2:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:17:52.02 ID:kHvSRcn3O
ひんやりと冷たいフローリングに、足を下ろす。
素足でぺたぺたと歩く俺は、彼女を連れて自宅に帰ってきていた。
そういえば、彼女は靴を脱いだのだろうか。
見てみると、白い華奢な足が作業服の下にのぞいている。
そっと振り返ると、玄関には真っ白な靴が並べられていた。
3:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:18:55.46 ID:kHvSRcn3O
次の日、目を覚ました俺は隣でたたずむ彼女の姿を見つけた。
微かにさしこむ朝日の光を受けて、彼女の髪はキラキラと輝いていた。
俺は少し見とれていたのだろうか。
視線に気がつき、彼女は俺に言った。
4:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:19:58.02 ID:kHvSRcn3O
俺がたどり着いたスーパーの中は、じんわりと蒸し暑く、来店した客が文句をつけるほどだった。
空調の設備はあるものの、社員は金をけちり、しわ寄せは俺みたいな下っぱに回ってくる。
だからどうしたと言うわけでもない、いつもの日常だ。
俺はこの年になっても定職につかず、スーパーでレジ打ちと品出しを続けていた。
5:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:21:06.25 ID:kHvSRcn3O
家の扉の下の鍵を開けて、上の鍵穴にも鍵を差し込んで回した。
別に盗られたくないものがあるわけでもないのに、俺は習慣で鍵を二つかける。
そして、雨の日なんかはその使い勝手の悪さにイライラしながら、二つの鍵を開けていた。
扉を開けると、今朝と同じ姿で彼女が俺を出迎えた。
6:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:22:01.02 ID:kHvSRcn3O
彼女はいつまでウチにいるつもりなのだろう。
そう言えば、あのUFOはどうなったのだろうか。
彼女に見送られた俺は、何気なく川原に足を運んだ。
だが、そこにはもうなにもなかった。
7:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:22:57.54 ID:kHvSRcn3O
また、鍵を二つ開けて玄関で靴を脱ぐ。
出迎えた彼女は、やっぱり真っ白だった。
「ご飯が出来てますよ」
8:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:24:39.94 ID:kHvSRcn3O
次の日、早くに目を覚ますと彼女は昨日と同じ姿勢で、壁に体を預けて空を見ていた。
「眠ってないんですか?」
9:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:26:12.52 ID:kHvSRcn3O
俺はにやけながら、核心をついた。
「アンタは俺の見てる幻覚なんだぞ。
なのに、なんで俺の意思に反したことを言うのかね」
10:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:27:09.65 ID:kHvSRcn3O
「私は両親に愛されていました。
望むものはだいたい手に入ったし、特に不満はなかった。
なのに、とてもむなしくなったんです。
なぜ生きているのか、私には分からなかった」
11:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:28:18.63 ID:kHvSRcn3O
俺は、宇宙人に会ったのかもしれなかった。
何日かバイトを休んだ俺は、ふとそんなバカなことを思った。
食に興味のない俺は、彼女が作った料理の味すら思い出せない。
彼女がこの部屋にいたという痕跡はなにも残っていなかった。
12:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:29:07.94 ID:kHvSRcn3O
アパートに帰った俺は、おばちゃんから貰ったカップ麺を作って食べた。
部屋はとても静かだ。テレビさえこの部屋にはない。
俺は塗装が剥げて、ボタンが取れかかった携帯を取り出した。
このご時世に二つ折りの携帯を持ち歩く俺は、その携帯に保存された写真をいつか見ようと思っていた。
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