水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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116: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:26:46.10 ID:iX/HvtXE0

「水本さん」

レッスンが終わり、ぼうっと考え事をしていると、いつものように先生にお声をかけられた。
考え事に耽っていた私は、つい反応が遅れてしまって、はい、と返事をした後、すみません、と謝った。
以下略 AAS



117: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:27:27.55 ID:iX/HvtXE0

そんな調子だったので、先生が色々とお褒め下さっているにも関わらず、私の歯切れの悪さといったら、自分でも何をしゃべっているのか分からないくらい、支離滅裂な回答を繰り返していた。

しかしそんな私のまとまりのない思考も、先生が何気なくおっしゃった次の言葉に一瞬で釘付けになった。

以下略 AAS



118: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:28:33.40 ID:iX/HvtXE0

私は重たい足をやっとのことで動かしながら駅までの道のりを歩いて行った。
耳の奥がざわざわと鳴っている。
途中、何度か眩暈を覚えて立ち止まり、それから自分のいる場所を確かめるように辺りを見回した。

以下略 AAS



119: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:29:44.52 ID:iX/HvtXE0


   十三

あまり馴染みのない駅の、小さな改札口の前に紗枝ちゃんが立っていた。
以下略 AAS



120: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:30:17.08 ID:iX/HvtXE0

「んー? 買い物……」

「私も一緒に、いい?」

以下略 AAS



121: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:31:37.51 ID:iX/HvtXE0

電車に乗っている間も私たちはほとんど抱き合うくらいぴったりくっついて立っていた。
空いている車両の隅の方で、今度は紗枝ちゃんが私を壁に閉じ込めるように身体を寄せていた。

私たちは何をしゃべるということもなく、お互いの髪や服を手持ち無沙汰に弄ったり、綺麗な肌や顔立ちをぼんやり眺めたりしていた。
以下略 AAS



122: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:32:10.95 ID:iX/HvtXE0

「そない言うたって、前にいっぺん断わってもうたんやし、もう他の人んとこに回されてるんちゃう? プロデューサーはんかて困ってまうやろ」

「それでも、もう一回頼んでみる」

以下略 AAS



123: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:33:40.23 ID:iX/HvtXE0

目的の駅に着き、私たちは電車を降りた。
紗枝ちゃんが何も言わずに私の手を握り、人混みの中を少し先に歩いた。

改札を通り、駅を出ると、見慣れた街の風景がいつものように私たちを迎えた。
以下略 AAS



124: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:34:29.41 ID:iX/HvtXE0

「ゆかりがお仕事で忙しゅうなったら、取り残されたうちはどうなるん? ゆかりが他の子と踊ったり、番組で楽しそうにしゃべるのを指を咥えて眺めてろ言うん? 考えるだけで耐えられへん。そんなの、うちが絶対に許さない」

「…………それでも、私はアイドルを辞めたくない。紗枝ならきっと分かってくれるって信じてる」

以下略 AAS



125: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:35:10.77 ID:iX/HvtXE0

「……かわいそうなゆかりはん。なんも知らんで、えらそうに……」

まるで喉元に鋭い刃を突き付けられたような気分だった。
額に脂汗が滲み、私は、思わず逃げ出したくなって半歩、後ずさった。
以下略 AAS



126: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:36:11.85 ID:iX/HvtXE0

再び、私たちの間に沈黙が流れた。

私は依然、苦しみの中にいた。

以下略 AAS



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