森嶋帆高「俺は、そんな夏美さんが好きですよ」須賀夏美「へっ?」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:06:35.70 ID:jYVo7zbZO
雨。雨、雨、雨。
今日も東京には雨が降っている。
父親と喧嘩した際にぶん殴られたことに腹を立てて、家を飛び出した時と同じく、雨。
その時のことを思い出すから、雨は嫌いだ。
「ただいま戻りました」
傘を閉じて傘立てに置いて、事務所に入る。
K &Aプランニング。僕の勤め先だ。
業務内容は都市伝説やら超常現象やら、そんなオカルトじみた記事を出版社に持ち込む仕事。
出来が良ければ買い取ってくれるが、成功率はそこまで高くはないのが実情であり現実だ。
無論、給料は最低賃金を大幅に下回っている。
それでも身分証を持たない子供を雇ってくれて、あまつさえ寝床を提供して貰っている現状、文句を言ったらバチが当たるだろう。
ずっと憧れていた東京での暮らしは想像よりも厳しく、家出少年の居場所は他にはない。
だから僕は、その恩義に報いようと仕事に精を出しているのだけど、そもそもそれ相応の特ダネがなければ売れるような記事は書けない。
そんな特ダネがそうそうそこらに転がっている筈もなく、近頃、K&Aプランニングは開店休業状態であり、故に僕は暇を持て余し、取材という形でとある都市伝説を追っていた。
100%の晴れ女。
幸運が味方して、偶然に恵まれる形で件の晴れ女と知り合った僕は、その都市伝説を利用したアルバイトを行ない、今日も大都会の一角を無事晴天にして、こうして帰ってきた。
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2
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:09:57.67 ID:jYVo7zbZO
「あれ? 誰も居ないのかな……」
帰社を告げても返事が返って来ず、無人なのかと思い、それにしては鍵がかかっていなかったことを無用心に思いつつ、以前は飲み屋であったらしい事務所のバーカウンターの前を通過すると、不意に。
「むぎゅっ」
以下略
AAS
3
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:12:54.29 ID:jYVo7zbZO
「ダメじゃないですか、こんなとこで寝ちゃ」
「だって床、冷たくて気持ちいいんだもん」
「風邪引いちゃいますよ」
「へーきへーき……くちゅん」
以下略
AAS
4
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:16:04.76 ID:jYVo7zbZO
「立てますか?」
「たぶん、平気……おっとっと」
「な、夏美さん、しっかりしてくださいよ!」
立ち上がろうとして、夏美さんがよろける。
以下略
AAS
5
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:18:27.36 ID:jYVo7zbZO
「どうしたの、帆高くん。へっぴり腰だよ?」
わかってる癖に。
僕がこうなるように仕向けた癖に。
思わず頭にきた僕は、きつい皮肉を返した。
以下略
AAS
6
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:20:16.03 ID:jYVo7zbZO
「夏美さん」
「なに……帆高くん」
俯いたままの夏美さんに何を話すべきなのか、何を伝えるべきなのか、僕には正解なんてわからないけれど、でも、それでも、だからこそ。
以下略
AAS
7
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:22:42.62 ID:jYVo7zbZO
「やれやれ、帆高くんも隅に置けないなぁ」
「なんですか、いきなり」
「あやうく惚れてしまうところだったよ」
言われて気づく。
以下略
AAS
8
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:25:09.51 ID:jYVo7zbZO
「少年、いま女の子のこと考えてるでしょ?」
「えっ!? な、なんで……?」
「わかるんだよ。そういうのはさ。だからくれぐれも、陽菜ちゃんの前では気をつけなよ?」
妖怪か、この人は。まあ、一応気をつけよう。
以下略
AAS
9
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:26:57.46 ID:jYVo7zbZO
「じゃあ、聞き方を変えよう」
「なにがなんでも追求するんですね……」
「当たり前じゃないの。じゃあ、そうだな……」
まるで大阪のおばちゃんの如く詮索好きなお姉さんは顎に手をやって暫し考え、こう尋ねた。
以下略
AAS
10
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:29:13.71 ID:jYVo7zbZO
「それで、答えは?」
「む、難しすぎて、よくわかりません」
思い当たる節は多々あるのだが、どれも違うような気がして、そのひとつでも言葉にすれば不正解であることが判明しそうで、怖かった。
以下略
AAS
11
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:31:35.40 ID:jYVo7zbZO
「ん? どうしたの、ポカンとして」
「いえ、ちょっと認識を改めようと……」
目の前で首を傾げるこの綺麗なお姉さんは。
これまでどんな道を歩んできたのだろうか。
以下略
AAS
12
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:33:46.15 ID:jYVo7zbZO
「夏美さん」
「なにかな、少年」
「早くトイレに行ってきてください」
真顔でトイレの方を指し示すと駄々を捏ねた。
以下略
AAS
13
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:35:48.17 ID:jYVo7zbZO
「下着は脱いだほうがいい?」
「脱がないでください! 今のご時世、世の中ほんと厳しいんですから! 絶対駄目です!」
「ちぇっ……帆高くんのけちんぼ」
僕がケチなわけではない。断じて。
以下略
AAS
14
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:38:02.91 ID:jYVo7zbZO
「俺は、俺だって……!」
大人びたあなたに追いつきたくて。
慌ててズボンのベルトをカチャつかせる僕の手をそっと、嗜めて、夏美さんは首を横に振る。
以下略
AAS
15
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:39:33.91 ID:jYVo7zbZO
「夏美さん、もう我慢しなくて結構ですよ」
「いいの……?」
「はい。ようやく覚悟が決まりました」
やっぱりこの人は大人だ。
以下略
AAS
16
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:41:05.91 ID:jYVo7zbZO
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
雨。雨、雨、雨。僕の大嫌いな、雨。
雨が降っている。降り止まぬ、雨が。
もしも、それが大好きなお姉さんの。
以下略
AAS
17
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:42:55.37 ID:jYVo7zbZO
「……くん」
「えっ?」
どれだけその場に佇んでいただろうか。
ふと、誰かの声が、聞こえた気がした。
以下略
AAS
18
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/21(金) 01:44:17.14 ID:jYVo7zbZO
「夏美さん」
差し出された手に、手を伸ばして僕は尋ねる。
「彼女は……僕を許してくれるでしょうか?」
以下略
AAS
19
:
名無しNIPPER
[sage]
2020/02/21(金) 06:59:21.29 ID:TzsH6xR80
== SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)ローカルルール ==
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SS速報VIPではアダルト・グロテスクな表現などを含むスレッドは立てられません。全年齢な掲示板です。
以下略
AAS
20
:
名無しNIPPER
2020/02/21(金) 07:47:44.04 ID:QPn5LN/QO
>>19
これを夏美さんが書き込んでいると想像するとぐっとくるな
なんにせよ、仲が良いようで見ていて微笑ましい
もっとやれ 乙
21
:
名無しNIPPER
[sage]
2020/02/21(金) 18:36:07.97 ID:TzsH6xR80
>>20
気持ち悪いねキミ
末尾Oだしもしかして
>>1
の自演だったりする?
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