21: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:07:54.77 ID:iX/HvtXE0
スタジオを出て先生と別れたあと、早めにお昼を食べようと思い、一階のロビー近くにある売店へ向かった。
そこへ行くためには、エレベーターを降りたあと、広大なエントランスを横切り、向かい側の棟のエスカレーターを回りこんで、その奥にある待ち合いスペースまで歩かなければならない。
つまり、途中で社員や来客の方々と頻繁にすれ違うことになるわけで、そうなると当然、顔見知りの方と挨拶する機会も少なくない。
22: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:08:55.49 ID:iX/HvtXE0
「別になんでもあらへんのよ。……ちょっと今度のどらまのことで、先方と食い違いがあったみたいで……ふふっ、いややわぁゆかりはん、あんさんがそない心配することやないのに」
ドラマの話が出て、私がふいに深刻な表情を浮かべたせいか、紗枝ちゃんはごまかすように話題を変えた。
23: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:10:52.03 ID:iX/HvtXE0
外はあいかわらず息詰まるほどな猛暑だった。
私たちはオフィス街のささやかな並木道を二人で並んで歩いて行った。
おしゃべりしながら歩いていると、この不快な暑さも幾分まぎれるような気がした。
24: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:11:38.63 ID:iX/HvtXE0
「その件に関してはプロデューサーさんに厳しく注意されちゃいましたけど」
そんな風に私が懐かしがって話すのを紗枝ちゃんはじっと押し黙って聞いていた。
25: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:12:49.34 ID:iX/HvtXE0
その後、私と紗枝ちゃんは近郊のショッピングモールへ立ち寄り、あれこれ意見を言い合いながら素敵なお洋服やアクセサリーなどを見てまわった。
「これなんて変装にぴったりや思わん?」
26: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:13:39.00 ID:iX/HvtXE0
お昼を過ぎてもう時間も経つのに、フードコートは人でいっぱいだった。
クレープ屋さんの列に数分並んで、私はメイプルバターと紅茶のシンプルなセットを、紗枝ちゃんはバニラアイスと黒蜜に生クリームまで乗った豪華なクレープとタピオカの抹茶ミルクを注文した。
私たちは隅っこの方のテーブル席に座り、出来立てのクレープをほおばりながら味について感想を言い合ったり、お互いに食べ合いっこしたりした。
27: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:14:38.18 ID:iX/HvtXE0
が、それは私の思い違いだった。
紗枝ちゃんは何やらずっと私に向かって話しかけ、私は無意識に相槌を打っていたらしかった。
そのことに気付いた時にはもう、紗枝ちゃんは話したい事をほとんど話し終えてしまっていた。
28: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:15:19.43 ID:iX/HvtXE0
私たちは夜遅くまでおしゃべりしたあと名残惜しく「おやすみ」を言い合って別れた。
突然、私はひとりになった。
29: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:19:21.40 ID:iX/HvtXE0
四
紗枝ちゃんとはそれからも頻繁に遊びに行くようになった。
30: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:19:56.74 ID:iX/HvtXE0
私たちが夏休みの短い間にこれほど親密になれたのは理由がある。
確かに紗枝ちゃんはプライベートでも何かと世話を焼いてくれたし、私自身も彼女を好いていたけれど、それだけではない。
というのも、例のドラマのお仕事があったので私たちは必然的に顔を合わせる機会が多かったのだ。
31: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:20:34.47 ID:iX/HvtXE0
「ゆかりはんの演技、堂々としてて雰囲気出てはるもんなぁ」
リハを終えて二人で帰る道すがら、紗枝ちゃんが言った。
私はそれとなく満足げに答えた。
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