過去ログ - 貴音「こひのとらはれ」
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1:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 17:09:29.82 ID:bKqi92pu0
「本番五分前でーーーす」

スタッフさんの声が響き、スタジオ内の空気がよりいっそうとピリピリするのを感じる。
収録が毎週あることくらいわかっているはずなのに、テレビ番組の準備というやつは常に不足している。

慌ただしい空気の中に凛と咲く一輪の花、なんて言いかたをしたってばちは当たらないだろう。
一輪の花の如く悠然と構えているのは、俺の担当アイドルである四条貴音だ。
数年前にデビューし、アイドルとしてまあ順当にステップを踏んでいたのだが、
ある事件をきっかけに猛スピードでスターダムを駆け上がることになる。

今やその活動範囲は女優、歌手、タレント、文筆と多岐に渡るものであり、
逆にいわゆるアイドルとしてのステレオタイプな仕事はほぼ鳴りをひそめていると言った状態だ。

それでありながら、貴音は今も自分がアイドルという呼び名にこだわり続けている。
短くない付き合いの中でわかったのだが、貴音は愛着心が強いのだ。
偏執狂的なラーメン愛好家として名を馳せているのはその好例である。
ひとつこれと決めたらそれ以外を拒絶してでも愛し続けるといった頑強さがある。
そんな貴音にとっては、アイドルという肩書きもまた寵愛すべき対象ということらしい。

そんなわけで暇な事務所でじゃんけんをしていた頃から一貫して貴音はアイドルであり
俺もまたプロデューサーであり続けているが、実情はまあ専属マネージャーみたいなものだ。

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2:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:26:52.56 ID:bKqi92pu0
申し訳ありません。

少し書き換え箇所がありましたので、もう一度最初から投下します。
言い回しが変わっただけなので、>>1を読まれた方は、
>>3は読んでいただかなくても問題ありません。
以下略



3:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:29:27.10 ID:bKqi92pu0
「本番五分前でーーーす」

スタッフさんの声が響き、スタジオ内の空気がよりいっそうとピリピリするのを感じる。
収録が毎週あることくらいわかっているはずなのに、テレビ番組の準備というやつは常に不足している。

以下略



4:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:31:36.62 ID:bKqi92pu0
デビュー前からずっと貴音と二人三脚を続けてきた俺に取って
貴音の発する機微を捉え、それに応じてフォローするなどは雑作もないことだ。
喉が渇いたと言われる前に水を用意し、腹が減ったと言われる前にカップ麺に湯を注ぐ。
俺のような天才プロデューサーでなけりゃ、跳梁跋扈の世界を行くアイドルのパートナーは務まらん。

以下略



5:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:33:32.41 ID:bKqi92pu0
ことの始まりは二週間程前。
あの日俺は酒に酔っていた。

「ごめんごめん、酔っちゃててさ〜」などというのは体のいい責任回避のための文言であるが、
実際は酒に酔って車を運転すれば親切なおまわりさんにウィンドウをコンコンとやられるし、
以下略



6:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:36:08.59 ID:bKqi92pu0
「……」

怒ってないと貴音は言う。
貴音がそう言うのなら、それはきっと真実なのだろう。
むしろ怒っているときは怒っているとはっきり言うのが貴音の性格である。
以下略



7:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:37:36.45 ID:bKqi92pu0
「コーヒー、飲むかしら」

「あ、どうもすいません……デ、ディレクターさん……」

激震である。
以下略



8:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:38:50.50 ID:bKqi92pu0
「あんた煙草は」

「あ、いえ僕は大丈夫です」

「そう……」
以下略



9:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:41:05.48 ID:bKqi92pu0
「あの、やっぱり一本貰ってもいいですか」

「どうぞ」

「すいません」
以下略



10:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:42:44.38 ID:bKqi92pu0
「あんた、童貞ね」

「ブホッ」

コーヒー吹いた。
以下略



11:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:44:41.91 ID:bKqi92pu0
「その節は、本当に……」

「おかげで番組史上最高視聴率を獲得したわ」

今の時代何かやらかすとすぐに【拡散希望】とかやられて雪だるま式に被害が拡大してしまう。
以下略



12:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:46:08.81 ID:bKqi92pu0
「で、幸せ者のプロデューサーさんは、なんでこんなとこで油売ってのかしら」

「……」

「喧嘩して収録ぶち壊そうが、今まで側を離れようとはしなかったじゃない」
以下略



13:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:47:50.11 ID:bKqi92pu0
「……」

「……」

「……」
以下略



14:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:48:53.47 ID:bKqi92pu0
「恋は信じるか疑うかどっちかよ、半分だけ信じるとかちょっとだけ疑うとかそんなズルいのは許されない」

「……」

「嘘ごと愛すか、真実ごと疑うか」
以下略



15:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:49:57.83 ID:bKqi92pu0
スタジオ内に戻ってみると、撮影はつつがなく進行していた。
一応現場をこっそりと抜け出していた身であるので
やはりこっそりと戻ってみたのだが、案の定誰もそんなことに気付きもしない。
でも貴音だけは気付いてくれたようで、俺に手を振ってくれた。
すごく嬉しいんだけれども、今は収録に集中してなきゃだめだよ。
以下略



16:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:51:59.14 ID:bKqi92pu0
荷物を後部座席に放り込み、運転席に乗り込む。助手席には貴音。
「普通それは違うんじゃないの」というツッコミは野暮である。
俺と貴音にとってはこれが正しいのだ。

なんとなくお互いに交わす言葉のないまま道のりの半分ほどまで差し掛かったころ
以下略



17:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:54:24.59 ID:bKqi92pu0
「……14時から緑が丘スタジオでドラマの収録。20時から朝日テレビで歌番組の撮影。そのあとまた緑が丘に戻ってドラマの収録だ」

「では、出迎えは」

「まあ12時ってところかな」
以下略



18:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:56:05.76 ID:bKqi92pu0
「貴音」

「はい」

まあそんな御託は実際どーでもいいのであって、
以下略



19:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:57:09.88 ID:bKqi92pu0
実際、今の貴音は非常に多忙である。
一見スケジュールに空きがあるように見えても、それは台本を読み、原稿を書くための時間に他ならない。
隙あらばちちくりあっているかのような捉えられかたをされても困るのである。

765プロと言えば今や名だたるアイドルプロダクションであり、
以下略



20:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:58:43.25 ID:bKqi92pu0
二連休の一日目、俺はいったいどんな強行軍に付き合わされるのかと身構えていたのだが、
意外にも午前中いっぱいはたっぷり休養を取れとのお達しであり、
待ち合わせ場所で落ち合ったのは日も沈み込むころであった。
マジックアワーというやつである。あと、なんとかが刻とも呼ばれていたはずだ。

以下略



21:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 19:00:01.50 ID:bKqi92pu0
「ただ、わたくしに付いてきて下さいませ」

「わかった」

ついにこの日まで、行き先についてヒントすら聞くことはなかった。
以下略



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