過去ログ - 片桐早苗「あたしだけの特効薬」
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1:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:13:51.85 ID:2xfEaWy9O
作品都合故のキャラ崩壊有。
口調も変なところがあるやもしれません。
独自解釈の部分もあります。
苦手な方はブラウザバックをお願いします。


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2:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:14:46.61 ID:2xfEaWy9O
 片桐早苗は今、へとへとにくたびれていた。厳しいダンスレッスンは彼女の身体へ重い負担を乗せていた。
 それもそのはず。まだ若いとは言っているが、なんだかんだもうすぐで三十歳に手が届いてしまう年齢なのだ。いつまでも身体が本当に若いころのようについてくるわけがない。

「大丈夫ですかー」

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:15:30.10 ID:2xfEaWy9O
「はあ、はあ、大丈夫大丈夫、ありがとうね雫ちゃん、ユッコちゃん」

 しばらく息を整え、ゆっくり深呼吸をする。全身の筋肉をほぐす意味でも軽くストレッチをした。確かに辛い。だが、若い者にまだまだ負けたくないというのと、自身が年寄りになっていっているのを認めたくないのと、そして何より、早苗の身体能力のせいで二人の足を引っ張りたくないという思いからなけなしの体力を引っ張り出す。

「さあて、練習再開よ!」
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:16:05.62 ID:2xfEaWy9O
「……はっ! はっ!」

「片桐! テンポが遅れてるぞ! 及川! お前もだ! 堀! 先走り過ぎるな!」

 トレーナーからの叱咤が飛ぶ。しかし早苗たちは腐らず返事をし、指摘点を修正していく。もうライブまで日がなくなってきていた。落ち込む時間すら惜しい。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:16:36.12 ID:2xfEaWy9O
 テンプレートともいうべきレッスン後の諸注意を言い終えると、トレーナーはレッスンルームから退室した。それを確認してから三人はその場でへたり込んだ。

「も、もうダメ……動けない……」

「私も疲れましたー」
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:17:19.04 ID:2xfEaWy9O
 誰よりも倒れ伏したいと思っているであろう早苗が立ち上がり、二人に声をかける。体力があるからではもちろんない。身体は二人以上に悲鳴を上げている。これは矜持だ。年長者としての矜持が二人を引っ張ろうと体に鞭を打ち、リーダーとしての責務を果たす。
 とはいえ、普段のラジオやら打ち上げやらで迷惑をかけているため、こういうところでは面目躍如の働きをしておかないとという打算もある。

 シャワーを浴びる中で少し体力を回復させていく。汗と一緒に疲れも軽く落ちているような気分だ。肩を軽く回すと血行が悪かったのか幾分か凝りが解れた感覚がある。
 怒涛の日々だった。今日に至るまで大きく人生の舵がきられた。後悔はない。そうと決めたのは他でもない、早苗自身なのだから。ただ、未来への不安がないかというと、それは当然のごとく心に渦巻いていた。いつまであたしはアイドルでいられるのだろうか。常に早苗は自問していた。答えは、出ない。
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:17:51.17 ID:2xfEaWy9O
「それやっぱりやりたくなっちゃうわよねえ」

 早苗は自身に付いている水滴を拭き取り、着替えを始めた。疲れから動作が遅く、思うように手足が動かない。頭の中ではもっと早く動かそうとしているのだが、どこかで動かすのが億劫だという早苗がいた。それでも何とか手足を動かし続ける。

「やあっと着替え終わった。疲れた……」
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:18:31.79 ID:2xfEaWy9O
「あ、おつかれさん」

 外にはワゴン車が停車しており、運転席には我らが事務所一腕利きのプロデューサーがいた。

「お疲れ様ですー」
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:19:15.45 ID:2xfEaWy9O
「どうだった? 追い込みきつかっただろ?」

 だけど、プロデューサーは辛さを決して面には出さない。そんな顔をしている暇があればアイドルたちのために仕事をもっと持って来ようとする。そんなプロデューサーだった。

「ほんとよー。身体中ガッタガタ。歩くのも億劫だったわよ」
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:19:42.56 ID:2xfEaWy9O
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「はーい、そこの車両止まりなさーい」
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:20:10.60 ID:2xfEaWy9O
「何でしょうか? じゃないでしょう。あなた、ここ一通なのに逆走してるんだから捕まえるの当たり前でしょ」

「うぇえ? そうなんですか! すすす、すみません! すぐに移動します!!」

 まあ、ここは住宅街に入るところで、平日昼間である今はほとんど車通りの無い道だし、緊急性があるわけでもなかった。とりあえず運転手には落ち着いて現状を把握してもらい、速やかに移動してもらえれば良かった。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:20:46.17 ID:2xfEaWy9O
 免許を提示してもらうと、軽く驚きの声が漏れてしまった。アラフォーだと思っていた相手が実は自分より年下だったのだ。人は見た目に寄らないとは真実なのだと早苗は思った。
 それはそれとして、交通違反の手続きやらを行っていると、男が早苗へ熱心に視線を向けていることに気付いた。

「あ、あの、なんでしょうか?」

以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:21:17.90 ID:2xfEaWy9O
 馬鹿にしてるのだろうか。それともドッキリ? 早苗は周りを見渡したがそれらしい雰囲気はない。そもそも違反させてまでドッキリというのは考えられない。私が困惑していると男は、プロデューサーはなおも問いかけてきた。

「あなたならトップを取るのも夢じゃないです! 私と東京に来てアイドルをやりましょう!」

 先程の気弱そうな男はおらず、そこにいたのは情熱に燃えた大男だった。横にも縦にも大きいプロデューサーに迫られ、早苗は後ずさりをしてしまった。そこでプロデューサーは我に返り、さっきまであった気迫はどこ吹く風と霧散してしまった。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:21:43.81 ID:2xfEaWy9O
「その、とても素敵な笑顔ですね」

「ちょちょっと! ナンパ?」

 唐突に褒められ、早苗は少し慌ててしまった。そんな自分に少し腹が立った。常に自分は相手より優位にいたいという思いからだったが、すぐさまそんな思いは消し去った。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:22:13.53 ID:2xfEaWy9O
(熱意に負けたってところかしらね……)

 あの後しばらく早苗は警察という職務に従事していた。不満はなかったが、満足はしていなかった。慣れてしまいルーチンと化してしまったのか。ただただ警察というものに情熱を抱けなくなったのか。わからないが、そう感じた時、早苗は名刺の番号を押していた。
 そこからはトントン拍子だった。もうあのスカウトの時から早苗の心はアイドルというものに傾いていたのだ。最初は不安しかなかった。本当に自分の選択は間違っていなかったのか。年齢も年齢だ。まだ若いという意識はあっても、世間はそう見てくれない可能性の方が高い。
 だけど、そんな不安をプロデューサーが全て吹き飛ばしてくれた。デビュー前、それは二人三脚と言っても過言ではないほどいつも一緒に頑張ってくれた。差し入れやメンタルケア、時にはレッスンの指導までしてくれた。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:22:56.43 ID:2xfEaWy9O
「ふわぁ〜」

 車内に大きな欠伸が響いた。欠伸の主はサイキックアイドル堀裕子だった。

「眠いなら寝ていいぞー」
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:23:32.02 ID:2xfEaWy9O
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「早苗さん、紹介したい二人がいます」
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:24:53.09 ID:2xfEaWy9O
「アー、アー、私は超能力者デース」

「普通に自己紹介しろ!」

「え? あ、はい。コホン……堀裕子、十六歳、特技は超能力です!」
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:25:28.57 ID:2xfEaWy9O
「早苗さんと雫、裕子の三人にはユニットを組んでもらう」

「ええ!!」

 驚きの声を上げたのはサイキック少女裕子だった。というか、裕子は知らなかったのかと早苗はそちらに驚いた。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:25:59.39 ID:2xfEaWy9O
 そこでやっと思い出した。この懐かしさは早苗をスカウトしていた時のプロデューサーの熱と全く一緒なのだ。自然と笑みが漏れてしまう。

「お、どうしました早苗さん。楽しそうじゃないですか」

「そりゃそうよ。こんな楽しそうなことないわよ! 二人とも安心しなさい! お姉さんがビシバシ鍛えて、引っ張ってあげるわ!」
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:26:49.60 ID:2xfEaWy9O
「まあ、職務中の婦警さんをナンパしちゃうような下心持った人の言葉と、熱意溢れるアイドルお姉さんの言葉じゃ、重みが違うってことじゃないかしらねえ」

「え? プロデューサーそんなことしてたんですかー?」

「ちち、違う! ナンパじゃない! スカウトだスカウト!」
以下略



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