1: ◆S.3OfNv5Fw[saga]
2013/09/01(日) 07:36:21.42 ID:InD/KiKc0
「……」
昼。雲一つ見えない、文句のつけようが無い程の晴天。
カラフルなタイルと道行く人々の溌剌とした生気で彩られた、活気ある商店街を私は一人歩く。
昼休み、私は昼食を求めて街に繰り出していた。
「すいません留美さん……ちょっと打ち合わせしなきゃいけないので……。
お昼、一緒に行けなさそうです……」
「……そう」
「本当に、すいません……撮影の時間は変わらないので……それまでに帰ってきて下さい」
「わかったわ……それと、大丈夫よ。自分の仕事をして来なさい、私は一人で食べてくるから」
彼は申し訳なさそうにして、私と食事に行けないと謝罪した。
私は少し気を落としながら、一人、この人でごった返す街で食事を摂る事にした。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/09/01(日) 07:38:06.62 ID:JFWrDn+50
美味しいご飯とPをいただくんですね、分かります。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:38:35.24 ID:InD/KiKc0
この街に何か良い食事処が無いか。私は周囲を注意深くながら散策する。
換気扇から漏れ出てくる臭いも、敏感に嗅ぎ取りながら私は店を探す。
しかし、今は平日の昼過ぎという時間帯。何処の食事処にも、スーツを着た会社員が男女問わず列を成していた。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:39:41.03 ID:InD/KiKc0
「……無いわね」
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:40:44.39 ID:InD/KiKc0
仕方がないと来た道を戻ろうとした時、どこからか芳しい匂いが風に運ばれてきた。
少し酸味がかった匂いだ。色んな物が溶け合い濃縮されたように複雑でもある。
これは……デミグラスソースの匂いかしら。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:43:27.55 ID:InD/KiKc0
「いらっしゃいませ」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:45:20.44 ID:InD/KiKc0
「はい、かしこまりました」
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2013/09/01(日) 07:46:17.49 ID:InD/KiKc0
スプーンを取り、スープだけを啜る。
とても優しい味。塩分はきつくなく酸味も感じない。舌に広がるのは、甘みのようなコクだ。
じんわりと沁みいるような、それでいて奥をもっと知りたくなるような味。
思はず綻んでしまうような、本当に優しいシチューだった。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:48:34.36 ID:InD/KiKc0
まずはお肉。スプーンで一つ取り上げる。
肉の表面はほろほろとして、見ただけで柔らかいお肉なのだと分かる。
そして中からちょっとだけ、テカテカとした液体が漏れ出ていた。肉汁だ。
旨みをぎらつかせるように、とろとろとした肉汁が溢れている。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:49:40.81 ID:InD/KiKc0
「次は……これね」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:50:15.31 ID:InD/KiKc0
パンにつけて食べるのも、中々良い食べ方だと思う。
そして、それに合うのはこういう固いバゲット等のパンだ。
頑固なまでに固かったその身を、シチューという相棒を得て柔らかくなって、味を持つ。
何だか、私と彼のような……このパンとシチューの関係も、そんな関係なのかも知れない。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:50:58.19 ID:InD/KiKc0
「すいません、やきそばおねがいします」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:51:42.44 ID:InD/KiKc0
「はい、お待たせいたしました」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:52:27.76 ID:InD/KiKc0
「すいません」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:53:15.38 ID:InD/KiKc0
「……不躾な質問ですが」
「ふふっ、あれはね。ナンプラーを使ってるの」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:54:10.73 ID:InD/KiKc0
「おいおい、お客さんからかってはダメだよ。すみません、お喋りでして……」
「良いじゃない。応援してあげるくらい」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:55:02.71 ID:InD/KiKc0
「全然大丈夫ですよ。うちは別に、秘伝の味という訳じゃありませんから。私が勝手に思い付いたのを作ってお出ししてるだけですから」
「そ、そうですか……」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:55:39.69 ID:InD/KiKc0
「ありがとうございました」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:56:18.24 ID:InD/KiKc0
「大丈夫よ。それに……今日は、ちょっと良い事を発見できたから」
「そ、そうですか……」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:56:45.42 ID:InD/KiKc0
「じゃあ……私が、作ってきてあげましょうか?」
「え、えぇ?」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:57:12.51 ID:InD/KiKc0
「あれ……なんかおかしかったですか?」
「ふふっ……何でもないわ。それじゃあ、楽しみにしておいてね」
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