2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 19:54:56.47 ID:DvK9a+dU0
<第1話 花火>
転校は初めてじゃない。
ただ、これが最後になるかもしれなかった。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:07:16.43 ID:DvK9a+dU0
『花火、少しくらい見ていかないのか?』
ほとんど歩く機械みたいになっていた俺を見かねたのだろう、《俺》が苦笑気味に言う。
『よせよ。俺は祭りが苦手なんだ。知ってるだろ?』
4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:11:26.57 ID:DvK9a+dU0
何が起こっている?
《未来の欠片》で何かが見えたことは一度もない。
明らかにこれまでのものとは違う。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:28:12.54 ID:DvK9a+dU0
翌日、俺は転校の手続きに必要な書類を受け取るため、日乃出浜高校を訪れた。
既に夏休みに入っていたので、登校している生徒は少なかった。野球部員がグラウンドで練習していたり、美術部員がなぜか放し飼いにされている鶏をスケッチしていたりと、そんな程度。
閑散とした校舎に入り、担当の先生と会って、少し話をした。しかし、昨日のことが気になって内容が頭に入ってこない。俺は適当なところで話を切り上げ、そそくさと帰り支度をした。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:35:08.72 ID:DvK9a+dU0
「ありがとうございます」
先生が校舎へ戻っていくのを見届けてから、俺はスケッチを続ける彼女の隣に、ゆっくりと腰掛けた。
「面倒だよね。転校って」
7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:44:27.48 ID:DvK9a+dU0
『他から来た子』――その単語が、胸の奥に無断で手を突っ込まれたように、嫌に耳についた。
「……だから一羽だけ浮いてるのか」
少し暗い調子でそう呟いた俺に、トウコが不思議そうに振り返る。だが、俺が何も言わないでいると、彼女はまたデッサンに戻った。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:51:08.02 ID:DvK9a+dU0
「ここは港町だし、猫もたくさんいる。――襲われる可能性は考えない?」
「魚でお腹いっぱいだから大丈夫っ! ……たぶん。今まで猫に襲われたっていう話、聞いてないし……」
「猫以外は?」
9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:57:42.87 ID:DvK9a+dU0
*
あんなことをしでかして、結局、俺は彼女に《未来の欠片》のことを切り出せずに終わった。
けれど、もちろん、一歩目で躓いたくらいで諦めるつもりはない。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 21:01:17.60 ID:DvK9a+dU0
「紹介します。ええっと、名前は――」
「沖倉です」
「沖倉ダビデ?」
11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 21:13:31.09 ID:DvK9a+dU0
唐突な当たり前のグラスリップSSです。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:10:29.16 ID:DvK9a+dU0
†
その《声》のことは、母さんにも、もちろん父さんにも、話したことはない。
あれは、忘れもしない、あの夏祭りの日。
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