1:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2011/01/05(水) 21:38:46.56 ID:fTbLwVYo
――初めてのキスは
甘いチョコレートの味がした
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2011/01/05(水) 21:41:20.03 ID:fTbLwVYo
「…………うぅぅ」
広場の雑踏の中、私はベンチに腰掛けてさっきから一人で唸っていた。
祝日の賑わいは普段なら何か気分をウキウキとさせてくれるものだけど、今の私には逆効果でしかない。
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2011/01/05(水) 21:44:29.37 ID:fTbLwVYo
「はぁ……」
待ち合わせの相手はもう二十分も時間に遅れている。
元から覚悟していた事ではあるけれど、案の定というかなんというか、期待を裏切ってくれない。
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2011/01/05(水) 21:46:26.90 ID:fTbLwVYo
と、そんな彼女のコーディネートだからそこについては不安ではないのだが、やっぱり自分に似合っているのかとか心配になってしまう。
私は立ち上がり、すぐ目の前の店のディスプレイを覗く振りをして大きなガラスに自分の体を映す。
曇り一つ無いガラス板には見慣れない服の上に乗った見慣れた顔が映っていた。
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2011/01/05(水) 21:47:22.19 ID:u5zG2Rgo
期待
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2011/01/05(水) 21:48:51.14 ID:fTbLwVYo
そんな感じにもやもやを抱えて一人でぎゃわーってやってると周囲の目が自然と私に向けられる。
唐突に我に返ってそれを自覚し、誤魔化すように私はショーケースの中を作り笑いで眺める。
今になって気付いたけれどジュエリーショップだった。
当然のようにそこにはネックレスやらペンダントやらがきらきらとしていて、その中には言うまでもなく指輪が一番目立つ位置に配置されている。
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2011/01/05(水) 21:52:11.60 ID:fTbLwVYo
「っっっ――!!」
せっかく取り戻した平静は紙切れのように吹っ飛んでいった。
思わず声を出さなかっただけマシなのかもしれない。
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2011/01/05(水) 21:53:28.01 ID:fTbLwVYo
「………………は?」
確かにアイツは私を見て、目が合った。
なのにアイツは、そのまま視線を別の方に向けてしまった。
顔色一つ変えず、まるで私を無視するように――。
9:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 21:56:02.41 ID:fTbLwVYo
「いきなり何しやがんだビリビリ中学生っ!」
あ、またそんな呼び方するの。ふーん。
……なんて落ち着いた感じにあしらう事もできず、私は反射的に口を開く。
10:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 21:59:18.08 ID:fTbLwVYo
でもアイツは私の様子になんか一切気を配る事なく言葉を続けた。
「すまん。いつもと違う格好だから分からなかった」
……ああ、なるほど、ね。
11:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:01:01.87 ID:fTbLwVYo
「な、なんだよ」
「ううん。べっつにー?」
私はいつになく浮かれた気持ちで、後ろにステップを踏むように少し離れる。
12:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:06:38.11 ID:fTbLwVYo
(……あれ?)
何かすっごい嫌な感じが背筋を過ぎったような。
そう。私が今日の事を言ったのは紛れもなくつい昨日の事で、
13:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:12:20.74 ID:fTbLwVYo
そうか。学校からそのまま来てくれたんだっけ。そりゃあご飯食べるヒマもないわよね。
よくよく考えてみれば私も昼食を食べていない事に気付いた。
そう意識した途端に耐え難い虚無感が私の内側から苛み始めた(意訳:おなかすいた)。
14:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2011/01/05(水) 22:41:57.74 ID:8OxpUgDO
やばい もうイきそうだ
15:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]
2011/01/05(水) 22:47:21.84 ID:lNUORvI0
お勧めスレから来たけど、これちゃんと上琴になるのかな?
最近上琴と見せた地雷が多いから怖い。
16:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:51:20.62 ID:fTbLwVYo
とりあえず目に留まったどこにもあるファーストフード店の自動ドアをくぐり、飛び込んできた私たちに目を白黒させている店員に適当に注文した後、学生たちでごった返す店内でどうにか空いているボックス席を見つけて腰を下ろし、そこでようやく一息ついた。
焦ったぁ……確かに私も人目をはばからないというか、直情的に行動した部分はあるけどさ。
まさかあそこまで注目の的になるなんて思わないじゃない。
17:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:54:38.18 ID:fTbLwVYo
顔が真っ赤になっているのにも気付かず、私は混乱した頭でようやく理解した。
待ち合わせの場所からアイツを引っ張って逃げたときから今までずっと手を繋いだままだったのだ。
よくよく思い返せば注文の際アルバイトっぽい店員のお姉さんが得も言えぬ苦笑を浮かべっぱなしだったような気もする。
愛想の悪い店員だなとか心の隅で思ってた私がバカのようだった。
18:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:57:51.04 ID:fTbLwVYo
私はちびちびとポテトを齧りながら、向かいの席のアイツをぼーっと眺めていた。
半ばやけくそ気味に安っぽいパンズのハンバーガーをばくつく姿に少しだけがっかりして、そして不思議な事にどこか安心していた。
いつもどおりだった。
19:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 23:01:57.00 ID:fTbLwVYo
「それで?」
アイツはもしゃもしょと中身が零れないよう慎重にチョコパイを齧りながらどこか諦めたような表情で私に訊いてきた。
「いきなり呼び出してくれちゃった理由はなんですかね」
20:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 23:09:26.65 ID:fTbLwVYo
「ま、それならそれでいいんだ。またなんか厄介な事が起きたとかそういう事じゃないんだな」
……驚いた。アイツは理不尽な呼び出しに腹を立てるどころか、私に何か起こったのではないかと心配していたのだ。
心配されるような事は、ある。
21:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]
2011/01/05(水) 23:11:00.59 ID:VNA69gc0
がんばれェ
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