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タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part6

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101 : ◆axPwtNeSoU [sage]:2018/04/06(金) 23:57:49.69 ID:P6c5szVA0
>>38『台本通りにお願いします』



「もう、うんざりなんだよ」

俺は煙草を灰皿で乱暴にもみ消しながら、監督に吐き捨てた。

「……毎回毎回、パターン通りのお決まりの台詞ばかり。いくら脇役とはいえ、これじゃあ、あんまりじゃないか」

俺の剣幕に、監督が苦りきった表情を浮かべる。長い付き合いだ、別に俺だってこいつを困らせたいわけじゃない。だが……

「お前の気持ちはよーっくわかってるつもりだ。お前ほどのベテランが、お決まりの演技ばかりを要求されて、欲求不満になるのは当然だと思う」

……やっぱりだ。やっぱりこいつはわかってない。

「違う、違うんだよ。俺は別に、自分の演技力を見せびらかしたいとか、この役に不満があるとか言いたい訳じゃねえんだ」

拳をがつんとテーブルに振り下ろす。アルミの灰皿が跳ねて、机の上で乾いた音を立てた。

「この役は俺にとっても大事な役だ。いや、それどころか、この役は俺の人生そのものだと思ってる。生涯この役を演じ続けていきたいと思ってるんだ」

どうにかわかってほしくて、必死に説得する。

「だからこそ、なんだよ。たとえ脇役だとしても、創作の中のキャラクターだとしても、こいつは生きてる。生きて、いろんなものを見て、経験して、成長してるはずなんだよ。俺はそこの部分を視聴者に見せてやりたいんだ」

ありったけの熱意をこめて監督に訴える。

「約束するよ。今までのこいつのイメージを壊したりはしない。成長した、さらに魅力的なこいつを……みんなに見せてやれないか?」

渋面の監督と、真っ向から睨み合う。監督の目の奥で、何かが揺らめいた気がした。

だが――

「……駄目だ。台本通り、変更はなし。アドリブも一切許さん」

監督の最終判断は、非情だった。

奥歯をぎりっと噛み締めた後、ゆっくりと息を吐く。

「……わかった。監督はあんただ。ちゃんと従うよ」

何度も繰り返してきた議論だ。結論もいつも同じ。

「……すまないな」

「……謝らないでくれ、余計みじめになる」

ぱんぱん、と両手で自分の頬を叩いて気持ちを切り替える。

タイミングを見計らっていたのか、ノックに続いてドアが開き、ADが俺の名を呼んだ。

「イクラさん、出番です」

「おう、今行くよ」


――乳児役をつとめてはや50年近く。

「チャーン」「ハーイ」「バーブー」以外を喋れるのは、まだまだ当分先の話のようだ。



FIN.
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