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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2019/10/21(月) 23:06:45.27 ID:8ir0ztFf0
>>368

「まあ、――人が多いって、それだけ、何でもできるってことだから」「……だからって、悪いことしていいわけでもないけど」「その分、そのあとも元気になるの、早いと思うし……」「だれもいないより」
「具合悪くて倒れるのでも、人が多い場所のほうがいいでしょ」「そういうことだと思う、……たぶん、」

ふーんって曖昧な相槌を打った、――水の国の警察にいい思い出なんて今となってはほぼ全くないものだから、どうしたって、そんな声になってしまいがちなんだけど。
そういえば最近は平和だなと思う反面で、――そりゃあ平和なものかな、とも思っていた。ごく曖昧な温度感の合間にはまり込むような時間の停滞を何度か体験もしてきたものだし。

「――んん?」「私も、別に、何も本気じゃないから、大丈夫」「……おうちに連れて帰って、」「温かいお茶でも飲ませてあげて、」「……うん、」

だから、――やっぱりごく適当っぽい感じの相槌が一番最初にあるんだろう。家庭の事情なんて言うけれど。そんなに大層なものでもないように思っているらしかった、
なんでかはよくわからないけれど。"そういう"温度感がよくなじむのかもしれない。――それとも或いは最初っからきちんと説明する気もなく適当な風にばっかりしゃべっていたか?
――なら良かった、って、呟いた。時として見せる表情に嘘はないから、相槌がのんびりしていたって、そういう性質なのだと伝えるばっかりなんだろう。わりに大雑把なところがある、なんて。

「鈴音」「桜の花の鈴の音――――、おうかりんね」「漢字、分かる?」「わかんないなら、……まあ、いいけど」
「両親が櫻のほうの人だったの」「……、"ほうの"ってだけで」「両親も、私も、このあたりで生まれてるけど」「――生まれたのは水の国」

――――――ごくごく黒い麗しい色の髪をしていた。その割に瞳は赤いのだけれど、光の加減によっては黒くも映るのだから、果たしてそれは本当に櫻の血なのかと疑いそうにもなるけれど。
漢字が分かるなら字面も分かって、だからって特に意味はないものの、なにかをわかる手助けにはなるものだろうか。――字面から受け取る印象よりずいぶんとなんだか大人しくなさそうだったけど。――閑話休題。

「だから……いろんなところ、行ったりしたけど」「この辺が一番いいね、――過ごしやすくって」

――ふ、と、吐息に混ぜた笑みは、ふるさとを思うときのものなんだろう。……そうは言っても、言葉を聞くに、彼女の生まれはこの辺だし、故郷も何もないと思われて。
だからやっぱり少し冗談めかしているんだろう。――、ざばと川の中で何かが揺らいだ。見れば、でっかい鯉がおっきい波紋を起こして、あちらへ泳いでいくさなかであった。
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