1:名無しNIPPER[sage]
2015/11/10(火) 23:45:13.47 ID:fk92G9zco
たいせつなものほど、ちかくにあります。
いつでも、あなたのそばにあるはずです。
けれど、そばにあることがあたりまえすぎて、
そのたいせつさをわすれてしまってはいませんか?
いつだって、きにしてあげてください。
いつだって、さがしてあげてください。
そのたいせつなもののことを、かんがえてあげてください。
いまさらかんがえることもないだろうなんて、
はずかしがったら、かわいそうです。
なくしてしまってから、そのたいせつさにきづくなんて、
かなしいことには、ならないように。
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:46:20.46 ID:fk92G9zco
〜
私が送った返信メッセージに既読がついて3秒も経たないうちに、家のチャイムが「ぴん……」と鳴った。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:46:57.64 ID:fk92G9zco
京子「今は何かしてたの?」
結衣「別に。軽く掃除でもしようかなと思ったけど、思った瞬間京子が来たからできなかったよ」
京子「掃除ってのは普段からしておかなきゃだめなんだぞー。ほらお菓子こんなとこに置いといたら踏んづけちゃうよ」
4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:47:26.37 ID:fk92G9zco
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:48:01.41 ID:fk92G9zco
冷蔵庫の前まで行ったとき……何かの物音を感じた。
耳を澄ますと、やはりノイズのような小さい断続的な雑音が聞こえる。よくよく集中すればそれが水の音だということがわかった。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:48:50.98 ID:fk92G9zco
浴室では音から察した通りシャワーの水が流れていた。しかしそのシャワーは誰の身体にかかるでもなく、ひたすら床に流れ続けていた。
つまり、誰もいない風呂場でシャワーだけが出続けていた。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:49:28.40 ID:fk92G9zco
私の靴もサンダルもある。この家にある全ての靴が玄関においてある。
そしてさらに嫌なものが硬直する私の視界に入ってしまった。玄関の鍵がしっかりしまっているのだ。恐る恐る振り返って鍵置き場を見ると、いつも使っている鍵がそこにあった。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:50:00.45 ID:fk92G9zco
結衣(な……か、身体が勝手に……っ!!)
まるで、自分の視点が急に第三者のものに変わったかのようだった。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:50:52.15 ID:fk92G9zco
結衣(うそだ)
ありえない。京子がそんなことするわけない。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:51:22.54 ID:fk92G9zco
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:51:51.40 ID:fk92G9zco
なんでもない京子の笑顔を見ていると……胸がすうっと涼しくなっていった気がした。
そしてほぼ同時と言ってもいいくらいのタイミングで、今度は身体がものすごい熱を帯びだした。寝ている間に下がった体温を戻そうとする身体的な働きのせいか、それとも急激な安心感に包まれてのことなのか、氷水に飛び込みたいくらい自分の身体が熱い。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:52:29.99 ID:fk92G9zco
結衣「えっと……」
一体私は何に恐怖していたのだろう?
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:53:13.11 ID:fk92G9zco
じっと浴室の扉を見ていると……夢の中で感じた得体の知れない恐怖が少し蘇って、思わず鳥肌がたった。
この浴室自体はまったくもって普通の場所だ。勝手にシャワーが出ることなんて絶対にないし、夢の中で起こったようなことはもちろん過去に一度も無かった。全ては夢の中の出来事であり、私はあんな光景を想像したことさえもないのだ。
しかし私は見てしまった。あれが寝ているときの幻覚だとしても、心にはしっかりとあの不気味な光景が残ってしまっている。出っ放しのシャワーをこの手でひねって止めたし、その時足元にシャワーの水が少しかかった感覚だってした覚えがある。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:53:45.82 ID:fk92G9zco
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15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:54:47.76 ID:fk92G9zco
結衣(助けて……)
京子。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:55:19.51 ID:fk92G9zco
〜
気づけば私は……京子の家の目の前に到着していた。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:55:46.47 ID:fk92G9zco
裏口に周ってみる。そこには存在だけは知っていて、私は使ったことのない勝手口があった。もしかしたらここが開いているんじゃないかと軽い気持ちで手をかけ、くいと引っ張る。
……開いた。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:56:40.04 ID:fk92G9zco
結衣「…………」
扉の向こうに京子がいることを信じ、扉の向こうに京子がいる景色を思い浮かべて……私は優しくノックをした。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:58:09.06 ID:fk92G9zco
私が馴染みのあるこの部屋の姿を思い出す。こんなに整頓されたところは見たことがない。
普段そこまで汚いわけでもないが、いつも読みかけの漫画や適当に脱いだ靴下などが片付けられずに散らかっているのが常だった。しかし机の上も本棚も、何もかもがきちんと片づけられており……先のリビングと同じように、誰かがいた痕跡を感じさせてくれない。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:58:37.16 ID:fk92G9zco
結衣「京子……きょうこぉ……」
この部屋で過ごした京子との思い出が、一瞬のうちにぶわっと蘇ってきた。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:59:26.00 ID:fk92G9zco
結衣「きょうこ……きょうこぉ……っ……!」
京子のベッドに力なく手を伸ばし、京子の枕を力いっぱい握りしめて、誰に聴かれるわけでもないのに声を押し殺して泣いた。
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