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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2019/10/17(木) 01:25:44.30 ID:vVU3Ldtm0
>>357

――――――――まあ、と、呟いた。そうしてそのついでみたいに、一つ、はあっと息を吐く。――透明なまま見えもしないのを見たなら、ぱちと瞬き一つ。
そうしている間に相手が述べて曰く、自身は氷の国に住んでいたらしい、と、――。大層曖昧な言葉だなとでも思ったのだろう(そうして事実たぶんきっとほんとうにそうである)、わずかに伏した横目の一瞥。

「――まあ、まだ、息が白くないから」「これっぐらいは、全然……」「――――――、覚えてないんじゃ、仕方ないかもしれないけど」
「夜の国(あそこ)は、――雪が降っちゃうと春まで溶けないから。春になっても、しばらくは、残ってるし……」「暮らすの、あんまり向いてないよ」

「吸血鬼の人ならいいと思うけど――――、」

そうして見渡すならなるほど確かに薄着の人と厚着の人がすれ違う光景も時としてあるのだろう。それを探し求める壮年二人は見当たらないのだとして、――いや至極どうでもいい。
最近まで住んでいたというにはずいぶんと夜の国に対しての酷評を並べるのだから、あるいは嫌いだったのかもしれない。――あるいは、そこまでいかずとも、文句が目に付く程度には、合わないところ、多かったのかも。
そもそもが合う土地であったなら引越しする意味だなんてないんだ。――何処に引っ越したのと聞くことがあれば彼女は「水の国」とすぐに答えるんだろう。「お日様が昇るって嬉しいね」――ほんとになんで住んでたのやら。

「…………ほんとに?」「寒い寒い詐欺みたいな、」「……そうやって温かいものとか食べ物を強請ったり……」「お財布忘れたから小銭を下さい、って感じの」
「ふわっとした、」「…………――ふわっとした?」「ああ、……まあ、」「ふわっと……」「してた?」

寒い寒い詐欺とは。――とかく冷たいまなざしの内訳とは、つまり、寸借詐欺っぽい何かへの警戒であったらしい。とはいえ寒そうな人に茶でも、と思う程度に、彼女はそういった性質らしいのだけど。
かといってそれだけで済ますほどは生っちょろくやってはくれないらしくって、世間のなんて世知辛いことやら。――それ目的でなかったなら、そんな風に言われても冤罪でしかなくって、どうしようもない。
――けれども彼女は別に相手をお縄でどうこうしてやろうとは思っていないらしいのは一貫しているから、冗談のつもりなのかもしれない。――。冗談。と呼ばわるには少し重厚感がヘビーなのだとして――。

訝しむ目が数度瞬いて、――それからようやく、相手の表すところのふわっとしたものを理解するのだろう。白くてふわっとしたもの。考えこむような指先、唇に添えて、少し悩むような声一つ。

「あれねえ、」「かみさま」

――――――ふむと描写すべき吐息一つを挟んでから、彼女はそう述べるのだろう。その手に握られたままの携帯電話の画面が暗くなるタイミングにぴったり重なって、然るに、通報未遂の揶揄いより、余程まじめぶっていた。

「――って言ったら、どうする?」

なれば一転、ごく揶揄うように細む眼と、笑む唇と。――ようく見るに、その目はあまり笑っていないのだけど。刹那の後には、"にこ"とした笑みに誤魔化して、だから、どちらとも取れた。
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