20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 09:57:10.95 ID:6wN2+WcTo
これまでは、この雨の音を聞きながら、本を一日中読み続けることも苦痛ではなかった。
でも、今日はひどく物憂い。身体を動かすのも億劫だ。
閉ざされているのだ、とわたしは感じる。
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2013/05/19(日) 09:59:15.20 ID:6wN2+WcTo
妙に気分が落ち着かなくて、何かを飲みたくなった。
わたしは部屋を出て、一階の食堂へ向かう。
たくさんの部屋があるこの瀟洒なお屋敷も、ふたりで使うには少し広すぎる。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:00:20.08 ID:6wN2+WcTo
わたしはシラユキがいなければ自分ひとりでコーヒーをいれることもできない。
カップどころかスプーンが置かれている位置さえ分からないのだ。
それは、わたしの生活力の無さだけが理由ではないはずだ。そういう部分もあるかもしれないけど。
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2013/05/19(日) 10:00:49.70 ID:6wN2+WcTo
◇
雨は一日中降り続いていた。
わたしはその日、本を読むことも音楽を聴くことも、結局ほとんどできなかった。
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2013/05/19(日) 10:01:18.56 ID:6wN2+WcTo
廊下に出るとひどく薄暗い。夜は知らぬ間に深まっている。
もともとこの屋敷では、時間の流れというものがひどく曖昧だ。
時計が、極端に少ない。些末なことと言えば些末なことだ。
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:02:49.22 ID:6wN2+WcTo
部屋の中は暗かった。雨のせいで月当たりも差し込まない。
それでも暗い灯りが天井の電灯から注いでいたから、真っ暗ではない。
そのおかげでわたしは、部屋の様子をおおまかに確認することができた。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:03:43.04 ID:6wN2+WcTo
じっと眺めていると、シラユキの睫毛がぴくりと震える。わたしはどきりとした。
彼女は何度か息を深く吸い込み、吐き出した。
彼女の呼吸に合わせて、布団がゆっくりと上下する。
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:04:43.93 ID:6wN2+WcTo
しばらく何も言わずにいた。ベッドはシングルだったから、二人で眠るには少し狭い。
でも、無理ではない。わたしたちはとても小柄だったから。
「……夢」
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:05:11.74 ID:6wN2+WcTo
「シラユキ、わたしは」
途中まで言葉にしてから、わたしは急に不安になる。
彼女は不審そうに眉を寄せた。
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:05:39.37 ID:6wN2+WcTo
「ごめんなさい」
耐えきれなくなって、わたしは謝った。
シラユキはほっとしたような、困ったような顔になった。
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/19(日) 10:06:32.45 ID:6wN2+WcTo
◇
いつの間にか眠りに落ちたわたしは、夢を見た。
彼の声は聞こえない。いつもの夢ではなかった。
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