過去ログ - 緒方智絵里「お茶とお菓子と妖精さんと」
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1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:04:00.49 ID:9SBqwW9h0

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 むしむしと暑い夜だった。

 拭いても拭いても流れ落ちる汗が止まらないのも、
 山のように用意された事務仕事がいつまでたっても終わる気配を見せないのも、

 ついでに頭の上の蛍光灯が暗いのも、全てはこの夜の暑さのせいに違いない。

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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:06:16.48 ID:9SBqwW9h0

「あ、あのぅ」

 昼間の喧騒はどこへやら。

以下略



3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:09:04.44 ID:9SBqwW9h0

「あの、あのぅ……」

 うだるような暑さに耐えながら、一心不乱にキーボードを叩く俺。

以下略



4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:10:30.79 ID:9SBqwW9h0

「…………くすん」

 ちなみにそれ程までに暑いと文句を言うならば、
 冷房の一つでもつけてしまえばいいじゃあないか、なんて声も聞こえてきそうだが。
以下略



5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:13:51.08 ID:9SBqwW9h0

 初めてその話を切り出した時の彼女の視線の先、
 冷房をガンガンに効かした事務所内の談話スペースで、

 ナイターを見ながらビール片手に騒ぐ大人達の姿を、
以下略



6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:16:04.99 ID:9SBqwW9h0

 そうして彼女の計画は、たちまちのうちにその効果をあらわした。

 毎夜のように繰り広げられていたどんちゃん騒ぎも最近ではすっかりなりを潜めて、
 仕事が終われば三々五々、大人組の皆々様はそれぞれが好き勝手に夜の街へと繰り出して行く。
以下略



7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:17:56.51 ID:9SBqwW9h0

「――プロデューサーさぁん?」

 だからだろうか。

以下略



8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:18:45.30 ID:9SBqwW9h0

「智絵里! 君、帰ったんじゃあなかったっけ?」

「あ、はい。そのハズ……だったんですけど」

以下略



9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:21:06.43 ID:9SBqwW9h0

 そうしてもじもじと「気づいてもらえた……良かった」なんて、
 伏し目がちでこちらの質問に答える彼女の姿は、

 そのフリルがついた可愛らしい服装も相まって、
以下略



10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:23:30.69 ID:9SBqwW9h0

「お節介かなとは思ったんですけれど、これ、お茶です。えっと、さっき用意して……
 きっとプロデューサーさん、喉も乾いてるんじゃないかなって思ったから」


以下略



11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:24:39.47 ID:9SBqwW9h0

 グイッと中身を飲み干した、空になったばかりのコップを盆に戻すと、
 智絵里はパタパタとした急ぎ足で給湯室の中へと消えて行く。


以下略



12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:26:35.77 ID:9SBqwW9h0

「ん、ありがとう」

 なので俺は再びグイッと飲み干して、

以下略



13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:28:39.38 ID:9SBqwW9h0

 そんな彼女の動きに合わせて、頭の横で二つにくくった彼女の髪が、
 ひょこひょこと跳ねるように小さく上下する。

 その動きが微笑ましいやら面白いやら、
以下略



14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:29:56.19 ID:9SBqwW9h0

「いやぁ、実に美味しい麦茶だね」

 ニコニコとした笑顔で語りかけると、彼女もつられてニコリと笑い、

以下略



15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:31:22.82 ID:9SBqwW9h0

 白々しい俺の質問に、一瞬視線を泳がせた彼女が、
 消え入りそうな声でぽそりと答えた。


以下略



16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:32:37.98 ID:9SBqwW9h0

 もうパタパタというよりも、トボトボといった様子で歩く彼女の姿が見えなくなると、
 俺は自分の机の引き出しを開け、中に入っていたある物を机の上に取り出した。


以下略



17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:34:48.09 ID:9SBqwW9h0

「君も、お菓子は好きだったよね? 
 実はここに、今日貰った頂き物のクッキーがあるんだけども」

「あ、はい。お菓子は……好きです」
以下略



18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:36:22.27 ID:9SBqwW9h0

「これって、もしかして手作りですか?」

「うん、まぁ、妙な物は入ってないハズだから」

以下略



19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:37:34.20 ID:9SBqwW9h0

「あ、あの。私も、プロデューサーさんのお茶を持って来るの、忘れてました……」


 開いた口を、右手で隠すようにして智恵理が言った。
以下略



20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:39:21.80 ID:9SBqwW9h0

 そう言って立ち上がった俺の行く手を遮るように、
 智絵里が慌てて立ち上がる。

 けれども、俺は彼女を椅子に座りつけると、
以下略



21: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/09/07(水) 19:40:48.60 ID:9SBqwW9h0

「それでだ。妖精に作業を手伝ってもらった人は、感謝の印にお礼をするんだよ。
 ……実を言うと、俺もこの暑さには心底参っててね。
 ついさっきまでは、給湯室に行くのすら面倒になってたほどなんだ」

以下略



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