谷間の百合 (オリジナル百合)
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1: ◆/BueNLs5lw[saga sage]
2016/07/27(水) 08:14:06.99 ID:Li1QhE+X0
※大雑把な設定のまま展開される百合だよ!



全身が燃えるように熱かった。大人達の声が耳をかすめる。その音でさえ苦痛だった。
最後に見た母親の顔を思い出そうとしたけれど、それさえも疲れ果てできそうもない。
どうして、そんなに自分は疲れているのだろう。分からない。目の前は真っ暗だ。光はどこへ消えた?
私はどこにいるのか。なぜこんなにも気だるいんだろう。
何が起きたのか、思い出さないと。きっと、思い出したくないことに違いないのだけど。
少しでも考えないと、戻れないような気がする。それに、だんだんと眠くなってきた。
こんなにも体は熱く寝てなんていられないのに。ゆっくりと脳が溶けていくようだ。
これは、自分にはどうしようもないことなのかもしれない。
そう考えると、急に、怖くなった。
怖くて助けを求めた。
腕は動いてくたのか。足は動いてくれたのか。
分からない。
助けて。
助けて。






2: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 08:37:06.83 ID:Li1QhE+X0
――――ここは日淀村(ひよどむら)。中国地方にある小さな集落だ。数える程しかいない人口のこの村で、悲劇は起きた。
この村にいた子どもたちは、次々と病で死んでしまったのである。
生き残った大人たちは、この村にもともとあった風土病のせいだとみな口をそろえて言った。
過去にも、江戸から明治時代にかけて夏場の気温が異常に高くなった時期にもこの病が村の子ども達を襲ったらしい。
私は、黒い紐で束ねられた古い資料を枕の下に差し込んだ。
以下略 AAS



3: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:01:18.96 ID:Li1QhE+X0
診療所に一つしかない病室の窓から見ていた風景に飽きてきたところだったので、嬉しかった。
母を仰ぎ見ると、笑いかけてくれた。

「陽の光を浴びたら、すぐに元気になるからね」

以下略 AAS



4: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:12:55.55 ID:Li1QhE+X0
「ナツ……?」

聞かされた名前を無意識に呟いた。
状況が飲み込めない。
ナツと呼ばれても全く反応を示さない少女。
以下略 AAS



5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:21:11.57 ID:Li1QhE+X0
「母さん」

父が母に何か合図する。
母は頷いて、私から離れた。

以下略 AAS



6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:30:37.98 ID:Li1QhE+X0
「ナツ、身長高いね」

私は立ち上がろうと、車いすから足を降ろした。

「よっと」
以下略 AAS



7: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:04:02.04 ID:Li1QhE+X0
「そうですか」

ナツが呟くかたわらで、私は先ほど読んでいた資料を思い出す。
あれは、診療所の倉庫にあったもので、ヒマだったのでこっそりと拝借したものだ。
子どものいなくなった村に、よそから身寄りのない子どもを引き取って村を存続させたとも書いてあった。
以下略 AAS



8: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:28:27.97 ID:Li1QhE+X0
診療所の前の道路は、太い木の根がアスファルトを突き破っていた。
生い茂る大木の木の葉が、二人の上に影をつくる。
なんとかまたいで、ナツにしがみつくように歩いた。
目覚めてからすぐにリハビリをしたおかげか、支えがあれば歩くのにそこまで支障はない。
桟橋にはすぐに着いた。大きな池に設置されたそれは、今や誰も使っていないのが一目で分かる程古びてボロボロになっていた。
以下略 AAS



9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:48:46.60 ID:Li1QhE+X0
子どもが次々に死んでしまう奇病がついこの間まで流行っていたのに、どうして村に来れたのだろう。
もともといた所から離れて寂しくないのか。
一人は寂しくないのか。
私は、もしかしたら、一人でも大丈夫だという確信をナツに見出そうとしているのかもしれない。

以下略 AAS



10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:18:38.47 ID:Li1QhE+X0
「こんなことを聞いても、なんの慰めにもならないでしょうに」

ナツは鼻で笑った。

「それとも、自分よりも可哀相な人間を見ると落ち着きますか?」
以下略 AAS



11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:36:38.98 ID:Li1QhE+X0
その後、何も言い返すことができず、また診療所に戻った。
そもそも、自分の常識が通じない相手なのかもしれない。
傷つくというか、カルチャーショックに近い。

「ナツ、家を案内しよう。ミソラは、しばらくは診療所生活が続くから、ナツはそれまでに家のことを覚えていこう」
以下略 AAS



12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:42:50.61 ID:Li1QhE+X0
それから、1週間程が過ぎた。
私は漸く自分の足で走れるくらいにまで回復していた。
ガリガリだった体も肉付いてきて、逆に太りすぎていないかと気になるくらいだった。

「今日まで、リハビリをさぼらずに頑張った成果ですね。頑張りましたね」
以下略 AAS



13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:46:59.59 ID:Li1QhE+X0
「ミソラ、歩けるようになったんですね」

「そうなの、それに、もう走れるんだよ」

と、車の周りを2周くらいして、運転席の横で足がからんでしまいずっこける。
以下略 AAS



14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:02:48.44 ID:Li1QhE+X0
家に戻って、夜は退院のお祝いということで豪勢な夕飯だった。
半分はナツが作ったというから驚きだ。
ナツは、両親の前では普通に笑って普通に会話していた。
1週間前に話したナツとはまるで別人で、もしかして何か心変わりしたのかと思った。
それが勘違いだと気付くのに時間は要さなかったけれど。
以下略 AAS



15: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:15:48.01 ID:Li1QhE+X0
「廊下で寝ましょうか」

「え、いいよ」

「私が怖いんでしょう」
以下略 AAS



16: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:32:17.41 ID:Li1QhE+X0
「そうやって、優しくない言葉ばっかり喋ってると、いつか自分に不幸として返ってくるんだからね」

人差し指を彼女の鼻先に突き立てる。
ナツはそれを手で払いのけた。

以下略 AAS



17: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:47:05.79 ID:Li1QhE+X0
「それが生きることだと教えてくれた人はもうこの世にはいないので、それが真実なのかは不明です」

「それって、おばあちゃんとかおじいちゃんとか?」

「いいえ、生きることを教えてくれたのは、両親です。彼らからキスをもらったことなんてありませんでしたけれど。聞く前に、私が殺してしまいました」
以下略 AAS



18: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:55:52.09 ID:Li1QhE+X0
握手を求めているのが分かったけれど、私はその手を握り返すことはできなかった。


次の日、もうすぐ夏休みが終わるということをカレンダーを見て知った。
ただ、子どものいなくなったこの村に、再度学校を開くかどうかという所で大人たちがもめているようだった。
以下略 AAS



19: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 13:08:51.35 ID:Li1QhE+X0
日差しは落ち着いていた。
一度は断ったのに、ナツが日傘を差してくれた。

「なんだか、お嬢様になったみたい」

以下略 AAS



20: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 13:21:23.87 ID:Li1QhE+X0
頭をゆすられ、目の前がくらくらと回る。
それだけで、私は地から足が浮いたような感覚になり平衡感覚を失った。
どちらが上か下か分からずに、おばさんと一緒に道路になだれ込む。
遠くから男の人の声。たぶん、おじさんだ。

以下略 AAS



21: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 13:44:33.85 ID:Li1QhE+X0
淡々と語るナツ。
顔を上げた。
ナツが私の瞼に手を伸ばす。
びっくりして目を閉じた。

以下略 AAS



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