過去ログ - 川島瑞樹「今はまだ『川島さん』で我慢してあげる」
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1:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:02:37.74 ID:8W7iqVcl0
某年某月某日、午後21時。

「プロデューサーさん、今日中に仕留めちゃいたい書類があるんですけど、これから大丈夫ですか?」

それは、愛すべき隣人である事務員の、そんな一言から始まった。

「他ならぬちひろさんの頼みとあっては断れません。幸い、この後仕事のある子はいませんし」

俺は、一瞬緩みかけた表情を慌てて正してそう返した。

「ふふ、そう言って下さると思ってました♪」

一方ちひろさんは、喜色を隠そうともせずに鼻唄交じりで残業を片付けにかかる。
まぁ、話の流れ上ちひろさんが喜んでも不自然ではないか。
何でも卒なくこなしてくれる反面、妙なところでガードが甘いというか、迂闊なところのある同僚の行動にやや肝を冷やしつつ周りを見渡すと、

「……」

じっとちひろさんに視線を注ぐアイドルを見つけてしまった。


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2014/01/15(水) 01:04:11.17 ID:8W7iqVcl0
「あれ、まだいたのか、凛?」

直観的にまずい気がして、ちひろさんから注意を逸らすべく声をかけてみたが、

「何その言い方? 私が事務所にいるとまずいんだ?」
以下略



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2014/01/15(水) 01:06:13.25 ID:8W7iqVcl0
「川島さん……?」
「そう、私よ」
「あれ、川島さんまで残ってたんですか?」

英雄の名は川島瑞樹。まぁ色々と逸話のある人だが、凛が珍しく敬語を使う相手というだけでも只者ではないことが伝わるだろうと思う。
以下略



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2014/01/15(水) 01:08:19.46 ID:8W7iqVcl0
「いえ、私は乗らないわよ?」
「は?」

が、しかし川島さんの返答は俺の予想とは反したものだった。そして俺の顔がよっぽど間抜けだったのか、

以下略



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2014/01/15(水) 01:09:23.16 ID:54l9mAuh0
「なんだそれ……ともかく、二人とも送るから車に……」
「あの、プロデューサー?」
「なんだ?」

思わず溜息を吐き立ち上がった俺に、
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2014/01/15(水) 01:11:27.14 ID:54l9mAuh0
 ・ ・ ・

「ただいま」

そんなわけで、凛と楓の二人を家に送り届けた俺が事務所に戻ってくると、
以下略



7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:12:30.35 ID:54l9mAuh0

「ん、私の顔に何かついてる?」
「いえ、今日も綺麗だなと」

そんな事をぼんやりを考えている間、無意識に川島さんの顔をじっと見ていたらしい。川島さんの問いに、頬を書きながら誤魔化して返す。
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2014/01/15(水) 01:14:35.48 ID:54l9mAuh0

さて、これで事務所に残されたのは俺とちひろさんだけになったから、さっさと仕事を片付けて飲みに行きたいところだが……

「……どうします? 今日は止めときます?」

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2014/01/15(水) 01:17:11.88 ID:54l9mAuh0
 ・ ・ ・

というわけで、やって来たのは快速で二駅先にまで足を伸ばして、馴染みの店。
まぁ、何のかんのと仕事の愚痴やらプライベートの愚痴やらを吐き出しながら飲むこと一時間半ほど。

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10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:19:36.64 ID:54l9mAuh0

さて、この酔っ払いからどうやって酒を取り上げるかを思案していると、

「これは……想像よりも二回りほどひどいわね」

以下略



11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:21:54.83 ID:54l9mAuh0

「えー、私酔ってませんよぅ?」

ちひろさんの恐ろしいところは、どんなに酔っていようとも、自分を評した言葉だけはしっかりと理解し、記憶しているところである。
酔っているからと、多少失礼な事を言った事があったのだが、あの後二週間ほど睨まれたのは忘れられない。
以下略



12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:23:57.63 ID:54l9mAuh0

「でも、お花見とか二周年パーティとか、そんな事はなかったと思うけど?」
「ま、本人もこうなるのを自覚してるみたいで、公式の場ではセーブしてるんですよ」

そんな風に出し巻きを食べる人を肴に酒を呑んでいると、
以下略



13:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:25:18.98 ID:54l9mAuh0

「……P君は慣れてるのね」
「そりゃまぁ、週一くらいで飲んで介抱してますから」

その溜息で何かを察してくれたらしい川島さんが生暖かい目で俺とちひろさんを見ながら言う。
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14:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:26:46.95 ID:54l9mAuh0

「つかぬ事をお伺いするけど、二人は付き合ったりしてるわけ?」

まぁ、そう思われても仕方ない事はしてるよなぁ、とは思う。

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15:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:28:10.93 ID:54l9mAuh0

「というか、そもそもどういう経緯で二人は飲み友になったの?」
「いや、そんな大袈裟な。数少ない対等な仕事の同僚ですし、飲みに行くくらいは自然じゃないですか」
「……そう言われればそうかもしれないけど」

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16:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:29:31.80 ID:54l9mAuh0

「それじゃ、この飲みってちひろさんのためにやってるわけ?」
「ま、少なからずそういう面はありますけど」
「え〜、P君だって楽しいでしょ?」

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17:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:31:10.98 ID:54l9mAuh0
「前々から言おう言おうとは思ってたんですけど、川島さんはほんと、そのままで良いんですよ。無理にキャラ作りしなくたって、普段の落ち着いた大人の女性の雰囲気で十分魅力的ですから」
「えぇ? こんなところで急に何を言うの?」
「こんな場ですから言っちゃいます。川島さんの中のアイドル像を否定するつもりはありませんし、ファンにも結構受けてるってのも事実ですけど」

それで出てきたのがこの話題である。俺も相当酒が回っているのかもしれない。本来、素面でいつかしようと思っていた話をこんな大衆酒場で、それもちひろさんにしがみ付かれながらする事になるとは夢にも思わなかった。
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18:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:33:19.45 ID:54l9mAuh0

「何ですか、改まって? あとちひろさん、痛いので力緩めてください」
「んふ〜、いやです」

プロデューサーとして、当然その質問にもちゃんと応えるつもりだったが、
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19:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:34:54.04 ID:54l9mAuh0

「え〜、酔ってませんよ〜? 酔ってませんよねぇ?」

などと益体もない事を(投げ遣りに)考えていると、ちひろさんがとうとう見えない世界の住人と交信を開始してしまった。
俺と川島さんのちょうど間くらいに居るらしい誰かに向けて同意を求めているのは、本当にそこに誰かが居るのがちひろさんには見えているのか、或いは俺か川島さんがそこに居ると勘違いしているのか、或いは何も考えていないのか、本当の正解は分からないものの、一つだけ分かる事がある。
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20:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:36:03.67 ID:54l9mAuh0
「もうお互い、そういう風には見れないんですよね」

それに対して、俺は笑いながら手を振って否定する。笑ってしまったのは、まぁ俺とちひろさんが妙なとこまで来てしまったなぁという実感からだ。

「そういうものかしら?」
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21:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/15(水) 01:37:09.86 ID:54l9mAuh0
「年上だから、なんて言い訳はなしよ? ちひろさんや礼子さんを名前で呼んでいるものね」

俺が何かを言うよりも早く、川島さんは俺の逃げ道を塞いでいく。その目も真剣そのものだ。

「もっと言えば、敬語も要らないわ。私達、対等な関係なんでしょう?」
以下略



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