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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/05/14(火) 23:07:20.57 ID:lHlXGZ4e0
>>209

【ついと霧の向こう側から黒くて赤いまなざしが間違いなく貴女を捉えて、――はたりと瞬くところまでを余すところなく観測させた。であれば、間違いなく出かけた声は聞いたのだろう】
【ほら見たことかとでもいうみたいに頭を揺らす蛇の仕草だけが何かふざけたような滑稽さを帯びていて、――けれどきっとそれ以外の誰にもそんなつもりはないから、やはり浮いているだけのその仕草が目立ち】
【振り返る足取りが草を踏むのなら、しゃくんと割合に当たり前の音がした。――――――――とすり、ごくごく小さな足取りの音一つで、詰める距離は、歩幅一つ分しかなくとも、“それ”はやっぱり何か、違うから】

そう? まあ、そうよね――。お行儀の悪いようには育ててないもん。ただ、人が来るのに慣れてなくって。近頃まで、ここ、封じてあったから。……それで。
見えたわ。お靴はもちろん、お顔も。――まず一つだけ。ごめんなさいね、――あたしにとって、あなたは、読んだ本の登場人物みたいな、もので……。
――まだ、そこまでなじんでないの。あなたに関する記憶も含めて、私のお話と呼ぶには、少しだけ、ね。――、でも、知ってる。――――――――――元気?

【向き直り近づいた影の向こう側に小さな社があるのだとして、何か特別な意味があるようには思えなかった。そうだとしてよく見れば、足元には気づけば草むらに等しい茂みと、それからうっすらと水が満ち満ちていて】
【不可思議な光景なのだとして、それがここのルールらしい。――ルールと呼ぶほど大層なものでもないのかもしれない、高い山を登るなら酸素が薄くなって当たり前なみたいに、ここには水たまりができやすい、なんて?】
【ころと笑う声の鈴を転がすようなのが変わらないのが非道かった。――空っぽになった指先を口元に添えるのなら、いくらか無邪気な笑みも見せつけるのだろうか、それでも葉の隙間から覗き見る月より朧気に、隠すのならば】
【さくりさくりと足音は繰り返されていた。止めぬのならばずいぶんと近くまで近寄られるのだろう。――とはいえ、会話に問題のない距離でしかなかった。殴るこぶしも蹴るつま先も、そのままでは届かぬ距離感にて】

桜花鈴音。
そうやって名乗ることにしたの、――だけど、変わらない鈴音だわ。って言ったら、可哀相よね。――あなたにも、わたしにも。
だから……そうね……、なんて言えば、いいのかなあ。――――――短編集のお話が、あるでしょう? いろんなお話がいくつも入っているやつ。
あれって、――例えば真ん中から引きちぎっても、千切られたどっちか片方だけでそれなりに成立しちゃう。……あたしはその片っぽで、わたしはその片っぽで、

――それをノリでくっつけたら、元通りの一冊! ……そういう感じなんだけど……。まあ、もう片っぽは、さらにそっからシュレッダー掛けられちゃって、現在、誠意修復中――、ね?

【ごく大人びて笑った表情が、――なにかどうしようもない悲しみに似て翳るのを隠せるほどの距離/霧ではなかった。その名を名乗ることを悲しむのではなく、それ以外の何かを悲しんでいた、けど、】
【そうだとしてあまりひどく悲しんでいないようにも見えた。ならばあんまりに心の冷たいやつなのかもしれなかった。そうやって呼ばわったところで、彼女はやはりきっと何か悲し気に笑うだけなのだろう】
【だからせてめ何か冗談めかすように笑んで伝えた、ぺちんと気の抜けた音で合わされる両手は、間違いなく片手ずつが本のかけらを表していて、それで解決したらよかったのにね?】

――、どこかへ消えちゃったって言うよりは……。

【――だから彼女はその片っぽうの手を指先を口元に添えた、そうして一瞬なにか悩むような声はあいまいな音階を刻むのだろう。うーんとうなり声、それから、ついと振り返り見せつける背中の無防備さ、】

消えらんなかったのよ。

【「だから、…………………………」「……、」「、」「あれ?」】

………………もしかして、わたし、なんかした? こんなところで何してるの? 

【“だから”何かを説明しようとした背中がふーんと気の抜けた吐息の思考に浸される。そうしたら何かに行きあたるのだろうか、だって"彼女"には前例が何度もあって、あったし、きっと貴女だって聞いている】
【彼女によって異世界に引き込まれた人間の話。――なれば同じものを名乗る彼女だって知っているのだろう。けれど心当たりはないのだろう。何か慌てたように振り返る表情が、――あるいは馬鹿みたいに少し慌てていて、】
【初対面と呼ぶには少し親し気でもあった、――だとしても】
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