1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/12(水) 20:49:15.25 ID:vLNSj/6Bo
※エロはないよ!
真奥「じゃあ、行ってくるわ。遅くなるかもしれないから鍵かけといていいぞ」
芦屋「畏まりました。では、行ってらっしゃいませ」
漆原「行ってらー」
後ろ手にドアを閉め、アパートの階段を降りる。
目的地は新宿。
歩くにはやや遠く、電車を使うか迷うところだったが、真奥は徒歩を選択した。
金が勿体無いということもあるが、何よりも、緊張をほぐす時間が欲しかった。
異世界で魔王として世界征服を成し遂げかけた程の彼をして、そこまでの緊張を強いられる問題。
それはただの人間と化した今の身体に理由があった。
人としての身体が求める、抑えがたい欲求。
すなわち――
真奥(恐れることはない。行ってやるぜ……風俗店!!)
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:50:15.07 ID:vLNSj/6Bo
最初は驚いた。魔王たる彼もそれはもう驚いた。
朝起きると感じた不思議な違和感。
確かめたところ、下着に深刻な汚れが発生していた。
恐慌した彼と悪魔大元帥である芦屋が必死で調査した結果、人間には夢精という現象が起こり得ることが判明した。
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2013/06/12(水) 20:50:44.16 ID:vLNSj/6Bo
真奥(あのね、魔王の意地で顔には出さないようにしてるけどね)
真奥(ぶっちゃけちーちゃんの胸とか刺激が強すぎるわけです、はい)
彼のバイトの後輩である佐々木千穂は、十六という若さにして至宝とも言うべき肢体に恵まれていた。
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2013/06/12(水) 20:51:10.57 ID:vLNSj/6Bo
真奥「……うーむ」
時刻は深夜に差し掛かる頃。
花の金曜日ということもあり、酒に酔う人々で溢れる中、彼は目的の店の前に立っていた。
あらかじめ目星をつけていた店。あとは入店するだけだったが、彼の足は動かなかった。
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2013/06/12(水) 20:51:37.45 ID:vLNSj/6Bo
悩んでいたのは一瞬か、数分か、数十分か。
その間俯いていた真奥が、ふと顔を上げた。
その表情は晴れやかで、だがどこか寂しげだった。
真奥(……やめよう)
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2013/06/12(水) 20:52:11.19 ID:vLNSj/6Bo
店員「申し訳ありません、ただ今カウンターも満席でして……」
真奥「あ、そうですか。えーと……」
さすがに週末だけあり、入った店は満席だった。
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2013/06/12(水) 20:52:38.01 ID:vLNSj/6Bo
真奥「……鈴木さんだっけ? あの、何なのこれ」
真奥は立ったまま、憂鬱な顔で梨香に向かってそう言った。
恵美の顔は真っ赤に紅潮しており、目は虚ろだ。明らかに出来上がっていた。
どうにも嫌な予感しかしない。
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2013/06/12(水) 20:53:13.86 ID:vLNSj/6Bo
恵美は話を聞いている様子もなく、枝豆の皮を剥く作業に熱中していた。
手がすべり落下する枝豆を見て、それでいいのか勇者と敵の心配をする真奥。
梨香「恵美のことどう思ってる?」
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2013/06/12(水) 20:53:41.50 ID:vLNSj/6Bo
残存魔力のほとんどない今の真奥を殺すのは、恵美にとって容易いことだ。
だが行きがかり上共闘し、馴れ合いのような関係になり、いつのまにか争い合うような空気はなくなった。
口喧嘩はするものの、本気の殺し合いなど日本に来てからしていない。
それは改めて指摘されれば、確かに腑に落ちないことだった。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:54:12.17 ID:vLNSj/6Bo
真奥「お前らよくこの辺で飲むの?」
恵美「たまにね。このクズ」
真奥「……お前実年齢十七だよな? 酒いいのか?」
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2013/06/12(水) 20:54:42.45 ID:vLNSj/6Bo
ああ、やはり大して興味もない話題など振るんじゃなかった。
そう頭を抱える真奥だったが、意外にも恵美が会話を繋いだ。
恵美「……どうせ、私は根に持つ女よ」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:55:15.84 ID:vLNSj/6Bo
真奥「戦争責任って言葉があるよな」
真奥「なるほど確かに、俺らは侵略者だ。お前ら人間には恨む権利があるし、俺らは文句を言える立場じゃない」
真奥「だがな、そういうことを全部置いといたとしたら――」
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2013/06/12(水) 20:55:45.03 ID:vLNSj/6Bo
恵美「梅酒。ロックで」
真奥「梅酒ロックもう一つ。あとナスの漬物。……なあお前、飲み過ぎじゃね?」
恵美「何が……余裕に決まってる、でしょ」
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2013/06/12(水) 20:56:11.67 ID:vLNSj/6Bo
真奥「くっそ、起きろよお前……つーか金払えよ! 割り勘だからな!」
恵美「んー……」
真奥は恵美の腕を自分の肩に回し、無理やり立たせていた。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:56:40.07 ID:vLNSj/6Bo
真奥はこの手のホテルなど泊まったことがなく、部屋を取るのに少々苦労したが、無事部屋まで辿り着いた。
やたらと大きなベッドに、ひとまず恵美を寝かせる。
その端に自分も座った。
ようやく肩の荷が下りたことで一息つく。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:57:06.88 ID:vLNSj/6Bo
手が、止まった。
少しの間そのまま固まる。
恵美が起きた様子はない。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:57:35.29 ID:vLNSj/6Bo
触れて欲しいと思った。
だが触れてくれなかった。
もしあのまま触れてくるようなら、その場で聖剣を取り出し貫いてやったものを。
それは半ば本気の思いだった。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:58:06.27 ID:vLNSj/6Bo
真奥が目を覚ますと、辺りには誰もいなかった。
真奥(……先に帰ったか?)
酒の抜け切らない頭で考えながらしばしぼうっとしていると、ドアを閉める音が聞こえた。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:58:35.69 ID:vLNSj/6Bo
それなりに早い時間ではあるが、土曜ということもあり新宿駅東口にはすでに多くの人通りがあった。
改札に降りる前に、恵美が財布を取り出し真奥に数枚の札を渡そうとする。
恵美「これ。昨日のホテル代と、酒代。割り勘ね」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:59:06.62 ID:vLNSj/6Bo
ぎゃあぎゃあといい年をした男女が言い合っているのを歩きながら横目で見ていく通行人達。
その中に、立ち止まり凝視している人影があったことに、二人は気づかなかった。
千穂「……真奥さん、遊佐さん……?」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:59:35.04 ID:vLNSj/6Bo
恵美「あ、あのね、千穂ちゃん、それは誤解で、落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
千穂「……はい」
恵美「えーと、つまり……お酒って怖いのよ! ワケ分かんなくなっちゃうから、千穂ちゃんも大きくなったら気をつけて――」
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