過去ログ - 高森藍子「菜々さんへの誕生日プレゼントが思いつかない……」
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24:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:13:08.18 ID:5maGnF/Q0
――5月14日――

「あの、加蓮ちゃん。これ、返しますね」
「もういいんだ?」
「はいっ」
以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:13:56.56 ID:5maGnF/Q0
加蓮の目つきは真剣そのものだった。

サスペンスドラマで探偵による推理ショーを見せられている犯人役の気分だ。
ドラマでは、探偵が「犯人はあなたです!」と言った後で、犯人がそれを認めて項垂れる。
現実では――
以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:14:46.56 ID:5maGnF/Q0
「……なんで泣きそうな顔してんの?」
「それは――って、私、泣きそうな顔、してました?」
「うん。私が止めなかったら5秒後くらいに泣いてたかな? ってくらいの顔」

1つずつやり取りをしていくうちに頭が冷えていく。一区切りついた後にソファに促され、素直に座ったら「飲み物とってくるねー」と加蓮が立ち去った。
以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:15:36.63 ID:5maGnF/Q0
グラスを手渡される。無言で軽く頷いて、受け取る。

「乾杯っ♪ ……甘ぁい。もー、変な藍子。何を思い詰めてんだか」
「……いつの間にか、ちょっと考えすぎてたのかもしれません」
「たかが誕生日プレゼントなのに?」
以下略



28:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:16:26.58 ID:5maGnF/Q0
「で、何に悩んでるの?」
「へ? それは、菜々さんの誕生日プレゼントを」
「そうじゃなくて。聞き方が悪いのかなぁ……。なんでそんなに悩んでるの? って聞きたかったってゆーか」
「菜々さんに贈るプレゼントがなかなか決まらなくてっ」
「違うってーの……。ああもうっ、じゃあもうちょっとぶっちゃけるね。なんでそんなに、しんどそうな顔して悩んでるの?」
以下略



29:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:17:16.79 ID:5maGnF/Q0
「あ、あれっ、あれもバレていたんですか!?」
「あー……菜々ちゃんにはバレてないかな? うん、たぶん」
「そんなぁ……」

ようやく膝に力が入って立ち上がれそうだったのに、またへなへなと腰が抜けてしまう。
以下略



30:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:18:06.43 ID:5maGnF/Q0
芝居じみた口調に首を縦にも横にも振れないでいるうちに、ぽすり、と加蓮が藍子の隣に腰掛け直した。
ソファが軽くへこむ。ずり落ちそうになって背もたれへと手を伸ばすと、加蓮がその手を掴んでくれる。
よいせっ、と引き上げてくれようとした……のだろうけれど、引っ張られる力はあまりに弱く、加蓮を巻き込んで床に転がり落ちそうになった。
なんとか全身で踏ん張って起き上がる。加蓮と目が合う。やや気まずそうな吐息に、つられて下唇が少し曲がってしまう。

以下略



31:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:18:56.51 ID:5maGnF/Q0
「あははっ、ごめんごめん」

思考がぷつりと途切れた藍子へと、加蓮はおどけて頭を下げて見せた。

「知ってるよ。藍子が真剣だってことくらい。藍子は他人想いだもんねー。自分のことしか考えてない私とは大違い。いーなー」
以下略



32:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:19:46.72 ID:5maGnF/Q0
「ねー藍子。私さ、ちょっと困ってるんだ」
「……加蓮ちゃんがですか?」
「加蓮ちゃんもです。…………」
「……?」
「や、……いや、前言撤回……。ちょっと今自分で言おうとしたことがヤバイくらいクサいって気付いて……。えーと、あ、そうだ。あのねー、実はここ数日くらい寝ると変な夢ばっかり見てさー。今日、藍子の家に泊まりにいっていい?」
以下略



33:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:20:36.58 ID:5maGnF/Q0
「あははっ。で、泊まりに行っても大丈夫?」
「あ、はいっ、大丈夫です!」
「よかった。じゃ夜更かしでもしていろいろとおしゃべりしよっか。あっ、私が先に寝ちゃうと思うけど落書きとかしないでよ? ……あとスマホで撮るのも禁止」
「はーいっ。ふふっ。加蓮ちゃんには、ちっとも隠し事なんてできないですね」
「……んん?」
以下略



34:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:21:26.66 ID:5maGnF/Q0
前言を撤回しようと口を開いた瞬間、加蓮の形相がみるみる変化していく。反射的に逃げようと身を翻したら腕を掴まれた。あーいーこー? と地獄から轟くような声で名前を呼ばれる。閻魔大王か何かか。振り返るのがすっごく怖くてイヤイヤとかぶりをふったら両手で顔をがしっと掴まれて強制的に死神のような目と直面させられた。

たすけてくださいと声に出せずに叫んだ。

助けは来なかった。
以下略



35:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:22:17.23 ID:5maGnF/Q0
――5月15日――

朝早くの事務所にて。

「プレーンクッキーがプレゼントとは、ナナちょっとびっくりでしたよ! しかも手作り! これ、加蓮ちゃんが焼いてくれたんです?」
以下略



36:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:23:06.65 ID:5maGnF/Q0
「それに最近は、藍子ちゃんもちょっと様子が変でしたからね。ナナの取り越し苦労でよかったですよホント」
「藍子も何か言ってやれー」
「……え? あ、あはは……。不安にさせちゃってごめんなさい。でも、もう大丈夫ですから!」
「もう大丈夫ってことは、解決したってことですね? いつもの藍子ちゃんに戻ってくれて、ナナも一安心ですよ!」

以下略



37:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:23:56.60 ID:5maGnF/Q0
クッキーの端をゆっくりと飲み込んで、立ち上がる。
鋭く息を吸った途端、台本がぱらぱらとめくられていく様子が脳裏をよぎった。
まるで、繰り返し練習してとうとう撮影の日を迎えたドラマのよう。
少し違うのは……役に入る必要がないことと、台本なんてないこと。

以下略



38:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:24:46.71 ID:5maGnF/Q0
……堂々としていた、つもりでも。やっぱりどこかズレているように思えて、つい口ごもってしまう。
ぽかんとしている菜々へと、加蓮が肘で軽く小突いた。
それでも誰も言わないまま、少しの沈黙の時間が続く。

もうちょっとだけ、言わなきゃ。
以下略



39:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:25:36.83 ID:5maGnF/Q0
大げさにしすぎた。

悩みすぎた。

最初は、あれこれ想像しながら、ずっと心を弾ませながら雑誌をめくっていたはずなのに。
以下略



40:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:26:26.74 ID:5maGnF/Q0
そして1つ思い出した。物陰に隠れて、2人の言い争いを見ていた時に思ったことを。

「じゃあ、今日の夜は藍子の家に集合ってことで――」
「えー、だめですよ。今日は、私と菜々さんの2人で話し合うんですから。加蓮ちゃんは来ちゃだめですっ♪」
「んなっ――え!? 私ハブ!? ちょ……藍子!?」
以下略



41:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:27:08.34 ID:5maGnF/Q0


おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。

以下略



42:名無しNIPPER[sage]
2016/05/15(日) 22:34:59.37 ID:/hOdjbQ1o
ええ話や……


43:名無しNIPPER[sage]
2016/05/16(月) 00:56:50.49 ID:OtpqYDGLo
乙!


44:名無しNIPPER[sage]
2016/05/16(月) 13:56:42.76 ID:G9pegSXs0
おいくつになったの?


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