今渡すのか?なんかもうちょっとしっかりした場所で・・・」

美琴「し、しっかりした場所ってどこよ」

今すぐ渡して欲しいのに、と言いたげな美琴を宥めながら、上条が提案する

上条「俺の部屋とか・・・さ」

美琴「へ、部屋!?」

上条「な、なんだよ…」



774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/06/18(月) 20:43:14.54 ID:xp+JjXYg0
御坂美琴の身柄を引き渡すのである//
775 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/18(月) 20:56:25.51 ID:ppKeAdpk0

美琴「だ、だって!!部屋ってことは、部屋ってことは…!!」

美琴の頭の中で、ぐるぐると様々な妄想が渦巻く


プレゼントを渡され、ロマンチックな雰囲気に酔う美琴

それにそっと微笑みながら、キスをする上条

外はもう、月明かりしか見えないような深夜

キスから始まった、二人の情熱は、やがてベッドの中へ…



美琴「だ、だめだめ!!!そんな方法で、私をトロトロにさせようなんて!!」

上条「…?あの美琴さん、何を言われているのか全く分かりませんが…」

美琴「お見通しなのよ、アンタのその単純な考えくらい!!」

上条「…?」

美琴「と、とにかく!!ここで渡しなさいよね!!」

上条「こ、ここでって…ロマンチックの欠片もないな…」

上条は深くため息をついた

さすがに、この何もない河原で渡すのはどうかと思うのだが…

上条「とにかくさ、その砂鉄の剣をどうにかしてくれないか」

美琴「あ、うん…」

シュン、と砂鉄の剣が消えたのに、上条はほっと安堵の息をついた

上条「…なぁ、本当にここで渡すのか?」

美琴「な、なによ…ここで渡せない理由でもあるの?」

上条「ないけどさぁ…」

美琴「ほ、ほら!!どっか適当に座ってさ!!」

上条「分かった分かった…」


776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/18(月) 21:11:20.46 ID:LYHytpjao
つまり美琴は外でヤりたいということか
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/18(月) 22:20:12.85 ID:Lj6iZtfM0
なにそれwktk
778 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/19(火) 18:45:06.21 ID:szNbNZS80
河原なんて、ロマンチックではない

上条はため息をつくが、とりあえず今は美琴の言う通りにする

しなければ、何をされるか分からない

美琴「そ、それで・・・プレゼントって、本当に私のなの?」

上条「あのな・・・上条さんは浮気する度胸なんてないし、大体美琴以上の相手なんていないの」

美琴「わ、分かってるけど・・・」

上条「だったらなんで疑ったんだよ・・・」

美琴「悪かったわね!」

なんで怒っているのかは理解出来ない・・・というかしたくないが、とりあえず上条がプレゼントの箱を取り出す

上条「・・・ヘアピンだよ、あんまり高くないし・・・それに、こう・・・指輪みたいな誓いの、ってわけでもないかな」

美琴「・・・いいの?」

上条「いいよ、美琴に着けて欲しいから買ったんだしさ」

はい、と上条が美琴に箱を手渡す

美琴「・・・」

月明かりに照らしながら、美琴はその箱を開けた

入っていたのは小さなヘアピン、星のワンポイントが少し可愛らしい代物だ

美琴「か、可愛い・・・」

上条「そっか、よかった・・・俺一人だと選ぶのに悩んでさ」

美琴「ひ、一人で選んでくれたの!?」

上条「当たり前だろ・・・そりゃほかの女の子に相談すればすぐに選べただろうけどさ」

それじゃ意味がないし、と笑う上条


779 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/19(火) 18:45:35.22 ID:szNbNZS80
上条「やっぱり・・・俺が自分で必死に、美琴に似合いそうなのを選んでさ、それをプレゼントしたかったから」

美琴「あ・・・ありがと」

美琴が早速、自分が今着けているヘアピンを外す

上条「あ、ヘアピンしてない美琴も新鮮でいいかな」

美琴「アホ毛が目立つから嫌なのよ」

上条「アホ毛?打ち止めみたいな?」

美琴「昔は私にもあんなのがあってさ・・・まぁ、今は無理矢理直したんだけどね」

説明しながら、美琴が新しいヘアピンを着けてみる

美琴「どうかな・・・?似合ってる?」

上条「そ、想像してた以上に似合ってる!」

美琴「な、なんでそんなに食いついてくるのよ・・・」

上条「いやいや美琴、恋人に自分がプレゼントした物を使ってもらえる、なんて全世界の男の夢ですよ!」

ましてやそれがかなり似合っているなんて、素敵すぎるのではないか

美琴「・・・ごめんね、私の勘違いで追い掛けたりしてさ」

上条「あぁ・・・いや、いいよ」

美琴「・・・!わ、忘れてた!私常盤台の寮に帰らなきゃ・・・」

上条「か、帰っちゃうのか?」

美琴「黒子が心配しちゃうし・・・」

上条「メ、メール!メールすれば白井がフォローしてくれるだろ!?」



780 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/19(火) 18:46:10.97 ID:szNbNZS80
美琴「そうだけど・・・まだ部屋の整理も終わってないしさ」

上条「明日すればいいじゃないか!そうそう、明日・・・」

美琴「明日は休日でしょ、せっかくの休日に片付けなんて・・・」

上条「・・・だ、だったら!」

美琴「ちょ・・・わっ!?」

上条が、無理矢理美琴を押し倒す

押し倒す、と言っても芝が生い茂っているなだらかな斜面に自分の上着を敷いてから、という優しさ付きだが

上条「こうやって押さえてたら、逃げられ・・・」

美琴「・・・」

バチバチ、と美琴の前髪から火花が・・・

上条「ま、待った待った!それはダメだって!」

右手で美琴の頬に触れる、その途端に火花は消えてしまう

美琴「な、何するつもりなのよ・・・ま、まさか外でしたいなんてマニアックな要望するんじゃないでしょうね!」

上条「違う違う!そんなつもりじゃない、決して!」

首を振って必死に否定するが、なんだかそういうことは一度言われてしまうと意識するものだ

そう言えば、最近はあんまり時間が取れなくてそういう雰囲気になることも少なかった

上条「・・・そ、外ではダメだし・・・やっぱり近くのホテルにでも」

美琴「ほ、ほら!ヤるつもりだったんじゃない、このプレゼントもそのためだったんじゃないわよね!?」

上条「違う!それだけは絶対違う!」

美琴「わ、分かってるけど!」

上条「・・・で、さ・・・ダメ?」

美琴「!」
781 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/19(火) 18:46:46.60 ID:szNbNZS80
どうすればいいのか、美琴は迷った

なんというか、ここでエッチをするとなると、「プレゼント貰ったお礼に体で返す」なんて、やらしい女っぽくなりそうだ

かと言って「イヤ」なんて上条を傷付けるようなことは言えない

上条「そ、それで・・・」

美琴「あ、あのさ・・・そういうのって、その・・・」

美琴が必死に頭を回転させる

混乱した頭が出した言葉は、よくよく考えたら当然の勘違いを引き起こす物だった


美琴「ホテルには行かないわよ!」


美琴の言いたかったことは、プレゼントは元々上条の部屋で渡す物だったらしいし、一旦上条の部屋に行こう、だった

そのあとでエッチするにしろ、しないにしろ、とりあえず上条の部屋で、となるとホテルに行くよりよっぽど寛げて、しかもムードも出る

美琴「だ、だから・・・その」

上条「み、皆まで言うな、美琴・・・」

そして一方の上条の受け取り方は、至極当然の勘違い

つまり


上条「ここでヤりたいなんて・・・」

美琴「・・・へ?」


そういうことだった


美琴「ま、待って、違う・・・」

上条「美琴」

否定する美琴の唇を、上条が強引に奪う

抗議の途中で言葉を止められた美琴に、抵抗なんて最早出来なかった


782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/19(火) 19:39:59.88 ID:26IL7I3K0
おっつー

wktk
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) :2012/06/20(水) 00:58:53.26 ID:5cb56OVz0
やっと追いついた
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/20(水) 04:41:55.83 ID:4dWflGbf0
もう確信犯だろ美琴さん・・・
785 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/20(水) 16:28:09.13 ID:JZxGR/tC0
美琴「ふぁぁ…」

目をトロン、とさせた美琴の顔がちょうど月明かりに照らされる

上条「み、美琴さんったら顔真っ赤…」

美琴「!!ち、違うわよ!!」

上条「だってさ、こんなに顔も赤いし、目もトローンって…」

美琴「こ、これは…」

上条「これは?」

首を捻る上条に、文句を言うことが出来ない

美琴「こ、こんな所でヤるなんて、アンタって変態なんじゃないの!?」

上条「な、なにぃ!?上条さん、ただでさえ学校では中学生を射止めたロリコン扱いされているのに、この上そういう趣味まで付け加えられるのか!?」

美琴「うぅ…こんなところ、誰かに見られたら…」

上条「で、でももう…止まれないような気が」

既に上条の手は、美琴の服の中で胸をまさぐっている

美琴「あう…こ、これは…その…」

上条「…」



上条(って待て待て!!今日の俺は、こういうことのためにここに来たんじゃないよな!?)

思い返せば、プレゼントを渡すために…



美琴「んっ…ね、ねぇ、キスは…もう、しないの?」

上条「」



上条(こういうことのため…でもいいかな)

思いながら、上条は美琴の胸に、服の上からキスをする

美琴「そ、そこっ!?」

上条「?」


786 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/20(水) 16:38:09.71 ID:JZxGR/tC0
美琴「な、なんなのよ…アンタって、もしかして胸フェチ?」

上条「いやいや、美琴さんの体ならどこでも好きだって…前も言わなかった?」

美琴「こ、こういう時に…」

顔をうつむかせながら、美琴がそっと上着を脱ぐ

外の冷たい風に、真っ白な肌が晒される

上条「…あっちの、物陰にでも行きますか」

美琴「う、うん」



橋の下、あまり…というか全く人が来る気配のない場所に、二人は来ていた

静かな夜の空気に、二人の甘い吐息だけが混じる

美琴「べ、別に外でだから興奮してるとか…そんなんじゃないから」

上条「そうか?美琴って結構アブノーマル…」

美琴「ち、違うって言ってるでしょ!!」

上条「し、静かに!!!夜だからって、誰も歩いてないなんて限らないんだし…」


ガサッ、と突然近くの茂みで音がする

上条「!?」

美琴「あ、あう…!!」

誰かに気付かれたかもしれない、まだ、まだ引き返せるのだが…


「にゃー」

上条「ね、猫かよ…土御門かと思ったじゃないか…」

美琴「ビ、ビックリした…」

上条「…ど、どうする?やっぱりここは危ないかも…」ムニムニ

美琴「だ、だったらまずはその…胸を放しなさいよ…」

上条「…ここでしましょうか」

美琴「アンタってやっぱそういう…んぁぁっ!」


787 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:24:22.76 ID:Iq2YZCa40

美琴の唇を舐めながら、上条が幸せそうに笑う

上条「なんかさ、俺達って変態かもな」

美琴「な、なにいきなり言ってんのよ!」

上条「・・・こんな所で、息を殺して・・・さ」

首筋に舌を這わせる上条

そのくすぐったい感触に美琴は体をくねらせる

美琴「あうっ・・・ね、いつまでそんな・・・」

上条「まぁまぁ・・・夜は長いですよ」

携帯を少しだけ開き時間を確認する

深夜の2時

こんな時間に外を歩くのは、ほとんどいない

しかもこんな河原になんて、来る学生はいるわけない

上条「・・・あれ、そういえば今日は・・・短パン履いてないな」

スカートの中に手を入れた上条が、少し意外そうに呟く

美琴「あっ・・・ね、寝る予定だったから・・・履いてるわけないでしょ・・・んっ・・・」

上条「でもスカートだったじゃん」

美琴「そ、それは・・・」

上条「あ、もしかして・・・俺に会えるのを期待してたとか?」

美琴「!な、なによ、悪い!?」

上条「いや、めちゃくちゃ嬉しい」

優しいキスをして、上条が美琴の頭を撫でる


788 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:25:00.04 ID:Iq2YZCa40
上条「ヘアピン、似合ってる」

美琴「んっ・・・あ、ありがと」

上条「・・・本当はさ、美琴が俺に声を掛けた時・・・ちょっと嬉しかった」

美琴「?」

上条「なんでだろうな、こう・・・懐かしい感じがしたんだよ」

美琴「んっ・・・昔はよく・・・私が一方的に追い掛けてたから、かな」

上条「・・・美琴・・・」

上条が、美琴の後頭部に手を回す

上条「どこ触ってほしい?」

美琴「ど、どこって・・・」

上条「胸?」

美琴「!あ、で、でも・・・なんか恥ずかしい・・・」

上条「?今まで何回も触ってきたじゃないか」

美琴「そうだけど・・・」

こんな場所で、と美琴が躊躇う

美琴「あの、さ・・・だ、誰かに見られないか不安で・・・その、当麻以外の人になんて見られたくないって言うか・・・」

上条「くぁぁ!美琴さんったら、可愛いなぁ!」

ぐいっ、と抱き寄せながらキス

ニコニコと満足げに笑いながら上条が大丈夫だと耳元で言う

上条「誰か来たらすぐに隠れられるし・・・それに真っ暗だから、すぐには見えないさ」

美琴「ん・・・そうかな?」

上条「・・・」



789 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:25:27.89 ID:Iq2YZCa40
まだ納得いっていないような美琴をその気にさせるため、上条が無理矢理胸を揉み始める

美琴「にゃうっ!」

上条「美琴さん、先っぽがなんか固いんですけど」

美琴「な、なによ!?さ、寒いだけだから!」

上条「ふーん・・・美琴さんは乳首が弱いんだもんな」

美琴「無視すん・・・ふぁっ・・・」

指をその頂きの上で往復させる

くすぐったいような感覚と共に、美琴は自分の恥部が疼くのを感じる

美琴「んっ・・・はぁ・・・」

上条「・・・美琴、大丈夫?」

美琴「もう・・・意地悪」

蕩けた頭が出した答えなんて、上条にキスをするという、単純な物だった

美琴「・・・当麻が相手だったら・・・なんだっていい」

上条「う・・・そういうことを言われると、上条さんも我慢出来なくなりそうですが」

美琴「・・・プレゼント」

上条「え?」

美琴「プレゼントのお返し・・・私じゃダメ?」

上条「い、いい!すっごくいい!」

美琴「あ、あんまりがっつくな・・・ぁっ・・・」

身を屈め、上条の頭の位置は美琴の胸より少し下に合わせられた



790 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:25:27.89 ID:Iq2YZCa40
まだ納得いっていないような美琴をその気にさせるため、上条が無理矢理胸を揉み始める

美琴「にゃうっ!」

上条「美琴さん、先っぽがなんか固いんですけど」

美琴「な、なによ!?さ、寒いだけだから!」

上条「ふーん・・・美琴さんは乳首が弱いんだもんな」

美琴「無視すん・・・ふぁっ・・・」

指をその頂きの上で往復させる

くすぐったいような感覚と共に、美琴は自分の恥部が疼くのを感じる

美琴「んっ・・・はぁ・・・」

上条「・・・美琴、大丈夫?」

美琴「もう・・・意地悪」

蕩けた頭が出した答えなんて、上条にキスをするという、単純な物だった

美琴「・・・当麻が相手だったら・・・なんだっていい」

上条「う・・・そういうことを言われると、上条さんも我慢出来なくなりそうですが」

美琴「・・・プレゼント」

上条「え?」

美琴「プレゼントのお返し・・・私じゃダメ?」

上条「い、いい!すっごくいい!」

美琴「あ、あんまりがっつくな・・・ぁっ・・・」

身を屈め、上条の頭の位置は美琴の胸より少し下に合わせられた



791 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:26:09.96 ID:Iq2YZCa40
上条「・・・美琴って、美白だよな」

美琴「・・・心理定規には敵わないわよ」

上条「俺は美琴のほうがいい」

美琴「!」

胸の谷間に舌を滑らせ、上条が上目遣いで美琴の目を見る

上条「・・・美琴、顔が嬉しそうだけど」

美琴「い、一々報告なんてしなくていいから!」

上条「・・・なんかいい匂いがする・・・シャンプー変えた?」

美琴「ん・・・うん、同じメーカーだけど・・・匂いは変わったかな」

上条「これもいいなぁ・・・」

鼻を谷間に埋めた上条が、息を深く吸い込んでは吐いてみる

むず痒い感触に、美琴は複雑な気持ちだ

美琴「あ、あんまり焦らさないで・・・ね?」

上条「ん・・・」

美琴「・・・胸・・・舐めてほしい」

上条「美琴さんったら、すっかりスイッチ入りましたね」

美琴「いいでしょ・・・なんか、プレゼント貰った時からドキドキしっぱなしなんだし」

上条「へぇ・・・」

そこからか、と驚きつつ上条が美琴の乳輪辺りを舐め始める

美琴「ふっ・・・ぁ!?」

ちゅっ、と吸い始めた上条の頭を美琴が押さえる



792 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:26:58.29 ID:Iq2YZCa40
上条「どした?」

美琴「んんーっ!その状態で・・・喋らないで・・・っ!」

ビクッ、と美琴の体が痙攣する

上条「あれ、美琴ってどんどん敏感になるタイプ?」

美琴「そんなの、前から知ってたでしょ・・・」

壁に背中を預け、荒くなった息を整える美琴

露になったままの、少し慎ましい胸が上下するのをしばし見ていた上条は、自分の中の何か危ない物が膨らんでいくのを理解した

上条「・・・可愛い」

美琴「ど、どこ見ながら言ってんのよ・・・」

上条「・・・だってほら」

すっ、と掌を美琴の胸に当てて上条が笑う

上条「・・・なんか、ドキドキしてるし」

美琴「・・・ね、当麻はどこか・・・その、やってほしい所は?」

上条「してくれるのか?」

美琴「うん・・・その、ね」

上条「・・・じゃあ」

チャックをジーッ、と開ける美琴

美琴「・・・お、大きくなってる」

上条「そりゃ、まぁ・・・」

美琴「・・・ん・・・」

先っぽを恐る恐る美琴がくわえ込む



793 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:27:26.06 ID:Iq2YZCa40
上条「お・・・し、舌が・・・」

美琴(・・・なんか・・・いい匂い)

上条の体からも、石鹸の香りがしていた

走り回った後とは思えないその香りに、美琴は小さく微笑む

美琴(・・・あ、出てきた)

少しだけ粘り気のある液体を舌の上に感じ取る

美琴(・・・当麻・・・)

いつも自分を子供扱いしていた彼が、今は自分を「女性」として扱ってくれている

それどころか、今は美琴が主導権を握っている

美琴「んっ・・・」

口から上条の肉棒を出してから、美琴が尋ねる

美琴「・・・挿れたらダメ?」

上条「!な、生はダメだって!」

美琴「あ、ちょっと待って・・・」

上条「?」

スカートのポケットから、美琴が財布を取り出す

その中から、コンドームを取り出したのだ

美琴「はい、これで大丈夫でしょ?」

上条「・・・なんで持ち歩いてるの?」

美琴「い、いいじゃない!もしかしたらばったり当麻に会って、ばったりこうなるんじゃないかって期待してたのよ・・・」

い、今のは嘘!とすぐ否定するが意味はない



794 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:28:04.68 ID:Iq2YZCa40
上条「・・・何はともあれ、これで・・・」

ゴムを着けてから、上条が美琴をバックの体勢にさせる

美琴「・・・な、なんか・・・ドキドキする」

上条「お、俺も」

美琴「・・・ん・・・」

ゆっくり、美琴の膣の中に上条が入っていく

上条「っ・・・ひ、久しぶりだから・・・ヤバいかも」

美琴「久しぶりって・・・んっ!一週間前にしたばっかじゃない!はぁっ!」

上条「お、俺は毎日だってしたいんだぞ・・・!た、ただ学校が忙しいから難しいだけで・・・!」

美琴「んっ・・・あぁ!言ってくれたら毎日、行くわよ!ん、んっ!」

上条「はぁ・・・そ、それは素敵な・・・提案だ!」

肉と肉がぶつかる音だけが、橋の下に響く

川の音を聞く度に、自分達が外でこんなことをしているのだという罪悪感を感じてしまう

上条「あ・・・や、ヤバい・・・もう・・・」

美琴「早いわよ・・・ん!んぁっ!」

上条「み、美琴だってさっきからイきっぱなし・・・」

美琴「んゅっ!」

上条「あ、馬鹿・・・今締め付けたら・・・!」

ぐっ、と上条が美琴を抱き寄せる

上条「うっ!」

美琴「はぁっ・・・!」

自分の中で、ゴムが少しだけ膨らむのを感じた

795 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/21(木) 20:28:31.18 ID:Iq2YZCa40



美琴「・・・なんか・・・疲れた・・・」

ぐったりしたまま、美琴が河原に寝転ぶ

上条「こらこら・・・パジャマが汚れますよ」

美琴「いいわよ・・・もう汚れたし」

上条「い、意味深だな」

美琴「・・・ねぇ」

上条「ん?」

美琴「なんで今日だったの、プレゼント」

上条「なんでって・・・別に、理由なんてないさ」

美琴「?」

上条「特別な理由が無くても渡せるから、いいんじゃないのか」

美琴「あはは・・・そうかもね」

笑ってから、美琴が立ち上がる

二、三度スカートを叩いてから体をぐーっ、と伸ばす

美琴「ね、当麻の部屋・・・行っていいよね」

上条「あぁ、いいけど・・・なんで?」

美琴「・・・まだ、したい」

ビクン、と上条の肩が跳ねる

美琴「あのね・・・なんか、当麻に・・・されてると幸せ、キスももちろんだし、一緒にいるのもだけど・・・」

上条「・・・」

美琴「体が、ピッタリくっついてるのが好き」

上条「わ、分かった・・・行こう」

美琴の手を取って、上条が歩き出す


追いかけっこは、もう終わっていた



796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/21(木) 22:19:10.73 ID:YsjRzdtp0
乙です!
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 01:29:44.06 ID:L2uDgHEy0
けしからん
二人そろって爆発し…やっぱお幸せになりやがれ
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/23(土) 01:07:49.97 ID:ngOra5xpo
末長く(家電が)爆発しろ
美琴さんはくっついた後もツンツンデレデレしてるのが良いな
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/23(土) 01:43:40.09 ID:votSQdAZ0
久しぶりにツンの方を見れた気がして新鮮だった!>>1乙!
あぁやっぱ美琴可愛いなぁもう…
800 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/23(土) 21:43:36.15 ID:Mq26Czc80
上条の寮、隣には土御門が住んでいる

昔はよく夜中にどこかに出掛けるため、ドアを開ける音を聞いた

尤も、上条はそれが「土御門の出勤する時の音」だと知っている

暗部、魔術

ダブルスパイって映画みたいでカッコイイよなぁ、と思う上条は今現在素っ裸

隣に寝転がる美琴も、素っ裸である

上条「なんか・・・よくよく考えたら、美琴がここに来るのも二日ぶり・・・だっけ」

美琴「・・・それまで・・・っていうか、いつもは毎日いるのにね」

上条「全くだよな」

ははは、と顔を見合わせて笑う

部屋の電気は消されている

だが外の月明かりがちょうど窓から入ってきているため、互いのシルエットや顔の表情くらいはなんとか分かる

上条「・・・なんか、いいムードだと思わない?」

美琴「な、なに言ってんのよ・・・ほら、早く」

上条「は、早くって何を?」

美琴「す、するためにここに来たんじゃないの!?せっかく風呂まで・・・」

上条「あぁ・・・で、でもよく考えてくれよ、今はかなり時間も遅いし・・・」

ご存知の通り、上条はあまりいい高校には通っていない

そんな高校の寮、しかもあまりプライベートを気にしない男子の寮だ

壁紙なんてあくまで一応の敷居、音を防ぐ効果なんてほとんど期待することは出来ないのだ



801 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/23(土) 21:44:11.48 ID:Mq26Czc80
0時を回った辺りならともかく、今やり始めるのは流石に隣の土御門に迷惑となる

美琴「・・・じゃあいいわよ」

上条「!?」

上条の股間に手を回した美琴が、手のピストン運動を開始する

上条「あっ・・・お、お前なぁ!」

美琴「・・・これで我慢出来なくなったでしょ」

上条「ぬぁぁ!健全な男子高校生、上条当麻!ここで退いたら男の名が廃る!」




土御門『うるせぇカミやん!どうせあれだろ、彼女連れ込んでギシアンだろ、ミコっちゃん連れ込んでんだな!』

ドン!と壁が向こうから叩かれる

土御門『死ね!突然現れたサソリに噛まれて解毒薬を探している間にドブに落ちて死ね!果てしなく死ね!』




上条「つ、土御門起きてたのか・・・」

ちくしょう、と小さい呻きが聞こえてから隣の住人は静かになった

あれ以上何も言ってこない時は、「舞夏」が来ている時だ

途中で彼女が叱ってくれるため、すぐに罵倒を辞めるのである

上条「・・・何だかんだで土御門もいい思いしてんだし・・・って、手を止めなさい!」

美琴「んっ・・・な、なんかアンタの握ってると私まで変な気分になってくるわよね・・・」

上条「あぁ!いつから美琴はこんなに変態じみた台詞を普通に吐いたりすることが出来るようになったんだ!」

美琴「ア、アンタのせいじゃない!」


802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/24(日) 15:26:02.66 ID:lXFklPEo0
       /≦三三三三三ミト、           .  ―― .
       《 二二二二二フノ/`ヽ        /       \
       | l  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∨{ミvヘ      /            ヽ
       ト==   ==彡 》=《:ヽ     ′ ―‐ァ!l   1   │
         /≧ァ 7¨7: :ァ.┬‐くミV!ハ    |    (__   丄    |
       ′: /: イ: /': :/ |:リ  ヽ }i! : .    |  _j_  _____    |
      i. /: il7エ:/ }:/ ≦仁ミ ト:.i|: i|   |    d    ./    |
      |:i|: :l爪jカV′´八ツソ Vミ :l|    |  ノ   ./ ノ     |
      |小f} `   ,    ´  ji }} : .{    {   ┌.   ̄    }
       }小    _      ,ムイ|: :∧    .    |/        |
       //:込  └`   /| : :i i : :.∧   、  o     /
        /:小:i: :> .    .イ _L__|:| :li {∧   \         /
.      /′|从 :|l : i :爪/´. - 、 〈ト |ト:ト :'.      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            N V 「{´ /   ヽ{ハ|  
           | }人ノ/   li  V   
       i´ }    //} i′′ ハ 、|  
       { {     〃ノ {l l!  } :  {   
   rー‐'⌒ヽ  ,イ   i{| |   i   
   〉一 '   ∨n     ∨   ′  ハ     
   `r‐‐ ´   V    |       |     
    ‘r‐‐ ´    \   }/i⌒ヽ   {     
      `¨¨` ー .、  ` < ` |    `ト、 }    
         }}\      ̄ `ヽ ト ソ     
         ノi  \        } }      
          //     > .     | ノ
803 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/24(日) 21:32:38.94 ID:hP5F/Lfq0
上条「おいおい、責任転嫁はよくないですよ」

美琴「う・・・」

だ、だって・・・と悪態をつく美琴の頭を、上条が優しく撫でる

上条「・・・でも、エッチな美琴も大好きだから」

美琴「あぁもう!そうよエッチよ!好きな人と一緒なんだから期待していいわよね!?」

上条「もちろん」

シーツが汗で濡れないかな、と上条は今更になって少し考えた

だが汗だけならむしろマシなのではないか

事が終わる頃には、他の物で濡れまくりそうな気もする

上条「・・・な、今日はどっちがいい?」

美琴「どっち?どっちってどういう意味?」

上条「ムードを大切にするのか、激しくやるのか」

美琴「激しくって・・・さ、さすがに夜遅いんだから・・・」

上条「分かった」

頷いてから、上条は美琴の頬にキスをする

ツンツンとした彼の髪の毛が少しむず痒い

それも近くにいる証拠なのだな、と考えると自然に頬が緩む

上条「・・・美琴、いい匂いがする」

美琴「さっき風呂入ったばかりじゃない」

上条「それもそうだな」

美琴「・・・ねぇ、当麻ってさ・・・」

上条「ん?」


804 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/24(日) 21:33:05.93 ID:hP5F/Lfq0
美琴「あの・・・その、私のこと、どれくらい好きなのよ」

上条「どれくらいって・・・お前が俺を思ってくれてるのと同じくらいには」

美琴「具体的に言って」

上条「・・・だから、大好きなんだけどさ」

美琴「う・・・そ、そうじゃなくて!」

上条「・・・」

あぁなるほど、と上条が理解する

上条「将来・・・一緒になりたいなって思えるのは美琴だけだよ」

美琴「うん、よろしい!」

ニコニコと笑う美琴を見ていると、ほんの少しだが彼女も大人になったのだな、と思う

上条(昔はデートとか、キスとか・・・今その瞬間を第一に考えてたな)

今だってそれは変わりない、しかし段々と月日が経つにつれて、将来のことも考えてくるようになった

上条「・・・でも俺達って、子供が生まれても結婚はまだしてないって・・・」

美琴「はぁ・・・何言ってんのよ、アンタ」

ぎゅっ、と美琴が握ったのは上条の右手だった

美琴「今まで何人の人をこの右手で助けてきたの?」

上条「何人って・・・」

美琴「何人の人の未来を変えてきたのよ」

上条「!」



805 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/24(日) 21:33:33.99 ID:hP5F/Lfq0
美琴「・・・妹達の時だって、私の未来を変えてくれたじゃない」

上条「美琴・・・」

美琴「だったらさ・・・私達が結婚してないなんて悲しい幻想、殺してちょうだい」

上条「・・・」

美琴「未来は変えられない、なんて私は思わない、アンタとなら」

上条「・・・どうして?」

美琴「私の未来は変えられたから、アンタと二人で変えられたんだから」

上条「・・・」

美琴「と、とにかく!私の未来を変えるには、とにかくこの右手がいつでも私に届く所にいなさいよね!」

上条「なんだ、傍にいて欲しいだけなんじゃないか」

美琴「ち、違うわよ!」

ポカポカ、と美琴が軽く上条の胸を叩く

上条「あはは、恥ずかしがらなくてもいいのに」

美琴「うぅー・・・」

上条「・・・美琴、肌スベスベ」

美琴「にゃあっ!?い、いきなり触らないでよ、びっくりするじゃない!」

上条「ん・・・お尻とか足とかは特に・・・」

美琴「ふっ・・・ん・・・」

上条「・・・美琴って、下半身かなり引き締まってるよな」

美琴「あ、あんまり・・・その、女性的な感じじゃないでしょ」

上条「ううん、美琴は可愛いよ」

美琴「ーっ!アンタってどうしてそうも恥ずかしいセリフを簡単に言えるわけ!?」


806 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/24(日) 21:34:12.15 ID:hP5F/Lfq0
上条「恥ずかしいかな?」

美琴「・・・いいわよ、私だって触る!」

上条の背中に手を回すと、何か傷のような物に気がついた

美琴「あ・・・」

上条「ん?あぁこれか・・・違う違う」

美琴「な、何が違うのよ」

上条「また俺が問題に巻き込まれてんじゃないか、って考えてるだろ」

美琴「だ、だって・・・心配だもん」

上条「ん、ありがと」

両腕で強く美琴を抱きしめながら、上条が笑った

上条「何かあったら、俺は絶対に美琴に話すって約束したろ?」

美琴「じゃあ・・・これ、どうしたのよ」

上条「・・・学校の掃除中に、椅子から転げた時に背中を偶然切りました」

美琴「・・・」

上条「・・・」



美琴「あはははは!な、何それ!そんな簡単に、教室で背中を切るなんて!」

上条「あぁ笑うなよ!まさかちょうどいい所に机のトゲがあるなんて思わなかったんだよ!」

美琴「はぁ・・・で、トゲは刺さらなかった?」

上条「一応シャツを通してだからさ・・・この傷もサックリ切ったってよりはミミズ腫れのちょっとひどいって感じだよ」

美琴「・・・痛かった?」

上条「う・・・」


807 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/24(日) 21:34:43.06 ID:hP5F/Lfq0
上条の顔を見上げる美琴

彼女は本当に心配そうな表情をしていた

先程までは笑っていたが、それは上条のドジ加減に呆れただけなのだろう

彼が傷を負った、ということに関して彼女は誰よりも心を痛めるのだから

上条「だ、大丈夫・・・」

美琴「ちょっと見せてみなさいよ」

上条「あー・・・美琴って傷口とか見るの大丈夫?」

美琴「うん」

じゃあ、とベッドに座り、上条が背中を見せる

美琴「あちゃー・・・切れてるってよりは引っ掻いてるのね・・・クリームかなんか塗った?」

上条「塗ったら痛いだろ・・・」

美琴「痛いってアンタ・・・ったく」

上条「!?」

美琴が背中の傷に舌を這わせているのが分かる

美琴「こ、これで代わりに・・・」


上条「痛い痛い!染みる、それめっちゃ染みるからぁ!」

美琴「ゴ、ゴメン!」


808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/25(月) 01:00:13.43 ID:0R1LLEYg0
あああああ

あまあますぎてブラック飲みてえ!

乙!
809 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/25(月) 10:45:01.14 ID:F+am94I20
上条「ったく・・・いきなり舐めないでくれよ・・・」

美琴「ア、アンタだっていきなり私の・・・触ったりするじゃない」

上条の背中の傷を優しく撫で、美琴が小さく文句を言う

上条「まぁ・・・美琴にそういうことされるのはイヤじゃないけどさ」

美琴「・・・じゃ、じゃあそろそろ続き・・・」



美琴の言葉の途中、最悪なタイミングで携帯電話が鳴り響いた

上条の物だ

上条「・・・だ、誰だ・・・?こんな夜中に」

美琴「・・・」

しばし迷った後、上条が通話を開始した

ディスプレイを見なかったため相手が誰か分からない

暗闇の中でいきなり明るい画面を見るのには抵抗があったからだ


上条「も、もしもし」


美鈴『やっほー』

上条「」



上条「・・・な、なんでこんな時間に電話を・・・」

美琴の方をチラッと見てから上条が小声で尋ねる

それに合わせたのか、電話の向こうの美鈴も小さな声で答えてきた

美鈴『いやぁ・・・実は今私、アメリカに来ててさ』

上条「は、はぁ?」


810 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/25(月) 10:46:47.50 ID:F+am94I20
美鈴『パパが誘ってくれたから!それで、お土産は何がいい?美琴ちゃんと相談して決めてほしいな、って』

上条「あ、あのですね・・・時差を考えて電話して下さいよ、今日本は夜中・・・うぉっ!?」

上条が突然、携帯を口から遠ざける

見てみると、不機嫌そうな美琴が上条の背中に自分の慎ましい胸を押し付けているようだった

ようだった、というのは体の前に回された彼女の腕と背中に当たる柔らかな感触から判断するしかないからだが

上条「な、何してんだよ・・・今電話中だって・・・」

美琴「・・・誰からの電話よ」

上条「誰からって・・・」

美琴「・・・」

上条「あ、もしかして怒ってる?」

美琴「さぁ」

上条「わ、悪いって!でもなんか非常事態の連絡だったらヤバいし・・・」

美琴「そうだったの?」

上条「ち、違ったけど・・・」

美琴「じゃあ早く終わらせて」

頬を膨らませる彼女は、相手にされていないことが気に食わないらしい

上条「そ、そうは言っても…」

美琴「…」

上条「ち、違う違う!!お前との時間は大事だって!!だ、だけど…」

美琴「ねぇ、そのディスプレイの表示…もしかして、お母さん?」

上条「え?」

上条が素っ頓狂な声を上げるが無理もない

この暗闇の中でピカピカ光る画面は、偶然視界に入ったら目立ってしまう物だ


811 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/26(火) 20:13:20.65 ID:COuFse3K0

上条「よ、よくご存知で・・・」

美琴「ちょ、ちょっと替わって!」

上条の手から携帯電話を奪い取り、美琴が声を荒げる

もちろん夜中なので凄みそのまま、ボリューム小さめ、だが

美琴「お母さん!」

美鈴『あ、美琴ちゃん!やっぱりいるんだー!』

美琴「あのね、こんな時間に電話なんて非常識よ!」

美鈴『あれれ、じゃあ女子中学生の美琴ちゃんはこんな夜遅くに彼氏の家で何してたの?』

美琴「そ、それはねぇ・・・」

美鈴『もう、お母さんはまだ孫の顔は早いと思うんだけどな・・・』

美琴「そんなんじゃないわよ!」

美鈴『ありゃ、違ったか』

当たってるのだが、それは言えない

美鈴『・・・あ、そうそう・・・アメリカのお土産、何がいい?』

美琴「・・・アメリカ?」

上条「あ、えっと・・・アメリカならチョコレート?」

美琴「チョコレートって・・・もっとアメリカ!って感じがするのに・・・じゃなくて!なんでお母さんがアメリカにいるのよ!」

美鈴『パパの仕事が今アメリカでね、ついでに私も来ちゃってるの!』

美琴「旦那にしっかり仕事させなさい!」

美鈴『ちゃんと仕事してるよ、ねぇパパ?』


812 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/26(火) 20:13:47.06 ID:COuFse3K0
旅掛『なになに、美琴と話してるのか!?』

美鈴『上条君もいるんだよ』

旅掛『!?』

遠くアメリカではある父親が顔を青ざめさせていた

上条(た、旅掛さんまでいるとは・・・いや、いないほうがおかしいがしかし今は・・・)

旅掛『美琴、聞こえるか!?』

美琴「お、お父さんまでいるの・・・」

旅掛『なんで嫌そうなんだ!?』

美琴「じゃ、適当にお土産は頼んだ・・・」

旅掛『ま、待った待った!切ったらダメ!上条君に替わってくれ!』

美琴「・・・」

無言のまま美琴が上条に携帯を差し出す

美琴「お父さんが替わってくれ!って」

上条「う・・・」

苦い表情をしてから、上条が携帯を受け取る

上条「こちら上条当麻!異常ありません!」

旅掛『強いて言うなら、君が今美琴と一緒にいるのが異常だ!』

上条「う・・・」

旅掛『と、まぁ冗談はおいとくが』

上条「冗談かよ!」

旅掛『お土産だが、何がいい?お揃いのTシャツとか買ってやろうかと思ってるんだが』

上条「あ、あぁ・・・それがいいです」

旅掛『よし・・・ところで上条君』


813 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/26(火) 20:14:14.51 ID:COuFse3K0
上条「はい」

旅掛『胸だ、重点的に胸を責めろ』

上条「分かってます、行動は既に終わってます」

旅掛『いいか、避妊だけはしっかり』

上条「分かってます!」

旅掛『じゃあ、幸運を祈る・・・』



プチッと通話が切られた

しばし気まずいムード

今すぐ始められそうなムードだったのに、親からの電話なんて

上条「あ・・・ゴメンな、やっぱりこういう時に電話取るのは・・・ダメだよな」

美琴の頭を優しく撫で、本当に申し訳なさそうに上条が謝る

美琴「いいわよ・・・だってあの二人なら多分電話出るまで鳴らすもん」

上条「以後気をつけます」

美琴「うん、よろしい!」

上条「・・・で、さ」

美琴の肩を優しく押しながら、自然と上条が上になる

上条「・・・その、上条さんは・・・美琴さんに・・・こう、何かをしたいのですが」

美琴「な、何かって・・・何よ」

上条「・・・えっと・・・」

普段なら、簡単に口にできるはずだ

だがしかし、今日はなぜだか違っていた

ヘアピンをプレゼントしたからなのか

それとも、外で一度やってしまった罪悪感からか


814 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/26(火) 20:14:59.98 ID:COuFse3K0
なぜだか、その行為に至るまでどうすればいいのか分からない

キスから始めればいい、と頭は命じる

ではキスはどうやって始める?

上条「・・・あ、あのさ」

美琴「うん」

上条「・・・愛してる」

美琴「!わ、私だって・・・」

上条「・・・」

普段なら、そう普段ならここでキスの流れに持って行ける

なのに今はそれが出来ない

初心だった頃に戻ってしまったような感覚

ある車の運転には慣れていたくせに、少し違う車になっただけで全くの初心者のようになってしまう、それと似た感覚

上条「・・・垣根はさ」

だからこそ、とりあえず今は話をしていたかった

美琴と話しているだけで幸せだから

上条「愛には形なんてないって言ってた、常に形を変えるからこそ愛情を留めておけない、愛とは不定形だって」

美琴「・・・それで、当麻はどうなの?」

上条「俺は・・・確かに、愛情に形ってのはあんまりない気がする」

美琴「・・・」

上条「愛情が優しさになることもあるし、強さになることもある、憎しみになることもあるし嫉妬になることだってある」



815 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/26(火) 20:15:34.53 ID:COuFse3K0
でもさ、と上条が一度美琴に「キス」をした

舌を入れることはない、まだ付き合い始めてすぐの頃に、恥ずかしくてそれしか出来なかった浅いキスを

上条「その愛情が向くのは、多分・・・全部美琴に対してなんだ」

美琴「!」

上条「そして俺は、お前に対してなら、憎しみや嫉妬なんて、そんな感情を抱くことはないと思う」

純粋な感情だけが、自分の心に生まれるのだ、と

上条「・・・だから・・・」

美琴「・・・エッチしたい?」

上条「な、なんでそうなるんだよ!?」

美琴「・・・私、当麻に一杯してほしい、満たしてほしい」

上条「!」

美琴「ま、まぁ今だってかなり満たされてるし、その・・・充実してる」

上条「じゃ、じゃあ・・・」

美琴「でもね・・・当麻にはもっと甘えたい、飢えることはあっても飽きることはないんだ」

上条「・・・」

ゴクリ、と唾を飲んだのはどちらか

どちらも、と言うのが正しいか

とにかく、それが合図だった


それだけが、二人の合図だったのだ

夜は進んでいく

816 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/26(火) 21:10:24.82 ID:COuFse3K0

上条「美琴…」

貪るように、上条が美琴の乳房に食らいつく

ゆっくりと、しかし艶めかしく動かされた舌が彼女の胸に絶妙な刺激を与えていく

美琴「はぁっ…」

上条「美琴、どう?」

美琴「んっ…気持ちいい…」

上条「よかった…久しぶりだから、感覚が分からなくてさ」

美琴「にゃぁっ!そ、そのまま喋らないで…」

布団に顔をうずめ、美琴がそう懇願する

上条「…そうは言われましても」

布団の上から、今度は美琴のスラっとした脚を撫でていく

今でもこの脚で、あの自販機を蹴飛ばしたりするのだろうか

今はきっとしていない、そう信じている

上条「…なんかさ、布が擦れる音ってエロいよな」

美琴「はぁっ…はぁっ…」

上条「大丈夫か?なんかさっきからめちゃくちゃ息荒いけど…」

美琴「ん、んっぅ!!!」

ビクビク、と体を小刻みに痙攣させながら、美琴は一度果てる

上条「あ、あれ…?もしかして布団の上から撫でられただけで…?」

美琴「アンタ…胸も一緒に触ってるじゃない…」

上条「あぁ、悪い悪い…でもよかったんだろ?」

美琴「うん…もっとして…」

上条「分かりました」

817 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:37:40.30 ID:zGtyR6mm0


上条が布団の中にいる、美琴を強く抱きしめる

美琴「・・・幸せ」

ぽつりと聞こえたその声に、上条の心は震える

自分が、こんなに不幸な自分が、誰かを幸せにしている

その誰か、を上条は真剣に愛している

上条(俺って、なんて幸せなんだろう)

今更、今更になって分かった

美琴の股の間・・・膣の中に、優しく指を入れる

美琴「ん・・・」

布団から顔だけを出した美琴が、上条の唇を舐める

上条「どうした?」

美琴「・・・恥ずかしい」

上条「恥ずかしいって・・・何度もやってきたじゃないか」

美琴「だ、だけど恥ずかしいもんは恥ずかしいの!」

上条「あ・・・ここ、気持ちいい所だよな?」

美琴「ん・・・」

上条の中指に、ザラザラとした肉の壁が絡み付く

そこを突くと、いつも美琴は嬉しそうに体をよがらせるのだ



818 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:38:06.40 ID:zGtyR6mm0
美琴「はぁっ・・・」

上条「美琴、今だけは素直になって」

美琴「ん・・・?」

上条「・・・普段・・・やっぱり、美琴は時々ツンツンしてるだろ」

美琴「そんなこと・・・ふぁっ、ないわよ・・・ん・・・」

上条「今だけは・・・気持ちいいなら、気持ちいいって言っていいし、もっとして欲しいことがあるなら言ってくれ」

美琴「んゅっ・・・」

上条「美琴・・・美琴、俺は、美琴に・・・」

美琴「と、当麻・・・」

ぎゅっ、と上条の頭を自分の胸に押し付ける

美琴「・・・舐めてほしい」

上条「あぁ」

ニコリ、と微笑んでから上条はその柔らかな胸を再び堪能する

不思議なことなのだが、なぜか甘い香りがしている

シャンプーの物とはまた違った香りだ

上条「・・・美琴」

美琴の掌に、自分のそそり立った物を当てがう

美琴「・・・固くなってる」

上条「握って」

美琴「ん」



819 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:38:32.75 ID:zGtyR6mm0
一度キスをした美琴が、それを優しく包むように握る

親指でその先端を刺激し、残りの指をピストンのように上下させる

美琴「ふぁ・・・」

上条「う・・・」

汗が互いの体に絡み付く

嫌な感じはしない

嬉しい、幸せ、気持ちいい

色々な感情が波のように流れてきたせいで脳内は麻痺してしまう

上条「美琴・・・美琴、出る!」

美琴「出して、出して!」

ビュルルッ、と生暖かい液体が美琴の掌に流れ込む

顔を赤くした美琴が、掌を布団の中から取り出す

美琴「い、一杯・・・」

上条「はぁ・・・はぁ・・・」

美琴「ん・・・」

ペロッ、とそれを舐めてみるが少しばかり苦すぎる

美琴(口でしてたら・・・なんか平気に飲めるんだけどな・・・)

上条「み、美琴・・・手、洗って来たら?」

美琴「アンタから出た物なのよ・・・なんか、ばっちいみたいな言い方しないで」

上条「・・・でも舐めるのはきついだろ?だったら・・・」

美琴「・・・」


820 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:39:00.10 ID:zGtyR6mm0
頬を膨らませてから美琴が掌を綺麗に舐め始める

上条「お、おい!」

美琴「・・・に、苦い・・・」

上条「当たり前だろ!そんな涙目になってまで・・・」

ティッシュで美琴の手を拭いながら、上条が尋ねた

上条「なんで舐めたんだよ」

美琴「だって・・・」

上条「はぁ・・・そんな無理してくれなくていいんだって」

美琴「な、萎えちゃった?」

上条「・・・」

美琴「あ、あ・・・わ、私・・・当麻のだったら・・・その、いいから・・・」

慌てて答えてくる美琴に、上条が笑いかける

上条「むしろ燃えてきました」




コンドームというのは、恋人にとっては必需品だろう

使わないカップルもいるだろうが、上条からしたらそれは不謹慎だ

愛しているなら、やっぱりそういうのはしっかりしておきたい

上条「・・・美琴、ちょっと太った?」

美琴「!?な、なんで分かったのよ!」

正常位の体勢になってから、上条が不意に聞いた


821 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:39:27.12 ID:zGtyR6mm0
上条「いや・・・なんかさ、少し太股がムチッてしたから」

美琴「あう・・・ち、近くに美味しいケーキの店が出来ちゃって・・・」

上条「・・・エロい」

美琴「ふぇっ!?」

上条「太股・・・こう、今がちょうど・・・いや、前のもいい、でも今もいい!」

美琴「で、でも体重はそんな増えてない・・・あぁっ!」

美琴の腰に手を回した上条が、ゆっくりとそれを彼女の体へと挿入した

上条「・・・すげー締まってる」

美琴「いっ・・・あ・・・」

上条「い、痛かった?」

美琴「あ・・・あ、あっ!」

ぎゅっ、ぎゅっ、と一定のリズムで中が痙攣する

上条は、この感覚を知っていた

上条「あの・・・もしかして、イってる?」

美琴「・・・うん」

上条「入れただけで・・・」

ゴクリ、と生唾を飲んだ上条が激しく動き出す

野性的なその動き、美琴は振りほどかれないように、強く上条の腰に足を回す

ギシギシと軋んだベッドの上で、二人の結合部が卑猥な音を鳴らしている



822 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:39:55.38 ID:zGtyR6mm0
上条が腰を引けば美琴の愛液がズルル、と糸を引く

上条が腰を押せば、美琴の膣はそれを暖かく包んでくる

その光景に、上条は耳まで真っ赤になった

改めて考えてみる、今目の前にいるのは、自分がいつも一緒にいる少女だ

最近、段々と大人の「女性」になりかけてきている彼女だ

隣を歩いている時は、今のように艶やかな表情なんて浮かべはしない、少女

きっと彼女のクラスメートも友達も、こんな美琴は知らないはずだ

こんなだらし無い表情をするのは、こんなに喘いだ声を聞かせるのは、上条の前でだけなのだ

その独占した、という実感だけで上条は幸せになれる

一度彼女の名を呼び、キスをする

今日は、それが合図

一気に腰の動きを早くする、もう時刻なんて気にしない、出したいだけ声を出す

隣の土御門のことなんて、気にならない

目の前に、大好きな少女が

どちらからともなく、キスをせがむ

舌を絡め、唇の形を変え、まるでアメリカの映画で見るような激しいキスをする

彼女の唇を知っているのは自分だけ

もう一度、彼女の名を呼んだ

その瞬間に、二人の頭には真っ白な背景が広がる

823 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:40:21.56 ID:zGtyR6mm0


上条「はぁ・・・」

美琴「当麻ったら・・・最後に私の名前ばっか呼んでた」

上条「お前だって・・・当麻、当麻ぁ!って」

美琴「う・・・い、いいでしょ!昔は呼びたくても呼べなかったんだから!」

上条「う・・・な、なんか・・・昔から呼びたかったんだな」

美琴「まぁ・・・今は好きなだけ呼べるけど」

上条の足の間で体育座りをして、美琴が後頭部を上条の胸に預ける

美琴「・・・ね、当麻・・・もう疲れちゃった?」

上目遣いでそんなことを尋ねられたら、答えは決まっている

上条「まだまだ、大丈夫」

夜は、明ける




上条「うぅ・・・腰が・・・」

翌朝、ベッドの上で上条は一足先に目を覚ましていた

昨日の夜の激しさは、静けさへと変わっていた

腰が痛い

美琴「ん・・・当麻・・・おはよう」

上条「おはよう・・・」

体を起こした美琴の髪には、昨日プレゼントしたヘアピンがある



824 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:42:25.41 ID:zGtyR6mm0
それがとても嬉しい

あの幸せも、夢じゃなかったんだと

美琴「ねぇ、朝ごはんにしよう」

上条「あぁ、そうだな」

立ち上がった上条に、突然美琴が抱き着く

上条「?どした?」

美琴「ううん、なんでもない」

上条「?」

美琴「えへへ…」

上条「…あ、もしかしていい夢でも見れたとか?」

美琴「そんなんじゃないわよ、ただいいことはあったの」

上条「?」

美琴(…アンタには、教えてあげないわよ)

上条「なぁ、なんなんだよ?」

美琴「自分で気づくまでは答えないもん!」

上条「えぇ…」

美琴「あはは…」

強く上条を抱きしめたまま、美琴がしばらくの間目を閉じる

美琴「…本当、もう当たり前のことだから」

上条「?」

美琴「ううん、なんでもない、御飯にするんでしょ!!」



そう言った美琴の顔は、しかしとても幸せそうだった





825 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:42:58.81 ID:zGtyR6mm0


不幸

それを辞書でひくとどのような言葉だと説明があるだろうか

幸福ではないこと

そんな単純明快なことが書かれている



上条当麻は知っている、経験則で知っている

不幸と幸せは別物なのだ

「幸せ」じゃないから「不幸」なんてことはない

逆に「不幸」じゃないからと言って、「幸せ」、とも限らない

「不幸」と「幸せ」は常に隣同士であり、裏表ではないのだ

幸せなデートの最中に缶を踏ん付けて転んだ、例えばそんなことでさえ「不幸」と「幸せ」は共存することの証明ではないか

「幸せ」の対儀語は恐らく「無」であり、何もないことだと思う

さて、上条はなんでこんなことを考えたのか

11月に入ったばかり、センチメンタルになる季節でもない

今の彼がこんなことを考えたのは、それしかやることがないから




病院のベッドの上では、そんなことしか出来ないのだから

上条「・・・不幸だ」



上条さん入院編




826 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 15:44:56.59 ID:zGtyR6mm0


上条が入院したのは二日前

冷蔵庫に入っていた牛乳を飲んだら、お腹を壊した

消費期限を二ヶ月過ぎた牛乳、気づかなかったのは上条の過失だ

だかしかし、それが美琴や他の友達に知られたのは紛れも無い不幸

上条(美琴に軽蔑されたらどうしよう・・・)

気のせいか、また腹が痛くなる

ちなみに、その入院の話が漏れたのはついさっき

番外個体が偶然、この病院・・・というより冥土返しに電話をしたのだ

まぁ、調整の日程を決める他愛ない電話だった

うっかり口を滑らせたあの蛙医者だけは、上条を怒らせた

番外個体は人のそういう格好悪い話が大好きなのだ、もう広まった

美琴からは今から見舞いに行く、なんてメールまで来ている

上条「はぁ・・・」

深いため息をつくが、逃げられはしない


上条「何て言うか・・・不幸だ」


上条が頭を抱える、美琴の授業が終わるまでは、もうそんなに時間がない

なんとかして、少しでもいい言い訳を考えてみたかった

上条(も、もったいないと思って…はダメだな、貧乏くさいし…)

上条(…チャレンジしたかった!!は馬鹿みたい…)

友人にも、何かいい答え方をしないと、これから一か月くらいはずーっとネタにされるだろう、今までだってそうだった

上条(…よりにもよって、番外個体に知られたのは痛かったな…)

これが心理定規や19090号だったら、とため息をつく

827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/27(水) 23:24:02.54 ID:A/sxFJRq0
もうこれは見守るしかない流れだ…!

と思ってたら落差が酷いww
828 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/27(水) 23:59:50.11 ID:zGtyR6mm0
上条「暇だなぁ…あやとりでもしようかな…」

ガサゴソ、と上条がベッドの周りを探す

出てきたのは、少し長いゴムバンド

上条(…そういやぁ、看護師さんが色々まとめて持ってくるときに、これでまとめて持ってくるもんな)

それを使ってあやとりをしようとした

バチーン、なんていう快音と共に上条の手は真っ赤になった

上条「いってぇぇぇ!!」


御坂妹「何が痛いのですか、とミサカは遠回しに今のあなた以上に痛いものはない、と伝えながら颯爽と登場します」

上条「あ、えっと…妹達だよな…ってなんだ、そのネックレス持ってるってことは御坂妹か」

御坂妹「…恋人の妹達くらい、見分けられるようになってください、とミサカはジト目で返します」

上条「どうやって見分けろと…っていうか、なんでここにいるんだ?」

御坂妹「いえ、あなたがお腹を壊して入院した、というなんともかっこ悪いニュースを聞いたので調整ついでに立ち寄ったのです、とミサカは答えます」

上条「…そっか、番外個体も一応はネットワークに繋がってるんだもんな」

御坂妹「他のミサカ達もお見舞いがしたい、と言っていたのですがあまり大人数で押しかけるのもあれですので、とミサカは自分が気を利かせたんだから感謝しろよ、と遠回しに…」

上条「遠回しじゃないけど…まぁありがとな、お見舞いに来てくれたのはお前が最初だよ」

御坂妹「おやおや、お姉様より早く来てしまいましたか…とミサカはお姉様に勝利したことに少しばかりの喜びを覚えます」

上条「?」

御坂妹「いえ、こちらの話ですので…それで、何かしてほしいことはありますか?とミサカは首を傾げて可愛らしく訊ねてみます」

上条「そうだな…」

御坂妹「肉体奉仕ですか、なんとも高校生らしいですね、とミサカは呆れます」

上条「俺まだ何も言ってない」


829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/28(木) 01:42:15.41 ID:Rk5pV5lK0
おつにゃんだよ!
830 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/28(木) 14:57:57.45 ID:FJ7NulEm0
御坂妹「それで、なぜまたお腹を壊したのですか、とミサカは尋ねます」

上条「えっと…消費期限の切れた牛乳を…」

御坂妹「なんでそんな物を飲んだのですか、とミサカは信じられねぇよ、と暗にその意見を否定します」

上条「いや、本当なんだよ…」

信じてもらえないかもしれないけど、と上条が肩を落とす

御坂妹「…もしかして、本当にそうなのですか?とミサカは首を捻ります」

上条「だから言ってるじゃないか…」

御坂妹「…」

呆れた様な表情で、10032号が上条の肩に手を置く

御坂妹「…そろそろお姉様が来るはずですが、そんなかっこ悪いところを見せてはいけませんよ、とミサカは…」

上条「え、も、もう来てるの!?」

御坂妹「えぇ、強力な電磁波がこちらに走って向かって来ていますね、とミサカはレーダーにお姉様が引っ掛かったのだ、と伝えます」

上条「ど、どうしよう…やっぱかっこいい言い訳なんてないしなぁ!!」

御坂妹「そもそも、お腹を壊して入院、というのは非常にかっこ悪いですから、とミサカは正直に答えます」

上条「はぁ…だよなぁ…」



美琴「当麻!!」

バン、と勢いよく扉が開けられる

上条「こらこら、病院では静かに…」

御坂妹「そうですよ、とミサカも注意します」

美琴「あ、あれ…?なんでアンタがいるのよ?」

御坂妹「肉体奉…」

上条「見舞いに来てくれたんだ、ちょうど調整だったみたいでさ」

美琴「そ、そうだったんだ…それで、当麻は…大丈夫?」


831 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/28(木) 15:08:27.18 ID:FJ7NulEm0
上条「あぁ、ただの腹痛だって…ただ土御門があまりに俺がきつそうだからって病院に行かせただけだし」

美琴「…その割に、点滴打ってるけど…」

上条「あぁこれ?いやぁ、まだお腹の調子がよくないかもしれないから、って先生が無理矢理さ…」

美琴「はぁ…あんまり心配させないでよね」

上条「…え?」

美琴「当麻が入院って言ったから、てっきり大怪我でもしたのかと思ったじゃない…」

上条「美琴…」

美琴「当麻…」

御坂妹「おほん、とミサカは自分がいるのだからあまりおおっぴらにイチャイチャするな、ということを咳払い一つで表してみます」

美琴「…口にしてるじゃないの…」

上条「?美琴、その手に持ってるやつってなに?」

美琴「あぁこれ?果物、持ってきたの」

上条「本当か!?もうちょっとで点滴終わるから、そしたら食べさせてくれよ!!」

御坂妹「つまりこの少年は、お姉様にあーん、たるものをしてほしいのです、とミサカは皆様に分かりやすく説明します」

上条「み、皆様?」

御坂妹「いえ、なんでもありません…それより、これからおそらく代わる代わるにお見舞いの方が見られると思います、とミサカは伝えます」

上条「あー…垣根とかはこういうの喜んで来そうだもんな」

御坂妹「では御用が済みましたら」

10032号が一礼をしてから病室を去る

美琴「…にしても、お腹壊したってどうしたのよ」

上条「あ、あはは…」


832 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/28(木) 15:29:49.10 ID:FJ7NulEm0

垣根「ばっくしょい!!!」

心理「…ったく、あなたがくしゃみしててどうするのよ」

病院の待合室、垣根と心理定規は面会の許可をもらうためにそこに来ていた

垣根「だってさぁ、病院にいると、なんか巻き込まれない?」

心理「なにに?」

垣根「雰囲気に」

心理(…この人、たまにこういう馬鹿みたいな発言するわよね、頭診てもらったほうがいいかしら)

垣根「なんか、今お前がとってもひどいことを考えてた気がする」

心理「気のせいよ」

垣根「…あ、看護師さんが来た」


「垣根様と心理定規様…ですね、先生の許可が取れましたので」

垣根「どうも」

お礼を言ってから、垣根が案内された病室へと向かう

心理「…にしてもあなた、そういう百合の花とか、匂いのきつい花は嫌がられるのよ」

垣根「お前、百合の花言葉を知らないのか」

心理「?」

垣根「純潔、だぜぇ…」

心理「なんでドヤ顔なのか分からないけど…全くお見舞いには関係ないわね」

垣根「うるせーな、百合の花が嫌われるなんて知らなかったんだよ」

心理(あ、ぶっちゃけた)


833 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/28(木) 16:29:51.37 ID:FJ7NulEm0
垣根「大体さぁ、なんで上条はまた腹なんか壊したんだ?」

心理「さぁ?もしかして、腐った物でも食べたんじゃないの?」

垣根「ゾンビとか?」

心理「あなたの頭の中が腐ってるわね」

垣根「」

心理「冗談よ、そんな悲しい顔しないで」

垣根「…あ、着いた着いた」

トントン、とノックをしてから病室に入る

そこでは、美琴が林檎の皮を剥いていて、上条はそれを微笑ましく眺めていた

垣根「あれ、もう御坂は来てたのか」

美琴「あぁ垣根、心理定規も」

上条「よーっす…なんだか久しぶりな気がするな」

心理「あら、あなたが学校を休んでるからじゃない」

垣根「そうそう、腹痛で入院って、どうしたんだ?食中毒か?」

美琴「消費期限が切れた牛乳を飲んだみたい、新しいの買えばいいのに…」

上条「いいや、そうやってすぐにお金を浪費するのは将来困る!!」

心理「あら、こうやって入院した方が何倍もお金が掛かるじゃない」

上条「…全く正論だ」

垣根「で、点滴が終わったからミコっちゃんに林檎を食べさせてもらおう、と」

美琴「ミコっちゃん言うな」

834 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/28(木) 17:06:42.36 ID:FJ7NulEm0
垣根「…御坂って、林檎剥くの上手いんだな」

美琴の手つきを見ながら、垣根が感心したように呟く

美琴「あぁ、これ?」

心理「そうね…私も一応は出来るけど、そんな上手には出来ないわ」

美琴「だって当麻、よく入院するから…その度にこうやって林檎剥いてあげるの//」

垣根(なぁ、なんで今照れたのこの人?)

心理(さぁ…?)

美琴「だから、なんだかもう慣れてるのよね…」

上条「…でも、毎回こうやって来てくれる美琴には感謝してるなぁ…」

垣根「なんだよ、こんな時に一一惚気か?」

心理「ホント、妬けちゃうわね」

美琴「そんなんじゃないわよ」

はい、と剥けた林檎を差し出しながら美琴が応える

上条「ん、サンキュー…」

垣根「そこから、俺が横取りぃ!!!」

すっと上条の横から、垣根が林檎にかぶりつく

垣根「ンマーイ!!!!」

美琴「さーて、コインはどこだったかしら…」

垣根「分かった、分かったから超電磁砲はやめようぜ」

835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 20:17:16.02 ID:KaH47d8ao
おつにゃんだよ!
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/28(木) 21:12:46.71 ID:c97w1RbY0

             /         ヽ   ヽ ヽ   \
             //        ヽ   ヽ  ヽ  \
            / ,′     l       ヘ   ヘ   ∨   ヽ
         / / , /   !  .|   l   ヘ l   ヘ l .∨   ∧
       /// ! / /   !  l   !    l、!  l   ヘ ∨   ',
       .//./ ,' / l   l  !l   l   lヘト, l !  ヽ ∨  l .,
      /,イ/ !/ l   l ! .l.ハ   ! l  l _l,,マ !´! ̄ .\∨ !l !
      //! l  レ / ! _!__ハ__ハ  l ハ、!,,イ!-‐,,'=!l ト l   ヽヽ! ト.',
     .l/ l .l ./ / ´! ',_,!=リ=、,! l リ !./''´ O',!リ ヾ  ! l 、、!!  乙ゥゥゥゥゥゥゥ!!
     リ l .l/イ  .l !イ', ! O _, ! / l .l/`ー二 ! '"! l  | |  lヽ、
       !イ l  ', .ト、lリ''"´ .l/ l         .lイ   l  ! l トリ   
       ' ハ l',   ', ',l、 !      ヽ        リ!  ,ハ .l .l l
        !ハ !ヘ  ヘ l ヽ          ___ ,ィ | .,' .l/l .lリ
        'lヘ ∨ ト、!、   __, ==_'ニニ二''-./  l /! l:jl ル'
          ヘ∨l、ヽヽ、  `ー'---_‐, ´    イ ! ハ !
          ヽ!、ハ ./! .l>.       / | l/  l!
               l/ ヽ.!ヽ ヽ>    /   !/lリ
                 \!    ¨     リ
                   ',       ,′!
                    ,ィ ',    ,′ ヽ、
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    , イ::::::ヘ  ∧::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/   /:::::::::::::::::::::ヽ


















837 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/29(金) 20:37:44.04 ID:1rXgqBfY0
上条「ん、林檎が甘くて最高だ」

垣根「…なぁミコっちゃん、俺にも一つ…」

美琴「それで、あとどれくらい入院することになるの?」

上条「んー…多分あの先生が許してくれるまでだな、あの先生にはなんか気に入られてるし…」

心理「…そりゃあ、こんなに常連さんなら気に入っても無理はないわね」

上条「病院の常連って…なぁ」

垣根「…林檎…」

美琴「はい当麻…そうそう、入院費用は払えるの?」

上条「!」ギクッ

美琴「…ねぇ、この前…学資金、入ったはずよね」

上条「い、いや…それがな、実は…その…」

美琴「…まさか、不幸だからって落とした、とか言わないわよね」

上条「ち、違う!!そうじゃなくて…そ、その…」

心理「?」

上条「…実は、その…使ったんだ」

美琴「…は?」

上条「ま、まぁさ…そんなに悪い使い方じゃなかったんだぜ、そりゃあ…知らない子供が困ってて、そいつに…その、ちょっとプレゼントしてあげたんだ、良い使い方とは言わないけどさ」

垣根「…子供が困ってた?なんで」

上条「なんでも友達が風邪になったけど薬のお金が足りなくて、ってさ」

美琴「はぁ…お人よしなのはいいけど、それで?食費しかなくなった、と」

上条「…元々、食費と生活費でいっぱいいっぱいだけどな」

838 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/29(金) 20:41:44.13 ID:1rXgqBfY0
垣根「…なんなら俺が金貸そうか」

上条「いや…いいよ、人に金を借りる癖を作ると将来大変だろ」

心理「でも、払いきれるの?」

上条「…どうにかして払うよ、一応貯金もないことはないし」

美琴「で、でもさ…その貯金もいざって時のためなんでしょ?」

上条「今がその、いざって時だし…」

美琴「い、いいわよ!!私が払うから…」

上条「そ、それだけはダメ!!」

慌てたように上条が首を振る

オーノー、自分が消費期限を見なかったために、恋人に金を払わすなんて、ジェントルメンには出来ない

上条「と、とにかくさ…俺は、どうにか頑張るよ」

垣根「…ま、金がないのは仕方ないことだしな」

心理「…そうそう、私達はそろそろお暇するわね」

上条「え、もう帰っちゃうのか?」

心理「あら、だってこれからたくさんお見舞いの人が来るでしょ?いつまでもいたら迷惑じゃない」

垣根「そうだな、俺達はここらで退散するか」

美琴「じゃあ、またね、心理定規」

心理「えぇ、美琴、しっかり世話してあげるのよ」

美琴「うん、もちろん!!!」

垣根「…」



垣根(あれ、俺にはお別れ言ってくれないの?)

839 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/29(金) 21:51:20.31 ID:1rXgqBfY0

上条「…こう、入院してると、性欲が溜まりますよね」ムズムズ

美琴「…あのね、これからまたお見舞いの人が来るのよ」

上条「わ、分かってるよ!!」

美琴「…我慢しなさい、夜までは」

上条「…夜になったらしてくれるの?」

美琴「ア、アンタがナースに手を出したら困るし…し、仕方なくなんだから!!」

上条(絶対に嘘だな)

美琴「な、なによ…なにニヤニヤしてんのよ!!」

上条「いやぁ、夜が楽しみだなぁ、と思って」

美琴「う…そ、そんなに期待しないでよ…」

モジモジと体をくねらせる美琴を見て、上条が笑う

上条「…っと、誰か来たみたいだな」

美琴「ん…足音は二人だし、そうみたいね」



テクパトル「…ったく、こんな時期に腹痛なんて…上条も情けないよなぁ」

19090「…多分、古い食品をもったいないと言って食べたのだと思います」

テクパトル「そりゃそうだろうけどさ、いくらなんでも健康を崩してまでする価値はないだろ」

19090「そうですね…」

二人は病院の廊下を、話しながら歩いていた

もちろん上条のお見舞いのためなのだが、元々ここに居候していただけあって、懐かしい故郷のようにも感じた

テクパトル(…少し前までは、ここで暮らしてたんだな…)

19090「?どうかしましたか?」

テクパトル「あぁいや、なんでもない」


840 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:28:17.97 ID:Wh3DrXcq0

テクパトル「・・・えっと、上条の病室は・・・」

19090「あ、ここではないですか?」

テクパトル「・・・うん、ここみたいだな」

上条の病室の前で立ち止まった二人

ノックをしてからその中に入る

テクパトル「よう、調子はどうだ」

上条「あぁ、テクパトルに19090号・・・悪いな、わざわざ」

美琴「二人ともよく来たわね」

19090「お義兄様、お体のほうは?」

上条「大丈夫、消費期限が切れた牛乳飲んだだけだしさ」

笑いながら答える上条を、テクパトルが呆れたような目で見つめる

テクパトル「お前なぁ・・・入院費用も馬鹿にならないんだし、ちゃんと考えろよ」

上条「わ、分かってる・・・」

美琴「・・・分かってくれたらいいんだけど」

19090「貧乏症と馬鹿は治らない、なんて言いますから・・・」

上条「う・・・俺は両方だな・・・」

テクパトル「ははは、まぁ大事に至らなくてよかったよ、牛乳は腐ってたら腹痛が止まらなくて、最悪意識障害にまでなるらしいからな」

上条「もう牛乳は飲まない」

美琴「それは極端だけど・・・まぁ、ちゃんと買い物は小まめにしなさいってことね」

テクパトル「はいこれ、少ないがお見舞いだ」


841 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:28:49.06 ID:Wh3DrXcq0
テクパトルが差し出したのは現金の入った封筒だった

上条「ダ、ダメだって、受け取れない!」

テクパトル「別にくれてやるわけじゃないさ、ただ日頃から世話になってるし、貸してやるんだ」

上条「ひ、人から借りると将来ダメな大人に・・・」

19090「お義兄様、義理の弟にあたるテっくんの厚意なんですよ?」

美琴「そうそう・・・まぁ現金を受け取るのに抵抗があるのは分かるけど」

上条「・・・」

封筒の中をちらっ、と見た上条は驚愕した

入院費用が即金で払えてしまうほどの万札の数

上条「こ、これ・・・なんだ?」

テクパトル「なんだ?って現金だよ、ちょうどこの前給料日だったんだ」

上条「待った待った!こんな額、尚更借りれねぇよ!」

19090「・・・テっくん、幾ら入れたんですか?」

テクパトル「15万」

19090「15万!?」

美琴「アンタ・・・よくそんな額、封筒に入れて普通に持ち歩いたわね」

テクパトル「襲撃される心配もないし」

上条「こ、これだけあれば半年は暮らせそうだ・・・」

美琴「ちょっと、テクパトルはあくまで入院費用として貸してくれたのよ!」


842 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:29:15.62 ID:Wh3DrXcq0
上条「わ、分かってる!」

テクパトル「で、どうするんだ?借りるのか、返すのか」

上条「う・・・来月には絶対返す・・・」

テクパトル「返せるのか?この額を」

上条「ぜ、絶対に返す!一生掛かってでも!」

テクパトル「その言葉が聞きたかった」

19090(テっくんもノリのいい人ですね)


上条「・・・そういや、二人はこの病院で一時期暮らしてたんだっけ」

テクパトル「あぁ、他の妹達もな」

美琴「そういえば・・・テクパトルはどうしてあの子達と暮らすことになったの?」

上条「・・・確かに、細かいいきさつは聞いたことないな」

テクパトル「あれ、話してなかったか・・・」

テクパトルが驚いたような顔をする

19090「えっと・・・20000号が一番最初にテっくんと接触したんですよね?」

テクパトル「あぁ、エツァリの暗殺に失敗し、組織も失って居場所を無くしてた俺に・・・話し掛けてくれたのが、20000号だった」

上条「でも、なんでまたお前に話し掛けたんだろうな?」

テクパトル「一方通行を探していたみたいだったな、あいつ」

美琴「うわ・・・あの子、本格的にストーカーじみてるわね・・・」

テクパトル「まぁ、居場所を紹介してくれた、って点では・・・20000号には感謝してるよ」



843 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:29:52.40 ID:Wh3DrXcq0
19090「・・・」

テクパトル「そして、居場所になってくれてる美月にはもっとな」

19090「//」

美琴「甘くて口の中がベタベタだわ・・・」

上条「・・・お前達、人前でイチャイチャしすぎだろ」

テクパトル「お前が言うなよ・・・とにかく、それから俺は他のミサカ達の所に連れて来られた、ってわけだ」

上条「ふーん」

納得したような上条、そしてすぐさま次の質問に移る

上条「で、なんで二人は付き合い出したんだ?」

19090「そ、それは・・・」

テクパトル「・・・美月は、わりと最初から俺によくしてくれてたな」

記憶にある限り、テクパトルにとって唯一の癒しは19090号だった

他のミサカ達も大切な家族ではあったが、昔は平気で彼の前で服は脱いだし、寝たりもしていた

羞恥心を持った19090号、というのはやはりその中では異質の存在だったのだ

テクパトル「・・・美月はいつくらいから俺を意識してたんだ?」

19090「み、美月は・・・テっくんがやって来てすぐでしたよ」

顔を赤らめながら答える19090号

テクパトル「すぐ?」

美琴「もしかして、一目惚れってこと?」

19090「それとは少し違いますが・・・でも、すぐにテっくんの魅力に惹かれました」

上条「へぇ・・・それを聞いてテクパトル、どうなんだ、ん?」


844 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:30:24.62 ID:Wh3DrXcq0
ツンツン、とテクパトルの脇腹を小突く上条

それに苦笑いしながら、テクパトルが答える

テクパトル「嬉しいな、そりゃ・・・」

美琴「ねぇ、テクパトルは?」

テクパトル「お、俺か・・・俺はかなり時間が掛かったよ」

上条「なんで?」

テクパトル「なんでって言われてもな・・・」

言葉を選ぶようにしながら、テクパトルが続ける

テクパトル「・・・それまで誰かを愛した経験が無かったし・・・誰かを背負うことの難しさを知っていたから」

19090「確かに、テっくんには随分と待たされました」

テクパトル「・・・でも、そういうめんどくさい感情を全て取っ払ったら、ただ美月が好きなんだってことだけが残ったんだよ」

美琴「き、聞いててロマンチック・・・」

テクパトル「逆に尋ねるが、二人はなんで付き合い出したんだよ」

上条「・・・昔、美琴に助けてもらったことがあってさ」

美琴「あ、ロシアのこと?」

上条「そうそう・・・その時さ、ちょっと背中の荷が降りた気がしたんだよな」

今思えば、誰かに頼ることをそれまではしてなかったからかな、と

上条「・・・美琴が助けに来てくれた時、俺はそれが嬉しかった、こんな俺のために命を懸けてくれる女の子がいるんだなって」

19090「・・・」

上条「その女の子には笑っていてほしい、そう思い始めて・・・気がついたら、ずっと美琴のことばっかり考えるようになってた」

美琴「私は・・・妹達のことで助けてもらったのが、一番だったかな」

845 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:31:24.01 ID:Wh3DrXcq0
テクパトル「難しい問題だからな、解決してくれた上条に惚れるのも当然か」

美琴「うん・・・でもそれだけじゃない」

19090「何か他の理由があるのですか?」

美琴「・・・妹達のことを一人の人間として見てくれる・・・それって、すごいことだと思う、それも当麻みたいな、真っすぐな人が」

上条「そうかな?だってみんな普通の女の子じゃないか、人の体を乗っ取るなんてこともしないし」

美琴「・・・その時にね、この人は、きっと私を一人の女の子として見てくれているんだ、って思ったの」

テクパトル「一人の・・・か」

美琴「それまで、超電磁砲なんて言ったら、尊敬、羨望、畏怖、そういう物を向けられる存在だと思ってた」

19090「・・・お姉様の力は、確かに恐ろしい物でもありますからね」

美琴「でも当麻は違った、ビリビリ、って呼んで・・・なんだかね、私の能力を・・・ただの個性として見てくれてるって感じだったんだ」

テクパトル「個性か、それは素敵な考え方だな」

美琴「・・・超電磁砲ありきの御坂美琴、じゃなくて御坂美琴がたまたま超電磁砲だった、そう思わせてくれるくらい・・・」

上条「?」

当たり前のことなのに、と言いたげな上条

それを見て、三人が苦笑する

テクパトル「全く、上条には敵わないよ」

19090「そうですね、お義兄様はまさに・・・真っすぐ、という言葉が似合います」

上条「お、俺ってなんかおかしいかな?」

美琴「ううん、素敵よ」

上条に軽くキスをしてから美琴が微笑む

テクパトル「っと、この雰囲気だと俺達は邪魔かもな」

19090「そうですね、美月達はこの辺りでお暇します」

上条「あ、あぁ!」

美琴「ま、またね!」


846 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:32:21.53 ID:Wh3DrXcq0
テクパトル「あんまり病院ではイチャつくなよな」

肩を竦めてからテクパトルと19090号が病室を後にする

しばし、無言の二人

上条(・・・なんか、恥ずかしいことを語っちゃったな)

美琴(うぅ・・・なんだか変に意識しちゃうわね)

互いに目を合わすのが恥ずかしくて、あちこちに視線を逸らす

と、またしてもお見舞いがやって来た




エツァリ「失礼します」

ショチトル「よっ、元気か?元気じゃないから入院してるんだよな」

上条「あぁ、二人か」

エツァリ「えぇ、上条さんが腹痛で入院したと聞いたもので」

ショチトル「全く、カッコ悪いぞ」

上条「そりゃ悪かったな」

またうるさくなりそうだな、と思いながらも上条は笑った

上条「なんだか久しぶりだな」

美琴「ホント、二人は最近・・・会ってないわよね?」

エツァリ「そうですね・・・我々は最近少しばかり忙しいので」

上条「忙しい?バイトでも始めたのか?」

ショチトル「いや、最近新しいプレイを考えているんだ」

上条「何やってんだ本気で」




847 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 18:34:04.48 ID:Wh3DrXcq0


ショチトル「にしても腹痛で入院なんて、新しい羞恥プレイか何かか?」

点滴を物珍しそうに見つめながらショチトルが尋ねる

美琴「・・・ショチトルは点滴したことないの?」

ショチトル「いやあるぞ、しかし私がしたのとは違う種類だ・・・科学側では一々、中身を変えて点滴するのか?」

上条「いや、科学側とか関係なく、その時の症状に合わせるだろ」

エツァリ「ショチトルは栄養剤を点滴したことがありますから、それを常識にして考えているのですね」

ショチトル「・・・美味しいのかな、直接飲んだら」

上条「仗助かよ」

美琴「・・・仗助?」

上条「いやなんでもない・・・」

エツァリ「それで上条さん、お体はもう大丈夫なのですか?」

上条「あぁ、本当は退院出来そうなんだけど・・・先生が中々厳しくてさ、君はどうせすぐ入院しに戻ってくるんだから、この際ゆっくりしたまえ・・・って」

ショチトル「いいじゃないか、学校もサボれるだろ?」

上条「授業についていけなくなるんだよ・・・」

ショチトル「あぁ、なるほど」


ショチトル「アナルほど」

上条「言い直すな」


美琴「…でもみんな、ちゃんと当麻のお見舞いに来てくれて…嬉しいわね」

ショチトル「そりゃあ、友達が入院してたらな」

エツァリ「最近はお二人に会う機会も少し減ってきていますから、これを機に、と」

上条「そうだな…学校が始まると、学校に行ってるヤツらと行ってないヤツらでは差が出てくるから」

ショチトル「ふん、学校なんてめんどくさいだけだろ」

上条「それが、中々楽しいんだけどな」


848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/30(土) 20:16:31.07 ID:KcpA7T3wo
最近会ってないって言葉になんか違和感があったけど今気がついた
ブログだと野球やってるからだ
849 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 21:20:34.01 ID:Wh3DrXcq0
ショチトル「…美琴、上条の傍にずーっといるつもりか?」

美琴「?どういうこと?」

上条「…そうだな、美琴には傍にいてほしいなぁ…」

エツァリ「なるほど、夜までは一緒にいてほしい、ということですね」

上条「…」



上条・美琴「は?」


エツァリ「いえいえ、病院ですとどうも処理に困るでしょう?」

ショチトル「なるほど、たしかにそうだな…ナースの制服を借りれば、更にマンネリを脱することが出来る、と」

エツァリ「ふふん、まぁ我々はそんなプレイ、もう体験済みもいいところですがね」

上条「ま、待て待て!!なんの話してるんだ!?」

ショチトル「性欲処理だよ」

美琴「そ、そのために傍にいるんじゃないわよ!!」

エツァリ「おや、聴診器なんて使って、お医者さんプレイですか」

美琴「だからね…!!!」

ショチトル「うんうん分かってる、美琴はそういうのをしないでも、上条の役に立てる、と言いたいんだな」

美琴「わ、分かってるじゃない…」

ショチトル「だが、それで本当に上条は満足か?」

上条「満足…」

ショチトル「いーや、満足なはずがないね、絶対にない」

上条(いや、満足なんだけどなぁ…)

ショチトル「いいか美琴」

美琴「な、なに?」

ショチトル「今の上条を見てみろ、一応ベッドの上を動けず、ゲームもなければ本もない、こんな上条の唯一の楽しみは、お前といることだ」

美琴「う、うん」

エツァリ(偉くまともなことを)


850 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/06/30(土) 21:28:19.58 ID:Wh3DrXcq0
ショチトル「となると、お前は上条を四六時中楽しませるべきだ」

美琴「それで…わ、私は何をすればいいの?」

ショチトルの意見を真剣に聞いている美琴

自分を愛してくれている表れか、と上条が笑う




ショチトル「朝はおはようのフェラ、昼はおやつのパイズリ、そして夜中はメインディッシュのセックスだ」


ショチトルの言葉に、ため息をついた


美琴「ど、どういうことなのよ!?」

ショチトル「おいおい、やったことがないわけないだろ?」

エツァリ「そうですね、すでに経験済みでしょう?それとも御坂さんの胸では、パイズリは不可能ですか」

美琴「そんなことないわよ!!」

ショチトル「ならやってみろ、上条の喜ばせるのはお前の使命だ」

上条「あ、あの…」

エツァリ「どうしました?」

上条「…そういうのって、別に入院中に求めてはないし…」

ショチトル「必要だね、ちょうどここに媚薬がある」

上条「なんでそんなの持ってきたんだよ!!」

エツァリ「いえ、必要でしょう?」

上条「必要ねぇよ、まったくねぇから!!!」

美琴「び、媚薬…」ゴクリ

上条「なんで生唾飲んだんだよ!?意味がわからねぇよ!!!」



黒子「ジャッジメントですの!!公然猥褻物陳列罪の現行犯で拘束いたしますの!!」シュン

上条「どわぁ!?し、白井!?」

ショチトル「拘束か、もう飽きた」

上条「何があったんだ」


851 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/01(日) 15:29:22.33 ID:uWVCY4FQ0


黒子「全く・・・一体何を持ってきていますの、ショチトル」

ショチトル「何をって、媚薬だが」

黒子「そんなはしたない物はしまいなさいな・・・大体、上条さんに飲ませてどうなりますの?」

ショチトル「私は美琴に飲ませるつもりだったんだが」

黒子「!?」

美琴「く、黒子も来てくれたのね・・・」

上条「削板の姿が見えないけど・・・」

黒子(お、おおおおおお姉さまに媚薬を!?こんな、エツァリさんまでいる場所でそんな破廉恥な・・・し、しかし!大好きな上条さんの目の前で、他の男性にまで視姦されてしまい恥ずかしがるお姉さまを見たい、というのもまた事実!)

上条「お、おい・・・白井?」

黒子「ショチトル!今日は見逃しますの、ですから早く媚薬をお姉さまに・・・」

美琴「・・・」


黒子「軍覇さんはただいま、走ってこちらに向かっているはずですの・・・」

ショチトル(美琴ったら、ビンタなんてひどいことするなぁ)

エツァリ(病院で電撃は放てないからですね)

上条「ま、まぁ・・・白井もよく来てくれたよ、風紀委員の仕事も忙しいはずなのに」

黒子「友人としては当然ですの」

上条「・・・なんか、白井が綺麗だと怖いな」

黒子「あら、私はいつも綺麗をモットーにしていますのに」

美琴「アンタ・・・綺麗ってよりは汚れてるほうが似合ってるわ」


852 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/01(日) 15:29:52.03 ID:uWVCY4FQ0
黒子「お、お姉さままでそんな・・・」

ショチトル「いいじゃないか、私なんてアソコはガバガバだぞ」

黒子「ショチトル、次にそういう発言をしたら逮捕しますの」

ショチトル「ふん、分かった分かった」

ひらひらと手を振ってから、ショチトルが不機嫌そうに椅子に座る

病室の中には面会人用なのか、いくつか椅子も用意されている

あのお人よしの先生らしい配慮だな、と上条は苦笑する

エツァリ「しかし、削板さんは・・・走ってこちらに、と言いましたが」

黒子「えぇ、私の空間移動を使おうと思ったのですが・・・」

上条「削板が断った、と」

美琴「他人を空間移動させるのは演算がかなり難しくなるものね」

黒子「私には無理をさせたくない、と・・・軍覇さんったら男らしいですわ//」

ショチトル(なんで惚気てるんだこいつは)

エツァリ(なぜだか知りませんが無性にイライラしますね)

美琴(・・・男らしさなら当麻だって負けてないわよ)

上条(走って・・・か、しかし削板が来たら騒がしいというよりは・・・)


削板「上条!上条はいるか!腹痛で入院したと聞いたぞ、大丈夫なのか!?」

上条(暑苦しくなりそうだって思ったそばからこれだよ)




削板「なんだ、牛乳が腐ってたのか」

上条の腹痛の理由を聞いた削板が笑う

どうも、食中毒やら胃潰瘍やらを想像していたらしい



853 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/01(日) 15:30:17.78 ID:uWVCY4FQ0
上条「貧乏だからケチくさくなったんだよ・・・」

削板「ははは!いいじゃないか、そういう節約は大切だぞ!」

上条「だ、だよな!?」

削板「うん、すぐにポイポイ捨てるヤツのほうがよっぽどけしからん!」

上条「ほーら!やっぱり俺は正しかったんだ!」

黒子「軍覇さんの言っていることは、それが食べられる、飲めることを前提にしてですの」

ショチトル「腐った物を食うのは救いようのない馬鹿だ」

エツァリ「まぁまぁ、上条さんだって気づかずに飲んでしまったわけですから」

黒子「飲食をする時に消費期限を確認する、これは常識ですの」

上条「だ、だが俺の貧乏精神にその常識は通用しねぇ!」

美琴「垣根の真似しないの・・・確かにそうよ、なんで確認しなかったの?」

上条「う・・・牛乳が飲みたくてたまらなかったから」

ショチトル「馬鹿としか言いようがないな」

上条「分かってるんだそんなこと!今更ながらなんであんなことをしたのかって後悔してる!」

頭を抱えながら、上条が涙目で反論する

上条「でもさ、誰だってちょっとしたミスくらいしちゃうだろ・・・!?」

美琴「・・・当麻の場合はそれが深刻になりやすいから心配してるのよ」

上条「ぐはぁ!」

エツァリ「・・・とりあえず、上条さんは今後気をつけて飲食を行ってください」



854 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/01(日) 15:31:04.60 ID:uWVCY4FQ0
ショチトル「私達は帰るが・・・何かあったら相談しろよな」

美琴「ありがと、またね!」

ショチトル「・・・美琴も、無理な看病はするなよ」

エツァリ「では」

手を振りながら、二人は病室を後にした

残ったのは四人

上条「・・・残るは一方通行と番外個体だな」

黒子「あの二人はまだ来ていませんの?」

美琴「うん」

上条「番外個体が来たら一発がつんと言ってやる!人の不幸をすぐに他人に伝えるなって!」

削板「でも入院なんかはむしろしっかり伝えたほうがいいんじゃないか?」

上条「う・・・」

黒子「まぁ、番外個体が面白半分で言っていたのは少し・・・」

上条「だ、だよな?」

美琴「でも、番外個体を責めるのは間違いよ」

削板「そうそう、遅かれ早かれいつかはみんなに知られることなんだしな」

美琴「むしろすぐに知らせてくれた番外個体には感謝しなくちゃ」

上条「・・・俺、なんか悪いヤツみたい・・・」

美琴「まぁ、実際今はダメな人よね」

上条「み、美琴までそんなこと言うの!?」

黒子(上条さんも大変ですの)


855 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/02(月) 10:35:49.88 ID:ft2I/xod0



美琴「・・・削板は入院とは縁がなさそうよね」

会話が少し途切れた後、美琴が突然言い出した

上条「そうだな、常に健康ってイメージがあるし」

削板「なんだ、俺だって病院にはよく来るぞ!」

美琴「え、ホント?」

削板「ホントだとも!」

ふふん、と削板が踏ん反り返る

まるで病院に来ることがステータスかのようだが、そんなわけは決してない

黒子「軍覇さん・・・まさか、私に隠れて大怪我などを!?」

削板「いやぁ、スキルアウトを気がついたらボコボコにしちゃうことがしょっちゅうさ!」

美琴「あぁ・・・アンタが病院にお世話になるわけじゃないのね」

削板「病院に世話になったのは・・・昔一度だけやった予防接種の時だけかな」

黒子「や、やはり健康的ですのね」

削板「うん、風邪はひいたって気合いで治るし」

上条「うらやましい・・・入院費用が掛からないなんて」

美琴「当麻は掛かりすぎなのよ」

上条「だよな・・・」

黒子「まぁ、ですがそれは誰かを救われた結果なのでしょう?でしたら恥ずかしがることはありませんの」

削板「そうそう!まぁ今回はお前のミスだったらしいけど」

上条「・・・以後気をつけます」

美琴「・・・あ、そうだ黒子」


856 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/02(月) 10:37:36.69 ID:ft2I/xod0

黒子「はい、なんですの?」

美琴「アンタ、風紀委員の仕事はいいの?腕章着けたままだし、仕事の途中だったんじゃないの?」

黒子「!い、いけません、忘れていましたの!」

上条「おいおい・・・見舞いに来てくれるのは嬉しいけど、優先順位じゃそっちのが上だろ」

黒子「も、申し訳ありませんの!」

頭を下げた黒子が、すぐさま空間移動する

一瞬で姿が消えるのは、学園都市に住んでいる上条からしても不思議なものだ

美琴「それで、削板はいいの?」

削板「あぁ、もう今日のノルマは達成したからな!」

上条「毎日ノルマをこなしてるのか・・・」

削板「人間ってのは同じことを反復することで退屈な日常に楽しみとリズムを作ることが出来るんだ!」

美琴「なんだかどっかの学者みたいな言い方ね」

削板「ははは!難しいことは分からないがな!」

上条「…でも無理しすぎると体壊すぞ?」

削板「そんなに貧弱ではない!!」

腕を組み、がっはっはと笑う削板

その時病室のドアが開いた

上条「あ、先生」

冥土「全く、先ほどから随分とにぎやかだと思ったら、お見舞いかね」

美琴「先生、お久しぶり」

冥土「久しぶりだね、君の妹達とはよく顔を合わせているが」

美琴(なんだか複雑な関係よね)


857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/02(月) 13:32:40.50 ID:ZCWh3Mlno
あれ?削板一度入院しなかったっけ?
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/02(月) 16:24:38.68 ID:BOstG3400
確か子供助けるために車に轢かれて入院してたよね?
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 20:12:38.95 ID:YtkVbYlDO
銃で撃たれて痛いで済むようなやつが車に轢かれて入院か
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/02(月) 22:24:49.70 ID:ZCWh3Mlno
>>859
あれは車にひかれたから入院したんじゃなく
休養のために入院させただろ
861 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 09:29:00.58 ID:pet8/zMO0
削板の入院なんて、忘れていた

忘れていたのだよ


冥土「…さて、上条君」

上条「なんですか?」

冥土「調子はどうだね、しばらく経ったが」

上条「あ、あのね先生…この前も言ったじゃないですか、もう体調は万全なんですよ!?」

冥土「ふむ、しかし家に帰してもどうせ君はまた怪我なり病気なりで入院する羽目になるね」

上条「そういうこと言わないの」

美琴「…先生、当麻の病状って、結局のところただの腹痛だったんですか?」

冥土「そうだね」

削板「じゃあ、別に退院させてもいいんだろ?なんでそこまで上条をこの病院にいさせたがるんだ?」

冥土(妹達が喜んで手伝いに来てくれるから…なんて言えないね)

美琴「?」

冥土「上条君、君はナースが好きかね」

上条「い、いきなりなんなんですか!?」

冥土「僕はね…今まで、色々な人々と出会ってきた、男性、女性、老人、子供…日本人もいれば、もちろん外国人もいる」

上条の病状を細かく書きながら、冥土返しが呟く

とはいっても、別に上条の病状なんて全くもっての「健康」なのだが

冥土「…しかし、その中のいずれも、僕のナース談義に着いてくることは出来なかった」

上条「…美琴、今度は桃が食べたいな」

美琴「ん、ちょっと待ってて」

冥土「聞いてほしいんだがね」


862 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 10:01:10.24 ID:pet8/zMO0
上条「先生…俺、体を治すために入院したんですよ、別に先生と話をするために入院したわけではなく」

冥土「そんなことは分かっているね」

上条「ならなんで退院させてくれないんですか!?」

美琴「…も、もしかして…」

上条「?美琴、心当たりあるのか?」

美琴「…」グスン

上条「え、え?」

削板「か、上条!!大丈夫、お前は至って健康体だ!!!」

上条「え…?」

冥土「オホーン、オホホーン、大丈夫だ、君は大丈夫」

上条「あ、あの…もしかして?」

冥土「…君の体を、色々と調べてみたよ」

上条「まさか…」



冥土「異常はないんだけどね」

上条「じゃあなんで退院させてくれないんですか」


削板「さて、俺は帰るけど…何かあったら電話しろよ!!」

冥土「病院内での通話は遠慮してほしいね」

上条「…じゃあ、白井にもよろしくな」

削板「おう!!」

バン!!と勢いよくドアが閉められる

冥土(…もう少し静かに閉めてほしいね)

863 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 20:02:23.58 ID:pet8/zMO0

上条「…そうだ先生」

冥土「何かね」

上条「そ、その…非常に言いにくいことなんですが…」

冥土「入院費用かい、その封筒にお金が入っているんだろう?」

上条「え?」

上条が手に握った封筒…テクパトルからもらったその現金を指さして、冥土返しが笑う

美琴「ど、どうしてわかったの?」

上条「そ、そうそう…もしかして、俺達の話でも立ち聞きしてたのか?」

冥土「何を言ってるんだね、僕はさっきここに来たばかりだ、立ち聞きしている暇なんてないよ」

上条「じゃ、じゃあどうして?」

冥土「君が気まずそうにそういう話し方をするのは、お金の話か体調がさらに悪くなった時だ、そして今の君は健康そのものなのでね」

上条「で、でもだからってこの封筒にお金が入っている理由は…」

冥土「宛先が書かれていない封筒なら、まず中身は手紙ではないね、それがここにあるということは誰かが直接持ってきたのだ、だったら手紙ではなく伝言でもいいし、持ってきた本人がそれを伝えたいなら口頭で言うはず」

冥土返しの言葉に、上条と美琴は息を呑む

冥土「そしてその中に入り、なおかつ今の君に必要なのは二つだけだ、学校の宿題か現金、どっちかだね」

美琴「な、なるほど…」

冥土「君に一一宿題を届けるような真面目な友人はいないだろう?」

上条「そ、それは外れてるな…吹寄とかは真面目だよ」

冥土「おや、ここに来て失敗だね」

上条「でもすごいな…これで入院費用が足りるか聞きたいんですよ」

冥土「どれどれ」

冥土返しが封筒を覗いてから、それを上条に返す

冥土「十分足りるね」

上条「よ、よかった…」

864 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 20:08:03.79 ID:pet8/zMO0
冥土「…それより、退院を早めたいと言っていたね」

上条「そ、そうそう!!」

冥土「もうすでに、明日には退院できるように手続きをしているよ」

美琴「明日?なんだか突然ね」

冥土「実はね、アレイスターから電話があったんだよ」

上条「アレイスターから?」

冥土「正確には君の学校での君の評価を見ての意見を伝えに、ね」

上条「あ、あの統括理事長…権限があるからってそんなこと…」

冥土「君、もしかしてあまり学校に行っていないのかね」

上条「そ、そんなことないですよ!!これでもちゃんと授業受けてますから!!」

冥土「ふむ…しかし、かなりテストの点数が悪いと聞いたが」

美琴「…当麻」

上条「そ、それは…俺の頭が…不出来だからで…」

冥土「…とにかく、一日でも欠席は無くしたいだろうと思ってね」

美琴「…それで、明日退院なんて急なことを言い出したのね」

冥土「そうだね、入院費用はこれで足りるし、君の回復したし、めでたしじゃないかね」

上条「そうですね…となると、もう荷物はまとめたほうが…」

冥土「急な腹痛で荷物を持ってこれたのかね?」

上条「嘘です荷物なんてないです」

冥土「…まぁ、私はこれからまた診察だから…退院のことを伝えておいたよ」

美琴「先生、何から何までありがとうございます」

冥土「問題ないね、じゃあこれで」

冥土返しが病室から出ると、途端に上条が喜びだす

上条「やっはぁ!!明日には退院だってさ、美琴!!」

美琴「う、うん、よかったわね」


865 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 20:17:33.37 ID:pet8/zMO0

上条「…そして、夜になった」

美琴「誰に向かって説明してるの?」

窓の外を見ると、既に月が高々と登っていた

美琴「…にしても、一方通行と番外個体は来なかったわね」

上条「そうだな…あいつら、なんか冷たいな」

美琴「…まぁ、一方通行がお見舞いに来るってのも気持ち悪いけどね」

上条「ははは!!そうだな…」



一方「どォも、気持ち悪い一方通行だぞ☆」ガラッ

上条「」

美琴「」

一方「ボケてやったンだからせめて反応しろよ」

上条「」

美琴「」

一方(あァ?あまりのボケのレベルの高さに面食らってンのか)

番外「やっほー、上条もお姉様も元気?」

上条「」

美琴「」

番外「ねぇ、この二人…なんで固まってるの?」

一方「さァな、思ったより病状は深刻なみてェだ」

番外(明らかに病気じゃないけど…けけけ、面白いからほっておくかな)

上条「…ハッ!!」

一方「戻ってきたか」


866 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 20:44:24.86 ID:pet8/zMO0

上条「…い、今の時間に来るなんて珍しいな…」

一方通行渾身のギャグに身震いしながらも、上条が二人を迎える

番外「いやぁ、ミサカも今さっき調整が終わったばっかりだったからね」

美琴「調整だったんだ…アンタも大変ね」

番外「まぁね、でも慣れたよ」

上条「…わざわざ悪いな、調整で一日忙しかったなら、別に来なくても大丈夫だったのに」

一方「ダイジョブダイジョブー!」

上条「番外個体、わざわざ悪いな」

番外「いいよ、ミサカもそんなに毎日は忙しい訳じゃないし」

美琴「…打ち止めは元気?」

番外「うん、お姉様に会いたがってたよ」

美琴「そっか、じゃあ今度遊びに行ってもいい?」

番外「もちろん、歓迎するよ!!」

美琴「…な、なんでそんな黒い笑みを浮かべてるの?」

番外「へっへっへ…こりゃ面白いイタズラが出来そうだ!!」

美琴(こ、この子…段々どす黒さが戻ってきたわね)

一方「ダイジョブダイジョブー!」パチンパチン

上条「一方通行、精神科ならここにあるから、紹介するぞ」

一方「」

美琴「当麻、もう一方通行は通ってるのよ」

上条「あ、そっか…悪かったな、一方通行」

番外「いやぁ、ミサカも世話が大変でさぁ」

一方「」

867 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/04(水) 21:56:31.44 ID:pet8/zMO0

上条「…一方通行は、いつも番外個体の調整についてくるのか?」

一方「あァ」

美琴「へぇ…アンタって、そういうところ結構献身的よね」

一方「…献身じゃねェよ、俺はただ支えてやりたいって思ってるだけだ」

上条(やだ、カッコイイ)

美琴(…あの一方通行が、ずいぶんと丸くなったわよね…)

番外「でも、打ち止めの調整の時はもっと張り切ってるよね」

一方「当たり前だろォ!!帰りにご褒美としてレストランに連れて行ってやる、それが俺のするべきことじゃねェか!!」

番外「…それだから、ロリコンってみんなに言われるんだよ」

一方「あァ?ロリコンは正義だろォが」

美琴「そこまで貫いてると、逆にすごく感じるわ…」

一方「だろ?」

上条「でもな、一方通行…手を出したら人生お終いだからな」

一方「わ、分かってますゥ」

上条「言っとくけど、俺の義理の兄弟から犯罪者が出るなんて嫌だからな」

一方「うるせェな…分かってンだよ」

美琴「…打ち止めに手出したら、承知しないわよ」

一方「…一緒に風呂に入るのは?」

美琴「ダメ」

一方「あァ!?打ち止めがもし溺れたらどォすンだよ!?」

美琴「アンタ、他に同居人がいるじゃない、その二人か…番外個体に見てもらいなさいよ」

一方「…番外個体と入るってことは、俺とも入るってことなンだけどな」

美琴(この二人…いつも一緒に風呂入ってるの?)

上条(…想像したくないな)

番外(もう、一方通行ったら惚気ちゃって)


868 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 16:23:30.31 ID:jjXovT8P0

上条「・・・はぁ、明日には退院だし・・・退院したら打ち止めと遊んでやるかな」

一方「お前には頼ンでねェよ」

上条「い、いいだろ・・・義理の妹なんだからさ」

番外「義理の妹ねぇ、中々複雑だよね」

上条「俺からしたら、お前も妹ってのが複雑だよ・・・」

美琴「番外個体は、一応打ち止めより年下なのよね」

番外「ミサカ、あんなのは年上なんて認めないけどね」

上条「よ、よく打ち止めに反抗出来るな・・・」

番外「ミサカは上位個体の命令を受けずに済む個体だからね」

一方「・・・よく言うな、打ち止めの頼み事はよく聞くくせによ」

番外「あ、あれは・・・」

上条「お、なんだ?番外個体もさすがに打ち止めには優しいのか」

番外「は、はぁ!?そんなんじゃないし!」

美琴「へぇ、あの突っ張ってた番外個体がねぇ・・・」

番外「あぁぁぁ!そんなのミサカのキャラじゃねぇ!」

上条「いいお姉さんじゃないか、年下ではあるけどさ」

番外「だ、か、ら!ミサカは別に上位個体に優しくしてるわけじゃないっての!」

一方「はン、この前なンかわざわざあいつのために近所のコンビニでケーキを・・・」

番外「言うな!ってかそれは、あれだ!恩を売っておけばこの先有利になるからで・・・」

上条「何が?」

ニヤニヤと笑う三人を順番に見回してから、番外個体が深いため息をつく



869 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 16:24:01.26 ID:jjXovT8P0

番外「あぁそうだよ!上位個体にゃ、さすがに優しくしてるよ!あぁぁぁミサカのキャラじゃないのに!」

上条「いいじゃないかキャラとか考えないで」

美琴「そうそう、私はそんなアンタのほうが素敵でいいと思うなぁ」

番外「!?べ、別に・・・お姉様に褒められたってうれしくなんか・・・」

一方「お前、顔真っ赤になってンぞ」

番外「う、うるさいなぁ!」

上条「ははは!番外個体も、やっぱり美琴に褒められると嬉しいんだな」

愉快そうに笑ってから、上条が美琴の用意してくれた桃を食べ始める

ほんのりした甘さが口の中に広がる、甘味を求めていた体の中には幸せが駆け巡る

上条「んー!美味い!」

美琴「よかった!」

上条「美琴、あーんってして」

美琴「はい、あーん」

上条「あーん」

番外(うっへぇ、ミサカをいじる流れから一瞬にして惚気に入ったよ)

一方(この転換の速さは俺には出来ねェな)

上条「美琴に食べさせてもらうと美味しさが何倍にもなるなぁ・・・」

美琴「えへへ・・・愛情が篭ってるから//」

一方「おェェェ!聞いたか番外個体!」

番外(・・・い、いいなぁ・・・ミサカもこんなやり取り、してみたいなぁ・・・)

一方「甘すぎンだよ、気持ち悪い!」

上条「な、なんだと・・・!?いくら一方通行でも今のは聞き逃せないな!」

美琴「そうよそうよ!私達の純粋な愛情を馬鹿にしないで!」


870 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 21:39:25.46 ID:jjXovT8P0
一方「…はン、てめェらの気持ち悪いくらいにベタベタな惚気を見てるとな、俺は吐き気がするンだよ」

美琴「ア、アンタ!!言っていいことと悪いことがあるわよ!!」

一方「これは言ってもいいンですゥ」

美琴「きーっ!!良くないわよこのすっとぼけ!!」

一方「…あァ?おい番外個体、何固まってンだよ」

番外「ミ、ミサカは…お姉様と上条のそういうのって、羨ましく感じるし…」

一方「はァ?」

上条「だよな!お前だって、こうやってイチャイチャしたい年頃だもんなぁ!」

番外「う、うん!」

上条「ほらな一方通行、番外個体だってそう言ってるし…」

一方「…うるせェな、俺はあンまりベタベタしたくねェンだよ」

番外「…」シュン

美琴「ちょ、ちょっと一方通行…」

一方「さァて、そろそろ遅くなってきたし帰るか」

番外「も、もう帰るの?」

一方「こンな時間までなンで病院にいなくちゃならねェンだよ、打ち止めが寂しがるだろォが」

番外「んー、まぁ、そりゃそうだね」

美琴「…それじゃ、来てくれてありがとう」

一方「…大事にしろよな、上条」

上条「あぁ」

一方通行が番外個体の手を取り、ドアの方へと引っ張っていく

番外「?」

一方(…やっぱ俺には、こういうイチャイチャした雰囲気は似合わねェな…)

美琴「一方通行、アンタやれば出来るじゃない!!」

一方「うるせェ、じゃあな」

バタン!!と強引に閉められたドア

他の患者の迷惑にならないかな、と上条は今更ながらに心配になる

個室ばかりとはいえ、廊下に響いたドアの音は予想以上に反響する


871 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 21:43:28.10 ID:jjXovT8P0
上条「…美琴はどうするんだ?」

美琴「…当麻と二人でいるわよ」

上条「ふーん…」

美琴「!!べ、別にエッチがしたいとか、そういうわけじゃないんだけどね…」

上条(…なんか、幸せだなぁ)

消費期限切れの牛乳を飲んだのは不幸だったが、それから友達との友情を再確認できたのはよかった、と上条が笑う

美琴「?どうしたの?」

上条「いや、なんでもない…とりあえず、お風呂くらいは帰って入ってきたら?」

美琴「…ここの病室にもあるじゃない」

上条「いやいや、着替えがないだろ」

美琴「うぅ…」

上条「明日には退院できるんだしさ、今日くらいは離れてても…」

美琴「やだ!!」

ぎゅっと上条に抱き着いた美琴は、まるでおもちゃをねだる子供のように駄々をこねる

美琴「当麻と一緒にいたいの!!」

上条「で、でもさ…」

美琴「…ダメ?」

上条「…ダメではない」

美琴「じゃあ、オッケーってことじゃない」

上条「…そうだな」

美琴「えへへー//」

上条(…ったく)

甘えん坊だな、と呆れつつも上条は美琴の頭を優しく撫でた

夜もそろそろ深くなってくる頃だ、そっと目を閉じた上条は、そのまま眠りの世界へと落ちて行った


872 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 21:49:44.96 ID:jjXovT8P0



美琴「にゃっぷし!!」

上条が朝目を覚ましたのは、美琴のくしゃみのせいだった

上条「ん…あれ?寝ちゃってたんだ…俺」

美琴「んー…おはよ、当麻」

上条「おはよう…今何時だ?」

眠いままの目を擦り、時計を確認する

現在時刻は午前7時

まだ病院は開院していない時刻だが、既に廊下では入院患者を診察するためのナース達の移動が始まっている

上条「…俺も、もう荷物もまとめたし…先生に挨拶したらすぐ帰るかな」

美琴「…そうね、もうお金も用意したし、大丈夫」

上条「…テクパトルに借金か、ちょっと複雑だなぁ」

美琴「そんなこと言わないの、お金ないときは借りるしかないでしょ」

上条「はーい…」

入院患者用の服から、美琴が持ってきてくれた私服に着替える

上条(…っていうか、にゃっぷしってすごいくしゃみだなぁ…)

美琴「…?どうしたの当麻?」

上条「いやなんでも…行こうか」

荷物もまとめていたため、起きてからすぐに退院することが出来る

前日の準備って大切、上条は心にそう銘じた



冥土「…おや、君達かね」

予想外だったと言えば、冥土返しがすぐそこの廊下を歩いていたことだった

上条「あ、先生」

美琴「おはようございます」

冥土「…君がいるということは、付きっ切りで看病していたのかね?」

上条「看病が必要なほど重症じゃないでしょ…」

冥土「…そうだね、もう退院かい?」

上条「はい」


873 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 21:56:21.56 ID:jjXovT8P0
冥土「…それじゃあ、もう正面の入り口は開けるから、帰ってくれて構わないよ」

美琴「…なんだかずいぶん投げやりね…」

冥土「僕だって、色々と忙しいからね、それぞれの入院患者と涙のお別れをしている暇はないよ」

上条「…それじゃ、お世話になりました」

美琴「当麻のことだから、どうせすぐまたお世話になりそうだけどね」

上条「み、美琴ったら…」

冥土「それじゃあ、お大事に」

冥土返しに一礼してから、二人は正面入り口へと向かう


上条「うわ、眩しい…」

朝日を間近で見るのも、少しばかり懐かしく感じた

外の綺麗な空気を吸って、完全に健康になったんだなぁ、と上条は心底痛感した

美琴「…なんだか、走りたくなるような朝よね」

上条「お、俺は遠慮しとくよ…なんだかまた不幸に遭いそうだし」

美琴「あはは、そうね」

上条「それじゃ、帰りま…」



垣根「メェェェェェェルヘェェェェェェン!!!!!」

心理「ちょっと垣根、目玉焼きの卵が双子だったからって、そんなにハイテンションにならない…の!?」


上条が一歩を踏み出した瞬間、視界に入ってきたのはなぜだか飛んでいる垣根だった

垣根だったのだ、白い翼を生やした彼は、グルグルと回転しながら、そう、ドリルのように回転しながら、そのまま上条に突っ込んだ

美琴「と、当麻ぁ!!当麻ぁ!!!!」

心理「か、垣根!!お見舞いに来たのにどうしてあなたはまた上条君を傷つけるの!?」

垣根「…」

上条(あぁ…なんか、やな感じはしてたんだ、健康になった、って痛感するというフラグを建てた俺が悪かったんだ…)

クスン、と泣いた上条は、そこで自分の意識が無くなるのを感じた

ダ・カーポ

現実は非情である



上条さん入院編 終了


874 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 22:01:39.39 ID:jjXovT8P0


垣根「最近、心理定規に目を見て愛してるって言ってない」

レストランに集まった男達

恋人がいる者がほとんど…というよりも全員だが、垣根にいきなり招集を掛けられて何事かと焦った割にそんな普通なことで安堵した

上条「えっと…なんで?」

垣根「例えばだ、お前達は…まぁ削板は除くとして、セックスなりなんなりをよくするだろ?」

エツァリ「えぇ」

一方「まァ…たまにな」

テクパトル「…それが、どうしたんだ?」

垣根「そういう時、やっぱり愛してるって言いやすいじゃないか」

浜面(そ、そうなのか?俺童貞だから分からない…)

ゴーグル(…なんで俺まで呼ばれてるんすかね)

削板「おいおい、俺だっていつも黒子に愛してるって言ってるぞ!!」

垣根「…俺と心理定規って、ぶっちゃけあんまりそっちは欲がないんだよ」

上条「はー…だから、愛してるって言う機会は少しばかり少ないってわけか」

ゴーグル「それって言い訳じゃないっすか?俺とフレンダさんはそういうのまだですけど、フレンダさんは俺によく愛してるって言ってきますよ?」

垣根「お前は」

ゴーグル「…まぁ、たまには」

垣根「なぁ一方通行」

一方「…なンだよ」

垣根「お前、最近面と向かって番外個体に愛してるって、言ってるか?」

一方「…正直な話、あンまり言ってねェな」

垣根「上条は」

上条「言ってるけど…」

テクパトル「俺もまぁ…」

垣根「…それってさ、こう…真剣な感じで言うのか?イチャイチャの延長線上、ではなくて」

上条「…真剣に、かぁ…」

垣根「例えば、初めてそいつに好きだ、と言った時のような感じでさ」

上条「さ、さすがにそんな重い愛してるは…最近言ってないかな」

875 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/05(木) 22:08:58.97 ID:jjXovT8P0
エツァリ「…それで、つまるところ垣根さんは何を言いたいのですか?」

浜面「そうそう、俺にはよく分からないんだけどさ…」

垣根「…恋人に…または妻に、愛してるって改めて言うのは小っ恥ずかしいことでもあるよな」

テクパトル「そうだな…なんだか、愛があって当たり前だからな」

上条「うーん…真剣に愛してる、って言う、か…」

削板「真剣に、か」

垣根「それはまるで、告白やプロポーズと同じように、だ」

ゴーグル「それは…難しい、なんてもんじゃないですね」

浜面「…で?」

垣根「…だが、やっぱりそういうことを言ってやるのは、女を喜ばせられる方法だ」

一方「…あァ」

垣根「俺達の中のほとんどは、相手の方が先に自分に好意を抱いてくれていた人間だ、上条にしろ俺にしろ、一方通行にしろテクパトルにしろ」

エツァリ「…そうですね、浜面さんは少し例外ですが…」

ゴーグル「…待たせていた、ってのは…申し訳ないですよね」

垣根「そこで、だ…俺達は、その埋め合わせをどこかでしなくちゃいけない、そしてそれは、愛している、ということをもう一度伝えてやることだ、エッチの途中で言うようなノリではなく、本当に心からの気持ちとして」

上条「な、なるほど…」

垣根「…改めて、自分の大切な女に愛してるって、言いたくはないか?」

ゴーグル「…言いたいですね、俺は」

一方「俺も乗ってやる」

浜面「お、俺も!!」

テクパトル「当然だな」

エツァリ「自分もです」

削板「あぁ、最高に素敵な愛情だな、それはぁ!!」

上条「…愛してる、か…」

垣根「今日、今日だ、今日…家に帰ったら、自分の好きな女に愛してるって言うこと、いいな?」

一同「…お、おぉ!!!」

垣根「…さーて、学園都市のカップルにメルヘンな一日を、作戦といくかな」




垣根「それじゃ、始めるぞ」


愛してるって言いたくて編 スタート


876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:41:56.08 ID:CdlZteFDO
乙!
877 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/06(金) 14:35:19.84 ID:hLO1DPVD0

ゴーグル男の場合

ゴーグル(なんて・・・意気込んでみたのはいいですけど)

アイテムの家、その中にある彼の部屋(と言っていたいが実際はフレンダの部屋)で胡座をかいて考えていた

愛してる、なんてフレンダに何回言っただろうか?

そもそも、他のカップルと違い二人が付き合いだしたのはかなり最近なのだ

エッチなんてまだ恥ずかしくて出来ないし、キスだって片手で数えるほど

ゴーグル(・・・でも、逆に考えたら・・・俺が一番、愛してるって言葉に特別さを篭められるってことっすね)

普段から愛してる、なんて言っている男よりは、あまり言わないヤツがたまに言ったほうが女の子はキュンとくるだろう

ゴーグル「はぁ・・・しかし、愛してるなんて・・・」

こうやって一人で呟くだけでも顔が赤くなりそうなのだ

まして、フレンダに対して言うなんて

ゴーグル「・・・はぁ」

どういうきっかけで言えばいいのか、まずはそこから考える

いきなり愛してる、なんて言ったら何かあると思われるはずだ

出来る限り誤解は避けたい、つまり愛してると言ってもおかしくないような雰囲気を作ることもしなければならないのだ

ゴーグル(・・・あれ?)

そこで気づいたのだが、愛してる、と真剣に言うというのは思った以上に相手のことを考える行為なのだ

もしかして垣根は、「愛してる」と伝えるのが目的なのではなく、それを伝えようと自分が相手を思いやることを目的にしていたのではないか

ゴーグル「もし本当にそうだったら・・・垣根さんはやっぱりすごいっす」

彼なら、上手く愛してると言えるのだろう

自分も負けてはいられない

ゴーグル(・・・フレンダさんは今、一階でテレビを見ている・・・麦野さんと絹旗さんも一緒、つまり今はまだそれを言うべき時では・・・)




878 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/06(金) 14:35:54.74 ID:hLO1DPVD0


フレンダ「ゴーグル、アンタも一緒に見ない?」

ゴーグル「どわっ!?」

突然部屋のドアが開かれた、今はフレンダは来ないと考えていただけにその驚きは大きかった

フレンダ「な、なにそんなに驚いてるの?」

ゴーグル「い、いや・・・まさか突然来るなんて思ってなくて・・・」

フレンダ「・・・ここ、私の部屋な訳よ」

ゴーグル「そ、そうっすね・・・」

愛してる

愛してる、愛してる

その言葉が頭の中でグルグルと飛び交う

まずい、非常にまずいのだがそれを伝えたい相手が目の前にいる、と考えるだけでパニックになりそうだった

ゴーグル「あ、あ・・・」

フレンダ「?なんかかなり慌ててるみたいだけど・・・何かあった?」

ゴーグル「・・・な、なんでも・・・ないっす」

フレンダ「・・・そっか、それで、一緒に見ない?」

ゴーグル「・・・遠慮しときますよ、俺って恋愛ドラマにはあんまり興味ないんで」

ナチュラルに断るが、これもフレンダに悟られないようにする作戦だ

とにかく、今は平常心を取り戻す時間が欲しかったのだ



フレンダ「・・・じゃあ、私もここにいよう」

フレンダがなぜか、彼の隣に座ってしまったのだ

ゴーグル「な、なんでですか!?」

フレンダ「なんでって・・・別に、そこまであのドラマ好きなわけでもないし」



879 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/06(金) 14:36:28.37 ID:hLO1DPVD0

ゴーグル「だ、だからって・・・その」

フレンダの体から、優しい香水の香りがする

昔はつけていなかったらしいが、「ゴーグルが喜んでくれそう」という理由で最近はよく使っている

ゴーグル「・・・香水、なんかいい香りっす」

フレンダ「でしょ!?麦野はアンタなんかには早い、なんて言ってきたけど、結局私の魅力さえあれば香水なんてお手の物な訳よ!」

胸を張り、非常に自慢げにフレンダが語る

ゴーグル「・・・それ、俺のためにつけてくれてるんすよね」

フレンダ「ま、まぁ・・・アンタのためだけじゃないけど」

え?とゴーグルが少し眉をひそめる

フレンダ「・・・あ、ち、違う違う!他の男とかのためじゃなくて・・・やっぱり、香水とかつけてたら絹旗とかも私を認めてくれる訳よ」

ゴーグル「認める?」

フレンダ「私ってさぁ、なんか無理矢理若作りしてる、みたいなイメージらしくて・・・ちょっとでも年齢らしいことをしてみたかったんだ」

ゴーグル「たしかに・・・フレンダさんって趣味とかは中学生・・・」

フレンダ「あぁ!ゴーグルまでそんなこと言う!だから香水とかつけて大人っぽいイメージにしようと思ったのに!」

ゴーグル「そんな狙いが・・・」

わざわざそんな小細工などしなくても、ゴーグル男にとってフレンダは十分魅力的だった

ゴーグル「・・・フレンダさんは、いつも通りでも魅力的っすよ」

フレンダ「・・・な、なにいきなり言って・・・」

ゴーグル「・・・すいません、なんか俺のキャラじゃないっすね」

フレンダ「ま、待って!あの・・・その、私のこと・・・魅力的って思ってくれてるの?」


880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 23:56:14.76 ID:k0PmWQUUo
おつにゃんだよ!
881 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:11:43.40 ID:3nLoeziw0
ゴーグル「そ、そりゃ・・・魅力的っすよ」

フレンダ「ほ、本当に!?」

ゴーグル「・・・魅力的じゃなきゃ、付き合いませんよ」

フレンダ「え、えへへ・・・そう?そうよね、まぁ私の魅力なら当たり前な訳よ!」

ゴーグル「・・・フレンダさんは、優しいですから」

フレンダ「な、なんか・・・ちょっと照れちゃうかな」

顔を赤くしながら、フレンダが笑う

その姿が、堪らなく愛おしい

ゴーグル(・・・愛おしい、か)

あぁそういえば、とゴーグル男は思い出した

フレンダに「愛してる」と言いたかったのだ、と

ゴーグル(・・・愛してるって・・・今なら、言えそうですね)

無理にシチュエーションを作るのではなく、素直にフレンダのことを愛おしいと思ったのだ

ゴーグル(・・・)

フレンダ「?どうしたの?」

ゴーグル「フレンダさん、あんまり・・・変だと思わないで欲しいんですけど、聞いてもらえますか?」

フレンダ「?」

ゴーグル「愛してる」

フレンダ「・・・?」

ゴーグル「な、なんなんすか・・・なんか反応くらいして下さいよ!」

フレンダ「い、今・・・なんて?」

ゴーグル「だ、だから・・・愛してるって・・・」

フレンダ「も、もう一度言って!」

ゴーグル「愛してる・・・」



882 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:12:10.25 ID:3nLoeziw0
フレンダ「あ、あ・・・!」

フレンダが、近くにあったクッションを抱き抱え、いきなり転がりだす

フレンダ「んー!んー!」

ゴーグル「な、何してるんですか・・・」

フレンダ「あ、愛してるって!ゴーグルが愛してるって言ってくれた!」

ニヤニヤ、と笑いながらフレンダが嬉しそうに答える

ゴーグル「・・・その、変・・・ですよね」

フレンダ「うん・・・いきなりでびっくりした訳よ」

ゴーグル「・・・じゃ、じゃあ忘れて下さい」

フレンダ「忘れないから!」

ゴーグル「だ、だって変だったんでしょ!?」

フレンダ「で、でも嬉しかったし!」

ぎゅっ、とゴーグル男に抱き着くフレンダ

抱き着かれて気づいたのだが、彼女は涙を流していた

ゴーグル「ど、どうして泣いてるんですか!?」

フレンダ「う・・・嬉しかったから」

ゴーグル「!」

フレンダ「あ、あのさ・・・付き合ってから、あんまりキスだってしてないし・・・愛してるとか、言われたの・・・嬉しかったから」

ゴーグル「・・・」

なんて自分は馬鹿なんだろう、とゴーグル男は後悔した

もしも垣根が、あんなことを言い出さなかったら、きっとフレンダに「愛してる」とは言わなかったはずだ

ゴーグル(・・・フレンダさんを不安にさせてたんですね)

駄目な男だ、と自分に呆れてしまう

ゴーグル「・・・愛してる」


883 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:12:43.07 ID:3nLoeziw0
フレンダ「わ、私も・・・愛してる訳よ」

ゴーグル「・・・フレンダさん、俺はあなたと付き合えて本当に幸せなんです、だから・・・その」

フレンダ「分かってる・・・アンタは、愛してるなんて言うのを恥ずかしがる性格なんだよね」

ゴーグル「・・・申し訳ないっす」

フレンダ「ううん、私だって恥ずかしいしさ」

ゴーグル「・・・でも、あなたのことは誰よりも愛していますから」

優しく、フレンダの唇にキスをする

ゴーグル「・・・だから、心配しないで下さい」

フレンダ「・・・幸せ」

彼女の笑顔を見て、ゴーグル男もなぜかほっとした

この笑顔を間近で見たいから、きっと彼女の傍にいるのだ

ゴーグル「・・・俺も、幸せです」

愛してる、とは

二人にとって魔法の言葉だった





浜面仕上の場合

浜面(・・・俺は日頃から滝壺には好き好き言ってるからな・・・軽く流されそうだ)

浜面は現在、アイテムの家のリビングにいた

滝壺の他に、麦野と絹旗もいる

浜面(今はまだ言えるようなタイミングじゃないよな・・・)

滝壺「・・・はまづら、どうしたの?真剣な顔して」

浜面「あぁいや・・・なんでもない」

絹旗「浜面が真剣な表情とか、超キモいです」

麦野「どうせこのドラマのヒロインが何カップか、とか考えてたんでしょ」

浜面「ち、違う違う!」


884 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:13:08.42 ID:3nLoeziw0
麦野「じゃあこのドラマのヒロインにはバニーが似合うのか、とか考えてたんでしょ」

浜面「なんで俺は常に煩悩を抱えてるって設定なんだ!?俺は世紀末帝王だぞ!?」

絹旗「・・・は?」

浜面「いや、なんでもない・・・」

はぁ、とため息をついてからチラリと滝壺を見つめる

彼女は今日もジャージを着ている、いつも同じジャージばかり着ているのだ

たまにオシャレしてみたら?と聞いたら違うメーカーのジャージを着たりする

浜面「なぁ、滝壺ってジャージが好きなのか?」

滝壺「はまづら、ジャージほど実用性に富んだ衣類はないんだよ」

浜面「い、いや・・・確かに実用性も大事だけどさ、もっと可愛い服も着てくれたら嬉しいなぁ・・・なんて」

滝壺「可愛い服?」

絹旗「浜面、それは滝壺さんのジャージ姿が可愛くない、と言っているようなものですよ」

浜面「だ、誰も可愛くないなんて言ってないだろ!?」

麦野「・・・どうせ胸元が開いた服とか着てほしいんでしょ」

浜面「だから!なんで俺はそういうこと考える設定なんだよ!?」

滝壺「はまづら、あんまり私のファッションを悪く言わないで」

浜面「わ、悪く言ってるわけじゃないんだよ・・・」

滝壺「・・・」

絹旗「あーあ、怒らせちゃいましたね」

浜面「か、勘違いなんだって!」

滝壺「はまづら、はまづらは私のこと、ダサい服装の女だって思ってるの?」

浜面「ま、まさか!可愛いヤツだなぁって・・・」

麦野「でも服装が可愛くないって言ったじゃない」

浜面「だから可愛くないとは言ってない!」



885 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:13:41.28 ID:3nLoeziw0
頭を抱え、泣き言を言う

こんな状況では「愛してる」なんて言うどころか、下手なことを言ったらブチコロシかくていになる

浜面(・・・とにかく、今は麦野と絹旗から離れなきゃ・・・)

絹旗「なにまた真剣な顔してるんですか、超怪しいです」

麦野「・・・あんまり私達をジロジロ見ないでくれる?金取るわよ」

浜面「ははは!金貰ったってお前らなんかジロジロ見ない・・・」

はっ、と浜面が自分の言葉がまずかったと思った時には遅かった

麦野の投げたリモコンはおでこにヒット、更に絹旗の拳が鳩尾に入った

窒素装甲を切っていてくれた辺り、まだマシだろうか

とにかく、浜面はその場でノックアウトされてしまった




滝壺「はまづら、大丈夫?」

浜面「なんだか天国が見えたよ」

リビングに転がりながら浜面は答えた

ヒリヒリと殴られた部分が痛む

ドラマを見終えた麦野と絹旗は、それぞれ自分の部屋に帰った

よって、ここには二人きりだ

浜面「・・・あのさ、俺は滝壺のこと、本当に可愛いと思ってるからな」

滝壺「分かってるよはまづら」

浜面「・・・じゃ、じゃあなんでさっきはあんなこと言ったんだよ!?」


886 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:14:12.39 ID:3nLoeziw0
滝壺「はまづらの困った表情、面白かったから」

浜面「た、滝壺・・・」

いつの間にか逞しくなって、なんて言いたくなる

これでアイテムの中に浜面の味方はいなくなった、南無三

浜面「・・・はぁ」

愛してると言いたい気分でもなくなった、心を篭めて言わなければなんの意味もない

滝壺「・・・ねぇ、はまづら」

浜面「ん・・・なんだ?」

滝壺「はまづら、愛してるよ」

浜面「・・・え!?」

驚いた、もちろん自分が言いたかった言葉を先に言われたからでもあるが

それ以上に、滝壺がそういうことを自ら進んで言ってくるのは非常に珍しいのだ

浜面「ど、どうしたんだいきなり?」

滝壺「はまづらに、最近言ってあげてないから」

浜面「あ・・・そういうの、ちゃんと考えてくれてたのか」

滝壺「?はまづらのことだもん、考えるよ」

浜面「・・・ありがとな」

やっぱり滝壺は自分の味方なんだ、浜面は再確認する

それと同時に、彼女のことを抱きしめたいという衝動が生まれる

浜面「滝壺」

滝壺「なに、はまづら?」

ぎゅっと抱きしめてから、浜面も言う


887 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:14:55.86 ID:3nLoeziw0
浜面「愛してる」

滝壺「・・・」

浜面「い、いつもの好き、って言うのとはちょっと違って・・・その」

滝壺「?いつもは本気じゃないの?」

浜面「ほ、本気に決まってるじゃないか!だ、だけど・・・今日は、真剣に伝えたくてさ」

滝壺「・・・」

浜面「・・・思えばさ、滝壺はいつだって俺の味方でいてくれたんだよな」

滝壺「うん、だってはまづらが好きだから」

浜面「・・・俺が変われたのは、滝壺のおかげなんだ」

滝壺「・・・はまづら」

浜面「・・・俺は、滝壺がいなきゃ駄目な人間のままだった、だから・・・俺にとって、お前は幸せの象徴なんだよ」

滝壺「・・・私も、はまづらがいなかったら、今の自分はいなかった」

浜面「・・・愛してる」

滝壺「うん、愛してる」

強く滝壺を抱きしめてから、浜面がキスをする

浜面「あ、あのさ・・・」




絹旗「は、浜面!」

浜面「どわぁ!?なんでいきなり出てくるんだよ!空気を読んでくれ!」

麦野「あ、あんた・・・浮気でもしてるの!?」

浜面「は、はぁ!?」

麦野「男がいきなり愛してる、とか好き、とか言うのは浮気を隠すためだって聞いたわよ!」

浜面「ま、待て待て・・・俺はそんな」




滝壺「はまづら」

浜面「・・・た、滝壺・・・さん?」

クルリと浜面は振り返る

首が落とされるのではないか、という恐怖を抱えながら

滝壺の表情は修羅のようだった

滝壺「はまづら、私を信用させて」

浜面「ひ、ひぃぃぃ!?」

愛してるは二人にとって、誤解も産んじゃう言葉だった

888 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:16:19.01 ID:3nLoeziw0


削板軍覇の場合

削板「うーん・・・愛してる、か!」

ファミレスからの帰り道、何度も削板は呟いた

彼はそういう台詞を、あまり口にするタイプではない

黒子が「好き」と言ってくれた時には、「おう、俺だって好きだぞ!」と返す

だがそれは、自ら自発的に言う「好き」ではなかった

もちろん、黒子のことは誰よりも愛しているし、大切に思っている

彼女のことを考えるだけで胸が高鳴る、削板はそれを知っていた

しかし、漢、削板軍覇にとって「愛してる」というのは言葉ではなく行動で示すものなのだ

女の子が重そうな物を持っている時に「そんな重い物も頑張って持っている君を愛してるぜベイビー」なんて言うヤツは男じゃないと思っている

つまり、彼は何事も態度や行動で表すため、言葉で伝えるのは緊張してしまうのだ

削板「愛してるなんていきなり言うのもなぁ・・・」

愛してるという言葉は生半可な気持ちで言うものではない

黒子に対する愛情をしっかり伝えられるような「愛してる」を言いたい

削板(…そうだな、練習をする必要がある!!)

運動をするにも、やはり練習と言うのは欠かせない

この状況では、やはり声に出して言ってみることから始めるべきだ

ぐっと拳を握り、削板は笑う

削板「・・・よーし、公園で発声練習だな!はっはっは!!!」

黒子本人に聞かれるのは恥ずかしいくせに、不特定多数に聞かれるのは構わない

変わった男、削板軍覇である




889 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/07(土) 17:16:53.06 ID:3nLoeziw0
黒子「・・・おかしいですの、この時間ならこの辺りを走られているはずですのに・・・」

正午を回った時刻、風紀委員の仕事が午前で終わったため、黒子は削板のマラソンコースのあるポイントに来ていた

少々の時間の誤差だろうと思って待ってみたが、いつまで経っても待ち人来たらず

黒子(ま、まさか・・・何かあったのでしょうか・・・)

スキルアウトをボコボコにしちゃったり、車とぶつかって運転手が怪我をしたり、突然くしゃみをして周りの人を吹き飛ばしてしまったり

黒子(そうでしたら全力でその事実を揉み消しますの)

腹黒いことを考えながら、黒子は仕方なく歩きだした

近くの公園にもしかしたら寄っているかも、と立ち寄った瞬間だった


削板「おぉぉ!愛してる!俺のハートが揺れている!君の吐息で揺れている!」

そんな削板の声が聞こえてきた

黒子(な、何をされているのでしょうか・・・)

物陰から黒子が削板を見つめる

削板は黒子に気づいていない

それほど、その台詞を言うのに熱中しているのだろう

削板「違うなぁ・・・やっぱり、もっとストレートに!」

黒子(・・・?)

削板「世界で一番愛してる!・・・いや、なんか違うなぁ・・・」

黒子(・・・どなたかに、あの台詞を言われるのでしょうか)

どなた、というのはもちろん黒子だ

削板が黒子以外の女性にそんなことを言うわけがない

それは絶対だ、何しろ削板は浮気なんてするような男ではないから

黒子(ですが・・・珍しいですの、軍覇さんが愛してるなんて・・・)


削板「黒子!愛してる!」

黒子(・・・なんだか・・・照れてしまいますわね)

物陰から黒子が覗いているなんて、削板は夢にも思っていない

ずっと大きな声で、色々な台詞を試している


890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 18:36:37.60 ID:AWUW7MkDO
最愛!愛してる!!



891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/08(日) 00:36:04.94 ID:oZh3O5lq0


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    フ__:::::/:::::::::::::∧〔_,(|/i'′      ヾ弍|升: |//,、`マ   ミ、\: : |: | : : : : : : : : : ;
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   . -{´ マ′         \         )、         /´^T´: : |: : : : : :/: : : |
 /´ ̄\   \           ,>、    /   '.               ;. : : i|: : :ハ: ' : }: : :!
'′: : : : \   \    !   ノ  `' 、/    、_____        i: ; : : | :/: :|:|: :ハ、:'.
__: : : : : : \   \ i /                 }_,.  -―|:ハ: : :∧: .:|:|: | | |\、
: : :  ̄`: 、: :\   `く\                  /´       |{ '.: :! : : : i|: | | |
: : : : : : '.: : : \    }                /   _/⌒ `\|: |: : |: 、|、| リ

乙!!
892 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/08(日) 12:53:45.32 ID:+3GqWjxm0
削板「うーん・・・」

10分ほど、ひたすら叫んだ後で削板は首を傾げた

はたして今まで試した言葉の中に正解はあるのか

削板「難しいなぁ・・・俺は単純だから、やっぱり行動で示すほうが似合うんだよな・・・」

しかし、黒子にもたまには言葉で伝えてあげたい

他のカップル・・・特に上条と美琴なんかは、よく「愛してる」を言い合っている

垣根や一方通行達も、少ないと言ってはいるがそれでも何度か伝えたことがあるはずだ

削板「やっぱり、言葉として伝えるのは大切なんだよな」

難しい、だがそれを黒子のためにしてあげたい

削板「愛してる!・・・なんか違うな、愛してるの他に・・・伝えたいこと・・・」

うーん、うーん、と腕を組んで唸る

削板「・・・伝えたいこと、か」

ふと、削板が顔を上げる

黒子に伝えたいことは、いつも心の中にある


黒子「・・・さて、いつまでも隠れてはいられませんわね」

小さく笑ってから、黒子が空間移動を使って削板の傍に向かう

そうすれば盗み聞きしていたことはバレないはずだ

黒子「軍覇さん!こんな所に来られていたのですね」

削板「ん?おぉ、黒子!いい所に来たな!」

黒子「いい所?」

もちろん、黒子はそれが何を意味しているかを知っている

それでも、削板が自分に隠れて喜ばせようとしてくれたことが嬉しかった

だから、気づいていない振りをする



893 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/08(日) 12:54:12.90 ID:+3GqWjxm0
削板「黒子に伝えたいことがあってさ」

黒子「伝えたいこと・・・ですの?」

削板「うーん・・・こう、当たり前のことなんだけどさ」

削板がニカッ、とはにかんでから言う

削板「俺、黒子のことが大好きなんだ、愛してる」

ドキン、と胸が跳ねる

やはり、面と向かって言われると嬉しいものだ

そしてもう一言、削板は伝えた

削板「黒子の笑顔は、いつも俺を幸せにしてくれるんだ」

黒子「・・・笑顔、ですか?」

削板「あぁ、お前が笑ってくれてると嬉しいし、お前の笑顔を守るために強くなれる」

黒子「・・・」

なんてまっすぐな男なのだろう、と黒子が感心する

彼女は自分自身が真面目でまっすぐだ、と自負している

そんじょそこらのヤツらよりはよっぽど学園都市に貢献もしている

ただ、削板には一生敵うことはないだろう

だからこそ、彼に惹かれたのだが

削板「その笑顔を、俺は一生守ってやりたい!」

黒子「い、一生・・・!?一生ということは、その・・・」

削板「はははは!いやぁ、伝えたら実に清々しくなった!」

よっしゃあ!と削板が肩を回す

削板「実を言うとな、今の台詞の練習のために、今日はまだ走ってないんだ!」

黒子「そ、そうですの」


894 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/08(日) 12:54:52.73 ID:+3GqWjxm0

削板「だから、一緒に今から走らないか!?」

ぐいぐい、と削板が黒子の手を引く

黒子「あ・・・」

返事をする前に、削板はもう駆け出していた

後から走り出した黒子は、大声で尋ねる

黒子「軍覇さん!い、今のはどういう意味ですの!?」

削板「ははは!追い付いたら教えるよ!」

黒子「そ、そんな!」

高らかに笑う削板を、黒子は必死に追い掛ける

陽射しが気持ちいい

二人にとって愛してるとは、青春の一滴だった






一方通行の場合

一方(愛してる、なンて言えるかよ・・・)

一方通行がそう呆れたのには理由がある

ただいま、彼の目の前にはトランプを持った番外個体と打ち止め、黄泉川に芳川がいる

もっと言えば、彼もトランプを持っている

ババをさっき引いたので少しばかり不機嫌だ

そう、彼はババ抜きをしているのだ

せっかく黄泉川が休みなのだから遊ぼう、と打ち止めが言い出したのがきっかけでババ抜きをしている

一方「・・・なァ、なンでいい歳してババ抜きなンてしなきゃいけねェンだよ」

黄泉川「一方通行、これも一家団欒じゃん」

打ち止め「久しぶりにみんな揃ったんだから!ってミサカはミサカはフォローを入れてみたり!」

番外「まぁ、確かにトランプは一家団欒ではない気もするね」

芳川「あら、番外個体ったら一方通行の肩を持つのね」

打ち止め「・・・番外個体、露骨なポイント稼ぎはやめたまえ!ってミサカはミサカは指摘する!」


895 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 11:46:46.75 ID:2Pe3/QIB0
番外「けけけ、別に一方通行の肩を持ってる訳じゃないよ」

ふふん、と笑ってから番外個体が一方通行の手札を引く

一方(はン)

番外(げ…ババが来た…)

黄泉川「そう言いながら、二人とも付き合ってるあたりは優しいじゃんよ」

打ち止め「夫婦して、丸くなったよね、ってミサカはミサカは呆れてみたり」

一方「夫婦じゃねェよ」

番外「予備軍であるのは否定しないけどね」

芳川「リア充爆ぜろ」

一方「…つゥかよ…そろそろババ抜き以外もしねェか、大富豪とか七並べとか、色々あるだろォが」

打ち止め「だってミサカ、ババ抜きが一番好きなんだもん!!ってミサカはミサカは声を大にしてみる!!」

番外「ババ抜きならこの中から約二名は抜けないといけないけどね」ケケケ

黄泉川「あー、芳川と番外個体のことじゃんよ」

芳川「あらあら、てっきり黄泉川と番外個体だと思ってたわ」

番外「これだから、自覚のない三十路手前は」

黄泉川・番外・芳川「…」ゴゴゴ

一方(…どのタイミングで愛してるとか言えばいいンだよ)

打ち止め(むむ、一方通行が何やら困った顔をしている…ってミサカはミサカは表情から察してみたり)

黄泉川「オーケー!!表に出るじゃんよ!!」

番外「望むところだ!!」

芳川「ふふん、これだから若いだけしか取り柄のない三下は」

一方「お前ら落ち着けよ…どンぐりの背比べって言葉、知ってるか」

黄泉川・番外・芳川「あぁ!?」

一方「中学生以上はババァなンだよ」


896 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 11:52:10.13 ID:2Pe3/QIB0
番外「…言ったね…一方通行!!貴様見ているな!!」

一方「何言ってンだお前」

黄泉川「世界中の中学生以上を敵に回したじゃんよ!!」

芳川「よろしい、ならば戦争だ」

一方「…くだらねェ…俺は寝るぞ」

最近では杖もつかずに歩けるようになってきているのだが、それでも一応は杖をついて歩き出す一方通行

そうすれば、少なくとも「あぁ、この人はけが人だから飛び掛かったらいけないな」と手加減してもらえるはずなのだが

番外「逃がさねぇぞ!!」

一方「あァ!?」

がしっ、と後ろから番外個体に飛びつかれた一方通行はそのまま3mほど地面を転がり、机の脚に頭を打ち付けた

間一髪、気絶で済んだのである



一方「…いってェ…」

番外「アナタ…馬鹿じゃないの…ミサカのために…こんなに体まで張って…」グスッ

一方「…番外個体…」



一方「とりあえずジャパニーズ土下座をしてもらおうか」

番外「全く、これだから冗談の通じない脳内イワークは」

一方「…」

目を覚ますと、一方通行はベッドの上に寝ていた

時刻は、例の事件から30分ほど

気絶、というより短い昼寝といった感じの時間だった

一方「…てめェ、さっきはよくも…」

番外「事故だよ事故」

一方「これからお前に、死亡事故を起こしてやる」

番外「分かったから素数を数えてよ」



897 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 11:56:41.28 ID:2Pe3/QIB0
一方「…他のヤツらは」

番外「まだトランプしてるよ、アナタが起きたらまた一緒にやろうってさ」

一方「…あいつら…俺のこと心配してねェだろ」

番外「打ち止めは、痛いの痛いの飛んでいけってしてたけどね」

一方「何それ見たかった」

番外「…まぁ、ミサカもちょっとは悪かったよ、まさかアナタがあんなに簡単に飛ぶとは思わなかったからさ、まるで米粒だね」

一方「…てめェ、マジで殴るぞ」

番外「いやぁん!!これがいわゆるドメスティックバイオレンス!?」

一方「…」スッ

番外「待った、マジで殴るのはなしの方向で」

一方「…ちっ…頭にこぶが出来なかったのは不幸中の幸いだな」

番外「そんなに強く打ったの?」

一方「気絶するほどに打ったンだよ」

番外「…そりゃあ、なんともすいませんねぇ」

一方「…」

番外「まぁまぁ、何か飲みたい物とかある?看病はしてあげるからさぁ」

一方「いらねェ、どうせお前はタバスコでも入れるつもりだろ」

番外「」ギクッ


番外「あ、あはは…タバスコとタバコって似てるよね…」

一方(こいつ…)

番外「そ、それよりさぁ!!ミサカが痛いの痛いの飛んで行けってしてあげようか!?」

一方「必要ありませン」

番外「ワーオ、これが倦怠期ってやつか」


898 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 20:14:26.70 ID:2Pe3/QIB0
一方「…くそ、とにかくお前、どっか行けよ」

番外「ちょ…それってさぁ、ちょっとひどくない?」

一方「俺を吹っ飛ばしたのはひどくないのか?」

番外「…そ、それは申し訳なかったってば」

番外個体が、罰が悪そうに謝りだす

番外「…そ、そりゃあ…その…」

一方「…悪かった、別にマジで怒ってるわけじゃねェよ」

ころん、と寝返りを打ってから一方通行があくびをする

一方(…寝るのと気絶は違うンだな)

めちゃくちゃどうでもいい発見をした、なんかお得な気分だ

番外「…ねぇねぇ」

一方「あァ?なンだよ」

番外「二人きりだね」

一方「…」

もう一度寝返りを打って、番外個体の顔を見てみる

ニコニコと、心からの笑顔を浮かべる彼女は、本当に可愛らしい

一方通行もそうだったが、昔はあまり笑顔を浮かべるのが上手くはなかった

いつからか、自然に笑みを浮かべることが出来るようになったのだ

一方「…お前、笑うと可愛いンだよな」

番外「なっ…わ、笑うと、は余計じゃない!?」

一方「…ずっと笑ってればいいのによ、いつもは馬鹿にしたみたいな表情しやがって」

番外「それはアナタだってそうじゃんか」

一方「…俺は…いいンだよ、生まれつきだし」

番外「ミサカだって生まれつきなんだけど」

一方「…そう言えばそうだな」

ふン、と笑ってから一方通行が体を起こす


899 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 21:02:40.57 ID:2Pe3/QIB0
一方(…あァ、そういえば)

愛してる、と言ってあげるンだったな、と小さく呟く

番外「?何か言った?」

一方「…なァ、番外個体、ちょっとこっち来い」

番外「なになに?なんか気味悪ーい」

一方「…いいから来いよ」

番外(…?)

訝しげな表情で、番外個体が一方通行に近づく

その途端、一方通行は彼女を抱きしめた

番外「にょわっ!!な、なに急に…」

一方「愛してる」

番外「…へ?」

一方「…愛してるって言ってンだよ、何度も言わせるな」

番外「…あ、愛してる…?」


番外「えぇぇぇぇぇ!!!ど、どうしたの急にそんなこと!?」

一方「…言ったらいけねェのかよ」

番外「ち、違う違う!!なになに、もしかして何か悪いことでもしちゃった?浮気なら、まぁ一回くらいなら気の迷いってことで…」

一方「俺がお前以外の女に興味持つとでも思ってンのか」

番外「あ…」

一方通行は真剣だ、番外個体もそれは分かっている

だからこそ、恥ずかしいのだ

番外「あ、あう…そ、その…どうしたの、急に」

一方「言いたくなったンだよ」

番外「…そ、そのさ…ありがと」

一方「あァ」


900 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 21:11:33.90 ID:2Pe3/QIB0

一方(…結局、そこまで何かがあるわけでもなかったな)

リビングのソファーに座った一方通行は、つまらなそうな表情で考えていた

キッチンでは、四人が料理を作っている

もう晩御飯の時間だ、芳川が料理をするのは非常に珍しい

ちなみに、最近やっと炊飯ジャーではなく普通のキッチンを使うようになったのだ

一方(…まァ、そっちのほうが大勢で楽しく料理出来るンだろォな)

料理の楽しさは彼には分からないが、そうやって家族が集まっているのを見るとほっとする

一方(…家族、か)

失った物を、彼は取り返したのだ

一方(…ちっ、上条のヤツに感謝なンて…今更だな)



番外「はい、出来たよん」

一方「あァ」

食卓につき、5人が手を合わせる

一方(…こういう挨拶は…垣根の野郎がよくやってたな)

黄泉川「いただきますじゃん!!」

四人「いただきます」


打ち止め「?あれ、一方通行のハンバーグだけちょっと大きい!!ってミサカはミサカは指摘する!!」

芳川「あら、それって番外個体が作ったのよね」

一方「…?」

番外「気のせい気のせい!!ちゃっちゃと食べちゃおうよ!!」

打ち止め「きーっ!!ミサカも大きいのがいい!!」

一方「ほらよ、半分やる」

打ち止め「!!やったー!!ってミサカはミサカは喜びの舞!!」

一方「危ねェからナイフとフォーク振り回すな」



901 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/09(月) 21:17:20.16 ID:2Pe3/QIB0

一方「…なァ」

皿洗いをしている三人を見つめながら、一方通行は番外個体に声を掛けた

番外「ん、なに?」

一方「お前、めちゃくちゃ嬉しかったンだろ」

番外「な、なんのことかわからなーい!!!」カァッ

一方「お前…めちゃくちゃ正直だな」

はァ、とため息をついてから一方通行が番外個体の手を握る

番外「っ!!」

一方「…愛してるなンてよ、あンまり言わないンだから…真面目に受け取ってくれよ」

番外「…わ、分かってるよ…恥ずかしいじゃん」

一方「…そォか」

番外「…ミサカもさ」

番外個体が、一方通行の手を握り返す

番外「…こう見えても…一方通行のこと、愛してるんだよ」

一方「…あァ」

なるほどな、と一歩通行は納得した

確かに、愛してるなんて言われるのは恥ずかしいものだ

そして、同時に舞い上がってしまいそうなほどに嬉しい


打ち止め「あー!!二人がイチャイチャしてる!!ってミサカはミサカはびしっと指差してみたり!!!」

黄泉川「なんだ、仲良しじゃんよ」

芳川「リア充爆ぜろ」


一方「…うるせェな、別にいいだろ」

笑いながら、一方通行がキッチンへ向かう



二人にとって、愛してるとは少し恥ずかしく、でも幸せな言葉だった


902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/09(月) 23:37:40.82 ID:SiPmH0FT0
いちゃいちゃ良いわぁ…

乙!
上琴が楽しみで仕方ないっ…!
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/10(火) 08:20:21.44 ID:CCPB5RACo
妻に愛してると言ってみるスレが大好きな俺には極上のご褒美だぜぇ
乙オツおつ!
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/10(火) 10:40:29.11 ID:eMJGdKjqo
もう100きったな
おつ
905 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 16:58:22.37 ID:Zk3I1gO60


テクパトルの場合

テクパトル「・・・愛してる、か」

ジムの中にあるベンチプレス台

そこに腰掛けたテクパトルはずっと考えていた

愛してる、という言葉を伝えることに恥ずかしさはない

それはつまり、その言葉をよく言っているということなのだ

テクパトル(・・・毎日毎日言ってるからな・・・愛してる、なんて)

今更改めて言っても、19090号はなにも特別には思わないだろう

テクパトル「はぁ・・・」

アックア「テクパトル君、どうしたであるか」

テクパトル「あぁ、アックアさん・・・」

アックア「スランプであるか?」

テクパトル「いえ・・・ちょっと悩んでることが」

アックア「悩んでいる?」

ちなみに、テクパトルは今日は仕事なわけではない

ただたまには仕事以外でもこのジムで鍛えるのはいいのではないか

周りには土御門やコーンロウのいかつい男もいる

テクパトル「・・・愛してる、って美月・・・妻に言いたいんです」

アックア「言えない、と?」

テクパトル「あぁいや・・・そうではなくて」

なんと説明しようか、テクパトルは迷った

テクパトル「こう・・・いつも言っている愛してるとはまた違って・・・」

アックア「真剣に、ということであるか」

テクパトル「平たく言えば・・・毎日真剣ではあるんですけど」

アックア「ふむ・・・それは、やはり伝えるシチュエーションが大事なのではないか?」

テクパトル「シチュエーション?」

アックア「例えばデートに誘ったり、綺麗な夜景を見ながらだったり・・・」


906 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 16:58:49.10 ID:Zk3I1gO60
テクパトル「アックアさんって意外とロマンチストなんですね」

アックア「なに、女好きな知り合いがいるのでな」

テクパトル「へぇ・・・」

確かにシチュエーションを変えれば、いつもの「愛してる」とは違うかもしれない

アックア「・・・それに、テクパトル君の言葉なら奥さんも喜んでくれるはずである」

テクパトル「・・・そうですね、大切なのは気持ち、か」

アックア「善は急げ、今から行ってはどうだ?」

テクパトル「行く・・・ってどこへ?」

アックア「君と奥さんの思い出の場所なんて、素敵だと思うが」




思い出の場所、と言われるとテクパトルは迷ってしまう

そもそもテクパトルはそういう物にあまり執着がない

テクパトル(・・・美月を呼び出したのはいいけど・・・どこに行けば・・・)

はぁ、とため息をつく

時刻は午後4時

このままデートに行くなら夜ご飯も外で食べることになる

テクパトル(17600号に皆のことはお願いするか)

手短にメールを打つと、一言「がんばれ」との返信が来た

あまり愛想がないな、と笑いながらもテクパトルは「ありがとう」と返信した

それもあまり愛想がないメールなのだが、本人は気づかないものだ



19090「テっくん!」

テクパトル「ん、悪いな・・・急に呼び出したりして」


907 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 16:59:14.74 ID:Zk3I1gO60

19090「いえ・・・何かありましたか?」

テクパトル「・・・ちょっと、デートなんかしたいなって」

19090「!しましょう、是非!」

テクパトル「行きたい場所とかあるか?」

19090「うーん・・・」

考える仕種を見せる19090号

それが妙に可愛らしく、抱きしめたくなってしまう

テクパトル「・・・ないか?」

19090「えっと・・・ちょっと、噂に聞いた場所なのですが」

テクパトル「噂?」

19090「その・・・そこを訪れたカップルは幸せになれる、という場所で・・・」

テクパトル「幸せに、ねぇ・・・今も幸せだけどな、俺」

19090「!?」

顔を真っ赤にした19090号がテクパトルの手を優しく掴んだ

テクパトル「どうした?」

19090「と、とにかく!どんな場所か興味があるので行ってみましょう!」

テクパトル「あ、あぁ」

19090号に引っ張られるがまま、テクパトルは歩いた




テクパトル「へぇ・・・ここか」

19090「はい、噂では」

テクパトルと19090号がたどり着いたのは少しばかり高台にある公園、その展望台だった

彼らが住む家から意外と近くて驚いたが

テクパトル「たしかに・・・ここは綺麗な景色だな」

19090「きっと、こんな場所でプロポーズされたら、OKするしかないんでしょうね」

テクパトル「そうだな」

まだ夕方なのでそれほどだが、夜になれば夜空と街のコントラストが美しいだろう



908 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 16:59:42.38 ID:Zk3I1gO60
テクパトル「・・・いいな、ここ・・・みんなも連れてきたいよ」

19090「みんな?」

テクパトル「他の妹達さ」

19090「むむ、デートの最中に他の女の子の話は禁止ですよ?」

テクパトル「女の子ってな・・・」

展望台の手すりに顔を乗っけて、テクパトルがぼんやりとする

テクパトル「・・・そうだ」

19090「?何か?」

テクパトル「あぁいや・・・なんでも」

小さく笑ってから、テクパトルが目を閉じた

テクパトル(思い出の場所、あるじゃないか)




時間が過ぎるのは早い

それが楽しい一時ならば尚更だ

テクパトルと19090号はしばし展望台で談笑した後、近くの和食屋に来ていた

ちなみに畳に正座をするのが基本らしく、テクパトルは少しそれに緊張してしまう

テクパトル「・・・和食屋なんて、ほとんど来ないからな・・・」

箸の使い方は分かっているしマスターもしている

だがこういう店で間違った使い方をしてしまったら、という若干の緊張があるのも事実だ

19090「テっくんは魚の煮付けを頼まれるんですか?」

テクパトル「あぁ・・・なんだか、カレイに惹かれてしまったからな」

19090「カレイに惹かれるとは・・・中々通ですね」

テクパトル「通なのか・・・」

19090「美月はやっぱり、精進料理を食べようと思います」

テクパトル「精進料理か・・・ヘルシーだな」

19090「女性にとって脂肪は敵ですから!」

ふふん、と鼻を鳴らす19090号

テクパトルとしては別に彼女がぽっちゃりでも可愛らしそうで見てみたいのだが



909 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 17:00:08.56 ID:Zk3I1gO60
テクパトル「・・・煮付けって美味しいのかな」

19090「テっくん、煮付けはよく食べるじゃないですか」

テクパトル「でもさ、家は鯛の煮付けなんかはたまにするけど・・・カレイはしないじゃないか」

19090「そういえば・・・」

テクパトル「なんか楽しみではあるけど、ギャンブルでもあるんだよな」

笑いながら、テクパトルが店員に注文を伝える

テクパトル「・・・まぁ、ハズレってことはないだろ」

19090「・・・そうですね」

料理があるまでしばし時間がある

特にすることもないので、テクパトルはじっと19090号を見つめる

彼女は非常に整った顔をしている

それは美琴から貰ったものでもあるのだが、それにしたって美しい

他の妹達よりずば抜けて綺麗だと思っている

19090「あ、あの・・・」

テクパトル「ん?あぁ悪い・・・」

19090「そ、そんなに見つめられると恥ずかしいです・・・」

テクパトル「・・・いや・・・美月って綺麗だなって思ってさ」

19090「!そ、そんな台詞・・・他の人に言ったらダメですよ?」

テクパトル「分かってるさ、それに言う気にはならないだろ」

ニコニコと笑うテクパトル、19090号は更に恥ずかしくなってしまう

19090「あう・・・み、美月の・・・どこが綺麗なんですか?」

テクパトル「目かな」

19090「目・・・ですか」



910 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 17:00:36.71 ID:Zk3I1gO60
テクパトル「綺麗だ、映っている風景が澄んでいる・・・美月の世界はきっと、綺麗なんだろうな」

19090「き、急にロマンチストになりました!」

テクパトル「ははは!そうだな、俺にしてはキザな台詞だったか」

こういうのは垣根に任せるよ、と苦笑いする

しばらくして、店員が料理を運んできた

テクパトル「・・・煮付けって食べるのが難しいんだよな」

箸を器用に使い、最初のうちは上手く食べていく

テクパトル「うん、美味しい」

19090「あ、この精進料理も美味しいです・・・どうしてこの食材だけでこんなにしっかりした味が出せるんでしょうか・・・」

それぞれの感想を述べてから、二人は黙々と料理を口に運ぶ



テクパトル(・・・崩れてきた・・・)

箸で突いた場所が、段々と形を崩していくのだ

イライラしてはいけないのだが、こういうチマチマした作業は昔から好きではなかった

テクパトル(・・・難しい・・・!)

19090「?テっくん、なんだか苦戦してますね」

テクパトル「あぁ・・・煮付けは食べるのが難しいな」

19090「ちょっと貸してもらっていいですか?」

テクパトル「?」

煮付けの乗った皿を19090号が受け取る

そして、慣れた手つきで綺麗にその身を取っていく

19090「はいどうぞ、これで簡単に食べられます」

微笑んだ19090号を見て、テクパトルは胸が跳ねた

なんという和風美人なのだろうか

美しい、やはり彼女は美しい

テクパトル「・・・綺麗だなぁ」

19090「!?」

顔を真っ赤にする19090号、煮付けに満足するテクパトル

周りの客はそんな二人を微笑ましく思いながら見つめていた


911 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 17:52:31.42 ID:Zk3I1gO60

テクパトル「…ん、もう真っ暗だな」

11月も半ばに入ったのだ、夜になれば体は冷える

和食屋を出てすぐに、テクパトルは夜空を見上げた

綺麗な満月だ、月を見ているとテクパトルは故郷のことを思い出す

テクパトル(…綺麗だな)

19090「…さ、寒くなってきましたね…」

横を歩く19090号が、少し体を震わせている

自分の着ていた上着を差し出して、テクパトルが笑う

テクパトル「ほら」

19090「!!だ、駄目ですよ!!テっくんが寒いじゃないですか!!」

テクパトル「ん…そうだな、じゃあ」

上着の前を広げて、19090号の体をそこに入れる

テクパトル「これでいいだろ」

19090「あ、あ…あったかいです…」

顔を真っ赤にさせる19090号

二人の体は一つの上着の中に納まっている

19090号は胸の高鳴りを抑えるので必死だが、一方のテクパトルは全く別のことを考えていた

テクパトル(…愛してる、か)

どのタイミングで言えばいいのか

思い出の場所には、そろそろ着いてしまう

テクパトル(…あったかいな)

小さく息を吐くと、それは白くなって空へと登って行った


912 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 19:42:07.12 ID:Zk3I1gO60

テクパトル「…もう11月か…少ししたらクリスマスなんだな」

19090「そうですね…一年があっという間です」

テクパトル「…そうだ、クリスマスプレゼント…何がいいかな」

19090「?そうですね…テっくんとお揃いならなんでも構いませんよ?」

テクパトル「…たまには一人だけの物も買ってみたらどうだ?」

19090「…イヤです、テっくんとお揃いじゃなきゃいりません!!」

テクパトル「…まぁ、別に悪いとは言わないけどさ…」

愛されている証拠なのかな、とテクパトルは考える

ちなみに、お揃いの物を欲しがる女性は「独占欲」が強かったりもする

テクパトル「…そろそろかな」

19090「?」

テクパトル「…ここの通り…さ、覚えてないか?」

19090「…あ、ここは確か…テっくんが美月に名前を付けてくれた場所ですね」

テクパトル「あぁ…懐かしいよな、もうだいぶ前になる」

19090「…思い出の場所ですね…」

テクパトル「…」

真っ白な二つの息が空に昇っていく

愛してる、なんて今なら言えるのだろうか

こんな時に、なぜか緊張を覚えていた

テクパトル(…鼓動が伝わらなきゃいいな)

こんなに近くにいるのだ、既に伝わっているのかもしれない

テクパトル「…あのさ、美月」

19090「はい、なんですか?」


テクパトル「…愛してる」

19090「…」



19090「あ、あ…ありがとうございます」カァッ

913 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 19:47:56.13 ID:Zk3I1gO60
テクパトル「…そのさ、いつも言っているのとは…ちょっと違って、こう…」

19090「真面目な雰囲気で言いたかったんですよね?」

テクパトル「わ、分かってたのか?」

19090「ふふふ…テっくんが急にデートに誘いだして、こんな思い出の場所に来るなんて…何かはあるな、と」

テクパトル「なんだ…バレバレだったのか」

19090「でも…思い出の場所で、なんてテっくんもちょっとベタなことをしますね」

テクパトル(アックアさんごめんなさい)

19090「…嬉しかったですよ」

小さな声でそう言ってきた19090号を、テクパトルが見つめる

暗い夜道でも分かる、顔が赤くなっていた

テクパトル「…嬉しかった、か」

19090「も、もちろんいつも愛してるって言ってもらっていますし、それは自覚していますよ!?」

テクパトル「あぁ」

19090「…で、でも…こうやって、結婚してからも…ちゃんと考えてデートしてくれるのは、嬉しいです」

テクパトル「そんなに変わってるかな?俺はそういうのが普通だと思ってたけど」

19090「…優しいですね、テっくんは」

テクパトル「…」

19090「…あの、美月も愛しています」

テクパトル「あぁ、分かってる」

19090「テっくんが思っているよりも、ずっとずっと大好きだと思います」

テクパトル「ははは!!思っている以上に、か」

声を上げて笑いながら、テクパトルが頭を掻く

テクパトル「…そりゃまた、ずいぶんと愛されてるってことだな」

19090「…ですから、テっくんがもし美月のことを好きではなくなっても…ずっと、美月はあなたを愛します」

テクパトル「…あのな、美月」

空の綺麗な月が、美しい輝きを放つ


914 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 20:00:47.04 ID:Zk3I1gO60
テクパトル「俺は、お前を一生愛する自信があるよ」

19090「で、ですが…その、テっくんはモテますから…」

テクパトル「そんなのどうだっていいさ、俺はもうこんなに大きな愛情を見つけたんだ」

19090「!」

テクパトル「…お前が年を取っても、声が出なくなっても、目が見えなくなっても、もう俺のことを愛していたと忘れたとしても…俺はお前を愛するよ」

19090「ち、誓ってくれますか?」

テクパトル「あぁ…誰に誓えばいいのか分からないけど」

19090「…テっくんの国の神様にお祈りしたらどうですか?」

テクパトル「…アステカの神様は、そういうのは聞いてくれなさそうだけどな」

苦笑しながら、テクパトルが空を見上げる

相変わらずの美しい月だ、いつかテクパトルがこの世から消えてしまっても、その月はずっと輝き続ける

雨が降っても、雲に隠れても、それは必ず空のどこかに浮かんでいる

テクパトルが探せば、どこにだってあるはずなのだ

テクパトル「…月は…ずっと、俺の心の中にあり続けるんだな」

19090「…はい」

テクパトル「美しい月…か、あの空の月に誓うのはどうかな、それなら毎晩その誓いを思い出せるだろ?」

19090「なるほど、それは名案です!!」

テクパトル「…俺は、誓うよ」

19090「では…美月も誓っていいでしょうか」

テクパトル「あぁ」

空を見上げた二人は、より一層体を寄せ合った


二人にとって「愛してる」とは、誓いの言葉だった


915 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/10(火) 22:28:00.84 ID:Zk3I1gO60

エツァリの場合


エツァリ(…愛してる…か)

エツァリにとって、それは別に言うのが難しい言葉ではない

毎日のように言っているのだ、それも大抵はショチトルから言ってくるのだが

ショチトル「なに難しい顔をしてるんだ?」

エツァリ「いや…少し考え事を、な」

紅茶の入ったカップを持ちながら、エツァリが答える

二人がいるのは彼らの家、そのリビングだった

そこまで広い家ではないが、それでも二人で暮らすには十二分の広さだ

将来的には引っ越したいとも思っているが、今はそれも現実的ではない

とにかく、そんな家が二人にとっては愛の巣だった

ショチトル「…考え事、か…どうせ私に合うコスプレでも考えていたんだろ」

エツァリ「そ、それはない!!いや、それも考えたいところだが今はそれどころじゃないんだ」

ショチトル「ほほう、じゃあ私に合うオモチャか?」

エツァリ「それも考えたい、だが違う」

ショチトル「…お前がそれ以外を考えるなんてよっぽどだな」

エツァリ「それはさすがに言いすぎだ…」

ため息をついてから、もう一度垣根の言葉を思い出す


「…改めて、自分の大切な女に愛してるって、言いたくはないか?」


エツァリ(それはもちろん…言いたいさ)

言いたいのだが、ショチトルと自分は、そんなカップルではない気がする

愛情はあるが、しかし真面目くさった愛情なんて、とショチトルは考えているかもしれない

エツァリ(…そう考えると…俺はショチトルのことを、あまり理解していないかもな)

もう一度、深いため息をついた


幸せはこうやって逃げるのか、と妙に納得しながら

916 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:12:23.70 ID:8Zi1xcVn0


ショチトル「さっきからどうした、何か悩み事でもあるのか?」

エツァリ「いや・・・なんでもないさ」

ショチトル「なんでもないと言う割には真剣に悩んでるみたいだが」

エツァリ「・・・なんでもない、大丈夫だ」

ショチトル「・・・」

怪しい、と疑うような目つきでショチトルがエツァリを見つめる

その視線を上手く避けながら、エツァリはこんな質問をしてみた

エツァリ「もしもの話をしてみてもいいか?」

ショチトル「もしもほどくだらないことはないが・・・まぁいいぞ、暇つぶしにはなりそうだ」

エツァリ「もしも・・・俺が突然、お前の前からいなくなったらどうする?」

ショチトル「・・・え・・・?」

エツァリ「だ、だから・・・俺がいなくなったら・・・」

ショチトル「そ、そんなのはダメだ!」

突然、エツァリの隣に移動したショチトルが彼の手を握る

ショチトル「いなくなるなんて許さないからな!」

エツァリ「だ、だからもしもの話だ、実際にいなくなるわけじゃない」

ショチトル「・・・頼む、もしもでもそんなことは言わないで欲しい」

エツァリ「・・・」

迂闊だったな、とエツァリは後悔した

彼は昔、実際に突然ショチトルの元から離れたことがあったのだ

今またショチトルに不安を与えてしまったかもしれない

エツァリ「・・・すまない、そういうつもりではなかったんだ」

ショチトル「・・・分かってるさ、お前は私の思いを尋ねたいんだろ?」

エツァリ「・・・あぁ」

917 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:13:05.08 ID:8Zi1xcVn0
ショチトル「そうだな・・・お前がいなくなったら、か・・・それはどういうシチュエーションなんだ?」

エツァリ「シチュエーション?」

随分とおかしなことを尋ねるな、とエツァリは首を傾げた

それはそこまで重要には思えないのだが

エツァリ「なら・・・俺がどうしても、地球の反対側に逃げなければならなくなった、とか」

ショチトル「なら追い掛けるさ」

エツァリ「追い掛けるって・・・」

ショチトル「だってそうだろ、私はお前のそばにいたいんだから」

エツァリ「・・・」

ショチトル「・・・お前が嫌だ、と言うなら無理にはしない」

エツァリ「そんなこと、言うわけないだろ」

意外だった、ショチトルのことだから笑ってごまかすと思っていたのだ

それなのに、彼女は真剣に答えてくれた

エツァリ「・・・意外だな」

ショチトル「意外?」

エツァリ「いや・・・これから言うことに気を悪くしないでほしい」

ショチトル「あぁ」

エツァリ「・・・俺は、正直・・・お前はそんなにしっかりした恋愛観は持っていないと思っていた」

ショチトル「・・・」

エツァリ「俺を深く愛してくれていることは知っている、それは断じて疑っていない」

ショチトル「・・・何が言いたいんだ?」

エツァリ「・・・真剣な愛情を押し付けられるのを嫌がるタイプだと思っていたんだ」

ショチトル「あぁ、それは嫌いだが」

エツァリ「き、嫌いなのか?」

ショチトル「もちろん、なんで私が押し付けられた愛情を受け止めなきゃいけない?」

エツァリ「・・・なら、どうしてお前は俺と・・・」


918 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:13:45.19 ID:8Zi1xcVn0
ショチトル「・・・エツァリ、お前は私に愛情を押し付けてきたりはしない」

エツァリ「・・・」

ショチトル「なぁ、私が毎日毎日エッチをせがむのが不安にさせてしまったのか?もしかして私は誰にでも体を許すような女だと思われてしまったか?」

エツァリ「そ、そんなことは言ってない!」

ショチトル「・・・私はな、他の誰にせがまれても、例え国を買えるような大金を渡されても・・・体を許すどころかキスだってしない」

エツァリ「ショチトル・・・」

ショチトル「私がこんな風に、一人の女でいたいと思うのはお前の前でだけなんだ」

エツァリの手を握り、ショチトルが笑う

その笑みは、エツァリの心の中をいつも陣取っているものだ

ショチトル「・・・お前の愛情は押し付けられたものじゃない、私が求めているものなんだ」

エツァリ「・・・」

ショチトル「私は、お前となら真剣な恋も出来る、コメディー要素が一切ない恋愛映画みたいな恋だってしてやる、体の関係がない恋も、毎日愛してる愛してると言い合う情熱的な恋も、夫婦の間にあるような、もう冷めているようにさえ見えるがしっかりと形を保っている恋も」

エツァリ「・・・ショチトル、お前は・・・」

ショチトル「・・・エツァリ、私は真剣なんだ、確かに・・・普段はそんな話はしない、でもな」

ドキドキと鼓動が聞こえる

自分の物だ、あまりに早すぎて心臓が壊れてしまわないか不安になるほどに

ショチトル「私だって、お前と結婚した後の生活を想像することはある、お前に指輪わ渡される夢を見たこともある、認めるよ、確かに私は他の女より夜の関係を求める・・・でも、それはお前を独占しているという安心感が得られるからなんだ」

エツァリ「・・・お前、そこまで俺とのことを真剣に・・・」

ショチトル「いつもは言わないさ、愛してるという言葉も、もしかしたら・・・私には言えないかもしれない」

でも、と

ショチトル「言葉なんて必要ない、愛してるとお前に伝えるよりも先に、私の心の中には確固たる愛情がある」

エツァリ「・・・俺にもある、お前に対する確固たる愛情が、生まれた瞬間を忘れなどするものか」

ショチトルの黒い髪を撫でる

綺麗な髪だ、エツァリはいつもそれを間近で見ていた

組織にいた時から、幼かった少女が美しい女性に変わるのを、誰よりも近くで見ていたのは彼だ

エツァリ「ショチトル」

言いたかった、垣根との約束があるからではない

ただ、本当に伝えてあげたかった


エツァリ「愛してる」



919 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:14:16.33 ID:8Zi1xcVn0
いつもの言葉だ、変わらないフレーズだ

なのに、ショチトルはそれを聞いた途端に幸せそうな笑みを浮かべた

エツァリ「・・・すまない、知らなかった・・・お前がそんなにしっかりとした恋愛観を持っていたなんて」

ショチトル「はは・・・あまり目立たせはしないからかな」

エツァリ「・・・だが、今やっと気づいた・・・俺もお前との幸せな未来を望んでいる、この気持ちが止まらないんだ」

鼓動が早い、何か溢れ出そうな感情が生まれる

ショチトル「・・・私もだ」

そっと顔を近付け合う二人

優しく重ねられた唇が、二人の体に温もりを持たせた

二人にとって「愛してる」とは、未来に紡ぐ言葉だった




上条当麻の場合

上条「・・・」

トントン、と音が響いている

何の音だったか

よく聞き慣れた音だ、聞き飽きるほどに聞いている

上条(・・・これは・・・)

包丁の音、まな板を叩く音

幸せな音だ、上条に幸せをもたらしてくれる音

上条「美琴か」

ゆっくりと台所に向かい・・・そういえば、自分はいつの間に寝ていたのか

台所を覗き込む・・・そういえば、この家はどこか

見たことがある、昔も夢の中で見た

上条(・・・こ、これ・・・たしか)


920 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:14:42.18 ID:8Zi1xcVn0


「美琴、俺も手伝うよ」

「いいわよ、当麻は仕事で疲れてるでしょ?」

幸せそうな夫婦の声が台所から聞こえた

「何言ってんだよ、美琴はお腹の中に赤ちゃんがいるじゃないか!もし無理して倒れたりしたら上条さん、泣いちゃうからな!」

「もう、大袈裟なんだから」

「本当だよ」

「分かってる」

キスをする夫婦

あぁ、それは




美琴「当麻!当麻ったら!」

上条「ぷぁぁっ!」

大声に驚き目を開ける・・・さっき起きたのは夢の中だったというわけだ

上条「あ、あれ・・・俺寝ちゃってたのか」

美琴「ったく・・・昼間は垣根に呼び出されたって出掛けるし、帰ってきて私の相手してくれると思ったらいつの間にか寝てるし」

不満そうな表情の美琴

彼女の傍には読み終わった漫画が山積みにされている

かなりの数が積まれている、つまり上条は長い間寝ていたのだ

上条「わ、悪かった・・・」

美琴「・・・疲れが溜まってるんじゃない?なんか随分深く眠ってたけど」

上条「大丈夫だって、無理なんて最近してないし」

ベッドから体を起こし、冷蔵庫に向かう

中には冷えた麦茶が入っている

もう冬も間近なのだが麦茶の魅力は変わらない



921 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:15:09.32 ID:8Zi1xcVn0
美琴「本当に?無理して倒れたりしたら私、泣いちゃうわよ」

上条「・・・」

思わず苦笑してしまう、夢の中の自分と同じことを言っている

美琴「な、なに笑ってんのよ?」

上条「なんでもないよ」

麦茶を飲み終えた上条が、再びベッドに座る

美琴「・・・この部屋も・・・もう慣れちゃった」

上条「そうだよな、美琴はもうずっとここにいるし」

美琴「・・・なんか、ちょっと寂しい」

上条「寂しい?」

美琴「正直な話さ・・・昔はここに来るだけで胸がドキドキしてた」

懐かしそうに過去を思い返し、美琴が笑う

美琴「・・・最初はこの部屋に来ただけで、当麻と一緒なんだって思えた」

上条「・・・」

美琴「でも・・・今はもう、この部屋にいるのが当たり前、ここにいられる幸せを・・・もう、当たり前なんて思っちゃってる」

ごめんね、と美琴が苦笑いする

どうして今頃言い出すのだろう、と上条は一瞬思った

そうだ、そろそろ上条と美琴が付き合いだした記念日が近いから

もう一ヶ月を切ろうとしている

その度に上条も美琴も、二人幸せでいられることに感謝する

上条「・・・当たり前でいいんじゃないかな」

美琴「え?」



922 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:15:38.85 ID:8Zi1xcVn0
上条「俺は嬉しいよ、美琴がここにいるのが当たり前なこと、ここにいなかったら胸が苦しいこと」

美琴「でも・・・今はここにいるだけじゃ当麻と一緒なんだって喜べない」

上条「慣れちゃったってだけだろ」

美琴「・・・こういうのが積み重なって・・・それで、いつか愛情が消えちゃうんじゃないかって考えたら、怖くて・・・」

上条「・・・」

美琴「あ、あはは・・・ごめんね、当麻のことこんなに好きなのに・・・なに不安になってるんだろ」

好きだからなのだ

果物の甘みを知らない人間がなぜこの世から果物が絶滅することを恐れるだろうか

その甘みを知っている人間だけが、それが無くなってしまうことを恐れる

上条「・・・だったらさ」

優しく美琴の頭を、自分の膝の上に寝かせる

美琴「あ・・・」

上条「こういうのどうかな、膝枕!」

ニコニコ笑いながら、上条が美琴の顔を上から覗き込む

上条「あんまりしたことないだろ、ドキドキして新鮮だったりしないか?」

美琴「し、新鮮だけど・・・」

上条「・・・これでいいんだ、もしも美琴が俺の愛情表現に慣れたなら、俺は別の方法で愛情を伝えるよ」

美琴「!」

上条「手を握ることに飽きたならキスにする、キスに飽きたらずっと傍にいてやる、傍にいるのに飽きたらこうやって膝枕とかしてやる」

美琴「当麻・・・」

上条「これなら飽きないだろ?」

美琴「でも・・・」


923 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:16:05.17 ID:8Zi1xcVn0
上条「・・・もしもお前が、俺の愛情を当たり前に思って慣れちゃったならさ」

そうなるのがいつか来てしまうのか

来てしまうだろう、誰にだってそれはある

老夫婦が若い頃の情熱を保ち続けるのは不可能だ

仕方ないことであり、それはもう逆らえない運命だ

だとしても、上条はそんな運命を変える右手を持っているから

上条「それ以上の愛情をお前に注ぐよ、そしたら飽きないだろ」

美琴「・・・馬鹿」

上条「ははは・・・馬鹿かもな、本当に」

キスをしてから、上条が美琴の綺麗な髪の毛を撫でる、これには飽きることがないだろう

上条「でも・・・俺って馬鹿だし不器用だけど、美琴に愛情を伝える時だけは誰よりもロマンチストになってやるから」

美琴「・・・ありがと」

上条「・・・こうやって上から美琴の顔を見るのって珍しいな」

美琴「そうね、膝枕なんてほとんどされないし」

上条の足はがっちりしている、それが頼りになって、美琴はまた微笑む

美琴「こうしてると・・・落ち着く」

上条「そっか」

美琴「・・・こんな幸せ、いつまでも続いたらいいな」

上条「・・・」

可愛い女の子だ

昔から可愛いとは思っていた、付き合いだしてからそれは更に加速していく

普段の仕種を間近で見ていられる

それだけで、彼女に対する愛情は深まっていく



924 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:16:49.19 ID:8Zi1xcVn0
上条「今の幸せで満足なのか?」

美琴「え?」

上条「あーあ、今から大切なこと伝えようと思ってたんだけど・・・今で満足なら伝える必要もないかなぁ」

美琴「な、なになに!?伝えたかったことって何よ、教えなさいってば!」

上条「でもなぁ・・・美琴は今の幸せに続いてほしいって言ったし」

美琴「も、もっと幸せにしてほしい!」

上条「うーん・・・」

美琴「だ・・・駄目なの?」

上条「・・・聞きたい?」

美琴「うん」

上条「・・・あんまり期待してるようなことじゃないと思う」

上条が目を細める、今更愛してるなんて言って何になるのか

垣根の提案は素敵だとは思う

だが愛してる、なんてことは恋人同士なら既に分かっていることなのだ

それをわざわざ、特別な言葉といった感じにする必要はあるのか

上条「・・・ごめんな、だから・・・」

美琴「・・・聞きたい」

上条「・・・」

美琴は期待してしまっているのではないか

海外旅行に一緒に行こう、とか指輪を買ってやったんだ、とかそんな台詞を期待しているのではないか

そんなに立派な言葉なんかではない

上条(・・・今更、だよな)

925 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:17:19.26 ID:8Zi1xcVn0
美琴「・・・」

上条「・・・あのさ」

でも、と上条は思った

自分が美琴を愛してるのは事実なのだ

もし仮に彼女ががっかりしたとしても、それは本心なのだ

今更だ、本当に今更だ

しかし上条は美琴を待たせた男なのだ、だったら「今更」と思われても構わない、昔気付いてやれなかった分を伝えたかった



上条「愛してる」



美琴「・・・なんだ、とっても素敵で大切なことじゃない」

ふっ、と美琴が微笑む

どんな女性よりも綺麗だな、と上条は息を呑む

この笑顔よりも輝く物がはたしてこの世にあるだろうか

あるとしたら、それはやはり美琴の何かなのだろう

美琴「・・・私が当麻の口から聞きたいのはそれ」

上条「あ、愛してる・・・なんて今更じゃないかな」

美琴「うん、すっごい今更」

あはは、と笑いながら美琴が続ける

美琴「今更だけど・・・その真っすぐでカッコつけてない言い方、当麻らしいから」

上条「俺らしいかな?」

美琴「うん、当麻が愛してるって言ってくれるの・・・嬉しい、絶対に飽きないもん」

上条「・・・そっか」

美琴「・・・私、当麻に愛してるって言われるのが昔の夢だった」


926 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/11(水) 08:17:56.10 ID:8Zi1xcVn0
そんなに昔から自分のことを追い続けていたのか

だとすれば本当に上条は待たせていたのだ

いつから、という記憶はないが上条は待たせた側だ

美琴「今は、当麻と家庭を作るのが夢」

上条「・・・美琴さん、そんなにストレートに言われたら照れますよ」

美琴「・・・愛してる」

体を起こし、美琴が上条にキスをする

優しい香りがする、シャンプーの匂いがまた変わっていた

美琴「・・・愛してるって、他の誰から言われても普通の言葉なんだ」

上条「・・・」

美琴「でもね、当麻が言ってくれた瞬間にそこに心が宿るの、愛してるって言葉が私の心に暖かさをくれる」

上条「・・・美琴」

堪らなくなって美琴を抱きしめる

上条「・・・放したくない」

美琴「放れないわよ」

上条「・・・ずっとこうしていたい」

美琴「これじゃ顔が見えないじゃない」

上条「・・・」

美琴の耳元で

小さく上条は囁いた、消えてしまいそうな声だったのに、美琴の耳には力強く聞こえた


上条「ずっと、愛してる」

美琴「私も、ずっと愛してる」


二人にとって「愛してる」とは、暖かい言葉だった





927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 22:11:08.14 ID:Bf7ptko10
うは〜!最高だわ
乙です
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/11(水) 23:13:10.48 ID:Q/NS6z0Jo
残り70か……頑張ってくだせぇ

929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 09:29:53.06 ID:B+T3htWFo
おつにゃんだよ!

930 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/12(木) 14:35:12.10 ID:H0Umfwb/0
垣根帝督の場合

垣根(・・・愛してるを言え・・・なんて皆には偉そうに言ったが)

ソファーの背もたれに体重を預けながら、垣根はため息をついた

心理定規はその反対側のソファーに座って雑誌を読んでいる

時々何か言いたげに眉をひそめているのが面白い

垣根(・・・中々、タイミングがないよな)

もう一度ため息をつく

それから、心理定規に声を掛ける

垣根「なぁ」

心理「・・・なに?」

垣根「その雑誌になんか不満でもあるのか?」

心理「あら、よく分かったわね」

垣根「さっきから何か言いたそうじゃねぇか」

心理「・・・これ、見てよ」

心理定規が指差したのはその雑誌に書かれていた言葉だった

「黒髪のあなたにはドレスが似合う!」

心理「ドレスって、元はといえば白人が着ていたものじゃないの?」

垣根「さぁな、そうなんじゃねぇの?」

心理「だったら黒髪より金髪の人のほうが似合うわよね」

垣根「・・・あぁ、だから不満なのか?お前わざわざ金髪に染めてるもんな」

心理「・・・私、染めてないんだけど」

垣根「あれ、地毛だったっけ」

心理「えぇ、だからドレスを着てるのに・・・黒髪じゃなきゃ似合わないって言いたいのかしら、この雑誌」

垣根「そんなことで不満になってたのか・・・お前って意外とガキなのな」


931 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/12(木) 14:35:43.90 ID:H0Umfwb/0
心理「あら、私は14歳よ?ガキって言われる年じゃないかしら」

垣根「・・・」

そういえばそうだな、と垣根は納得する

普段の彼女が大人びているから忘れてしまいそうだが

垣根「・・・お前はドレスも似合ってるよ、俺が認める」

心理「あら、嬉しいわね」

垣根「・・・コーヒー飲むか?それとも紅茶かな」

心理「紅茶がいいわ」

垣根「分かった」

キッチンに行き、垣根がコーヒーと紅茶を煎れる

垣根(・・・愛してる、か)

言いにくいものだな、と垣根は笑った

やはりそういうのは特別なシチュエーションを揃えなければならない

垣根(・・・夜に言うに限るな、幻想的だ)

紅茶を心理定規の元に持っていく

心理「ありがと」

垣根「どういたしまして・・・熱くないか?」

心理「えぇ、ちょうどいいわ」

微笑んでから、心理定規が紅茶をゆっくりと口に含む

垣根「・・・なぁ」

心理「なに?」

垣根「・・・いや・・・なんでもない」

心理「?」



932 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/12(木) 14:38:55.89 ID:H0Umfwb/0
垣根「・・・呼び掛けたら俺のこと見てくれるからさ」

心理「あら、素直に言ってくれたら見つめてあげるわよ?」

垣根「・・・いや、いい」

コーヒーの苦さに顔をしかめながら、垣根が苦笑する

垣根「・・・心理定規、今日って夜は時間あるか?」

心理「えぇ、何かあるの?」

垣根「久しぶりにさ、二人でワインが飲みたいから」

心理「ふふ・・・素敵、お願いしていいかしら」

垣根「喜んで」

彼女の手の甲にキスをしてから、垣根が笑う

上条達が見たら驚くだろう、だがこれもまた垣根なのだ

心理「…変な人、急にどうしたの?」

垣根「いや、なんでもない」

心理「…そう?」

訝し気な表情で心理定規が垣根を見つめる

その視線を浴びながらも、垣根は考えていた

垣根(…愛してる…か)

彼は昔から、「愛に答えなんてない」という信条を揺るがしたことはない

今だって、心理定規との間にあるのが愛情なのか、断言はできない

それを言葉にするなんて、よくよく考えれば矛盾していることだ

垣根(…でも、なぁ…)

愛してる、と言った時の心理定規の幸せそうな顔は何物にも代えがたい

垣根(…これが、愛情だって俺は思ってる)

答えを見つけるのが目的ではなく、二人で過ごすうちにそれが答えだと気づかされそうな恋だった

そして今も

垣根(…難しいな、恋愛って)

付き合ってから今更、垣根はそう思った



933 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/12(木) 17:14:20.27 ID:H0Umfwb/0

綺麗な月だな、と垣根は空を眺めて思った

テラスをこの家に造ったのは正解だった、もしそれがなければこんな優雅な夜なんて過ごせなかっただろう

ワイングラスを片手に、彼は夜空の星達を見つめていた

心理「…綺麗ね、この街の空は」

赤いドレスを身に纏った心理定規は、そっとワイングラスに写る自分の姿を見て呟いた

垣根「…綺麗だな、この街も」

心理「…私はこの街しか知らないわ」

垣根「…俺も…そうかもな」

短い会話を終えると、垣根はワイングラスを傾けた

赤いワインの中に、自分の姿が沈んでいる

垣根「…心理定規、乾杯…するか」

心理「…そうね」

垣根「悪魔を追い払う儀式だ…って、前に教えたかな」

心理「えぇ、だからあなたの心の中の悪魔を追い払うんじゃないの?」

垣根「…でもさ、それって天使を呼ぶ儀式でもあるよな」

心理「なら、私が天使かしら」

クスクス、と笑う心理定規を見て垣根が返す

垣根「天使は背中に翼が生えてるんだぜ、お前は空を飛べないだろ」

心理「あなたとなら飛べるわ」

垣根「…それは天使じゃなくて鳥じゃないか」

心理「鳥には帰る場所があるものね、私にはぴったり」

垣根「…乾杯」

心理「えぇ、乾杯」

チリン、と鳴り響いた音が悪魔を払うのだろうか

そうだとしたら、その悪魔は随分と臆病なのだろう

垣根(…悪魔を払う儀式…か、俺達の悲しい運命も、やっと払えたってところだな)

934 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:35:39.72 ID:NYs+vq3a0
心理「ねぇ、垣根」

クルクルとワイングラスを回しながら心理定規がうっとりした目で垣根を呼ぶ

垣根「どうした?」

心理「こんな夜が過ごせるのは・・・あなたがいるおかげかしら」

垣根「いきなり何言ってるんだ?」

心理「・・・あなた、私を待たせてた時期があったじゃない」

垣根「・・・お前に告白するまで、ってことか?」

心理「違うわよ・・・あなたが帰って来なかった時期」

垣根「・・・あぁ」

悪かったな、と垣根は謝りながら考える

垣根(・・・なんで今頃謝らなきゃいけないんだよ・・・)

心理「・・・その頃の夜はね・・・寂しかった」

垣根「・・・」

心理「スクールの頃からあなたに惹かれてて・・・でもね、実際に愛していたんだって気付いたのは、その頃だったわ」

垣根「そうなのか?」

心理「・・・自分の中でのあなたの大きさが、あまりにも大きすぎたって、気付いたの」

ワイングラスを置き、心理定規が垣根の隣に寄り添う

テラスの手摺りに背中を預けた心理定規は、少し恥ずかしそうに手を揉んでいた

心理「・・・あなたが帰ってきてしばらくの夜はね・・・あなたには言わなかったけど、とても楽しかったのよ」

垣根「・・・」

心理「・・・ありがとう・・・今更だけれど、あなたが帰ってきてくれたから、私の心は救われたのよ」

垣根「救われた・・・?」

心理「あの時あなたと一緒に一方通行と戦っていたら・・・そんなことを何度考えたかしら」

垣根「・・・お前はあの場所にいなくてよかったんだ」

心理「・・・でも・・・帰ってきてくれた時、待ち続けてよかったって、心から思ったわ・・・あなたを・・・」

垣根の手を優しく包み込む心理定規の掌は、誰よりも温かい


935 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:36:10.59 ID:NYs+vq3a0
心理「あなたを愛することが出来て、幸せなのよ」

垣根「・・・俺を愛する・・・か、なんだか照れ臭いな」

心理「ふふ・・・あなたって昔からそうよね、自分のことを色々言われるのは苦手」

垣根「・・・分かってるじゃないか」

心理「どれだけあなたと一緒にいると思う?」

垣根「ずっと、かな」

心理「・・・素敵」

背伸びをしながら、心理定規が垣根の唇にキスをする

少しふらついたその華奢な体を、垣根は優しく抱き留める

優しく、しかし放さないように

垣根「なんて不器用なんだろうな」

心理「私が?」

垣根「いや・・・人間が、さ」

心理「・・・不器用かしら」

垣根「・・・こうやって誰かを抱きしめたら、他の何も掴めない・・・」

心理「・・・不器用だけど、素敵じゃない?」

垣根「・・・なぁ、なんで女は恋人と抱きしめ合っていたいか、なんで男は恋人を背負っていたいか、知ってるか?」

心理「教えてくれる?」

垣根「女は、愛する相手のことを見ていたいんだ、そして男は愛する相手と同じ方向を見ていたい生き物だ」

心理「・・・背負っていたら、同じ方向を見ていられるのね」

垣根「後ろを振り向くと、愛する人がいるんだ・・・なんかさ、いいよな」

心理「・・・でも、私はやっぱりあなたと見つめ合っていたい」

垣根「どうして?」

心理「そしたら、あなたは私だけを見てくれるじゃない、あなたの瞳の中に他の何かが映るなんて嫌」

垣根「・・・わがままだな」

心理「わがまま、叶えてもらえないかしら」

垣根「・・・叶えてやるよ」


936 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:36:37.38 ID:NYs+vq3a0
華奢な体だ、垣根が守っていてあげなければすぐに壊れてしまいそうなほどに

倒れないように支えていてあげたい

転ばないように手を握っていたい

垣根「・・・なぁ・・・心理定規」

シチュエーションなんてどうでもよかったんだな、と垣根は気付いた

状況も、場所も関係ない

この垣根の心は、いつも一つだけ、確かにあるのだから

心理「なに?」

幸せそうな表情で垣根の胸に顔を当てたまま、心理定規が尋ねる

高鳴る鼓動を聞かれてはいないだろうか

垣根(・・・それはそれでいいかもな)

高鳴る鼓動も、心理定規になら聞かせてあげたかった

自分の思いの証明なのだから

綺麗な月が、心理定規の横顔を照らした

美しい彼女に、垣根は心を伝えた

不器用だ、と分かっていながら


垣根「愛してる」


心理「・・・やっと言ってくれた」

垣根「・・・やっと?」

心理「・・・今日はいつ言ってくれるのか・・・待ってたのよ」

垣根「・・・お前・・・」

心理「・・・あなたの愛してるって言葉・・・いつも私を幸せにしてくれるのよ、だって・・・あなたも私を求めていてくれるんだって分かるから」


937 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:37:15.51 ID:NYs+vq3a0
垣根「俺はいつだってお前を求めてるさ」

心理「・・・たまに、自信が無くなるのが女の子なのよ?」

垣根「・・・じゃあ、その度に愛してるって言ったほうがいいのか?」

垣根が心理定規の体をそっと引き離す

こうしていないと、彼女の綺麗な顔が見えないから

心理「ううん、いつも言ってほしい」

垣根「いつもって・・・それは流石に・・・無理じゃないか?」

心理「言葉にするんじゃないの」

垣根「?」

心理「心の中で私を思っていて・・・私に愛してるって言って、それだけで私は幸せだから」

垣根「・・・」

心理「・・・昔、私があなたに言ったこと、覚えてるかしら?」

垣根「・・・どんなこと?」

心理「あなたが幸せになれるならそれは嬉しい・・・そして、私が幸せにしてあげられるならもっと嬉しい、って」

垣根「・・・言ってたな、ホテルのテラスだった」

心理「・・・でもね、今は違うの・・・あなたを幸せにするのは私だけじゃなきゃ嫌」

垣根「・・・わがままになったな」

苦笑しながら、垣根は呟いた

その声はなぜか嬉しそうだった

心理「・・・嫌なのよ・・・あなたが、他の人ともしも一緒になったら・・・なんて・・・たまに考えたら悲しくなって・・・」

垣根「心理定規、空・・・飛びたくないか」

心理「!い、いきなり何よ・・・!?私の話・・・」

垣根「行こう、お前と飛びたいんだ」

ワイングラスを置いた垣根が、心理定規を抱きしめる



938 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:37:41.15 ID:NYs+vq3a0
心理「ちょっと、待ちなさい・・・」

垣根「・・・心理定規」

ふわっ、と二人の足がテラスの床から放れた

その不思議な感覚を、心理定規はいつも楽しんでいた

垣根に抱きしめられて飛ぶのは、自分だけなんだと

夜に輝く街を見下ろして、垣根は言った

垣根「俺の周りにはさ、女が一杯いるよな」

心理「・・・えぇ」

垣根「吹寄も俺を好きだって言ってくれたし・・・姫神だって結構いい女だ、オルソラもかなりいい線いってる、御坂だって中々俺はいい女だと思う」

けどな、と垣根がすぐ言ってくれたことに心理定規は安堵した

垣根「・・・俺だってそうなんだ」

心理「・・・どういうこと?」

垣根「あの日お前が俺を待っていてくれたこと・・・言わなかったけど、泣き出しそうなくらいに嬉しかったんだ」

心理「・・・嘘・・・本当?」

垣根「・・・俺には帰る場所なんてなかった、それをくれたのは・・・お前なんだ」

心理「・・・垣根」

垣根「俺だって、お前以外の誰かに幸せにされたって・・・嬉しくないんだ」

心理「!」

垣根「お前を幸せにしてやりたいのと同じように、お前に幸せにして欲しい」

心理「垣根・・・」

垣根「・・・天秤に、お前と誰かを掛けなければいけないなら、俺は迷わずお前を選ぶ、お前だけを」

なぁ、と心理定規に呼び掛ける垣根の顔は、真剣そのものだった


939 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:38:53.37 ID:NYs+vq3a0
垣根「・・・言ったじゃないか、何百、何千の思いに隠れてても・・・お前の思いだけは絶対に見つけてみせる、お前の心は美しい宝石だ、石ころの中にあっても、絶対に見つけられるって」

心理「・・・」

垣根「・・・そして、忘れないでくれ・・・心理定規」


垣根「俺はいつだって、お前の傍にいるんだ」


心理「・・・心の距離を計る能力・・・」

垣根「ん?」

抱きしめられた心理定規がふと口を開いた

心理「どうして身についたのか、ずっと分からなかった・・・周りの人との距離を気にしていたからだと、ずっと思ってた」

違ったのよ、と言いながら、心理定規は幸せそうに涙を流して笑った

心理「・・・心の距離がゼロになることはないって・・・この能力はそれを証明するためにある能力だったはずなの、でも違う」

垣根「・・・」

心理「私と心の距離がゼロの人を探すための能力だったのよ、ずっと・・・ずっと、私の傍にいてくれる人を探すための」

垣根「そっか」

結果は分かったのか、と尋ねる垣根

心理「・・・ねぇ、垣根・・・あなたに出会うために、私は生まれて、この能力を得たのよ」

垣根「・・・運命か、歯車の中で俺達は粉々になるんだ」

心理「…」

垣根「歯車を人間は止めることが出来ないのさ…それがそのまま、二度と動かなくなることを恐れて」

それはちょうど時計のようなものだと垣根は言った

垣根「…だから…」

心理「違う」

垣根「違う・・・?」



940 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/13(金) 16:39:32.65 ID:NYs+vq3a0
心理「私達は運命なんかで出会ったんじゃない・・・必然なんかじゃない」

垣根「・・・」

心理「・・・運命は信じられない、神様も」

ぎゅっ、と垣根の背中を抱きしめて、心理定規は笑った

心理「だから、あなたを信じさせて・・・私がやっと見つけた・・・大好きなあなたを」


垣根「・・・運命の歯車は・・・さ」

心理「・・・えぇ」

垣根「・・・いつか、止まるはずだ・・・その動きが止まる日が来るんだ」

だったら、俺も運命じゃないことを祈る、と

垣根「・・・お前と・・・ずっと一緒にいたい」

心理「喜んで・・・私もだから」

垣根「・・・なぁ、心理定規」

不器用だ

愛を伝えるのに格好つけなければ恥ずかしくなってしまう

それでもいい

彼女はそんな垣根も愛してくれている

幸せなんて言葉では表せない

心理定規がくれた大切な今

垣根はそれが愛おしかった

その真ん中にいる心理定規が


垣根「愛してる」


小さな夜空に、美しい流れ星が流れた


二人にとって「愛してる」とは、悲しい過去に置いてきた、大切な言葉だった


愛してるって言ってみる編 終了


941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/13(金) 21:34:51.33 ID:QbeOa2xFo
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/13(金) 22:54:07.97 ID:rf90dfDN0
圧倒的に乙
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/13(金) 23:07:59.51 ID:bScimfBGo
残り50かぁ
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/14(土) 00:16:03.81 ID:7GKc2NCO0

もう少しで終わりだな・・・
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/14(土) 12:36:43.36 ID:jctq8wJno
次スレ期待
946 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/14(土) 16:52:16.21 ID:Xp4KcEbx0


「す、好きです!!付き合ってください!!!」



上条(…ん…?)

上条は夢から覚めた

上条(…なんだか…懐かしい夢を見たなぁ…)

あくびをしながら、体を起こし、時計を見て


上条「どわぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!11時!?」

美琴「あ、やっと起きた」


上条「美琴!!なんで起こしてくれなかったんだよ!?垣根達との待ち合わせってたしか…」

美琴「11時だったわね」

すでに着替えを済ませている美琴は、笑ってからドアへ向かう

美琴「それじゃ、先に私は行ってるから」

上条「えぇ!?待ってくれないのかよ!?」

美琴「ジョナサンに集合、忘れてないわよね?」

上条「ドリンクバーを頼んでおいて!!とりあえず!!!」

美琴「はいはい…あんまり遅れすぎると垣根がキレるわよ」

上条「わ、分かってる!!!」




上条(あぁぁなんでこんな日に限って遅刻なんだぁ!!!)

ファミレスへ向かう道を走りながら、上条は泣き出しそうになっていた

空は太陽が一番高く上がっている

上条(本格的に、遅刻ってやつだぁぁぁぁあああああ!!!)


一応最終回  日常はまだまだ続くよ編

947 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/14(土) 21:02:10.05 ID:Xp4KcEbx0

垣根「…上条のやつおっせぇな…」

一方「…どォせ約束の時間忘れてンだろ」

ショチトル「そうだな、美琴も来ていないのが気になるが」

黒子「…どうせ、お姉さまも上条さんと一緒に来られるつもりなのでしょう」

ファミレスのあるエリア

いくつかの席を陣取って、一同は屯していた

19090「…そうですね、ですが時間に厳しそうなお姉様が…」

削板「多分、上条が寝坊したんだろ?起こすに起こせない状況だったんじゃないか?」

テクパトル「…そうだな、それしか考えられない」

呆れた様な三人を見て、番外個体は笑った

番外「でもねでもね、お姉様も意外と時間にはルーズだったりもするんだよ」

打ち止め「そうだよ!!ってミサカもミサカも同意してみたり!!!」

一方(…あァ…足バタバタさせたらパンツが見えるぞ…)

垣根「…そうなのか?」

心理「…美琴って、イメージと違ってやんちゃだからね」

エツァリ「そういうあなたも、意外と腹黒かったりしますよね」

心理「あ?」

エツァリ「」

打ち止め「でも早くお姉様が来ないとつまんない!!ってミサカはミサカは駄々をこねてみたり!!」バタバタ

一方(あァァァァァ!!!パンツ見えた!!!神様ありがとォ!!!!)

ショチトル「…それで、今日は何の集まりなんだ?」

垣根「別に、なんもないけどこういうのが最後は喜ばれるんだよ」

黒子「最後?どういうことか分かりませんが…」

垣根「っと、こういうのは禁物だったな」

番外「そうそう、垣根はそういう発言が多すぎるよ」

垣根「悪い悪い…にしてもさ、あいつらが来るなんて意外だったよな」

心理「…そうね」


948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/14(土) 21:07:54.02 ID:v8KbLVBeo
あー本当にこれで最後か……
最初は3、4スレで終わる的なこと言っておきながら数十スレも続いたし
今回もなんだかんだで続いてくれるかな〜と思ってたのに
949 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/14(土) 21:12:35.07 ID:Xp4KcEbx0

浜面「…垣根にいきなり呼ばれたから何かと思えば…」

麦野「…ただの屯って…」

絹旗「まぁまぁ、いいじゃないですか…この前の野球も面白かったですし」

滝壺「…ねぇはまづら、ドリンクバー取ってきて」

浜面「あぁ、何がいい?」

滝壺「ウーロン茶」

浜面「オッケー」

フレンダ「あ、私はね…」

浜面「お前はナチュラルに頼もうとするな!!!俺は滝壺のしか持ってこないからな!!!!」

麦野「ケチなやつ…」

ゴーグル「あ、自分取ってきましょうか?」

麦野「いいの?悪いわね」

ゴーグル「…絹旗さんはサイダーで?」

絹旗「ふっふっふ…今日の私は超大人な感じ!!コーヒーでお願いします!!!」

フレンダ「はっはぁん、見栄なんか張っちゃって…」

麦野「仕方ないわよ、愛しの彼がすぐ近くに座ってるんだし」

絹旗「い、愛しとかそんな…」

滝壺「きぬはた、そんなきぬはたを私は応援してる」

ゴーグル「麦野さんは紅茶…フレンダさんは?」

フレンダ「私は…アンタと同じでいいわけよ」

ゴーグル「え、でも俺が飲むのブラックコーヒーですよ?」

フレンダ「…コ、ココアで…」

ゴーグル「分かりました…」

ドリンクバーに歩いていく浜面とゴーグル男

ちらり、と遠くの席を見つめる


浜面・ゴーグル(…しかし…それにしてもイケメンだな…海原光貴)




950 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/14(土) 21:30:48.43 ID:Xp4KcEbx0

海原「…しかし、なぜまた自分はこのような所に呼ばれたのでしょうか」

土御門「…にゃー、そういやぁお前は本物の海原だったか…」ボソッ

海原「?」

土御門「なんでもないぜぃ、それより絹旗最愛がお前のこと見てるけどにゃー」

海原「あぁ、あれは…絹旗さんでしたか」ニコニコ

青ピ(な、なんなんやこの人…?ナチュラルにボクらと同席になってるしなぁ…)

■■(…私の名前が。消えている)

吹寄(…土御門はこの人のこと、知ってるみたいだけど…)

黄泉川「いやぁ、なんだか賑やかじゃんよ」

芳川「…どうして私が外に来なきゃいけないの…」

黄泉川「仕方ないじゃん、打ち止めもいることだし」

小萌「姫神ちゃん、名前が消えたからって気にしたらダメなのですよ!!」

■■「…ありがとう」

結標「…一方通行に土御門…それにあっちには空かした海…男もいるし、嫌なことを思い出すわ」

土御門「あれ、あわきんいたのかにゃー」

結標「…その呼び方はやめて…」

小萌「結標ちゃんも、久々に会えて感激なのですよ!!」

結標「ごめんなさいね、最近は一人暮らしに慣れるので忙しくて…」

小萌「うぅ…結標ちゃんも、立派に独り立ちしたのですね…」ウルウル

土御門(未だに料理が出来ないからよく俺の家に漁りに来るけどにゃー)

吹寄「…それにしても、上条の姿が見えないわね」

■■「…そういえば、そう」


951 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/15(日) 09:04:50.98 ID:21WTI2+t0


上条「・・・す・・・すっかり迷子だ上条さん!」

上条は頭を抱えていた

ここはどこ、という状態である

ジョナサンというファミレスに向かっていたのだが、どこかで慌てて曲がってしまったらしく、知らない通りに出ていた

上条「あぁぁ!知らない場所に行くならいざしらず、まさか知ってるファミレスへの道を間違えるなんて!」

不幸だ!と叫ぶと通行人がクスクス笑ってくる

それがまた不幸なのだ

上条「はぁ・・・どうしよう・・・今来た道を引き返して・・・」

「おーい、そこの兄ちゃん」

上条「・・・?」

どこからか声を掛けられた

上条「タクシー?」

「兄ちゃん、なんか迷ってるみたいだけど」

上条「あ、あれ!?アンタたしか・・・」

「名前なんてどうだっていいんだよ、こっちの仕事は客を運ぶことなんだし」

上条「い、いや・・・タクシーに乗る金なんてないし・・・」

「じゃあこのタクシーは回送してるってことになる」

上条「た、只で乗せてくれるのか!?」

只という言葉に弱い上条

「そうだよ、だから乗りな」


952 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/15(日) 09:06:36.53 ID:21WTI2+t0

上条「で、でも目的地までの道なんて知らないし・・・」

「いいから乗りな、俺は優秀な運転手だからなぁ」

上条「?」



美琴「ごめん、ちょっと当麻が起きるの待ってたら遅れちゃったわ」

少し遅れて、美琴はファミレスに入った

垣根「おい、遅いぞミコっちゃん」

美琴「その呼び方はやめて」

心理「美琴、もうドリンクバーは頼んどいたから」

美琴「ん、ありがとう」

黒子「お、お姉さまの服が汗で透けて・・・フヒヒ・・・」

ショチトル「黒子、削板が嫉妬しちゃうぞ」

削板「ははは!相変わらず黒子はミコっちゃんが好きだな!」

美琴「ア・・・アンタまで」

黒子「ぐ、軍覇さん!?ミ、ミコっちゃんとはどういう関係ですの!?」

番外「あっはは!黒子ったら焦ってやんの!」

テクパトル「冗談なんだと気づけよ・・・」

御坂妹「ですが、お姉様がちゃん付けで呼ばれてるのは面白いですね」

テクパトル「ははは!!たしかにな!!!」

一同「あはははははは!!!!!!」



テクパトル「なんでお前がいるんだよ」

御坂妹「いえ、妹達代表として…」

番外「あぁ、ここでの会話ならネットワークで流せるもんね」

御坂妹「えぇ、みんな行きたがっていましたが」

美琴「…下手な話は出来ないわね…」



953 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/15(日) 20:34:18.85 ID:21WTI2+t0
垣根「…10032号だっけか、何飲みたい?」

御坂妹「おや、奢ってくれるのですか?」

垣根「まぁな、たまにはお前達にも優しくしてやるよ」

心理「そうやってナチュラルにフラグを立てないの」

垣根「そんなつもりじゃねぇよ…」


ゴーグル「垣根さん、お久しぶりっす」

一同が談笑していたテーブルにゴーグル男が近寄ってくる

垣根「久しぶりでもねぇだろ」

ゴーグル「そうですか?」

心理「昔は基本的に毎日顔を合わせてたから、少しでも会わないと会ってないって感じがするのよね」

垣根「ふーん、俺はそうでもねえけどな」

美琴「あ、あっちにみんないるんだ」

削板「あぁ、でもなんだか近寄りがたいよな」

テクパトル(…というか、妹達を上条の同級生に見られて大丈夫なのか?)



上条「み、みんな!!!遅れて悪い!!!」

バタバタと騒がしく、上条がファミレスの中に入ってくる

垣根「あぁ?なんだ、やっと来たのかよ」

一方「大遅刻じゃねェか」

黒子「まったく、時間にルーズな男性と言うのはなんともはしたないですの」

上条「し、仕方ないだろ…昨日寝るの遅かったんだし…」

心理「なんで遅かったの?」

上条「…」

美琴「…」カァッ


垣根「俺は決めた、ここに死刑を宣告すると」

心理「落ち着いて」


954 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 09:39:31.81 ID:zBePtbMz0

上条「・・・みんな集まってたんだな」

番外「そりゃ、こんなに暇だからね」

心理「向こうに土御門君達もいるんだし、挨拶くらいしてきたら?」

上条「そうだな」

テクテクと上条が土御門達のテーブルに近付く

上条「よっ」

土御門「にゃー、やっと主人公のお出ましだぜぃ」

吹寄「・・・上条、待ち合わせにはしっかり間に合うようにしなさい」

上条「悪い悪い・・・」

■■「・・・そういう適当な性格は。将来絶対お嫁さんに苦労を掛ける」

上条「そ、そうだな・・・」

青ピ「まぁまぁ、カミやんやって悪気があったわけやないんやで」

上条(なんで姫神は名前が消えてるんだ?)

小萌「あ!上条ちゃん、宿題は終わらせましたか!?」

上条「げ・・・先生までいたのか」

小萌「そ、そんな嫌そうな表情をするなんて・・・」

吹寄「上条!先生に向かって失礼よ!」

上条「あぁもう!せっかくの休日くらい先生と顔を合わせずにいたいんだよ!」

黄泉川「上条、そんなことを言う生徒にはお仕置きが必要じゃん」

上条「黄泉川先生まで!?」

■■「上条君。もう逃げ場はない」

上条(・・・なんか悪いことでもしたから名前消えたのか?)

青ピ「それじゃ、ボクはちょっと麦野さんの所に行ってくるから」

土御門「にゃー、ちゃんと優しくしてやるんだぜぃ」

青ピ「もちろんやって」



955 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 09:40:22.95 ID:zBePtbMz0
青髪が麦野の席に近寄る

それを見ていた結標はため息をついた

結標「ったく・・・みんな見せ付けてくれるわね」

土御門「あわきんも相手探せばいいじゃねぇか」

結標「私に出会いがあると思う?はぁ・・・どっかに可愛いショタはいないかしら」

土御門(この好みが一番の問題だぜぃ)

小萌(…矯正した方がいいのでしょうか…で、でも個人の趣向には首を突っ込みたくないのです!!)




麦野「あ、青髪君!?」

青ピ「こんにちは麦野さん・・・たしかアイテムの皆さんやったっけ?」

絹旗「そうですけど・・・」

滝壺「はまづら、はまづらと同じ匂いがこの人からする」

浜面「え、俺と同じ?」

青ピ「なんや君・・・もしかして変態さんなん?」

浜面「へ、変態とは失礼な!」

フレンダ「ふん、バニーの画像とか携帯に入れてる浜面は結局変態な訳よ」

浜面「ば、お前なぁ!」

青ピ「バニーなぁ・・・ボクもバニーな好きやで、あの衣装の耳の片方が折れてたりしたらぐっと来るんやねぇ」

浜面「わ、分かってくれるか!?」

滝壺「はまづら」

浜面「ち、違う!あくまで俺は可愛いだけだと言いたくて決して性的対象には・・・」


垣根「よく言うぜ、お前バニーの画像で抜くんだろ?」

浜面「抜かねぇよ!っていうかファミレスでんなこと言うんじゃねぇ!」

横から垣根が首を突っ込んでくる

ちなみにドリンクバーを取りに行くついでらしい


956 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 09:40:50.96 ID:zBePtbMz0
垣根「安心しな、別にお前がバニーで抜いてようが俺はお前のことをただの変態だとしか思わないし」

浜面「思うんだな!変態って思うんだな!」

絹旗「垣根・・・あんまり大声で恥ずかしいこと言わないで下さい」

垣根「うるせぇなパンチラ娘、犯すぞ」

絹旗「」

フレンダ「・・・垣根は何しに来た訳よ」

垣根「別に、ただ暇つぶしにな」

ゴーグル「ちょっと垣根さん・・・あんまり皆さんに絡まないで下さい」

心理定規との話を終えたゴーグル男も帰ってくる

垣根「絡んでねぇよ、仲良くしてるだけだ」

フレンダ「嘘だっ!」

滝壺「かきね、かきねはバニーさん好き?」

垣根「俺はOLの服装なんかがいいな」

青ピ「分かるわぁ!あの黒の統一感は堪らんなぁ!」

麦野(あ、青髪君ってやっぱりハードルが高いわ・・・)

垣根「まぁそこまで情熱は注いでないけどな・・・おい、海原!」

少し離れた席に着いている海原を垣根が呼ぶ

ちなみに二人はほぼ初対面であったりする

海原「はい、なんですか?」

垣根「お前のフェチは何だ!?」

絹旗「ちょ・・・垣根!なんて失礼なこと聞いてるんですか!」

垣根「うるせぇ!親睦を深めるにはこれが一番なんだよ!」

海原「ははは、自分は絹旗さんみたいな女性が一番です」

絹旗「!?」

フレンダ(・・・海原光貴・・・)

ゴーグル(なんて天然な・・・)

垣根「よかったな絹旗、俺はお前を初めて潰したいと思った」

ゴーグル「と、とにかく垣根さんは帰って下さい!」

垣根「ちっ・・・分かったよ」


957 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 14:38:35.46 ID:zBePtbMz0

上条「…しっかし、こうして考えると俺も随分人脈が広くなったな…」

美琴「何言ってるのよ…元から化け物じみた人脈のくせに」

心理「そうそう、魔術なんて私は昔知らなかったもの」

エツァリ「…上条さんは人脈が広すぎますよ」

一方「そのうちどっかの王族と知り合いそうだよな、お前」

上条(もう知り合ってるんだけどなぁ…)

番外「…ミサカも、なーんか世界が広がったって感じだなぁ」

テクパトル「そうか?俺はむしろ、世界は狭いものだなって感じたが」

19090「狭い?なぜですか?」

テクパトル「…こうして学園都市で、エツァリ達と再び出会って…まさか友人になるなんて思わなかったからな」

ショチトル「それはこっちのセリフだ、最初お前を見た時は背筋が凍りそうだったんだぞ」

削板「テクパトルってそんなにやんちゃだったのか?」

エツァリ「えぇ」

テクパトル「やんちゃじゃねぇ…」


垣根「…上条、姫神がお前がいなくて寂しがってたぞ」

上条「え、本当か?」

帰ってきた垣根は適当なことを嘯く

ちなみにドリンクバーから持ってきたのは青汁である

垣根「そうそう、愛しい愛しい上条がいなくて寂しいって…」

美琴「!!当麻、行ったらダメだからね!!!」

上条「え?で、でも…」

美琴「ダメったらダメ!!!!」

御坂妹「…お姉様ったら…」

黒子(…お姉さまの駄々をこねる姿…)ジュルリ

心理(黒子、何かまた悪いことを考えてそうね)


958 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 17:35:36.85 ID:zBePtbMz0

上条「…はぁ、なんだかこんなに大人数だとさ、店に迷惑かかりそうだよな…」

垣根「そうそう、みんな飯食いたかったら食えよ、今日は俺の奢りだから」

イン「ほんと!?」

上条「う、うわぁぁああああああああああ!?どっから出てきたんだお前!?」

イン「食べ物の話になると、私は狂いもだえるんだよ!!!!」

心理(…今…グラスの中から出てきたわよね…)

テクパトル(…何かの魔術か?)

垣根「…お前、ある程度は手加減しろよ?」

イン「店員さん!!!こことこことこことこことここのページの商品を全部5個ずつなんだよ!!!」

垣根「手加減をしろよ」

イン「あ、あとこっちの日替わりメニューも月火水木金土日、全部の!!!」

上条「それじゃあ日替わりじゃねぇよ!!!」

イン「…じゃあ、ドリンクバーをまるごと…」

美琴「まるごとって、そういう定義じゃないわよ…」

イン「とにかく!!用意できる飯は全部用意するんだよ!!金に糸目はつけぇんっ!!!」

垣根(俺の金が…)

心理(…奢るなんて言わなければよかったわね)


絹旗「なんだか…あっちが騒がしいですね」

海原「そうですね」

絹旗「!?う、海原さん!?」

海原「絹旗さん、こんにちは」

絹旗「こ、ここここおここおここここここここおおおおおおおおお!!!!」

麦野「海原さんこんにちは」

ゴーグル「…今日は海原さんも学校は休みなんですか?」

海原「えぇ、いきなり垣根さんからメールが来たもので」

滝壺「?かきねとは友達なの?」

海原「いえ、初対面ですよ」

一同(常識が通用しねぇ…)



959 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 20:55:28.14 ID:zBePtbMz0

垣根「…はぁ」

コーヒーを呑みながら、垣根がため息をつく

上条「どうしたんだよ?」

垣根「ここだけの話さぁ…」

美琴「うん、なになに?」

垣根「日常って、本当に変わり映えしないよな」

一方「はァ?お前、毎日毎日大事件とかンなわけねェだろ」

番外「そうそう、どこぞのバーローじゃないんだしさ」

垣根「…でもさぁ、もうちょっとこう…たまには楽しいことがあってほしいよなぁ…」

上条「そうかな?俺はこういう、何の変わり映えもしない毎日が好きだけど」

垣根「…俺も好きだけどさぁ…」

心理「…私も、こういう平和な毎日は憧れてたから、好きよ」

テクパトル「…しっかし、これから先も変わり映えしない毎日なんだろうな」

削板「そうだな…俺達もいつかは大人になるのかな」

黒子「…正直な話…今は想像できませんの」

垣根「…大人になるかぁ…俺も…そういうのって、なんか想像できないよなぁ」

19090「今は、まだ子供でいいんじゃないですか?」



吹寄「上条、垣根…貴様達はその前にちゃんと宿題をしなさい」

上条「げ…吹寄…」

垣根「あーあー、うざってぇのが来ちゃったなぁ」

吹寄「か、垣根…貴様は本当に失礼なヤツね…」ゴゴゴ

垣根「…宿題かぁ…そういやぁさ、冬休みも間近なんだな」

上条「…そうだ!!クリスマスが間近じゃないか!!!」

吹寄「上条!!!宿題を考えなさい!!!」


960 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 21:10:21.35 ID:zBePtbMz0
上条「…宿題かぁ…」

ため息をつく上条

上条「…まぁ、宿題は明日でいいや…」

吹寄「貴様…そういうことしてるから…」

垣根「ん、俺も今度学校でやるよ」

心理「垣根…」

垣根「そうだ、これからみんなで公園行って何かしないか?どうせこのあと暇なんだろ」

美琴「ま、まぁ…暇よね」

黒子「では、皆さんを誘いますの」


麦野(…?なんか垣根がこっちに来たわね)

垣根「よぉ、みんなで公園行ってなんかしようぜ」

浜面「…はぁ?」


土御門「あぁ、なるほどにゃー、公園か」

青ピ「じゃあ、鬼ごっことかどう?」

■■(…名前が出ない…)

垣根「いいぜ、みんなでなんかしよう」

黄泉川「オッケー、行くじゃんよ!!!」

結標「はぁ…仕方ないわ、付き合いましょう」


ドリンクバーしか買わないで帰っちゃうのは、ファミレス側には非常に迷惑だったりする

けども、インデックスがたくさん買ったので問題はなかった

垣根の金で買うわけだが、それでいいのだろうか


イン「美味しいんだよ!!!」


イン「…ってあれ?みんなどこ行ったのかな?」


961 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 21:15:02.72 ID:zBePtbMz0

上条(…あれ、そういえばこの公園)


美琴「垣根ー!!鬼は何人くらいにするの!?」

垣根「そうだなぁ…5人でよくないか?」

絹旗「ちょっと…それは疲れそうですね」

小萌「でも、それくらいが一番スリルがあるのですよ!!!」


上条(…懐かしいな…あれから結構経ったんだし)


19090「そうですね、では5人はジャンケンで決めましょうか」

御坂妹「そうしましょう」

吹寄(…ず、ずいぶん似た姉妹…?)

■■(…というより。双子)


上条(…懐かしい、か)


美琴「あ、当麻も呼んでくるね、向こうでなんかぼーっとしてるから」

心理「本当ね、何かあったのかしら?」

番外「上条だよ?何も考えないでぼけっとしてるだけだって」

美琴「まぁまぁ、行ってくるから」

手を振った美琴は、上条の元へと駆け寄った


上条(…練習、ねぇ)

あの頃の美琴は初心だったな、と笑いながら

上条は呟いた



上条「け、結婚してください…美琴」


美琴「何やってるの当麻?」

上条「ぴぃっ!?」


愛情と愛情が交差するとき 日常は始まる



962 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 21:22:00.41 ID:zBePtbMz0

というわけで本編はこんな感じ

最後はめっちゃ急いだ感じでしたけど、でも日常に終わりはないのでこういう終わりでもよかったんではないかと

あと残り70くらいで綺麗に締めるのは無理だった

無理だったんだ…

最後は今まで使ったキャラをある程度出したかったのもあります

でもおかげで収集がつきませんでした

どうも納得のいかない終わり方でしたが、まぁ…仕方ないでしょう



久々のあとがきになりますね

まずは感謝を

とあるラジオのイマジンマターという名前を考えてくださった方、度々使わせていただきありがとうございます


「さだのり」という名前を考えてくださった方、本当にその名前にはお世話になっています

本当に


リク、ラジオへのお便りをくださった方、ありがとうございます

ああいう試験的なことを最初のうちはやっていられましたが、それでも段々とマンネリは進むものでした

やっぱり、個人的に12スレ辺りでピークは過ぎてしまった感じでしたが


2スレの最後でテクパトルの名前を呟いてくださった方、それはある意味一番のターンポイントでした

あれがなければテクパトルはメインどころか、登場自体していませんでしたし、それに12スレも出来なかったでしょう

個人的に、一番満足のいったスレでしたから、感謝申し上げます


俺の嫁サトリナ、ありがとうございます

なんか知らないけどありがとうございます


そして最後に、ここまで読んでくださった方

本当に、長い間こんなグダグダとした作品を読んでいただいてありがとうございます

いつになったら終わらせるのか、自分でも分からないまま1年2か月が過ぎていました

思えば、いつの間にやらこのスレを更新するのが日課になっていました

そのせいで、いわゆるマンネリになってしまい、自分で読んでも「ここいらない内容だよな」と思うスレがほとんどです

そんな中でも、「面白い」と言ってくださる皆さんがいたからこそ続けられたのかなぁ、と思います



963 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 21:29:28.56 ID:zBePtbMz0
昔からずっと思っていたことでしたが、やっぱり日常と言うものは一番身近で、しかし一番描きにくいものなんです

インパクトを出せるものでもなく、何かの教訓があるわけでもなく

これを書いている間に、本当にいつ終わらせるのか迷っていました

終わらせたい終わらせたいとは思っていましたが、それでも終わりをつけるのが難しかったですね

最後はこんなに駆け足になってしまったのも、とりあえずここで終わりにするためでした

本当に、最初のスレから比べるとクオリティは下がりまくりだと思います、決して最初も高くはありませんでしたが


このスレで伝えたかったのは、一言でいえば「生きてるって楽しい」ということです

もちろん、大半は辛いことばかりで、そんな中に楽しみなんてないのかもしれません

でも99.999999%の面白くなかった過去は心に残りませんが、その残りのわずかな楽しかった時間と言うのは、いつになっても忘れないものだと思います

それを、このスレを通じて伝えることは不可能でしたが、とりあえず、それを伝えたかったんです、本当に


あとは、ていとくんはカッコイイよってこと

彼が早く本編で復活することを祈っています、最早そのために禁書を読んでいると言っても過言ではありません

心理定規も可愛いよってこと

なんでこの子は今まで他のssでほとんどメインを張ってなかったのかな、とも思いました、めっちゃ可愛いでしょうに

でも、中々キャラを掴めないままの終わりでした

テクパトルもいいキャラですよ、多分


長くなりましたが、前も言いましたように絶対に日常に終わりはありません

それをこの場でこうやって終わらせる、というのはある種ほっとするものでもあり、しかしなぜか悲しい物だったりもします

「あー、明日から俺の書くことはねぇなぁ」という悲しさと「やっと終わったなぁ」という解放感でいっぱいです

あとサトリナへの愛でいっぱいです


まぁ、ブログのほうで書きたいように書いていますので、もしも本当の意味でまだ>>1の書くグッダグダな日常が読まれたい方は、ご訪問ください

暇つぶしにネタ的な日記もやっていますから



964 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 21:35:49.36 ID:zBePtbMz0
では最後に


とある魔術の禁書目録、鎌池和馬先生

勝手ながらキャラクター、世界観を借りたことをお詫びするとともに、今後のより一層の発展を願います




声の出演

上条当麻 佐藤利奈
御坂美琴 佐藤利奈
垣根帝督 佐藤利奈
心理定規 佐藤利奈
白井黒子 佐藤利奈
削板軍覇 佐藤利奈
一方通行 佐藤利奈
番外個体 佐藤利奈
テクパトル 佐藤利奈
19090号 佐藤利奈
エツァリ 佐藤利奈
ショチトル 佐藤利奈

その他 佐藤利奈




皆様、本当の本当にありがとうございました、グランドフィナーレと言う名の茶番でございますので


どうぞ、速さが足りないコメと、好きなキャラクターの名前を書いていただけたら


あとリクエストもお待ちしています、とあるラジオのイマジンマターのほうも

時間が出来ましたら、随時ブログで更新いたしますので



ありがとうございました




さだのりより












965 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/16(月) 22:01:42.77 ID:zBePtbMz0
思ってたより余ってたのでていとくんからの挑戦状


「男が三人並んで読んでいるのはなーんだ」


ナゾナゾです

答えが分かったあなたには、ていとくん人形をプレゼント

嘘です


966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 22:52:56.07 ID:l13bBkS6o
エロ本
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/17(火) 00:17:53.35 ID:P7aFSHx10
乙!
これまで随分と楽しませてもらったぜ&これからはブログの方で楽しませてもらうぜ
と思ったら早速アレだったぜ!(一方さんの替え歌とか)

エロ本
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 00:31:42.93 ID:Zms+OPoJ0
乙!!
おかげで某アニキの出るアニメに出会えました!
このスレで何度笑って何度泣いたことか・・・
本当にありがとうございました!!
さだのりカッコいいよさだのり

最後に・・・速さが足りない!!!!!!
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/17(火) 07:32:56.58 ID:Mzbf13Woo
乙‼
俺もこのss読むのが日課になってた
終わってしまうのは寂しいけど
今まで頑張って書いてくれてありがとう‼
最後に、ていとくんマジイケメン
それと、>>1もマジイケメン‼
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/17(火) 16:47:47.13 ID:mjSMhUVIo
さだのりのキャスティングでサトリナの声帯がヤバい

上琴を欲して辿り着いた初代スレからずっと読んでました
本編に関係ないけど、運転免許の話とかもう1年前の話なんだなーと懐かしく思います
お疲れ様でした!そして面白かったです、本当にありがとう
あと、年単位で書き続けてそしてきちんと完結させた事を心から尊敬します

え、好きなキャラ?アンケートの時とか全部美琴って答えてたよ!!
971 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/17(火) 17:06:28.99 ID:laLsaQgu0
>>970 運転免許とかもう一年にもなるんですね

そんな俺は土曜日から中免を取りに行きますがww


上琴、後半はあまり成分が濃くなかったのが自分でもなんとなく残念でした

972 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/17(火) 17:08:21.32 ID:laLsaQgu0
>>967 替え歌はまぁ…歌ネタということでw

>>968 スクライドのことですね分かります
あのアニメとジョジョ、日常…自分の受けた影響は様々な方面からでした

>>969 日課、自分もまさにそれでした

それが無くなるのはほんの少し複雑ではありますが、それでも満足という感じでしょうか

973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 17:11:02.43 ID:YaSrqsX2o
1スレ目から読ませてもらってた。
自分も毎日このスレをチェックするのが日課で、終わってしまうのは本当に寂しい…

また気が向いたらスレ立ててくれよな!
約1年ありがとう!!
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/17(火) 17:27:27.02 ID:g+yVGRFb0
よければブログのURLをお願いします……
975 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/17(火) 17:39:15.11 ID:laLsaQgu0
>>973 日課というのはいざ無くなるとちょいと寂しいもんですね

気が向いたら、ブログでこのシリーズの続きを書いてるのでもしもよろしければそちらでどうぞ

「このシリーズが見たい!」という方にだけ見ていただけるのが一番かと思いましたんで

>>974 どうぞ  http://teitouko.blog.fc2.com/


URLに突っ込んだらダメなんだよ

976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/17(火) 18:31:07.15 ID:ORHWboBi0
長い間、本当に乙でした
禁書ファンとして1番楽しめたssでした
これからもブログの方で楽しませて
いただきます
いちいちコメントしてて
申し訳ないww
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 18:52:56.83 ID:NnurbRoYo
お疲れ様
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 18:58:34.76 ID:I7RNmSemo
お疲れ様でした!
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/17(火) 20:45:09.58 ID:eUjgz+VPo
1スレ目が超懐かしい
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/17(火) 20:48:43.35 ID:c0HP65nl0
お疲れ様です!1スレ目から見直してきたけどかなり変わってて面白かったww
981 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/17(火) 21:10:06.67 ID:laLsaQgu0
>>976 あなただったか

>>977 >>978 こちらこそ、こんな長いシリーズを今まで読んでいただきお疲れ様でした、としか言えませんww

>>979 >>980 懐かしいですよね、1スレ目

>>1も読んでみましたが、どうも今はもうあのころの純粋な雰囲気のものは書けない気がします

それが悲しくもあり、しかしまぁ時の経過でもあるのだろう、と

それを考えると小説家ってすごいなぁ…


982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 21:13:38.10 ID:38H/pZ14o
当然1レス目から追ってる
途中置いてかれたけどKIAIで追いついてこうして最後まで見れて満足
お疲れ様でした
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 21:21:03.31 ID:31wszVRa0
長い間楽しませてもらってありがとう
ここにしかいない、フレンダとゴーグルのカップルが好きだったから、ブログもまた覗かせてもらいます
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/17(火) 21:50:23.76 ID:YP4T8cPNo
1スレ目どころか1話目から読んでるぜ
あの時はまさかこんなに長く続くとも、さだのりなんてキャラが作られてさらに単独のスレが立つなんて
まったくおもってなかったけどなwwww
985 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/17(火) 22:37:33.00 ID:laLsaQgu0
>>982 1スレ目からとは、本当にありがとうございます

>>983 自分だけなんでしょうかね、そのカップリング大好きなの

だってなんか境遇とか似てますし…心理定規好きといい、やっぱ変わってるんでしょう

>>984 俺だってまったくもって思ってませんでしたよwww

ここまで続けるなんて分かってたら最初からキャラは固定していたでしょうし、やっぱり流れって怖いです

986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/17(火) 22:46:01.93 ID:yO7ohCiRo

選ブラで唯一一年以上も追い続けた作品だた
ありがとうございます
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage saga]:2012/07/18(水) 01:03:02.86 ID:9y6qJEIy0
乙‼
俺はアニメしか見てないから原作のていとくんはよくわからんがこのスレのおかげで、いっしょにカラオケに行く夢をみるほどファンになったぜ!
マジイケメルヘン‼
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/07/18(水) 07:15:56.52 ID:rxwOu0WHo
お疲れさまでした
おもしろかったぜ!
989 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/18(水) 07:56:00.05 ID:W+WkeFPi0
>>986 こちらこそありがとうございます

一年は長かったです、本当に

>>987 原作のていとくんは全然キャラ違いますよww

というかみんな違います

>>988 本当に、お疲れ様でした

990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/07/18(水) 12:08:38.99 ID:5QKxM8LN0
本当お疲れ様でした、続きの方ものんびり待ってるわ
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/18(水) 22:31:28.91 ID:M5VSQykn0
お疲れ様でした!
一番最初からリアルタイムで追っかけていました!
これからもブログで追いかけます!!
992 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/18(水) 23:07:18.74 ID:W+WkeFPi0
>>990 続きはのんびり待ってください、本当にww

こっちでは出来ないようなコアなネタが出来ればいいなとも思ってます

>>991 リアルタイム…それはすごい

だが!!



俺の速さに追いつけるのか!?


993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/18(水) 23:13:59.08 ID:uhnhNXpZo
大学生活に慣れたり社会人として慣れたりしたら復活スレとか建ててくれると我々は嬉しいんだよ!
カマチー+サトリナvs>>1が対談してる未来までは見えたかも?


兎にも角にもおつおつおつおつ

そして何より>>1000まで速さが足りない
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/19(木) 00:26:50.14 ID:6khnyZiko
速さが足りない
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/19(木) 06:59:18.21 ID:MosmW2bi0
乙でした
996 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2012/07/19(木) 15:57:27.32 ID:9TcPNB/90
>>993 サトリナ?俺の横で寝てますが何か

>>994 俺がスロウリィ!?

>>995 こちらこそ、乙でした

997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/19(木) 21:59:04.82 ID:sRPZ6Dxno
>>992
正直、5日で1スレ消費とかしてた時は1日見てないとスレがめちゃくちゃ進んでてついていけなかったぜ

だがまだまだ速さが足りねえ!
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/19(木) 22:12:39.31 ID:LBe2LLR80
少し見ない間に終わってた
1スレから長い間乙かれさまです
すごく楽しめました
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:22:29.41 ID:4vb9lkGDO
もう二度と戻ってこないでください^^
1000 :名無しNIPPER [sage]:2012/07/19(木) 22:25:24.79 ID:PWezyXWg0
1000なら明日新スレが立つ
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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女だけど女を好きになることが多い @ 2012/07/19(木) 22:02:48.63 ID:4ikinVkS0
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竜華「さぁ、まだまだ行くでー!」 @ 2012/07/19(木) 21:55:05.25 ID:weWkfCf/0
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デブスな彼女がAV女優だった @ 2012/07/19(木) 21:29:27.41 ID:k+7aKEiEo
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男「地球ももう終わりか・・・」 @ 2012/07/19(木) 21:10:06.83 ID:9AlCxN5yo
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クラスのある女の子と仲良くなりたいんだけど @ 2012/07/19(木) 20:21:44.85 ID:YGKhweOs0
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ここだけ魔王の城 ただしコンマ00で魔王様に怒られる @ 2012/07/19(木) 20:20:43.48 ID:htm2dDGIO
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