1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:00:15.41 ID:pZ0kk8uso
P「ん、んん」
男は顔を上げて、まずは仰天しました。自分がそんな場所にいるはずはなかったからです。
あたりには白と青しかありませんでした。
地はただただ平らな雪に覆われ、天は青く蒼く澄みわたっていました。
男はもういちど周りを見まわして、納得したようにつぶやきました。
P「つまり、夢の中か」
なぜなら雪面には自分の足跡すらなかったからです。
ここが現実だとするなら、倒れていた身体に雪が積もっていなかったのに
ここまでやってきた足跡がないなんてありえないでしょう。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:01:46.19 ID:pZ0kk8uso
P「貴音、いるかな?」
貴音「はい、あなた様」
とつぜん男の傍らに滲み出たのは、まだ娘さんとでもいうべき年齢の、
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:03:30.63 ID:pZ0kk8uso
男女は黙ってあたりを見回していました。
焦っている様子はちっとも見られませんでした。
貴音「穏やかで、静かで、美しく、白い」
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:05:04.07 ID:pZ0kk8uso
P「新規の案件は来てるんだ。みんなと比べても悪くない。
だけどリピートが減ってきた」
貴音「りぴいと……でございますか」
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:06:31.68 ID:pZ0kk8uso
女はしゃがんで足下の雪をあつめ、雪玉を2つ作りました。
1つをあらぬ方向に投げ、雪に穿たれたあとを見て童女のように笑いました。
それからもう1つの雪玉を手にして男の背をじっと見つめました。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:08:15.42 ID:pZ0kk8uso
貴音「面妖な」
P「何が?」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:09:40.86 ID:pZ0kk8uso
貴音「わたくしたちが近寄ると、松の姿が変わるようです」
言われて男はいちばん近くの幹を見つめました。
ひき肌も荒々しく重厚な松でした。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:10:48.31 ID:pZ0kk8uso
P「二本先の松はどう見える?」
貴音「苦しげに乱れています」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:12:24.96 ID:pZ0kk8uso
P「夢の中だもの。
さて。俺はここで止まっているから二本目の松まで行ってくれないか」
貴音「はい」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:13:37.49 ID:pZ0kk8uso
貴音「あなた様の意に添おうというのでしょう。
まこと、雪歩らしいいじらしさかと」
P「そんな姿をファンは見たくないよ。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:15:14.50 ID:pZ0kk8uso
P「なんでも同じだよ。でも今は雪歩を探そう。
夢に俺を招いたからには、あいつも何とかしたいんだと思う」
貴音「あなた様! あれを」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:16:15.43 ID:pZ0kk8uso
男はあずま家から少し離れたところで立ち止まりました。
それは先ほどの松の並木の三本ぶんの距離でした。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:17:18.83 ID:pZ0kk8uso
雪歩「は、はいぃ」
ドアを開けるとエアコンで温められた空気が流れ出してきました。
背後の雪を溶かすほどの勢いでした。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:18:46.89 ID:pZ0kk8uso
雪歩「でもプロデューサーはコーヒーが好きって」
P「この部屋もそうだ。
小さな洋間にせせこましくソファとテーブルを並べて埋まってる。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:19:30.27 ID:pZ0kk8uso
P「毎日忙しくて気づいていないとは思うが、このところ思わしくない」
雪歩「ううっ、私、ダメダメですから」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:20:55.13 ID:pZ0kk8uso
P「いま俺たちがいるのが夢だって気づいているかな」
雪歩「え? そうなんですか?」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:23:06.12 ID:pZ0kk8uso
P「雪歩のイメージカラーは白。清楚で健気、真摯でおとなしく儚げな美少女だ」
P「男はみんな本能的に、君を自分の色に染めたいと思う。
身も蓋もない言い方だけど、そういう魅力もあるんだから仕方ない」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:24:15.04 ID:pZ0kk8uso
雪歩「怖がってなんか……」
P「なに?」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:25:09.07 ID:pZ0kk8uso
P「ばかだお前は。それは幼稚園児のかかるはしかだよ。
初めて会った怖くない男を惜しんでいるだけだ」
雪歩「そ、そんなこと」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:26:16.47 ID:pZ0kk8uso
雪歩「そんな、私はただ性格を変えたかっただけで」
P「本人の意志は関係ない。能力が人生を決める。
そういう人間もいるんだよ。そして君はそうなった」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/06/12(火) 11:26:51.31 ID:pZ0kk8uso
P「選んでいい」
雪歩「えら、ぶ?」
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