【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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1: ◆77.oQo7m9oqt[sage saga]
2017/07/15(土) 20:06:37.85 ID:+jykf0ly0
地の文メイン。
独自設定あり。
未熟者ゆえ、口調等に違和感があるかもしれません。
どうかご了承ください。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:07:35.46 ID:+jykf0ly0
1.

誕生日、ってのを手放しで喜べなくなったのは、一体いつからだったろう。二十歳になったときは酒と煙草の解禁に小躍りしたものだが、それ以降は歳を重ねる、ともすれば死に近づく自分が嫌になる気持ちの方が強かったように思う。

生まれ落ちてから三十を数えた年は、年初からロクなことがなかった。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:08:16.33 ID:+jykf0ly0
確かに人は足りていなかった。昇進して管理者側に回っていたから、人材の補強も自分の仕事の一つ。

友人は信用できる奴だった。だから、ありがたい、とその履歴書を受け取った。
受け取って、目を通して……それから、少しだけ頭を抱えた。おい、友人よ。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:09:10.47 ID:+jykf0ly0
2.

翌日、やってきた彼女はおおむね写真から得られるイメージ通りの子だった。裏地がヒョウ柄の黒パーカーに、下はブルーのショートデニム。若者の洒落には詳しくないが、可愛らしいカジュアルスタイルだと思った。ジャージやスウェット、作業服ままで平気で出勤してくる男とは違う。

彼女は出会い頭、無邪気な声で言った。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:09:46.30 ID:+jykf0ly0
ツナギへの着替えを仮設小屋で済ませてもらった。

いざ仕事を始めるにあたって、新人研修を誰が務めるのかで少しばかり現場が揉めた。
彼女は久しぶりに入ってきた女性の新人だった。髪型や濃いめのメイクのせいでアイドルやモデルのような一般的な可愛さからは離れていたが、顔立ちは愛らしかった。どうもそのあたりが原因らしい。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:10:31.14 ID:+jykf0ly0
うわべだけの判断ならば、彼女はあまり真面目そうには思えない。だからしばらくは、別の作業をしながらも彼女の仕事姿を遠巻きに見守っていた。

比較的、楽なだけで、彼女に任せた仕事は決して楽ではない。シャベルで土砂を掬うのも、猫車を運ぶのも、トラックに運んだ土砂を移すのも全身を使う重労働だ。
正直、三十分もてばいいと思っていた。名門野球部に所属していたと言って二年前に入ってきた男がいるが、彼は確か一時間経ったあたりで手を抜き始め、一時間半で作業を止めた。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:11:14.24 ID:+jykf0ly0
「新人なんだしー、大したことできないんだから手え抜くなんてありえんてぃーっしょ。ふつーじゃね?」

彼女はなんてことないように言った。
自分はどうだったろう。あまり思い出したくない。
新人なんだからとその立場に甘え、できないことを正当化する人は多いように思う。だから、少なくとも普通ではないはずだが。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:12:56.86 ID:+jykf0ly0
休憩所、更衣所を兼ねた仮設のプレハブ小屋に彼女を連れて戻った。
普段ならば終業時間になれば自由に早々に帰っていく同僚たちは、今日はそこに残っていた。理由は言うまでもなく彼女なんだろう。

「えっ、歓迎会? ……いやー……それはエンリョしたいかも? あっ、うれちーよ? うれちーんだけど、今日はもーまっすぐ帰りたい系だからさー」

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:13:28.29 ID:+jykf0ly0
書類作業や事務処理に移る前に、軽くつまめるものでも買いに行こうと近場のコンビニへ向かった。
向かう途中、さっきまで見ていた小さな背中を見つけた。両手を目の前に広げ、見つめながらゆっくりと歩を進めている。
小走りに駆け寄り、肩を叩いた。

「うわっ。……あ、親方? ビビったー。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:14:49.23 ID:+jykf0ly0
3.

世の新卒社会人はおおよそ三年の間に三割ほどが職から離れるそうだ。それを嘆かわしいだなんだと叫ぶテレビ番組その他を幾度も見るが、自分としては人の勝手だ、ほっといてやれとしか思えない。

うちの職場の新人は一年以内でも三割どころかその倍ぐらいは辞めていくが、仕方ないと割り切っている。やりたくないものを押し付けるような傲慢は嫌いだ。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:15:32.37 ID:+jykf0ly0
研修を受け持つ身として、特に言うこともなかった。言ったことはきっちりやってくれるし、たまに間違うことを叱ればちゃんと飲み込んで反省する。
失礼な話ながら、思わぬ掘り出し物だな、なんて思ったことさえあった。

また、彼女とは仕事以外でもしばしば一緒の時間を過ごすことがあった。
家が近かったのだ。自分が住んでいるボロアパートから十分もしない距離に、彼女の家はあるらしい。帰り道を途中まで同じくすることも何度もあった。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:16:27.25 ID:+jykf0ly0
テンポよく次々と話題が飛び出す彼女は、話していて飽きることがない。これも一種の話術、才能なのかな、なんてふうに感心した。自分にはないものだ。

お互いの手にあるものがなくなった時点で、彼女とは別れるのが普段のならいだ。その時は二人ともコーヒーしか買っていなかったから、飲み干した時点でその場を後にした。
コンビニ前のゴミ箱は誰が何を捨てたのかえらくパンパンで、缶を押し込むのに少し苦労した。

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:17:07.03 ID:+jykf0ly0
帰り道を足早に進む途中、ふと思い立って仕事には慣れたか、と尋ねた。

「バッチリ! いーい人ばっかだしー、みんな優しーし! 仕事はやさしくないけどっ」

それはよかった。ほっと息をついた。
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:18:47.63 ID:+jykf0ly0
4.

工事現場の作業員に、いい印象を持っている人はたぶん少ないだろう。
基本的に工事はやかましい騒音を立てるし、道路をふさいだりもする。仕事なんだから仕方のないことなのだが、それでも時折クレームが入る。
こちらの不手際を責められるなら謝罪の言葉もすらすら出るが、仕事上のやむを得ないあれこれにいちゃもんをつけられるとどうにも敵わない。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:19:26.32 ID:+jykf0ly0
この現場には女性は一人しかいない。
老人の手を引く彼女の姿。なんとなく光景が想像できるようだった。

プレハブに彼女を呼び、電話があったことを伝えた。

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:20:08.50 ID:+jykf0ly0
「アタシー、こーゆーのほっとけない系なんっすわー」

そう言ってテキパキと散らばるゴミを拾い集めた。
驚きで一瞬身を硬くしてから、後を追うように手伝った。

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:43:36.89 ID:+eTeNEs7O
5.

晩夏。
八月も終わろうか、というのに、いまだしぶとい暑さが忌々しくしがみついてくる。空調に頼れない外での体力仕事は本当に参る。作業中は皮まで脱ぎたくなるほどだ。

以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:44:52.09 ID:+eTeNEs7O
通行人が多くなってきたから、重機の使用はそろそろ控えるべきか。交通整理の人員を増やして、ああ、あとは夜勤組に引き継ぎもしなければ。

段取りを組んでいると、作業服姿の男たちが荷物を抱えて数人こちらへ歩いてきた。先頭の年上の同僚が代表して申し訳なさそうに切り出した。

「……んじゃ、親方。悪いが俺らは先に帰らせてもらうぞ。あとは頼むな」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:45:36.76 ID:+eTeNEs7O

彼女の出身もこのあたりだったはずだ。
毎年行われるそれを見飽きたりしないのか、と尋ねた。

「んー、まぁ毎年だいたいおんなじだけど、アタシ的には見ときたいかなー。これ系のイベントってさ、いつ終わっちゃうかとかわかんないらしいし。来年はもーしません、とかもありえってぃかもじゃん?」
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:46:35.36 ID:+eTeNEs7O
始まったらしい。時間はちょうど七時半だった。

一瞬のフラッシュと、轟きの連続、感嘆の声。
これをもう二度と感じられなくなるなら。
そう考えても、ならばと観る気はさほど起きなかった。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:47:07.43 ID:+eTeNEs7O
ついでに自分の頼むものも買ってきてほしい。そっちの会計もこちらで持つから、と伝えた。

「太っ腹だな。まあ全然行くけど、ちょっと遅くなるスよ?」

やむを得ないだろう。
以下略 AAS



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