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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 21:06:33.03 ID:eglF3Egj0
>>105


 ご忠告ありがとう、"ギンちゃん"。……ふふ、かわいいからこっちで呼ばせてもらおうかな。
 わたしが蒐めるのは怪異そのものじゃなく、それが生み出す物語……"怪異譚"の方なんだ。ああ、ちょっと難しいかな?


【顔も知らない誰かの死に、本気で涙を流せるほどに善くはなく。本気で怒りを覚えるには、少しばかり博愛が過ぎる】
【ギンコを恨み切ることも、動かない死体を悼み切ることもなく、ただただ、この物語を"蒐める"ことをいま決めた】
【せめて、そのヒトが"ここで死んだ"という物語だけは、この手に収めて持ち帰る。……たとえ、ギンコを殺しても】
【これがイストの性格であり、習性だ。そしてその悲しげな表情のまま、平気で刀を振るえるのもまた――】


あぁ――――重っもいな!?


【ガギギ、と。白く光る銀と赤く光る銀とが、その軌跡の交錯点で火花と共に停止した。受け止められる、そこまでは想定内】
【だが、三つの刃が拮抗していたのはほんの一瞬であって。――イストは「そうではない」側の存在なのだった】
【押し負けると見るや悪態をひとつ。即座に刀を引き寄せると体の前に晒しながら、後方に跳んだ】

【……予想の百倍ぐらい強い蹴撃、衝撃が刀越しに両腕を貫いて】
【よほど硬いのか刀身には傷一つなかったけれど、イストは痛みを堪えながら数メートル吹き飛ぶだろう。距離が、空いた】


 可愛い顔して怪力無双とは、恐ろしい子だなまったく。
 ――ならわたしも、少しばかり本質をさらけ出すとしよう!


【わざと跳んだのが功を奏して、刀を握れなくなるほどのダメージにはならかった。なのにイストは、刀を振るうことはなく】
【右手の刀はそのままに、なぜかなにも持っていない左手を振りかざすのだ。――桜の花弁じみた光の粒子は、"異能"の証】
【その袖口から突如、路地裏の闇を切り裂いて、淡く藤色に発光する奇怪な"蔓"が伸び上がるのが見えるはずだ】

【イストは勢いよく左腕を振り下ろす。つまりこれは――空を切ってしなる"蔓の鞭"による打撃攻撃!】
【蔓はそこそこ太く、強度も普通の植物よりは上だ。普通の女性の力だと、素手で引き千切るにはやや力不足だろう】
【……この場に普通の女性などひとりもいない、というのはさておき。この一撃、普通の鞭で打たれるのと変わりない威力はある】


【ただまあ、所詮はただの蔓だ。引き千切るのはともかく、刃物があるなら簡単に斬れる。しかし、ひとつ注意点を挙げるなら――】
【イストの作り出す植物はどれも、焼き払おうと思えば千度を超える熱量が必要になるほどの、異常なまでの"耐熱性"を誇っている点か】
【ただの植物と思って火で焼き払おうすると痛い目を見るかもしれない。――そもそも火なんて持ってないなら、関係のない話だが】
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