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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/07/10(水) 19:19:10.53 ID:pvzro5Ex0
>>323-324

――――そんなに、上手だなんて程じゃあ、ないの。自分が好きでやってるだけ。うんと高いホテルみたいな料理は作れないし……。
レシピを見たら一つ一つは作れるけど、そういう、コースみたいなのは本当に――やったこともなくて。……そう? そうかな、……。

じゃあ、上級者かな? ふふ、――――天音ちゃんは上級者だよ。……お店の場所、教えよっか?
五月くらいは忙しくって毎年いつもピリピリしてるんだけど。今ぐらいの時期なら大丈夫だよ、たぶん暇してると思うから。

【フィオの言葉にほんの少しだけ下がる眉の角度はきっと櫻の気質に似ていた、謙遜によく似て、けれどきっと、本当に好きでやっているばっかりで、上手いとか、あんまり考えたことがない】
【おいしいって言ってもらうのは嬉しいけれど、一流ホテルのフルコースみたいなのは食べたことがあっても気後れするばっかりだった思い出と、よくわからないナントカ風の大名行列の思い出】
【思い返して再現しようとしてみたことがないではないけれど、"上手く"出来やしないだろうとはようく分かっているものだから。――それでも、フィオの口ぶりに少しばかし譲歩する形になって、】
【――最終的には上級者かも、なんて言って笑っている。唇に添えた指先の影から、隠せるはずない笑い声が小さく漏れ出て。どうやら友人とやらの名前、それから、紹介しようか、なんて】
【――――勝手に決めちゃってもヤな顔しないだろうという信頼があるらしい。それでもやはり特別軽くはない袋を反対側の手に持ち替えながら、】

ううん、大丈夫。最近やっと落ち着いたの。――――去年ね、ずっと、遠いところに行ってて。最近帰ってきたところ――それと、お引越ししようかなって、思って。
いろいろ見ているところで――、――シェフ、なんて、格好よく呼んでもらえるほどじゃないの、お料理はするけど。後は、給仕さんかな。酒場の給仕さん。

【また小さく笑っている。おしゃべりするのが楽しいみたいに/そうして事実として楽しんでいるようだった。口ぶりからすれば、むしろ久しぶりの平穏であると言いたげで】
【「いいところがあったら教えてね」なんて冗談めかしてから、――そんなにも大層なものではないけれどという言葉は添えられるけれども、大筋としてはそれで良いらしかった、どこぞで料理を作っていると】
【そのうえで給仕までやるというのならあまり大きくはない店なのかもしれないとも。――"酒場"って言うのは少しだけ不思議かもしれなかった、だって、彼女、大人にはちっとも見えなくて、】

――――――――ふふ、あははっ……、なんにもないよ――、ごめんね? フィオちゃんて、なんだか、揶揄ったら、楽しそうで……。ふふっ、……ふふふふっ――、
でもほんとは――そうなの、お店を見せてもらえたらいいなあって思って、――これは本当だよ。今日じゃなくっても、見せてもらおうって思ってて。

【――だって大人って言うのは人をからかって楽し気に笑ったりなんてしないものだもの(本当はそんなことはちいともなくて、ないのだけれど)】
【両手が空っぽでここが喫茶店のテーブル席だったならおなかでも抱えてしまいそうな笑い声、笑うたびに転げるような鈴の音がするから、やっぱり笑い転げているのに違いなかった、意味合いとしては限りなく】
【それでも泣いてしまうほど爆笑するでもないから、余程怒らせてしまうことはないだろうか。――ないといいのだけど。頬を膨らます仕草に向けるのが無邪気であるのも、次ぐ表情の予想なんてついてるみたいに】

【だから、】

――わあ。フィオちゃんのお店、ここ? 

【道中の会話はやはり弾むのだろう。取り留めない雑談も。雨が降り出しやしないかと不安がって空を見上げる必要はなく、重たさに項垂れて地面を見下ろす必要もなく、二人おしゃべりでもしていたら、それでいいから】
【やがて目的地まで辿り着くなら、彼女だってぱちりと瞬いて、顔を鮮やかに染めるのだろう。どこかおとぎ話に出てくるおうちみたい、自分も割に広すぎる家に住んではいるけれど、】
【立地が立地なものだから花なんてほとんど育ちやしない――夜の国だから――なんて余談ではあるのだけれど、脳裏に過ぎるのはやはり今度はおひさまのある国にしよう、なんて、当たり前の、(まあ本当に余談なのだけれど)】

【――――お邪魔します。なんて言って、招き入れられる作法は、礼儀知らずと呼ばわるにはいくらも丁寧に。けれど隣国の姫の私室に招かれるより余程砕けていた。だからきっとどこまでも、友達の温度によく似て】
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