75:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/09(火) 13:29:44.63 ID:W+HAaMa50
「あれを《未来の欠片》と名付けたのは、俺にとって、あれが自分に欠けているピースのような存在だと思ったからなんだ」
どこに行っても、自分のいるべき場所はここではないような気がしていた。
そんな中で聞こえてくる《未来の欠片》は、俺が向かうべき場所――俺がいていい場所を指し示す、道しるべのように思えた。
76:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/09(火) 13:34:45.88 ID:W+HAaMa50
全ては、透子に出会ってから、変わった。
「……少しずつ、わかってきたんだ。俺が欲しがっていたのは、なんだかよくわからないピースみたいなものじゃない。もっとはっきりとした、もっと実体のあるものじゃなかったのかって」
俺が必要としていたのは、概念上の強さや完全さなどではなく。
77:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 20:33:42.74 ID:W+HAaMa50
<第7話 自転車>
少しずつ日が傾いていく。藍色と茜色が混じり合う空に、ひぐらしの声が溶けていく。
「今度、海、行こう」
78:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 20:40:03.38 ID:W+HAaMa50
*
母さんが父さんの家に帰ってきた次の日、俺は早起きして例の高台へ行った。
考えていたのは変わらず透子のことだった。
79:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 20:53:04.25 ID:W+HAaMa50
*
昼食を終えてしばらくすると、家の電話が鳴った。
透子かもしれないと思い、父さんや母さんに先んじて受話器を取る。
80:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 20:55:27.00 ID:W+HAaMa50
*
麒麟館にやってくると、透子は熱心にエッシャーの絵を眺めていた。
声を掛けると、嬉しそうに振り返り、そのまま俺を外に連れ出した。
81:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:00:09.21 ID:W+HAaMa50
「なんか、私ずっとここで暮らしてるのに、駆くんのほうがいろんなこと知ってるみたいで、なんか悔しい」
唇を尖らせる透子から、海岸沿いの平地に寄り集まる家々に視線を移して、俺は少し感傷的な気分で言った。
「この街の些細なことを知ったからって、透子が暮らしてきた事実に比べたら、つまらないことだよ」
82:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:04:09.63 ID:W+HAaMa50
「…………そんなこと、ない」
同じ過ちは繰り返すまい、と決意を込めて透子を見つめていると、透子は照れたように視線を逸らした。
すると、透子も透子で、今のやりとりから何か思うところがあったのか、高山のことを話題に出す。
83:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:06:02.57 ID:W+HAaMa50
「……ごめん、急に駆くんを見れなくなった」
いや、気恥ずかしくて目を逸らしたのは俺も同じだ。
透子を直視できなかった。
84:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:14:47.81 ID:W+HAaMa50
「…………」
俺があんまり見つめるからか、透子はまた俯いてしまった。
何か掛けるべき言葉を探したが、見つからない。
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