1:いつぞやの京子「アッカリーン」スレ主[saga sage]
2013/02/22(金) 15:31:45.72 ID:L62z0KCK0
  
   空を見上げる。   
   何もない空、まだ昼間。   
   空を駆ける星があったなら、今までのこと、全部忘れさせてくださいって願うのかな。   
   知らなかった。漫画なんかでドキドキする出来事が、これほどに辛いことだなんて知らなかったから。   
   忘れさせて………  
   空を見上げながら、そんな願いが叶うことなんてないと、一つ溜息を落とした。  
    
  
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:33:16.35 ID:L62z0KCK0
  ―京子― 
  
  その変化に最初に気づいたのはあかりだった。  
  こういうことに気づくのは意外な人物だっていうのは間違ってなくて、私の中ではイレギュラーなあかりが話しかけてきた。 
  
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:34:45.89 ID:L62z0KCK0
  私も人知れず勉強はしているが、結衣は念には念を入れて勉強に励んでいる。むしろ、こんな風に話している時間すら、ある意味勿体ない時期でもあるらしいけど、実際そんなことを気にしていないのが私、歳納京子である。  
  
 ちなつ「結衣先輩、お茶淹れたのでどうぞ」  
 結衣「ありがとう、ちなつちゃん」  
 ちなつ「えへへ、京子先輩もお茶いります?」  
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:35:55.80 ID:L62z0KCK0
  こうして、みんなと一緒にごらく部で集まれなくなることへの寂しさなのかなと、考えたりもした。  
 けれど、別に会おうと思えば何時だって会えるわけで、それ以上のことを私は考えなかった。  
  
 結衣「おい、京子」  
 京子「んー、なに?」  
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:36:28.95 ID:L62z0KCK0
  
 結衣「そういえば、ちなつちゃんとあかりはどこか行きたい高校とかあるの?」  
  
  その結衣の言葉を聞いてなんとも聞かなくてもいいことを聞きますねぇ、なんて思った。  
  ちなつちゃんは私……、いや結衣を追いかけて私たちと同じ高校に入ろうと考えるだろうし、あかりだって同じだろう。  
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:37:09.03 ID:L62z0KCK0
  あかりはそれだけ言って部室を出ていく。  
  時間は4時頃、授業と掃除が終わってこの部室にあかりがいられるのは30分くらいで、今は綾乃と千歳を補佐するくらいに生徒会の役に立っているって聞いている。  
  
 ちなつ「あかりちゃん、生徒会の人数が足りないから手伝いってことで入ったはずなのに、今じゃ次の生徒会長だって言われてますよ」  
  
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:38:12.84 ID:L62z0KCK0
  ちなつちゃんは私、いや結衣といられる時間のほうが大切だったし、あかりもそうだと思っていた。  
  けど、あかりは『困っている人を、ほっとけないよ』って言って生徒会の手伝いを引き受けることにしたわけだ。本当にあかりはいろいろと優しいなって思ったし、同時に面白そうだな〜って思った。  
  そして気付けば、あかりは学校でもそれなりに有名な人になっていた。  
  生徒会での活動もそうだけど、今まであかりが何をしていたのかっていうことがいろいろと話されるようになってきて、三年生である私たちのクラスでも時折、あかりの名前を耳にする。  
  その分、私と結衣は学校であまりあかりと会えなくなっていた。  
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:38:42.84 ID:L62z0KCK0
  冷え込んだ外気に、吐息が白くなるのを見ると、12月が近いことを改めて実感する。  
  今年の冬コミは、さすがに高校受験もあるから新刊とかを出す気力も無いので、今年はただ静かに勉強しているだけの日々になる予定だ。 
  
 京子「そういえば綾乃と千歳とかはどこの高校行くんだろう?」  
  
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:39:18.66 ID:L62z0KCK0
 あかり「うん、お姉ちゃんの行ってた学校なんだけどね」  
 千歳「ほんまか〜、あかりさん成績も十分やから前期募集でも受かる確率高いと思うでぇ〜」  
 櫻子「あかりちゃんが進学校ねぇ〜。向日葵もおっぱいばっかりに栄養使ってないで、頭にも使えよ〜」  
 向日葵「胸は関係ないでしょう!」  
  
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:40:31.63 ID:L62z0KCK0
  まだ二年生なのに、あかりは私達とは違う道に行こうって考えている。  
  それが思った以上に、ショックだったのかもしれない。  
  何でショックを受けているのか、それはよくわからなかったけど。  
  体が動くようになってから、私は部室へと戻る。  
  戻ってから何をすべきなのか分からないままに、私は部室に入ってすぐさま結衣に何かあったのかと聞かれた。  
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:41:44.46 ID:L62z0KCK0
  
 京子「み、見るなよ、照れてしまうのだぜ」  
 結衣「照れたフリしない、何かあったんだろ?」  
 ちなつ「京子先輩って、あまりショックとかとは無縁の人と思ってたんだけどな〜」  
 結衣「いや、こいつは何気にショックを受けると、こうなる性質なんだぞ」  
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:42:28.93 ID:L62z0KCK0
  二人になだめられて腰を下ろすと、いつの間にか淹れられたお茶を一気に飲み干す。  
  めちゃくちゃ熱かったけど、そんなことを気にするような感じにはなれなかった。  
  なんで二人はそれほど冷静に事を分析しているのかと、私はこれほどまでにショックを受けているというのに。  
  私の憤慨をわかっているはずなのに、結衣は何も言わないで少しばかり何か考えているし、ちなつちゃんは私を見てはなんだか首を横に振っていた。  
  ちなつちゃん、その若干の呆れた表情はなんでしょうか。  
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:43:05.72 ID:L62z0KCK0
 結衣「まったく、まるで中学生になった時みたいだな」  
 ちなつ「京子先輩って、こういう風になったことあるんですか?」 
   
  二人の言葉に耳を傾けながら、ふて寝を決め込むことにした。もう、なんだか疲れた。  
  
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:44:10.74 ID:L62z0KCK0
  体を揺すられている気がして、靄がかかった意識が徐々にだけど覚醒していく。  
  
 綾乃「歳納京子、こんなところで寝ていると風邪引くわよ」  
 京子「あれ、なんで綾乃が………」  
  
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:45:01.96 ID:L62z0KCK0
  部室から校門までの道は思った以上に静かだった。風で木々がざわめく音もなくて、他に歩いている生徒もあまりいない。  
  歩きながらあかりのことを聞いてみようか考えてみたが、隣の綾乃はなんだか緊張しているみたいで、時々こっちを見ては目を逸らすなんてことを繰り返している。  
  なんでそんなことになっているのかなんて知らないけれど、なんだかそれは可愛く見えた。  
  空もだんだんと暗みを帯び始める頃に、私と綾乃は校門について、そこで待っているメンバーを見つける。  
  
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:45:34.87 ID:L62z0KCK0
  なんだか不思議な格好で下校をしている。  
  左手を綾乃、右手をあかり、それを見ながら鼻血を流している千歳っていう感じ。  
  今ここにいる四人の内、三人が生徒会役員であるのだから少しばかり見る人から見ると複雑なものなのかもしれない。  
  
 あかり「京子ちゃんの手、温まってきたね」  
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:46:27.36 ID:L62z0KCK0
 千歳「綾乃ちゃん、うちらはこっちの道やで〜」  
 綾乃「そ、そそそ、そうね!」  
  
  二人の言葉と共に、綾乃の手が私の手から離れていく。  
  あ…、思わずこぼれた言葉は誰にも聞こえてないみたいだったけど、それが何を求めて口からこぼれた言葉なのか。  
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:47:09.06 ID:L62z0KCK0
  こんな冷たい声が、私の口から出ているのかって思った時に、あかりの足が止まっていた。  
  でもまだ手は握られたままで、何も言わずにただ立ち止っていた。  
  
 あかり「あかり、京子ちゃんに何かしちゃった……のかな?」  
  
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:47:48.92 ID:L62z0KCK0
  鞄を床に、制服を適当に脱いでショーツだけでベッドに横たわる。  
  部屋の中はすでに暖房が掛っていて、その点を母親に感謝しながら体中に感じた疲労を全部溶かす。  
  染み込んでいくように、ベッドに疲れが落ちていく。  
  
 京子「……なんで、なんでだよ」  
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:49:43.82 ID:L62z0KCK0
  数回の呼び出しコール、のんびりと待つ間はなんとも退屈な時間ではある。  
  
 綾乃『も、もも、もしもし』  
  
  掛けた相手は綾乃にだ。特に理由は……なかった。  
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 15:50:14.04 ID:L62z0KCK0
  楽しい会話、楽しい時間、途中からは趣味の話とかになって、一息入れるために紅茶を入れたりするくらいに長く話した。  
  思った以上に綾乃はおしゃべりで、途中今日の手を繋いだことについて聞いたときは、おもしろいくらいに狼狽していたけど。  
  
 綾乃『でも、先に手を握ってきたのは歳納京子のほうじゃないの!』  
  
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