1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:09:20.95 ID:UwF03LhU0
「ちょっ、待って」
左手を強く引かれて、靴の片方がひっくり返っているのを気にしながら階段を駆け上がる。
リビングに辿り着くなり身体ごと押されて、もつれ合うようにソファに倒れ込んだ。
「ちょっと、待ってってば、ねえ、まっ……!」
馬乗りになった彼女に唇を塞がれて、言葉を奪われる。
ひょいと外された眼鏡の行方は、多分またソファの背もたれの上だろう。
噛み付くような激しいキスに呼吸が乱れて、
たまらず開いた唇の隙間から柔らかな舌が滑り込んできた。
「……んっ、……ん」
「……っ、すきっ……、のどか、ちゃんっ、すき……!」
彼女は両手で私の頬をがっちりと押さえて、
忙しく舌を絡ませながら、吐息を漏らすように私の名を呼ぶ。
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2011/08/03(水) 02:10:02.68 ID:UwF03LhUo
「……ッ、はッ……、まっ……、待って!」
酸素を求めて互いの唇が離れた隙に、ぐい、と両手で彼女の肩を押し上げた。
腕の長さぶんだけ二人の唇が遠のく。
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2011/08/03(水) 02:11:00.59 ID:UwF03LhUo
「それと……、制服も皺になるし……暑いし……。汗、かいてるし……」
「うん?」
「……先に、シャワー浴びない?」
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2011/08/03(水) 02:12:22.43 ID:UwF03LhUo
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2011/08/03(水) 02:13:47.35 ID:UwF03LhUo
「あ、自分じゃ見えないだろ。塗ってあげるからあっち向いて」
澪はそう言って、
スクールバッグから取り出したスティックタイプの痒み止めを私の前に掲げてみせた。
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2011/08/03(水) 02:14:53.87 ID:UwF03LhUo
予鈴が鳴って、クラスメイト達がおしゃべりしながらそれぞれの席に向かう。
ふと用事を思い出して、澪を呼び止めた。
「軽音部、また書類出し忘れてるわよ」
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2011/08/03(水) 02:15:56.73 ID:UwF03LhUo
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2011/08/03(水) 02:17:04.97 ID:UwF03LhUo
「……もう。全然反省してないでしょ」
反省してるよ〜?と応えた彼女の頬を軽くつねってから、栗色の髪に触れる。
指をゆるゆると滑らせて後ろ髪を束ねる山吹色のリボンをつまんだら、
駄目だよ和ちゃん、と彼女は笑顔のまま私の手首を掴んだ。
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2011/08/03(水) 02:18:36.20 ID:UwF03LhUo
私の呼吸に合わせて上下する彼女の頭をやんわりと撫でる。
彼女は少し身じろぎして首を捻ると、右耳と頬を私の胸に押し当てた。
「……ねえ、和ちゃん」
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2011/08/03(水) 02:19:33.98 ID:UwF03LhUo
「ねえ。フツーの幸せって、たとえば?」
「え……。みんなとおんなじように、フツーに色々できること、かな」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:21:21.97 ID:UwF03LhUo
「……私はね、」
「んー?」
「私は、誰かを基準にしないと計れない幸せなんて別に欲しくないわ」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:22:13.92 ID:UwF03LhUo
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:23:39.71 ID:UwF03LhUo
「……ギター失敗して、梓ちゃんを困らせたりしてない?」
『おや真鍋さん、妬いていらっしゃるので?』
「用事がないなら切るわよ」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:24:25.05 ID:UwF03LhUo
『……ごめんね?』
「別に、謝らなくてもいいわよ」
『……うん』
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:25:12.59 ID:UwF03LhUo
「……そうね。でもその前に、唯」
『うん?』
「そんなに遊んでて、宿題、夏休み中に終わるの?」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:27:06.43 ID:UwF03LhUo
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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:29:10.05 ID:UwF03LhUo
唯が軽音部の夏合宿から帰宅した翌々日。
ご両親の赴任先に向かうため乗った空港行きの高速バスが、多重事故に巻き込まれた。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:30:02.66 ID:UwF03LhUo
「……はぁ……」
なんとか吐き気は治まり、肩で息をしながら手の甲で涙と脂汗を拭う。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:31:29.17 ID:UwF03LhUo
ーーーぎしり。ふいにベッドが軋んで目が覚めた。
少しまどろんでいたらしい。いつの間にか日が傾いて、
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:32:34.80 ID:UwF03LhUo
「…………ゆ」
「うい、だよ。和ちゃん」
呼ぼうとした名を遮られ、訂正される。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:33:41.17 ID:UwF03LhUo
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