過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5―
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◆P2J2qxwRPm2A
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2018/03/11(日) 19:13:59.52 ID:YQSvpWbd0
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サクラ王女と夜に話をしてからわずか一週間後のこと、そのセレモニーは開かれた。
カムイを公式に暗夜の王族として公表するその式典は、かつてないほどに盛大なものとして扱われた。
反乱を鎮圧した英雄、暗夜を勝利に導く女神、マークス兄様に並ぶ剣の名手、他にも様々な二つ名がある中でダークブラッドという称号が今のカムイを表している。そんなカムイの姿を私は遠くから眺める。
以下略
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◆P2J2qxwRPm2A
[saga]
2018/03/11(日) 19:17:19.68 ID:YQSvpWbd0
「あ、いたいた。カミラ王女、サクラ様!」
「サクラ様、大丈夫ですか?」
「あ、ツバキさん、カザハナさん。そんな慌てなくても大丈夫です」
少しの間だけでもサクラ王女を見失ったからか、慌てた様子で二人が駆け寄ってくる。カザハナはもう離れたりしたらダメだからねとサクラ王女の手を取り、ツバキは周囲でそう言った下世話な話をする者たちを牽制し始める。
以下略
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◆P2J2qxwRPm2A
[saga]
2018/03/11(日) 19:20:13.17 ID:YQSvpWbd0
困って顔を赤らめているサクラ王女はなんとも幸福そうだった。
サクラは白夜の花の名前だからかもしれない。花が開いたような笑顔というのはあながち間違いではないと思う。そんな可憐で美しいものを見ると、口元が綻んでしまうのも当然のことねと、自身の口を緩ませたままにした。
「カザハナさんにツバキさん、それ以上続けるなら、私カミラさんに護衛を頼んじゃいますよ」
以下略
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◆P2J2qxwRPm2A
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2018/03/11(日) 19:22:19.31 ID:YQSvpWbd0
私の言葉にカザハナが顔を真っ赤にして、ツバキに続いてカミラ王女まで!? サクラ、あたしも夜にお話しに行ってもいい?と矢継ぎ早に言うものだから、それにサクラ王女まで真っ赤になる。
そんなカザハナの発言から庇うように、私はその頭を優しく撫でてあげた。
「あらあら、サクラ王女に頼まれたら守ってあげないといけないわね。サクラ王女」
「ひゃっ、カミラさん。そんなに撫でないでください」
以下略
981
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◆P2J2qxwRPm2A
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2018/03/11(日) 19:25:41.96 ID:YQSvpWbd0
声を掛けられるまで、時間が止まっていたのかもしれない。声を掛けなかったらサクラ王女の時間は止まったままだったのかもしれない。そう思えてくるほどに、サクラ王女の言葉はか細いものだった。
一体何が原因なのかと視線を動かす。まずは正面、カザハナとツバキもサクラ王女の様子を心配している。二人がこの変化の原因とは考えられないから、視線を奥に進めた。
しかし、進めても同じような貴族の姿以外に何もなかった。何も特徴的な物はない、誰かがサクラ王女の命を狙っているのかとも考えたけど、このセレモニーはあのマクベスが全体の指揮を執って行っていて、それはお父様からの指示を受けての物だ。生ぬるい警備などしていないだろう。
だから原因は何もわからなかった。わからないけどサクラ王女に起きた異変は確かなもので、今できることは気遣う事くらいで、あまりにも弱々しい言葉しか出てこない。
以下略
982
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◆P2J2qxwRPm2A
[saga]
2018/03/11(日) 19:29:16.96 ID:YQSvpWbd0
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セレモニーが終わり、屋敷に戻るとカザハナとツバキはすぐに部屋へと戻る。それは自分たちに出来ることは今なにもないと言っているようにも感じられた。
二人は多分信じているんだろう、サクラ王女がいつかきっとそのことを話してくれる。だから、今は静かに待つのが私たちに出来ることだということを。
そして、私はその理由をサクラ王女から聞くべきだと思った。
以下略
983
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◆P2J2qxwRPm2A
[saga]
2018/03/11(日) 19:33:53.97 ID:YQSvpWbd0
「……」
あの日と同じでじっと静かに月を眺めている。どこか儚げに感じたシルエットもそのままに、彼女はそこにいる。それに話しかけないでもいいと、考える自分もいた。サクラ王女の悩みに手を差し伸べたところで、もしかしたら意味などないのかもしれない。そう考えれば自室に戻ってしまうのもいいだろう。
「……そうはいかないわよね。あんな顔をされちゃったら……」
以下略
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◆P2J2qxwRPm2A
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2018/03/11(日) 19:39:38.78 ID:YQSvpWbd0
「カミラさん、あの約束覚えてますか?」
「月が同じに見える理由を、私に最初に話してくれる約束の事?」
「はい、覚えててくれたんですね」
「サクラ王女が私に最初に話してくれるんだもの、忘れるわけがないわ」
「はい、ありがとうございます」
以下略
985
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◆P2J2qxwRPm2A
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2018/03/11(日) 19:46:48.99 ID:YQSvpWbd0
「私、白夜にいる頃からずっと守られてばかりだったんです。常に危ないことから守られる立場で、危険なことを進んでやるなんてこともありませんでした。お城にいるときも侍女の方がいて、軍議への参加も強制されていませんでしたし、何か怖いことがあるとお母様が優しくしてくれて、私はずっとそうやって過ごして来ました」
それはなんと恵まれた世界だろうか、幼少期の私にはそんなものは無かった。常に親族の争いに怯えて、出来る限りお母様同士の争いに巻き込まれない様にと願う日々。私が泣いてもお母様がそれを殺めてくれたことはほとんどない。機嫌がいい時は違う母親の子が死んでしまった時くらいだった気がする。
「あの日、カムイ姉様を追いかけた時、私は何かが変われていた気がしたんです。守られるだけじゃない私になる事が出来た気がして……。でも、それは違いました。さっきの会場で、わかってしまったんです。私は守られることをどこかで当然のことのように思っていて、それが普通の事だと思っていたんです。月を見て何も変わってないって思ったのは、何も変わっていないことを誤魔化したかっただけで、結局私は成長も何もしてなかった…。私の身勝手が多くの出来事を引き起こしたかもしれないのに……」
以下略
986
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◆P2J2qxwRPm2A
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2018/03/11(日) 19:48:48.45 ID:YQSvpWbd0
「……」
それを優しい言葉で繕うことは簡単だ。なぜなら、弱まった心にはそういった言葉が良く浸透する。
状況が状況だ、仕方ない、あなたの立場を考えれば仕方のないことだ、言葉の形は色々だけど、その本質は同情という名の逃げていいという口実で、今のサクラ王女はそういった言葉を求めているわけじゃなかった。
サクラ王女は慰めてほしいからこういう話をしているんじゃない。ただ迷っているだけ、ならそれに少し手を差し伸べるのが私に出来る事だ。
以下略
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