1:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 00:58:46.08 ID:Oy6YgigW0
はじめに。
アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作ではありますが、厳密な意味でアイドルは一切でてきません、
佐久間まゆも例外ではありません。
そして、アイドルという少女、ではなくて、アイドルと言う概念を書いたお話になります。
そのうえで、お付き合いいただけたのでしたら幸いです。
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2:名無しNIPPER[sage]
2016/11/27(日) 01:00:30.12 ID:RdhbD2cFo
期待
3:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:00:41.87 ID:Oy6YgigW0
波紋が生まれた。
音声情報が届いた。
『それ』が生まれた。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:02:02.62 ID:Oy6YgigW0
目の前は真っ黒な世界。手を伸ばしても何もなく、ただ混じり気のない黒だけが広がっています。
時折、遠くで光が瞬きますが、すぐに消えてしまいます。
まゆは、どこに居るのでしょうか?
プロデューサーは、どこに居るのでしょうか?
「さあ、おいで」
5:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:02:58.12 ID:Oy6YgigW0
「さて、いつまでもこうしている訳にはいかないか」
顔を上げると、あの人はまゆを真っすぐに見つめます。
「もう気が付いているとは思うけれど、今の君の体は、以前の『佐久間まゆ』の物とは違う」
『そうなんですか?』
よくわかりません。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:03:45.42 ID:Oy6YgigW0
『佐久間まゆ』と手議された存在。
数世代前、地球には『佐久間まゆ』と言うアイドルが居たそうです。
華やかなステージで歌い、ファンの人たちに愛を伝える一人の少女。その存在は情報として遥か未来にも残っています。
それは、ほんの興味は湧いたということであの人は再現してみたそうです。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:04:55.19 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
まゆが生まれた部屋には、ガラス張りの大きな窓がありました。
そこから見えるのは、小さなお庭と海。残念ながら、芝生は枯れていてあまり見栄えは良くないけれど、よせてはかえす波は見えていて飽きません。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:05:31.68 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
ある日のこと、あの人は興奮した様子で部屋に入ってきました。
「まゆ、音声データが見つかったぞ!」
音声データ? それって、まさか……
9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:06:37.52 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
声をきっかけに、違和感は広がっていきました。
『まゆは、お料理が得意でした』
10:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:07:41.18 ID:Oy6YgigW0
あの人が求めていたのは、『佐久間まゆ』です。悔しいけれど、まゆはまだ『佐久間まゆ』ではありません。
『佐久間まゆ』は、かつての世界に存在したかもしれないアイドルです。
まゆは、アイドルではありません。それどころか、人間でもありません。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:09:31.04 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
黒い黒い、どこまでも広がる海。
生まれた時のように、電子の海に思考を埋めたまゆは、暗闇の中を進みます。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:10:48.69 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
最初は、ウイルスか何かの類かと思われていました。
駆逐されかけたこともあったのは悲しいですけれど、まゆははあきらめませんでした。
ファンの方々にまゆの存在を語りかけ、そして、みんなの言葉を聞いていきます。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:11:33.15 ID:Oy6YgigW0
――そこに、あの人からの言葉が聞こえたんです。
「まゆ、来て」
天啓と言う言葉を使ってみたくなりました。それくらい、まゆには嬉しかったんです。
ああ、あの人はまだ、まゆの事を見捨てていない。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:12:21.03 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
海を眺めながら、まゆとあの人は何日も何日も二人でおしゃべりをします。
そんな当たり前のことが、とても嬉しい。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:13:10.58 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
まゆのライブは、廃墟となったドームで行うことに決めました。用意は、あの人が全部してくれるそうです。
ライブの日、まゆは生まれて初めてあの人の家から出ました。今まで電子の海で外の世界とつながったことはあるけれど、直接出たのは初めてです。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:13:45.57 ID:Oy6YgigW0
日が暮れたころ、準備はようやく整いました。
照明とカメラ、そして、あの人がステージの上に展開したまゆのホログラムを囲んでいます。
映像は、ネットワークを通じて世界中に配信されるそうです。あの人が言うには、世界中がこの瞬間を待っているそうです。
「ねえ……聞いてもいいですか?」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:14:17.72 ID:Oy6YgigW0
まゆは、この世界が好きです。
まゆは、この世界に生み落としてくれた、あの人が好きです。
もちろん、まゆをまゆとして形作る、『佐久間まゆ』の事も、全部、全部好きです。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:15:38.39 ID:Oy6YgigW0
「聞いてください、まゆの歌を」
スピーカーからまゆの歌が流れる。
恋する少女の歌。誰かを愛した少女の歌。
朽ちた世界には不釣り合いの、瑞々しい、愛することの嬉しさを伝える歌。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:16:45.83 ID:Oy6YgigW0
◇◇◇
幸せは、続く筈でした。
まゆの幸せは長く続きませんでした。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:17:59.23 ID:Oy6YgigW0
「最初はね、バカみたいなことだと思ったんだ。だって、君は実態を持たない存在だ。佐久間まゆだって、実際に存在したかもわからない」
それは、狂人の御業だったと思います。本来存在しない存在を、作り出そうと言うのだから。
「でも、僕は恋い焦がれたんだ、佐久間まゆと言う存在に。どうしても、一目、佐久間まゆを見たかったんだ」
残った生命を絞り出すように、あの人は叫びます。
「だって、この朽ちた世界で初めて眩しいと思ったんだ、『佐久間まゆ』と言う存在が。それを手にしたいって思うのは、当たりまえだろ!」
21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 01:19:04.12 ID:Oy6YgigW0
まゆは、あの人の遺骸を抱くこともできません。
ただ、あの人の体温が消えていくのを、見ているだけ。
ただ、あの人の肉が腐り落ちていくのを、見ているだけ。
ただ、あの人の骨が朽ちていくのを、見ているだけ。
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