1: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:05:29.57 ID:ltIw3edqo
けいおんSS百合雑談スレ企画でございます
・長さは基本的に自由。ただしあまりに長いSSは他の人の投下の妨げになるのでNG。
・百合スレ発なので必ず百合カプ要素を含むこと
・カップリングは自由(当然百合カプに限る)。他の人と被ってもOK
・事前にカップリングを示しておく(名前欄若しくは投下前)
・内容の都合上、事前にカプを明示すると都合が悪い場合はその旨を最初に言っておく
・NGワード注意(メール欄にsagaで回避可)
あんまりテーマに頑なに拘る必要はないとかどうとか
投下予定時間
17時 :◆RLqqTM6o/csr
19時 :◆fESkAzz9Po
20時 :◆iRrUdDtAr.
時のいや果て :◆Dq9zTDROkE
こんな感じです
飛び入り参加してもいいのかも知れないね!
2: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:08:18.57 ID:ltIw3edqo
では投下していきます
タイトル:純「合宿してみたいわ」
カップリング:和さわ 憂純
3: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:10:02.07 ID:ltIw3edqo
平沢憂は、朝方、クーラーを作動させて間もないリビング、そこに繋がるダイニングキッチンで、冷水に手を晒して食器を洗っていた。
どんどんと体温が奪われているような気がして、憂は窓から外を見た。
外ではじーわ、じーわ、と蝉の声が響いている。
その声はコンクリートと金属に住家を侵されているようで、心なしか寂しそうに聞こえた。
4: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:11:46.71 ID:ltIw3edqo
すっかり部屋が冷え切ってしまった頃、憂は皿洗いを終わらせた。
少し肌寒く感じたけれど、それでも外の蒸し暑さを思って、憂がクーラーを切りかねているところで、インターフォンが鳴った。
憂は、はっと顔を上げて、玄関へと駆けていった。
扉を開けると、思わず顔をしかめるほどの暑さと、元気な声が飛び込んできた。
5: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:13:04.89 ID:ltIw3edqo
「なにやってるの?」
「日向ぼっこ」
ふうん、と返事をして、憂は冷蔵庫から麦茶を取り出して、氷を入れたグラスにそれを注いだ。
6: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:15:35.71 ID:ltIw3edqo
「ういー、ういー」
純が自分の名前を呼んでいるのが、ずっと遠くでのことに感じられた。
憂は目を細めて、外の光景を見つめた。
蝉はどこにいる? 人工物の中で、一生懸命に鳴き続ける蝉は。
7: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:16:56.50 ID:ltIw3edqo
「ねえ、純ちゃん……外はさ」
憂は背後の友人に声をかけて、窓ガラスに手を当てた。
ひんやりと冷たかったけれど、その薄いガラス一枚の壁は、これから確実に熱を帯びてくる、
そして、この部屋の中も。
8: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:18:26.79 ID:ltIw3edqo
「軽音楽部、また今年も合宿するのよ」
クーラーの効いた生徒会室で長い髪を暑苦しく思いながら、山中教諭は冷たい麦茶を飲んでいた。
どうしてこんなことを言ったのかは分からないけれど、言ってしまった以上、教諭は相手の返事を待った。
9: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:19:44.05 ID:ltIw3edqo
「のーどーかーちゃあん」
それと、教諭の歌うようなきれいな声。
冷たい大理石のような、透き通った声。
10: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:20:46.48 ID:ltIw3edqo
二人の女の子が日の照り返す道路を元気に歩いていた。
柔らかい髪を縛って、ショートポニーにした女の子は、優しく笑って言った。
「暑いね……どこ行こうか?」
11: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:22:22.06 ID:ltIw3edqo
早歩きで高校へ着き、自主練をしていたソフト部に頼み込んで、予備のグローブとボールを貸してもらった頃には、二人は汗で襟元を湿らせていた。
憂は相変わらずにこにこと笑った。
「よーし、じゃあ行くよ。胸元の高さに、こう、しゅっ、だね」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/01/23(日) 17:23:26.77 ID:ltIw3edqo
「純ちゃん、変な声」
くすくすと憂が笑った。
憂はグラウンドから見える並木や、雑草や、鳥がみんな暑さに歓喜して踊っているように思った。
13: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:25:24.91 ID:ltIw3edqo
そこでボールは一旦止った。
ぎゅっと強くボールを握りしめて、憂は精一杯笑った。
「じゃあさ」
14: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:26:08.62 ID:ltIw3edqo
「どうぞ!」
純は嬉しさに、外気以上に内側から体が熱くなるのを感じて力いっぱいボールを投げた。
15: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:27:26.65 ID:ltIw3edqo
生徒会室はいよいよもって冷え切って、山中教諭は肩を摩っていた。
全く、夏に寒い思いをしなきゃならないなんて、馬鹿馬鹿しい。
「和ちゃあん……クーラー切りましょうよお」
16: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:28:36.83 ID:ltIw3edqo
「どうぞ」
生徒会長が歳不相応に大人びた笑顔で差し出した麦茶を受け取って、さわ子は目を伏せた。
口をつけて、グラスをくいと傾けると、冷たい水が体を内側から冷やした。
17: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:30:05.62 ID:ltIw3edqo
窓の外には空があった、雲があった、鳥もいたし、緑もあった。
けれど、冷房で冷やされたガラス窓が、そんな夏の暖かさを完全に遮断していて、さわ子はその明媚な光景を見ても何も感じることが出来なかった。
何かを感じたいとは思っていた。
18: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:31:22.37 ID:ltIw3edqo
さわ子は熱気を感じた。
顔にむんとした空気が当たって、額にうっすら汗が滲んだ。
ああ、化粧が落ちてしまうかも知れない、そんなことを思ったけれど、さわ子は楽しそうに笑った。
19: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:32:31.82 ID:ltIw3edqo
「壁当てでもしたらいいじゃないですか。一人で出来ますよ」
「壁当て?」
20: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:34:09.31 ID:ltIw3edqo
和は見た。
さわ子の細い、長い腕が、質量はそのままに体積だけ大きくなった、薄い柔らかい夏の空気を纏って、しなった。
ふっ、と高い音がなった。ぱん、と綺麗な音が響いた。
ボールは相手の胸元に真っ直ぐに届いた。
21: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:35:07.73 ID:ltIw3edqo
和は麦茶を飲んだ。ぐい、と一気に。
それでも下がらない、彼女の体は火照るばかりだ。
「そうかも、しれませんねえ」
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