1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)
2012/07/18(水) 16:46:47.42 ID:clEHf3P+o
大木の隙間を縫って、蛇は夜を走った。
濡れた枯葉の上を滑るように疾走する。
ここ数日降り続いた雨は間の悪いことに降り止んでいた。
月明かりと小枝の弾ける音と逃げ出した小動物によって、彼女の白い巨躯は確実に捕捉されていた。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:47:59.19 ID:clEHf3P+o
蛇は追われていた。
「何故! 何故私が!」
どんな大きな獲物だろうと一飲みにしてきた大顎が無様な悲鳴をあげた。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:48:45.21 ID:clEHf3P+o
大きく身震いしながら蛇は川に飛び込んだ。
泳ぎは達者だ。
底を通れば後をつけてくるのは難しくなるだろう。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:49:14.51 ID:clEHf3P+o
托鉢笠をかぶった僧が一人。
跳ね上がった水は大粒となって彼にも降り注いだが、委細構わずといった風情で佇立していた。
黒衣の裾から伸びた手が笠を持ち上げ、細く鋭い目は夜闇に流れる河川を追った。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:49:49.06 ID:clEHf3P+o
―――――――――
私は只々呆然としていました。
大勢の人間が窮屈そうな出で立ちで、足早に歩き回っています。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:51:08.41 ID:clEHf3P+o
水の音に引かれて貧弱ながらも木々の生えた土地を見つけました。
中央にある水溜りを縁取った石に座りますとため息が漏れてしまいました。
「はぁ……、これからどうすればよいのでしょうか……」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:51:39.93 ID:clEHf3P+o
私は手ごろな石を拾って握り締めました。
半分ほど力を込めると石に亀裂が入りました。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/18(水) 16:52:39.59 ID:clEHf3P+o
「どうしたのかね?何かお困りのようだが」
「……私でしょうか?」
初老の紳士が話しかけてきました。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:54:09.08 ID:clEHf3P+o
「ふむ……。お嬢さんよろしければお食事でもどうかね?
こんな年寄りが相手は退屈させてしまうかもしれないがね」
はしたなくも下を向いたまま舌なめずりをしてしまいました。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:54:34.78 ID:clEHf3P+o
「では……」
私はめにうの端を指差し
「はい豚骨ラーメンですね!」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:55:51.02 ID:clEHf3P+o
「私は高木と言う。しがないアイドル事務所で社長をしている」
私の食べっぷりに初めは驚き、やがて眼を細めながら見守っていた高木様は自己紹介をしました。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:56:16.66 ID:clEHf3P+o
「もし、もしよかったらウチに来てみないかね」
高木様には一飯の恩義があります。
力を回復するためにねぐらも要りましょう。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:56:56.71 ID:clEHf3P+o
765プロの事務所を見て私は―――高木様風に言うならば―――ティン! ときました。
事務所の地下を走る水脈は複雑に絡み合い、龍穴となって気に満ちておりました。
ここを拠点とすれば失った力が戻るのもそう長くはかからないでしょう。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:58:29.15 ID:clEHf3P+o
ともあれまずはアイドルです。
私に舞妓としての素養があるとはとても思えませんが、高木様のご期待に添えられるよう精進せねばなりますまい。
ガラスの入った扉を開くと、少々薹(とう)の立った女性が出迎えてくれました。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 16:59:04.80 ID:clEHf3P+o
「どうかお許しを……」
「え? あ? へ? は、ははー!」
女性はなぜか土下座をもって返答されました。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 17:00:02.18 ID:clEHf3P+o
小鳥嬢は失礼ながら粗忽なお人のようです。
しかしながらとても温かい人柄で、私はこの765プロを非常に気に入ってしまいました。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 17:00:42.70 ID:clEHf3P+o
「貴音ちゃんは学校どうしてるの?」
「お恥ずかしながら私には学が欠けておりまして……」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 17:01:30.74 ID:clEHf3P+o
「え? あら、そんなことないわよ、ふふ。この世界は実力社会だからたいした問題じゃないわ。
それに貴音ちゃんならすぐに人気者になれるわよ。」
「そう……でしょうか?」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 17:02:49.66 ID:clEHf3P+o
「とってもいい子だから。
まだ会ってほんの短い時間だけど、貴音ちゃんを応援したいなって、そう思わせる何かがあなたにはあるの」
驚きながら首を振ると銀色の髪がうなじをくすぐりました。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 17:03:37.64 ID:clEHf3P+o
「当分はレッスンだけになると思うけど頑張ってね。今日はいないけど他の子もみんないい子だし、
その子達を担当してくれてるプロデューサーさんともきっと仲良くなれるわ。もしなにか困ったり
わからない事があったら相談してね」
「ありがとうございます」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/18(水) 17:04:22.18 ID:clEHf3P+o
扉が閉まるのを見て私は床に耳をつけました。
『脅迫ですか!?』
少々くぐもっていますがハッキリと聞き分けられます。
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