過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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1: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 19:52:46.65 ID:Nr4cjnOQ0
 未来人と出会ったのは、転校した次の日だった。

 小6で転校なんてして、修学旅行が不安だな、馴染めるかな、と可愛げのある悩みを抱えながら教室のドアを開けた私の目に、
 教卓の上に体育座りをしていた女の子が映った。

 深く透き通った青の香り。

「初めて見る顔だ」

 彼女は整った顔だけをこちらに向けて、独り言のように言った。

 長い髪がさらりと揺れる。青く見えてしまうほどに深く黒い髪。綺麗だった。

「転校してきた」

「ふぅん」

 わたしが昨日教えられたばかりの自分の席に着くと、彼女はぶらんと、細くて白い両足を教卓からぶら下げた。

「宇宙人っていると思う?」

 透き通った声だった。

「いないと思う」

 そう答えると、彼女は可愛げのない顔でそっぽを向いた。

「なら、未来人は?」

「それは、いると思う」

「ふぅん」

 そっぽを向いたまま、彼女はどうでもよさそうに喉を鳴らした。

 面白い子だな、と思った。


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2: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 19:55:26.59 ID:Nr4cjnOQ0

「わたしは未来から来た」

 自称未来人の彼女は、私によくそう話していた。

以下略



3: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 19:56:16.26 ID:Nr4cjnOQ0
 未来人は、頭が良かった。

 と言うよりは、見たこと聞いたことをすぐに覚えていたようだった。

 彼女はサボり癖がある。
以下略



4: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 19:57:37.17 ID:Nr4cjnOQ0
 少し私の話を挟む。

 言っておかなければ、後から紛らわしいことになってしまうので、先に言葉として伝えておく。

 私は人を、匂いの色で覚えていた。
以下略



5: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 19:58:37.80 ID:Nr4cjnOQ0
 未来人は、物を移動させるマジックが得意だった。

 彼女は「ザヒョウヘンコウ」と呼んでいたけど、初めてそれを聞いた私たちには、それは難しすぎたので、単に「ザヒョウ」と呼んでいた。

 一度、「ザヒョウ」を目の前で見たことがある。
以下略



6: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 19:59:30.38 ID:Nr4cjnOQ0

 本題に入ろう。

 10月ごろ、あるウワサが小学校で流行った。

以下略



7: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:00:43.31 ID:Nr4cjnOQ0
 次の日、川田はあっけなく発見された。

 学校の近くにある、誰も住んでないアパートの真下にいたらしい。
 でも、見つかったのは、首と胴と足だけで、両腕はどこにもなかった。

以下略



8: ◆zsQdVcObeg[ss速報]
2017/02/03(金) 20:06:34.13 ID:Nr4cjnOQ0
 次の日、学校に行く途中、水の通っていない乾いた排水路で、犬か何かの骨を見つけた。
 普段ならなんともないのに、その時は血の気が引いた。

 その場でしゃがみこんでいると、山田が「大丈夫?」と声をかけてきた。

以下略



9: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:08:56.61 ID:Nr4cjnOQ0
 その日の放課後、未来人は教卓の上で体育座りをして、ぼーっと空を見上げていた。

 私は、窓際の席に座って、窓の真下にある、農具倉庫の屋根を眺めていた。

 ……後から考えると、あの時座っていた席、川田の席だった。
以下略



10: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:12:05.24 ID:Nr4cjnOQ0
 翌日は、たしか、朝早く起きたか何かで、早い時間に家を出た。

 一昨日と昨日のこともあり、あまり明るい気分ではなかった私は、いつの間にか、早足になっていた。
 私は、嫌なことがあると早足になる癖がある。

以下略



11: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:13:32.32 ID:Nr4cjnOQ0
 放課後、私は日直だったので、花に水をやるために一人で教室に残っていた。

 珍しく、未来人はいなかった。

 百均で売ってあるような安っぽいジョウロに水を入れて、ピンク色の花に水を注ぐ。
以下略



12: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:14:49.34 ID:Nr4cjnOQ0
「だれかあ、けてー」

 扉に何かをぶつける音がする。
 建てつけの悪い教室の扉が、音を立てて揺れる。まるで怒られているようだった。

以下略



13: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:15:41.29 ID:Nr4cjnOQ0
 それからしばらくは、かなり慌ただしかった覚えがある。

 まず、目覚めた瞬間から、左手首と右脚の痛みに震えた。

 関節の内側から炙ったまち針を突き刺しているような鋭い痛みに、厚い板で押しつぶされているような鈍痛。
以下略



14: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:17:11.85 ID:Nr4cjnOQ0

 その後、私は2日入院して、外傷以外は特に異常はないとのことだったので、普通に学校に通うことを許可された。

 正直なところ、許可されなくても別に良かったのだけれど、お母さんをこれ以上心配させるわけにはいかなかった。

以下略



15: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:18:38.84 ID:Nr4cjnOQ0
 放課後、最後まで教室に残っていたのは、未来人と私だった。

 私は少し迷ってから、教卓に座る未来人に質問を投げた。

「ねぇ、ウワサの化け物って」
以下略



16: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:19:38.00 ID:Nr4cjnOQ0
 その日の夕方、家で昨日の晩ご飯の手羽先をおやつ代わりに食べていると、山田から電話がかかってきた。4時過ぎだった。

「木の公園に来れる?」

 お母さんに、木の公園で遊んできてもいいか、と聞くと、にやにやと頷いたので、私は手羽先の骨をゴミ箱に捨ててから、車で近くまで送ってもらった。
以下略



17: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:27:55.36 ID:Nr4cjnOQ0
 山田が立てた作戦はこうだ。

 まずはクジで2人組に別れて、おじさん、もとい化け物を探す。小学校のあたりでしか見つかっていないので、校区内から出てはいけない。

 もし化け物と出会って、様子がおかしくなってしまったら、お互いの頬をビンタして、意識を保つ。
以下略



18: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:30:32.56 ID:Nr4cjnOQ0
 といっても、私は早く歩けないので、山田に手伝ってもらいながら、家の近所を散歩するだけの形になった。

「おじさんって、どんな見た目だった?」

 山田はあのぼんやりとした映像しか見てなかったので、詳しい見た目は知らなかったそうだ。
以下略



19: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:33:44.15 ID:Nr4cjnOQ0

 私はなんとなく、山田に、

「なんか、変な匂いしない?」

以下略



20: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:34:55.41 ID:Nr4cjnOQ0
 恐る恐る足元を見る。
 排水路。今日はフタが閉まっていた。でも何日か前、ここには。

 骨が捨てられていた。

以下略



21: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:36:27.94 ID:Nr4cjnOQ0
 次の日、未来人に尋ねた。

「なんで、うちのクラスの人ばっかりが、あの化け物に出会うの?」

 未来人は、跳び箱の上に体育座りをして、木でできた格子小窓から空を見上げながら答えた。
以下略



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