過去ログ - 透華「は、ハギヨシ! わわ、私を抱きなさい!!」ハギヨシ「……」
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1: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:01:33.16 ID:MfFILXmIo
龍門渕透華が突然に発したその言葉に、表面上何らの反応も示さなかった萩原は、紛れも無く一流の執事であるといえる。
一呼吸、二呼吸。不自然でない程度の間を置いて内心の動揺から回復し、従者は主人の命に答えた。


「お嬢様、申し訳ございません。不肖ハギヨシ、お嬢様の仰せ付けを聞き逃してしまいました」


無論、執事が主の言葉を、例え半句であろうと聞き逃すなどありえない。
だからこれは主を諌める言葉であり、執事の精一杯の懇願だ。
今ならばなかったことにできると。限度を超えた戯れはここまでにして欲しいと。
龍門渕に、龍門渕透華に心からの忠節を誓う執事に敵う最大限の抵抗。


「で、ですから! わ、私をだ……じょ、女性にしなさいと、そう言っているのです!」

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2: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:02:26.11 ID:MfFILXmIo
そんな執事の抵抗を意に介さず、透華は再度命令する。
顔をこれ以上ないほどに真っ赤に染めた透華の、けれど有無を言わさぬ迫力を込めた言葉。
それは台詞こそ変わっているものの、先ほどと意味は変わらない。
強い決意を込められたそれに負けぬよう、一縷の望みを懸けて萩原は言葉を続ける。

以下略



3: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:02:56.15 ID:MfFILXmIo
気丈に、何事もなかったかのように振る舞おうとしているが、それだけに聞いていられない。
後半の台詞には嗚咽が混じり、声も掠れている。それが何より萩原の胸を締め付けた。
こんなことを望んだわけではない。何故もっと上手く答えられなかったのかと後悔が萩原の中で渦巻く。
透華は後ろを向き、この場から逃げ出すようにゆっくりと歩き出す。
このまま行かせるわけにはいかない。萩原はそう考えて主の背中を呼び止めた。
以下略



4: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:03:34.80 ID:MfFILXmIo
涙に濡れた目をぱちくりとさせ、主は執事を見つめる。
呆気にとられた顔が徐々に恨めしいものへと変わる。
珍しく前言を翻した執事に感謝をしつつ、それはそれとして問い詰めるのが主の務めと言わんばかりに口を開いた。


以下略



5: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:04:01.68 ID:MfFILXmIo
龍門渕透華はこの場所が気に入っていた。
広い邸宅と不相応に狭い場所。2人でいてちょうどという広さのガーデンテラスは、事実彼女の母親が愛する夫と2人で過ごすために作らせたものだ。
ここは龍門渕家にとって特別な空間である。この場所を管理する執事を除けば、ここの主に呼ばれない限り、使用人はもちろん当主でさえもここへ立ち寄ることはない。
母親が亡くなってからは透華がこの場所の主であり、なればこそ萩原は危険極まる会話をする場所としてここを選んだのだ。

以下略



6: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:04:41.85 ID:MfFILXmIo
テラスからでは龍門渕の広大な庭を一望というわけにはいかないが、ここから見える景色は珠玉。
龍門渕の誇る庭師が他のどの場所よりも念入りに、持てる技術の粋を尽くして作り上げたその庭は四季折々に姿を変える。
それはいつも透華の目を楽しませていたが、とりわけ自身の、そして小さい頃に失った母親の髪と同じ色をした黄金色の花々が咲き誇る秋を好んでいた。
最高の景色を見ながら執事の紅茶を嗜む。透華にとって最高の贅沢の1つだ。

以下略



7: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:05:10.88 ID:MfFILXmIo
「私に許婚がいるみたいなんですの」

「左様でございますか」

「随分と冷静な反応ですわね。もしかして知っていましたの?」
以下略



8: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:05:39.67 ID:MfFILXmIo
龍門渕という家柄を考えれば許婚がいたとしてもそれほどおかしなことではない。
透華も妙齢に差しかかる年頃になっており、父親からそのような話をされるにはちょうどよい時期であるともいえる。
だが直接聞かされたのならば透華はここまで動揺するだろうか。少なくとも萩原の知る透華はそうではない。
受け入れがたいことであったならば父親が相手でも構わず反論をする。
龍門渕透華という少女はそのような人間だ。
以下略



9: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:06:05.85 ID:MfFILXmIo
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その夜、透華は合同合宿に参加する許可を受けるために父親の部屋を訪れようとしていた。
夏に行った4校合同合宿と同じ参加校であり、合宿所も同じ。
形式的に確認を取るだけで、特に問題もなく許可をもらえるだろうと思いながら廊下を歩いていた。
以下略



10: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:06:37.26 ID:MfFILXmIo
『何、もう話したか? ……いや、まだ透華には話していない。いずれ話さなければならないのはわかっていたが、これほど急とはな……』

『ああ。私がとやかく言う立場にないのはわかっているが、許婚がいるなどとどう話せばよいものか』

(……え?)
以下略



11: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:07:06.24 ID:MfFILXmIo
「お父様はこう話しておりましたわ」

「……」

「私も龍門渕の一人娘。お母様がそうであったように、いつかは外から男性を迎えることも覚悟してはおりました。
以下略



12: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:09:09.40 ID:MfFILXmIo
切ない笑みを浮かべて話す透華に萩原は押し黙る。
一度立ち直らせた心は簡単には折れない。今の透華の決意に先刻のような脆さはなく、ただ純粋に力強く萩原と向き合っている。
透華は一度目を伏せ深呼吸をした。そして決意したように顔を上げると萩原を見つめ口を開く。


以下略



13: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:10:17.93 ID:MfFILXmIo
透華の痛切な叫びに萩原は一瞬顔を歪める。
自分を抱いて欲しいと言った透華の言葉はどれほど言葉を弄しても、結局のところ萩原が透華を受け入れるか否か。それに収斂される。
あくまで執事に徹するのであれば、たとえ傷つけることになろうと気づかぬふりをし続ける以上の選択はなかった。
そのとおりだと萩原は思う。そしてなぜ執事に徹することが出来なかったのかと自問する。
もっとも、自問などするまでもないことは、他ならぬ萩原が誰よりもよく知っていた。ただ目を背けているだけだから。
以下略



14: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:10:51.85 ID:MfFILXmIo
主の願いを執事は頭を下げて拒絶する。
萩原が執事である以上、本音をそのまま伝えることなど出来はしない。しかし、虚偽を伝えることや誤魔化すことは彼自身が許せなかった。
萩原は一流の執事であるがこればかりは執事に徹することが出来なかったのだ。
必然、萩原の取り得る選択肢は返答をしないことだけだった。

以下略



15: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:11:29.67 ID:MfFILXmIo
「こういうときはいい夢を見て安らかな気分になりたいですわ。ですからハギヨシ。手助けをして欲しいんですの」

「……何をご所望でしょうか」

「今夜、私の部屋に来なさい。……一夜の夢で構いませんの。どうか、どうかあなたの手で夢に溺らせてくださいまし」
以下略



16: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:12:05.53 ID:MfFILXmIo
「お嬢様。それはご命令でございますか」


萩原の問いかけに透華は首を振って答える。

以下略



17: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:13:13.73 ID:MfFILXmIo
「ですから、今宵は幼少のみぎりのように、夜すがらお嬢様のお傍に控えさせていただければと存じます」

「――えっ?」

「……お許しいただけますでしょうか」
以下略



18: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:13:47.53 ID:MfFILXmIo
「はハギヨシっ。いいい今のはつまり、その、そそそそそういうことで、その、よ、よろしいんですの?」

「はっ。お嬢様のお傍で、お嬢様がよい夢を見られるようお力添えをさせていただければと存じます」

「そっ、そうですわね! 夢! 夢なのです! ですから緊張する必要なんてありませんわ!」
以下略



19: ◆6ardW1rCAXVJ[sage]
2014/02/04(火) 22:15:26.56 ID:MfFILXmIo
続きは2週間後くらいまでには書けたらいいなと思います。
それでは。


20:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/04(火) 22:15:27.40 ID:x9VE0EN/0
いつもの京太郎謎ハーレムと違って実際に有りそうな光景なのが良いね


21:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/04(火) 22:22:22.14 ID:AzMDmpM4o
期待してる


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