101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:22:47.33 ID:J60wAoTTo
その静寂は、物寂しげで、悲しげで、ひどく寒々しい。
窓から差す蒼白い光。それも、慣れてしまえば心地よくなる。
だからわたしは、どれだけ寒くても、この朝の引き締まった空気が好きだ。
102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:24:08.96 ID:J60wAoTTo
わたしが玄関ホールの近くに行くと、話し声が聞こえた。
誰かがいる。
「……ですけど、本当に」
103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:25:13.84 ID:J60wAoTTo
「例の人影が、この屋敷の方に向かうのを見た者がいるのです」
すぐに、例の空き巣の話をしているのだと分かった。
わたしは壁にもたれて静かに溜め息をつく。男の神経質そうな声。なんだか、無機質な印象を受ける。
104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:26:14.72 ID:J60wAoTTo
堅苦しい口調で話すその男に、わたしはなんだか嫌な気持ちになった。
声に抑揚というものがないのだ。色というか、気配というか、そういうものがなかった。
生きている感じがしないのだ。下界の人間はみんなそうなのだろうか?
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:27:12.60 ID:J60wAoTTo
シラユキはしばらく黙りこんだようだったが、やがて諦めたように口を開いた。
「わかりました。ただ、少しの間待っていていただけませんか? 屋敷の中を少し片付けさせてください」
106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:28:19.06 ID:J60wAoTTo
わたしは通路を逆戻りし、玄関ホールから距離を取る。
シラユキとすぐ近くで言葉を交わすわけにはいかなかった。
わたしが厨房の付近まで移動したとき、シラユキは玄関ホールの方から姿を現した。
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:29:04.34 ID:J60wAoTTo
シラユキは困った顔をした。わたしも困った。
書庫だろうとどこだろうと、しっかりと探されれば見つかってしまう可能性は拭えない。
「そんなにしっかりとは確認しないと思うんです。どこか見つからないような場所なら……」
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:30:52.59 ID:J60wAoTTo
窓の外は雨が降っている。森の中に逃げ込めば隠れることはできなくはないが、傘は玄関にしかない。
何より、廊下の窓から見つかるかもしれなかった。
どこかの空き部屋のクローゼットやベッドの下は、いざというときに逃げることができない。
109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:31:51.19 ID:J60wAoTTo
シラユキは少し不安そうな顔をした。
でも、他のどこでも同じなのだ。彼女は最後に覚悟を決めたように頷いた。
「じゃあ、書斎の中に身を隠して、内側から鍵をかけてください。
110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:33:01.99 ID:J60wAoTTo
◇
書斎に行ってみて思ったのは、クローゼットには隠れられないということだった。
あまりに「あからさま」過ぎるのだ。
111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:33:36.61 ID:J60wAoTTo
さて、とわたしは思う。困った。手詰まりだ。
ためしに机の引き出しを開けてみる。たいしたものは入っていない。
簡単な文具や羊皮紙なんかが入っているだけだった。
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。