1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:46:35.62 ID:NZSihzP+o
※この作品には殺人、レイプその他エログロシーンが含まれます。
プロローグ
「大丈夫。大丈夫よ、涼」
女は、よろよろと進む。
その背に負うものの重みと地面の傾斜が、その速度と正確性を奪う。
蹴躓き、何度も膝をつきながら、それでもけして背中の人物を落とすことなく、彼女は山を下る。
「道まで出たら、適当な車をつかまえて、救急車を呼んでもらいましょう。そのまま乗せていってもらってもいいわね」
彼女の肩に頭をあずけっぱなしの従弟が、こくんと頷いたような気がして、女はおかしくなってしまう。
「でも、乗車拒否されちゃうかしら。こんな汚れてたら」
彼女は己の体を見下ろして、そう呟いた。スニーカーが泥まみれなくらいは、山にいるのだから当たり前だろうが、グレーのパンツスーツも
べっとりと汚れている。
染め抜かれた色は、暗い赤茶。
泥でも汗でもない、それ。
「大丈夫よ。大丈夫」
真っ白な顔で力なく彼女の背に負われている従弟に声を掛け続けながら、彼女は山をじりじりと下り続ける。
がくがくと震える足で、荒い息を吐きながら、彼女は行く。
その背に従弟の亡骸を抱えながら、秋月律子は、行く。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:47:36.69 ID:NZSihzP+o
――1日目
「はい、はい。わかりました。いえ、そんな……ありがとうございました。失礼します」
受話器を置いて、私はふうとため息を吐く。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:48:35.83 ID:NZSihzP+o
「無事を祈りたいけど……これだけ時間が経っていると」
「それは……。わかりますけど、私たちは希望を失わずにいましょうよ。涼たちを暗くさせるわけにはいきませんからね!」
「そうね……」
尾崎さんが絶望的なことを呟くのに、私は努めて明るく答える。もちろん、私だって内心では……。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:49:23.80 ID:NZSihzP+o
「ずいぶん山奥なんだね」
レンタカーの窓から流れる景色を眺めながら、後部座席に座る涼がそんなことを呟いた。
実際、そこにあるのは、そんな感想が出て来るのもしかたないくらいの山深い風景。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:50:08.47 ID:NZSihzP+o
「あら……?」
指定された駐車場に入り、依頼者に到着の連絡を入れようとして、携帯電話の電波が入らないことに気がついた。
以前、打ち合わせの電話をした時には相手も携帯だったから、地域全体に電波が届いていないということはないだろう。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:51:03.70 ID:NZSihzP+o
「んぅ……」
頭の割れそうな頭痛に目を開ける。いや、開けたはずであった。
だが、視界は闇に包まれたままだ。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:51:47.96 ID:NZSihzP+o
「あのね、律子姉ちゃん。ぼ……私たち、拉致されたみたい」
ようやく押し出すようにして言った涼の言葉を、しばし、理解出来なかった。驚きの反応も遅れてしまう。
「えぇっ?」
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:52:37.71 ID:NZSihzP+o
「涼? 涼!」
『黙れ。これが最後の警告だ』
悲鳴のように、涼の名前を呼んだ。だが、返事が返ってくるより前に、私の喉を何かが締め上げた。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:53:26.51 ID:NZSihzP+o
その事に思い至って、私はなにかがかちかちと鳴るのを聞いた。
自らの歯の根が合わずにぶつかりあう音を。
声は、しばらく続かなかった。もしかしたら、私たちが怯えているのを見て楽しんでいたのかもしれない。
『さて、元トップアイドル様と現役アイドルを手に入れたわけだから、年増の社長や無能マネージャーとは違う楽しみ方をさせていただこう』
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:54:18.18 ID:NZSihzP+o
ちと休憩。
20分ほどしたら、また投下再開します。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/08/24(金) 20:04:33.97 ID:AP9dJUPCo
またえらく重そうな…
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:12:32.73 ID:NZSihzP+o
だが、自己犠牲の言説を唱えながらも、その裏にもっと切実なものがあることも、私は知っていた。
涼は、男だ。
そして、女性二人を捕らえたと思い込んでいる相手に、その事実が知れたらどうなるか。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:13:12.17 ID:NZSihzP+o
『たいしたことではない。別室に行ってもらっただけのことだ』
返事は、さっきまでとは違って聞こえた。これまでのスピーカーより随分小さく、そして、近い。
ボイスチェンジャーから直に出ている音だ。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:14:06.29 ID:NZSihzP+o
犯人の言うことを信じる他ない私は、奴を思う存分楽しませてやるために、ひたすら怯えた様子を見せた。
演技などしてみせる必要はない。実際に、私は恐れ戦き、やがてくる運命を嘆いていたのだから。
鋏をかしゃんかしゃん鳴らしながら、犯人は私の衣服を切り裂いていく。
脱がすのではなく、わざわざ鋏で切る行為が、相手の嗜好に基づくものなのか、私を台に縛り付けているという実際的理由からなのかはよくわからない。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:14:58.19 ID:NZSihzP+o
次に、体を拘束されている状況をいかにして覆すか、ということだけど……。これがなかなかに難しそうだ。
涼は手術台のようなものと言っていたが、その言葉で想像する平面的なものとはちょっと違うようだ。
というのは、男が衣服を切り裂いていくために操作して台が動いたためにわかったのだが、この台は脚部と腕部が独立して動くようなのだ。
つまり、体にかなりフィットして、私の意思とは無関係に動かせるようになっているわけ。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:15:53.42 ID:NZSihzP+o
覚えていられたのは、執拗に唾を塗り込める舌で体中が穢されたこと、膚と秘所にぬめぬめしたなにか――潤滑液だろう――をぬりたくられたこと、
全ての場所が指でなぞられ、開かれ、見つめられたこと、そして、体を割り裂くような痛み。
「ぐぅ……」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:17:06.91 ID:NZSihzP+o
「あ、あ……あ……」
声が出ない。意識が定まらない。鼓動がいままで以上に跳ね上がる。
眼鏡などかけていなくとも、見紛うはずがない、その顔。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:19:11.25 ID:NZSihzP+o
――4日目
「ん……」
目を醒まし、そして、淡く光る天井を見つめて、これまでのことが夢でなかったことを確認する。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:20:10.39 ID:NZSihzP+o
憎んでいる。
そうだ、涼は私を憎んでいる。
私だけではなく、石川社長やまなみさんや……彼を女装アイドルという不本意な立場に追い込んだ全てを。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:21:20.90 ID:NZSihzP+o
『ゆるひ、ゆるひぐぎゅぎゅぎゅぎゅ』
人の上げるものとはとても思えない、絞め殺される動物のような苦鳴が響く。画面の中では、見知った顔が歪んでいた。
まん丸に目を見開き、涙を流し、小刻みに震えるその姿は、岡本まなみ。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:22:51.18 ID:NZSihzP+o
「続き、見ないでいいの? まだまだだよ?」
そう言いながらも、涼は手に持っていたリモコンを操作して、モニターの電源を落とした。
「結局、この後、歯を全部折り取ってね。三日後に見に来たら死んでたよ。失血か窒息が原因かな」
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