過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/11(月) 20:25:32.92 ID:foU1KJOC0
はじめてのスレ立てなんで上手くいくかドキドキ。ちなみにハトプリ派。
ちょと長いけど、付き合って頂けたら幸い。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:29:33.38 ID:foU1KJOC0
 凪である。
 しかし、この海原が静寂に包まれることはなかった。
 静けさを破るものは、無数の発砲音、スクリュー音、そして着弾音である。
 同時に巻き上がる膨大な水しぶきの中を、縫うように駆け抜ける影が一つ。
 よほど時勢に疎い人間でない限り、それを見て、ある一つの言葉を思い浮かべるだろう。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:30:13.37 ID:foU1KJOC0
らを送り届ける母艦の運用に特化した施設とするならば、あまり大がかりなものとならないのはものの道理であった。
 結果として、口さがない者に横須賀鎮守府の外観を語らせればそれは、
「まるで学校のよう……」
 と、なるのである。
 そんな鎮守府の最奥、最も守りを厳重なものとしている場所に艦娘たちの寮が設けられていた。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:30:45.30 ID:foU1KJOC0
しまったようだ。
「もしかして……もしかしてなんだけどさ……五十鈴ちゃん、演習のこと気にしてる?」
「ぐ……」
 図星を突かれ、飯が喉につかえてしまった。
「なんだ……そんなことだったの」
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:31:11.72 ID:foU1KJOC0
ら、五十鈴は自問自答した。
「それにしても……」
 人の気も知らず、気楽に語っていたコメンテーターの言葉を思い出す。
 その中で語られていたある事柄こそが、今現在五十鈴を最も悩ませていることだし、きっとそれを察したからこそ、あの親友はここに来てくれたのである。

以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:32:08.78 ID:foU1KJOC0
安置され、非番の乗組員たちは部屋の隅で居心地悪そうにしている士官たちの視線を受けながらも、記念撮影などに興じているのである。
 ちなみに由良は、真っ先に記念撮影を行っており、その写真をメールに添付して鎮守府に残った艦娘たちに自慢していたものだ。
「……私はいいさ。今は、自分の艤装に集中しないと、な」
「まだ……調子、戻らないんだ?」
「ああ、日に日に悪くなっている気がする。今日の定時哨戒も、思うように速度が出せなかった」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:32:35.55 ID:foU1KJOC0
「とにかく、わたしはいくね! 五十鈴ちゃんは安全なところへ!」
 それだけ言い残し、下駄にも似たカタパルトへ両足を乗せた。
「軽巡由良、出撃!」
 かけ声と同時、電磁式のカタパルトが射出され、由良の姿は海原へと消えていく。
 格納庫には、五十鈴が……いや、五十鈴の名を受け継いでいた少女が一人取り残された。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:33:02.61 ID:foU1KJOC0
在がどれほど危険で恐ろしいかは知っているだろうに、そう口にせずにはいられないのである。
 だが、恐怖で口を開かずにいられないのはベテラン乗組員とて同じことだ。
「見かけでまどわされるなよ……深海棲艦っていうのは、強力な個体ほど人間に近い姿なんだぞ」
「こんごう……あたご……かつて自衛隊が保持していた艦艇の数々も、あれと同じやつに沈められたんだ。こんなちゃちな輸送船より、遥かに強力な船がだぞ」
 艦橋内を、重苦しい沈黙が包み込んだ。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:33:34.95 ID:foU1KJOC0
 少女はそれに、また驚かされた。軍規に照らし合わせれば、当然こんなところに存在するはずがない品物だ。
「ま、誰だか知らないが上手いことやって積み荷に潜り込ませたんだろうよ。そういうはしっこいやつ、俺は嫌いじゃあない」
 言いながら男は早くもウィスキーの栓を開け、中身を美味そうに口へ含む。
「――ふうっ、昔は酒なんか大嫌いだったが、いや、この頃は悪くないと思うようになってきたな」
 そう言ってから、男はじろりと少女をねめつける。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:34:17.60 ID:foU1KJOC0
わっているが、軽巡や駆逐のそれは、さほど強力なものではないのである。
 これは鎧に身を固めた長槍兵にナイフ一本で立ち向かうかのような所業であり、もはや蛮勇であるとさえいえた。
(それでも……)
 やらなければならない。
 輸送船に積まれた長門の艤装を失えば全軍の士気は確実に低下するであろうし、何よりあの船には、戦う力を失った彼女の親友がいるのである。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:34:51.21 ID:foU1KJOC0
連合艦隊旗艦の魂と戦力を受け継ぎし艦娘長門は、すぐさま次弾の発射態勢をとる。
 だが、ル級とていつまでもその動きを止めているものではない。
『――ッ!』
 咆哮を上げながらも高速機動を開始し、次弾を回避することに成功する。
 着弾による衝撃波でクレーターの如く陥没する海面を尻目に、残る全砲門が長門に向けられた。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:35:17.77 ID:foU1KJOC0
 隣の執務机から、こんなところまで腐れ縁の親友がそうなぐさめてくれる。
 その時、こん、こん、とノックする音と共に、執務室の扉が開かれた。
「コーヒーを淹れてきましたよ……長門さんはブラックで、陸奥さんはミルクと砂糖たっぷりのやつでしたよね?」
 湯気が立つコーヒーを運んできてくれたのは、今は長門を名乗る彼女に代わり、五十鈴の艤装に選ばれたツインテールの少女である。
「あ、この写真。先代の赤城さんが引退した時のやつですよね?」
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:35:47.41 ID:foU1KJOC0





14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/11/11(月) 21:12:14.80 ID:Cunl5dq70
読みずれぇ


15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:24:17.84 ID:foU1KJOC0
 読みづらくてごめん。
 もう一本あるんで、そちらで改善しますです。
 というわけで、投下していくよ(別スレは立てられなかった)。

 タイトル『貧鈍』
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:25:22.91 ID:foU1KJOC0
 春島、という通称にはそぐわぬ暑さであった。
 気温は27度ほどであるが、まとわりつく湿気がそれを何倍にも感じさせる。
 しかし、町外れにあるその茶屋を訪れた娘は汗ひとつかかず、むしろ涼しげな雰囲気さえ漂わせているのであった。
 年頃としては、20代にさしかかったばかりというところである。
 腰の辺りまで伸ばした黒髪は三つ編みにされ、チュークドレスと呼ばれるこの辺り伝統の民族衣装に身を包んでいた。厚めのレンズをつけた眼鏡に阻まれ、顔立ちはよく分からない。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:25:57.38 ID:foU1KJOC0
 だが、それを抜きにしても、昼間のこんな時間帯に、島で数台しか営業していないタクシーが、先ほど店の前を横切っていったジープを追うように走って行くというのは、
「そうそうありえることではない……」
 のである。しかも、島の中央部へ向かうこの先には人気のない山林が広がるばかりなのだ。
 こうなると、娘の行動は早い。
「おばさん、お勘定ここに置いておきますね!」
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:26:24.26 ID:foU1KJOC0
 ひと息に間を詰めると、男のひ腹へ当て身を喰らわせていたのである。
「むうん……」
 がくりと倒れる男の腕からさっと少女を奪い取り、さるぐつわを解いてやった。
 すると少女は、母親にすがりつく子供そのままに赤城の胸へ顔を押しつけ、盛大に泣き出したのである。
「よし、よし……もう心配はいりませんからね」
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:26:53.31 ID:foU1KJOC0
 艦娘と妖精とは感覚がリンクしており、多くの言葉を交わす必要はない。
 ただそれだけの短いやりとりを終え、赤城は空中に向けて艦載機を放ったのである。
 すると、搭乗した妖精がベテランパイロットも顔負けの操縦テクニックを披露して巧みに風を捕まえ、見る見る内に高空へ昇っていくではないか。
 その速度は、明らかに複葉機のそれではない。
 これこそが艦娘と現代兵器の間にある絶対的な壁であり、艦娘の艦載機はマッハ10を軽々と越えたスピードで、ミサイル以上の威力を持った搭載火器を放つことができるのだ。
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:27:24.35 ID:foU1KJOC0
 赤城と加賀は艦娘として覚醒する前、同じ道場で弓術を学んでいた仲であり、道場内では「双龍」だとか「龍虎」だとか呼ばれていたものだ。
 そんな付き合いの長い二人であるから、相手の考えはすぐに分かるのである。
「吹雪さん、この子の服装をよく見てください……」
「え? いや、かわいいな〜と思いますけど」
「……トラックではそうそう手に入らない上等な品です。つまり、この子の実家はかなり裕福な家庭で、しかもこの子を見るに日系人であるということですね。それが現地で不可解なトラブルに巻き込まれたということは……?」
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:27:58.22 ID:foU1KJOC0
 あの時――。
 赤城は艦載機型の艤装を飛ばすと同時に、気絶から覚めた男たちを空から追跡するよう命じていたのだ。
 狙いは的中し、気絶から覚めた男たちはそのことに気づかぬまま、この茶屋とは山を挟んで反対側にある船着き場へ向かい、日に二本の定期船で秋島へと渡って行ったのである。
 定期船を降りた男たちが向かったのは、秋島の中心部に存在する洋風の屋敷であった。
 そこまで突き止めれば、あとは簡単だ。
以下略



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